JP4389065B2 - Soi−mosfet - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、SOI(Silicon on Insulator)構造を有する完全空乏化MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Efect Transistor)デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
集積回路が大規模化され、動作するトランジスタが増加することにより、消費電力が増加して、発熱による動作速度の低下等を防止するため消費電力を減少させるための工夫が多くなされている。
そして、トランジスタの消費電力を低減する有効な方法のひとつは電源電圧を下げることである。
しかしながら、集積回路などの電源電圧を下げることにより、回路の動作速度が低下してしまう。
このため、電源電圧だけではなく、MOSFETのしきい値電圧を下げ、MOSFETのスイッチング速度を改善することで、回路の動作速度を下げずに消費電力を低減することが可能となる。
【0003】
しかし、近年の集積回路内のMOSFET数の増加により、MOSFETのサブスレショールド電流が集積回路の消費電力のかなりの部分を占めるようになっている。
したがって、回路速度を損なわずに低消費電力を実現するには、MOSFETの動作状況に応じたデバイス特性が求められている。
【0004】
MOSFETのスイッチングが高い頻度で起こる場合(この状態を本明細書内で動作時と呼ぶ)、MOSFETのスイッチングの際の消費電力が支配的となる。
一方、あまりスイッチングが起こらない(スイッチングが低い頻度起こる)場合(この状態を本文内で待機時と呼ぶ)、サブスレショールド電流が支配的となる。
【0005】
したがって、回路の動作速度を低下させずに、MOSFETの消費電力を減少させるには、待機時において、しきい値電圧を高くすることが望ましい。
そして、基板電位を変化させることによって、MOSFETのしきい値電圧を変調(変化)させることが知られている。この機構を利用して回路の利用状況に応じて動的にトランジスタのしきい値電圧を変化させるしきい値電圧可変CMOSFETが実現されている(特許文献1)。
【0006】
また、MOSFETのしきい値電圧の変調のしやすさは、以下の式で定義される基板バイアス係数γにより示される。
γ = ΔVth / ΔVbs …(1)
上記(1)式において、Vthはしきい値電圧(変数)であり、Vbsは基板電位(変数)を示し、Δは変数の微小変化量を表す。
【0007】
ここで、しきい値電圧を変化させるために、基板に所定の電圧を印加する場合、この印加する電圧の範囲は、半導体のpn接合の耐圧などの要因により制限されてしまう。このため、しきい値電圧の変調の範囲は、上記印加する電圧の範囲で規定されることとなる。
そして、MOSFETをしきい値電圧可変CMOSFETとして利用する場合、動作時と待機時とにおいて、サブスレショールド電力を変化させるため、ある程度の大きな基板バイアス係数を持つデバイスを用いることが要求される。
【0008】
ここで、基板バイアス係数が増大するとデバイスの性能が下がることが知られており、しきい値電圧の変調範囲とデバイスの性能はトレードオフの関係にある。
SOI基板上の完全空乏化デバイス(FD-SOI-MOSFET)においても、しきい値電圧可変CMOSが利用されている(非特許文献1)。
【0009】
【特許文献1】
特開平09−214332号公報
【非特許文献1】
T.Kachi, et al., "Variable Threshold-Voltage SOIMOSFETs with Implanted Back-Gate Electrodes for Power-Managed Low-Power and High-Speed sub-1-V ULSIs,"Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers,pp.124-125
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、基板空乏層容量を考慮しない場合FD(Fully Depleted)-SOI-MOSFET の基板バイアス係数は以下の式で与えられる。
γ=C/Cox=tox/((1/3)・tSOI+tBOX) …(2)
ここで、Cはチャネル以下の容量、Coxはゲート絶縁膜容量、toxは酸化膜換算でのゲート絶縁膜厚、tSOIはSOI膜厚、tBOXは埋め込み酸化膜厚をそれぞれ示している。
【0011】
そして、しきい値電圧可変CMOSFETの実現に対しては、FD-SOI-MOSFETを使用した場合、ある程度大きな基板バイアス係数を得るためには近年のデバイスのゲート絶縁膜厚を考えると、式(2)より埋め込み酸化膜(BOX)厚を薄くしなくてはならない。
一方、埋め込み酸化膜を薄くすると、以下の2つの理由でデバイスの特性が劣化することになる。
A.埋め込み酸化膜を薄くすると、縦方向電界が増大してキャリアの移動度が低下してしまい、MOSFETの電流供給能力が劣化してしまう。
B.埋め込み酸化膜を薄くすると、ドレイン領域と基板との間の寄生容量が増大し、この容量に対応した電荷を供給及び放電する必要があるため、回路を動作させると、遅延時間(充放電時間)が劣化してしまう。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、FD-SOI-MOSFETを利用して、しきい値電圧可変CMOSFETを実現する際、基板空乏層容量を変化させることにより、動作時において、低い基板バイアス係数により高駆動電流かつ低寄生容量のデバイスとして動作し、また待機時において、高い基板バイアス係数により、しきい値電圧を高くする変調を行うSOI-MOSFETを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のSOI-MOSFETは、半導体基板と、前記半導体表面に形成された絶縁層と、前記絶縁膜表面に形成され、素子形成領域及び素子分離領域とを有する半導体層と、前記素子形成領域に形成された第1の導電型の不純物が拡散されたチャンネル部と、第2の導電型の不純物によるソース及びドレインの拡散層と、該チャンネル部上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極とを有し、しきい値電圧の変化量が半導体基板電位の変化量により除算されて求められる、トランジスタの基板バイアス係数を、待機時に増加させ、動作時に低下させることを特徴とする。なお、SD−SOIの場合、上記基板バイアス係数は、前記絶縁膜容量,半導体層容量及び半導体基板容量の直列接続容量が、ゲート絶縁膜容量により除算されて求められる値とほぼ一致する。
【0014】
本発明のSOI-MOSFETは、前記絶縁膜下部の半導体層を空乏状態,反転状態,蓄積状態のいずれかとすることにより、前記基板バイアス係数を制御することを特徴とする。
【0015】
本発明のSOI-MOSFETは、前記絶縁膜が前記ゲート絶縁膜の50倍以下の厚さであることを特徴とする。
【0016】
本発明のSOI-MOSFETは、電極を介して前記半導体基板に印加する電圧を制御し、前記絶縁膜下部の半導体層を空乏状態と、反転状態または蓄積状態とのいずれかとすることを特徴とする。
【0017】
本発明のSOI-MOSFETは、前記絶縁膜下部の半導体層を空乏状態または反転状態のいずれかとする場合、半導体基板と異なる導電型の不純物による、反転に必要なキャリアを供給する拡散層が、該半導体層に設けられていることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、SOIを用いた完全空乏型MOSFET(以下、MOSFET)で構成され、半導体基板に印加する電圧を変化させて、この半導体基板の基板電位を変化させることにより、MOSFETのしきい値電圧を変調し、トレードオフの関係にある動作速度と消費電力とを調整する機能を持つMOSFETからなるLSI(Large Scale Integration)である。
【0019】
そして、本発明は、基板電位の電圧制御により、チャンネル部と半導体基板との電位差を変化させて、半導体基板の空乏層容量を変化させることにより(実質的には図1に示すように、空乏層(a)を発生させるか、蓄積層(b)または反転層(c)のいずれかを生成することにより)、基板バイアス係数を変化させている。図1はnチャンネル型のMOSFETの構造を示している。
(2)式によりチャンネル以下の容量Cが増加することにより、基板バイアス係数が増加することが判る。
【0020】
したがって、図1(a)の場合、
1/C=1/CSOI+1/CBOX+1/C …(3)
となり、SOI層,BOX層及び半導体基板の直列容量として、容量Cの数値が求められる。ここで、Cは、空乏層の容量であり、「ε(半導体基板の誘電率)/Wd(半導体基板表面の空乏層の厚さ)」で求められる。
また、図1(b),(c)の場合、
1/C=1/CSOI+1/CBOX …(4)
となり、となり、SOI層及びBOX層の直列容量として、容量Cの数値が求められる。
【0021】
この結果、動作時に基板バイアス係数を小さくする必要があるため、動作時に図1(a)のように、BOX層(Buried Oxide)を介したチャンネル部直下の半導体基板に空乏層(Depletion Layer)を形成させ、待機時に基板バイアス係数を大きくする必要があるため、待機時に図1(b),(c)のように、BOX層を介したチャンネル部直下の半導体基板に蓄積層(Accmulation)または反転層(Inversion Layer)を形成させれば良い。
【0022】
そして、図2に示すように、基板バイアス係数が小さい場合、駆動電流が大きくSファクタが小さい代わりに、ΔVthが小さいためサブスレショールド電流Ioffを待機時に抑えられないが、一方、基板バイアス係数が大きい場合、駆動電流が小さくSファクタが大きい代わりに、△Vthは大きいのでサブスレショールド電流Ioffを下げることができる。
ここで、Sファクタ(Sfactor)は、ゲート(gate)電圧の変化を、対数で示されるドレイン(Drain)電流(ドレイン−ソース(Source)間に流れる電流)の変化で除算した係数として定義されている。
【0023】
したがって、本発明においては、大きなしきい値電圧変調範囲を保ったまま、待機時に基板バイアス係数を増加させ、サブスレショールド電流を低下させ、動作時に基板バイアス係数を低下させ、基板バイアス効果の影響による駆動電流の減少、すなわちMOSFETの性能劣化を抑制し、かつ寄生容量を抑制して、動作時の動作速度を改善する。
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図3は、第1の実施形態のSOIMOSFETの構造の一例を示す断面図である。また、CMOSFETであり、pチャンネル型MOSFETと、nチャンネル型MOSFETとが同一基板上に形成されている。
半導体の基板Sの表面部に、n型の拡散層からなるバックゲート1と、p型の拡散層からなるバックゲート2とが形成されている。そして、バックゲート1及び2の表面に埋込酸化膜(BOX層)3a,3b,3cが形成されている。ここで、基板Sの導電性は、n型またはp型のいずれでも良いが、本実施形態においてはp型を用いて説明する。
【0025】
pチャンネル型MOSFETの構造から説明する。
n型の不純物が拡散されたバックゲート1の上部の素子形成領域に、埋込酸化膜3aを介して、n型の不純物が拡散されたチャンネル部4が形成されている。そして、このチャンネル部4の各端部がp型の拡散層として、ソース4a及びドレイン4bが形成されている。チャンネル部4の表面にゲート絶縁膜14が形成され、このゲート絶縁膜14の表面にゲート電極6が形成されている。
また、n型の拡散層10は、バックゲート1と金属電極16とのオーミック接合のために設けられている。p型の拡散層8は埋込酸化膜3a直下のバックゲート1の表面に反転層を形成するときに、キャリア(この場合、正孔)を供給して、短時間に反転層を形成するために設けられている。拡散層8と拡散層10とは、電極16により電気的に接続されて同電位とされている。
【0026】
次に、nチャンネル型MOSFETの構造を説明する。
p型の不純物が拡散されたバックゲート2の上部の素子形成領域に、埋込酸化膜3bを介して、p型の不純物が拡散されたチャンネル部5が形成されている。そして、このチャンネル部5の各端部がn型の拡散層として、ソース5a及びドレイン5bが形成されている。チャンネル部5の表面にゲート絶縁膜15が形成され、このゲート絶縁膜15の表面にゲート電極7が形成されている。
また、p型の拡散層11は、バックゲート2と金属電極17との接合の抵抗値を低下させるために設けられている。n型の拡散層9は埋込酸化膜3b直下のバックゲート2の表面に反転層を形成するときに、キャリア(この場合、電子)を供給して、短時間に反転層を形成するために設けられている。拡散層9と拡散層11とは、電極17により電気的に接続されて同電位とされている。
【0027】
上述した、pチャンネル型MOSFETとnチャンネル型MOSFETとは、素子分離領域により分離されている。バックゲート1及び2の接続部分に所定の幅の溝を形成して、この溝に埋込酸化膜3cを形成するため、バックゲート1及び2の表面に形成される反転層が接続して、リーク電流が流れることを防止している。また、n型の埋込層12とp型の埋込層13とを形成して、該当部分の反転層を形成し難くしている。
ここで、埋込酸化膜3a及び3bの厚さは、基板バイアス係数が大きく取れる厚さとする必要がある。また、バックゲート1及び2の表面が空乏化して空乏層が形成された場合に、埋込酸化膜3aまたは3bと、上記空乏層の容量の直列容量のうち、空乏層容量が支配的になる程度の不純物濃度の薄いバックゲート1及び2が必要となる(以下で説明)。
【0028】
次に、本発明の第1の実施形態のMOSFETの動作原理を説明する。この第1の実施形態によるMOSFETは、半導体基板におけるキャリアの蓄積を用いず、半導体基板の反転と空乏との基板バイアス係数の違いを用いる形態である。
半導体基板が反転状態となった場合、半導体基板(バックゲート1または2)の容量Cは無視することができるようになるため、図1(c)に示すように、容量Cは、埋込酸化膜(3aまたは3b)の容量CBOXと、SOI基板(チャンネル部4または5)との直列接続にほぼ等しくなる。
一方、半導体基板が空乏状態となった場合、半導体基板(バックゲート1または2)の容量Cは無視することができず、図1(a)に示すように、容量Cは、埋込酸化膜(3aまたは3b)の容量CBOXと、SOI基板(チャンネル部4または5)と、容量Cの直列接続にほぼ等しくなる。
これはMOSキャパシタ特性との類似によって説明できる(たとえばYuan Taur, Tak H. Ning. Fundamentals of Modern VLSI Devices, pp.71など)。
【0029】
上述した半導体基板が反転状態である場合と空乏状態である場合の違いを利用することによって、半導体基板を空乏状態にして容量Cを小さくすることにより基板バイアス係数を抑制できる(低下させられる)。
一方、半導体基板を反転状態とすることにより、容量Cは容量CBOXと容量CSOIとの直列接続された容量と等しくなり、容量COXと容量Cとの比率により、基板バイアス係数が決定することになる。したがって、容量Cが容量COXに比較して、それほど小さくない場合、半導体基板反転時に大きな基板バイアス係数を得ることができる。
【0030】
このような条件を満たす条件として、ゲート絶縁膜(14,15)の膜厚が酸化膜換算で1nm程度の場合には埋込酸化膜(3a,3b)の膜厚は50nm 以下が望ましい。すなわち、埋込酸化膜の膜厚をゲート絶縁膜の膜厚の50倍以内と限定する。ここで、ゲート絶縁膜の厚さは、シリコン酸化膜換算の厚さとする。
埋込酸化膜の膜厚をゲート絶縁膜の膜厚の50倍以内と限定する根拠として、本方式を適用する低消費電力回路においては、待機時電流(サブスレショールド電流)を抑制するため、待機時のしきい値電圧を動作時より最低でも0.1V以上高く設定する必要がある。すなわち、ΔVth > 0.1Vとする。
【0031】
一方、半導体基板に印加できる電圧は、回路的には5V程度以内と考えられる。すなわち、ΔVbs < 5Vである。そして、基板バイアス係数γは、
γ = ΔVth / ΔVbs
により与えられるため、基板バイアス係数γの値は、最低でも0.02の数値が必要である。本方式においては、待機時と動作時とでγの値を変化させるが、待機時の基板バイアス係数γの値を0.02以上に設定する必要がある。
【0032】
また、基板バイアス係数γの値は、ゲート絶縁膜の厚さと埋込酸化膜の厚さの比でほぼ与えられる(SOIの膜厚は薄いのでその影響は無視できるとした場合)。
従って、γ > 0.02を得るためには、埋込酸化膜の厚さは、ゲート絶縁膜の厚さの50倍以内にする必要がある。さらに、埋込酸化膜と半導体基板部との直列容量が、半導体基板の状態(空乏状態、蓄積状態または反転状態)により十分大きく変化する必要があるため、半導体基板の不純物濃度は空乏層容量が酸化膜換算で100nm程度を確保できる程度の濃度(1×1016/cm以下)が望ましい。
【0033】
また、半導体基板(バックゲート1,2)の基板電位を印加する拡散層(10,11)に加えて、待機時に半導体基板と埋込酸化膜との界面(半導体基板側)に反転層を形成させるために、nチャンネル型MOSFETにはn型の拡散層8を、pチャンネル型MOSFETには、p型の拡散層9を用意する。
これら、拡散層10及び8と、拡散層11及び9とは、各々、別々の電圧を印加する場合と、同電圧を印加する場合とがある。
上述してきた、本発明の第1の実施形態のMOSFETを、しきい値電圧可変CMOSと同様に複数の動作モードで動作させる。
【0034】
以下の動作として、nチャンネル型MOSFET(バックゲート2はp型の拡散層)を例にとり説明する。(トランジスタを駆動する電源電圧が1Vの場合)本発明の第1の実施形態によるFD-SOI-MOSFETにおいて、バックゲート1(半導体基板)の基板バイアス係数は(2)式で求められる。
・動作状態(バックゲート2の基板電位を1V〜0Vとする)
動作時には消費電力よりMOSFETのスイッチング速度を優先させるモードである。
バックゲート2の表面に空乏層が形成され、図1(a)の状態となり、容量Cが小さくなることから、(2)式により判るように基板バイアス係数が低下する。この結果、駆動電流が増加し、ドレインとバックゲート2(半導体基板)との間の寄生容量が減少し、MOSFETのスイッチング速度が上昇する。このとき、同時にスイッチングがオフ時のリーク電流も増加する。
【0035】
上述したように、pチャンネル型のMOSFETには正の、nチャンネル型のMOSFETには負の方向に電圧を、各々のバックゲート1及びバックゲート2に印加することにより、nチャンネル型のMOSFETのしきい値電圧を高くし、pチャンネル型のMOSFETのしきい値電圧(絶対値)も上げることができる。
ここで、半導体基板が空乏する条件は、nチャンネル型のMOSFETの場合基板電圧が1V〜0V程度で、pチャンネル型のMOSFETの場合0〜1V程度であり、限界まで駆動電流が得られる基板電圧の条件と基板が空乏する条件が重なっているので、動作時の条件として非常によい。
【0036】
・待機状態(バックゲート2の基板電位を−2V以下とする)
スイッチング速度よりも消費電力(サブスレショールド電流による)の抑制を優先するモードである。
バックゲート2の表面に反転層が形成され、図1(c)の状態となり、容量Cが大きくなることから、(2)式により判るように基板バイアス係数が上昇する。この結果、同時にMOSFETのスイッチングがオフ時のリーク電流(サブスレショールド電流)も減少する。一方、ドレインとバックゲート2(半導体基板)との間の寄生容量が増加するが、待機時なので問題がない。
【0037】
埋込酸化膜と半導体基板との界面(半導体基板側)が反転状態となる条件は、nチャンネル型のMOSFETで基板電位(バックゲート2の電位)を−2V以下、pチャンネル型のMOSFETで基板電位(バックゲート1の電位)を+3V以上をそれぞれ印加する。このとき、基板バイアス係数が増大する条件と、待機時の基板電位の条件は一致する。
【0038】
上述してきたように、半導体基板の基板電位を制御するために半導体基板に印加する電圧と、基板バイアス係数との条件の組み合わせを用いると、動作時には、半導体基板を空乏状態とする基板電位とし、待機時に比較して、基板バイアス係数を低下させることにより、既存のしきい値電圧可変MOSFETに比較して駆動電流を増加させることができ、また拡散層4b,5b(ドレイン)と半導体基板との間の寄生容量を低減させることにより、回路動作の速度を向上させることが可能となる。
一方、待機時には、半導体基板を反転状態とする基板電位とし、動作時に比較して、大きな基板バイアス係数を得ることができ、しきい値電圧を上げ、サブショールド電流を抑制して、待機電力を減少させることができる。
【0039】
次に、本発明の第1の実施形態の基板電位と基板バイアス係数との関係を図4に示す。上記関係を示すデータはシミュレータとして「Synopsys,Inc社のMEDICI」を用いて求めたものである。横軸が半導体基板の基板電位Vsub(単位V)であり、縦軸がしきい値電圧Vth(単位V)である。トランジスタのタイプはnチャンネル型MOSFET。
【0040】
サンプルとしては、タイプA,B,Cの3種類があり、各々、埋込酸化膜(3b)及び半導体基板(バックゲート2)を以下の条件としている。タイプCが本発明の構成である。
・タイプA(マーク●)
埋込酸化膜(BOX層)の膜厚:10nm、半導体基板の濃度:1×1020/cm
・タイプB(マーク+)
埋込酸化膜の膜厚:100nm、半導体基板の濃度:1×1020/cm
・タイプC(マーク□)
埋込酸化膜の膜厚:10nm、半導体基板の濃度:1×1015/cm
【0041】
シミュレーションの結果から、0V〜1Vの範囲において、0V以下及び1V以上の範囲に比較して、基板電位の変化に対してしきい値電圧の変化が小さくなっているため、タイプCの基板バイアス係数が大きく減少していることが判る。一方、タイプA,BはタイプCのように、基板電位変化において、基板バイアス係数が大きく変化する領域はない。タイプAはタイプCと埋込酸化膜の膜厚は等しいが、半導体基板の不純物濃度は高いため、基板バイアス係数は高いままである。
【0042】
また、タイプBは、埋込酸化膜の膜厚は厚いため、基板バイアス係数は低いままである。この結果から、本発明のSOI−MOSFETの埋込酸化膜の膜厚と半導体基板の不純物濃度との構成が、基板電位による基板バイアス係数の変化を効果的に生じさせることが判る。また、この図から、上述の埋込酸化膜の膜厚と半導体基板の不純物濃度との関係の場合には、動作時に半導体基板の基板電位を0〜1Vの範囲とし、待機時に半導体基板の基板電位を0V以下とすれば良いことが判る。
図示はしていないが、pチャンネル型MOSFETも同様の傾向を示す。
【0043】
図4において、tBOXは埋込酸化膜の膜厚であり、Nsubはp型の半導体基板(バックゲート2)の不純物濃度を示している。
また、タイプA〜Cの共通パラメータとして、MOSFETのチャンネル長Lは500nmであり、ゲート絶縁膜の膜厚toxは1.3nmであり、SOI基板(チャンネル部5)の厚さtSOIは5nmであり、SOI基板の不純物濃度(p型)Nchは5×1018/cmであり、電源電圧VDDは1.0Vである。
【0044】
次に、本発明の第1の実施形態の特性を図5に示す。上記関係を示すデータは、図4の場合と同様に、シミュレータとして「Synopsys,Inc社のMEDICI」を用いて求めたものである。横軸がスイッチングにおいてオン状態(ゲート及びソース間の電圧Vgsが1V)におけるドレイン電流Ion(単位μA/μm)であり、縦軸がスイッチングにおいてオフ状態(ゲート及びソース間の電圧Vgsが0V)におけるサブスレショールド電流Ioff(単位A/μm)である。トランジスタのタイプは図4と同様にnチャンネル型MOSFET。サンプルとしては、図4の場合と同様にタイプA,B,Cを用いている。
【0045】
図5において、「Depleted」と示された領域が、基板電位が0〜1Vの空乏層が形成されている動作状態に適した、基板バイアス係数が低い領域であり、一方、「Inverted」と示された領域が、基板電位が0V以下の反転層が形成されている待機状態に適した、基板バイアス係数が高い領域である。図から判るように、タイプCは「Depleted」の領域ではタイプBと同等のドレイン電流が得られ、かつ「Inverted」の領域ではタイプAと同等のサブスレショールド電流となっており、本発明のSOI−MOSFETが、基板電位を制御して、基板バイアス係数を調整することにより、動作時に高い駆動電流(ドレイン電流)を満足させ、かつ待機時に低いサブッスレショールド電流を実現させていることが判る。
【0046】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態のSOIMOSFETの構造の一例を示す断面図である。図2と同様に、CMOSFETであり、pチャンネル型MOSFETと、nチャンネル型MOSFETとが同一基板(例えば、n型基板)、すなわち基板S上に形成されている。
半導体の基板S(導電性はn型またはp型のいずれでも良い)の表面部に、p型の拡散層からなるバックゲート21と、n型の拡散層からなるバックゲート22とが形成されている。そして、バックゲート21及び22の表面に埋込酸化膜(BOX層)23a,23b,23cが形成されている。また、バックゲート21及び22と基板Sとの間には、バックゲート21と基板Sとがpn接合を形成し順方向電流が流れないようにするため、所定の厚さの絶縁膜50(例えば、酸化膜)が形成されている。
【0047】
pチャンネル型MOSFETの構造から説明する。
p型の不純物が拡散されたバックゲート21の上部の素子形成領域に、埋込酸化膜23aを介して、n型の不純物が拡散されたチャンネル部24が形成されている。そして、このチャンネル部24の各端部がp型の拡散層として、ソース24a及びドレイン24bが形成されている。チャンネル部24の表面にゲート絶縁膜34が形成され、このゲート絶縁膜34の表面にゲート電極26が形成されている。
また、p型の拡散層28は、バックゲート21と金属電極36との接合部の抵抗を減少させるために設けられている。
【0048】
次に、nチャンネル型MOSFETの構造を説明する。
n型の不純物が拡散されたバックゲート22の上部の素子形成領域に、埋込酸化膜23bを介して、p型の不純物が拡散されたチャンネル部25が形成されている。そして、このチャンネル部25の各端部がn型の拡散層として、ソース25a及びドレイン25bが形成されている。チャンネル部25の表面にゲート絶縁膜35が形成され、このゲート絶縁膜35の表面にゲート電極27が形成されている。
また、n型の拡散層29は、バックゲート2と金属電極37との接合をオーミック接合とするために設けられている。
【0049】
上述した、pチャンネル型MOSFETとnチャンネル型MOSFETとは、素子分離領域により分離されている。第2の実施形態の場合、待機時に基板電位としてバックゲート21(p型)に正方向の電圧をかけ、バックゲート22(n型)に正の方向の電圧をかけるため、これらのバックゲート間、すなわちpn接合において、順バイアスの状態が生じる。このため、バックゲート間の素子分離を完全とし、pn接合が形成されないような構造にする必要がある。
【0050】
したがって、バックゲート21及び22の接続部分に、バックゲート21及び22を完全に分離する深さの溝を、所定の幅により形成して、この溝に埋込酸化膜23c(STI)を形成するため、バックゲート1及び2が順方向の電位となるために流れる順方向電流が流れることを防止している。
【0051】
ここで、埋込酸化膜23a及び23bの厚さは、図2の構造と同様に基板バイアス係数が大きく取れる厚さとする必要がある。また、バックゲート21及び22の表面が空乏化して空乏層が形成された場合に、埋込酸化膜23aまたは23bと、上記空乏層の容量の直列容量のうち、空乏層容量が支配的になる程度の不純物濃度の薄いバックゲート21及び22が必要となる。
上述したように、第2の実施形態は、pチャンネル型MOSFETをp型の不純物が拡散されたバックゲート21上に形成し、nチャンネル型MOSFETをn型の不純物が拡散されたバックゲート上に形成し、埋込酸化膜23cによりバックゲート21及び22を完全に分離した以外、第1の実施形態と同様の構造である。
【0052】
半導体基板が蓄積状態となった場合、半導体基板(バックゲート21または22)の容量Cは無視することができるようになるため、図1(b)に示すように、容量Cは、埋込酸化膜(23aまたは23b)の容量CBOXと、SOI基板(チャンネル部24または25)との直列接続にほぼ等しくなる。
一方、半導体基板が空乏状態となった場合、半導体基板(バックゲート21または22)の容量Cは無視することができず、図1(a)に示すように、容量Cは、埋込酸化膜(23aまたは23b)の容量CBOXと、SOI基板(チャンネル部4または5)と、容量Cの直列接続にほぼ等しくなる。
上述した半導体基板が蓄積状態である場合と空乏状態である場合の違いを利用することによって、半導体基板を空乏状態にして容量Cを小さくすることにより基板バイアス係数を抑制できる(低下させられる)。
また、半導体基板を蓄積状態にすることにより、容量Cは容量CBOXと容量CSOIとの直列接続された容量と等しくなり、容量COXと容量Cとの比率により、基板バイアス係数が決定されることになる。
したがって、第1の実施形態と同様に、容量Cが容量COXに比較して、それほど小さくない場合、大きな基板バイアス係数を得ることができる。
【0053】
上述してきた、本発明の第2の実施形態のMOSFETを、しきい値電圧可変CMOSと同様に複数の動作モードで動作させる。
以下の動作として、nチャンネル型MOSFET(バックゲート22はn型の拡散層)を例にとり説明する。
本発明の第2の実施形態によるFD-SOI-MOSFETにおいて、バックゲート22(半導体基板)の基板バイアス係数は(2)式で求められる。
・動作状態(バックゲート1の基板電位を1V〜0Vとする)
動作時には消費電力よりMOSFETのスイッチング速度を優先させるモードである。
バックゲート1の表面に空乏層が形成され、図1(a)の状態となり、容量Cが小さくなることから、(2)式により判るように基板バイアス係数が低下する。この結果、駆動電流が増加し、ドレインとバックゲート22(半導体基板)との間の寄生容量が減少し、MOSFETのスイッチング速度が上昇する。このとき、同時にスイッチングがオフ時のリーク電流も増加する。
【0054】
上述したように、pチャンネル型のMOSFETには正の、nチャンネル型のMOSFETには負の方向に電圧を、各々のバックゲート21及びバックゲート22に印加することにより、nチャンネル型のMOSFETのしきい値電圧を高くし、pチャンネル型のMOSFETのしきい値電圧(絶対値)も上げることができる。
ここで、半導体基板が空乏する条件は、nチャンネル型のMOSFETの場合基板電圧が1V〜0V程度で、pチャンネル型のMOSFETの場合0〜1V程度である。
【0055】
・待機状態(バックゲート22の基板電位を0V以下(負の電位)とする)
スイッチング速度よりも消費電力(サブスレショールド電流による)の抑制を優先するモードである。
バックゲート22の表面に蓄積層が形成され、図1(b)の状態となり、容量Cが大きくなることから、(2)式により判るように基板バイアス係数が上昇する。この結果、同時にMOSFETのスイッチングがオフ時のリーク電流(サブスレショールド電流)も減少する。一方、ドレインとバックゲート22(半導体基板)との間の寄生容量が増加するが、待機時なので問題ない。
【0056】
埋込酸化膜と半導体基板との界面(半導体基板側)が蓄積状態となる条件は、nチャンネル型のMOSFETで基板電位を0V以下(負電圧を印加)とし、pチャンネル型のMOSFETで基板電位を+1V以上をそれぞれ印加する。このとき、基板バイアス係数が増大する条件と、待機時の基板電位の条件は一致する。
上述したように、本発明の第2の実施形態は、半導体基板を空乏状態とするとき、基板電位の条件が第1の実施形態と比較して、nチャンネル型MOSFETにおいて、より正の方向となり、pチャンネル型MOSFETにおいて、より負の方向となる。
【0057】
しかしながら、バックゲート21及び22の間で完全な素子分離を行っているため、バックゲート間でpn接合を考慮に入れる必要がない。
このため、第2の実施形態は、第1の実施形態の効果に加えて、動作時の駆動電流(ドレイン電流)が増加する方向に半導体基板に電圧を印加することができる。また、待機時に蓄積層を利用して基板バイアス係数を変化させるため、キャリアを供給する拡散層を設ける必要がない。
【0058】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
第1または第2の実施形態のMOSFETを用いたLSIを作成した場合、このLSIの内部回路の待機時及び動作時を検出して、基板電位を調整する制御回路を、上記LSIに搭載する。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるMOSFETによれば、下記の効果を得ることができる。
・大きな基板バイアス係数が不必要な動作時において、半導体基板の基板バイアス係数を小さくすることにより、MOSFETの駆動電流(ドレイン)を増加させ、大きな基板バイアス係数が必要な待機時において、半導体基板の基板バイアス係数を大きくすることにより、サブスレショールド特性を改善できる。
【0060】
・しきい値可変とするために、埋込酸化膜を所定の薄さに形成しても、基板電位を制御することにより、動作時において、容易に半導体基板を空乏させることが可能であるため、埋込酸化膜の厚さが薄くなることにより、ドレインと半導体基板との間の寄生容量の増加を抑制することができ、その結果トランジスタのスイッチング速度が向上する。
【0061】
・埋込酸化膜と半導体基板との間の界面を反転させ、半導体基板の空乏層容量を遮断する構造を持たせることにより、待機時において、基板空乏層容量が影響する場合に比べて基板バイアス係数を大きくすることができる。
【0062】
・基板電位を調整して、基板バイアス係数を状況に応じて切り替える機能を持たせることにより、高い基板バイアス係数によりサブスレショールド電圧を減少させたり、低い基板バイアス係数によりドレイン電流を増加させたり、待機時及び動作時の状況に応じて選択できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 MOSFET(半導体装置)の断面を示す概念図であり、空乏層,蓄積層及び反転層が形成された場合のCの変化を示している。
【図2】 基板バイアス係数とドレイン電流との関係を示した図であり、横軸がドレイン電圧、縦軸がドレイン電流を対数に変換した数値である。
【図3】 本発明の第1の実施形態によるSOI−MOSFETの構造を示す断面図である。
【図4】 第1の実施形態のSOI−MOSFETにおける基板電位(横軸)としきい値電圧(縦軸)との関係を示すグラフである。
【図5】 第1の実施形態のSOI−MOSFETにおける動作時のドレイン電流(横軸)と待機時のサブスレショールド電流(縦軸)との関係を示すグラフである。
【図6】 本発明の第2の実施形態によるSOI−MOSFETの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1,22 バックゲート(n型)
2,21 バックゲート(p型)
3a,3b,3c,23a,23b,23c 埋込酸化膜
4,5,24,25 チャンネル部
4a,5a,24a,25a ソース
4b,5b,24b,25b ドレイン
6,7,26,27 ゲート電極
8,11,28 拡散層(p型)
9,10,29 拡散層(n型)
14,15,34,35 ゲート絶縁膜
16,17,36,37 電極
50 絶縁膜
S 基板

Claims (3)

  1. SOI構造を有する完全空乏化MOSFETであり、
    半導体基板と、
    前記半導体基板表面に形成された絶縁と、
    前記絶縁膜表面に形成され、素子形成領域及び素子分離領域とを有する半導体層と、
    前記素子形成領域に形成された第1の導電型の不純物が拡散されたチャンネル部と、
    第2の導電型の不純物によるソース及びドレインの拡散層と、
    該チャンネル部上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と
    を有し、
    電極を介して前記半導体基板に印加する電圧を制御し、該半導体基板を空乏状態とすることにより動作時の基板バイアス係数を増加させ、また、該半導体基板を反転状態または蓄積状態とすることにより、待機時の基板バイアス係数を低下させることを特徴とするSOI−MOSFET。
  2. 前記絶縁膜が前記ゲート絶縁膜の50倍以下の厚さであることを特徴とする請求項1に記載のSOI−MOSFET。
  3. 前記半導体基板を空乏状態または反転状態のいずれかとする場合、当該半導体基板と異なる導電型の不純物による、反転に必要なキャリアを供給する拡散層が、該半導体基板に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のSOI−MOSFET。
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