JP4389417B2 - 筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置 - Google Patents

筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内噴射式内燃機関のクランク軸に連動する高圧ポンプを有し、その高圧ポンプの燃料流入経路途中の開閉弁を、高圧ポンプの吸入行程で開弁させ、吐出行程で閉弁させることにより燃料の昇圧を行うようにした筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、燃料を直接筒内に噴射する筒内噴射式内燃機関においては、噴射燃料を微粒化するために噴射圧力を高圧にする必要がある。そのため、燃料タンク内の燃料を電動式のフィードポンプ(低圧ポンプ)で汲み上げ、その燃料を、内燃機関のクランク軸に駆動連結された高圧ポンプによって加圧し、高圧燃料配管(デリバリパイプ)を介して燃料噴射弁に圧送するようにしている。
【0003】
高圧ポンプでは、クランク軸と連動するカムによってプランジャが往復移動される。この往復移動は、プランジャが加圧室の容積を増大させる方向へ移動する吸入行程と、同容積を減少させる方向へ移動する吐出行程とからなる。また、高圧ポンプでは、加圧室に連通する燃料流入経路にスピル弁が設けられており、このスピル弁が、高圧ポンプの吸入行程で開かれ吐出行程で閉じられることにより燃料が昇圧され、デリバリパイプへ圧送される。そして、圧送量の調整は、スピル弁の閉弁開始タイミングを制御し、吐出行程中における同スピル弁の閉弁期間を調整することによって行われる。
【0004】
この制御に際しては、スピル弁の閉弁に関する制御量(閉弁期間)を逐次求め、所定のセットタイミングになると、前記制御量と閉弁終了タイミング(制御量に関わらず一定の値)とに基づき、スピル弁の閉弁開始タイミングを算出及び記憶(セット)する。このセットタイミングは、吐出行程の前の所定のクランク角に予め定められている。そして、セットされた閉弁開始タイミングになると、前記制御量に基づきスピル弁を制御して閉弁終了タイミングまでの期間閉弁させる。この閉弁期間に燃料が昇圧され、所望量の燃料がデリバリパイプに圧送される。
【0005】
しかし、機関始動時においては、クランク軸の回転角度であるクランク角が確定するまでは、前述した閉弁開始タイミングをはじめとする各種のタイミングがわからない。従って、閉弁開始タイミングでスピル弁を閉弁させることは不可能である。
【0006】
そこで、クランク角の確定前には、前述した閉弁開始タイミングを制御する方法とは異なる方法で、スピル弁を制御することが考えられる。この場合、クランク角が確定するまでスピル弁を閉弁し続けると、低圧ポンプからの燃料がデリバリパイプに供給されなくなり、反対にスピル弁を開弁し続けると燃圧がフィード圧以上に上がらない。そのため、クランク角が確定する前は、スピル弁を微小間隔で開閉動作させることにより燃圧を上昇させることが有効である。この微小間隔での開閉動作のために、スピル弁への通電を、非常に短い時間をサイクルとしたデューティ比で制御する。
【0007】
そして、クランク角の確定と同時に前者の制御(デューティ制御)を中止して、スピル弁を開弁させるとともに、スピル弁の閉弁に関する制御量の算出を開始する。このようにしてクランク角の確定にともない制御形態を切替える。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、クランク角の確定と同時に制御形態を切替える場合、そのクランク角によっては1回の昇圧が行われない現象、いわゆる圧送抜けが起こる場合がある。詳しくは、初回のセットタイミングよりも前に、クランク角が確定して制御形態が切替えられた場合には、その切替えとともにスピル弁の閉弁に関する制御量の算出が開始される。このため、初回のセットタイミングになると、前記のようにして算出された制御量に基づき閉弁開始タイミングを算出・セットすることができる。従って、この閉弁開始タイミングになったときにスピル弁を閉弁させるための信号が出力される。高圧ポンプでは、吐出行程でスピル弁が閉弁されて燃料が昇圧され、デリバリパイプに圧送される。すなわち、前述したような圧送抜けの心配はない。
【0009】
これに対し、初回のセットタイミングよりも後にクランク角が確定して制御形態が切替えられた場合、その初回のセットタイミングの時点では、未だ閉弁に関する制御量が算出されていない。このため、所定のセットタイミングでは、スピル弁の閉弁開始タイミングが算出及びセットされない。従って、クランク角が確定するタイミングによっては、2回目のセットタイミングで閉弁開始タイミングが算出・セットされるのを待ち、そのセットされた閉弁開始タイミングになるまでは、スピル弁が開弁し続けることとなる。この場合には、高圧ポンプでは吐出行程が行われるにもかかわらず燃料が昇圧されず、1回分の昇圧が行われない。その結果、次回の昇圧までの燃料噴射における燃圧が不足し、燃料の微粒化が十分でないという問題が起こる。
【0010】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、機関始動時における高圧ポンプの圧送抜けを解消し、ひいては燃料噴射における燃圧の低下を抑制し、燃料を確実に微粒化させることのできる筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、筒内噴射式内燃機関の出力軸であるクランク軸に駆動連結された高圧ポンプを有し、同高圧ポンプの燃料流入経路に設けられた開閉弁を、同高圧ポンプの加圧室の容積を増大させる吸入行程で開弁し、同加圧室の容積を減少させる吐出行程で閉弁することにより燃料の昇圧を行うようにした筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置において、
前記内燃機関の始動時に前記クランク軸の回転角度であるクランク角が確定する前は、前記開閉弁を微小間隔で開閉動作させることにより、前記燃料の圧力である燃圧を上昇させる第1燃圧制御手段と、前記クランク角が確定した後は、各吐出行程前の所定の算出タイミング毎に前記開閉弁の閉弁開始タイミングを算出し、その閉弁開始タイミングに基づき前記開閉弁を吐出行程で閉弁させることにより前記燃圧を上昇させる第2燃圧制御手段とを備え、前記クランク角の確定後、前記第1燃圧制御手段による燃圧の制御を中止して前記開閉弁を開弁させるための信号を出力し、かつ前記第2燃圧制御手段による燃圧制御に切替える切替えタイミングを、前記高圧ポンプの吐出行程の開始後、前記第1燃圧制御手段による微小間隔での開閉弁の開閉動作にともない燃圧が上昇し、前記開閉弁の開弁しようとする力に打勝つ大きさになったときから、前記算出タイミングまでの間に設定している。
【0012】
上記の構成によると、筒内噴射式内燃機関の始動時において、クランク角が確定する前は、第1燃圧制御手段により、高圧ポンプの開閉弁が微小間隔で開閉動作させられる。この開閉動作により燃料が昇圧される。クランク角が確定して、所定の切替えタイミングになると、第1燃圧制御手段による燃圧の制御が中止されるとともに、開閉弁が第2燃圧制御手段によって開弁される。また、切替えタイミング以後は、第2燃圧制御手段により、高圧ポンプの各吐出行程前の算出タイミングが到来する毎に、開閉弁の閉弁開始タイミングが算出される。この算出された閉弁開始タイミングよりも前の吸入行程では、開閉弁は開弁されるため、燃料が燃料流入経路を通じて高圧ポンプ内に吸入される。そして、吸入行程に続く吐出行程において、前記のようにして算出された閉弁開始タイミングになると、開閉弁が閉弁される。この吐出行程での閉弁により、燃料が昇圧されて燃料噴射弁に圧送される。
【0013】
ここで、算出タイミング毎に行われる閉弁開始タイミングの算出は、制御形態の切替えを前提として行われるものである。このため、制御形態の切替えが初回の算出タイミングよりも前に行われれば、その算出タイミングにおいて閉弁開始タイミングが算出される。その結果、吐出行程において、閉弁開始タイミングで開閉弁を閉弁させて燃料を昇圧させることができる。
【0014】
これに対し、制御形態の切替えが初回の算出タイミングよりも後に行われた場合には、同算出タイミングの時点では、制御形態が未だ切替えられていないことから閉弁開始タイミングが算出されない。その結果、初回の算出タイミング直後における高圧ポンプの吐出行程では、開閉弁には閉弁させるための信号が出力されないことになる。2回目の算出タイミングで初めて閉弁開始タイミングが算出される。
【0015】
しかし、第1燃圧制御手段の燃圧制御により開閉弁が微小間隔で開閉し続けると、吐出行程において、加圧室の容積が減少する過程で、加圧室内の圧力が上昇してゆく。そして、あるタイミングになると、開閉弁が閉弁したような状態となる。この状態になると、仮に、第1燃圧制御手段による燃圧制御が中止されて、開閉弁への通電が停止されても、すなわち、開弁させるための信号が出力されたとしても、加圧室内の圧力が、開閉弁を開弁させようとする力に打勝ち、開閉弁を開弁させることのできない状態となる。このようにして、開閉弁の自閉現象が起こる。
【0016】
一方、請求項1に記載の発明では、制御形態の切替えタイミングが、高圧ポンプの吐出行程の開始後、第1燃圧制御手段による微小間隔での開閉弁の開閉動作にともない燃圧が上昇し、開閉弁の開弁しようとする力に打勝つ大きさになったときから、第2燃圧制御手段による閉弁開始タイミングの算出タイミングまでの間に設定されている。この設定により、自閉現象が起こっているときに切替えタイミングになる。そのため、第1燃圧制御手段による燃圧制御中止して開閉弁開弁させるための信号が出力されても、開閉弁を確実に、実質上閉弁した状態にすることができる。従って、高圧ポンプから燃料噴射弁に高圧燃料を圧送させることができ、機関始動時における高圧ポンプの圧送抜けを解消することができる。これにともない、燃料噴射における燃圧の低下を抑制し、燃料を確実に微粒化させることができる。
【0017】
なお、切替えタイミングが2回目の算出タイミングよりも後に設定されると、初回の算出タイミングだけでなく2回目の算出タイミングでも開閉弁の閉弁開始タイミングが算出できない。このことは、さらに圧送抜けが起こることを意味する。これに対し、請求項1に記載の発明では、切替えタイミングが算出タイミングよりも前に設定されている。このため、上記のような2度目の圧送抜けの心配もない。
【0018】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記第2燃圧制御手段は、前記切替えタイミング以降、前記開閉弁の閉弁に関する制御量を逐次計算し、前記算出タイミング毎に、そのときの前記制御量と所定の閉弁終了タイミングとに基づき前記閉弁開始タイミングを算出するものであるとする。
【0019】
上記の構成によれば、クランク角の確定後、切替えタイミングになると、第1燃圧制御手段による燃圧の制御が中止され、第2燃圧制御手段の燃圧制御により開閉弁が開弁される。これとともに、第2燃圧制御手段では、開閉弁の閉弁に関する制御量が逐次計算されるようになる。そして、吐出行程前の所定の算出タイミングが到来する毎に、そのときの制御量と所定の閉弁終了タイミングとに基づき閉弁開始タイミングが算出される。このようにして算出された閉弁開始タイミングは、次回の算出タイミングになるまで維持される。
【0022】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記高圧ポンプは、前記開閉弁を開弁方向へ付勢する付勢手段と、通電により前記付勢手段に抗して前記開閉弁を閉弁方向へ移動させる電磁ソレノイドとを備えているとする。
【0023】
上記の構成によれば、高圧ポンプでは、電磁ソレノイドへの通電が停止されると、付勢手段によって付勢された開閉弁が開弁する。また、電磁ソレノイドに通電されると、付勢手段に抗して開閉弁が閉弁方向へ移動され、同開閉弁が閉弁する。このようにして、開閉弁は、通電・非通電が制御されることにより開閉される。
【0024】
ところで、通電及び非通電からなるサイクルが非常に短い時間に設定され、このサイクルで第1燃圧制御手段の燃圧制御により開閉弁に対する通電制御が行われると、開閉弁が微小間隔で開閉する。そして、吐出行程において、加圧室の容積が減少する過程で、加圧室内の圧力が上昇してゆく。そして、あるタイミングになると、開閉弁が閉弁したような状態となる。この状態になると、開閉弁に対し開弁させるための信号が出力されても、加圧室内の圧力が、開閉弁を開弁させようとする力、すなわち付勢手段の付勢力に打勝ち、開閉弁を開弁させることのできない状態となる。このようにして開閉弁の自閉現象が起こる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を筒内噴射式多気筒ガソリンエンジン(以下単に「エンジン」という)の燃料供給装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
【0026】
図2に示すように、エンジン11においては、その出力軸であるクランク軸14に対し、ピストン12がコネクティングロッド13を介して連結されている。そして、ピストン12の往復移動がコネクティングロッド13によってクランク軸14の回転に変換される。クランク軸14には、複数の突起15aを備えたシグナルロータ15が取付けられている。シグナルロータ15の側方近傍にはクランク角センサ16が設けられている。クランク角センサ16は、クランク軸14が回転する際に各突起15aに対応してパルス状のクランク角信号を出力する。本実施形態では、突起15aが一定角度(例えば30度)毎に設けられており、クランク角センサ16はクランク軸14が所定角度(30度)回転する毎にクランク角信号を出力する。
【0027】
エンジン11の気筒毎の燃焼室17には、吸気通路18及び排気通路19が接続されている。吸気通路18と燃焼室17との間は、吸気弁21の開閉駆動によって連通・遮断される。排気通路19と燃焼室17との間は、排気弁22の開閉駆動によって連通・遮断される。これらの吸・排気弁21,22の開閉駆動は、クランク軸14の回転が伝達される吸気カム軸23及び排気カム軸24の回転によって行われる。吸気カム軸23には突起23aが形成されるとともに、同吸気カム軸23の側方近傍にはカム角センサ25が設けられている。カム角センサ25は、吸気カム軸23の回転にともない突起23aがカム角センサ25の近傍を通過する毎にカム角信号を出力する。
【0028】
また、エンジン11には燃料噴射弁26が気筒毎に取付けられている。図1に示すように、これらの燃料噴射弁26には、共通の高圧燃料配管であるデリバリパイプ27が接続されており、同デリバリパイプ27内の燃料が各燃料噴射弁26に分配供給される。各燃料噴射弁26は開閉制御されることにより、対応する燃焼室17に高圧燃料を直接噴射供給する。噴射された燃料は、燃焼室17内の空気と混ざり合って混合気となる。そして、この混合気が燃焼されることにより、ピストン12が往復移動してクランク軸14が回転する。デリバリパイプ27には、その内部の燃料の圧力(以下「燃圧」という)を検出するための手段として、燃圧センサ28が取付けられている。
【0029】
デリバリパイプ27に高圧の燃料を供給するための燃料供給装置29は、低圧ポンプ31及び高圧ポンプ32を備えている。低圧ポンプ31は、燃料(ガソリン)を貯留する燃料タンク33内に配置されており、バッテリを電源とする電動モータ(図示略)によって駆動される。低圧ポンプ31は、低圧燃料通路34によって高圧ポンプ32に接続されている。低圧ポンプ31は、燃料タンク33内から燃料を吸上げ、高圧ポンプ32に向けて燃料を吐出する。低圧ポンプ31は電動モータによって駆動されるため、エンジン始動時の低圧ポンプ31の吐出特性がエンジン11の回転変動の影響を受けにくい。低圧燃料通路34の途中には、同通路34内の燃圧(フィード圧)を一定にするためのプレッシャレギュレータ35が設けられている。
【0030】
高圧ポンプ32はプランジャ36、加圧室37及びスピル弁38を備えている。プランジャ36を往復移動させるために、エンジン11の排気カム軸24(又はクランクシャフト)にはカム39が取付けられており、このカム39がプランジャ36に接触している。カム39には等角度毎に複数のカム山(詳細については後述する)が形成されており、そのカム山との接触箇所が変化することにより、プランジャ36の移動量であるリフト量が変化する(図7参照)。この往復移動は吸入行程及び吐出行程からなる。吸入行程では、プランジャ36は、加圧室37の容積を増大させる方向(図1の下方)へ移動する。また、吐出行程では、プランジャ36は、加圧室37の容積を減少させる方向(図1の上方)へ移動する。リフト量は、吸入行程から吐出行程への切り替わりの際に最小となり、吐出行程が進むにつれて増加する。そして、リフト量は、吐出行程から吸入行程への切り替わりの際に最大となり、吸入行程が進むにつれて減少する。
【0031】
加圧室37は、シリンダ41及びプランジャ36によって区画されており、前述した低圧燃料通路34が燃料流入経路として加圧室37に接続されている。加圧室37において、低圧燃料通路34との接続箇所は燃料吸入口37aとなっている。また、加圧室37は、高圧燃料通路42によってデリバリパイプ27に接続されている。高圧燃料通路42の途中には、高圧ポンプ32から吐出された燃料の逆流を防止するための逆止弁43が設けられている。
【0032】
スピル弁38は低圧燃料通路34に設けられており、加圧室37の燃料吸入口37aを開閉する開閉弁として用いられている。スピル弁38は電磁ソレノイド44を備え、同電磁ソレノイド44への通電制御により開閉動作する。本実施形態では、この通電制御として、デューティ比により通電時間を制御する、いわゆるデューティ制御が行われる。デューティ比は、通電(オン)及び非通電(オフ)からなる1サイクル(時間)における通電時間の割合である。すなわち、1サイクル中の通電時間をA、非通電時間をBとすると、デューティ比は{A/(A+B)}・100(%)で表される。
【0033】
電磁ソレノイド44に対する通電が停止(デューティ比0%)された状態では、スピル弁38が、付勢手段であるばね45の付勢力によって開弁する。すなわち、燃料吸入口37aが開放され、低圧燃料通路34及び加圧室37間が連通した状態になる。この状態にあって、吸入行程中には、低圧ポンプ31から送り出された燃料が低圧燃料通路34を介して加圧室37内に吸入される。
【0034】
また、吐出行程中には、電磁ソレノイド44に対する通電(例えばデューティ比100%)により、スピル弁38がばね45に抗して閉弁される。すなわち、燃料吸入口37aが閉鎖され、低圧燃料通路34及び加圧室37間の連通が遮断される。プランジャ36の移動にともない加圧室37内の燃圧が上昇して逆止弁43を開弁させることにより、燃料が高圧燃料通路42を通じてデリバリパイプ27内へ圧送される。
【0035】
高圧ポンプ32における燃料吐出量の調整は、スピル弁38の閉弁開始タイミングを制御し、吐出行程中における同スピル弁38の閉弁期間を調整することによって行われる。すなわち、本実施形態では、閉弁終了タイミングを常に一定(吐出行程の終期と略同じ)とし、閉弁開始タイミングを制御することでスピル弁38の閉弁期間を可変としている。この閉弁開始タイミングの制御は、デューティ比を0〜100%の間で調整することにより行われる。このときのデューティ比は、スピル弁38の閉弁に関する制御量であり、以下「閉弁デューティ」というものとする。
【0036】
そして、閉弁デューティを大きな値に設定することによりスピル弁38の閉弁開始タイミングを早めると、閉弁期間が長くなり燃料吐出量が増加する。これとは逆に、閉弁デューティを小さな値に設定することによりスピル弁38の閉弁開始タイミングを遅らせると、閉弁期間が短くなり燃料吐出量が減少する。これを、図8を例にとって説明すると、タイミングt12は、閉弁デューティが100%に設定された場合の閉弁開始タイミングを示している。また、タイミングt13は、閉弁デューティが50%に設定された場合の閉弁開始タイミングを示している。閉弁デューティが100%の場合も50%の場合も、閉弁終了タイミングはともに同じ(タイミングt15)である。そして、タイミングt12〜t15の期間が、閉弁デューティ100%の場合の閉弁期間となる。また、タイミングt13〜t15の期間が、閉弁デューティ50%の場合の閉弁期間となり、閉弁デューティ100%の場合の1 /2の長さとなる。この閉弁期間の長さに応じて燃料吐出量が変化する。
【0037】
上記のように高圧ポンプ32の燃料吐出量を調整することにより、デリバリパイプ27内の燃圧が制御される。このとき、電磁ソレノイド44に対し行われる通電制御(デューティ制御)は、クランク角が確定していることが必須である。クランク角が確定していなければ、スピル弁38の閉弁開始タイミングがわからないからである。
【0038】
クランク角が確定する前は、前述した制御とは異なる形態の制御が行われる。この制御もまたデューティ制御の一種であるが、通電(オン)及び非通電(オフ)のサイクル(時間)が非常に小さな値(例えば8ミリ秒)に設定されている。そのため、この制御に従うと、スピル弁38が微小間隔で強制的に開閉される。なお、これら形態の異なる2つのデューティ制御を区別するために、以降は、前者のデューティ制御を「通常制御」と呼び、後者のデューティ制御を「始動時デューティ制御」と呼ぶことにする。
【0039】
また、本実施形態では、エンジン11の2気筒における2回の燃料噴射に対して、高圧ポンプ32に燃料の圧送を1回行わせるようにしている。従って、クランク軸14が2回(720度)回転する間に、6気筒エンジンの場合には3回の圧送が行われ、4気筒エンジンの場合には2回の圧送が行われる。また、この圧送回数と同数(6気筒エンジンの場合には3個、4気筒エンジンの場合には2個)のカム山がカム39に形成されている。なお、以降は、6気筒エンジンを例に採って説明を続ける。すなわち、図7に示すように、カム39には120度毎にカム山が3つ形成されており(図7では1つのカム山の図示が省略)、クランク軸14が240度回転する間に、1つのカム山によるプランジャ36の往復動が行われる。換言すると、クランク角が240度変化する間に、カム山の前半部分で吐出行程が行われるとともに、後半部分(図7では図示略)で吸入行程が行われる。
【0040】
なお、デリバリパイプ27は、逆止弁46を介して前記低圧燃料通路34に連通している。そして、デリバリパイプ27内の燃圧が過度に高くなると、逆止弁46が開いてデリバリパイプ27内の高圧燃料が低圧燃料通路34へ流出する。こうして燃料が流れ込む低圧燃料通路34での燃圧は、前述したようにプレッシャレギュレータ35により一定の圧力に維持される。従って、逆止弁46及びプレッシャレギュレータ35により、デリバリパイプ27内の燃圧が過度に高圧になることが抑制される。
【0041】
燃料噴射弁26からの燃料の噴射量、噴射時期や、スピル弁38の通電を制御するために、電子制御ユニット(以下「ECU」という)47が設けられている。そして、このECU47に、クランク角センサ16、カム角センサ25、燃圧センサ28を含む各種センサが接続されるとともに、各燃料噴射弁26、スピル弁38等が接続されている。ECU47はマイクロコンピュータを中心として構成されている。ECU47では、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラムや初期データに従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
【0042】
ECU47は、例えばクランク角センサ16によるクランク角信号及びカム角センサ25によるカム角信号に基づき、気筒判別及び圧縮上死点位置(クランク角度基準位置)を確定する。このことを、以下「クランク角の確定」という。する。また、所定時間に出力されるクランク角信号の数に基づき、クランク軸14の回転速度であるエンジン回転速度を算出する。また、ECU47は吸気管圧力(又は吸入空気量)、冷却水温等のエンジン11の運転状態を検出する各種センサの検出信号を読込み、それらの検出信号及び前記エンジン回転速度等に基づき、燃料噴射量及び噴射タイミングを演算する。そして、その演算結果に応じた噴射信号を燃料噴射弁26に出力して、燃料噴射を実行する。
【0043】
さらに、ECU47は、スタータの作動開始後、前述した「始動時デューティ制御」を行うことにより燃料を昇圧させる。また、クランク角が確定し、所定の切替えタイミングになると、「始動時デューティ制御」を中止して前述した「通常制御」に切替える。そして、通常制御を行うことにより、スピル弁38の閉弁タイミングを制御して燃料を昇圧させる。通常制御では、逐次閉弁デューティを算出しており、所定のタイミング(以下「セットタイミングという」)になると、そのときの閉弁デューティと閉弁終了タイミングとに基づき、スピル弁38の閉弁開始タイミングを求め、RAMに記憶(セット)する。そして、この閉弁開始タイミングになると、閉弁デューティにてスピル弁38を閉弁させる。
【0044】
ここで、セットタイミングは、カム39による吸入行程が開始されるタイミング(クランク角)よりも少し前のタイミングに設定されている。本実施形態では、図7において丸●で示すように、クランク角が−240度、0度、240度(図示略)がセットタイミングとして設定されている。
【0045】
また、ECU47による各処理はクランク角カウンタeccrnkに基づいて行われる。クランク角カウンタeccrnkは、クランク角センサ16からのクランク角信号の数をカウントし、「0」〜「7」の値を順に記憶する。クランク角カウンタeccrnkは、前述したセットタイミングに対応するクランク角信号が出力される毎にリセットされる。すなわち、クランク角カウンタeccrnkは、クランク角が−240度、0度、240度のとき「0」となり、そこからクランク軸14が30度回転する毎に「1」ずつ増加してゆく。そして、クランク軸14が240度回転するとクランク角カウンタeccrnkは「0」に戻される。
【0046】
ところで、前述した始動時デューティ制御から通常制御への切替えタイミングは、高圧ポンプ32の吐出行程の開始直後からセットタイミングまでの期間に設定されている。すなわち、クランク角カウンタeccrnkが「5」〜「0」の値となる期間である。さらには、切替えタイミングは、高圧ポンプ32の吐出行程の開始後、始動時デューティ制御による微小間隔でのスピル弁38の開閉動作にともない加圧室37内の燃圧が上昇し、スピル弁38の開弁しようとする力、すなわちばね45の付勢力に打勝つ大きさになったときから、前記セットタイミングまでの間に設定されていることが望ましい。本実施形態では、このことを考慮して、クランク角カウンタeccrnkが「6」になったときが切替えタイミングとして設定されている。
【0047】
次に、前記のように構成された本実施形態の作用について、図3〜図6のフローチャート及び図7のタイミングチャートを参照しながら説明する。図3のフローチャートは、ECU47によって実行される各処理のうち、閉弁デューティを算出するためのルーチンを示している。この閉弁デューティ算出ルーチンは、所定のタイミング、例えば所定クランク角毎に行われる。
【0048】
なお、図7のタイミングチャートは、以下の(a)〜(e)が成立した場合のクランク角、クランク角カウンタeccrnk、閉弁デューティ算出の有無、閉弁開始タイミングのセットの有無、スピル弁38に対する開閉信号、及びスピル弁38の実際の開閉動作を示している。
【0049】
(a)エンジン始動後、タイミングt1で初回のセットタイミングになる。
(b)タイミングt2でクランク角が確定する。
(c)タイミングt4で制御形態の切替えタイミングになる。すなわち、クランク角が−60度となり、クランク角カウンタeccrnkが「6」になって制御形態が切替えられる。
【0050】
(d)タイミングt5で2回目のセットタイミングになる。
(e)タイミングt7で、前記2回目のセットタイミングでセットされた閉弁開始タイミングとなり、スピル弁38の閉弁デューティに基づく制御が開始される。
【0051】
図3のルーチンの処理が開始されると、ECU47はまずステップ100において、制御形態が切替わったか否かを判定する。すなわち、クランク角カウンタeccrnkがクランク角−60度に対応する「6」になったかどうかを判定する。ステップ100の判定条件が満たされないと、このルーチンを一旦終了する。従って、タイミングt4よりも前の期間では始動時デューティ制御が行われていることから、ステップ100の判定条件が満たされないため、閉弁デューティが算出されないこととなる。そして、ステップ100の判定条件が満たされると、ステップ105へ移行し閉弁デューティを算出する。
【0052】
この閉弁デューティの算出処理は周知の処理である。その概要は、燃料噴射量にフォワード係数を乗算することによりデューティフォワード項を算出する。燃圧センサ28によって検出された実際の燃圧と、別途算出された目標燃圧との偏差を算出する。この偏差に比例項ゲインを乗算することによりデューティ比例項を算出する。また、前記偏差に積分項ゲインを乗算したものを、前回のデューティ積分項に加算することにより、今回のデューティ積分項を算出する。そして、これらのデューティフォワード項、デューティ比例項、デューティ積分項を加算することにより閉弁デューティを算出する。ステップ105の処理を経た後、このルーチンを一旦終了する。従って、制御形態が始動時デューティ制御から通常制御に切替わったタイミングt4よりも後では、所定タイミング毎に閉弁デューティが算出されることとなる。
【0053】
次に、図4のフローチャートは、通常制御におけるスピル弁38の閉弁開始タイミングをセット(記憶)するためのルーチンを示している。この閉弁開始タイミングセットルーチンは、所定のタイミング、例えば所定クランク角毎に行われる。
【0054】
このルーチンの処理が開始されると、ECU47はまずステップ200において、セットタイミングになった否かを判定する。この判定は、例えば、クランク角カウンタeccrnkが「0」であるか否かを判定することによって行われる。ステップ200の判定条件が満たされていないと、このルーチンを一旦終了し、満たされていると、ステップ205へ移行する。ステップ205では、前記閉弁デューティ算出ルーチンで算出された閉弁デューティと、閉弁終了タイミング(一定値)とに基づき、スピル弁38の閉弁開始タイミングを算出し、これをRAMに記憶(セット)する。ステップ205の処理を経た後、このルーチンを一旦終了する。
【0055】
従って、セットタイミングが到来する毎に、そのときの閉弁デューティに基づき閉弁開始タイミングが算出・セットされる。このセットされた閉弁開始タイミングは、次回のセットタイミングが到来するまではRAMに記憶され続ける。また、ステップ200での判定処理は、閉弁デューティの存在を前提として行われるものである。このため、図8に示すように、前記制御形態の切替え(タイミングt10)がセットタイミング(タイミングt11)よりも前に行われれば、閉弁デューティ算出ルーチンで閉弁デューティが算出されることから、そのセットタイミング(タイミングt11)において閉弁開始タイミングを算出できる。
【0056】
しかし、図7に示すように、制御形態の切替え(タイミングt)が初回のセットタイミング(タイミングt1)よりも後に行われた場合には、同セットタイミング(タイミングt1)の時点では閉弁デューティが未だ算出されていないため、閉弁開始タイミングを算出・セットできない。その結果、初回のセットタイミング(タイミングt1)直後における高圧ポンプ32の吐出行程では、スピル弁38には閉弁させるための指令信号が出力されない。2回目のセットタイミング(タイミングt5)で初めて閉弁開始タイミングが算出・セットされる。
【0057】
次に、図5及び図6に示すフローチャートは、スピル弁38を通電制御するためのルーチンを示している。このスピル弁制御ルーチンは、所定のタイミング、例えば所定クランク角毎に行われる。このスピル弁制御ルーチンの各処理は、前述したクランク角カウンタeccrnkのほかに、切替えフラグ及び閉弁フラグに基づいて実行される。
【0058】
切替えフラグは、制御形態が始動時デューティ制御から通常制御に切替えられたかどうかを判断するためのものである。切替えフラグは、イグニションスイッチがオン位置へ操作されたときに起動されるイニシャルルーチンにおいて、初期値として「オフ」に設定され、制御形態の切替えにともない「オン」に切替えられる。また、閉弁フラグは、前記閉弁開始タイミングにおいてスピル弁38が閉弁されたかどうかを判断するためのものである。閉弁フラグもまた前記イニシャルルーチンにおいて「オフ」に設定され、閉弁開始タイミングになったときに「オン」に切替えられる。
【0059】
このルーチンの処理が開始されると、ECU47はまずステップ300において、切替えフラグが「オフ」されているかどうかを判定し、満たされていると、ステップ305において、クランク角が確定しているか否かを判定する。すなわち、クランク角センサ16によるクランク角信号及びカム角センサ25によるカム角信号に基づき、気筒判別及び圧縮上死点位置(クランク角度基準位置)が確定されているか否かを判定する。この判定条件が満たされていないと(クランク角未確定)、ステップ310において、前述した始動時デューティ制御を実行する。すなわち、非常に小さな値に設定されたサイクルにて、スピル弁38への通電(オン)及び非通電(オフ)を繰返し、スピル弁38を微小間隔で強制的に開閉させる。そして、ステップ310の処理を経た後、このルーチンを一旦終了する。
【0060】
これに対し、ステップ305の判定条件が満たされている(クランク角確定)と、ステップ315において、制御形態を切替えるタイミングであるか否かを判定する。すなわち、クランク角カウンタeccrnkがクランク角−60度に対応する「6」であるかどうかを判定する。ステップ315の判定条件が満たされないと、前記ステップ310の処理を行い、その後、このルーチンを一旦終了する。従って、図7のタイミングt2でクランク角が確定しても、タイミングt4でクランク角カウンタeccrnkが「6」になるまでは、ステップ300→305→315→310→リターンの順で処理が繰返される。
【0061】
一方、始動時デューティ制御によりスピル弁38が微小間隔で開閉し続けると、吐出行程において、プランジャ36の移動により加圧室37の容積が減少する過程で、加圧室37内の圧力が上昇してゆく。そして、あるタイミングになると、スピル弁38が閉弁したような状態となる。この状態になると、仮に、始動時デューティ制御が中止されて、電磁ソレノイド44への通電が停止されても、すなわち、開弁させるための指令が出されたとしても、加圧室37内の圧力がばね45の付勢力に打勝ち、スピル弁38を開弁させることのできない状態となる。この状態は、吐出行程から吸入行程に切替わり、加圧室37内の圧力がばね45の付勢力を下回るまで続く。このような状態は、スピル弁38の自閉現象とも呼ばれる。
【0062】
図7では、タイミングt3で自閉現象が起こり、タイミングt6まで続いている。タイミングt4でクランク角カウンタeccrnkが「6」になって、始動時デューティ制御が中止されて、電磁ソレノイド44への通電が停止されるが、スピル弁38は実質上閉弁した状態となっている。従って、高圧ポンプ32からデリバリパイプ27に高圧燃料が圧送されることとなる。
【0063】
そして、タイミングt4において、ステップ315の判定条件が満たされる(eccrnk=6)と、ステップ320において切替えフラグを「オフ」から「オン」に切替える。ステップ325において始動時デューティ制御を中止し、通常制御に切替える。スピル弁38を開弁させるための信号を出した後、次のステップ330へ移行する。
【0064】
なお、ステップ300の判定条件が満たされていない(切替えフラグ:オン)と、前述したステップ305〜325の処理を行うことなくステップ330へ移行する。従って、一旦通常制御に切替えられると、その後は始動時デューティ制御は行われなくなる。
【0065】
図6のステップ330では、閉弁フラグが「オフ」であるか否かを判定する。閉弁フラグは、制御形態の切替え直後は「オフ」である。ステップ330の判定条件が満たされていると、ステップ335において、前述したセットタイミングで算出されたスピル弁38の閉弁開始タイミングになったか否かを判定する。ステップ335の判定条件が満たされていないと、このルーチンを一旦終了する。従って、タイミングt4で通常制御に切替わった後、閉弁タイミング(タイミングt7)になるまでの期間は、スピル弁38を開弁させるための信号が出力され続けることとなる。
【0066】
ステップ335の判定条件が満たされると、ステップ340において閉弁フラグを「オフ」から「オン」に切替え、ステップ345へ移行する。なお、ステップ330の判定条件が満たされない場合には、前述したステップ335,340の処理を行うことなくステップ345へ移行する。
【0067】
ステップ345では、前述した閉弁デューティ算出ルーチンで算出した閉弁デューティにてスピル弁38を閉弁させる。次に、ステップ350において、閉弁終了タイミングであるか否かを判定する。ステップ350の判定条件が満たされていないと、このルーチンを一旦終了する。従って、一旦スピル弁38の閉弁が開始されると、ステップ340の処理により閉弁フラグがオンされるため、閉弁終了タイミングになるまでは、ステップ300→330→345→350→リターンの順で処理が繰返される。
【0068】
ステップ350の判定条件が満たされると、次にステップ355においてスピル弁38を開弁させる。ステップ360において、次回のスピル弁38の閉弁開始タイミングの制御に備え、閉弁フラグを「オン」から「オフ」に戻し、このルーチンを一旦終了する。
【0069】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)初回のセットタイミングよりも後に制御形態が切替えられた場合には、その初回のセットタイミングにおいて、閉弁開始タイミングのセットがなされず、スピル弁38にはこれを開弁させる信号が出される。しかし、本実施形態では、始動時デューティ制御から通常制御への切替えタイミングが、高圧ポンプ32の吐出行程の開始直後からセットタイミングまでの期間に設定されている。このため、吐出行程において、スピル弁38が微小間隔で開閉することにより、いわゆるスピル弁38の自閉現象が起こり、燃料を昇圧させて、高圧ポンプ32からデリバリパイプ27へ圧送することができる。その結果、圧送抜けを回避し、燃料噴射における燃圧の低下を抑制し、燃料を確実に微粒化させることができる。
【0070】
なお、図7との比較のために、図8には、切替えタイミングを初回のセットタイミング(タイミングt11)よりも前のタイミングt10に設定した場合を示す。この場合、切替えタイミング(タイミングt10)から閉弁デューティの算出が開始されるため、初回のセットタイミング(タイミングt11)では、本実施形態とは異なり、スピル弁38の閉弁開始タイミングが算出・セットされる。このため、初回のセットタイミングが過ぎて、セットされた閉弁開始タイミング(タイミングt12)になると、スピル弁38が閉弁デューティに基づいて制御され、閉弁終了タイミング(タイミングt15)までの期間にわたり閉弁され続ける。従って、この場合には、高圧ポンプ32では吐出行程において燃料が昇圧され、デリバリパイプ27に圧送される。圧送抜けは起こらない。そして、2回目のセットタイミング(タイミングt14)になると、次回の圧送に備え、スピル弁38の閉弁開始タイミング(タイミングt16)を算出・セットする。このように、切替えタイミングを初回のセットタイミングよりも前に設定した場合には圧送抜けの問題は生じない。
【0071】
また、図7との比較のために、図9には、切替えタイミングを初回のセットタイミング(タイミングt20)よりも後で、かつ吐出行程よりも前であるタイミングt21に設定した場合を示している。この場合、初回のセットタイミング(タイミングt20)の時点では、未だ閉弁デューティが算出されていないため、本実施形態と同様に、スピル弁38の閉弁開始タイミングを算出・セットできない。このため、高圧ポンプ32が吐出行程になってもスピル弁38が開弁しているため、燃料が昇圧されない。その結果、圧送抜けが起こり、燃料噴射における燃圧が低下し、燃料を確実に微粒化させることができなくなる。そして、2回目のセットタイミング(タイミングt22)になって初めて、スピル弁38の閉弁開始タイミング(タイミングt23)が算出・セットされる。このため、タイミングt23になって初めてスピル弁38が閉弁されて、燃料の昇圧が開始されることとなる。
【0072】
(2)上記(1)に関連するが、仮に切替えタイミングが2回目のセットタイミング(図7のタイミングt5)よりも後に設定されると、初回のセットタイミングだけでなく2回目のセットタイミングでもスピル弁38の閉弁開始タイミングが算出・セットできない。このことは、さらに圧送抜けが起こることを意味する。これに対し、本実施形態では、切替えタイミングをセットタイミングよりも前に設定している。このため、上記のような2度目の圧送抜けの心配もない。
【0073】
(3)切替えタイミングを、高圧ポンプ32の吐出行程の開始後、微小間隔でのスピル弁38の開閉動作にともない加圧室37内の燃圧が上昇し、ばね45の付勢力に打勝つ大きさになったときから、セットタイミングまでの間に設定している。
【0074】
ここで、吐出行程の開始後、スピル弁38の微小間隔での開閉動作にともない燃圧が上昇してばね45の付勢力に打勝つと、スピル弁38の自閉現象が起こる。このため、切替えタイミングが上記の範囲に設定されると、自閉現象が起こっているときに切替えタイミングになる。従って、始動時デューティ制御が中止されて、スピル弁38に開弁させるための信号が出力されても、スピル弁38を確実に、実質上閉弁した状態にし、高圧ポンプ32からデリバリパイプ27に高圧燃料を圧送することができる。
【0075】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・燃圧センサ28を、デリバリパイプ27に代えて、高圧燃料通路42の逆止弁43よりも下流側に設けてもよい。
【0076】
・前記実施形態では、デリバリパイプ27と燃料供給側の燃料タンク33との間にリリーフ通路の設けられていないリターンレスの構成としたが、デリバリパイプ27と燃料タンク33との間にリリーフ弁を備えたリリーフ通路(リターン通路)を設けてもよい。このようにすれば、デリバリパイプ27内の燃圧が所定燃圧以上まで上昇した場合に上記リリーフ通路を介してデリバリパイプ27内の燃料を燃料タンク33へ戻すことができる。
【0077】
・前記実施形態では、開閉弁として加圧室37内に吸入された燃料を溢流させる形式のスピル弁38を用いたが、加圧室37内に吸入される燃料を調量する形式の吸入調量弁を開閉弁として用いてもよい。
【0078】
・本発明は、筒内噴射式の内燃機関であればガソリンエンジンに限らず適用可能であり、例えばディーゼルエンジンに適用することもできる。
その他、前記各実施形態から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに記載する。
【0079】
(A)筒内噴射式内燃機関の出力軸であるクランク軸に駆動連結された高圧ポンプを有し、同高圧ポンプの燃料流入経路に設けられた開閉弁を、同高圧ポンプの加圧室の容積を増大させる吸入行程で開弁し、同加圧室の容積を減少させる吐出行程で閉弁することにより燃料の昇圧を行うようにした燃料供給装置に適用され、
前記内燃機関の始動時に前記クランク軸の回転角度であるクランク角が確定する前は、前記開閉弁を微小間隔で開閉動作させることにより、前記燃料の圧力である燃圧を上昇させ、前記クランク角が確定した後は、各吐出行程前の所定の算出タイミング毎に前記開閉弁の閉弁開始タイミングを算出し、その閉弁開始タイミングに基づき前記開閉弁を吐出行程で閉弁させることにより前記燃圧を上昇させるようにした筒内噴射式内燃機関における燃料供給装置の制御方法であって、前記クランク角が確定した後、前記高圧ポンプの吐出行程の開始直後から前記算出タイミングまでの間に設定された切替えタイミングになると、前記クランク角確定前の燃圧制御を中止して前記開閉弁を開弁させ、かつ前記クランク確定後の燃圧制御に切替えるようにしたことを特徴とする筒内噴射式内燃機関における燃料供給装置の制御方法。
【0080】
上記の構成によれば、吐出行程での開閉弁の自閉現象を利用して、高圧ポンプから燃料噴射弁に高圧燃料を圧送させることができる。このため、請求項1に記載の発明と同様に、機関始動時における高圧ポンプの圧送抜けを解消することができ、燃料噴射における燃圧の低下を抑制し、燃料を確実に微粒化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置を具体化した一実施形態についてその構成を示す略図。
【図2】エンジンの構成を示す略図。
【図3】閉弁デューティを算出する手順を示すフロ−チャート。
【図4】閉弁開始タイミングをセットする手順を示すフローチャート。
【図5】スピル弁を制御する手順を示すフローチャート。
【図6】同じく、スピル弁を制御する手順を示すフローチャート。
【図7】スピル弁の開閉信号及び実際の開閉動作等を示すタイミングチャート。
【図8】切替えタイミングをセットタイミングよりも前に設定した場合のスピル弁の開閉信号等を示すタイミングチャート。
【図9】切替えタイミングをセットタイミングよりも後に設定して、圧送抜けを起こす場合のスピル弁の開閉信号等を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
11…エンジン(筒内噴射式内燃機関)、14…クランク軸(出力軸)、29…燃料供給装置、32…高圧ポンプ、34…低圧燃料通路(燃料流入経路)、37…加圧室、38…スピル弁(開閉弁)、44…電磁ソレノイド、45…ばね(付勢手段)、47…ECU(電子制御装置)。

Claims (3)

  1. 筒内噴射式内燃機関の出力軸であるクランク軸に駆動連結された高圧ポンプを有し、同高圧ポンプの燃料流入経路に設けられた開閉弁を、同高圧ポンプの加圧室の容積を増大させる吸入行程で開弁し、同加圧室の容積を減少させる吐出行程で閉弁することにより燃料の昇圧を行うようにした筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置において、
    前記内燃機関の始動時に前記クランク軸の回転角度であるクランク角が確定する前は、前記開閉弁を微小間隔で開閉動作させることにより、前記燃料の圧力である燃圧を上昇させる第1燃圧制御手段と、
    前記クランク角が確定した後は、各吐出行程前の所定の算出タイミング毎に前記開閉弁の閉弁開始タイミングを算出し、その閉弁開始タイミングに基づき前記開閉弁を吐出行程で閉弁させることにより前記燃圧を上昇させる第2燃圧制御手段と
    を備え、前記クランク角の確定後、前記第1燃圧制御手段による燃圧の制御を中止して前記開閉弁を開弁させるための信号を出力し、かつ前記第2燃圧制御手段による燃圧制御に切替える切替えタイミングを、前記高圧ポンプの吐出行程の開始後、前記第1燃圧制御手段による微小間隔での開閉弁の開閉動作にともない燃圧が上昇し、前記開閉弁の開弁しようとする力に打勝つ大きさになったときから、前記算出タイミングまでの間に設定することを特徴とする筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置。
  2. 前記第2燃圧制御手段は、前記切替えタイミング以降、前記開閉弁の閉弁に関する制御量を逐次計算し、前記算出タイミング毎に、そのときの前記制御量と所定の閉弁終了タイミングとに基づき前記閉弁開始タイミングを算出するものである請求項1に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置。
  3. 前記高圧ポンプは、前記開閉弁を開弁方向へ付勢する付勢手段と、通電により前記付勢手段に抗して前記開閉弁を閉弁方向へ移動させる電磁ソレノイドとを備えている請求項1又は2に記載の筒内噴射式内燃機関の燃料供給装置。
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