JP4389465B2 - 単結晶引き上げ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は単結晶引き上げ方法に関し、より詳細にはチョクラルスキー法(以下、CZ法と記す)に代表される引き上げ法により、シリコン等からなる単結晶を引き上げる際に使用される単結晶引き上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、大規模集積回路(LSI)等の回路素子形成用基板の製造に使用されているシリコン単結晶の大部分は、CZ法により引き上げられている。引き上げ単結晶を無転位化する方法としては、結晶の直径を数mm程度にまで細くすることで無転位化を図る、ダッシュネック法と呼ばれる方法が一般的に用いられている。近年、引き上げ単結晶の大口径化に伴い、単結晶重量が大きくなってきており、細いネック部に掛かる荷重がシリコンの引張強度を超え、単結晶の引き上げ中に結晶が落下する虞れが大きくなってきている。
【0003】
上記虞れに対処するため、移動可能な補助加熱手段を用いて種結晶を予熱し、種結晶を溶融液に接触させる際の熱ショックによる導入転位を抑制し、ネック部を形成することなく引き上げ単結晶を無転位化する方法(特許文献1参照)や、ダッシュネック法による無転位化作業時にネック部を補助加熱手段を用いて加熱することにより、ネック部の温度分布を制御してネック部に作用する熱応力を軽減し、通常よりも太い直径のネック部でも引き上げ単結晶を無転位化できる方法(特許文献1参照)が開発されている。
【0004】
また、補助加熱装置の移動方法としては、種結晶を取り囲む環状の補助加熱ヒ−タにスリット状の開口部を形成し、無転位化作業の終了後に、前記開口部に結晶を通過させて前記補助加熱ヒ−タを斜め上方に移動させるようになっている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
図5は、このCZ法に用いられる、補助加熱法により種結晶を無転位化するための補助加熱手段25が装備された従来の単結晶引き上げ装置を模式的に示した断面図であり、図中21は坩堝を示している。
【0006】
この坩堝21は、有底円筒形状をした石英製坩堝21aと、この石英製坩堝21aの外側に嵌合された、同じく有底円筒形状をした黒鉛製坩堝21bとから構成されており、坩堝21は、図中の矢印A方向に所定の速度で回転する支持軸28に支持されている。この坩堝21の外側には、抵抗加熱式のメインヒ−タ22、メインヒータ22の外側には保温筒27が同心円状に配置されており、坩堝21内には、このメインヒータ22により溶融される結晶用原料である溶融液23が充填されるようになっている。また、坩堝21の中心軸上には、引き上げ棒あるいはワイヤー等からなる引き上げ軸24が吊設されており、この引き上げ軸24の先に、保持具24aを介して種結晶35が取り付けられるようになっている。また、これら部材は、圧力の制御が可能な水冷式のチャンバ29内に納められている。
【0007】
補助加熱手段25は平面視U字形状の側壁ストレートタイプの発熱部25a、電極25bを備え、移動手段25cにより石英製坩堝21aの中心上方へ進退可能に支持されている。
【0008】
上記した単結晶引き上げ装置を用いて単結晶36を引き上げる方法を、図6に基づいて説明する。図6(a)〜(d)は、単結晶を引き上げる各工程のうちの一部の工程における、種結晶の近傍を模式的に示した部分拡大正面図である。
【0009】
図6には示していないが、まずチャンバ29内を減圧した後、不活性ガスを導入してチャンバ29内を減圧の不活性ガス雰囲気とし、その後メインヒータ22により結晶用原料を溶融させ、しばらく放置して溶融液23中のガスを十分に放出させる。
【0010】
次に、支持軸28と同一軸心で逆方向に所定の速度で引き上げ軸24を回転させながら、保持具24aに取り付けられた種結晶35を降下させて溶融液23に着液させ、種結晶35の先端部35aを溶融液23に馴染ませた後、単結晶36の引き上げを開始する(シーディング工程、図6(a))。
次に、種結晶35の先端に結晶を成長させてゆくが、このとき補助加熱手段25の発熱部25aにより種結晶35と溶融液23との界面を加熱し、種結晶35の温度分布に起因する熱応力を低減させ、ネック部36aを形成して無転位化させる(無転位化工程、図6(b))。
次に、移動手段25cを駆動させて発熱部25aをネック部36aから退避させ、その後引き上げ軸24の引き上げ速度(以下、単に引き上げ速度とも記す)を落としてネック部36aを所定の径まで成長させ、ショルダー36bを形成する(ショルダー形成工程、図6(c))。
次に、一定の速度で引き上げ軸24を引き上げることにより、一定の径、所定長さのメインボディ36cを形成する(メインボディ形成工程、図6(d))。
その後、図6には示していないが、最後に急激な温度変化により単結晶36に高密度の転位が導入されないように、単結晶36の直径を徐々に絞って単結晶36全体の温度を徐々に降下させ、終端コーンを形成する。その後、単結晶36を溶融液23から切り離し、冷却して単結晶36の引き上げを完了させる。
【0011】
【特許文献1】
特開平11−189488号公報
【特許文献2】
特開2001−278695号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の単結晶引き上げ装置においては、補助加熱手段25の発熱部25aにより種結晶35と溶融液23との界面を加熱し、種結晶35の温度分布に起因する熱応力を低減させることにより、ネック部36aの無転位化を図ることができるようになっている。
【0013】
しかしながら、ネック部36aの育成中に結晶側面を発熱部25aにより加熱するため、結晶成長の基本原理である抜熱により結晶が固化するという物理現象に相反する面を持っている。このためこのプロセスは微妙な熱バランスの上に成り立っており、ネック部36aの育成には作業者の熟練が必要となると同時に、ネック部36aの育成時の引き上げ速度は従来のネッキング工程の一般的な引き上げ速度(2〜4mm/min)ほど速くすることができない。そのため少なくとも従来行われていたネッキング工程と同程度の所要時間、およそ1時間から2時間を要してしまうという課題があった。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、補助加熱手段を用いて種結晶及び/又はネック部を加熱して単結晶を引き上げる場合でも、前記ネック部の形成速度を速めることのできる単結晶引き上げ方法を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段及びその効果】
上記目的を達成するために、本発明に係る単結晶引き上げ方法(1)は、溶融液が充填される坩堝、該坩堝の周辺に位置するヒータ、及び前記溶融液の直上に位置した状態の種結晶を取り囲むように位置させ得る発熱部と、該発熱部を単結晶の通過領域より退避させる移動機構とを含んで構成された補助加熱手段を備え、前記発熱部が、鉛直方向下部領域と鉛直方向上部領域とで異なる発熱強度を有し、前記鉛直方向上部領域の発熱強度と前記鉛直方向下部領域の発熱強度との比が、上部:下部=1:2.0〜5.0に設定され、前記鉛直方向上部領域と前記鉛直方向下部領域との高さの比が、上部:下部=9:1〜4:1に設定されている単結晶引き上げ装置を用いた単結晶引き上げ方法であって、前記種結晶を前記溶融液に着液させてネック部を形成する際に、前記発熱部の加熱パワーを種結晶先端部表層を気化させ得る加熱パワー(以下、シードメルトパワーと記す)の30〜50%の範囲に設定し、前記発熱部の下端と前記溶融液面とのギャップを、15〜20mmの範囲で設定することを特徴としている。
【0016】
上記した単結晶引き上げ方法(1)によれば、前記発熱部が、鉛直方向下部領域と鉛直方向上部領域とで異なる発熱強度を有し、前記鉛直方向上部領域の発熱強度と前記鉛直方向下部領域の発熱強度との比が、上部:下部=1:2.0〜5.0に設定され、前記鉛直方向上部領域と前記鉛直方向下部領域との高さの比が、上部:下部=9:1〜4:1に設定されているので、前記発熱部による発熱分布のピーク位置を前記発熱部の鉛直方向下方位置に移動させることができ、固液界面とその上方とにおける熱的バランスを良好に保つことができ、前記発熱部上方への抜熱を適切な範囲で増大させることができ、無転位化に必要な温度勾配を適切に保つことができる。したがって、ネック部の形成速度を速めることができるとともに、前記ネック部を確実に無転位化させることができる。
【0017】
なお、発熱強度とは、単位面積当たりの発熱量のことを示している。また、前記鉛直方向上部領域と前記鉛直方向下部領域との高さの比は、9:1〜4:1に設定される。例えば、前記発熱部の高さを50mmとした場合、前記鉛直方向下部領域は、前記発熱部の下端部から5〜10mmの領域に設定される。前記鉛直方向下部領域を5mm未満にすると、発熱ピーク位置を下方に大きくずらすことができ、前記ネック部の形成速度を速める効果を高めることができるが、上方への抜熱が大きくなるため固液界面とその上方とにおける熱的バランスが悪くなり、無転位化に必要な温度勾配の確保が難しくなる。一方、前記鉛直方向下部領域を10mmより大きくすると、固液界面の温度分布が小さくなるため前記ネック部の形成速度が遅くなる。
【0021】
また、上記した単結晶引き上げ方法(1)によれば、前記種結晶を前記溶融液に着液させてネック部を形成する際に、前記発熱部の加熱パワーがシードメルトパワーの30〜50%の範囲で設定し、前記発熱部の下端と前記溶融液面とのギャップを、15〜20mmの範囲で設定するので、固液界面での転位の除去に必要な温度勾配を適切に保つことができ、また、前記発熱部直下の溶融液温度と溶融液外周部の温度との熱的バランスを適切に保つことができる。したがって、前記ネック部での熱応力が低減され、前記ネック部内における転位の発展を阻止し、前記ネック部の育成中に確実に無転位化を図ることができ、この結果、前記ネック部下部より成長させる単結晶を確実に無転位化することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る単結晶引き上げ方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、従来例と同一の機能を有する構成部品については同一の符号を付してその説明を省略することとする。
本実施の形態に係る単結晶引き上げ方法は、12インチ(約300mm)以上の大口径、いわゆる大重量単結晶の引き上げを前提としている。
【0023】
図1は、実施の形態に係る単結晶引き上げ方法が採用された単結晶引き上げ装置の要部を模式的に示した部分断面図であり、図2(a)〜(c)はこの単結晶引き上げ装置における補助加熱手段の発熱部を模式的に示した平面図、正面図、及び側面図である。
【0024】
図中10は整流治具を示している。整流治具10の本体部10aは逆円錐台側面形状を有すると共に、引き上げられた単結晶36を取り囲むように位置し、本体部10aの下端部が坩堝21内に充填される溶融液23面の上方近傍に位置させ得るように配設され、溶融液23面と整流治具10の下端部とのギャップG1
が75mm程度となるように設定されている。
【0025】
図中15は補助加熱手段を示しており、補助加熱手段15は、図2(a)、(b)に示すように、種結晶35の水平方向に関する外周長さの半分以上を取り囲むと共に種結晶35から退避するための開口部15dを有し、溶融液23の直上に位置した状態の種結晶35を取り囲むように位置させ得る平面視U字形状の発熱部15aと、この発熱部15aに電力を供給するとともに、発熱部15aを下降又は上昇させる際の角度を決定するための電極15bと、ネック部36a形成後、メインボディ部36cを形成する際に発熱部15aを単結晶36の通過領域より退避させるための移動機構(図示せず)とを含んで構成されている。
【0026】
発熱部15aは、例えば、上部領域Bと下部領域Aとに所定間隔で交互にスリット15eが形成されている抵抗加熱式ヒータから構成することができ、発熱部15aの下部領域Aの厚みWAが上部領域Bの厚みWBより薄くなるように形成されており、発熱部15aでは、図2(c)に矢印で示したようにスリット15e間を電気が流れるようになっている。
【0027】
このように下部領域Aの厚みWAが上部領域Bの厚みWBより薄く形成されることにより、厚みWAにおける抵抗値が高くなり、下部領域Aでの発熱強度が上部領域Bでの発熱強度より高められるようになっている。発熱部15aの上部領域Bと下部領域Aとの発熱強度の比は、上部領域B:下部領域A=1:2.0〜5.0に設定されるようになっている。
【0028】
また下部領域Aは、例えば、発熱部15aの高さを50mmとした場合、発熱部15a下端から2〜15mmの範囲となるように設定される。また発熱部15a下端と溶融液23面とのギャップG2は、溶融液23と発熱部15aとが接触しない程度でかつ種結晶35の先端部35aを効率よく高温化できる距離、例えば5〜30mmの範囲に設定されるようになっている。ギャップG2が5mm未満になると溶融液23との接触の恐れがあり、好ましくなく、また、ギャップG2が30mmを越えると固液界面での転位の除去に必要な温度勾配の減少を実現しにくくなり好ましくない。
【0029】
また、発熱部15aの加熱パワーは種結晶35の先端部35aを溶融するに至るシードメルトパワーの30〜80%の範囲に設定されるようになっている。前記加熱パワーがシードメルトパワーの30%未満であると、固液界面での転位の除去に必要な温度勾配の現象を実現しにくくなり、80%を超えると、発熱部15a直下の溶融液温度と溶融液外周部温度との熱的バランスが崩れ、溶融液外周部が低温化して結晶析出が発生し、引き上げが困難な状態となる。
【0030】
また、補助加熱手段15の少なくとも発熱部15aは、炭素材及び炭素材の表面にコ−ティングされた炭化珪素材から形成されており、移動機構も炭素材及び炭素材の表面にコ−ティングされた炭化珪素材から形成されていることが望ましく、このように補助加熱手段15を炭素材及び炭素材の表面にコ−ティングされた炭化珪素材から形成することにより、発熱部15aが高温になっても、発熱部15aから不純物が発生して引き上げられる単結晶36に悪影響を与えるといった事態の発生を阻止することができる。
【0031】
図2に示した補助加熱手段15における発熱部15aは開口部15dを有する平面視U字形状の1個の曲面的部材から構成されているが、別の実施の形態に係る単結晶引き上げ装置では、図3(a)、(b)に示したように、補助加熱手段150を構成する発熱部150aが複数の移動可能な発熱部150aから構成され、種結晶35の水平方向に関する外周長さの略全周を取り囲めるように略円筒形に形成されるようになっていても良く、かかる分割構造の全周形発熱部150aが、種結晶35及びネック部36aの均一加熱といった観点からは好ましい。なおこの場合においても、発熱部150aの下部領域Aの厚みWAが上部領域Bの厚みWBより薄くなるように形成されている。
【0032】
次に、上記実施の形態に係る単結晶引き上げ装置を用いた単結晶引き上げ方法について説明する。図4(a)〜(e)は、実施の形態に係る単結晶引き上げ方法の各工程のうちの、一部の工程を実施する際の、種結晶35の近傍を模式的に示した部分拡大正面図である。
以下に説明する工程以前の工程は、「従来の技術」の項で説明した方法と同様の方法で行う。
【0033】
支持軸28(図5)と同一軸心で逆方向に所定の速度で引き上げ軸24(図1)を回転させながら、保持具24a(図1)に取り付けられた種結晶35を溶融液23の直上まで降下させ、種結晶35の予熱を行い、種結晶35の先端部35aの温度を上昇させる(図4(a))。
【0034】
種結晶35の直径を小さくすることにより、先端部35aの熱容量が減少し、種結晶35が溶融液23に着液させる際の温度変化が容易となり、着液時の径方向の温度分布が生じにくくなって、作用する熱応力が小さくなり、着液時の導入転位数が減少する。種結晶35の直径Dが5mm未満であると、12インチ程度の直径で300kgを超える重量の単結晶36を支持するのが難しくなり、他方、種結晶35の直径Dが15mmを超えると、単結晶36を支持するのには十分であるが、種結晶35が大きすぎて補助加熱手段15を用いての均一加熱が困難となり、種結晶35に発生する熱応力が増大して転位を除去することが困難になる。従って、種結晶35の直径Dは5〜15mmの範囲で設定することが好ましい。
【0035】
前記予熱時間を5〜60分程度とることにより、種結晶35の先端部35aの温度が上昇し、1200〜1300℃程度の温度となる。着液前予熱時の溶融液23と種結晶35の先端部35aとの距離Hは、1〜30mmの範囲で設定することが好ましく、種結晶35を出来る限り溶融液23表面温度に近づけるために、さらに好ましくは5mm程度の距離に設定する。
【0036】
前記予熱の後、さらに種結晶35の先端部35aを補助加熱手段15を用いて加熱し、先端部35aの温度を1380〜1420℃まで上昇させておくことが望ましい。種結晶35の先端部35aの温度が1380℃以上であれば、種結晶35を降下させて先端部35aを溶融液23に接触させる過程において、熱応力に起因する転位の発生を著しく抑制することができる。
【0037】
但し、種結晶35の先端部35aの温度が1420℃を超えると、種結晶35が補助加熱手段15に近い部分から溶融し始めるが、種結晶35を降下させて先端部35aを溶融液23に接触させる過程において、溶融液23の温度が予想よりも高い場合や、溶融液23の表面の温度変動が大きい場合に、溶断してしまう可能性が高くなる。
【0038】
次に、種結晶35を降下させ、種結晶35の先端部35aを溶融液23に着液させる(図4(b))。この着液時において、種結晶35の先端部35aは、溶融液23との温度差が小さくなっているので、温度差に起因して種結晶35中に発生する熱応力は小さい。そのため種結晶35として無転位のものを使用した場合には転位が導入されることはほとんどない。また、単結晶36の引き上げ中に有転位化した場合の単結晶36の再溶融後など、種結晶35に若干の転位を含む場合の再引き上げ時に、種結晶35を溶融液23へ再度接触させても転位が増殖、伸展することがない。
【0039】
次に、種結晶35の先端に結晶を成長させていくが、このとき後述するメインボディ36cの形成速度よりも速い速度で引き上げ軸24を引き上げ、単結晶36の成長界面(ネック部36aの先端面)の形状を下に凸形状としてネック部36aを形成する(図4(c))。本実施の形態に係る装置では、径が太くても転位除去可能なネック部6aを形成することができる。それは、育成中のネック部36aへの発熱部15aからの輻射量が増大するため、ネック部36a結晶内の熱分布を平面化し、熱応力が軽減することにより、ネック部36aでの転位除去能力が増大するからである。
【0040】
ネック部6aの直径は7〜12mmが好ましく、12mmより大きいとネック部36aの育成中に平面的な熱分布が得られにくいため、熱応力が大きくなり、転位除去能力が低下してしまう。したがって、直径が7〜12mmの種結晶35を用いる場合には、種結晶35と同径のネック部36aを形成すればよく、また直径12mmを越える大きさの種結晶35を用いる場合には、ネック部36aが12mm以下となるように縮径させればよい。
【0041】
万一種結晶35の溶融により完全に無転位化を図ることができずに転位が僅かに残った場合でも、ネック部36aの熱応力が低減されてネック部36aの形成中に転位が除去され、ネック部36a下部より成長させる単結晶36が確実に無転位化されるため、ネック部36aを引き上げる際には、補助加熱手段15を用いてネック部36a近傍を引き続き加熱することが望ましい。
【0042】
次に、補助加熱手段15への電力供給を停止し、発熱部15aをネック部36aの周囲から退避させた後、単結晶36を所定の径(12インチ程度)まで成長させて、ショルダー36bを形成する。この後、所定の引き上げ速度で単結晶36を引き上げて、メインボディ36cを形成する(図4(d)、(e))。
【0043】
その後は、「従来の技術」の項で説明した方法と略同様の方法により単結晶36を引き上げ、溶融液23から切り離して冷却させることにより単結晶36の引上げを完了する。
【0044】
なお、上記実施の形態では、CZ法に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は何らCZ法への適用に限定されるものではなく、例えば磁場を印加するMCZ法にも同様に適用可能である。
【0045】
また、上記実施の形態では、種結晶35が略円柱形状である場合について説明したが、別の実施の形態では種結晶が多角柱形状であっても良く、この場合もネック部36aの直径が7〜12mmの範囲になるようにすれば良い。
【0046】
また、上記実施の形態に係る単結晶引き上げ装置を用いて、種結晶35及びネック部36aのいずれにも発熱部15aによる加熱により輻射量が増大される場合の単結晶引き上げ方法についてのみ、ここでは説明しているが、種結晶35への輻射量だけを増大させて、ネック部36aを形成せずに単結晶36を引き上げることや、ネック部36aへの輻射量だけを増大させて、ネック部36aでの転位除去能力の増大を図ることにより、単結晶36を引き上げることができることは、言うまでもない。
【0047】
【実施例及び比較例】
以下、実施例に係る単結晶引き上げ装置、及び単結晶引き上げ方法を説明する。また、比較例として、発熱強度が高められた下部領域Aを有さない従来の発熱部で加熱しながらネック部を形成した場合についても説明する。以下、その条件を記載する。
【0048】
下記の表1に、個別条件とそれぞれの場合の、単結晶36のDF(dislocation Free)率及びネック部36aの形成速度を示している。比較例1は、発熱強度が高められた下部領域Aを有さない従来の発熱部25aを有する補助加熱手段25を備えた単結晶引き上げ装置を用いた。また、実施例1〜15は、上記実施の形態に係る単結晶引き上げ装置を用い、▲1▼発熱部15aの下部領域Aの高さ、▲2▼上部領域Bと下部領域Aとの発熱強度の比(発熱強度の上下比)、▲3▼発熱部15a下端と溶融液23面との距離(ギャップG2)、▲4▼発熱部15aの加熱パワー(シードメルトパワーに対する相対強度)のそれぞれを変化させて、ネック部36aを形成した。
なお表中DF(dislocation Free)率は、引き上げ回数10回のうち、無転位(DF)で引き上げができた回数の割合を示している。また、無転位(DF)の判定は、ネック部形成後、所定の拡径操作(肩部形成、ショルダー部形成)を行い、約300mmのメインボディ36cを200mm引き上げる操作を行い、上記引き上げ操作範囲内で、単結晶が有転位化し結晶軸の軸切れを生じなかった場合を無転位(DF)と判定した。またネック部36aの形成速度は、各条件における平均速度を示している。
【0049】
【表1】
【0050】
<発熱部15aの下部領域Aの高さの影響について>
表1に示した比較例1及び実施例1〜4の結果から明らかなように、下部領域Aを備えていない発熱部25を使用した比較例1の場合には、ネック部36aの形成速度が1.5mm/min以下であるのに対して、2〜10mmの下部領域Aを備えている発熱部15aを使用した実施例1〜3の場合には、ネック部36aの形成速度が2.5〜3.5mm/minと、2倍前後まで速くなっている。
これは、発熱部15aに下部領域Aを設けることにより発熱分布のピーク位置が発熱部15aの下方位置にずらされる結果、発熱部15a上部での上方への放熱量が増えて、発熱部15aの上部領域Bでのネック部36aの抜熱が促進される結果、結晶が固化され易くなるためと思われる。
ただし、実施例1のように下部領域Aを2mmまで小さくすると、ネック部36aの形成速度は、3.5mm/minまで高められるもののDF率が50%となり、好ましくない。また、実施例4のように下部領域Aを15mmまで大きくすると、DF率は100%となるものの、固液界面の温度分布が極端に小さくなるためにネック部36aの形成速度が0.7mm/minまで低下し、実用的ではない。
【0051】
<発熱部15aにおける発熱強度比の影響について>
表1に示した実施例3、5、6の結果から明らかなように、発熱部15aにおける発熱強度の上下比が上部:下部=1:2.0(実施例3)、1:5.0(実施例5)の場合は、ネック部36aの形成速度が、それぞれ2.5mm/min以下、2.0mm/min以下となり、比較例1と比べてネック部36aの形成速度を速めることができ、しかもDF率は100%となり、確実に無転位化することができた。
一方、発熱強度の上下比が1:6.0(実施例6)の場合はDF率が50%となってしまった。これは固液界面とその上方での熱的バランスが悪く、上方への放熱が大きいために無転位化に必要な温度勾配の確保が難しいことによるためと考えられる。
【0052】
<発熱部15a下端と溶融液23面との距離(ギャップG2)の影響について>
表1に示した実施例7〜10の結果から明らかなように、発熱部15a下端と溶融液23面とのギャップG2が5〜20mmに設定された実施例7〜9ではDF率が100%となり、確実に無転位化させることができたが、ギャップG2が30mmに設定されるとDF率が50%まで低下した。これは、ギャップG2の増大と共に固液界面での温度分布が大きくなり、無転位化しにくくなるためと考えられる。また、ネック部36aの形成速度も速めるためには、ギャップG2を20mm程度に設定することが好ましい。
【0053】
<発熱部15aの加熱パワーの影響について>
表1に示した実施例11〜15の結果から明らかなように、ネック部36a形成時の発熱部15aの加熱パワーが予熱時に種結晶先端部を溶融するパワー(シードメルトパワー)の10%(実施例11)または、100%(実施例15)に設定されたときのDF率は、共に0%となってしまい、転位を除去することができなかった。また、シードメルトパワーの90%に設定された場合(実施例14)ではDF率は70%となり、同30%(実施例12)及び80%(実施例13)に設定された場合には、DF率は100%となり、確実に無転位化することができた。
このように発熱部15aの加熱パワーがシードメルトパワーの30%未満に設定された場合は、転位を除去するのに必要な温度分布を形成することができないために転位を除去することができず、また80%より大きく設定された場合は、過加熱により結晶が溶融してしまい、ネック部36aの育成が不可能となった。
発熱部15aの加熱パワーをシードメルトパワーの30〜80%に設定することにより、確実に無転位化することができた。なお、ネック部36aの形成速度も同時に速めるには、発熱部15aの加熱パワーをシードメルトパワーの30%程度に設定することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る単結晶引き上げ装置の要部を模式的に示した部分断面図である。
【図2】(a)は実施の形態に係る発熱部の形態を模式的に示した平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】(a)は別の実施の形態に係る発熱部の形態を模式的に示した平面図、(b)は正面図である。
【図4】(a)〜(e)は、実施の形態に係る単結晶引き上げ装置を用いた単結晶引き上げ工程のうちの、一部を実施する際の、種結晶の近傍を模式的に示した部分拡大正面図である。
【図5】従来の単結晶引き上げ装置の要部を模式的に示した部分断面図である。
【図6】(a)〜(d)は、従来の単結晶引き上げ装置を用いた単結晶引き上げ工程のうちの、一部を実施する際の、種結晶の近傍を模式的に示した部分拡大正面図である。
【符号の説明】
15、25、150 補助加熱手段
15a、25a、150a 発熱部
21 坩堝
22 メインヒータ
23 溶融液
35 種結晶
36 単結晶
Claims (1)
- 溶融液が充填される坩堝、該坩堝の周辺に位置するヒータ、及び前記溶融液の直上に位置した状態の種結晶を取り囲むように位置させ得る発熱部と、該発熱部を単結晶の通過領域より退避させる移動機構とを含んで構成された補助加熱手段を備え、
前記発熱部が、鉛直方向下部領域と鉛直方向上部領域とで異なる発熱強度を有し、前記鉛直方向上部領域の発熱強度と前記鉛直方向下部領域の発熱強度との比が、上部:下部=1:2.0〜5.0に設定され、
前記鉛直方向上部領域と前記鉛直方向下部領域との高さの比が、上部:下部=9:1〜4:1に設定されている単結晶引き上げ装置を用いた単結晶引き上げ方法であって、
前記種結晶を前記溶融液に着液させてネック部を形成する際に、前記発熱部の加熱パワーを種結晶先端部表層を気化させ得る加熱パワー(以下、シードメルトパワーと記す)の30〜50%の範囲に設定し、
前記発熱部の下端と前記溶融液面とのギャップを、15〜20mmの範囲で設定することを特徴とする単結晶引き上げ方法。
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