JP4386407B2 - 位相差補償システム及び液晶プロジェクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フルカラー画像表示のために3種類の基本色光ごとに液晶素子が用いられた三板式の液晶プロジェクタに効果的な位相差補償システム及び、この位相差補償システムを備えた液晶プロジェクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
米国特許第5638197号明細書
【特許文献2】
特開2002−14345号公報
【特許文献3】
特開2002−31782号公報
【特許文献4】
特開2002−131750号公報
【非特許文献1】
Eblen J P 他5名. 「Birefringent Compensators for Normally White TN-LCDs」. SID Symposium Digest. SOCIETY FOR INFORMATION DISPLAY. 1994. p.245-248
【0003】
三板式の液晶プロジェクタは、青色光,緑色光,赤色光の3種類の基本色光ごとに液晶素子が用いられている。それぞれの色チャンネルごとに液晶素子によって光変調された基本色光は合成プリズムなどにより合成され、投影レンズによりスクリーンに投影される。スクリーンの前面から画像の投影を行うフロント方式とスクリーンの背面から投影を行うリア方式とがあり、また使用する液晶素子が透過型のものであるか反射型のものであるかによって全体的な光学系に相違はあるが、いずれにせよ投影する画像を基本色光ごとに液晶素子に表示し、これに対応した基本色光で照明を与えて投影レンズでスクリーン上に画像を結像させる構成となっている。
【0004】
液晶プロジェクタの液晶素子には種々の動作モードのものを用いることが可能であるが、多用されているTN(Twisted Nematic)液晶について説明する。TN液晶は、2枚の基板間で液晶層を構成している液晶分子が、その長軸が基板と平行となるように保たれ、かつ厚み方向では長軸が少しずつ傾けられ全体で90°ねじられる配向状態となっており、一対の偏光板(一方が偏光子、他方が検光子となる)で挟むようにして用いられる。そして、液晶素子をノーマリーホワイト,ノーマリーブラックのいずれで使用するかに応じて、一対の偏光板はクロスニコル配置あるいはパラレルニコル配置のいずれかが選択される。
【0005】
ところで、TN液晶に限らず、一般に液晶素子には視野角が狭いという欠点がある。ノーマリーホワイトのTN液晶を例にすると、液晶層に電圧を印加していない状態では、液晶層は偏光板を通ってきた直線偏光を液晶分子のねじれ配列にしたがって偏波面を90°回転させる旋光性を示す。そして、液晶層を通過してきた直線偏光はクロスニコル配置された他方の偏光板を通って出射し、ホワイト状態となる。液晶層に電圧を印加すると液晶分子のねじれが消失し、入射した直線偏光はそのままの偏波面で出射することになるため、他方の偏光板がその通過を阻止してブラック状態となる。
【0006】
ところが、液晶は複屈折媒体としても作用する。前述したTN液晶の場合、液晶層に電圧を印加してそのねじれ配向を消失させてゆく過程では、旋光性と複屈折性とが混在し、電圧の印加レベルが高くなるにつれて複屈折性が支配的になってゆく。そして、液晶分子のねじれが消失してブラック状態となったとき、垂直入射光に対しては液晶層が複屈折性を示すことはほとんどなくなるので直線偏光はそのまま透過するが、斜め入射光に対しては複屈折性を示し、直線偏光で入射した光は楕円偏光に変調されるようになる。こうして生じた楕円偏光は部分的に出射側の偏光板を透過し、ブラック状態の濃度を薄める結果となる。液晶層がもつこのような複屈折媒体としての性向は、ホワイト状態からブラック状態への移行過程でも徐々に現れるため、中間調の表示状態下でもその表示画面を斜め方向から観察したときにはやはり変調度の角度依存性が避けられないものとなる。このような変調度の角度依存性はTN液晶に限らず、大なり小なり全ての液晶素子に見られる現象である。
【0007】
液晶素子のもつ上記欠点を改善するために、液晶素子に表示された画像を直接観察する直視型の液晶表示装置では位相差補償素子を併用することが知られている。この目的で使用される位相差補償素子としては、富士写真フイルム(株)製の「Fuji WV Film ワイドビューA」(商品名/以下、WVフイルム)がすでに実用化され、また上記非特許文献1には、薄膜を積層した構造性複屈折体を位相差補償素子として用いることにより、視野角を大きくしてもTN液晶の表示画像のコントラストを低下させないことが紹介されている。さらに特許文献1には、基板に対して斜め方向から薄膜を蒸着した位相差補償素子を用い、その光学異方性により液晶ディスプレイの視野角を広げることが記載されている。
【0008】
これらの位相差補償素子は直視型の液晶素子に適用されるものであるが、直視型の液晶素子は、明視距離以上離れた位置から表示画面にほぼ正対して画像観察されるのが通常の使用形態であることが多い。そして、仮に表示画面の周辺部でコントラストが低下して観察されたときには、眼の位置を少しずらしてやればその部分の画像もほぼ正常に観察することができる。また、多人数が同時に観察する用途のものは表示画面と観察者との間の距離が大きくなるため、正常に観察できる範囲は限られるものの、表示画像のコントラストが部分的に異なるということは起こりにくい。
【0009】
これに対し、液晶プロジェクタでは液晶素子によって変調された画像光が投影レンズでスクリーンに投影され、それがスクリーン上で拡散した画像光となって観察対象となる。したがって黒レベルを表示したいときに、液晶層に斜めに入射して液晶分子を斜めに通過する光が含まれることが原因となって、投影画像そのもののコントラストが低下してしまうと、例えどのような位置から観察したとしてもコントラストの低下は全く改善されることがない。投影画像のコントラストをできるだけ高めるには、液晶素子から大きな角度で出射する光束を使わずに投影画像が得られるようにすればよいが、そのためには投影レンズのバックフォーカスを長くする必要があり、小型化が求められる液晶プロジェクタではコンパクト化を図るうえで不利になる。このような難点を原理的に解決するには、液晶プロジェクタに用いる液晶素子についても、やはり直視型液晶パネルでいう視野角の拡大技術を利用することが効果的で、結果的に投影画像のコントラストを向上させることができるようになる。
【0010】
こうした背景から、コントラスト向上の目的で液晶プロジェクタ用の液晶素子についても、直視型液晶素子と同様に位相差補償素子を組み合わせて使用することが特許文献2,特許文献3に記載されている。特許文献2に記載された液晶プロジェクタでは、TN液晶用の位相差補償素子として、前述したWVフイルムのように有機材料で構成されたものが用いられている。また、特許文献3には、位相差補償素子として単結晶サファイアや水晶などの一軸性の複屈折性結晶を用いることが記載されている。また、特許文献4には、光学位相補償板としてディスコティック液晶を用いたものが記載されている。これらの位相差補償素子は、いずれも光の入射角に依存した光学異方性を発現する複屈折体として作用し、液晶素子から大きな出射角で出射する光束によって画像のコントラストが低下することを防いでいる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般に有機材料からなる位相差補償素子は、紫外線を含む強い光に長時間曝されていると褪色が生じやすい。特に液晶プロジェクタに用いる場合には、スクリーンに画像投影を行うために直視型の液晶モニタなどと比較して光源の輝度も高くなり、過熱の度合いも大きくなることから、実用的には2000〜3000時間程度で徐々に褐色に変化する傾向にある。したがって、例えば家庭用プロジェクションテレビジョンなどのように長時間にわたって使用される用途では耐久性の点で問題があり実用化は難しい面がある。一方、単結晶サファイヤや水晶などの複屈折体を用いた位相差補償素子は、耐久性では問題はないものの、サファイヤや水晶などの結晶自体が高価であり、また結晶の切り出し面や厚みを高精度に管理しなくてはならず、しかも光学系中に組み込むときの調整も面倒であり、一般普及型の液晶プロジェクタに適用することはコスト面での不利が大きい。
【0012】
また、フルカラーでの画像投影を行うために、液晶プロジェクタには赤色光,緑色光,青色光の基本色光ごとに3つの液晶素子が用いられ、これらの液晶素子で変調された各色光が合成プリズムで合成され、投影レンズを経てスクリーンに投影されるようになっている。ところが、これまでに用いられている位相差補償素子は基本色光の種類によらず同じものが用いられているため、例えば緑色光について適切な位相差補償を行ったとしても、赤色光や青色光については位相差補償作用が適切に行われるとは言い難い。したがって、例えばスクリーン上に黒レベル表示を行ったときには、黒の輝度が上昇してコントラストが低下するだけでなく、低輝度領域のカラーバランスがくずれて黒が着色するという問題も生じてくる。
【0013】
本発明は上記背景を考慮してなされたもので、家庭用テレビジョンのような長時間の使用に対しても耐久性に優れ、しかも製造コストの負担も少ない位相差補償素子を用いることによって、スクリーンに投影される画像自体のコントラストを向上させ、かつ低輝度領域のカラーバランスもずれないようにした位相差補償システム及び、この位相差補償システムを用いた液晶プロジェクタを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するにあたり、液晶素子を通過する光線が複屈折することによって生じる位相差を基本色光ごとに補償する三板式の位相差補償システムを採用している。本発明の三板式の位相差補償システムには、基本色光の光路中に設けられた各々の液晶素子の入射面側又は出射面側の少なくともいずれかに配置される位相差補償素子をそれぞれ無機材料から構成するとともに、これらの位相差補償素子として少なくとも2種類のものが用いられている。これらの位相差補償素子としては、それぞれ無機の高屈折率薄膜層と低屈折率薄膜層とを交互に積層した位相差補償膜を効果的に用いることができ、この場合、各々の薄膜層はそれぞれの基本色光の基準波長の100分の1以上5分の1以下の光学膜厚にするのがよい。また、基本色光の種類によらず、各々の高屈折率薄膜層を構成する高屈折材料と低屈折率薄膜層を構成する低屈折材料とを共通の材料にしたことも本発明の特徴的構成の一つである。さらに、少なくとも最も短波長の基本色光が通過する位相差補償膜の膜厚が、他の基本色光が通過する前記位相差補償膜の膜厚よりも小さいことも本発明の特有の構成である。
【0016】
本発明に用いられる位相差補償素子の基本的な作用は概念的に次のとおりである。図1において、液晶素子2は内面側にそれぞれ配向膜を形成した透明なベース基板3bと対向基板3aとの間に、液晶分子からなる液晶層5を封入した構造となっている。それぞれの基板3a,3bには画素ごとに液晶層5を駆動するためのマトリクス電極やコモン電極,透明導電膜なども設けられているが、図示は省略してある。液晶素子2の前段には偏光子が配置してあり、入射光S1は直線偏光となって液晶素子2に入射する。
【0017】
周知のように、棒状の液晶分子の集合体からなる液晶層5はポジティブレターダーとして作用する。このため、入射光S1は正常光成分Soと異常光成分Seとなって液晶層5を通過する間に、異常光成分Seが正常光成分Soに対して位相遅れを生じる。この位相差P1は、液晶層5を構成している液晶分子固有の光学異方性に依存した複屈折Δn1と液晶層5の厚みd1との積「d1Δn1」で規定される特徴値に依存して決まり、この特徴値は結晶光学的にはレターデーション(Retardation )として定義されている。そして、液晶層5のレターデーションをR1とすると、位相差P1は「P1=αR1(=αd1Δn1)」となる。この係数αの値は、光の入射角θや、液晶分子の配向姿勢、印加電圧などによって変化する外的なファクターを括り出したもので「0」以上「1」未満の値となる。
【0018】
液晶素子2からの出射光S2は、正常光成分Soと、これに対して位相遅れを伴った異常光成分Seとの合成光となるため、入射光S1が直線偏光光であっても位相差Raに応じた楕円偏光成分を含むものとなる。この楕円偏光成分を抑えるには液晶層5による位相遅れを補償すればよく、そのために液晶素子2の出射面と検光子との間に位相差補償素子6が設けられる。
【0019】
位相差補償素子6は、透明な基板7に無機材料からなる位相差補償膜8を形成したもので、異常光成分Seに対して正常光成分Soに位相遅れを生じさせるネガティブレターダーとして作用する。位相差補償膜8は結晶光学的には液晶分子と構造が異なるが、その光学異方性で決まる複屈折Δn2と、位相差補償膜8全体の物理的膜厚d2から、そのレターデーションR2(=d2Δn2)を定義することができ、異常光成分Seに対する正常光成分Soの位相差P2は「P2=βR2(=βd2Δn2)」となる。そして「P1=P2」であれば、位相差補償素子6からの出射光S3は互いに位相遅れのない正常光成分と異常光成分との合成光となり、楕円偏光成分が消失して直線偏光となって出射する。したがって、位相差補償素子6の後段に配置された検光子には直線偏光が入射するようになり、画像のコントラストを高めるうえで非常に有効なものとなる。
【0020】
なお、係数βは係数αと同様、光の入射角θに応じて変化するが、図示のように光線が同じ入射角で液晶素子2及び位相差補償素子6を通過する場合には、互いに相殺し合うことができるので入射角θによる影響は無視することができる。したがって、「P1=P2」を満足させようとする上では、係数αに含まれるファクターのうち、液晶分子の配向姿勢や印加電圧など、液晶素子2自体に依存する内的なファクターだけを考慮すればよい。また、便宜上、複屈折Δn1,Δn2の正負の符号は無視しているが、必要に応じてその正負については明示することとする。
【0021】
上記のように、液晶素子2で生じる位相差P1と、位相差補償素子6で生じる位相差P2とをできるだけ等しくすること、換言すればそれぞれのレターデーションR1,R2をできるだけ一致させることが本発明の目的を達成するうえで効果的であることが分かる。しかし、液晶素子2にはTNモードやECB(Electrically Controlled Birefringence)モードなど、様々な液晶モードのものがあり、また位相差補償素子6にも、その内部の結晶光学的な構造により、ネガティブレターダー以外にもa−plate,o−plateといった一軸性の構造やその積層体など、様々な構造のものがある。したがって、上記のように「R1=R2」をできるだけ満足させるには、これらのことを考慮しつつ、位相差補償膜8のレターデーションR2を決めているパラメータ(d2,Δn2)を調節する必要がある。以下、TN液晶とECB液晶を例にしてこれらのパラメータを決定する手法について説明する。
【0022】
以下の説明で重要なことは、液晶層5の正の複屈折Δn1と、位相差補償膜8の負の複屈折Δn2がそれぞれ固有の波長依存性をもつことである。前述のように、位相差P1,P2を一致させるにはそれぞれのレターデーションR1,R2を合わせておくことが必要であるが、これらのレターデーションの一要素である複屈折Δn1,Δn2に波長依存性がない場合や、波長依存性をほぼ同一にすることができるのであれば、位相差補償膜8のレターデーションR2を決定するときに、入射角θと同様に波長のファクターを外的要因として無視して差し支えないが、複屈折Δn1,Δn2には個別の波長依存性がある。
【0023】
ここで、一般的な液晶層5のレターデーションR1(=d1Δn1)と位相差補償膜8のレターデーションR2(=d2Δn2)との波長依存性をグラフ化すると、模式的に図2のように表される。図示のように、液晶層5のレターデーションR1は、可視光領域では短波長側で大きくなり、長波長となるにしたがってゆるやかに減少する特性を示す。また、位相差補償膜8のレターデーションR2は、液晶層5と同様に短波長側で大きく長波長側で小さくなるものの、特に短波長側でその傾きが急になることが多い。それぞれの厚みd1,d2は波長とは無関係の物理量であるから、この波長依存性は複屈折Δn1,Δn2によるものである。
【0024】
図2に示すグラフは、可視光領域において、液晶層5がもつ特定のレターデーションR1に対し、特定の複屈折Δn2をもつ位相差補償層8のレターデーションR2をできるだけ近づけるように厚みd2を調節し、緑色光の基準波長550nm(視感度のピークに相当)で両者を一致させた状態を表している。厚みd2の調節により、位相差補償膜8のレターデーションR2を上下方向にシフトさせることは可能であるが、その傾きは複屈折Δn2の波長依存性に応じてそのまま保存されてしまい、特に短波長側でのズレを解消することはできない。
【0025】
三板方式の液晶プロジェクタでは、各基本色光とも共通諸元の液晶素子が用いられているので、基本色光ごとに位相差P1,P2が大きく異なる場合には、位相差補償素子のレターデーションR2を調節する必要がある。そこで本発明では、これに対処する最も簡便な手法として、図3に示すように、青色,緑色,赤色の各基本色光の波長領域をそれぞれ400nm〜500nm、500nm〜600nm、600nm〜700nmに区画したとき、青色光領域で用いられる位相差補償素子6については、位相差補償膜8の厚みd2が薄くなるように調節し、波長域400nm〜500nmでレターデーションR2B の特性を得、しかも青色光の基準波長450nmで液晶層5のレターデーションR1と一致させるようにしている。この結果、液晶層5の複屈折Δn1の波長依存性と、位相差補償膜8の複屈折Δn2の波長依存性とを一致させなくても、可視光領域のほぼ全域にわたって各々のレターデーションを実用上問題のない程度まで合わせることが可能となる。
【0026】
さらに、長波長側での改善をはかるべく、図4に示すように赤色光領域で用いる位相差補償素子6については、その位相差補償膜8の厚みd2を増やすように調節してレターデーションR2R の特性を得るとともに、赤色光の基準波長650nmで各々の位相差を一致させてもよい。これらの手法は、厚みd2をそれぞれの基本色光の波長に応じて調節するだけで、位相差補償膜8自体の結晶光学的な構造で決まる複屈折Δn2を変える必要がなく、 量産適性に優れている。
【0027】
ところで、例えば液晶素子2としてECB液晶を用いることを想定すると、ECB液晶は、電圧を印加していない状態で液晶層内の棒状の液晶分子のほとんどが基板に対して垂直配向となっており、結晶光学的には正のc−plateである。そして、電圧を印加していないときに黒レベル表示となるように偏光子と検光子とをクロスニコル配置して用いるのが通常であるから、入射光S1に対して液晶層5の厚みd1内の全域で光学異方性が現れるようになる。
【0028】
一方、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した位相差補償膜8は、負ではあるがECB液晶と同様のc−plateとして作用するから、液晶層5で生じる位相差P1(=αd1Δn1)中の係数αは「1」とみなして差し支えない。したがって、基本的には「d1Δn1=d2Δn2」、すなわち液晶層5のレターデーションR1と位相差補償膜8のレターデーションR2とをできるだけ一致させることを基準にパラメータの設定をすればよい。
【0029】
これに対し、TN液晶では、黒レベル表示を行うときに電圧を印加して基板間に充填された棒状の液晶分子を垂直配向させることになるが、基板近くでは液晶分子が垂直配向姿勢にならない。印加電圧を高くすれば垂直配向となる液晶分子が多くなるものの、黒レベル表示に際して垂直配向姿勢となる液晶分子の割合は厚みd1に対して60%〜95%、あるいは65%〜80%程度が一般である。このため、厚みd1の液晶層5で生じる位相差P1は「d1Δn1」よりも小さくなるから、位相差補償膜8の設計時にはこれを考慮してパラメータの設定を行い、簡易的には先の係数αを0.7にして「0.7×d1Δn1=d2Δn2」が満足されるような位相差補償膜を用いればよい。なお、同様の傾向はOCBモード液晶やSNTモード液晶でも見られる。
【0030】
本発明では、上述した位相差補償膜8は耐久性に優れた無機材料で構成され、その具体的一例として高屈折率薄膜層と低屈折率薄膜層とを交互に積層した位相差補償膜が用いられる。このような位相差補償膜がもつ複屈折の波長依存性についてさらに考察する。
【0031】
青色光,緑色光,赤色光の基準波長を450nm,550nm,650nm、各々の基準波長における位相差補償膜の複屈折をΔn2(450) ,Δn2(550) ,Δn2(650) とし、複屈折Δn2の波長依存性U2を
U2={Δn2(450) −Δn2(650) }/Δn2(550)
と定義すると、無機材料からなる位相差補償膜では波長依存性U2が1.10〜1.50の範囲となる。同様に、液晶層の複屈折Δn1の波長依存性U1を
U1={Δn1(450) −Δn1(650) }/Δn1(550)
と定義すると、波長依存性U1は一般に1.05〜1.20の範囲となる。
【0032】
そして、可視光全域にわたってU1=U2が満足されることが理想であるが、液晶層を構成している液晶分子は実用面から種類が限られ、したがってその複屈折Δn1の波長依存性U1は大きく変えることができない物性値となっている。そこで、位相差補償膜の複屈折Δn2の波長依存性U2を波長依存性U1に近づける設計が行われるが、波長依存性U2は高屈折率薄膜層及び低屈折率薄膜層に用いられている薄膜層の物性値によるものであり、また波長に関する位相差補償の成立条件は、厚みd2の選択による。
【0033】
以上のことから、まず位相差補償膜の波長依存性U2が液晶層の波長依存性U1にできるだけ近づくように、高屈折率薄膜層に用いる高屈折材料と、低屈折率薄膜層に用いる低屈折材料を選択する。ついで、全可視光領域を考慮のうえで位相差補償膜の全体の厚みd2を調節すればよい。なお、各々の波長依存性U1,U2がほぼ一致していれば、厚みd2を調節するだけで可視光域のほぼ全域にわたって良好な位相差補償作用が得られるが、後述するように現時点で実用されている高屈折材料と低屈折材料との組み合わせでは、両者間に少なからず隔たりが生じてくる。このとき、図3及び図4に示すように、基本色光ごとに色チャンネルが独立した三板方式の液晶プロジェクタでは、基本色光ごとに厚さd2の調節が可能となる。
【0034】
波長依存性U1,U2をほぼ一致させることができない大きな要因は、高屈折材料がもつ屈折率の波長依存性と低屈折率材料がもつ屈折率の波長依存性とが相違することにあり、特に屈折率が大きい材料ほどその波長依存性も大きく、短波長側で顕著になる傾向がある。さらに、高屈折材料の屈折率波長依存性は成膜条件によっても左右される。そこで、屈折率があまり大きくない材料の中から、高屈折率材料と低屈折率材料とを選択すればその波長依存性を抑えるうえでは有利になるが、そのような組み合わせでは位相差補償膜の複屈折Δn2が小さくなり、所望の位相差Rbを得るには厚みd2を大きくしなければならず、製造適性の面では不利になる。以上の考察を踏まえ、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0035】
【発明の実施の形態】
図5に本発明を適用したリア方式の液晶プロジェクタの外観を示す。筐体10の前面に拡散透過型のスクリーン11が設けられ、その背面に投影された画像が前面側から観察される。筐体10の内部には投影ユニット12が組み込まれ、その投影画像はミラー13,14で反射されスクリーン11の背面に結像される。筐体10の内部にはチューナー回路などのほか、ビデオ信号及び音声信号再生用の周知の回路ユニットが組み込まれ、投影ユニット12に画像表示手段として設けられた液晶素子にビデオ信号の再生画像を表示することによって、この液晶プロジェクタは、大画面のテレビジョンとして使用することができる。
【0036】
図6に投影ユニット12の構成を概略的に示す。この投影ユニット12には透過型の三枚の液晶素子20R,20G,20Bが組み込まれ、フルカラーで画像投影を行うことができる。光源21からの放射光は、紫外線及び赤外線をカットするフィルタ22を透過することにより、フルカラー画像表示に必要な3種類の基本色光である赤色光,緑色光,青色光を含む白色光となり、光源から液晶素子に至る照明光軸にしたがってガラスロッド23に入射する。ガラスロッド23の光入射面は、光源21に用いられている放物面鏡の焦点位置近傍に位置し、光源21からの光は効率的にガラスロッド23に入射する。
【0037】
ガラスロッド23の出射面に対峙してリレーレンズ24が配設され、ガラスロッド23からの白色光は、リレーレンズ24及び後段のコリメートレンズ25により平行光となってミラー26に入射する。ミラー26で反射された白色光は、赤色光だけを透過するダイクロイックミラー28Rで2光束に分けられ、透過した赤色光はミラー29で反射して液晶素子20Rを背面から照明する。また、ダイクロイックミラー28Rで反射された緑色光と青色光は、緑色光だけを反射するダイクロイックミラー28Gでさらに2光束に分割される。ダイクロイックミラー28Gで反射された緑色光は液晶素子20Gを背面側から照明する。ダイクロイックミラー28Gを透過した青色光は、ミラー28B,30で反射され、液晶素子20Bを背面から照明する。
【0038】
各々の液晶素子20R,20G,20Bはそれぞれ同一諸元をもつTN液晶で構成され、その各々には、フルカラー画像を構成する赤色画像,緑色画像,青色画像の濃度パターン画像が表示される。これらの液晶素子20R,20G,20Bから光学的に等距離となる位置に中心がくるように合成プリズム32が配置され、合成プリズム32の出射面に対面して投影レンズ33が設けられている。合成プリズム32は、その内部に2面のダイクロイック面32a,32bを有し、液晶素子20Rを透過してきた赤色光、液晶素子20Gを透過してきた緑色光、液晶素子20Bを透過してきた青色光を合成して投影レンズ33に入射させる。投影レンズ33は、その物体側焦点面が液晶素子20R,20G,20Bの出射面に一致し、像面側焦点面がスクリーン11に一致するようにしてあるから、合成プリズム32で合成されたフルカラー画像はスクリーン11に結像されることになる。
【0039】
液晶素子20R,20G,20Bの照明光の入射面側には、それぞれ偏光板35R,35G,35Bが設けられている。また、各液晶素子の出射面側には、位相差補償素子36R,36G,36Bと、偏光板37R,37G,37Bとが設けられている。入射面側の偏光板35R,35G,35Bと出射面側の偏光板37R,37G,37Bはクロスニコル配置となっており、入射面側の偏光板は偏光子、出射面側の偏光板は検光子として作用する。なお、それぞれの色チャンネルごとに設けられた液晶素子、その両側にそれぞれ設けられた位相差補償素子の作用は、詳しくは後述するようにそれぞれの基本色光に基づく相違はあるものの、基本的には共通である。
【0040】
図7に位相差補償素子36Gの概略断面を示す。位相差補償素子36Gは無機材料からなる構造性複屈折体で構成され、透明なガラス基板40上に互いに屈折率が異なる誘電体の薄膜L1,L2を交互に積層した総厚みd2の多層膜で構成されている。各層の光学膜厚(物理的膜厚と屈折率との積)は光の波長よりも充分に小さく、好ましくはλ/100〜λ/5、より好ましくはλ/50〜λ/5、実際的にはλ/30〜λ/10が適切である。この方法で、容易に負のc−plateの作成が可能となり、複屈折Δn2をもつ一軸性の負の複屈折板として薄膜の形成面が投影光軸に垂直となるように配置して用いられる。
【0041】
なお、屈折率が異なる誘電体薄膜を積層した多層膜により固有の光学的作用を得るものとして、ダイクロイックミラー、偏光ビームスプリッター、色合成プリズム、反射防止膜などが知られているが、これらの多層膜を構成する個々の薄膜層は、いずれもその光学膜厚がλ/4の整数倍となるように設計され、光の干渉現象を利用して所期の目的を達成するものである。この点、上述した多層膜は、個々の薄膜L1,L2の光学膜厚がλ/4よりも薄いことや、2種類の薄膜の光学膜厚の比によって固有の複屈折Δnが決められることなどから、光の干渉現象とは全く異なる作用原理に基づくものである。
【0042】
他の色チャンネルに用いられている位相差補償素子36R,36Bも同様に、ガラス基板上に互いに屈折率が異なる誘電体の薄膜L1,L2を交互に積層した多層膜で構成され、薄膜L1,L2には同じ薄膜材料が用いられている。ただし、青色チャンネルの位相差補償素子36Bについては、総厚みがd2よりも薄くしてある。総厚みをd2よりも薄くするには、薄膜L1,L2の積層数を減らすことで簡単に対応することが可能であるが、積層数を同じにして個々の薄膜L1,L2を薄くすることで対応してもよい。
【0043】
これらの位相差補償素子36R,36G,36Bは、基本色光ごとに液晶素子20R,20G、20Bを通過してくる楕円偏光成分を含む色光に対して負の位相差補償作用を示し、各色光を直線偏光に戻してそれぞれの偏光板37R,37G,37Bに入射させる。したがって、液晶素子20R,20G、20Bの電極間に電圧を印加してスクリーン11上に黒表示を行おうとする場合、偏光板37R,37G,37Bによる光遮断機能が良好に発揮され、黒レベルのコントラストを向上させることができる。
【0044】
また、液晶素子20R,20G、20Bが呈する複屈折作用には波長依存性があり、各々の基本色光ごとに全く同一構成の位相差補償素子36R,36G,36Bを用いた場合には特に青色光の位相差補償機能が低下する。ところが、青色光用の位相差補償素子36Bについては多層膜の総厚みを他よりも薄くしてあるから、液晶素子20Bによって生じる正の位相差が位相差補償素子36Bによって生じる負の位相差で相殺され、全基本色光で良好な位相差補償を行うことが可能となる。
【0045】
【実施例】
[実施例1]
以下、位相差補償素子36R,36G,36Bの具体的な実施例について説明する。図8は、TN液晶に用いたネマティック液晶材料がもつ複屈折Δnと、TN液晶のセル厚d(図1における液晶層5の厚みd1に対応する)を4.5μmにしたときの原初的なレターデーションdΔnとの波長依存性を示すもので、図示のとおりそれぞれの値は波長によって異なってくる。そして、前述のようにTN液晶は黒レベル表示においてセル内の液晶分子の全てが垂直配向姿勢になるわけではないので、セル厚dの略70%に相当する液晶層の部分が、補償すべき位相遅れを生じさせる実効的な要因として寄与しているものとし、これを実効レターデーションReとして表すと同図のとおりである。
【0046】
なお、この実施例の液晶素子では、メルク社の「ZLI−1083」(商品名)として知られるシアノシクロヘキサン系ネマティック液晶を用いている。先のパーセンテージは、液晶層を構成している液晶分子の組成や種類、あるいは基板間への印加電圧レベルや液晶分子の配向姿勢分布に応じて適宜に変更すべきであり、必ずしも一律に70%に限られるものではない。
【0047】
このTN液晶の実効レターデーションReがもつ波長依存性に適合させるために、図9に示すように、高屈折率層にTiO2 膜、低屈折率層にSiO2 膜とを交互に積層した位相差補償膜(1) を用いた。これらのTiO2 膜及びSiO2 膜は、その個々の物理的膜厚がそれぞれ30nm,20nm(物理的膜厚比が3:2)で、各々40層ずつ合計80層積層され、合計の物理的膜厚は2μmである。そして、同図に示すとおりTiO2 膜及びSiO2 膜の屈折率にも波長依存性がある。この位相差補償膜(1) の複屈折Δnを測定したところ、同図に示すようにやはり波長依存性が認められた。
【0048】
なお、物理的膜厚が30nm,20nmのTiO2 膜,SiO2 膜の光学膜厚は、屈折率が大きい400nmにおいてもそれぞれ76.6nm,29.6nmでいずれもλ/5以下であり、青色光の基準波長450nmや他の基本色光の基準波長においてもこの条件は満たされる。この条件が満たされることによって、λ/4の光学膜厚を基準にした従来の干渉薄膜とは異なり、これらの積層膜に本発明システムに必須である光学異方性をもたせることができる。また、個々の薄膜層の光学膜厚をλ/100よりも薄くすると、各々の薄膜層の物理的膜厚は極端に薄いものになる。したがって、所望の総膜厚dを得るには各々の薄膜層の積層数が大幅に増え、製造効率が著しく劣化してしまうので実用的ではない。
【0049】
ここで、上記構造をもつ位相差補償膜(1) の複屈折Δnが、構造性複屈折の理論から予想される理論値とよく一致することを示す。一般に、屈折率n1 ,n2 、物理的膜厚がa,bである薄膜を波長よりも十分に短いピッチa+bで交互に積層した位相差補償膜に対し、各層の積層面に電磁波が垂直に入射した場合には、電場が各層の平面に平行に振動する波(TE波)だけになるため、複屈折性を示さない。ところが、電磁波が各層の積層面に傾斜して入射した場合には、電場が各層に平行に振動する波(TE波成分)と、電場が各層に垂直に振動する波(TM波成分)とで有効屈折率NTE,NTMが異なり、それぞれ次式で表されることが知られている。
NTE=√{(an1 2+bn2 2)/(a+b)}
NTM=√〔(a+b)/{(a/n1 2)+(b/n2 2)}〕
【0050】
これらの有効屈折率NTE,NTMの相違が複屈折性を生じさせる要因であり、その複屈折Δnは「Δn=NTM−NTE」で与えられる。これらの式から求めた複屈折Δnの理論値を図9に示す実測値と比較すると、両者がよく一致していることが了解できる。
【0051】
この位相差補償膜(1) のレターデーションdΔnは、波長ごとの複屈折Δnと、位相差補償膜の膜厚d(=2μm)との積であるから、同図に示すように波長ごとに異なってくる。なお、この図9からは、TiO2 膜及びSiO2 膜の屈折率の波長依存性を比較したとき、複屈折Δnの波長依存性に対する影響力は、SiO2 膜よりもTiO2 膜の方が大きいということも読み取ることができる。
【0052】
図10は、図8に示すTN液晶のレターデーションdΔn(□)及び実効レターデーションRe(○)と、位相差補償膜(1) のレターデーションdΔn(▲)とを波長ごとにプロットしたもので、実効レターデーション(○)と位相差補償膜(1) のレターデーション(▲)とが重なり合うほど良好な位相差補償効果が得られることを表している。同図によれば、位相差補償膜(1) は波長500nm〜700nmの領域ではほぼ満足し得る効果が得られるものの、500nmよりも短波長側では過補償の傾向を示すことがわかる。したがって、青色光,緑色光,赤色光の各基本色光に対し、一定の厚みd=2μmにした同一の位相差補償膜(1) を適用したのでは、可視光領域中の最も短波長側の青色光については十分な位相差補償効果が得られないことになる。
【0053】
この問題は、図11に示すように、位相差補償膜(1) を青色光用に適用する場合には、青色光のほぼ中間の基準波長450nmにおけるレターデーション▲が実効レターデーション○一致するようにその全体厚みdを調整すれば、位相差補償膜(1) の複屈折Δnを変えなくても改善することができる。さらに、赤色光についてもそのほぼ中間の基準波長650nmでレターデーション▲と実効レターデーション○とが一致するように赤色光用の位相差補償膜(1) の全体厚みdを増やすことで改善が可能となる。
【0054】
図12はこうして設計された位相差補償膜の物性値を示すもので、薄膜の積層構造自体は全く共通であるが、その全体の厚みdが基本色光ごとに調整されている。すなわち、青色光用のものはd=1.8μm、緑色光用のものはd=2μm、赤色光用のものはd=2.1μmにしてある。これにより図11に示すように位相差補償膜(1) のレターデーションdΔnを基本色光ごとに変えることができ、良好な位相差補償効果が得られた。
【0055】
このように、各々の基本色光ごとに位相差補償膜によるレターデーションを調整するにあたっては、その複屈折Δnが各層の屈折率n1 ,n2 と各々の物理的膜厚の比で決まることを利用し、基本色光ごとに用いられる位相差補償膜(1) のTiO2 膜とSiO2 膜の物理的膜厚を同じにして複屈折Δnも一律のものにしておき、基本色光の種類に応じてそれぞれの位相差補償膜の合計層数を変えて膜厚dを調整することが望ましい。そして上記実施例では、位相差補償膜(1) のレターデーションを基本色光ごとに調整するにあたり、緑色光用のものは合計積層数を80層とし、青色光用のものは合計積層数を72層、赤色光用のものは82層にすることで対応している。なお、図10に示すように、この位相差補償膜(1) を用いる場合、波長500nm〜700nmの領域ではレターデーション▲と実効レターデーション○とがほぼ一致しているとみなせば、緑色光用位相差補償膜を赤色光用にそのまま用い、2種類の位相差補償膜(1) で可視光全域をカバーすることも可能である。
【0056】
以上の設計手順を踏まえ、基本色光ごとに膜厚を調整した3種類の位相差補償膜(1) をそれぞれガラス基板に蒸着し、液晶プロジェクタの各色チャンネルに設けられたTN液晶素子の出射側基板に密着して装備した。そして、基本色光ごとに対策を施していない位相子補償素子を用いた従来の液晶プロジェクタとの比較のために、両者に各基本色光とも黒レベルを表示する信号を入力してスクリーン上に黒色表示の投影テストを行った。
【0057】
従来の位相差補償素子を用いた液晶プロジェクタでは、スクリーン上で黒色が青味を帯びて観察されたのに対し、本発明の位相差補償素子を用いたものではほとんど色味のない黒色表示となった。青色だけのグラデーション表示を行った結果では、黒色に近い低輝度の範囲では従来のものよりも低輝度が得られただけでなく、輝度レベルが異なる領域でもレベル差が明瞭な差として表現できることが確認された。
【0058】
また、全面白色表示と全面黒色表示との間でコントラストを測定したところ、従来のものでは500:1程度であったものが、本発明のものでは700:1まで改善された。これらの結果から、本発明の位相差補償システムによれば、黒色に近い低輝度の範囲で特に表現力を増す効果があり、一般のフルカラー画像の投影時においても、黒を引き締めて画像の鮮明度を向上させる効果がある。
【0059】
[実施例2]
上記位相差補償膜(1) は、図6に示す液晶プロジェクタで使用される液晶素子20R,20G,20BとしてTN液晶が用いられる場合のものであるが、液晶素子としてECB液晶が用いられる場合の実施例について説明する。ECB液晶は図13に示す物性をもち、セル厚を4.5μmとすれば、複屈折Δnの波長依存性により、レターデーションdΔnにも波長依存性が現れる。前述のように、ECB液晶では液晶素子の波長ごとのレターデーションdΔnがそのまま位相差を発現させる要因になるから、これを踏まえて位相差補償膜のレターデーションを調節すればよい。
【0060】
図14に、このECB液晶用の位相差補償膜(2) の設計例を示す。高屈折率層としてTiO2 膜、低屈折率層としてSiO2 膜を用い、まず波長500nmでのレターデーションがECB液晶のレターデーション「0.558nm」とほぼ一致するように多層膜設計を行った。そこで、TiO2 膜,SiO2 膜の物理的膜厚をそれぞれ30nm,20nmとして各々の膜厚比を先の位相差補償膜(1) と同様に3:2とし、これらを交互に58層ずつ合計116層積層して総厚みd=2.9μmの位相差補償膜(2) を得た。したがって、この位相差補償膜(2) の波長ごとの複屈折Δnも先の実施例と同様になるから、そのレターデーションdΔnは膜厚d(=2.9μm)を乗じて図示のとおりとなった。
【0061】
この位相差補償膜(2) のレターデーション▲と、ECB液晶のレターデーション□とを波長ごとにプロットすると、図15のとおりである。このグラフからわかるように、やはり短波長になるほど位相差補償膜(2) では過補償となり、長波長側では補償不足傾向となることがわかった。そこで、図16に示すように、青色光用の位相差補償膜については、基準波長450nmで各々のレターデーションを一致させ、赤色光用の位相差補償膜については基準波長650nmで両者を一致させるために、図17に示すように青色光用,赤色光用のものについて合計膜厚dの調節を行った。
【0062】
合計膜厚dを調節するにあたっては、先の実施例と同様に、青色光用のものについては合計厚みdが2.5μmとなるように薄膜の合計の積層数を100層とし、赤色光用のものについては合計厚みdが3.0μmとなるように合計積層数を120層にした。これにより、可視光領域においては図16に示すように基本色光ごとに改善されたレターデーション特性を得ることができた。なお、図18は赤色光用に緑色光用の位相差補償膜をそのまま用いた場合の特性を示したもので、実用的にはこれで対応することも可能である。また、波長600nmで位相差補償膜(2) のレターデーションはECB液晶のレターデーションとが一致するように、この緑色光・赤色光共用の位相差補償膜の合計膜厚をわずかに増やすようにしてもよい。
【0063】
以上の手順で基本色光ごとの位相差補償膜(2) をガラス基板に蒸着形成し、液晶素子として垂直配向ECB液晶セルが用いられている液晶プロジェクタに先のテストと同様にして組み合わせ、従来の位相差補償素子を用いた場合と比較テストを行った。黒レベル表示の比較を行ったところ、従来のものはやはり青味を帯びた黒表示になったのに対し、本発明を適用したものでは色味のない黒色表示となった。また、青色だけのグラデーション表示を行った結果でも、黒色に近い低輝度の範囲では従来のものよりも低輝度が得られ、輝度レベルの差も明瞭な差として表現できることが確認された。全面白色表示と全面黒色表示との間でコントラストを測定したところ、従来のものでは800:1程度であったが、本発明のものでは1100:1となり、本発明の位相差補償システムによれば、黒色に近い低輝度の範囲で特に表現力を増し、一般のフルカラー画像でも黒を引き締めて画像の鮮明度を向上させ得ることがわかった。
【0064】
上述した実施例1,2により、本発明の位相差補償システムを用いれば、液晶プロジェクタのコントラストと色バランスの改善が可能であることが例示された。このシステムの特徴は、少なくとも青色光チャンネルに装備する無機材料からなる高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した位相差補償膜の物理的構造を、他の色光チャンネルで用いられる位相差補償膜と異なるようにした点にある。物理的構造を変えるには、薄膜材料、各薄膜層の膜厚、合計膜厚のいずれを変えてもよいが、先の実施例では高屈折率層と低屈折率層との合計積層数を変えたことが特徴となっている。
【0065】
この手法の有利な点としては、基本色光ごとに用いられる少なくとも2種類以上の位相差補償膜が、その高屈折率層及び低屈折率層を得るための材料を共通にして設計できることが挙げられ、さらに各々の膜厚も共通にできることにある。したがって、物理的構造を変えるにしても、合計の積層数という容易に制御できるパラメータを変えることが対応でき、品質を一定に保ちながら量産がしやすいという製造上での大きな利点がある。
【0066】
なお、基本色光ごとに位相差補償膜を構成するにあたっては、それぞれ高屈折率層と低屈折率層の物理的膜厚比を変更して複屈折Δnを変え、これらの複屈折Δnの値に応じて各々の全体の膜厚dを決めることもできる。さらに、基本色光ごとに組み合わせが異なる高屈折材料と低屈折率材料とを用いて各薄膜層を形成することも可能である。
【0067】
上記の高屈折率層及び低屈折率層は、真空蒸着やスパッタリングで任意の膜厚で形成することができる。特に、2種類の蒸着材料を用いて高屈折率層と低屈折率層とを交互に成膜してゆくには、成膜対象となる透明な基板に対して各々の蒸発源を遮蔽することができるようにそれぞれシャッタを設け、これらのシャッタを交互に開閉して2種類の薄膜層を交互に積層したり、あるいは基板を一定の速さで循環移動する基板ホルダに保持させ、基板を循環移動させる過程でそれぞれの蒸発源の上を通過させることによって順次に2種類の薄膜を交互に積層させるなどの手法を取ることができる。また、高屈折率層及び低屈折率層を得るための無機材料には、上述したTiO2 やSiO2 以外にも、ZrO2 、MgO、CeO2 、SnO2 、Ta2 O5 、Y2 O3 、LiNbO3 、MgF2 、CaF2 、Al2 O3 など、公知の種々の蒸着材料を用いることができる。
【0068】
上述した多層膜からなる位相差補償素子を透過型の液晶素子と組み合わせて用いる場合、図6に示す例では、位相差補償素子36R,36G,36Bが液晶素子20R,20G,20Bの出射面側と検光子となる偏光板37R,37G,37Bとの間に配置されているが、基本的には各液晶素子20R,20G,20Bの入射面側と偏光子となる偏光板35R,35G,35Bとの間に配置して用いることも可能である。
【0069】
さらに、図19に示すように、偏光子50と液晶素子51の入射面との間に第1の位相差補償素子52を設け、液晶素子51の出射面と検光子53との間に第2の位相差補償素子54を設けるようにしてもよい。この場合には、液晶素子51で生じる位相差を第1,第2の位相差補償素子52,54の組み合わせで補償すればよい。したがって、例えば図17に示す改良された位相差補償膜(2) の赤色光用位相差補償膜について言えば、位相差補償素子52,54に形成される位相差補償膜の合計膜厚dをそれぞれ1.5μmずつにしたり、あるいは一方を1.0μm、他方を2.0μmにするなどの調整が可能となる。
【0070】
このような分割使用ができることは、例えば一つの位相差補償膜で位相差補償を行おうとしたとき、その合計膜厚が厚くなり過ぎる場合に有利である。多層膜の合計膜厚が厚くなってくると、蒸着材料の種類にもよるが、一般にクラックが生じやすくなったり、あるいは製造の歩留りが悪くなる傾向が出てくるが、こうした問題も位相差補償膜を分割して用いることによって簡単に解決することができるようになる。
【0071】
さらに、液晶プロジェクタには反射型の液晶素子が用いられることもある。反射型の液晶素子は液晶層の背後にミラーを配置した構造をもち、入射光は液晶素子を2度通過してから出射する。したがって、液晶層で生じる位相差がセル厚の2倍になることを考慮して設計を行えばよい。例えば反射型の液晶素子56をオフアクシス(入射光軸と反射光軸とが別)で使用する際に、図20(A)に示すように、液晶素子56に近接して位相差補償素子57を配置し、偏光子58と検光子59と組み合わせる場合には、入射光は液晶層を2度通過するが位相差補償素子57についても2度通過することになるから、前述した実施例のように、液晶素子のセル厚(液晶層の厚みd)を基準にした設計を行えばよい。
【0072】
また、図20(B)に示すように、液晶素子56の入射面側(あるいは出射面側)だけに位相差補償素子60を配置する場合には、液晶素子56のセル厚を2倍に見込んだ設計を行う必要がある。なお、液晶素子56の入射面側と出射面側にそれぞれ個別に位相差補償素子を配置することも可能で、その場合には液晶素子56のセル厚を基準にした薄膜設計を行えばよい。もちろん、セル厚を2倍に見込んだうえで設計を行ったうえで、図19の例と同様に、入射面側と出射面側に任意の比率で分割使用することも可能である。
【0073】
以上に説明した位相差補償膜は、結晶光学的には一軸性の負のc−plateとして機能する構造性複屈折体であるが、同様の機能を発揮する無機材料からなる構造性複屈折体として、例えば図21に示すものも本発明の位相差補償素子として用いることができる。この構造性複屈折体70は、透明な支持体となるガラス基板66の表面に、屈折率nA の透明な板状突起67を格子状に配列したものである。
【0074】
この構造性複屈折体70の物理的構造を構成している板状突起67の厚みd,高さh及び配列間隔は光の波長に対して充分に小さく、例えば板状突起67の厚みdに屈折率nA を乗じた光学膜厚がλ/100〜λ/5、好ましくはλ/50〜λ/5、実際的にはλ/30〜λ/10程度であればよく、光学異方性を示さない光学軸70aは図示の方向となる。液晶プロジェクタに組み込むときには、上記構造が形成されているガラス基板66の表面が照明光軸あるいは投影光軸と垂直になるように配置され、a−plateとして用いられる。そして、照明光軸または投影光軸と直交する面内で板状突起67が一次元で配列されているため、その一次元配列の方向で空気層の屈折率(=1)と板状突起67の屈折率nA とが交互に分布するようになる。
【0075】
この構造性複屈折体70の複屈折Δnは、板状突起67の厚みSと、その相互間の間隔で決まり、レターデーションは板状突起67の高さhとの積hΔnとなる。そして、板状突起67の屈折率nA のもつ波長依存性により、複屈折Δnも波長依存性を示すから、先の実施例と同様に基本色光の種類、特に短波長側で位相差補償量もかなり違った値になる。これに対処するには板状突起67の高さhを基本色光の種類に応じて調変えてレターデーションの調節を行えばよい。
【0076】
さらに、図22に示すように、ガラス基板66上に透明な板状突起71を傾斜して配列した構造性複屈折体72も用いることができる。この構造性複屈折体72も負の一軸性複屈折体として作用し、上記構造が形成されたガラス基板66の面が照明光軸あるいは投影光軸と垂直になるように配置され、o−plateとして用いられる。この構造性複屈折体72も、先の構造性複屈折体70と同様に、板状突起71の高さhを調節することによって、基本色光の種類に応じてレターデーションを調節することができる。
【0077】
これらの構造性複屈折体70,72のもつ物理的な繰り返し構造パターンは、フォトリソグラフィーにより作成することができる。なお、負の一軸性複屈折体としての作用を得るためには、それぞれの板状突起67,71の幅dに対する高さhで表されるアスペクト比を充分に大きくしておく必要がある。このアスペクト比が充分に大きくない場合には、屈折率楕円体のnx ,ny ,nz が全て異なる2軸性複屈折体となる。さらにアスペクト比が小さくなると、極限的には正のa−plateになる。
【0078】
正のa−plateは基板の面内に光学軸があるので、基板と垂直な方向に進む偏光に対して、偏光方向によって異なる位相差を引き起こす位相差板である。その特殊な例として、直線偏光に対して方位角45°となるように配置され、レターデーションdΔnが波長の1/4となるa−plateは、直線偏光を円偏光に変換する機能を示す。このようなa−plateは、4分の1波長板として反射型の液晶素子との組み合わせで多用されている。図23に正のa−plateとして作用する構造性複屈折体の一例を示す。この構造性複屈折体75は、ガラス基板66の表面に所定の屈折率をもつ透明な誘電体による突状74を一定ピッチで格子状に配列することによって構成され、突条74の幅W及び突条74の相互間隔、並びに高さhは波長よりも十分に小さくしてある。
【0079】
光学軸75aは図示のように格子構造と平行となる。液晶プロジェクタに組み込むときには、上記構造が形成されたガラス基板66の表面が照明光軸あるいは投影光軸に垂直になるように配置され、やはり照明光軸または投影光軸と直交する面内で屈折率が異なる部分が一次元配列となる。レターデーションは、突条74の高さhと、突条74の屈折率及びその微細構造で決まる複屈折Δnとの積となるから、基本色光の種類に応じて高さhを調節することによって、レターデーションの調節が可能となる。なお、高さhが波長に対して大きくなると光学異方性が一軸からずれて二軸となる。さらに大きくなると負のa−plateに近づく。また、突条74による格子構造は空気層に接していてもよいが、他の異なる屈折率をもった誘電体層で、突条74の相互間を埋めるように全体的に覆うようにしてもよい。
【0080】
正の構造性複屈折体は、図24,図25,図26に示すような形態でも得ることができる。図24に示す構造性複屈折体77は、ガラス基板66の表面に所定の屈折率をもつ透明な誘電体からなる多数の突起76を垂直に林立させたもので、突起76のサイズや配列ピッチは光の波長に比して充分に小さく、結晶光学的には正のc−plateとなる。ガラス基板66の表面が照明光軸または投影光軸と直交するように配置されるため、屈折率の異なる部分が照明光軸または投影光軸と直交する面内で二次元に分布するようになる。このような構造をもつ構造性複屈折体77もフォトリソグラフィーで作成が可能であり、その光学軸77aはガラス基板66の表面に垂直となる。そして、突起76の高さhを調節して、基本色光の種類に応じたレターデーションの調節を行うことができる。
【0081】
図25に示す構造性複屈折体80は正のo−plateとして作用する。この構造性複屈折体80は、ガラス基板66の表面に所定の屈折率をもつ透明な突起81を一定の傾斜角度で規則的に林立させたもので、フォトリソグラフィーにより作成可能である。やはり、これらの構造のサイズや繰り返しピッチは光の波長よりも充分に小さくしておく必要があり、構造表面は空気層あるいは別の透明な誘電体層のいずれに接していてもよい。光学軸80aは、図示のようにガラス基板66の表面に対して傾斜し、突起81の傾斜方向と平行になる。同様に、突起81の高さhを調節することによって、基本色光の種類に応じたレターデーションの調節が可能である。
【0082】
正のo−plateを作成するにあたっては、図26に示すように、ガラス基板66の表面に対し、斜め方向から所定の屈折率をもつ一種類の誘電体を蒸着した誘電体層84を形成することによっても得られる(米国特許第5638197号公報明細書(前掲特許文献1)参照)。この方法によれば、光の波長に対して充分に小さい物理的構造を簡単に得ることができる。なお、同図中に示す斜線は、ガラス基板66に斜め方向から成膜を行ったことを模式的に表すためのもので、それぞれ個別の薄膜層を表すものではない。この構造性複屈折体83も、ガラス基板66の表面が照明光軸または投影光軸と垂直になるように配置して用いられ、斜設した誘電体層84がo−plate複屈折体の光学異方性を示す。そして、誘電体層84の高さhを調節することによって、基本色光の種類に応じたレターデーションの調節が可能である。
【0083】
図21〜図26に挙げた構造性複屈折体70,72,80,83は、高屈折率薄膜層と低屈折率薄膜層とを交互に積層した前記位相差補償膜とは物理的構造が異なるが、光軸方向の厚み(高さh)に依存しない微細構造で決まる複屈折Δnを一定のままにしながらも、光軸方向の厚みの調節により基本色光の種類に応じたレターデーションの調節ができるという共通性がある。これにより、いずれのものも製造しやすいという利点があり、量産するうえで有利である。
【0084】
以上、図示した実施形態に基づいて本発明について述べてきたが、液晶素子で生じた位相差の補償のために、上述した構造性複屈折体を組み合わせて使用することも可能で、例えば正の構造性複屈折体と負の構造性複屈折体とを組み合わせて使用することによって、より精密な位相差補償を行うことも可能である。また、本発明を適用し得る液晶素子としても、上述したTN液晶モードやECB液晶モードのものだけでなく、VA(Vertically Aligned)、OCB(Optically Compensated Birefringence )、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)などの各種の動作モードのものであってもよい。
【0085】
さらに、蒸着やスパッタリングによる薄膜層からなる位相差補償膜を作成するにあたっては、その支持体となる基板を、照明光学系あるいは投影光学系を構成するレンズなどの光学部品や、液晶素子の構成部品であるガラス基板などの光学部品に接合したり、これらの光学部品そのものを薄膜層の支持体に兼用させることも可能である。このような工夫により部品点数を減少させ、位置合わせや角度調整を要する箇所を減らすことができる。
【0086】
液晶素子の基板上に位相差補償膜を形成する場合には、液晶素子の外面あるいは内面のいずれに設けることも可能であるが、素子の内面に設ける方が空気との界面の数を減らすことができ、表面反射による画像の劣化や光量ロスを減らすことができる。なお、液晶素子の基板には、画素ごとに信号電圧が印加されるアクティブ側基板と、コモン側電極として利用される対向基板とがあるが、光学的にはそのいずれに位相差補償膜を形成してもよい。また、必要に応じて位相差補償膜の片面または両面に反射防止処理を行うことが望ましい。特に、薄膜層を積層した位相差補償素子の場合には、その作成工程中に干渉薄膜による反射防止処理を施すことができるので、製造効率がよい。
【0087】
薄膜層を積層した位相差補償膜を作成するにあたっては、各層の物理的膜厚比は必ずしも3:2に限られず例えば1:1であってもよく、また2種類の薄膜を交互に積層することにのみ限られない。例えば屈折率が異なる3種類以上の薄膜を適宜の順序,膜厚で積層してもよく、成膜工程の容易さ、各層の内部応力による歪みの吸収、屈折率の波長依存性などを考慮して適宜に設計することが可能である。さらに、上述してきた各種の構造性複屈折体に対して、位相差補償作用を有するとともに特に耐久性に問題のないポリマーフイルムを基材とする位相差補償シートを組み合わせることもまた、本発明の実施形態に含まれる。
【0088】
【発明の効果】
以上に述べたとおり、本発明の位相差補償システムによれば、位相差補償素子を無機材料から構成してその耐久性を著しく向上させることができ、しかも位相差補償に必要な複屈折が波長依存性をもつことに鑑み、フルカラー画像の表示に必要な基本色光の波長を考慮して位相差補償素子の物理的構造を変えるようにしたから、可視光領域の全域にわたってスクリーンに投影される画像のコントラストを向上させ、黒レベルの色味をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】位相差補償作用を説明する概念図である。
【図2】レターデーションの波長依存性を示すグラフである。
【図3】青色光領域でレターデーションを調節するときの説明図である。
【図4】青色光及び赤色光領域でレターデーションを調節するときの説明図である。
【図5】本発明を用いたリア方式の液晶プロジェクタの概略を示す外観図である。
【図6】透過型液晶素子を用いた投影ユニットの概略構成図である。
【図7】位相差補償素子の一例を示す概念図である。
【図8】TN液晶のレターデーションの波長依存性を示す図表である。
【図9】TN液晶用の位相差補償膜(1) の波長依存性を示す図表である。
【図10】TN液晶と位相差補償膜(1) のレターデーション特性を示すグラフである。
【図11】改善された位相差補償膜(1) のレターデーション特性を示すグラフである。
【図12】改善された位相差補償膜(1) の波長依存性を示す図表である。
【図13】ECB液晶のレターデーションの波長依存性を示す図表である。
【図14】ECB液晶用の位相差補償膜(2) の波長依存性を示す図表である。
【図15】ECB液晶と位相差補償膜(2) のレターデーション特性を示すグラフである。
【図16】改善された位相差補償膜(2) のレターデーション特性を示すグラフである。
【図17】改善された位相差補償膜(2) の波長依存性を示す図表である。
【図18】改善された位相差補償膜(2) のレターデーション特性の別の例を示すグラフである。
【図19】位相差補償素子を分割配置した場合の説明図である。
【図20】反射型の液晶素子にオフアクシスで位相差補償素子を組み合わせる場合の説明図である。
【図21】位相差補償素子として適用可能な構造性複屈折体を示す概念図である。
【図22】構造性複屈折体の他の例を示す概念図である。
【図23】構造性複屈折体の別の例を示す概念図である。
【図24】構造性複屈折体のさらに他の例を示す概念図である。
【図25】構造性複屈折体のさらに別の例を示す概念図である。
【図26】構造性複屈折体のさらに別の例を示す概念図である。
【符号の説明】
2 液晶素子
5 液晶層
6 位相差補償素子
11 スクリーン
12 投影ユニット
21 光源
35R,35G,35B 偏光板
36R,36G,36B 位相差補償素子
37R,37G,37B 偏光板
32 合成プリズム
33 投影レンズ
70,72,75,77,80,83 構造性複屈折体
Claims (2)
- 液晶素子を通過する光線の複屈折に伴う位相差を3種類の基本色光ごとに補償する三板式の位相差補償システムであって、この位相差補償システムは、それぞれの基本色光の光路中に配置された液晶素子の入射面側又は出射面側の少なくともいずれかに配置された無機材料からなる少なくとも2種類の位相差補償素子から構成され、
前記位相差補償素子が、それぞれ無機の高屈折率薄膜層と低屈折率薄膜層とを交互に積層した位相差補償膜を備え、
前記高屈折率薄膜層を構成する高屈折材料と、低屈折率薄膜層を構成する低屈折材料が、少なくとも前記2種類の位相差補償膜に関して共通の材料であり、
最も短波長の基本色光が通過する前記位相差補償膜の膜厚が、他の基本色光が通過する前記位相差補償膜の膜厚よりも小さいことを特徴とする位相差補償システム。 - 請求項1に記載の位相差補償システムを備えたことを特徴とする液晶プロジェクタ。
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