JP4389297B2 - フッ素除去装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフッ素含有水からフッ素を除去するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フッ素含有水からフッ素を除去する方法として、フッ素含有水をカルシウム化合物と反応させて、フッ化カルシウム不溶化物を生成させ、固液分離する方法がある。この方法では固液分離した汚泥の一部を返送してカルシウム化合物と接触させた状態で原水を反応させることにより、フッ化カルシウムの結晶を生長させて大粒形化し、固液分離を容易にするHDS(High Density Solids)法が知られている(例えば、特開平10−479号)。
【0003】
図2は従来のHDS法のフッ素除去装置を示すフロー図である。図2において、1は原水槽、2は反応槽、3は凝集槽、4は固液分離槽、5はカルシウム化合物槽、6は混合槽、7は凝集剤槽である。
【0004】
従来のフッ素除去方法は、原水路L1から原水槽1に原水(フッ素含有水)11を導入して貯留し、ポンプP1によりラインL2から反応槽2に送って不溶化反応を行う。反応液12は移送路L3から凝集槽3に送って凝集反応を行い、凝集液13はラインL4から固液分離槽4に送って固液分離を行い、分離液14を処理水として処理水路L5から排出する。分離した汚泥15の一部は返送汚泥として返送路L6からポンプP2により混合槽6に送り、残部は余剰汚泥として排泥路L7から排出する。
【0005】
混合槽6には、カルシウム化合物槽5からポンプP3によりラインL8を通して消石灰のようなカルシウム化合物16を供給し、攪拌機M1で攪拌して返送汚泥とカルシウム化合物を混合することにより、汚泥表面にカルシウム化合物が付着した汚泥混合物17を形成する。この汚泥混合物を循環路L9から反応槽2に供給し、攪拌機M2で攪拌して原水中のフッ化物イオンとカルシウム化合物を反応させ、フッ化カルシウム不溶化物を生成させる。反応槽2ではpH計pHにより反応液12のpHを測定し、所定のpHを維持するように弁V1の開度を制御し、混合槽6へ供給するカルシウム化合物の量を制御する。余剰のカルシウム化合物はラインL10から循環する。
【0006】
反応槽2で生成したフッ化カルシウムを含む反応液12は凝集槽3に送って凝集処理を行う。凝集槽3では反応液中のフッ化カルシウム不溶化物を凝集するために、凝集剤槽7から凝集剤(例えば高分子凝集剤)18をポンプP4によりラインL11を通して注入し、攪拌機M3で攪拌して凝集反応を行ってフロックを形成する。これによりフッ化カルシウムの固液分離性が高まり固液分離槽における分離が効率よく行われる。
【0007】
上記の処理方法では、反応槽2において不溶化物として析出するフッ化カルシウムの結晶を主として含む固液分離槽4の汚泥を混合槽6に返送し、ここでカルシウム化合物と混合してカルシウム化合物を結晶表面に付着させ、これを反応槽2に送って原水と接触させるので、原水中のフッ化物イオンとカルシウム化合物との反応は結晶の表面で起こり、結晶が成長する。このため汚泥の固液分離性が高くなり、固液分離槽の分離汚泥を機械脱水した脱水ケーキの含水率は汚泥を返送しない場合に比べて30〜50重量%低くなる。従ってこのケーキを乾燥して再利用する際、乾燥コストが低くなるという利点がある。
【0008】
ところで反応槽2におけるフッ化カルシウムの析出は結晶の表面のいわゆる固液反応によってのみ生じるのではなく、結晶から隔離したところにおけるフッ化物イオンとカルシウムイオンとの液液反応でも生じ、この場合は微小結晶が生成する。結晶の大きさは返送回数が多いほど大きくなり、固液分離性も高くなるが、一方では返送の際にポンプで破砕されるため均一な大きさの結晶を得ることが困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、固液分離した汚泥から小粒径の結晶を分離して返送して反応に用いることにより結晶を成長させ、大粒径で粒度のそろった結晶を分離して取り出すことにより脱水性に優れた汚泥を得ることができるフッ素除去装置を提案することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フッ素含有水をカルシウム化合物と反応させて不溶性のフッ化カルシウムを析出させる反応槽、
反応槽の反応液を処理水と汚泥に固液分離する固液分離装置、
固液分離装置で分離され、ポンプで抜き出す際破砕された汚泥を粒度に応じて、固液分離性が高い大粒径結晶と、固液分離性が低い小粒径結晶とに分級する分級装置、
固液分離装置で分離された汚泥を分級装置へ抜き出すポンプおよび
分級装置で分級された小粒径結晶を含む汚泥の全部を返送して、カルシウム化合物と混合し、結晶の表面にカルシウム化合物を付着させて反応槽に供給する混合装置
を含むフッ素除去装置である。
【0011】
本発明で処理の対象となるフッ素含有水は、フッ素をフッ化物イオンの形で含む水であり、例えば排煙脱硫工程、アルミニウムの電解精練工程、リン酸肥料の製造工程、半導体を含む電子部品製造工程、ウラン製練工程、表面処理洗浄工程等の排水があげられる。
【0012】
このようなフッ素含有水と反応させるカルシウム化合物としては、消石灰、塩化カルシウムなどが使用できる。これらのカルシウム化合物とフッ素化合物が反応してフッ化カルシウムを生成するpH領域はpH5〜10、好ましくはpH6〜8であり、このために必要によりアルカリ剤を使用することができる。アルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、消石灰などが使用できるが、消石灰を使用すると両者を兼用できる。
【0013】
本発明のフッ素除去装置は、上記のフッ素含有水とカルシウム化合物を反応槽において反応させる際、固液分離した汚泥をポンプで抜き出す際破砕された汚泥を分級装置において、粒度に応じて固液分離性が高い大粒径結晶と、固液分離性が低い小粒径結晶とに分級し、小粒径の結晶を含む汚泥の全部を混合装置に返送してカルシウム化合物と混合し、結晶の表面にカルシウム化合物を付着させて反応槽に供給するように構成される。これにより結晶表面に付着したカルシウム化合物とフッ化物を反応させて結晶表面にフッ化カルシウムを析出させ、結晶を成長させて脱水性に優れた汚泥を生成させることができる。
【0014】
反応槽は原水路から導入するフッ素含有水と、循環路から循環する汚泥に担持されたカルシウム化合物とを反応させるように構成される。具体的には原水路、循環路および移送路に連絡し、槽内液を急速攪拌する攪拌装置、および槽内液のpHを測定するpH計を設置し、pHが一定範囲を維持するように、アルカリ剤の注入量を調整して、急速攪拌しながら反応させるように構成することができる。pHとしては6〜8とするのが好ましい。反応槽は連続式が好ましいが、バッチ式でもよく、公知のものが使用できる。
【0015】
固液分離装置は反応槽の反応液を処理水と汚泥に固液分離するように構成される。このような固液分離装置の固液分離手段としては沈降分離、遠心分離、濾過分離、膜分離など公知の分離手段があげられる。
【0016】
分級装置は固液分離装置で分離され、ポンプで抜き出す際破砕された汚泥を粒度に応じて分級するように構成される。分級の程度は、固液分離性が高い大粒径の結晶と、固液分離性が低い小粒径の結晶を含む汚泥に分級する程度でよい。分級装置としては沈降分離方式、遠心分離方式、濾過分離方式などの任意の方式のものが採用でき、例えば沈殿槽、サイクロン、スクリーンなど公知の装置が使用できる。分級装置は汚泥を分級し、大粒径の結晶を含む汚泥を系外に排出し、小粒径の結晶を含む汚泥の全部を混合装置に送るように構成される。
【0017】
混合装置は分級装置から送られる汚泥とカルシウム化合物槽から供給されるカルシウム化合物を混合し、混合液を反応槽へ供給するように構成される。混合のために攪拌機を設置することができる。混合装置へ供給するカルシウム化合物量は原水中のフッ化物イオン量に対応するように、例えば原水槽にフッ化物イオン濃度計を設置することにより制御することができるが、カルシウム化合物として消石灰を用いる場合は、反応槽に設置したpH計により制御するのが好ましい。
【0018】
本発明のフッ素除去装置では、固液分離装置の前に凝集装置を設けて凝集処理を行うのが好ましい。凝集装置には高分子凝集剤その他の凝集剤を添加して攪拌し、フロックを生成させることができる。凝集剤としてはポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、アクリルアミドとアクリル酸の共重合物などが使用できる。
【0019】
本発明のフッ素除去装置においては、反応槽においてフッ素含有水をカルシウム化合物と反応させて不溶性のフッ化カルシウムを析出させる際、固液分離装置において反応槽の反応液を処理水と汚泥に固液分離し、分級装置において汚泥を粒径に応じて分級して大粒径の汚泥を排出し、小粒径の結晶を含む汚泥の全部を混合装置に返送し、ここでカルシウム化合物と混合して反応槽に供給してフッ化物イオンと反応させる。これにより小粒径の汚泥を大粒径で粒度のそろった汚泥に成長させて取り出すことができる。
【0020】
この場合分級装置において小粒径の結晶を含む汚泥の全部を分離して混合装置に返送し、結晶の表面にカルシウム化合物を付着させて反応槽に供給すると、反応槽では結晶表面でフッ化カルシウムが生成するため、結晶が成長して大粒径化する。大粒径となった結晶は固液分離性が高い汚泥として分級工程において分級されて系外に取り出されるが、脱水性に優れるため、機械脱水等により、低含水率の脱水ケーキを得ることができる。
【0021】
【発明の効果】
以上の通り、本発明のフッ素除去装置によれば、固液分離装置で分離した汚泥をポンプで抜き出す際破砕された汚泥を分級装置において、粒度に応じて固液分離性が高い大粒径結晶と、固液分離性が低い小粒径結晶とに分級し、小粒径の結晶を含む汚泥の全部を混合装置に返送してカルシウム化合物と混合し、結晶の表面にカルシウム化合物を付着させて反応槽に供給するようにしたので、分級された小粒径の結晶の全体を返送して反応に用いることにより結晶を成長させ、大粒径で粒度のそろった結晶を分離して取り出すことにより脱水性に優れた汚泥を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のフッ素除去装置を示すフロー図であり、図2と同一符号は同一または相当部分を示す。
【0023】
図1において、原水槽1は原水路L1が連絡し、ポンプP1を有するラインL2が反応槽2に連絡している。反応槽2は攪拌機M2およびpH計pHを有し、移送路L3により凝集槽3に連絡している。凝集槽3は攪拌機M3を有し、凝集剤槽7からポンプP4を有するラインL11が連絡し、ラインL4が固液分離槽4に連絡している。混合槽6は攪拌機M1を有し、返送路L6が連絡し、またカルシウム化合物槽5からポンプP3および弁V1を有するラインL8が連絡し、循環路L9が反応槽2に連絡している。
【0024】
上記の構成は、図2と同様であるが、図1では固液分離槽4は上部に処理水路L5が連絡し、下部からポンプP2を有する抜出路L12が分級装置21に連絡している。分級装置21は沈降分離槽からなり、センタートラフ22に抜出路L12が連絡し、周壁の上部から返送路L6が混合槽6に連絡し、コーン状の底部から排泥路L7が系外に連絡している。
【0025】
上記の装置によるフッ素除去方法は、まず原水路L1から原水槽1に原水(フッ素含有水)11を導入して貯留し、ポンプP1によりラインL2から反応槽2に送って不溶化反応を行う。反応液12はラインL3から凝集槽3に送って凝集反応を行い、凝集液13はラインL4から固液分離槽4に送って固液分離を行う。固液分離槽4で分離した分離液14は処理水として処理水路L5から排出し、分離汚泥は抜出路L12からポンプP2で抜き出して分級装置21で分級する。分級装置21では抜出路L12から入った汚泥中の大粒径の結晶は沈降して排泥路L7から排出され、小粒径の結晶を含む汚泥は周辺部を上昇して返送路L6から混合槽6へ送られる。
【0026】
混合槽6にはカルシウム化合物槽5からポンプP3によりラインL8を通して消石灰のようなカルシウム化合物16として消石灰を供給し、攪拌機M1で攪拌して返送汚泥とカルシウム化合物を混合することにより、返送された小粒径の汚泥の表面にカルシウム化合物が付着した汚泥混合物17を形成する。この汚泥混合物を循環路L9から反応槽2に供給し、攪拌機M2で攪拌して原水中のフッ化物イオンとカルシウム化合物を反応させ、フッ化カルシウム不溶化物を生成させる。反応槽2ではpH計pHにより反応液12のpHを測定し、所定のpHを維持するように弁V1の開度を制御し、混合槽6へ供給するカルシウム化合物の量を制御する。余剰のカルシウム化合物はラインL10から循環する。
【0027】
反応槽2で生成したフッ化カルシウムを含む反応液12は凝集槽3に送って凝集処理を行う。凝集槽3では、反応液中のフッ化カルシウム不溶化物を凝集するために、凝集剤槽7から凝集剤(例えば高分子凝集剤)18をポンプP4によりラインL11を通して注入し、攪拌機M3で攪拌して凝集反応を行ってフロックを形成する。これによりフッ化カルシウムの固液分離性が高まり、固液分離槽における分離が効率よく行われる。
【0028】
上記の処理方法では、固液分離槽4で分離され、ポンプで抜き出す際破砕された汚泥を分級装置21で分級して小粒径のフッ化カルシウム結晶を含む汚泥を混合槽6に返送し、ここでカルシウム化合物と混合してカルシウム化合物を結晶表面に付着させ、これを反応槽2に送って原水と接触させることにより、原水中のフッ化物イオンとカルシウム化合物との反応は小粒径の結晶の表面で起こり、結晶が成長して大粒径化する。また分級装置21で分離する大粒径の結晶は排泥路L7から排出される。
【0029】
これにより汚泥の固液分離性が良好な大粒径の粒度のそろった汚泥が排泥路L7から取り出され、得られる汚泥を機械脱水等により脱水すると、脱水速度は速く、含水率の低い脱水ケーキが得られる。このため脱水ケーキを乾燥する際、乾燥速度は速く、乾燥に要するエネルギーは小さい。
【0030】
なお、分級装置21はサイクロン、スクリーンなど他の分級手段を採用することができる。沈降分離槽を採用する場合、傾斜板、ハニカム状整流板等を設けることもできる。
固液分離槽4も他の固液分離手段を用いることができ、図のような沈降分離槽の場合、スラッジランケット型にして汚泥を分離することもできる。
このほか凝集槽も省略することができる。この場合汚泥の循環回数を多くすることにより、結晶を成長させ固液分離性を高めることができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0032】
比較例1
図2に示す装置によりpH 1.7、F 1.750mg/l、Cl 4200mg/l、SO4 1500mg/l含む廃水をカルシウム化合物として消石灰と反応させ、pH6.5に調整した。原水量100 liter/hrに汚泥を30 liter/hr返送した。沈澱槽は円形で直径80cm、高さ100cmの大きさである。
この時得られたCaF2汚泥の濃度は400〜500g/lであり、フィルタープレスにより脱水した脱水ケーキの含水率は42重量%であった。また粒径分布を測定した結果、平均径は24μmであった。
【0033】
実施例1
比較例1と同じ原水を図1の装置で処理した。分級装置21は直径8cm、深さ12cmの沈降分離槽であり、センタートラフ22に汚泥を流入させ有効滞留時間40秒間の沈降分離により分級した。他の条件は比較例1と同様である。
【0034】
上記の処理の結果、排泥路L7から回収された結晶の平均粒径は86μm、汚泥濃度は560〜650g/l、脱水ケーキの含水率は35重量%であった。この結果から排泥路L7から得られる結晶はそのまま回収できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のフッ素除去方法および装置のフロー図である。
【図2】従来のフッ素除去方法および装置のフロー図である。
【符号の説明】
1 原水槽
2 反応槽
3 凝集槽
4 固液分離槽
5 カルシウム化合物槽
6 混合槽
7 凝集剤槽
21 分級装置
22 センタートラフ

Claims (1)

  1. フッ素含有水をカルシウム化合物と反応させて不溶性のフッ化カルシウムを析出させる反応槽、
    反応槽の反応液を処理水と汚泥に固液分離する固液分離装置、
    固液分離装置で分離され、ポンプで抜き出す際破砕された汚泥を粒度に応じて、固液分離性が高い大粒径結晶と、固液分離性が低い小粒径結晶とに分級する分級装置、
    固液分離装置で分離された汚泥を分級装置へ抜き出すポンプおよび
    分級装置で分級された小粒径結晶を含む汚泥の全部を返送して、カルシウム化合物と混合し、結晶の表面にカルシウム化合物を付着させて反応槽に供給する混合装置
    を含むフッ素除去装置。
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