JP4386976B2 - ジケトン類の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジケトン類の製造方法に関する。本発明の製造方法によって得られるジケトン類は、香料、医薬、農薬等の合成中間体として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
1分子中にカルボニル基を2個有するジケトン類は各種の化合物の合成中間体として有用な化合物である。例えば、2,15−ヘキサデカンジオンは叢香の香気成分であるムスコンの有用な合成中間体であることが知られている。2,15−ヘキサデカンジオンの製造方法はいくつか知られているが、比較的反応工程数の少ないものは以下のとおりである。
▲1▼1,10−ジブロモデカンにアセト酢酸エステルのナトリウム塩を反応させることによってジケトジエステルを合成し、得られたジケトジエステルを酸性条件下で加水分解した後、脱炭酸させる方法〔Helv. Chim. Acta., 30, 2019 (1947)参照〕
▲2▼2,2′:5′,2″−テルチオフェンをリン酸触媒存在下無水酢酸を用いてジアセチル化した後、脱硫黄反応させる方法〔J. Am. Chem. Soc., 82, 1447 (1960) 参照〕。
▲3▼1,6−へキサンジアールをビニルグリニヤール試薬と反応させてビニル化し、さらにアセト酢酸メチルと反応させてアセト酢酸エステルに変換した後、得られたアセト酢酸エステルに対してCarrol転位反応および水素添加反応を施す方法〔欧州特許第400509号明細書参照〕。
▲4▼1,14−テトラデカンジカルボン酸を酸塩化物とした後にメチル銅試薬と反応させる方法〔Bull. Chem. Soc. Jpn., 56, 345 (1983) 参照〕。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の方法には以下に述べるような問題点がある。即ち、反応試薬として、比較的高価なアセト酢酸エステル(▲1▼および▲3▼の製造方法) やビニルグリニヤール試薬(▲3▼の製造方法)、または非常に高価なメチル銅試薬(▲4▼の製造方法)を使用することが必要である。また、出発原料として、非常に高価であり、工業的規模で多量に入手することが困難な2,2′:5′,2″−テルチオフェン(▲2▼の製造方法)や1,14−テトラデカンジカルボン酸(▲4▼の製造方法)を使用することが必要である。また、上記▲1▼の製造方法では、多量(1,10−ジブロモデカン1モル当たり2モル)の臭化ナトリウムが生成し、この塩の処理が煩雑である。
以上のように2,15−ヘキサデカンジオンの製造方法は幾つか知られているが、いずれも工業的に実施する上で有利な方法であるとはいいがたい。
【0004】
しかして、本発明は、2,15−ヘキサデカンジオンを包含する特定の構造を有するジケトン類を安価かつ短工程で工業的に有利に製造できる方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば上記の課題は、式(2)
【化4】
OHC−R−CHO (2)
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の炭化水素基を表す)
で示されるジアルデヒド類と、式(3)
【化5】
COCH (3)
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基または水素原子を表す)
で示されるケトン類と、水素とを、塩基性物質および水素添加触媒の存在下で反応させることからなる式(1)
【化6】
COCH(R)CH−R−CHCH(R)COR (1)
(式中、RおよびRは前記定義と同じであり、RはRと同一の基であるか、またはRが炭素−炭素不飽和結合を有する場合、該不飽和結合の少なくとも一部が水素添加されたものに相当する基であってもよい)
で示されるジケトン類の製造方法を提供することによって解決される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のジケトン類の製造方法は、塩基性物質および水素添加触媒の存在下で、水素とジアルデヒド類とケトン類とを反応させることを特徴とする。ここで、ジアルデヒド類としては、式(2)
【化7】
OHC−R1 −CHO (2)
(式中、R1 は、置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の炭化水素基を表す)
で示される化合物を使用する。ここで、R1 が表す炭素数4以上の2価の炭化水素基としては、例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基;1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロオクチレン基、1,5−シクロオクチレン基等のシクロアルキレン基;フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基等のアリーレン基などが挙げられる。また、R1 はアルケニレン基等の脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有するものであってもよい。R1 の炭素数には特に上限はないが、20以下であることが好ましい。
1 は置換基を有していてもよいが、反応が塩基性物質の存在下で行われる関係上、塩基性条件下で不活性な置換基であることが必要である。このような置換基としては、アルコキシ基、アセタール型に保護されたホルミル基、水酸基等を挙げることができる。
【0007】
式(2)のジアルデヒド類の具体例を示せば、1,6−ヘキサンジアール、2−メチル−1,6−ヘキサンジアール、1,7−ヘプタンジアール、1,8−オクタンジアール、2−メチル−1,8−オクタンジアール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジアール、1,9−ノナンジアール、2−メチル−1,9−ノナンジアール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジアール、1,10−デカンジアール、1,11−ウンデカンジアール、1,12−ドデカンジアール、1,4−シクロヘキサンジカルボアルデヒド、テレフタルアルデヒド等を挙げることができる。
【0008】
式(2)で示されるジアルデヒド類は、対応するジオールを常法に従って酸化することによって、また、ブタジエンの水和二量化によって得られる7−オクテン−1−アール等の不飽和アルデヒドまたは1,7−オクタジエン等のジエン類をヒドロホルミル化することによって製造することができ、安価に工業的規模で入手することができる。
【0009】
式(2)のジアルデヒド類に縮合させるケトン類としては、式(3)
【化8】
COCH (3)
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基または水素原子を表す)
で示されるケトン類を使用する。ここで、RまたはRの置換基を有していてもよい炭素数1〜6の低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基などを挙げることができる。および/またはRは反応に悪影響を及ぼさないものである限り置換基を有していてもよい。
【0010】
式(3)で示されるケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。
これらの中でも本発明の製造方法を実施するに際しては、式(3)のケトン類としてR2 がメチル基であるかまたはR3 が水素原子であるケトン類を使用することが好ましく、アセトンを使用することがより好ましい。
【0011】
以上の式(2)のジアルデヒド類と式(3)のケトン類と水素とから得られる、本発明の目的化合物は、式(1)
【化9】
2 COCH(R3 )CH2 −R4 −CH2 CH(R3 )COR2 (1)
(式中、R2 およびR3 は前記定義と同じであり、R4 はR1 と同一の基であるか、またはR1 が炭素−炭素不飽和結合を有する場合、該不飽和結合の少なくとも一部が水素添加されたものに相当する基であってもよい)
で示されるジケトン類である。
【0012】
次に、本発明の製造方法の反応条件と反応操作について説明する。
本発明において使用する式(2)のジアルデヒド類と式(3)のケトン類の比率は特に限定されないが、一般にケトン類より高価で且つ自己縮合性の高い式(2)のジアルデヒド類基準での目的とするジケトン類の選択率を高めることが工業的に実施する上で有利である。従って、式(3)のケトン類を式(2)のジアルデヒド類1モルに対して通常1.8〜20モル、好ましくは2〜10モル、より好ましくは2.2〜6モルの範囲内で使用する。
【0013】
本発明において使用される塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;1,5−ジアザビシクロ5.4.0ウンデセン−5(DBU)、ピペリジン等のアミン類等を挙げることができる。これらは、一種類のものを使用してもよいし、二種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
また、塩基性物質はそのままの状態で使用することもできるが、水溶液としても使用できる。本発明では、上記の塩基性物質の中でも、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物を使用することが好ましく、その使用形態は、通常0.5〜50重量%の水溶液、好ましくは1〜30重量%の水溶液である。塩基性物質の使用量は、式(2)のジアルデヒド類1モルに対して通常0.01〜0.3モルであるが、反応速度および製造コストの観点から、好ましくは0.02〜0.2モルである。
【0015】
本発明に用いる水素添加触媒としては、一般に、接触水素添加反応に用いられる触媒、中でも、α,β−不飽和カルボニル化合物の炭素−炭素二重結合を選択的に水素添加する際に用いられる触媒を使用することができ、例えば、パラジウム、ロジウム、ニッケル、白金等を活性成分とする触媒を挙げることができる。
これらの水素添加触媒の形態としては、金属単体;金属酸化物あるいは他の金属との合金;活性炭、アルミナ、シリカゲル、ケイソウ土などの担体に担持させたもののいずれであってもよい。これらの中でも、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ、ラネーニッケル、白金カーボン等が好ましく、パラジウムカーボン、パラジウムアルミナ等がより好ましい。
水素添加触媒の使用量は、式(2)のジアルデヒド類1重量部に対して通常0.0005〜0.1重量部であり、反応速度および目的とするジケトン類の製造コストの観点から、式(2)のジアルデヒド類1重量部に対して0.001〜0.03重量部であることが好ましい。
【0016】
本発明において溶媒の使用は必ずしも必要ではないが、反応に悪影響を及ぼさない限り溶媒を使用しても差し支えない。使用可能な溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0017】
本発明の製造方法の具体的な反応操作としては、例えば、所定の反応温度範囲内且つ水素雰囲気下で、式(2)のジアルデヒド類、式(3)のケトン類、塩基性物質および水素添加触媒を、汎用的な装置を用いて通常の操作によって混合するという操作を挙げることができる。この場合、反応に供する各成分の混合順序や混合速度については特に制限はなく、反応に供する全ての成分、即ち、式(2)のジアルデヒド類、式(3)のケトン類、塩基性物質および水素添加触媒を一度に混合してもよく、あるいは式(2)のジアルデヒド類、式(3)のケトン類および塩基性物質のうち1つあるいは2つを水素添加触媒とともに反応容器に仕込み、残りの成分を反応容器内に連続的に添加してもよい。ここで、「連続的に添加」とは、添加すべき成分を複数回に分けて添加することを包含する。特に、各成分の混合方法として、反応の暴走を抑止するために、水素添加触媒を式(3)のケトン類に懸濁させた懸濁液中に塩基性物質と式(2)のジアルデヒド類とをそれぞれ連続的に添加することが好ましい。このようにして各成分を混合することにより、反応の開始から終了までのほとんどの期間中、反応系において式(2)のジアルデヒド類に対して式(3)のケトン類が大過剰存在することになり、結果的に式(2)のジアルデヒド類同士の縮合などによる副反応を抑制できる。
【0018】
反応温度は、通常20〜180℃の範囲内であるが、反応速度を実用的な速さとするためには、40〜140℃の範囲内であることが好ましい。
反応に要する時間は、使用する塩基性物質の種類、濃度や反応温度等により異なるが、前述したように水素添加触媒を式(3)のケトン類に懸濁させた懸濁液中に塩基性物質と式(2)のジアルデヒド類をそれぞれ連続的に添加する場合には、通常、塩基性物質と式(2)のジアルデヒド類の添加に要する時間として0.5〜10時間、添加終了後の追込み時間として0〜20時間である。
なお、塩基性物質と式(2)のジアルデヒド類の添加中および反応の追い込み中は、反応混合物の撹拌を十分に行うことが望ましい。
【0019】
本発明において、水素は、式(2)のジアルデヒド類、式(3)のケトン類、塩基性物質および水素添加触媒の混合物の表面に接触させればよいが、その混合物中に導入(バブリング)してもよい。
反応系中の水素の圧力は、通常1〜100気圧の範囲であるが、1〜10気圧の範囲とすることが好ましい。
【0020】
反応終了後、目的の式(1)のジケトン類は、例えば、反応混合物から水素添加触媒を濾過あるいは遠心分離等によって除いた後の反応液から水層を分離し、残りの有機層を蒸留する方法や、反応混合物から水素添加触媒を濾別し、濾液から目的とするジケトン類を有機溶媒によって抽出し、得られた有機層から有機溶媒を常圧または減圧下に留去する方法、反応混合物から水素添加触媒を濾別し、濾液から水層を分離して得られた有機層の低沸点成分を留去した後、残渣を溶媒を用いて結晶化させる方法などの一般的な手法により単離することができる。なお、上記において抽出に使用する有機溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素溶媒などが挙げられる。
かくして得られた式(1)のジケトン類は、減圧蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶等の常法によりさらに純度を高めることができる。
【0021】
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、式(2)のジアルデヒド類と式(3)のケトン類と水素とを、塩基性物質および水素添加触媒の存在下で反応させることにより、一段階で式(1)のジケトン類を製造することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
攪拌機を備えた内容積1リットルのステンレス製オートクレーブにアセトン27.4g(0.47モル)および2%水酸化ナトリウム水溶液24.0g(12ミリモルの水酸化ナトリウムを含有する)を仕込み、窒素雰囲気下10%パラジウムカーボン(水素添加触媒)0.08gを加え、オートクレーブの内温を100℃まで昇温した。その後、オートクレーブ内に水素を導入し、オートクレーブ内の圧力を7Kg/cm2 (ゲージ圧)とし〔水素の圧力:3.8Kg/cm2 〕、1,10−デカンジアール20.0g(純度90%、0.112モル)をテトラヒドロフラン100gに溶解してなる溶液を、フィードポンプを用いて上記で得られた混合物中に3時間かけて連続的に添加した。その添加の間、反応混合物の液温を99〜101℃に保持するとともに、反応で消費された分の水素をオートクレーブに供給し、オートクレーブ内の圧力を7Kg/cm2 (ゲージ圧)に維持した。1,10−デカンジアールのテトラヒドロフラン溶液の添加終了後、反応混合物の温度を上記の範囲に保ったまま1.5時間攪拌を続けて反応を追い込み、室温まで冷却したところ白色結晶が析出した。
得られた反応混合物に塩化メチレンを加えて析出した白色結晶を溶解させた後、パラジウムカーボンを濾過により除去し、二層に分かれた濾液から有機層を分離した。得られた有機層から低沸点成分を減圧下に留去し、得られた固体状の残渣をn−ヘキサンを用いて再結晶することにより17.8gの白色結晶(融点:76〜78℃)を得た。
1 H−NMR分析の結果、得られた結晶は2,15−ヘキサデカンジオンであることが分った。1,10−デカンジアール基準での収率は63.1%である。
【0024】
実施例2
攪拌機を備えた内容積1リットルのガラス製オートクレーブにアセトン89.5g(1.54モル)を仕込み、窒素雰囲気下、10%パラジウムカーボン(水素添加触媒)0.22gを加えた。オートクレーブの内温を100℃まで昇温したところ、オートクレーブ内の圧力は約3.2Kg/cm2 (ゲージ圧)となった。オートクレーブ内に水素を導入し、オートクレーブ内の圧力を6.9Kg/cm2 (ゲージ圧)とし〔水素の圧力:3.7Kg/cm2 〕、次いで、2%水酸化ナトリウム水溶液125.0g(63ミリモルの水酸化ナトリウムを含有する)および1,9−ノナンジアールと2−メチル−1,8−オクタンジアールの混合物(前者/後者=75/25)109.2g(0.7モル)を、それぞれフィードポンプを用いて上記で得られた混合物中に200分かけて連続的に添加した。その添加の間、反応混合物の液温を96〜102℃に保持するとともに、オートクレーブ内の圧力が6.9Kg/cm2 (ゲージ圧)に維持されるように反応で消費された分の水素をオートクレーブに供給した。水酸化ナトリウム水溶液と1,9−ノナンジアールと2−メチル−1,8−オクタンジアールの混合物の添加終了後、反応混合物の温度を上記の範囲に保持したまま1.5時間攪拌を続けて反応を追い込み、室温まで冷却したところ白色結晶が析出した。
得られた反応混合物に塩化メチレンを加えて析出した白色結晶を溶解させた後、パラジウムカーボンを濾過により除去し、二層に分かれた濾液から有機層を分離した。得られた有機層から低沸点成分を減圧下に留去し、得られた固体状の残渣をn−ヘキサンを用いて再結晶することにより58.3gの白色結晶を得た。また再結晶母液を濃縮し、再度n−ヘキサンから再結晶することにより23.2gの白色結晶を得た。上記で得られた合計で81.5gの白色結晶の融点は73〜75℃であった。
1 H−NMR分析の結果、得られた結晶は2,14−ペンタデカンジオンであることが分った。1,9−ノナンジアール基準での収率は64.7%である。
さらに、上記において23.2gの白色結晶を取得した後の再結晶母液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、2−メチル−1,8−オクタンジアールとアセトンが反応した形の5−メチル−2,13−テトラデカンジオンを得た。このものの物性値を以下に示す。
低分解能マススペクトル(EIMS)
m/z:240(M+
【0025】
実施例3
攪拌機を備えた内容積1リットルのガラス製オートクレーブにアセトン82.3g(1.42モル)および2%水酸化ナトリウム水溶液71.0g(36ミリモルの水酸化ナトリウムを含有する)を仕込み、窒素雰囲気下、5%パラジウムカーボン(水素添加触媒)0.09gを加え、オートクレーブの内温を100℃まで昇温した。その後、オートクレーブ内に水素を導入し、オートクレーブ内の圧力を7.0Kg/cm2 (ゲージ圧)とし、1,6−ヘキサンジアール45.0g(純度:90%、355ミリモル)を、フィードポンプを用いて上記で得られた混合物中に220分かけて連続的に添加した。その添加の間、反応混合物の液温を99〜101℃に保持するとともに、オートクレーブ内の圧力が7.0Kg/cm2 (ゲージ圧)に維持されるように反応で消費された分の水素をオートクレーブに供給した。1,6−ヘキサンジアールの添加終了後、反応混合液の温度を上記の範囲に保持したまま0.5時間攪拌を続けて反応を追い込み、室温まで冷却した。
反応混合物からパラジウムカーボンを濾過により除去した後、二層に分離した濾液から有機層を分離し、ガスクロマトグラフィー〔キャピラリーカラム:CBP−10(商品名、島津製作所(株)社製)、カラム長:50m、カラム温度:70℃→170℃(昇温速度:5℃/分)〕で分析したところ、有機層中に2,11−ドデカンジオンが37.1g(1,6−ヘキサンジアール基準での収率:52.8%)含まれていることが分った。上記で得られた有機層を減圧下に蒸留することによって、2,11−ドデカンジオン(b.p.:82℃/10mmHg、純度:91%)を30.4g得た。
【0026】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、特定のジアルデヒド類とケトン類と水素とを、塩基性物質と水素添加触媒の存在下で反応させることにより、一段階で対応するジケトン類を安価に製造することができる。

Claims (3)

  1. 式(2)
    Figure 0004386976
    (式中、R は、置換基を有していてもよい炭素数4以上の2価の炭化水素基を表す)
    で示されるジアルデヒド類と、式(3)
    Figure 0004386976
    (式中、R は置換基を有していてもよい低級アルキル基を表し、R は置換基を有していてもよい低級アルキル基または水素原子を表す)
    で示されるケトン類と、水素とを、塩基性物質および水素添加触媒の存在下で反応させることからなる式(1)
    Figure 0004386976
    (式中、R およびR は前記定義と同じであり、R はR と同一の基であるか、またはR が炭素−炭素不飽和結合を有する場合、該不飽和結合の少なくとも一部が水素添加されたものに相当する基であってもよい)
    で示されるジケトン類の製造方法であって、該塩基性物質が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、およびアルカリ金属の炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物であるジケトン類の製造方法
  2. 塩基性物質が、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である請求項1に記載のジケトン類の製造方法。
  3. 式(3)のケトン類がアセトン(Rがメチル基であり、Rが水素原子である)である請求項1〜のいずれか1項に記載のジケトン類の製造方法。
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