JP4389146B2 - 蓄光シート及びその断裁物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、残光輝度が高く、かつ外観に優れる蓄光シート及びそのシートを短冊状あるいは小片に断裁してなる断裁物に関する。
【0002】
【従来の技術】
蓄光顔料を使用した熱可塑性樹脂シートは、安全性確保のためや防災用の区画表示やディスプレー基材等、多くの分野において幅広く利用されている。一般的には、塩化ビニルやポリエステルなどの各種基材に、硫化亜鉛(ZnS)系や銅(Cu)系の蓄光顔料を分散させたバインダー樹脂をスクリーン印刷などの方法によって塗工する方法、あるいは前記蓄光顔料を基材に練り混む方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−67208号公報
【0004】
従来の蓄光性を有する熱可塑性樹脂シートで用いられてきた蓄光顔料は、一般的に、暗所で発光する残光時間が短いものであった。また、残光時間が長い蓄光顔料もあるが、これらの蓄光顔料は放射性物質を含有するものであり、安全性の点で懸念がある。
【0005】
これらの問題に鑑み、近年、アルミン酸ストロンチウムを主成分とする蓄光顔料が開発されている(例えば、特許文献2参照)。この蓄光顔料は、放射性もなく安全性に問題がない。また、従来の蓄光顔料よりも残光時間が長いという長所を有している。
【0006】
【特許文献2】
特開平9−13028号公報
【0007】
しかしながら、この蓄光顔料は高価であり、上記スクリーン印刷などの方法で蓄光顔料を塗工した場合には、蓄光顔料の必要量が多くなると共に製造に手間が掛かり、蓄光シートのコストアップにつながるものであった。このため、一般的に広く普及するには至っていない。
【0008】
また、前記蓄光性顔料を熱可塑性樹脂に練り込んでシートを製造する場合、蓄光顔料の粒径が比較的大きい方が、残光輝度が高く、残光時間も長くなるため、平均粒子径が30μm以上の蓄光顔料が使用されることが多かった。
【0009】
しかしながら、蓄光顔料の粒子径が大きくなると、蓄光顔料を熱可塑性樹脂に混合し、溶融押し出し法によりシート化する際、外観に優れるシートが得られにくい傾向にある。
【0010】
その点を考慮し、比較的粒子径の小さな蓄光顔料を使用し、熱可塑性樹脂に対する蓄光顔料の含有率を増加させた場合、一般に蓄光顔料は吸水率が高いため、蓄光顔料を含有する熱可塑性樹脂を溶融押出しし、シート状に成形する際に、蓄光性顔料由来の水分により発泡する場合がある。そのため、得られた熱可塑性樹脂シートは外観に劣るという問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、残光輝度が高く、かつ外観に優れる蓄光シート及びその断裁物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は蓄光顔料を20質量%以上含有する熱可塑性樹脂層を少なくとも1層有する厚み300μm以下、JIS Z9107記載のりん光輝度の評価方法における10分後の残光輝度が10mcd/m 以上である蓄光シートの製造方法であって、乾燥して水分率を500ppm以下にした平均粒子径が0.1〜10μmの蓄光顔料とポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂である熱可塑性樹脂とを溶融混練して蓄光顔料を含有する熱可塑性樹脂組成物を得て、該蓄光顔料を含有する熱可塑性樹脂組成物単独で又は該蓄光顔料を含有する熱可塑性樹脂組成物とポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂である熱可塑性樹脂と混合したものを乾燥して水分率を400ppm以下にして、Tダイスから溶融押出ししてシート化することを特徴とする蓄光シートの製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる蓄光顔料としては、特に下記の一般式(1)及び(2)で表されるただしこれら蓄光顔料に限られる物ではない。下記一般式(1)で表される酸化物系化合物を基質とする蓄光性蛍光粉が好適である。この蓄光性蛍光粉はEuにより活性化されるアルミン酸塩であり、発光強度が高く、発光時間も24時間以上と長く、化学的にも安定し、耐光性に優れ、且つ使用寿命が長い等の長所があるため、広範囲に応用が可能である。
MAl24 …(1)
式中、Mはカルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群より選択された少なくとも1つである。
【0017】
また、他の蓄光顔料として、下記一般式(2)で表される酸化物系化合物も好適であり、例えば、イージーブライト社製の蓄光顔料(EZCG7−A)が市販品として入手が可能である。この蓄光顔料は耐水性が高く、顔料吸水率を低くしやすいため、熱可塑性樹脂との溶融混合が比較的容易であり、熱可塑性樹脂中での蓄光顔料の均一分散が可能である。
【0018】
(A[1-x]xy)O・a(G[1-z]z23 …(2)
式中、AはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択された少なくとも1つであり、Dは活性化剤Euであり、Eは共活性化剤であるランタノイド元素のDyまたはSbであり、Oは酸素であり、Gは母結晶体のAlであり、Hは基質結晶体のBまたはGaであり、式中のx、y、z及びaの範囲は下記より構成される。
0.0001≦x≦0.5
0.0001≦y≦0.5
0.0001≦z≦0.5
0.5≦a≦3.0
【0019】
本発明の蓄光シートにおいて用いられる熱可塑性樹脂は、一般的に用いられるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、熱可塑性エラストマー系の生分解性樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。安価に製造できるという点からポリオレフィン系またはポリエステル系樹脂が好ましい。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1などの単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体などの共重合体あるいはこれらの混合物を挙げることができる。これらの中でも、ポリエチレン、特に、線状低密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0021】
前記線状低密度ポリエチレンとしては、線状ポリエチレンであって、エチレンと、好ましくは0.2〜20モル%、より好ましくは1〜10モル%の炭素数3〜10のα−オレフィンの少なくとも1種とを液相法又は気相法で共重合させたものを挙げることができる。
【0022】
上記α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、4−メチルペンテン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1などが挙げられる。
【0023】
前記線状低密度ポリエチレンは、密度が0.91〜0.96g/cm3であることが好ましく、JIS K7210に準じた230℃で測定したメルトフローレート(以下、MFRと略称する)が1〜15g/10分であることが好ましく、特に好ましくは4.0〜8.0g/10分である。また、融点は85〜135℃が好ましい。
【0024】
また、前記低密度ポリエチレンは、例えばエチレンを180〜200℃の高温、1000〜2000気圧の高圧でラジカル重合させて得ることができ、通常、側鎖が多く、結晶性は低い。また、前記低密度ポリエチレンは、密度が0.91〜0.93g/cm3であり、MFRの範囲が0.3〜5.0g/10分の範囲であることが好ましい。
【0025】
前記のポリエチレンは、例えば、減圧処理などで脱臭処理したものを用いることが好ましい。
【0026】
一方、ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とグリコール成分との縮重合によって合成される。ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリロット酸及びピロメリロット酸等の多官能カルボン酸等が用いられる。また、グリコール成分としては、(1)エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコール等の脂肪酸グリコール、(2)p−キシレングリコール等の芳香族グリコール、(3)1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、(4)平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール等、を用いることができるが、これらに限定はされない。
【0027】
また、前記ポリエステル樹脂は、単一ポリマーでもよいし、2種以上のポリエステル樹脂をブレンドしてもよいし、共重合体でもよい。ポリエステル共重合体を用いる場合、主成分のポリエステルとは異なる組成の、前記のジカルボン酸成分及び/またはグリコール成分を共重合成分として用いる。
【0028】
また、前記熱可塑性樹脂には、他の機能性付与や改質を目的に、各種の添加剤を含有させてもよい。添加剤として、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、不活性粒子、潤滑剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0029】
熱可塑性樹脂に蓄光顔料を混合する方法は任意であって特に限定するものではないが、ヘンシェルミキサーやバンバリーミキサーや2軸混練り機を用いて混練りした後、ペレット化する方法が好ましい。混合する際、各種分散剤を添加しても良い。
【0030】
本発明においては、水分率が500ppm以下の蓄光顔料を用いることが重要である。蓄光顔料の水分率は、300ppm以下とすることが好ましく、特に好ましくは100ppm以下である。蓄光顔料の水分率を低減するためには、耐水性に優れた蓄光顔料を用いたり、蓄光顔料を十分に乾燥し、水分を予め低減させたものを使用することが好ましい。このように水分率を低く調製した蓄光顔料を熱可塑性樹脂と溶融混練し、Tダイスから溶融押出ししてシート化することにより、蓄光顔料が均一に分散し、外観に優れ、かつ残光輝度が高い蓄光シートが得られる。
【0031】
水分率が500ppmを越える蓄光顔料を用いると、溶融押出時に水分蒸発によると思われる発泡が見られるようになり、その結果得られた樹脂シートの表面に凹凸が発生したり、穴があいたりして、外観に優れたシートが得られない。
【0032】
本発明において用いる蓄光顔料の平均粒子径は、0.1〜20μmであることが重要である。蓄光顔料の平均粒子径は、シート外観の点から、上限値が20μmであり、好ましくは15μm、特に好ましくは10μmである。一方、蓄光顔料を熱可塑性樹脂に混合する際の蓄光顔料の凝集を低減させ、シートの外観を向上させる点から、下限値は0.1μmであり、好ましくは0.5μm、特に好ましくは1.0μmである。
【0033】
本発明において、JIS Z 9107 記載のりん光輝度評価方法における10分後の残光濃度は用途により適切な範囲が異なるが、どの用途においても10分後の残光濃度は少なくとも10mcd/m2以上であることが必要である。
【0034】
前記残光濃度を10mcd/m2以上とするためには、蓄光顔料を熱可塑性樹脂に対して20質量%以上含有させることが好ましい。シートの残光輝度をさらに高めるためには、蓄光顔料を熱可塑性樹脂に対して40質量%以上含有させることが好ましい。しかしながら、蓄光顔料の含有量が70質量%を越えると、シートの強度が低下し、用途によっては使用できない場合がある。
【0035】
本発明の蓄光シートには、滑り性や巻き取り性などのハンドリング性を改善するために、無機粒子、有機塩粒子や架橋高分子粒子を含有させてもよい。
【0036】
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム等が挙げられる。
【0037】
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
【0038】
耐熱性高分子粒子としては、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、架橋アクリル粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子、シリコン樹脂粒子、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合体粒子などが挙げられる。
【0039】
また、本発明の蓄光シートは、蓄光顔料を含有する熱可塑性樹脂を単独で溶融押出成形するほかに、本発明の蓄光シートに他の機能性を付与するために、各種の機能層を設けた積層体としてもよい。機能層としては、例えば、易接着性、易印刷性、帯電防止性、光沢性、ヒートシール性、滑り性、耐ブロッキング性、粘着性、ラミネート性、ガスバリア性、耐衝撃性、表面保護性、紫外線遮断性、隠ぺい性、抗菌性、機械的性質向上などに優れている層を積層することが好ましい。これらの機能層の形成は、ウェット塗布法やドライ塗布法などの塗布法、共押し出し法、押出ラミネート法、蒸着法、などを用いることができる。
【0040】
本発明の蓄光シートには、さらに接着性や印刷性をよくするために、接着改質層にさらにコロナ処理、火炎処理、電子線照射等による表面処理を行ってもよい。
【0041】
本発明の蓄光シートを製造するには、例えば、Tダイを用いるTダイ成形法、円形ダイを用いるインフレーション成形法が採用できる。また、必要により共押出し成形法を用いる。さらに、シートの外観を向上させるために、溶融押出し時のメルトラインに孔径50μm以下のフィルターを設けることが好ましい。Tダイ成形を行う場合には、ドラフト率を1〜10%、樹脂温度を150〜300℃に設定して、回転冷却ドラム上にシート状に押出すことが好ましい。シートの厚みは用途によって最適な厚みは異なるが、剛性の点から300μm以下とし、好ましくは30〜200μmの範囲とする。
【0042】
蓄光顔料を含む熱可塑性樹脂ペレットを使用する場合、ペレットの水分率が600ppm以下、好ましくは400ppm以下になるように乾燥しておくのが好ましい。ペレットの水分率が600ppmを越えると、溶融押出時に蓄光顔料からの水分蒸発によると思われる発泡がシート中に観察されやすくなる。そのため、得られた樹脂シートの表面に凹凸が発生したり、穴があいたりして外観に優れた蓄光シートを得られない場合がある。
【0043】
前記の蓄光シートは未延伸で用いることが一般的であるが、機械的強度、耐薬品性、寸法安定性の向上など目的に応じて、一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸を行い薄膜化したり、熱固定処理を行ってもかまわない。
【0044】
本発明の短冊状及び小片状断裁物を作成する場合、用途により最適な厚みは異なるが、一般的にはシート厚みを50〜150μmとすることが好ましい。シート厚みが50μm未満では断裁時の寸法精度が不十分となりやすく、150μmを越えると断裁が難しくなる。なお、用途により前記範囲外の厚みにしても構わない。
【0045】
本発明の短冊状及び小片状断裁物を作成する場合、断裁時の帯電による付着を防ぐために、あらかじめ帯電防止剤を練り混むかあるいは塗布することが好ましい。帯電防止剤としては、特に限定はなく公知のものから任意に選択できる。例えば、アニオン系、カチオン系の界面活性剤や高分子タイプの界面活性剤、ポリアニリンやポリピロール等の導電性樹脂、導電性微粒子等が挙げられる。これらの帯電防止剤は、1種でも2種以上を併用してもかまわない。
【0046】
前記の帯電防止剤は、シートの耐熱性の点から、炭素数3〜13のアルキル基、芳香族残基及びスルホン酸ナトリウムを有する化合物を用いるのが好ましい実施態様である。ここで、芳香族残基とはフェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ジフェルニオキサイド基、ナフタリン基等が挙げられる。スルホン酸ナトリウムの数は1個でもよいし2個以上であってもかまわない。スルホン酸ナトリウムを有する化合物としては、例えば、ドデシルベーゼンモノスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジオキサイドモノスルホン酸ナトリウム、ドデシルジオキサイドジスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンジスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
【実施例】
次に、実施例と比較例を用いて本発明の蓄光シートを詳しく説明する。なお、本発明は、その要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で規定した物性評価は、下記の評価方法によって行った。
【0048】
(1)水分率
JIS K 0068に準拠し、カールフィッシャー電量滴定法により、シートの水分率を測定した。
【0049】
(2)平均粒径
走査型電子顕微鏡を用い、頻度の多い蓄光顔料の大きさが5mm程度となるように倍率を適宜調整して写真撮影し、少なくとも200個以上の蓄光顔料の粒子径を求め、数基準の平均粒径(メジアン径)を求めた。
【0050】
(3)シートの厚み
フィルム厚み測定機(マール社製、ミリトロン)を用い、シート1枚当たり場所を変え5点測定し、計3枚、すなわち15点を測定し、それらの平均値を求めた。
【0051】
(4)残光輝度
JIS Z 9107記載のりん光輝度の評価方法における10分後の残光輝度を測定した。なお、具体的な手順は、JIS Z 9107に準拠し、下記の通りである。
(a)温度25℃、湿度65%RHの環境で、24時間光を遮断する。
(b)次いで、15Wの卓上蛍光灯にて40cmの垂直照射(1000Lx)を20分間行う。
(c)次いで、光を遮断し、10分後の残光輝度を輝度計(ミノルタ株式会社製、LS−100)を用い測定角度90°で残光濃度を測定した。
【0052】
(5)シート外観
シート表面の均一性を目視観察した。
【0053】
実施例1
線状低密度ポリエチレンペレット(密度:0.960g/cm3、MRF:4.0g/10分)100質量部と、あらかじめ80℃で48時間乾燥を行い、水分率を100ppmに調整した蓄光顔料(イージーブライト社製、EZCG7−A、メジアン粒径:7μm)50質量部とを2軸混練り機を用いて溶融混練した。次いで、溶融した樹脂組成物をノズルからストランド状に押し出し、水冷して固化させ、次いでペレット状にカットした。
【0054】
蓄光顔料を含有する線状低密度ポリエチレンペレットを乾燥し、水分率を350ppmとした後、T型押出し機にホッパーより前記ペレットを投入した。次いで、溶融樹脂を孔径20μmのフィルターに通過させ、成型温度220℃で、回転冷却ロール上にシート状に押し出して、厚みが100μmであり、かつ蓄光顔料を含有する線状低密度ポリエチレンシートを得た。得られた蓄光シートは、10分後の残光輝度が150mcd/m2であり、かつシート外観は良好であった。
【0055】
実施例2
線状低密度ポリエチレンに蓄光顔料を50質量%混合したペレット(イージーブライト社製、PE−DKG07S50)50質量部と線状低密度ポリエチレンペレット(密度:0.960g/cm3、MRF:4.0g/10分)50質量部をあらかじめ混合し、水分率が400ppmとなるよう乾燥し、T型押出し機にホッパーより前記混合ペレットを投入した。次いで、溶融樹脂を孔径50μmのフィルターに通過させ、成型温度220℃で、回転冷却ロール上にシート状に押し出して、厚みが150μmであり、かつ蓄光顔料を含有する線状低密度ポリエチレンシートを得た。得られた蓄光シートは、10分後の残光輝度が40mcd/m2であり、かつシート外観は良好であった。
【0056】
実施例3
ポリエステル樹脂に蓄光顔料(イージーブライト社製、EZCG7−A、メジアン粒径:7μm))を50質量%混合したペレット(イージーブライト社製、PET−DKG07S50)75質量部と、固有粘度が0.61dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(東洋紡績社製、RE553)25質量部とをあらかじめ混合し、水分率が50ppmとなるよう乾燥し、T型押出し機にホッパーより前記混合ペレットを投入した。次いで、溶融樹脂を孔径50μmのフィルターに通過させ、成型温度290℃で、回転冷却ロール上にシート状に押し出して、厚みが70μmであり、かつ蓄光顔料を含有するポリエステルシートを得た。得られた蓄光シートは、10分後の残光輝度が20mcd/m2であり、かつシート外観は良好であった。
【0057】
実施例4
実施例1で得られた、厚みが100μmであり、かつ蓄光顔料を含有する線状低密度ポリエチレンシートに、帯電防止剤としてドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウムを2質量%混合した水/イソプロピルアルコール混合液(質量比:70/30)を、グラビアコート法を用いてウエット塗布量が2g/m2になるよう塗布し、80℃で30秒間乾燥させた。そのシートを幅0.5mmにマイクロスリットして短冊状断裁物を得た。スリット時の静電気によるトラブルもなく均一な短冊状物が得られた。
【0058】
実施例5
実施例4で得られた短冊状サンプルを、更に長さ0.5mmになるようカットし、0.5mm角の小片状断裁物を得た。異物等の混入がない均一な小片断裁物が得られた。
【0059】
比較例1
線状低密度ポリエチレン(密度:0.960g/cm3、MRF:4.0g/10分)100質量部と、水分を付着させ、水分率を800ppmに調製した蓄光顔料(イージーブライト社製、EZCG7−A、メジアン粒径:7μm)50質量部とを2軸混練り機を用いて溶融混練りした。溶融した樹脂組成物をノズルからストランド状に押し出し、水冷して固化させ、次いでペレット状にカットした。
【0060】
蓄光顔料を含有する線状低密度ポリエチレンペレットを、水分率が700ppmの状態で、T型押出し機にホッパーより前記ペレットを投入した。次いで、溶融樹脂を孔径100μmのフィルターに通過させ、成型温度220℃で、回転冷却ロール上にシート状に押し出して、厚みが100μmであり、かつ蓄光顔料を含有する線状低密度ポリエチレンシートを得た。得られた蓄光シートは、10分後の残光輝度が140mcd/m2と高かったが、気泡による穴がシート表面に多数あり、シート外観は不良であった。
【0061】
比較例2
線状低密度ポリエチレンに蓄光顔料(イージーブライト社製、EZCG7−A、メジアン粒径:7μm)を50質量%混合したペレット(イージーブライト社製、PE−DKG07S50)25質量部と線状低密度ポリエチレンペレット(密度:0.960g/cm3、MRF:4.0g/10分)75質量部をあらかじめ混合し、水分率が400ppmとなるよう乾燥し、T型押出し機にホッパーより前記混合ペレットを投入した。次いで、溶融樹脂を孔径100μmのフィルターに通過させ、成型温度220℃で、回転冷却ロール上にシート状に押し出して、厚みが150μmであり、かつ蓄光顔料を含有する線状低密度ポリエチレンシートを得た。得られた蓄光シートは、10分後の残光輝度が7mcd/m2と低く、シート中には異物が観察され、外観に劣っていた。
【0062】
比較例3
孔径が100μmのフィルターを使用したこと、及びシート厚みを350μmに変更したこと以外は実施例2と同様にして、蓄光顔料を含有する線状低密度ポリエチレンシートを得た。得られた蓄光シートは、10分後の残光輝度が400mcd/m2と高かったものの、シート中には異物が多数観察され、外観に劣っていた。
【0063】
比較例4
比較例3で得られた、厚みが350μmであり、かつ蓄光顔料を含有する線状低密度ポリエチレンシートを幅0.5mmにマイクロスリットして短冊状サンプルを得た。次いで、それを更に長さ0.5mmになるようカットし、0.5mm角の小片状断裁物を得た。スリット時に異物による破断や厚みが厚いため、断裁時の抵抗が大きく、外観に優れた短冊状物が得られなかった。小片断裁物を観察すると、異物が混入した小片が混入していることがわかった。これは、小片断裁物が静電気のため、バラバラになりにくかったためである。
【0064】
【発明の効果】
本発明の蓄光シート及びその断裁物は、残光輝度が高く、外観に優れており、防災用の区画表示やディスプレイ基材のみならず、意匠物としても好適である。

Claims (1)

  1. 蓄光顔料を20質量%以上含有する熱可塑性樹脂層を少なくとも1層有する厚み300μm以下、JIS Z9107記載のりん光輝度の評価方法における10分後の残光輝度が10mcd/m 以上である蓄光シートの製造方法であって、乾燥して水分率を500ppm以下にした平均粒子径が0.1〜10μmの蓄光顔料とポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂である熱可塑性樹脂とを溶融混練して蓄光顔料を含有する熱可塑性樹脂組成物を得て、該蓄光顔料を含有する熱可塑性樹脂組成物単独で又は該蓄光顔料を含有する熱可塑性樹脂組成物とポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂である熱可塑性樹脂と混合したものを乾燥して水分率を400ppm以下にして、Tダイスから溶融押出ししてシート化することを特徴とする蓄光シートの製造方法。
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