JP4388613B2 - リジングのないフェライトクロム合金化鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鋳造微細等軸粒子構造(as-cast fine equiaxed grain structure)を有する溶鋼から成形されたフェライトクロム合金化鋼に関する。詳しくは、本発明は、鋳造等軸粒子を形成するために必要な核を与えるために、充分なチタン及び窒素を含有するが、小さい酸化チタン介在物(inclusion)を形成させるためにアルミニウムの量が制限された溶鋼から形成されたフェライトクロム合金化鋼に関するものである。この等軸鋳造粒子構造を有する鋼から製造された熱間加工シートは、たとえホットバンド焼鈍又は中間焼鈍をしなくとも、優れた無リジング特性及び引張り成形性を有する、冷間圧延され再結晶焼鈍されたシートの製造に特に適している。
【0002】
【従来の技術】
「リジング」(ridging)、「ローピング」(roping)又は「リビング」(ribbing)として知られている現象を最小にするために、高い塑性歪割合を有すると共に、高い成形性のフェライトステンレス鋼が望まれている。オ−ステンステンレス鋼と異なり、部品に冷間成形された後に、冷間圧延され再結晶焼鈍されたフェライトステンレス鋼シートの表面に少なからずリジングが現れる。このリジングは、シートのロール方向と平行に延びた隆起、溝又は波に形成により特徴づけられる。この欠点はシートの表面外観に不利益であるのみならず、劣った引張り成形性となる。
【0003】
フェライトクロム合金化鋼、特に準平衡フェライトクロム鋼、例えばステンレス鋼タイプ409及び439は50〜200mmの厚さのスラブに連続的に鋳造するか、2〜10mmの厚さのストリップ鋳造物に鋳造するかに関係なく、典型的には鋳造された大円柱状粒子を有している。これらの大円柱状粒子は、種々の製造用途に使用される、最終冷間圧延され焼鈍されたシートに非常に望ましくないリジング特性を導くキューブ−オン−フェイスに近い結晶学的組織を有する。このリジングから生ずる表面外観は、露出成形部品、例えばカスケット、自動車リム、排気管及びエンドコーン、型打ちマフラー、オイルフィルターなどには非常に欠点である。リジングは、成形後にシートに粗く平らでない表面外観を生じさせ、そして冷間圧延及び焼鈍後に存在する大きな不均一又は“バンド化”(banded)粒子構造に寄与し、鋳造鋼中に円柱状粒子構造の初期の発生を起こさせる。
【0004】
リジングの発生を最小にするために、冷間圧延の前に熱間圧延されたシートを焼鈍することにより付加的な出費を負う。この熱間圧延されたフェライトステンレスシートの付加的な焼鈍工程は、深絞り性を低下させる低い平均歪割合、即ちRmにより引き起こされる成形性の低下をもたらす。冷間圧延前に焼鈍された熱間圧延シートは最終焼鈍前にヒートバンド焼鈍により引き起こされるRmのロスを相殺するために少なくとも70%冷間圧延されなければならない。
【0005】
長年にわたり、フェライトステンレス鋼の合金組成の変更によりリジングを除くために、上記の加工上の要求及び出費を除く数多くの試みがなされてきた。フェライトステンレス鋼中のリジングは熱間圧延中に最初に生ずることは知られている。溶鋼の化学組成、例えばC,N,O,S,Pの不純物の1種以上をコントロールすることにより鋳造インゴット中に微細な等軸粒子構造を形成させることにより、及び低い熱間圧延温度、例えば950〜1100℃を使用して粒子構造を精錬することにより、リジングを最小にするための試みがあった。精錬中の化学組成のコントロールは、第2相、即ち室温でマルテンサイトになる加温下でオーステナイトの形成のために、フェライトステンレス鋼についての幾つかの改良されたリジング特性を生じさせていた。しかしながら、この第2相の形成は最終製品の引張り伸び及び溶接性能の浪費であった。熱間圧延中の温度コントロールは、高温熱間圧延電力が必要であるから操作上の困難性を生じさせた。従って、熱間圧延シートの厚さは大きくなければならない。熱間圧延はついで2つの冷間圧延の間に第2中間焼鈍を有する少なくとも2つの段階で冷間圧延をしなければならない。
【0006】
米国特許第5,769,152号は円柱状粒子が連続的鋳造ステンレス鋼には望ましくないと認めている。この特許は、溶鋼を鋳造する代わりに、液相温度以上の0〜15℃の低い超加熱温度を使用し、鋳型中で溶鋼を磁気的撹拌することにより、円柱状粒子が防止され且つ粒子が等軸化され得ることを提案している。
【0007】
ほかには、1種以上の安定化元素の添加によりフェライトステンレス鋼の合金組成を変性することによるリジングの除去が試みられた。米国特許第4,462,525号は優れた成形性及び改良された表面品質を有するフェライトステンレス鋼に関するものである。この特許は2〜30ppmの量のホウ素及び少なくとも0.005%のアルミニウムが伸び及びRmを増加させ、並びにリジング特性を減少させることを開示している。米国特許第4,515,644号は改良されたリジング品質を有する深絞りフェライトステンレス鋼に関するものである。この特許はアルミニウム、ホウ素、チタン、ニオブ、ジルコニウム及びバナジウムの添加は全てフェライトステンレス鋼の伸びを増加させ、Rmを増加させ、抗リジング性を高めることができることを開示している。詳しくは、この特許は抗反リジング特性が改良された少なくとも0.01%のアルミニウムを有するフェライトステンレス鋼を開示している。米国特許第5,662,864号はTi,C+N及びN/Cを注意深くコントロールした場合の、良好なリジング特性を有するフェライトステンレス鋼の製造に関するものである。この特許は、溶鋼中のC+N含量に応じてTiを添加することによる炭窒化物の形成により、リジングが改良され得ることを教示している。溶鋼はC≦0.01%,Mn≦1.0%,Si≦1.0%,Cr9〜50%,Al≦0.07%,0.006≦C+N≦0.0025%,N/C≧2,(Ti−2S−3O/(C+N)≦4及びTixN≦30×104を含有する。米国特許第5,505,797号は減少した内面異方性及び優れた粒子構造を有するフェライトステンレス鋼の製造に関するものである。この特許は、溶鋼が好ましくは0.0010〜0.080%のC、0.10〜1.50%のMn、0.10〜0.80%のSi、14〜19%のCr及び0.010〜0.20%のAl、0.050〜0.30%のNb、0.050〜0.30%のTi及び0.050〜0.30%のZrの2種以上を含有する場合に良好なリジング特性が得られることを教示している。鋼はスラブに鋳造され、4mmの厚さのシートに熱間圧延され、熱間ストリップ焼鈍され、酸洗いされ、冷間圧延され、そして仕上げ焼鈍される。スラブは1200℃に加熱され、970〜1150℃の温度で少なくとも1回の粗い熱間圧延に付された。ホットミルロールと熱間圧延された鋼との間の摩擦は0.3以下であり、圧延率は40〜75%であり、熱間圧延仕上げ温度は600〜950℃であった。熱間圧延された鋼は850℃の温度で4時間焼鈍され、82.5%冷間圧延され、860℃の温度で60秒間仕上げ焼鈍された。
【0008】
チタンで安定化されたステンレス鋼について、液相線温度、即ち超平衡(hyper-equilibrium)で、チタン化合物の溶解生成物が飽和レベルを越えたとき、チタン化合物は安定であり、TiNは金属の凝固前に沈殿するであろう。これらの超平衡スラブから製造され鋼シートは改良されたリジング特性及び成形性を示す。しかしながら、凝固の際TiNは大きなクラスターに合体し、鋳造スラブの表面に浮遊した。これらの非金属TiNクラスターは熱圧延中にTi条痕として知られている許容し得ない開表面欠陥を形成した。これらの大きな非金属クラスターはスラブの熱間加工の前に研磨のような高価な表面調整によりスラブから除去しなければならない。米国特許第4,964,926号は、準平衡チタン安定化フェライトステンレス鋼を形成することによって鋳造中に非金属チタン酸化物及びチタン窒化物の形成及び沈殿を除去することにより、改良された表面品質を有する溶接可能な二重安定化フェライトステンレス鋼に関するものである。この特許は、ローピング特性がフェライトステンレス鋼にニオブ単独又はニオブ及び銅を添加することにより改良されることは公知であったと開示している。しかしながら、ニオブ単独の添加は溶接クラックを引き起こした。米国特許第4,964,926号は二重安定化フェライトステンレス鋼の形成のためにチタン安定剤の一部をニオブで置き換えることを開示している。ニオブ安定化鋼に少なくとも0.05%のチタンを添加すると溶接クラックが除去される。
【0009】
従来の技工によるリジングの最小化は、熱間圧延されたフェライトステンレス鋼を冷間圧延前に焼鈍することによりコスト及び成形性を犠牲にしてしまった。この付加的な焼鈍工程は平均Rmを低下させることにより成形性を低下させる。また、この予備焼鈍された熱間圧延鋼は、冷間圧延前に焼鈍されない熱間圧延鋼についてのRmと類似の最終焼鈍後のRmを得るためには、少なくとも70%冷間圧延されねばならない。この大きなパーセンテージの冷間圧延は一般に中間焼鈍工程を必要とする。他の見かけ上無期限の努力により明白であるように、本質的にリジングのない且つ優れた深絞り成形性、例えば高いRmを有し、高い引っ張り伸び及び均一な焼鈍粒子構造を有する焼鈍されたフェライトクロム合金化鋼についての長く感じられる必要性が残されている。冷間圧延前に焼鈍される熱間加工されたシートを必要としない良好なリジング特性を有する優れた深絞り成形性のあるフェライトステンレス鋼についてのさらなる必要性がある。スラブの熱間加工前に連続的に鋳造されたスラブの表面の表面調整を必要とせずに、表面欠陥、即ちチタン窒化物スケール及びチタン酸化物条痕を有しない熱間加工シートから形成された良好なリジング特性を有する優れた深絞り成形性のある準平衡フェライトステンレス鋼についてのさらなる必要性がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主たる目的は、熱間加工されたシートを冷間圧延前に焼鈍する必要なしに良好なリジング特性を有する、優れた深絞り成形性及び延伸性のフェライトクロム合金化ステンレス鋼を提供することにある。本発明の他の目的は、冷間圧延段階間での焼鈍を伴う複数の冷間圧延の必要なしに良好なリジング特性を有する、優れた深絞り成形性及び延伸性のフェライトクロム合金化ステンレス鋼を提供することにある。本発明の他の目的は、鋼スラブの熱間加工前に表面調整を必要としない連続的鋳造スラブからフェライトクロム合金化鋼シートを形成することにある。本発明の他の目的は、鋼スラブの熱間加工前に表面調整を必要としない連続的鋳造スラブから形成された、良好なリジング特性、改良された粒子構造及び高い引っ張り伸び特性を有する、優れた深絞り成形性及び延伸性のフェライトクロム合金化ステンレス鋼を提供することにある。付加的な目的は、改良された溶接性、耐食性及び高温サイクル酸化抵抗性を有する、良好なリジング特性の優れた深絞り成形性及び延伸性のフェライトクロム合金化ステンレス鋼を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フェライトクロム合金化鋼、及び50%を超える等軸粒子を有する鋳造構造を有する鋼の製造に関する。この鋳造鋼は、チタンで脱酸され、全て質量%で、0.08%以下のC、8%〜25%のCr、0.03%未満のAl、1.50%以下のMn、0.05%以下のN、1.5%以下のSi、2.0%未満のNi、0.1%〜0.38%のTiを含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、且つ(Ti×N)/Al≧0.14の割合を有する。鋳造鋼は連続シートに熱間加工される。シートは脱スケールされ、最終厚さに冷間圧延され、ついで再結晶焼鈍され得る。最終焼鈍されたシート中のリジングの除去のために、冷間圧延前の熱間加工シートの焼鈍又は複数の冷間圧延段階間のシートの焼鈍は必要でない。
【0012】
本発明の他の特徴は、Alが0.02%未満であることである。本発明の他の特徴は、(Ti/48)/[(C/12)+(N/14)>1.5の関係を満足させ、準平衡量で存在するTi及びNについてである。本発明の他の特徴は、1.4以上のRmを有し冷間圧延前に焼鈍されない熱間加工されたシートから製造された、冷間圧延及び焼鈍されたシートにある。本発明の他の特徴は、3mm以下の鋳造等軸粒子にある。
【0013】
本発明の利点としては、製造コストが少なく、冷間圧延前に焼鈍される熱間加工されたシートを必要とせず、複数の冷間圧延段階間でのシートの焼鈍を必要とせず、改良された表面品質を有し、改良された溶接性を有し、良好な湿気耐食性を有し、且つ良好な高温サイクル酸化抵抗性を有する、優れたリジング特性を持った高成形性フェライトクロム合金化鋼を包含する。他の利点は、熱間加工されたシート中に圧延方向と平行に延びる開放表面欠陥、例えば鋳造中にスラブ表面近くに形成された非金属チタン酸化物又はチタン窒化物クスラスタータイプの沈殿物から造られる熱間圧延スケール及び条痕の形成を防止するために、熱間加工前に表面調整、例えば研磨を必要としないスラブを鋳造することができることである。本発明の他の利点は、焼鈍後に非常に均一な粒子構造を有する優れたリジング特性を持った高成形性フェライトクロム合金化鋼シートを包含する。本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、詳細な説明及び添付図面を考慮すれば明らかとなろう。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は微細な等軸粒子の鋳造構造を有する鋼から製造される高成形性のフェライトクロム合金化鋼シートに関する。この鋼は、充分なチタン及び窒素を含有するが、該鋼から製造された焼鈍クロム合金化シートが高められたリジング特性を有するように、鋳造等軸構造を形成するために必要な核を与えるために小さい酸化チタン介在物を形成させるためのコントロールされた量のアルミニウムを含有する溶鋼から鋳造される。大きなアルミナ介在物クラスターよりむしろ小さい酸化チタン介在物に富んだクロム合金化鉄溶鋼の形成により、50%を越える等軸微細粒子(%EQ)を有する鋳造粒子構造を形成させることができる。鋳造鋼中に大きな円柱状粒子の形成を避けることにより、例えば鋼から形成された熱間加工シートが冷間圧延前に焼鈍されないときでも、鋼から製造される冷間圧延され、再結晶焼鈍されたシート中のリジングは最小にされる。
【0015】
フェライトクロム合金化鋼とは、少なくとも8%のクロムにより合金化された鋼を包含することを意味する。本発明のフェライトクロム合金化鋼は熱間加工シート、冷間圧延シート、金属被覆シート及び塗装シートに特に適している。これらのフェライトクロム合金化鋼は、10〜25%のCrを含有するAISIタイプ400シリーズ、特に11〜13%のCrを含有する409タイプステンレス鋼に特に適している。本発明において、「シート」とは、連続スクラップ又は連続ストリップから形成される切断長尺物を包含することを意味する。
【0016】
鉄溶鋼はアーク炉(EAF)のような溶融炉中で用意される。この鉄溶鋼は、固体鉄含有スクラップ、炭素鋼スクラップ、ステンレス鋼スクラップ、酸化鉄を含有する固形鉄含有物質、炭化鉄、直接還元鉄、ホットブリケットから溶融炉中で形成されるか、あるいは噴射炉又は溶鋼を与えることができる他の鉄溶融ユニット中で溶融炉の上流物を製造することができる。ついで、鉄溶鋼は溶融炉で精錬されるか、精錬容器、例えばアルゴン―酸素―脱炭容器(AOD炉)、又は真空―酸素―脱炭容器(VOD炉)へ、ついで梯子式金属炉のようなトリムステーション又はワイヤーフィードステーションへ移送される。
【0017】
本発明の重要な特徴は、溶鋼の最終炭素分析値への精錬後、及び最終仕様に合致させるための合金のトリム中又は後に、鋳造前の脱酸のためにチタンを溶鋼に添加することである。溶鋼をチタンで脱酸することは、鋳造等軸微細粒子構造を形成させるために必要な核を形成させるための小さな酸化チタン介在物を形成させるために必要である。鋳造等軸微細粒子構造を形成させるために必要な充分な数の核を与えるためには、溶鋼は少なくとも0.10%のチタンを含有することが必要である。アルミニウムは、アルミナ介在物、即ち酸化アルミニウム, Al2O3の形成を最小にするための脱酸剤としてこの精錬された溶鋼に添加しないことが好ましい。本発明の等しく重要な特徴は、小さな酸化チタン介在物が鋳造等軸微細粒子を形成させるために必要な核を与えるために形成されるように、充分なチタン及び窒素が鋳造前に溶鋼に存在することである。残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合(TNA)が少なくとも0.14であることが必要である。この割合を少なくとも0.14にコントロールすることにより、鋳造微細等軸粒子の形成に必要な小さな核サイトを保証する窒化チタンで被覆された小さい酸化チタン介在物が形成されるものと思われる。鋼が安定化されたならば、脱酸に必要な充分な量のチタンを超えて、即ち0.10%以上が溶鋼中の炭素及び窒素の結合のために添加されるが、窒素との飽和に要求される量未満、即ち準平衡が好ましく、それにより固化の前に大きな酸化チタン介在物の沈殿が避けられる。代わりに、1種以上の安定化剤、例えばニオブ、ジルコニウム、タンタル及びバナジウムを溶鋼に添加することができる。従って、本発明の鋼は、鋳造微細等軸粒子の形成に必要な核を与えるために、鋼が溶鋼中の支配的な介在物、即ち酸化チタン介在物>>Al2O3である小さな酸化チタン介在物を用いたチタンにより本質的に脱酸されるように、溶鋼中に少なくとも0.10%のTiを含有する必要があり、少なくとも0.005%のN及び0.02%のAlを含有することが好ましい。
【0018】
チタンよりはむしろアルミニウムで脱酸されたフェライトクロム合金化鋼は溶鋼中に小さな介在物を有することができる。しかしながら、本発明のチタン脱酸フェライトクロム鋼と比べて従来のアルミニウム脱酸フェライトクロム鋼との大きな差異は、本発明の溶鋼の介在物の殆どがアルミナベースであるというよりはむしろ酸化チタンベースであるということである。本発明者らは、本発明の鋼の介在物の少なくとも50%が1μm以下のサイズを有し、且つこれらの介在物の少なくとも90%が1.5μm以下のサイズを有していると決定した。酸化チタンの形態、即ちTiO,TiO2,Ti2O3,Ti3O5,が存在することについては明らかでないが、存在する主たる介在物はTiOであると思われる。
【0019】
溶融容器又は精錬容器中で精錬され、そしてクロムで合金化された後、クロム合金化鉄溶鋼はチタンで脱酸されて、全て質量%で、0.08%以下のC、8%〜25%のCr、1.50%以下のMn、0.03%未満のAl、0.05%以下のN、1.5%以下のSi、2.0%未満のNi、0.10%〜0.38%のTiを含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる。残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の質量%の生成物の割合は少なくとも0.14である。クロム合金化溶鋼は連続的に、シート、140mm以下のスラブ、200mm以下のスラブに鋳造されるか、又は50%を超える微細な等軸粒子が形成された鋳造粒子構造を有するインゴットに鋳造され得る。より好ましくは、溶鋼は、少なくとも0.16、最も好ましくは少なくとも0.23の残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の質量%の生成物の割合を有し、少なくとも80%の微細な等軸粒子、本質的には全てがそれぞれ微細な等軸粒子である鋳造構造を形成する鋳造物を有する。
【0020】
本発明者らは、鋳造等軸粒子を得るために必要な残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は鋼のクロム含有量に関係するものであると決定した。8%程度の少ないクロムを含有するステンレス鋼については、50%を超える鋳造等軸粒子を達成するための残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.14未満であることができるものと思われる。約11%のクロムを含有するT409ステンレス鋼については、50%を超える鋳造等軸粒子を達成するための残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は少なくとも0.14であり、100%の鋳造等軸粒子を達成するためには0.23より大である。少なくとも16%の高クロム含有T430ステンレス鋼及び少なくとも17%の高クロム含有T439ステンレス鋼については、50%を超える鋳造等軸粒子を達成するための残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は少なくとも0.20より大であり、100%の鋳造等軸粒子を達成するためには0.30より大であったことを表3及び4が実証している。
【0021】
鋳造された鋼は熱間加工して、シートにされる。「熱間加工」とは、鋳造鋼が必要ならば再加熱され、ついで例えば熱間圧延により予め決められた厚さに圧延されることであると理解される。熱間圧延の場合は、鋼スラブは1050〜1300℃に再加熱され、少なくとも800℃の仕上げ温度を用いて熱間圧延され、580℃以下の温度でコイルされる。熱間圧延されたシートは、例えば「ホットバンド」は、脱スケールされ、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%冷間圧延され、所望の最終シート厚さにすることができる。その後、冷間圧延されたシートは800〜1000℃のピーク金属温度で、少なくとも1秒間再結晶焼鈍される。本発明の有意な利点は、熱間加工されたシートがこの冷間圧延前に焼鈍される必要のないことである。本発明の他の利点は、熱間加工されたシートは一回の冷間圧延で与えられ、複数の冷間圧延間に中間の焼鈍は不必要であることである。冷間圧延に続く再結晶焼鈍は連続的焼鈍又はボックス焼鈍であることができる。本発明の他の利点は、優れたリジング特性を有するクロム合金化焼鈍鋼シートが40%程度の少ない冷間圧延により非常に均一微細な粒子を有することである。
【0022】
本発明のフェライトクロム合金化鋼は、数々の方法により造られた熱間加工シートから製造することができる。このシートは、1050〜1300℃に再加熱され、ついでインゴットから形成されたスラブ又は1〜6mm厚さの出発熱間加工シートを与えるように熱間圧延される50〜200mm厚さの連続鋳造スラブから製造することができ、あるいは2〜10mm厚さに連続的に鋳造されたストリップから熱間加工することができる。また、本発明は連続鋳造スラブ又はインゴットから製造されたスラブを有意な再加熱し又はせず、熱間圧延ミルへ直接供給される方法により製造されたシートに、あるいはさらに再加熱し又はせず、シートに熱間圧延されるのに充分な温度のスラブに熱間圧延されたインゴットに適用し得る。
【0023】
本発明の重要な特徴は、鋳造する前に溶鋼の脱酸のためにチタンを使用することである。溶鋼中の支配的な介在物が鋳造等軸粒子を核化するための小さな酸化チタン介在物であることを保証するための脱酸のためにチタンが使用される。溶鋼中のチタンの量は、少なくとも0.10%であり、準平衡量存在することが好ましい。この溶鋼中のチタンの量は、より好ましくは、0.15%以上であり、(Ti/48)/[(C/12)+(N/14)]>1.5の関係を満足させることがより好ましい。「準平衡」とは、チタンの量が形成されたチタン化合物溶解生成物が鋼液相温度で飽和レベル以下であり、それにより溶鋼中に過剰なTiNの沈殿が避けられるようにコントロールされることを意味する。過剰なTiN介在物が形成されたら、TiN沈殿物は連続鋳造中にスラブ表面を凝固するために浮遊している低密度の大きなクラスターに成長する。これらの非金属TiNクラスターはスラブの熱間加工中に開口表面欠陥を形成する。過剰な沈殿を避けるために溶鋼中に許容されるチタンの量は窒素の量に逆比例する。「準平衡」のためのチタンの最高量は米国特許第4,964,926号の図4に一般的に示されている。溶鋼合金のクロム及び窒素含有量に基づいて、チタンの量は米国特許第4,964,926号の図4のカーブに示された量以下にコントロールされなければならない。約12%のクロム及び0.010%の窒素を含有するT409ステンレス鋼は0.26%までのチタンを含有することができる。約15%のクロム及び0.010%の窒素を含有するステンレス鋼は0.30%までのチタンを含有することができる。約18%のクロム及び0.010%の窒素を含有するT439ステンレス鋼は0.35%までのチタンを含有することができる。過剰な窒素は、AOD炉中でフェライトステンレス溶鋼を精錬するこれらの製造業者には問題ない。実質的に0.010%未満の窒素はAOD炉中でステンレス鋼を精錬し、それにより許され且つなお準平衡であるチタンの量が減少する場合に得ることができる。
【0024】
鋳造等軸フェライト粒子の形成に必要な核化サイトを与えるために、溶鋼の鋳造前に酸化チタン介在物が形成されるのに、溶鋼へのチタン添加後の充分な時間が経過しなければならない。チタンの添加後すぐに溶鋼が鋳造されるならば、鋳造物の鋳造構造は大きな円柱状粒子であろう。溶鋼にチタンを添加した後5分未満で実験室で鋳造されたインゴットは、たとえ残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合が少なくとも0.14であっても、大きな鋳造円柱状構造を有していた。
【0025】
本発明の重要な特徴は、残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合が鋳造等軸粒子の形成のために必要な核化サイトを保証する酸化チタン介在物の形成に充分であるように、充分なチタン及び窒素が鋳造前に鋼中に存在することである。溶鋼中に存在する窒素の量は0.05%以下、好ましくは0.005〜0.030%.より好ましくは0.007〜0.015%であるべきである。窒化チタンで覆われた酸化チタン介在物は鋳造微細等軸粒子構造の形成に必要な核化サイトを与える責任があるものと思われる。溶鋼中のチタン及び窒素の量を注意深くコントロールすることにより、微細な鋳造等軸粒子構造のために責任がある必要な核化サイトを与えるならば、1μm未満のサイズを有する充分に小さな酸化チタンを形成するものと思われる。
【0026】
鋼合金組成は、熱間加工されたシート中の過剰なTiN沈殿及びTi条痕を除去するために、窒素及びチタンの準平衡量に関してコントロールすることができる。EAF中で溶融した後の窒素濃度は0.05%程度であることができるが、溶解された窒素の量はAOD炉中でのアルゴンガス精錬中に0.02%未満、必要ならば、0.01%未満に減少させることができる。過剰なTiNの沈殿は与えられた窒素含量について溶鋼に添加されるチタンの準平衡量を減少させることにより避けることができる。代わりに、溶鋼中の窒素の量は、溶鋼に含まれるチタンの予期される量についてAOD炉中で減少させることができる。11〜13%のクロム及び0.012%以下の窒素を含有する準平衡T409ステンレス鋼については、溶鋼はその凝固前に過剰のTiN沈殿を避けるために0.25%未満のチタンを含有するであろう。16〜18%のクロム及び0.012%以下の窒素を含有する準平衡T430及びT439ステンレス鋼については、溶鋼はその凝固前に過剰のTiN沈殿を避けるために0.35%未満のチタンを含有するであろう。
【0027】
本発明の等しく重要な特徴は、全残留アルミニウムがチタン及び窒素の量に関連してコントロール又は最小にされるということである。チタン及び窒素の最小量はアルミニウムに関連して溶鋼中に存在しなければならない。本発明者らはアルミニウムが少量、即ち0.01%以下であっても、チタン及び特に窒素の量が低すぎなければ、予め必要な等軸鋳造粒子を造らないであろうと決定した。チタニア介在物の小さな沈殿の当初の量は、アルミナが存在しなくとも、鋳造等軸粒子構造の形成のために必要な核化サイトを形成させるために溶鋼に明らかに必要である。タイプ409ステンレス鋼について100%近い等軸鋳造粒子を保証するために、残留アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は少なくとも約0.14、好ましくは少なくとも0.23であると、本発明者らは決定した。溶鋼中に必要なチタン及び窒素の量を最小にするためには、アルミニウムの量は好ましくは0.020%未満、より好ましくは0.013%以下、最も好ましくは0.010%以下に減少される。鋳造直前に脱酸ために精錬又は鋳造中にアルミニウムが目的どおりに溶鋼で合金化されないならば、特に14%未満のクロムを含有するステンレス鋼については、全チタンは0.010%未満にコントロール又は減少させることができる。100%近い等軸鋳造粒子を達成するために、割合(Ti×N)/Al>0.40であることが必要である、高クロム、即ち15%以上のクロム含有ステンレス鋼については、0.01%を超える窒素を溶鋼に加える必要がある。アルミニウムは他の元素、例えばチタンの合金添加中に存在する不純物として溶鋼にうかつに加えないことが好ましい。アルミニウムの不純物を含有するチタン合金添加の使用は避けるべきである。チタン合金は、0.07%程度の全アルミニウムが溶鋼に分配されるように20%程度のアルミニウムを含有することができる。精錬及び鋳造粒子を注意深くコントロールすることにより、0.020%未満のアルミニウムを含有する溶鋼を得ることができる。
【0028】
理論に拘束されないが、特に14%未満のクロムを含有するステンレス鋼についての全アルミニウムは、チタンが主な脱酸体であるように溶鋼中のAl2O3介在物の形成を最小にするために、0.03%未満、好ましくは0.02%未満、より好ましくは0.013%未満、最も好ましくは0.01%未満にコントロールされるべきであると思われる。薄いスラブ又は連続シートに連続的に鋳造された鋼は固有的には鋳造微細等軸粒子構造を有していない。本発明においてアルミニウムを注意深くコントロールすることにより、Al2O3介在物の形成を最小にすることができるものと思われる。溶鋼中に含まれるAl2O3介在物は大きなクラスター中に合体する傾向がある。アルミナ介在物の形成を最小にすることにより、5μm未満、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1μm以下のサイズの酸化チタンを有する小さな介在物が溶鋼中の支配的な非金属介在物になると思われる。これらの小さな酸化チタン介在物は凝固中に鋳造微細等軸粒子構造の形成を許す核化サイトを与えるためであると思われる。従って、チタンは溶鋼中の支配的な介在物を保証するために脱酸のために使用され、凝固した鋳造鋼はアルミナ介在物よりはむしろ小さな酸化チタンである、即ち酸化チタン介在物の数>>アルミナ介在物の数である。
【0029】
従来のアルミニウム脱酸鋼は連続鋳造中にノズルを妨害する傾向がある。鋳造ノズルが詰まるこの傾向を最小にするための鋳造溶鋼中のAl2O3介在物の流動性の増加のために、一般に、カルシウムが高アルミニウム鋼に加えられる必要があった。しかしながら、一般に、カルシウムはアルミニウ鋳造微細等軸粒子の形成に逆の影響を与える。従って、カルシウムは0.0020%以下に制限されねばならない。本発明の重要な利点は、アルミニウムが0.016%以下で維持されているとき、非常に少ないAl2O3介在物が溶鋼中に存在するから、カルシウムの低アルミニウム溶鋼への添加の必要性を不要にすることである。溶鋼中に含まれる多くのAl2O3介在物は連続鋳造中にノズルの妨害を引き起こしうるアルミナのクラスター中へ素早く合体され得る。
【0030】
炭素は0.08%まで、好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.0010〜0.01%の量で鋼中に存在する。炭素が0.08%を超えると、成形性、腐食及び溶接性が悪くなる。従って、炭素はできるだけ少ない量に減少すべきである。
【0031】
炭素及び窒素を安定化するための元素を1.0%まで、好ましくは、0.6%まで、より好ましくは0.3%までの量で本発明の鋼に存在させることができる。安定化された鋼を所望ならば、ステンレス鋼の伸び及び強靭性を増加させるために結晶性粒子サイズを造り、それによって焼鈍後の深絞りのような成形性を高めるために有効な安定な炭素−窒化化合物を形成のために、充分な安定化元素を存在させるべきである。安定化元素が1.0%を超えると、鋼の製造コストが性質に対応する利益もなく、増加する。安定化のためのチタンの使用に加えて、他の適当な安定化元素としてはニオブ、バナジウム又はそれらの混合物があり、チタンと共に使用するのが好ましい。チタンと共に、第2の安定化元素、例えばニオブが使用されるならば、深絞り成形性が要求される場合は第2の安定化元素は0.3%以下に制限されるべきである。0.3%を超えるNbは成形性に悪影響を与える。
【0032】
クロムは8%以上、好ましくは10%以上、25%以下の量で本発明の鋼中に存在する。クロムが8%未満であると、鋼の湿気腐食抵抗性、例えば自動車の排気部品に悪影響を与える。クロムが25%を超えると、鋼の成形性が悪くなる。
【0033】
幾つかの用途については、ホウ素を5ppm以上、より好ましくは20ppm以上、最も好ましくは40〜60ppmの量で鋼に加えることが望ましい。少なくとも5ppmのホウ素を含有することにより、鋼の第2次作業脆化に対する抵抗性が改良されるので、鋼シートは深絞り成形の適用中及び複数工程成形の適用中に裂けることがないであろう。ホウ素が200ppmを超えると、鋼の成形性が悪くなる。
【0034】
酸素は100ppm以下の量で本発明の鋼に存在させることが好ましい。溶鋼がAOD炉及びLMF炉中で連続的に製造される場合は、溶鋼中の酸素は10〜60ppmの範囲内のであり、それにより微細な鋳造等軸粒子構造に対して責任のある核化サイトを形成するために必要な、小さな酸化チタン介在物を含有する非常にきれいな鋼を与えるであろう。
【0035】
珪素は一般に、1.5%以下、好ましくは0.5%以下の量で本発明の鋼に存在する。フェライト相の形成の促進のために、一般に、少量の珪素がフェライトステンレス鋼に存在する。また、珪素は高温腐食抵抗性を高め、高温強度、例えば自動車の排気部品を与える。従って、珪素は少なくとも0.10%の量で溶鋼中に存在させるべきである。鋼が硬くなり過ぎ且つ伸びに悪影響を与えるので、珪素は1.5%を超えるべきでない。
【0036】
マンガンは1.5%まで、好ましくは0.5%未満の量で本発明の鋼に存在する。マンガンは熱間加工中でのシートの裂けを防ぐために、硫黄と組み合わせることにより硫化マンガンとして熱間加工性を改良する。従って、少なくとも0.1%の量のマンガンが望ましい。しかしながら、マンガンはオーステナイト形成剤であり、フェライト相の安定性に影響を与える。マンガンの量が1.5%を超えると、鋼の安定性及び成形性に悪影響を与える。
【0037】
硫黄は0.015%以下、より好ましくは0.010%未満、最も好ましくは0.005%未満の量で本発明の鋼に存在する。熱間圧延中に問題が起こることに加えて、硫黄は、特に低量のクロムを含有する鋼では、湿気腐食抵抗性に悪影響を与える。従って、硫黄は0.015%を超えないことが好ましい。
【0038】
マンガンのように、ニッケルはオーステナイトイ形成剤であり、フェライト相の安定性に影響を与える。従って、ニッケルは2.0%以下、好ましくは1.0%未満に制限される。本発明のフェライトクロム合金化鋼は、他の元素、例えば銅、モリブデン、燐、及び意図的に添加物したもの又は残留成分、例えば鋼製造プロセスからの不純物として存在するものを包含することもできる。
【0039】
【実施例】
例1(比較鋼)
比較のクロム合金化鉄溶鋼25kgを実験用真空容器中に用意した。最終トリム合金用元素を容器に添加した後、溶鋼をチタンで脱酸した。クロムで合金化された溶鋼の組成は、Al0.006%、Ti0.15%、C0.007%、Mn0.26%、Si0.36%、Cr11.2%、Ni0.18%、N0.005%であった。アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.0125であった。チタンの添加約23分後に、溶鋼を75mmの厚さ及び150mmの幅を有するインゴットに鋳造した。ステンレス鋼インゴットからカットされた図1に示した断面断片の鋳造粒子構造は、完全に円柱状で、3mmの平均カラムサイズを有する粒子構造を有していた。低アルミニウム単独、即ち0.01%以下を有することが主として等軸粒子の鋳造構造の形成のためには充分でないことを、この鋼は実証している。(Ti×N)/Al<0.14の割合を有するこの鋼は等軸粒子を含有しない鋳造鋼粒子構造であることを説明している。
【0040】
例2(本発明鋼)
本発明のクロム合金化鉄溶鋼25kgを例1に記載したのと同じ実験用真空容器中に用意した。最終トリム合金用元素を容器に添加した後、溶鋼をチタンで脱酸した。クロムで合金化された溶鋼の組成は、Al0.007%、Ti0.28%、C0.008%、Mn0.25%、Si0.36%、Cr11.1%、Ni0.18%、N0.004%であった。アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.16であった。チタンの添加17分後に、溶鋼を75mmの厚さ及び150mmの幅を有するインゴットに鋳造した。ステンレス鋼インゴットからカットされた断面断片の鋳造粒子構造は、図2に示したように約78%の等軸粒子の微細な粒子構造及び2mmの平均直径サイズを有していた。(Ti×N)/Al≧0.14の割合を有するこの鋼は50%以上の等軸粒子を含有するであろうことを説明している。
【0041】
例3(比較鋼)
Al0.013%、Ti0.19%、C0.007%、Mn0.26%、Si0.36%、Cr11.0%、Ni0.24%、N0.009%を有する、本発明の他の比較のクロム合金化鉄溶鋼を例2と類似の方法で製造した。アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.013であった。チタンの添加約19分後に、溶鋼をインゴットに鋳造した。ステンレス鋼インゴットからカットされた断面断片の鋳造粒子構造は、図3に示したように完全に円柱状で、約2mmの平均直径カラムサイズを有する粒子構造を有していた。(Ti×N)/Al<0.14の割合を有するこの鋼は鋳造粒子構造が50%未満を含有するであろうことを説明している。
【0042】
例4(本発明鋼)
Al0.013%、Ti0.24%、C0.007%、Mn0.26%、Si0.37%、Cr11.1%、Ni0.25%、N0.008%を有する本発明の他のクロム合金化鉄溶鋼を例2と類似の方法で製造した。アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.15であった。チタンの添加約14分後に、溶鋼をインゴットに鋳造した。ステンレス鋼インゴットからカットされた断面断片の鋳造粒子構造は、図4に示したように約84%の等軸粒子の微細な粒子構造及び約3mmの平均直径サイズを有していた。割合(Ti×N)/Al≧0.14であるならば、たとえこの鋼が高アルミニウム、即ち0.01%以上を有していても、鋳造鋼粒子構造が50%以上の等軸粒子を含有するであろうことをこの鋼は説明している。
【0043】
例1〜4の比較及び本発明のタイプ409ステンレス溶鋼、並びに例1〜4に記載したのと類似の方法で製造しインゴットに鋳造した、多くの付加的な比較及び本発明のタイプ409ステンレス実験室溶鋼についての鋳造インゴットの組成、TNA及び%EQが表1に要約されている。これらのインゴットについてのTNAの関数としての%EQは図13に示されている。図13は一般に、タイプ409のステンレス鋼について少なくとも50%の微細な等軸粒子を含有する鋳造鋼粒子構造を得るには、少なくとも0.10%のチタン及び0.14以上のTNA、即ち(Ti×N)/Alが必要であることを実証している。
【0044】
例1〜4に記載したのと類似の方法で製造し、インゴットに鋳造した比較及び本発明のタイプ430、タイプ439及びタイプ439Moステンレス鋼についての鋳造実験用インゴットの組成、TNA及び%EQが表3に要約されている。表3は、少なくとも50%の微細な等軸粒子を含有する鋳造鋼粒子構造を得るには、少なくとも0.10%のチタン及び、少なくとも0.20TNA、即ちの(Ti×N)/Alで必要であることを実証している。表1中のタイプ409についての約11%から、表3中のタイプ430、タイプ439及びタイプ439Mo高クロムステンレス鋼についての17%以上へのクロム増加のために、TNAの増加が明らかに必要であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
例5(比較鋼)
125トンの比較のクロム合金化鉄溶鋼をAOD炉に用意した。炭素を最終仕様に減少させた後、溶鋼を最終トリム合金化元素が添加されるLMF炉に移した。その後、溶鋼をチタンで脱酸した。溶鋼の最終組成は、Al0.009%、Ti0.21%、C0.007%、Mn0.26%、Si0.32%、Cr11.2%、Ni0.14%、N0.005%であった。アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.12であった。ついで、溶鋼を約40分以内にキャスターに移し、130mmの厚さ及び1200mmの幅を有する薄いスラブに鋳造した。断面片は中央幅部位及び薄いスラブの長さに沿った幾つかの他の場所から切断した。この鋼のスラブから切断されたこれらの断片の一つの典型的な鋳造粒子構造は図5に示されており、約4mmの平均カラムサイズを有する円柱状粒子構造を有していた。例1の鋼に似たこの鋼は低アルミニウムのみ、即ち0.01%以下を有していることが実証され、主たる等軸粒子の鋳造構造を形成には充分でない。図5は、(Ti×N)/Al<0.14の割合を有するフェライトステンレス鋼は等軸粒子を含まない鋳造鋼粒子構造となることを示している。
【0051】
例6(本発明鋼)
125トンの本発明のクロム合金化鉄溶鋼を例5に記載と類似の方法で製造した。溶鋼の最終組成は、Ti0.23%、Al0.008%、C0.01%、Mn0.27%、Si0.31%、Cr11.1%、Ni0.13%、N0.007%であった。例5と異なり、アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.19に増加した。ついで、溶鋼をキャスターに移し、例5と類似の方法で薄いスラブに鋳造した。このステンレス鋼のスラブの鋳造粒子構造は約84%の微細な粒子構造を有し、図6に示されているように約2mmの平均サイズを有していた。図6は、(Ti×N)/Al≧0.14の割合を有するフェライトステンレス鋼は50%を超える等軸粒子を含む鋳造鋼粒子構造となることを示している。この鋼のスラブは主として酸化チタンの介在物を含有していた。
【0052】
例7(比較鋼)
他の比較のクロム合金化鉄溶鋼を例5のもののように製造した。溶鋼の最終組成は、Ti0.20%、Al0.014%、C0.011%、Mn0.28%、Si0.31%、Cr10.9%、Ni0.12%、N0.0087%であった。例5に似て、アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.11だけであった。ついで、溶鋼をキャスターに移し、例5と類似の方法で薄いスラブに鋳造した。このステンレス鋼のスラブの鋳造粒子構造は図7に示されているように約5mmの平均カラムサイズを有する約94%の大きな円柱状粒子を有していた。図7は、(Ti×N)/Al<0.14の割合を有するフェライトステンレス鋼は非常に極僅かの等軸粒子を含む鋳造鋼粒子構造となることを示している。
【0053】
例8(本発明鋼)
本発明の他のクロム合金化鉄溶鋼を例6のもののように製造した。溶鋼の最終組成は、Ti0.21%、Al0.016%、C0.006%、Mn0.23%、Si0.27%、Cr11.3%、Ni0.11%、N0.011%であった。アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.15であった。ついで、溶鋼をキャスターに移し、例5と類似の方法で薄いスラブに鋳造した。このステンレス鋼のスラブの鋳造粒子構造は図8に示されているように主として微細な等軸粒子構造を有していた。図8は、(Ti×N)/Al≧0.14の割合を有するフェライトステンレス鋼は3mmのサイズを有する63%等軸粒子を含む鋳造鋼粒子構造となることを示している。この鋼はたとえ鋼が高いアルミナ、例えば0.01以上を有していても、割合(Ti×N)/Al≧0.14であるならば、50%以上の微細等軸粒子を含有することができることを説明している。この鋼のスラブは主に酸化チタンの介在物を含有していた。
【0054】
例9(比較鋼)
他の比較のクロム合金化鉄溶鋼を例5のもののように製造した。溶鋼の最終組成は、Ti0.18%、Al0.022%、C0.007%、Mn0.22%、Si0.17%、Cr10.6%、Ni0.14%、N0.010%であった。アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.08だけであった。ついで、溶鋼をキャスターに移し、例5と類似の方法で薄いスラブに鋳造した。このステンレス鋼のスラブの鋳造粒子構造は図9に示されているようにを有する100%の円柱状粒子を有していた。図9は、(Ti×N)/Al<0.14の割合を有するフェライトステンレス鋼は等軸粒子を含まない鋳造鋼粒子構造となることを示している。
【0055】
この溶鋼から鋳造したスラブを1250℃に再加熱し、仕上げ温度800℃で3.3mmの厚さに熱間加工し、700℃の温度に冷却した。熱間加工されたシートを脱スケールし、硝酸及び弗酸で酸洗いし、58%冷間圧延して1.4mmの厚さにした。この熱間加工されたシートは冷間圧延前に焼鈍をしなかった。冷間圧延されたシートを870℃のピーク金属温度で60秒間焼鈍した。延伸後、シートのリジング特性は3〜4、1.022〜1.27のRmであった。3以上のリジング特性は0〜6のスケールにおいて厳しいリジングではないことを意味する。3以上の高いリジング特性及び1.3未満のRmは、多くの深絞り成形露出フェライトステンレス鋼用途には許容しえない。この鋼の機械的性質は表5に要約されている。この鋼の冷間圧延され、焼鈍された粒子構造は、リジングの傾向がある鋼の不均一な「バンド化」粒子構造特性を示す図11に示されている。この不均一なバンド化粒子構造は高い成形性を要求する露出フェライトステンレス鋼用途には許容しえない。円柱状粒子構造を有するスラブから製造された、焼鈍され冷間圧延されたシートは、スラブから熱間圧延されたシートが冷間圧延前に焼鈍されなければ、厳しいリジング特性を経験するであろう。
【0056】
表5
(圧延方向引張試験)
YPE(%) 0.3
2%YS(kg/mm2) 21
UTS(kg/mm2) 41
伸び(%) 34
RB 63
(板幅方向引張試験)
YPE(%) 0.3
0.2%YS(kg/mm2) 22
UTS(kg/mm2) 43
伸び(%) 32
RB 63
Rm 1.24
リジング 3〜4
【0057】
【表6】
【0058】
例10(本発明鋼)
本発明の他のクロム合金化鉄溶鋼を実施例8のもののように製造した。溶鋼の最終組成は、Ti0.19%、Al0.005%、C0.008%、Mn0.12%、Si0.16%、Cr10.7%、Ni0.13%、N0.011%であった。アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.34であった。ついで、溶鋼をキャスターに移し、例5と類似の方法で薄いスラブに鋳造した。図10は、(Ti×N)/Al≧0.23の割合を有するフェライトステンレス鋼は、1mmのサイズを有する100%の微細な等軸粒子を含有する鋳造鋼粒子構造となることを示している。この鋼のスラブは主として酸化チタンの介在物を含有していた。
【0059】
これらの薄いスラブを1250℃に再加熱し、仕上げ温度800℃で3.3mmの厚さに熱間加工し、700℃の温度にコイルした。熱間加工されたシートを脱スケールし、硝酸及び弗酸で酸洗いし、58%冷間圧延して1.4mmの厚さにした。この熱間加工されたシートは冷間圧延前に焼鈍をしなかった。冷間圧延されたシートを870℃のピーク金属温度で60秒間焼鈍した。延伸後、シートのリジング特性は1に減少し、Rmは1.45に増加した。2以下のリジング特性及び少なくとも1.4のRmは、多くの深絞り成形露出フェライトステンレス鋼用途には許容しうるものである。この鋼の機械的性質は表6に要約されている。この鋼の冷間圧延され、焼鈍された粒子構造は、リジングの傾向がある鋼の非常に均一な微細粒子構造を示す図12に示されている。微細等軸粒子構造を有するスラブから製造された本発明の焼鈍冷間圧延されたシートは、熱間圧延されたシートが冷間圧延前に焼鈍されなくても、優れたリジング特性を有していた。
【0060】
表6
(圧延方向引張試験)
YPE(%) 0.0
0.2%YS(kg/mm2) 21
UTS(kg/mm2) 42
伸び(%) 34
RB 64
(板幅方向引張試験)
YPE(%) 0.6
0.2%YS(kg/mm2) 22
UTS(kg/mm2) 43
伸び(%) 34
RB 63
Rm 1.45
リジング 1
【0061】
例11(本発明鋼)
本発明の他のクロム合金化鉄溶鋼を例10のもののように製造した。溶鋼の最終組成は、Ti0.19%、Al0.006%、C0.007%、Mn0.13%、Si0.31%、Cr11.0%、Ni0.16%、N0.008%であった。アルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合は0.24であった。ついで、溶鋼をキャスターに移し、例5と類似の方法で薄いスラブに鋳造した。(Ti×N)/Al≧0.23の割合を有するフェライトステンレス鋼は、1mmのサイズを有する100%の微細な等軸粒子を含有する鋳造鋼粒子構造となった。この鋼のスラブは主として酸化チタンの介在物を含有していた。
【0062】
これらの薄いスラブを1250℃に再加熱し、仕上げ温度800℃で3.0mmの厚さに熱間加工し、700℃の温度にコイルした。熱間加工されたシートを脱スケールし、硝酸及び弗酸で酸洗いし、53%冷間圧延して1.4mmの厚さにした。この熱間加工されたシートは冷間圧延前に焼鈍をしなかった。冷間圧延されたシートを940℃のピーク金属温度で10秒間焼鈍した。延伸後、シートのリジング特性は1〜2であり、Rmは1.39〜1.48であった。2のリジング特性は良好なリジング特性を意味する。本発明の鋼の機械的性質は表7に要約されている。
【0063】
表7
(圧延方向引張試験)
YPE(%) 0.6
0.2%YS(kg/mm2) 21
UTS(kg/mm2) 41
伸び(%) 37
RB 64
(板幅方向引張試験)
YPE(%) 0.6
0.2%YS(kg/mm2) 22
UTS(kg/mm2) 42
伸び(%) 36
RB 63
Rm 1.43
リジング 1〜2
【0064】
例12(本発明鋼)
例11記載の組成の130mm厚さの薄い他のスラブを1250℃に再加熱し、仕上げ温度830℃で4.1mmの厚さに熱間加工し、720℃の温度にコイルした。熱間加工されたシートを脱スケールし、硝酸及び弗酸で酸洗いし、それぞれ66%、76%及び85%冷間圧延して1.4、1.0及び0.6mmの厚さにした。これらの熱間加工されたシートは冷間圧延前に焼鈍をしなかった。冷間圧延されたシートを940℃のピーク金属温度で10秒間焼鈍した。延伸後、シートのリジング特性は一般に2又はそれより良く、Rmは1.76〜1.96であった。Rmが1.7以上は、フェライトステンレス鋼について傑出していると考えられ、この鋼が冷間圧延前に焼鈍されなかったならば不可能であると思われる。本発明の鋼の機械的性質は表8に要約されている。
【0065】
表8
[66%冷間圧延]
(圧延方向引張試験)
YPE(%) 0.4
0.2%YS(kg/mm2) 22
UTS(kg/mm2) 41
伸び(%) 36
RB 64
(板幅方向引張試験)
YPE(%) 0.9
0.2%YS(kg/mm2) 22
UTS(kg/mm2) 41
伸び(%) 37
RB 64
Rm 1.76
リジング 1〜2
【0066】
[76%冷間圧延]
(圧延方向引張試験)
YPE(%) 0.4
0.2%YS(kg/mm2) 22
UTS(kg/mm2) 41
伸び(%) 36
RB 65
(板幅方向引張試験)
YPE(%) 0.5
0.2%YS(kg/mm2) 22
UTS(kg/mm2) 41
伸び(%) 36
RB 66
Rm 1.96
リジング 2
【0067】
[85%冷間圧延]
(圧延方向引張試験)
YPE(%) 0.4
0.2%YS(kg/mm2) 22
UTS(kg/mm2) 41
伸び(%) 34
RB −
(板幅方向引張試験)
YPE(%) 0.4
0.2%YS(kg/mm2) 22
UTS(kg/mm2) 41
伸び(%) 37
RB −
Rm 1.92
リジング 2〜3
【0068】
例5〜11の比較及び本発明のタイプ409ステンレス溶鋼並びに例5〜12に記載のものに類似した方法で製造されそして鋳造された付加的な比較及び本発明のタイプ409ステンレス鋼についての鋳造スラブの組成、TNA及び%EQ、並びに付加的な比較及び本発明のタイプ409ステンレス溶鋼は表2に要約されている。これらのスラブについてTNAの関数としての%EQは図14に示されている。図14は、本発明のタイプ409ステンレス鋼が、50%より多くの微細等軸粒子を含有する鋳造鋼構造を得るためには0.10以上のチタン及び0.14以上のTNA、即ち(Ti×N)/Alが必要であることを一般に実証している。この例外は、ノズルの詰まり問題、即ち過剰なアルミナ介在物を経験し、1545℃以下の低ダンディッシュシュ溶鋼温度となったヒート980460、880459、880463、980655及び980687、980655及980687における一つのスラブであった。従って、本発明の溶鋼は多くのアルミナ介在物のキャスター化を防止するために、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも55℃のスーパーヒートを有する連続鋳造が行われことが好ましい。ヒート880459はチタンで脱酸された後、即ち酸化チタンが多分スラブに移動した後、過剰の炭素が再ブローされる。ヒート880463については異常の無いことが観察された。
【0069】
例5〜11のスラブと同様に製造されそして鋳造された比較及び本発明のタイプ430、タイプ439及びタイプ43909Mo高クロムステンレス溶鋼についての他の鋳造スラブの組成、TNA及び%EQは表4に要約されている。表4は、少なくとも0.10%のチタン及び少なくとも0.30のTNA、即ち(Ti×N)/Alが高クロム合金化鋼について一般に50%以上の微細等軸粒子を含有する鋳造鋼粒子構造となったことを実証している。
【0070】
本発明の一つの非常に重要な利点は、冷間圧延され、再結晶化され、焼鈍された最終製品に関するものである。従来のフェライトステンレス鋼はリジングによる外観に悪影響を与えるのみならず、成形性が劣り、即ち低Rmである。フェライトステンレス鋼が限られた成形性を有する一つの理由は、焼鈍後に不均一な「バンド化」大粒子からなる構造のためである。図11は、アルミニウムで割られたチタン及び窒素の生成物の割合が0.14未満であり且つ50%未満の等軸粒子を含有する鋳造構造を有する比較の従来のフェライトステンレス鋼の焼鈍後の典型的な不均一な粒子構造を示している。本発明は鋳造鋼に形成される微細な粒子構造を与えるので、焼鈍後に微細で均一な粒子構造を首尾よく形成することができる。微細で均一な再結晶された粒子構造を有するフェライトクロム合金化ステンレス鋼を冷間圧延前に焼鈍することなく、一度だけの冷間圧延で形成することができる。
【0071】
本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の改変が本発明に対してなしうることが理解されよう。従って、本発明の限界は特許請求の範囲から決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 0.13のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての100%の大きな円柱状粒子を含有する鋳造粒子構造の写真である。
【図2】 0.16のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての約78%の微細な等軸粒子を含有する鋳造構造の写真である。
【図3】 0.13のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての100%の大きな円柱状粒子を含有する鋳造構造の写真である。
【図4】 0.15のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての約84%の微細な等軸粒子を含有する鋳造構造の写真である。
【図5】 0.12のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての100%の大きな円柱状粒子を含有する鋳造構造の写真である。
【図6】 0.19のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての約92%の微細な等軸粒子を含有する鋳造構造の写真である。
【図7】 0.11のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての約94%の大きな円柱状粒子を含有する鋳造構造の写真である。
【図8】 0.15のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての約63%の微細な等軸粒子を含有する鋳造構造の写真である。
【図9】 0.06のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての約100%の大きな円柱状粒子を含有する鋳造構造の写真である。
【図10】 0.34のアルミニウムで割ったチタンと窒素の生成物の割合を有するフェライトクロム合金化鋼についての約100%の微細な等軸粒子を含有する鋳造構造の写真である。
【図11】 冷間圧延及び再結晶化焼鈍後の図9の比較フェライトクロム合金化鋼の不均一なバンド化粒子構造の写真である。
【図12】 冷間圧延及び再結晶焼鈍後の図10の比較フェライトクロム合金化鋼の均一な微細粒子構造の写真である。
【図13】 フェライトクロム合金化鋼からの実験用インゴット鋳造物についてのアルミニウムにより割ったチタンと窒素の質量%の生成物の割合(TNA)の関数として、鋳造粒子構造中の等軸%(%EQ)を説明するグラフである。
【図14】 フェライトクロム合金化鋼からの連続スラブ鋳造物についてのアルミニウムにより割ったチタンと窒素の質量%の生成物の割合(TNA)の関数として、鋳造粒子構造中の等軸%(%EQ)を説明するグラフである。
Claims (17)
- 全て質量%で、C ≦0.08%、Cr 8%〜25%、Al <0.03%、Mn ≦1.50%、N ≦0.05%、Si ≦1.5%、Ni <2.0%、0.38%≧ Ti ≧0.10%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、且つ(Ti×N)/Al≧0.14の割合を有するクロム合金化フェライト鋼であって、該鋼はチタンで脱酸され、且つ50%を越える等軸粒子の鋳造構造を有するクロム合金化フェライト鋼。
- N ≦0.012%であり、Ti ≦0.25%である請求項1に記載の鋼。
- 等軸粒子が3mm以下のサイズを有する請求項1に記載の鋼。
- Al≦0.013%である請求項1に記載の鋼。
- ニオブ及びバナジウムからなる群から選ばれる第二安定化元素を1.0%以下含有する請求項1に記載の鋼。
- Al<0.02%であり、鋳造構造が60%以上の等軸粒子である請求項1に記載の鋼。
- Al≦0.013%であり、鋳造構造が80%以上の等軸粒子である請求項1に記載の鋼。
- Al≦0.010%であり、(Ti×N)/Al≧0.23の割合を有し、且つ鋳造構造は円柱状粒子を含まない請求項1に記載の鋼。
- シートに成形した請求項1〜8のいずれか一項に記載の鋼であって、熱間加工したシートを冷間圧延した後、再結晶焼鈍し、且つ部品に成形したときにリジングが無い鋼。
- 鋳造鋼が酸化チタン介在物を有し、該介在物の少なくとも90%が1.5μm未満のサイズを有する請求項9に記載の鋼シート。
- Cr ≧16%であり、(Ti×N)/Al≧0.30の割合を有する請求項9に記載の鋼シート。
- 焼鈍したシートがRm≧1.7を有する請求項9に記載の鋼シート。
- 下記:
全て質量%で、C ≦0.08%、Cr 8%〜25%、Al <0.03%、Mn ≦1.50%、N ≦0.05%、Si ≦1.5%、Ni <2.0%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる溶鋼を用意する工程と、
該溶鋼に対して0.38%≧ Ti ≧0.10%、(Ti×N)/Al≧0.14の割合を満たすTiで該溶鋼を脱酸する工程と、
該溶鋼を、50%を越える等軸粒子の鋳造構造を有する鋼に鋳造する工程と、
該鋼をシートに熱間加工する工程と、
該シートを脱スケールする工程と、
該シートを最終厚さに冷間圧延する工程と、
該冷間圧延したシートを再結晶焼鈍する工程と
を包含し、シートを部品に成形したときにリジングが無いクロム合金鋼の製造方法。 - Al <0.020%である請求項13に記載の方法。
- Ti ≧0.15%、(Ti×N)/Al≧0.23であり、且つ(Ti/48)/[(C/12)+(N/14)]>1.5の関係を満足させる請求項14に記載の方法。
- 溶鋼を、140mm以下の厚さを有する薄いスラブに、連続的に鋳造し、シートへの熱間圧延の前に1050〜1300℃の温度へスラブを再加熱する付加工程を有する請求項13に記載の方法。
- 熱間加工したシートを予備焼鈍することなく冷間圧延する請求項13に記載の方法。
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