JP4388669B2 - 電界放出陰極の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、電界放出陰極の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、低コストで大面積化が可能な電界放出陰極の製造方法に関する。本発明は、半導体素子と比較して、電子の移動度が大きく、高速・高温で動作可能であり、放射線による損傷にも強いため、放射線環境(宇宙、原子炉等)や高温環境下でも使用可能なマイクロウェーブ素子、超高速演算素子、表示素子等の電界放出陰極を備えた素子へ好適に応用することができる。
【0002】
【従来の技術】
真空マイクロデバイスに用いられる電界放出陰極の構造を図1に示す。この図によれば、電界放出陰極は、尖ったコーン状のエミッタティップ1、エミッタティップ1への給電線としてのエミッタ電極2、絶縁膜3を介してエミッタ電極上に形成された電子引き出し用のゲート電極4とにより構成されている。この電界放出陰極は、エミッタ電極2とゲート電極4間に電圧を印加することで、エミッタティップ1の先端に大きな電界が加わり、電子5の放出を起こす。
【0003】
電界放出陰極を用いた表示装置であるフラットパネルディスプレイの構造を図2に示す。このディスプレイは、基板11上に、ストライプ状のエミッタ電極12を備え、その上に絶縁膜13を介して、エミッタ電極12と直交するストライプ状のゲート電極14を備えている。エミッタ電極12とゲート電極14との交点には、給電線が露出する開口部を備え、開口部内のエミッタ電極上にはエミッタティップ15が形成されている。
【0004】
電界放出陰極上には、所定の距離を置いて、電界放出陰極側の表面に蛍光体層16を備えた透明基板17が配置されている。電界放出陰極から放出された電子は、蛍光体層16に当り、蛍光体層16を発光させ、その発光により文字等が表示できる。
【0005】
電界放出陰極の製造方法としては、スピント等が開発した方法が用いられることが多い(GA. Spindt et. al. J. Appl. Phys. 47(1976) p.5248参照)。この方法の概要を図3(a)〜(f)に示すと共に以下で説明する。
1.はじめに基板21上にエミッタティップに給電するためのエミッタ電極形成用の金属膜を基板上に形成する。
2.金属膜をパターニングすることでストライプ状のエミッタ電極22を形成する(図3(a)参照)。
3.全面に絶縁膜23をプラズマCVD法等により形成する。
【0006】
4.絶縁膜23上にゲート電極形成用の金属膜24aを蒸着する(図3(b)参照)。この金属膜24a上にレジスト層を塗布により形成し、ストライプ状のゲート電極を形成するための領域を覆い、エミッタティップの形成を所望する部位に開口部を有するレジストマスクを形成するために、レジスト層を露光・現像する。このレジストマスクを用いて、開口部のゲート電極形成用の金属膜24a及び絶縁膜23を、RIE法や、フッ酸によるエッチング法等の方法により除去して、エミッタ電極22を露出させる。この結果、エミッタティップ形成用の開口部とゲート電極24が形成される(図3(c)参照)。この後、レジストマスクを除去する。この方法により形成される開口部は、約1μmの直径を有している。
【0007】
5.ゲート電極24上に犠性層25を斜め蒸着法により形成する(図3(d)参照)。
6.エミッタティップ26をエミッタ電極22上に蒸着法により形成する。この時、蒸着が進むにつれて、エミッタティップ形成用の金属膜26aの開口部の径が徐々に小さくなり、塞がった時点で最終的にエミッタ電極22上にエミッタティップ26が形成される(図3(e)参照)。
7.犠牲層25をエッチングにより除去することで、ゲート電極24上に堆積したエミッタティップ形成用の金属膜26aをリフトオフにより除去する(図3(f)参照)。
以上の工程により電界放出陰極を製造することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにゲート電極及びエミッタ電極は、スパッタ蒸着法や真空加熱蒸着法等の真空法により形成され、絶縁膜は、CVD法等により形成されている。これら方法は、いずれも真空環境を必要とするため、低コスト化が困難であるという問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、基板上に、絶縁膜又は導電膜を少なくとも備えた電界放出陰極の製造方法であって、絶縁膜又は導電膜が金属酸化物膜からなり、金属酸化物膜が、それを構成する金属の脂肪族酸塩を含む塗布組成物を所望の部位に塗布して一次膜を形成し、一次膜を熱分解することにより形成されることを特徴とする電界放出陰極の製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の電界放出陰極の製造方法によれば、金属酸化物膜からなり、電界放出陰極を構成する絶縁膜又は導電膜を、金属酸化物膜を構成する金属の脂肪族酸塩又はアルコキシドを含む塗布組成物を基板の所望の部位に塗布して一次膜を形成し、一次膜を熱分解することにより形成するので、真空環境を必要とする蒸着法のような真空法より、製造コストを低く押さえることができる。以下では、本発明の形成方法を、塗布熱分解法と称する。
【0011】
また、上記塗布熱分解法で形成した絶縁膜の断面構造は、真空法により形成された膜の構造と異なっている。即ち、真空法では柱状の構造の膜が形成されるが、本発明では粒子の集合体であり、粒子の界面には多数の空隙が存在する。そのため、従来と本発明の膜を同じ厚さで比べた場合、本発明の膜の密度は、従来の膜の80±5%となる。この結果は材料に依存しないことを発明者等は確認している。
【0012】
ここで、空隙には膜の形成時の雰囲気ガスが封入されているが、この雰囲気ガスを空気であると仮定した場合、従来と同じ種類で同じ厚さの絶縁膜と比較すると、本発明の絶縁膜は、20/(13+3ε)〜4/(3+ε)倍の比誘電率を有することとなる(ε:従来の真空法で形成された膜の比誘電率、空気の比誘電率:1)。例えば、従来の真空法でSiO2膜を形成すると比誘電率が4となるが、本発明の方法ではその0.57〜0.69倍(比誘電率約2.28〜2.76)にすることができる。
【0013】
電界放出陰極は、通常エミッタ電極とゲート電極が絶縁膜を介して対向するように配置されることから、電極間の容量は絶縁膜の誘電率に比例して小さくなる。このため、本発明の方法により絶縁膜を形成すれば、電界放出陰極を平面状に多数並べて表示装置を形成し、それを駆動させた場合、表示装置のもつ時定数は、誘電率が小さくなるに伴って小さくなる。その結果、応答速度を速くすることが可能となる。また、絶縁膜により無効電力となる電力も小さくすることができる。
以下、本発明の電界放出陰極の製造方法を詳細に説明する。
【0014】
本発明の塗布熱分解法による製造方法は、電界放出陰極を構成する金属酸化物膜からなる絶縁膜又は導電膜の形成に使用できる。ここで、絶縁膜としては、エミッタ電極とゲート電極間に存在する絶縁膜等が挙げられ、導電膜としては、エミッタ電極、ゲート電極等が挙げられる。なお、本発明は、絶縁膜及び導電膜の内、どちらか一方が本発明の方法で形成されていれば足りる。よって、他方は公知の方法で形成することができる。
【0015】
ここで、本発明の方法を使用しうる電界放出陰極は、例えば、基板上に形成されたエミッタ電極、エミッタ電極上に絶縁膜を介して形成されたゲート電極、絶縁膜及びゲート電極に形成されたエミッタ電極が露出する開口部、開口部のエミッタ電極上に形成されたエミッタティップとから構成される。この電界放出陰極は、基板に対して垂線方向に電子が放出されるが、基板に対して平行な方向に電子を放出する構成にも、本発明を使用することができる。その構成としては、基板上に所定幅開けて形成されたゲート電極とエミッタ電極、エミッタ電極のゲート電極側の基板上に、ゲート電極と接しないように形成されたエミッタティップとからなる構成が挙げられる。
次に、塗布熱分解法について説明する。
【0016】
塗布熱分解法に使用される金属の脂肪族酸塩又はアルコキシドとしては、所望する金属酸化物を形成することができさえすれば、特に限定されない。
金属アルコキシドとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等の低級アルコールと金属とのアルコキシドが挙げられる。
【0017】
脂肪族酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸や、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族酸を構成する炭素鎖は、飽和でも、不飽和でもよい。更に、炭素鎖には置換基が存在していてもよい。置換基の種類は特に限定されないが、脂肪族酸の分解時に残存しやすいものは好ましくない。
より具体的には、飽和脂肪族モノカルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、n−ウンデシレン酸、ラウリン酸、n−トリデシレン酸、ミリスチン酸、n−ペンタデシレン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0018】
不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、アクリル酸、ブテン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデセン酸等のオレフィンモノカルボン酸、プロピオール酸、テトロール酸、エチルプロピオール酸、プロピルプロピオール酸、ブチルプロピオール酸、アミルプロピオール酸、ウンデシン酸、ステアロール酸等のアセチレンモノカルボン酸、ペンタジエン酸、ジアリル酢酸、ゲラニウム酸、デカジエン酸等のジオレフィンモノカルボン酸、オクタトリエン酸、リノレン酸、オレイン酸等の高度不飽和モノカルボン酸が挙げられる。
【0019】
飽和脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等が挙げられる。
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、ブテン二酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、ジヒドロムコン酸等のオレフィンジカルボン酸、ムコン酸のようなジオレフィンジカルボン酸が挙げられる。
【0020】
本発明では、脂肪族酸と金属との塩が好ましい。その理由は、脂肪族酸塩は、加熱により分解しやすく、溶剤溶解性が高く、取り扱いが容易(安全性も含めて)であり、安価であり、多くの金属との塩の合成が容易であるという性質を有しているからである。更に、脂肪族酸の内、炭素数2〜19の飽和脂肪族モノカルボン酸を使用することが好ましい。
【0021】
上記金属の脂肪族酸塩又はアルコキシドからなる一次膜は、その材料を含む塗布組成物を基板上に塗布等の方法で形成することができる。ここで、塗布組成物とは、ペースト又は溶液を意味している。また、作業性が良好な粘度に塗布組成物の粘度を調整するために、塗布組成物には、メタノール、エタノール、トルエン等の有機溶媒や、プロピレングリコールモノエチルアセテートのような増粘剤を加えてもよい。有機溶媒を加えた場合は、塗布後、熱処理して、溶媒を除去することが好ましい。
【0022】
更に、上記一次膜の所望の位置への形成方法は、
(1)一次膜の形成前に、金属酸化物膜の形成を所望する部位に開口部を有するレジストマスクをリソグラフィー法で形成し、レジストマスクの開口部にのみ一次膜を形成し、レジストマスクを除去する方法、
(2)印刷法により所望の位置のみへ塗布する方法、
(3)一旦全面に塗布した後、所望の位置のみが残存するようにエッチングする方法等が挙げられる。
【0023】
上記一次膜の厚さは、熱分解により95〜60%程度減少するため、この減少を考慮して決定することが好ましい。具体的には、0.1〜2μmであることが好ましい。より具体的には、絶縁膜の場合、形成される金属酸化物膜の誘電率によっても異なるが、0.5〜1.7μmであることが好ましい。導電膜の場合、形成される金属酸化物膜の導電性によっても異なるが、0.1〜0.8μmであることが好ましい。
【0024】
次に、上記一次膜は熱分解に付される。熱分解は、金属の脂肪族酸塩又はアルコキシドの分解温度に依存するが、400〜600℃で300〜600分間(キープ時間)行うことが好ましい。また、熱分解は、不活性雰囲気下で行ってもよいが、加熱時間の短縮のために、空気中、酸素ガス中等の酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。
更に、熱分解を紫外線照射下で行ってもよい。紫外線の照射により、加熱時間をより短縮することができ、加熱温度を下げることができる。紫外線照射下での加熱温度は、紫外線の照射条件によっても相違するが、150〜250℃に設定することができる。
【0025】
紫外線照射の条件は、一次膜を構成する材料に応じて適宜設定される。例えば、4〜6mW/cm2のエネルギー、250〜350分間の照射時間が挙げられる。紫外線源としては、低圧水銀ランプ、水素放電管、キセノン放電管等が挙げられる。紫外線は、これら紫外線源から発生する波長のものをいずれも使用できる。より具体的には、低圧水銀ランプの場合、主波長254nmの光とそれの1/4の強度で波長185nmの光とが混合した紫外線が挙げられる。
【0026】
次に、本発明の電界放出陰極の製造方法について図3を用いて説明する。この方法単なる例示であって、本発明は種々の変更を行うことができる。
1.はじめにエミッタティップに給電するためのエミッタ電極22を基板上に形成する(図3(a)参照)。エミッタ電極の形成に上記塗布熱分解法を使用することができる。塗布熱分解法により形成されるエミッタ電極は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化錫(NESA)等からなる。塗布熱分解法以外の方法としては、例えば蒸着法、CVD法等が挙げられる。この方法により形成されるエミッタ電極は、モリブデン、チタン、ニオブ、クロム等からなる。
【0027】
2.全面に絶縁膜23を形成する。絶縁膜の形成に上記塗布分解法を使用することができる。塗布熱分解法により形成される絶縁膜は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の膜が挙げられる。塗布熱分解法以外の方法としては、プラズマCVD法等が挙げられる。この方法により形成される絶縁膜は、酸化シリコン、窒化シリコン等が挙げられる。
【0028】
3.絶縁膜23上にゲート電極形成用の金属膜24aを形成する(図3(b)参照)。金属膜24aの形成に上記塗布熱分解法を使用することができる。塗布熱分解法により形成される金属膜は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化錫(NESA)等からなる。塗布熱分解法以外の方法としては、例えば蒸着法、CVD法等が挙げられる。この方法により形成されるゲート電極は、モリブデン、チタン、ニオブ、クロム等からなる。
【0029】
4.この金属膜24a上にレジスト層を塗布により形成し、ゲート電極の形成を所望する部位を覆い、エミッタティップの形成を所望する部位に開口を有するレジストマスクを形成するために、レジスト層を露光・現像する。このレジストマスクを用いて、開口部のゲート電極形成用の金属膜24a及び絶縁膜23を、RIE法や、フッ酸によるエッチング法等の方法により除去して、エミッタ電極22を露出させる。この結果、エミッタティップ形成用の開口部とゲート電極24が形成される。この後、レジストマスクを除去する(図3(c)参照)。この方法により形成される開口は、0.5〜2μmの直径を有していることが好ましい。開口部の形成とゲート電極のパターニングは別工程であってもよい。
【0030】
5.ゲート電極24上に犠性層25を斜め蒸着法により形成する(図3(d)参照)。
【0031】
6.エミッタティップ26をエミッタ電極22上に蒸着法により形成する。この時、蒸着が進むにつれて、エミッタティップ形成用の金属膜26aの開口部の径が徐々に小さくなり、塞がった時点で最終的にエミッタ電極22上にエミッタティップ26が形成される(図3(e)参照)。
【0032】
7.犠牲層25をエッチングにより除去することで、ゲート電極24上に堆積したエミッタティップ形成用の金属膜26aをリフトオフにより除去する(図3(f)参照)。
以上の工程により電界放出陰極を製造することができる。
【0033】
本発明の電放出陰極は、電子の移動度が大きく、高速・高温で動作可能であり、放射線による損傷にも強いため、放射線環境(宇宙、原子炉等)や高温環境下でも使用可能なマイクロウェーブ素子、超高速演算素子、表示素子等の電界放出陰極を備えた素子へ好適に応用することができる。この内、表示素子に使用することが好ましい。
【0034】
本発明の方法を使用して形成することができる表示装置の概略を図2を元に説明する。図2のフルカラーフラットパネルディスプレイは、RGBの各色に対応した複数のエミッタティップ15を備えるサブ画素を備え、3つのサブ画素で1画素を構成している。各サブ画素は、数百個の電界放出陰極をアレイ状に配置した構成を有している。また、図2では、各電界放出陰極のエミッタ電極12及びゲート電極14は、ストライプ状の形状を有し、絶縁膜13を介して、互いに直交するように基板11上に形成されている。更に、エミッタ電極12は、画素を構成するサブ画素の配置方向に連続して形成され、ゲート電極14はエミッタ電極12と直交する方向に連続して形成されている。
RGBの各色を発光する蛍光体層16が形成された透明基板17が、蛍光体層16側が画素に対向するように、所定の間隔をおいて画素上に配置されている。
なお、基板としては、ガラス基板、シリコン基板等が挙げられる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
ガラス基板上に真空蒸着法によりエミッタ電極を形成した。この基板を210℃に加熱し、ステアリン酸アルミニウムをドクターブレードを使用して溶融させつつ塗布することにより、厚さ約10μmの一次膜が得られた。
【0036】
次に、基板を500℃で1時間加熱することで、ステアリン酸アルミニウムからなる一次膜を分解して、厚さ約0.5μmの酸化アルミニウム膜からなる絶縁膜を得た。
以降は公知の方法と同様にして、ゲート電極、エミッタティップを形成することにより電界放出陰極を形成することができた。
【0037】
実施例2
一次膜を、ステアリン酸アルミニウムのトルエン溶液に基板を浸漬し、塗布膜からトルエンを除去することにより形成すること以外は実施例1の工程を繰り返した。この実施例でも、実施例1と同様の電界放出陰極を形成することができた。
【0038】
実施例3
一次膜に紫外線(254nm、5mW/cm2)を照射しつつ、基板を200℃で5時間加熱することで、一次膜を分解すること以外は実施例1の工程を繰り返した。この実施例でも、実施例1と同様の電界放出陰極を形成することができた。
【0039】
実施例4
ガラス基板上にドライフィルムレジストを載せ、レジストをエミッタ電極の形成を所望する位置が開口するように露光現像することでレジストマスクを形成した。このレジストマスクをスペーサとして、分解後のインジウムと錫の割合が9:1(モル比)になるように秤量した酢酸錫と酢酸インジウムの水溶液を基板上に塗布し、塗布膜から水を除去することにより厚さ約0.7μmの一次膜を形成した。
【0040】
レジストマスクを除去した後、基板を500℃で1時間加熱することで、酢酸錫と酢酸インジウムからなる一次膜を分解して、厚さ約0.2μmのITOからなるエミッタ電極を形成した。
以降は公知の方法と同様にして、絶縁膜、ゲート電極、エミッタティップを形成することにより電界放出陰極を形成することができた。
【0041】
実施例5
公知の方法と同様にして、ガラス基板上にエミッタ電極及び絶縁膜を形成した。
次に、絶縁膜上にドライフィルムレジストを載せ、レジストをエミッタ電極の形成を所望する位置が開口するように露光現像することでレジストマスクを形成した。このレジストマスクをスペーサとして、分解後のインジウムと錫の割合が9:1(モル比)になるように秤量した酢酸錫と酢酸インジウムの水溶液を基板上に塗布し、塗布膜から水を除去することにより厚さ約0.7μmの一次膜を形成した。
【0042】
レジストマスクを除去した後、基板を500℃で1時間加熱することで、酢酸錫と酢酸インジウムからなる一次膜を分解して、厚さ約0.2μmのITOからなるゲート電極を形成した。
以降は公知の方法と同様にして、エミッタティップを形成することにより電界放出陰極を形成することができた。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、形成を所望する金属の脂肪族酸塩又はアルコキシドを含む塗布組成物を、塗布し加熱するという簡単な工程で、絶縁膜及び導電膜を得ることができるので、電界放出陰極の製造コストを低くできる。
また、この方法により得られた絶縁膜は、誘電率が低いので、電界放出陰極の応答速度を速くすることができる。更に、高周波駆動した場合、消費電力の小さい電界放出陰極を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電界放出陰極の概略図である。
【図2】フラットパネルディスプレイの概略図である。
【図3】電界放出陰極の製造方法の概略工程断面図である。
【符号の説明】
1、15、26 エミッタティップ
2、12、22 エミッタ電極
3、13、23 絶縁膜
4、14、24 ゲート電極
5 電子
11、21 基板
16 蛍光体層
17 透明基板
24a、26a 金属膜
25 犠牲層
Claims (5)
- 基板上に、絶縁膜又は導電膜を少なくとも備えた電界放出陰極の製造方法であって、絶縁膜又は導電膜が金属酸化物膜からなり、金属酸化物膜が、それを構成する金属の脂肪族酸塩を含む塗布組成物を所望の部位に塗布して一次膜を形成し、一次膜を熱分解することにより形成されることを特徴とする電界放出陰極の製造方法。
- 電界放出陰極が、エミッタティップ、エミッタティップから電子を引き出すゲート電極及びエミッタティップへの給電線としてのエミッタ電極を少なくとも備え、導電膜がゲート電極又はエミッタ電極である請求項1に記載の電界放出陰極の製造方法。
- 絶縁膜、エミッタ電極及びゲート電極の少なくとも2つが、それを構成する金属の脂肪族酸塩又はアルコキシドを含む塗布組成物を所望の部位に塗布して一次膜を形成し、一次膜を熱分解することにより形成される請求項2に記載の電界放出陰極の製造方法。
- 熱分解が、紫外線照射下で行われる請求項1〜3のいずれか1つに記載の電界放出陰極の製造方法。
- 一次膜の形成前に、金属酸化物膜の形成を所望する部位に開口部を有するレジストマスクをリソグラフィー法で形成し、レジストマスクの開口部にのみ一次膜を形成し、レジストマスクを除去した後、一次膜の熱分解を行うことで、所望する部位に金属酸化膜を形成する請求項1〜4のいずれか1つに記載の電界放出陰極の製造方法。
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