JP7477609B2 - 位相差板、液晶プロジェクタ及びコントラスト調整方法 - Google Patents

位相差板、液晶プロジェクタ及びコントラスト調整方法 Download PDF

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Description

本開示は、位相差板、液晶プロジェクタ及びコントラスト調整方法に関する。
位相差板は、位相差補償板として、例えば、VA(Vertical Alignment)モードの液晶表示装置に使用される(特許第4744606号公報参照)。VAモードの液晶表示装置においては、液晶層を挟む偏光子と検光子とは、光を透過するそれぞれの透過軸が直交するクロスニコル配置であり、また、低電圧状態における液晶層の配向が基板面に対して垂直になる。そのため、低電圧状態では偏光子を透過した直線偏光は、偏光軸の向きを保ったまま液晶層を透過して、検光子に入射する。検光子に入射する直線偏光の偏光軸と検光子の透過軸とは直交するため、理論上は検光子を透過する光はなく、黒表示になる。しかし、液晶層は、斜め配向成分に起因して、異なる偏光軸の偏光間で屈折率差を生じるという屈折率異方性(複屈折性とも呼ばれる)を有しているため、液晶層を透過する光は、異なる偏光軸を持つ偏光間で位相差を生じる。偏光間に位相差があると検光子に入射する光は楕円偏光となるため、低電圧状態でも、一部の光が検光子を透過する。これは、黒表示のコントラストの低下をもたらす。位相差補償板は、液晶層内で生じる位相差を補償する。すなわち、位相差補償板は、液晶層に起因する位相差をキャンセルするような位相差を生じさせることにより検光子を透過する光を減らす。黒表示のコントラストを向上させる機能を有する。
特許第4744606号公報に記載されているように、位相差補償板は、一例として、異なる光学異方性を有する複数のプレートの積層体として構成される。特許第4744606号公報には、複数のプレートとして、CプレートとOプレートが記載されている。Cプレートは、屈折率が異なる層をプレートの法線方向に積層したものである。Cプレートは、屈折率異方性を示さない光学軸の向きがプレートの法線と一致しており、法線と異なる方向から入射する光に対しては位相差を生じさせる。
特開平10-81955号公報には、位相差板として用いられる斜方蒸着膜の問題点として、複数の柱状構造体が林立して形成される柱状構造の緩和に起因して、斜方蒸着膜内で光の散乱が起こり、斜方蒸着膜が白濁してしまい、位相差板としての品質が悪化するという問題が生じることが開示されている。柱状構造の緩和とは、林立する複数の柱状構造体に凝集が生じる現象をいう。また、特開平10-81955号公報においては、斜方蒸着膜と正面蒸着膜を交互に積層することにより、膜内での光の散乱を抑えた位相差板を得ることができることが開示されている。
特開2013-113869号公報には、Oプレートの特性を示す屈折率楕円体において、最大の主屈折率を示す軸が、柱状構造体の長手方向である成長方向に略一致することが開示されている。また、このOプレートにおいて、法線方向を基準として柱状構造体の成長方向側に30°傾斜した方向からの位相差Re(30)と、法線方向を基準として成長方向と反対側に30°傾斜した方向からの位相差Re(-30)との比Re(30)/Re(-30)が、3.5以上4.5以下であることが好ましい旨開示されている。
特開2009-145861号公報においても、特開2013-113869号公報と同様に、最大の主屈折率を示す軸が柱状構造体の長手方向と略一致するOプレートが開示されている。また、特開2009-145861号公報においては、Oプレートの位相差比Re(-30)と正面位相差Re(0)とを適切な値に設定することで液晶表示装置において高いコントラストの表示を実現できることが開示されている。
本開示に係る一つの実施形態は、液晶層に起因する位相差を補償して、従来よりも、コントラストを高めることが可能な位相差板、液晶プロジェクタ及びコントラスト調整方法を提供することを目的とする。
本開示の位相差板は、基板と基板の少なくとも一面に形成された位相差膜とを備え、位相差膜は、基板において位相差膜が形成された膜形成面の法線に対して傾斜した柱状構造体を有する斜方膜であり、かつ、光学特性として屈折率異方性を示す位相差板であって、
屈折率異方性を示す二軸性の屈折率楕円体における3つの主屈折率をnx、ny、nzとし、そのうち、柱状構造体の長手方向であるX軸方向の主屈折率をnxとし、X軸に垂直な楕円における長軸方向であるY軸方向の主屈折率をny、短軸方向であるZ軸方向の主屈折率をnzとした場合に、以下の条件式(1)を満足し、
かつ、法線を基準としてX軸側に傾く方向の入射角を正とし、+30°の入射角の入射光の位相差をRe(+30)、-30°の入射角の入射光の位相差をRe(-30)、かつ、Re(+30)とRe(-30)の比である位相差比をRe(30)比とした場合に、下記条件式(2)を満足する。
ny>nx>nz (1)
Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.1~4.0 (2)
本開示の位相差板においては、3つの主屈折率のうちの最大の主屈折率nyに対応するY軸を膜形成面と平行な面に投影したYS軸であり、主屈折率nyに対応して入射光の位相が最も遅れるYS軸を遅相軸、X軸を膜形成面に投影した軸をZS軸とした場合において、遅相軸はZS軸と直交する、ことが好ましい。
本開示の位相差板においては、Re(30)比が、以下の条件式(2-1)を満足する、ことが好ましい。
Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.2~4.0 (2-1)
本開示の位相差板においては、Re(30)比が、以下の条件式(2-2)を満足する、ことが好ましい。
Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.4~3.0 (2-2)
本開示の位相差板においては、Re(30)比は、以下の条件式(2-3)を満足する、ことが好ましい。
Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.5~2.5 (2-3)
本開示の位相差板においては、斜方膜は、Si(珪素)、Nb(ニオブ)、Zr(ジルコニウム),Ti(チタン)、La(ランタン)、Al(アルミニウム)、Hf(ハフニウム)及びTa(タンタル)の少なくとも1種を含有する酸化物からなる、ことが好ましい。
本開示の位相差板においては、位相差膜は2層以上積層されていてもよい。
本開示の位相差板においては、3つの主屈折率のうちの最大の主屈折率nyに対応するY軸を膜形成面と平行な面に投影したYS軸であり、主屈折率nyに対応して入射光の位相が最も遅れるYS軸を遅相軸とし、かつ、基板を、法線を中心に回転させた場合の遅相軸の向きを基板の方位角とした場合において、
0°から360°の方位角の中で、法線に対して+15°の入射角の入射光に対して生じる位相差が最大となる方位角を基準方位角とし、方位角が基準方位角に対して+45°の場合の入射光の第1位相差と、方位角が基準方位角に対して-45°の場合の入射光の第2位相差との差の絶対値が6nm以下である、ことが好ましい。
本開示の位相差板においては、正面位相差が0.1mm~5nmである、ことが好ましい。
本開示の位相差板においては、散乱光の発生の程度を示すヘイズ値が0.3%以下である、ことが好ましい。
本開示の位相差板においては、位相差膜が2枚以上積層されている場合、位相差膜は、基板の両面に一層ずつ形成されている、ことが好ましい。
本開示の位相差板においては、位相差膜が2枚以上積層されている場合、位相差膜は、基板の一面に2層以上積層されており、さらに、隣接する位相差膜間に中間層を備えていてもよい。
本開示の位相差板においては、位相差膜が2枚以上積層されている場合、位相差膜が少なくとも1層形成された基板を複数枚備えていてもよい。
本開示の位相差板においては、位相差膜は2層積層されており、互いの遅相軸が90°から±3°以内の交差角度でずれて配置されていることが好ましい。
本開示の位相差板においては、位相差膜は2層積層されており、互いの正面位相差の差が±3nm以下であることが好ましい。
本開示の位相差板においては、散乱光の発生の程度を示すヘイズ値が0.4%以下である負のCプレートを、さらに備えてもよい。
本開示の位相差板においては、Cプレートが反射防止機能を有する、ことが好ましい。
本開示の位相差板においては、Cプレートを備えた場合、散乱光の発生の程度を示すヘイズ値が1%以下である、ことが好ましい。
本開示の位相差板は、基板と基板の少なくとも一面に形成された位相差膜とを備えた位相差板であって、位相差膜が2層以上積層されており、
基板の位相差膜が形成された膜形成面と平行な面内において、入射光の位相が最も遅れる軸を遅相軸とし、基板を、法線を中心に回転させた場合の遅相軸の向きを基板の方位角とした場合において、
0°から360°の方位角の中で、法線に対して+15°の入射角の入射光に対して生じる位相差が最大となる方位角を基準方位角とし、方位角が基準方位角に対して+45°の場合の入射光の第1位相差と、方位角が基準方位角に対して-45°の場合の入射光の第2位相差との差の絶対値が6nm以下である。
本開示の液晶プロジェクタは、液晶層と、液晶層で生じる位相差を補償する位相差補償素子とを備え、位相差補償素子として、本開示の位相差板を備える。
本開示のコントラスト調整方法は、液晶層と、液晶層で生じる位相差を補償する位相差補償素子を備えた液晶表示素子のコントラスト調整方法であって、
位相差補償素子として、位相差膜が少なくとも1層形成された基板を複数枚備えた位相差板を用い、
位相差膜が少なくとも1層形成された複数の基板のうち、少なくとも1つの基板を、膜形成面に垂直な軸を中心に、他の基板に対して回転させることにより、液晶表示素子のコントラストを調整するコントラスト調整方法である。
液晶表示素子の概略構成及び位相差補償素子の作用を示す図である。 液晶表示素子における液晶分子のプレチルトの説明図である。 第1の実施形態の位相差板の断面図である。 斜方膜の蒸着方法の説明図である。 斜方膜の光学的な性質を表す屈折率楕円体の説明図である。 図5に示す屈折率楕円体の三面図である。図6AはY軸方向視図、図6BはZ軸方向視図、図6CはX軸方向視図である。 位相差板に対する屈折率楕円体の傾きの説明図である。図7Aは屈折率楕円体の全体像を示す図であり、図7Bは屈折率楕円体の膜形成面に平行な断面を示す図である。 屈折率楕円体を位相差板における各軸方向から見た断面図である。 位相差Re(θ)を測定する際の光の入射角度と位相差膜の関係を示す図である。 ヘイズの測定方法を説明する図である。 Re(30)比とヘイズとの関係を示す図である。 基板設置角度ωとRe(30)比との関係を示す図である。 斜方膜における位相差の入射角依存性を示す図である。 成長方向及び成長方向と直交する方向から入射した光に対する位相差を説明するための図である。図14Aは光の入射方向を説明する図であり、図14BはLXに垂直な屈折率楕円体の断面、図14CはLZに垂直な屈折率楕円体の断面図である。 黒表示ムラの評価方法の説明図である。 第2の実施形態の位相差板の概略構成を示す斜視図である。 2層の斜方膜を備えた場合の合成遅相軸の説明図である。図17Aは斜方膜の遅相軸と液晶層の進相軸の関係を示す模式図であり、図17Bは斜方膜の遅相軸の合成についての説明図である。 斜方膜の基板面内光学異方性の説明図である。図18Aは斜方膜における遅相軸及び進相軸を示す図であり、図18Bは、斜方膜の0-180°方位の断面図であり、図18Cは斜方膜の90-270°方位の断面図である。 2層の斜方膜の遅相軸交差角が90°の場合の位相差の方位角依存性を示す図である。 2層の斜方膜の遅相軸交差角が90°からずれている場合の位相差の方位角依存性を示す図である。 2層の斜方膜の遅相軸交差角と位相差板の位相差との関係を示す図である。 2層の斜方膜の正面位相差の差ΔRe(0)と、位相差板の位相差IRe(15)ピーク方位との関係を示す図である。 2層の斜方膜の正面位相差の差ΔRe(0)と、位相差板の位相差IRe(15)ピーク値IRe(15)maxの関係を示す図である。 2層の斜方膜の正面位相差の差ΔRe(0)と、位相差板におけるRe(15)90-Re(15)0であるΔRe(15)との関係を示す図である。 両面に1層ずつの斜方膜を備えた位相差板であって、反射防止膜を備えた位相差板を示す図である。 片面に2層の斜方膜を備えた位相差板を示す図である。 片面に2層の斜方膜を備えた位相差板であって、反射防止膜を備えた位相差板を示す図である。 2層の斜方膜を備えた位相差板についての基板設置角度とヘイズとの関係を示す図である。 2層の斜方膜間に平坦化層を備えた位相差板の概略構成を示す断面図である。 2層の斜方膜間に平坦化層を備えた位相差板についての基板設置角度とヘイズとの関係を示す図である。 斜方膜がそれぞれ別個の基板に備えられている位相差板についての説明図である。 3層の斜方膜を備えた位相差板の一例の層構成を示す図である。 3層の斜方膜を備えた場合の合成遅相軸の説明図である。図33Aは斜方膜の遅相軸と液晶層の進相軸の関係を示す模式図であり、図33Bは斜方膜の遅相軸の合成についての説明図である。 Cプレートを備えた位相差板の説明図である。 Cプレートの説明図である。 Cプレートの位相差の方位角依存性についての説明図である。 基板の片面にのみ形成したCプレートの説明図である。 両面タイプ及び片面タイプのCプレートについてのRe(30)とヘイズとの関係を示す図である。 液晶プロジェクタの外観を示す斜視図である。 液晶プロジェクタの光学的構成を示すブロック図である。
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。
「液晶表示素子」
まず、図1を参照して、本開示の位相差板の一実施形態を位相差補償素子20として備えた液晶表示素子10について説明する。液晶表示素子10は、例えば、後述する液晶プロジェクタ110(図39及び40参照)に備えられる。
液晶表示素子10は、透過型のVAモードの液晶表示素子である。すなわち、液晶表示素子10の液晶層には、無電圧状態で素子表面に対して略垂直に配向する液晶分子が封入されている。液晶表示素子10は、画素ごとに液晶層に印加する電圧を調節して、液晶分子の配向を変化させる。これにより、各画素を透過する光の偏光状態を制御して像を表示する。
図1Aに示すように、液晶表示素子10は、光源側から順に偏光子15、液晶層17、検光子19を備えており、液晶層17と検光子19の間に位相差補償素子20が設けられている。
偏光子15は、入射する光のうち、矢印で示す透過軸T1の方向の偏光成分だけを液晶層17側へ透過させる偏光板である。すなわち、液晶層17に入射する光は、透過軸T1と平行な方向に電場が振動する入射光L0のみとなる。
検光子19は、液晶層17を透過し、位相差補償素子20に位相差を補償された光のうち、矢印で示す透過軸T2の方向の偏光成分だけを透過させる偏光板である。検光子19は、その透過軸T2が偏光子15の透過軸T1の方向と直交するように配される。すなわち、検光子19と偏光子15とは、いわゆるクロスニコルに配置される。したがって、液晶表示素子10を用いる液晶パネルは、無電圧状態で黒色を表示するノーマリーブラックの透過型液晶パネルとなる。
液晶層17は、透明基板71,72と、これら透明基板71,72の間に封入された棒状の液晶分子75とから構成されている。
また、透明基板71,72は、例えばガラス基板77、透明電極78、配向膜79などから構成されている。透明基板71では、光源側から順にガラス基板77、透明電極78、配向膜79が配置される。逆に、透明基板72では、光源側から順に配向膜79、透明電極78、ガラス基板77が配置される。
透明電極78は、透明基板71に設けられたTFT(Thin Film Transistor)回路と接続されている。このTFT回路は、透明基板71上の透明電極78と、共通電極である透明基板72上の透明電極78との間の電圧を制御することで、液晶分子75の配向状態を制御する。
本例において、配向膜79は、その配向方向が偏光子15の透過軸T1の方向と45度の角度をなすように配されている。一対の配向膜79により挟まれた液晶分子は、配向膜79の配向方向に応じて傾斜して配向する。
液晶分子75は、負の誘電異方性を持つ棒状の液晶分子であり、無電圧状態では、液晶表示素子10の表面に略垂直に配向する。このとき、液晶分子75は、液晶層17を透過する光の位相には略影響を与えない。すなわち、無電圧状態の液晶層17を透過する光は、その偏光方向を変化させることなく液晶層17を透過する。
例えば、図1Aに示すように、液晶層17が無電圧状態の場合、入射光L0と略同じ偏光方向の情報光L1が液晶層17から位相差補償素子20に入射する。この情報光L1は、検光子19の透過軸T2と垂直な方向に偏光する光であるから、検光子19を透過することができない。したがって、液晶表示素子10の画素を無電圧状態にすることで、黒色が表示(以下、暗表示)される。
一方、透明基板71の透明電極78と透明基板72の透明電極78との間に電圧が印加されると、液晶分子75は配向膜79の配向方向に傾斜する。このとき液晶分子75は、その傾斜角度に応じて、液晶層17を透過する光の位相を変化させる。すなわち、液晶層17を透過する光は、液晶分子75の傾斜角度に応じて、偏光方向を変化させる。
例えば、図1Bに示すように、液晶層17に電圧が印加されている場合には、多くの液晶分子75は、配向膜79の配向方向に傾斜する。このとき液晶層17を透過する光は、傾斜して配向する液晶分子75によって偏光方向が変化し、結果として、入射光L0と同じ方向の偏光成分と入射光L0に垂直な偏光成分の両方を含む情報光L2となる。この情報光L2は、いわゆる楕円偏光であって、検光子19の透過軸T2に対して平行な偏光成分と垂直な偏光成分とを含む。このうち、検光子19の透過軸と平行な偏光成分だけが検光子19を透過する。したがって、液晶表示素子10の画素を適度な電圧に調節することで、検光子19を透過する光の量が調節され、中間階調色が表示される。
また、例えば、図1Cに示すように、液晶層17に電圧が十分に印加されている場合には、多くの液晶分子75は、配向膜79の配向方向に大きく傾斜して、液晶表示素子10の表面と略平行な向きとなる。このとき液晶層17を透過する光は、略水平に配向した液晶分子75の複屈折により偏光方向が変化し、入射光L0と90度の角度をなす方向に偏光する情報光L3となる。この情報光L3は、検光子19の透過軸T2に平行な方向に偏光する光であるから、検光子19を透過する。したがって、液晶表示素子10の画素に十分な電圧を印加することで、最も明るく表示(以下、明表示)される。
位相差補償素子20は、液晶層17を透過した情報光の位相差を補償するために、前述のように液晶層17と検光子19の間に設けられる。位相差補償素子20の詳細については後述する。
前述したように、液晶表示素子10の画素が無電圧状態である場合、液晶分子75は液晶表示素子10の表面に対して略垂直に配向する。しかし、実際には、図2に示すように、無電圧状態であっても、液晶分子75を垂直方向から5°程度予め意図的に傾斜させている。この傾斜配置は、リバースチルトドメインと呼ばれる液晶分子75の配向欠陥の発生を抑制するために行われる。リバースチルトドメインは、隣接する画素同士間で及ぼし合う電界によって生じる液晶分子75の配向状態の乱れである。
ここで、図2に示すように、液晶表示素子10の表面と平行な面内にY2軸及びZ2軸を定め、液晶表示素子10の表面に垂直な方向、すなわち液晶層17を透過する光の光軸(透過光軸)L0と平行に、光の進行方向を正としてX2軸を定める。また、X2軸及びY2軸は、検光子19及び偏光子15の透過軸とそれぞれ平行になるように定める。したがって、図2に示すように、液晶分子75のチルト方向がY2軸となす角(方位角)γは45°である。
このとき、Y2-Z2平面に対して液晶分子75のなす角が液晶分子75のチルト角βである。チルト角βは、画素ごとに印加される電圧の大きさに応じて、およそ0°以上85°以下の範囲で変化する。チルト角βが略0度である場合は、液晶層17に十分な電圧が印加され、液晶分子75がY2‐Z2平面と平行に配向している状態である。一方、チルト角βが85度である場合は、無電圧状態であって、液晶分子75がY2‐Z2平面に対して略垂直に配向している状態である。この無電圧状態でのチルト角βがプレチルト角であり、配向膜79の配向方向に沿って、X2軸すなわち透過光軸L0に対して5°程度液晶分子75は傾斜している。
また、液晶分子75が前述のようにプレチルトしていると、例えば、黒を表示する画素であっても、液晶分子75のプレチルトに起因する複屈折が生じ、光の一部が検光子19を透過してしまう。したがって、完全な黒状態を表示することができず、投映像のコントラストが低下する。なお、液晶層17における液晶分子75のプレチルト成分に起因する進相軸Fはプレチルト方位に一致する。進相軸Fは、光を透過する媒質において、屈折率が相対的に低く、光の位相が相対的に進む方位に沿った軸をいう。以下において、液晶層17における液晶分子75のプレチルト成分による進相軸Fを、単に液晶層17の進相軸Fという。
位相差補償素子20は、液晶表示素子10で生じる位相差と逆位相の位相差を生じることで、液晶層17を透過した情報光の位相差を補償する。このため、位相差補償素子20は、位相差補償素子20の遅相軸Sを液晶層17のプレチルト成分による進相軸Fと一致するように配置される。遅相軸Sは、進相軸Fとは逆に、光を透過する媒質において、屈折率が相対的に高く、光の位相が相対的に遅れる方位に沿った軸をいう。そのため、位相差補償素子20の遅相軸Sを液晶層17の進相軸Fと一致させて配置すると、液晶分子75のプレチルトによって生じる位相差と、位相差板21によって生じる位相差とは互いに正負が逆になるので、液晶分子75のプレチルトによって生じる位相差を補償することができる。
位相差補償素子20としては、本開示の一実施形態の位相差板21を適用することができる。
「第1の実施形態の位相差板」
図3に示すように、第1の実施形態の位相差板21は、基板23の一例としてのガラス基板と、基板23の一面に形成された位相差膜25とを含む。位相差膜25は、基板23において位相差膜25が形成された一面である膜形成面23aの法線Nに対して傾斜した柱状構造体24を有する斜方膜である。本例の位相差膜25を、以下において、斜方膜25という。
斜方膜25は、いわゆる斜方蒸着法により、基板23に斜め方向からTaなどの無機材料を蒸着することによって作製される。詳細には、図4に示すように、基板23を、蒸着源27に対して基板23の膜形成面23aを傾斜させた姿勢で保持させた状態で、基板23の膜形成面23aに蒸着源27からの蒸着物質を斜めに入射させて蒸着する。このように、基板23の膜形成面23aに斜め方向から蒸着物質を蒸着することによって、膜形成面23aに対する蒸着物質の入射方向(以下において、蒸着方向という。)28に応じて傾斜した柱状構造体24が成長して、柱状構造体24が林立した構造を有する斜方膜25が形成される。この際、蒸着方向28と膜形成面23aの法線Nとのなす角度を蒸着角度αという。また、蒸着源27が水平な床面に配置されているとした場合、図4中点線で示す水平面(水平な床面と平行な面)と膜形成面23aとのなす角度を基板23の設置角度ωという。すなわち、基板23を水平に設置した場合の設置角度ωは0°、基板23を水平に対して垂直に設置した場合の設置角度ωは90°である。
図3に示すように、斜方膜25の柱状構造体24の成長方向である長手方向29は一般に蒸着方向28(図4も参照)と一致しないが、柱状構造体24が基板23の膜形成面23aの法線Nとなす成長角度φは蒸着角度αと正の相関を持つ。すなわち、蒸着角度αが大きくなれば柱状構造体の成長角度φが大きくなり、蒸着角度αが小さくなれば柱状構造体の成長角度φも小さくなる。実際には、柱状構造体24の成長方向29は蒸着方向28よりも膜形成面23aから立ち上がった方向となる傾向にあり、成長角度φは蒸着角度αよりも小さくなる(φ<α)。この柱状構造体24が林立してなる柱状構造によって、位相差膜25は、光学特性として屈折率異方性を示し、Oプレートとして機能する。なお、柱状構造体24の成長方向29が柱状構造体24の長手方向である。以下において、成長方向29を長手方向29という。
図5に示すように、斜方膜25の屈折率異方性は、3つの主屈折率nx、ny、nzを軸とする屈折率楕円体102で概念的に表される。図6Aは、屈折率楕円体102を、図5中のY軸方向から見た図であり、図6Bは、屈折率楕円体102を、図5中のZ軸方向から見た図であり、図6Cは、屈折率楕円体102を、図中のX軸方向から見た図である。なお、2軸の複屈折性を持った屈折率楕円体において、主屈折率とは、屈折率楕円体の長軸の屈折率と、屈折率楕円体を長軸に沿って切った楕円において長軸に垂直な第1の短軸の方向の屈折率と、上記長軸及び第1の短軸に垂直な第2の短軸の方向の屈折率を意味する。
図5及び図6に示すように、屈折率楕円体102の3つの主屈折率nx、ny、nzのうちの一つは柱状構造体24の長手方向29と一致する軸をなす。柱状構造体24の長手方向29と一致する軸をX軸とし、このX軸に沿った主屈折率をnxとしている。また、屈折率楕円体102の中心Cを通り、X軸に垂直な楕円104における長軸方向をY軸とし、短軸方向をZ軸とする。そして、このY軸方向の主屈折率をny、Z軸方向の主屈折率をnzとする。この場合において、3つの主屈折率nx、ny、nzは、以下の条件式(1)を満足する。
ny>nx>nz (1)
図7Aに、位相差板21に対する光の入射方向及び光の入射方向に垂直な位相差板21の膜面に対する屈折率楕円体102の各軸の関係を示す。ここで、位相差板21において基板23の膜形成面23aの法線NをXS軸とし、XS軸に垂直な膜形成面23aにYS軸とZS軸を取る。屈折率楕円体102のY軸を膜形成面23aに投影した軸をYS軸とし、YS軸と直交する方向をZS軸とする。この場合、屈折率楕円体102のX軸はXS-ZS平面内であって、XS軸からφ傾いている。そして、ZS軸はX軸を膜形成面23aに投影した軸と一致する。
屈折率楕円体102の中心Cを通り、膜形成面23aに平行な平面で、屈折率楕円体102を切断すると、その断面は、図7Bに示すように、YS軸方向の長軸半径に相当する屈折率nysと、ZS軸方向の短軸半径に相当する屈折率nzsとを有する楕円106となる。したがって、斜方膜25は、XS軸に沿って入射する光に対して、YS軸方向に屈折率nys、ZS軸方向に屈折率nzsとなる複屈折性を示す。この屈折率nysは屈折率nzsよりも大きい。すなわち、位相差膜25は、XS軸方向から入射する光に対して、最大の屈折率となるYS軸方向に遅相軸S1を有する。また、位相差膜25はXS軸方向から入射する光に対して最小の屈折率となるZS軸方向に進相軸F1を有する。遅相軸S1は、成長方向29と一致するX軸を膜形成面23aに投影した軸(ZS軸)と直交する。すなわち、3つの主屈折率nx、ny、nzのうちの最大の主屈折率nyに対応するY軸を膜形成面23aに投影したYS軸であり、主屈折率nyに対応して入射光の位相がもっとも遅れるYS軸を遅相軸、X軸を膜形成面23aに投影した軸をZS軸とした場合において、遅相軸S1はZS軸と直交する。
図8Aは、屈折率楕円体102を、その中心Cを通るXS-ZS平面で切断した断面の楕円107をYS軸方向から見た図である。また、図8Bは、屈折率楕円体102を、その中心Cを通るYS-ZS平面で切断した断面の楕円106をXS軸方向から見た図である。そして、図8Cは、屈折率楕円体102を、中心Cを通るXS-YS平面で切断した断面の楕円108をZS軸から見た図である。
このように、位相差膜25の屈折率異方性を示す屈折率楕円体102のX軸及びZ軸は、位相差板のXS軸及びZS軸に対してYS軸を中心にφ回転している。
このような屈折率楕円体102において、入射光に生じる位相差は、屈折率楕円体102に入射する光の傾きによって変化する。屈折率楕円体102において生じる位相差は、入射光に垂直な断面であって、屈折率楕円体102の中心Cを通る断面に形成される楕円の長軸と短軸の差に依存する。この楕円の長軸方向の屈折率をn1、短軸方向の屈折率をn2、この楕円に垂直に入射する光の斜方膜25における光路長をdとした場合、位相差Re=(n1-n2)dで表される。n1、n2及びdはいずれも屈折率楕円体への光の入射方向によって変化する。
斜方膜25に対する光の入射角が変化すると、屈折率楕円体への入射方向が変化する。したがって、斜方膜25において生じる位相差は、光の入射角θによって変化する。
ここで、図9に示すように、斜方膜25の法線NであるXS軸を基準として柱状構造体24の成長方向29側に傾く方向の入射角を正(+θ)、柱状構造体24の成長方向と反対側に傾き方向の入射角を負(-θ)とする。なお、この際、斜方膜25に対してXS軸に沿って入射した光、すなわち入射角0°で入射した光に対する位相差Re(0)を正面位相差という。斜方膜25にXS軸から光が入射した場合、XS軸に垂直な面、すなわちYS-ZS面における屈折率楕円体の楕円(図8B参照)の長軸であるYS軸方向の屈折率nysと短軸であるZS軸方向の屈折率nzsとの差及び膜厚dによって位相差Re(0)は決まる。すなわち、Re(0)=(nys-nzs)dである。
本実施形態の斜方膜25は、負の入射角+30°の入射光の位相差Re(+30)と、正の入射角-30°の入射光の位相差Re(-30)との比である位相差比をRe(30)比が、下記条件式(2)を満足する。
Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.1~4.0 (2)
上記のような斜方膜25を備えた位相差板21は、液晶表示素子10において、斜方膜25の遅相軸S1と液晶分子75のチルト方位とが平行になるように、すなわち、液晶分子75のプレチルトによる進相軸Fと平行になるように配置される。位相差板21を位相差補償素子20として用いる場合、斜方膜25の遅相軸S1は位相差補償素子20における遅相軸Sに相当する。これによって、既述の通り、液晶分子75のプレチルトによって生じる位相差と、位相差板21によって生じる位相差とは互いに正負が逆になるので、位相差を補償することができる。但し、実際の液晶表示素子中においては、プレチルトした液晶分子75だけが位相差を生じさせる原因となっているわけではなく、液晶セルの微細構造に起因する光の回折、偏光子15及び検光子19による位相差の発生など、種々の要因により位相差が生じている。したがって、位相差板21は、必ずしもその遅相軸S1と液晶分子の進相軸Fとが一致する配置が最善でない場合もある。そのため、液晶分子75のプレチルトによる進相軸Fに対して位相差板21の遅相軸Sの向きを調整するためには、投影画像のコントラストを観察しながら、高コントラストが得られる方位角となるように、位相差板21をXS軸周りに回転調整される。
従来の斜方膜においては、柱状構造の緩和に起因して、斜方蒸着膜内で光の散乱が起こり、位相差板としての品質が低下する場合があった。膜内の光の散乱はヘイズで評価され、このヘイズが大きいほど膜内での光の散乱が大きいことを意味する。大きなヘイズの位相差板を位相差補償素子20として液晶表示素子10に適用すると、液晶表示素子10のコントラストの低下が生じる。コントラストの低下は、斜方膜で生じる散乱光のうち検光子19の吸収軸と揃っていない偏光成分が検光子19を透過してしまい、黒レベルの悪化を引き起こすために生じる。従って、コントラストを向上させるためには、ヘイズを小さく抑制することが望ましい。
斜方膜25のヘイズは積分球を用いて測定することができる。図10に示すように、積分球80は入射開口82と、入射開口82と対向して入射開口82から180°回転した位置に設けられている出射開口84を備える。また、積分球80の出射開口84及び積分球80の内部に光検出器86、88をそれぞれ備える。出射開口84に備えられている光検出器86は入射開口82から積分球80の直径に沿って入射した光のうち、直進して積分球を透過した光を受光する。積分球80内に配置されている光検出器88は、入射した光のうち直進せず、散乱され積分球80内で反射された光を受光する。入射開口82に位相差板21を、直径に沿って入射する光に対して膜面が垂直となるように配置する。入射光Lを位相差板21の膜面に垂直に入射し、位相差板21を通過し、位相差板21で散乱されることなく直進して出射開口に至る垂直透過光量T1を光検出器86で検出する。また、積分球内に配置されている光検出器88により、入射光Lのうち位相差板21で散乱され、直進せず積分球80内で反射を繰り返す散乱光量T2を検出する。このとき、位相差板21のヘイズ[%]を以下の式に基づいて算出する。
ヘイズ[%]=(T2/(T1+T2))×100
なお、斜方膜25のヘイズは、基板23のみの場合のヘイズを上記の手段により測定し、位相差板21のヘイズから基板のみの場合のヘイズ差し引くことで得られる。なお、基板23がガラス基板である場合、ヘイズはほぼ0である。
本発明者は、主屈折率nx,ny,nzが上記(1)式を満たす屈折率楕円体102で表される屈折率異方性を有する斜方膜25において、Re(30)比とヘイズとの間に図11に示すような相関があることを見出した。Re(+30),Re(-30)及びRe(30)比が、上記(2)を満たすことにより、斜方膜25のヘイズを0.1%以下に抑制できる。Re(30)比を4.0以下とすることにより、すなわち、ヘイズを0.1%以下に抑制することにより、位相差補償素子20として液晶表示素子に適用した場合に、Re(30)比が4.0超の場合と比較してコントラストを向上させることができる。
上記(1)、(2)式を満たす斜方膜25は、斜方蒸着時の基板設置角度ωを調整することで作製することができる。一例として、図4に示した蒸着方法において、基板23の中心の直下に蒸着源27を配置した状態で基板設置角度ωを変化させて複数の斜方膜を作製し、Re(30)比を測定したところ、図12に示す関係が得られた。本例は、斜方膜25の材料として五酸化タンタル(Ta)を用いている。図12に示す通り、基板設置角度ωが大きくなるにつれてRe(30)比が増加する。本例の場合、基板設置角度ωを概ね85度以下とすることで4.0以下のRe(30)比を得ることができる。基板設置角度ωとRe(30)比との関係は、蒸着装置の構成に依存し、図12に示すRe(30)比と基板設置角度ωとの関係は蒸着装置によって変化する。しかし、基板設置角度ωが大きくなるにつれてRe(30)比が増加するという傾向については、蒸着装置の構成によらず共通する。従って、予め両者の関係を測定しておけば、所望のRe(30)比の斜方膜25を得ることができる。
Re(30)比は、以下の条件式(2-1)を満足することが好ましい。
Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.2~4.0 (2-1)
この条件式(2-1)を満足することで、後述する、斜方膜25を2層備えた位相差板31(図16参照)において、黒表示ムラの改善効果が得られる。
Re(30)比は、以下の条件式(2-2)を満足することがより好ましい。
Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.4~3.0 (2-2)
この条件式(2-2)を満足することで、後述する、斜方膜25を2層備えた位相差板31(図16参照)において、黒表示ムラの改善効果が得られると共に、コントラストの向上を図ることができる。
Re(30)比は、以下の条件式(2-3)を満足することが特に好ましい。
Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.5~2.5 (2-3)
この条件式(2-3)を満足することで、後述する、斜方膜25を2層備えた位相差板31(図16参照)において、黒表示ムラ及びコントラストをさらに向上させることができる。
斜方膜25の材料としては、Si、Nb、Zr,Ti、La、Al、Hf及びTaの少なくとも1種を含有する酸化物を用いることができる。すなわち、斜方膜25は、Si、Nb、Zr,Ti、La、Al、Hf及びTaの少なくとも1種を含有する酸化物から構成することができる。これらの材料を用いることで、良好な柱状構造体から構成される斜方膜を得ることができる。
斜方蒸着法により斜方膜25を成膜する形態について説明したが、斜方膜25の形成方法は、上述の方法に限らない。基板23の膜形成面23aに、法線Nから傾いた方向に柱状構造体24を成長させ斜方膜25を得ることできる形成方法であればよい。蒸着法としては、真空蒸着に限らず、電子ビーム蒸着あるいはイオンプレーティングなどを用いることができる。また、化学蒸着(CVD)を用いてもよい。さらには、スパッタリング法、及び反応性スパッタリング法などを用いることもできる。
なお、上記手法により作製したRe(30)比が3である斜方膜25の屈折率異方性を示す屈折率楕円体102の3つの主屈折率nx、ny、nzの関係について調べた結果を説明する。
Re(30)比が3の斜方膜25を備えた位相差板21において、位相差の入射角依存性は図13に示すようなものとなっていた。なお、図13の位相差の測定に際しては、まず、屈折率楕円体102において入射光に直交する面を考える。例えば、図14Aに示す例であれば、XS軸方向から入射する光に対してはYS-ZS平面が屈折率楕円体102において入射光に直交する面になる。また、X軸方向から入射する光LXに対してはZY平面が直交する面である。入射光をXS軸からYS軸周りに傾けていくと、入射光に直交する面は、YS軸を中心として傾く。従って、入射光の入射方向がXS軸から傾いても入射光に直交する面におけるYS軸方向の半径は一定であり、YS軸方向の半径で表される屈折率nys(=ny)は一定である。一方、YS軸に直交する軸方向の半径は入射角に応じて変化するので、この軸方向の屈折率n(θ)は入射角θによって変化する。入射光に対する位相差はこの屈折率楕円体102の中心Cを通り、かつ、入射光に直交する面における屈折率楕円体102の楕円における長軸半径と短軸半径の差に比例する。本例においては、屈折率nysを基準として、入射角に依存して変化する屈折率n(θ)を基準の屈折率nysから差し引くようにして位相差を測定した。
図13に示すように、この斜方膜25においては、入射角θが正方向に大きくなるにつれて位相差が大きくなり入射角θが30°以上でほぼ一定の位相差となる。一方、入射角θが負方向に大きくなるにつれて位相差が小さくなり、入射角θが50°で位相差が0である。
さて、図5を用いて説明したとおり屈折率楕円体102の主屈折率nxのX軸は柱状構造体24の成長方向29(図3参照)と一致する。したがって、図14Aに示すように、斜方膜25に対してX軸方向に沿って光LXを入射させると、屈折率楕円体102のY-Z平面に垂直に入射することになる。したがって、斜方膜25に対してX軸方向に沿って入射した光LXは、図14Bに示す楕円104によって表される屈折率の影響を受ける。この際、斜方膜25に入射した光LXに生じる位相差は、屈折率楕円体102における主屈折率nyとnzと、斜方膜25における光路長d1との関係からRe(φ)=(ny-nz)d1で表される。なお、d1=d/cosφである。
また、斜方膜25に対して、X軸と直交するZ軸に沿って光LZを入射させると、屈折率楕円体102のX-Y平面に垂直に入射することになる。したがって、斜方膜25に対してZ軸方向に沿って入射した光LZは、図14Cに示す楕円103によって表される屈折率の影響を受ける。この際、斜方膜25に入射した光LZに生じる位相差は、屈折率楕円体102における主屈折率nyとnxと、斜方膜25における光路長d2との関係からRe(φ-90)=(ny-nx)d2で表される。なお、d2=d/cos(φ-90)である。
この位相差板21について透過電子顕微鏡観察を行ったところ、斜方膜25の柱状構造体24の成長角度φ(図3参照)は45°であった。すなわち、図13において正の入射角θ=45°の位相差Re(+45)が屈折率楕円体102における主屈折率nyとnzの差に起因する位相差Re(+45)である。また、図13において負の入射角θ=45°の位相差Re(-45)が屈折率楕円体102における主屈折率nyとnxの差に起因する位相差である。
図13におけるRe(+45)>Re(-45)の関係から、(ny-nz)d1>(ny-nz)d2である。ここで、φ=45°のとき、d1=d2であるので、ny-nz>ny-nzである。また、(ny-nz)d1>0、かつ(ny-nx)d2>0であるので、図13に示した例の斜方膜25はny>nx>nzを満たしている。
ここで、試験例1を挙げて、位相差板21の作用を説明する。
[試験例1]
正面位相差Re(0)が23nmである斜方膜をガラス基板上に斜方蒸着により形成した。斜方膜の材料としてTaを用いた。基板設置角度ωを変化させることにより蒸着角度を変化させ、種々のRe(30)比の斜方膜を備えた位相差板サンプル1-1~サンプル1-11を作製した。
市販の液晶プロジェクタの光学エンジンを流用し、図1に示すように、偏光子15、液晶層17、位相差補償素子20として各サンプルの位相差板、検光子19を順に配置した液晶表示素子10構成とした。検光子19を通過する光が投影される位置にスクリーンを配置し、スクリーン上に白表示及び黒表示を行い、コントラストと黒表示ムラをそれぞれ下記の基準で評価した。この際、斜方膜の遅相軸を液晶層17のプレチルト成分に起因する進相軸Fと一致させた。本例における液晶層17のプレチルト成分に起因する進相軸は45°方位であり、位相差板の斜方膜の遅相軸Sを45°方位に一致させた。
コントラストについては、黒表示の照度を1とした場合の白表示時の照度の値を測定し、測定値について以下のように評価した。
A:2000以上
B:1500以上、2000未満
C:1000以上、1500未満
D:1000未満
なお、本構成において、位相差補償素子20を備えない場合の黒表示:白表示は800:1であった。
黒表示ムラについては、図15に示すように、スクリーン90の四隅の点A、B、C、D及びスクリーン90の中央の点Eについての黒表示の照度をそれぞれ測定し、
黒表示ムラ=((A+D)-(B+C))/E
として算出した。黒表示ムラの算出値について以下のように評価した。
A:2以下
B:2超、4以下
C:4超、6以下
D:6超
さらに、コントラストと黒ムラのそれぞれの評価結果について、A評価を7点、B評価を5点、C評価を3点、D評価を0点として、各実施例について、コントラストについての点数と、黒表示ムラの点数を加算した総合点数を求めた。総合点数が高いほど位相差板としての品質が良いことを示す。結果を下記表1に示す。
表1に示すRe(30)が1.1~4であるサンプル1-2~1-8は、本開示の位相差板の実施例に相当する。なお、Re(30)が1のサンプル1-1は、ny=nzである一軸性の屈折率異方性を有し、比較例の一つである。サンプル1-2~1-8は、他のサンプルと比較してコントラストの評価が高く、高コントラスト化の向上が図れている。また、コントラストと黒表示ムラとの総合点数が高く、コントラスト向上させつつ、黒表示ムラを抑制する効果が得られている。なお、Re(30)が1.1~2.0のサンプルにおいて、さらに高いコントラストの向上、及び黒表示ムラの抑制の効果が得られている。
「第2の実施形態の位相差板」
位相差補償素子20として用いられる位相差板としては、上記位相差板21のように斜方膜25を1層だけ備えている構成に限らず、斜方膜25を2層以上積層して備えてもよい。第2実施形態の位相差板として、斜方膜を2層備えた位相差板31について説明する。
図16に示すように、本実施形態の位相差板31は、基板23の一方の面に第1の斜方膜25aを備え、他方の面に第2の斜方膜25bが形成されている。すなわち、位相差板31において、斜方膜が、基板の両面に一層ずつ形成されている。
本実施形態における第1の斜方膜25a及び第2の斜方膜25bは、上述の斜方膜25と同様に作製され、その光学的な性質なども同様である。すなわち、第1の斜方膜25a及び第2の斜方膜25bは斜方膜25と同様に、主屈折率nx,ny,nzが上記(1)式を満たす屈折率楕円体102で表される屈折率異方性を有する。また、Re(+30),Re(-30)及びRe(30)比が、上記(2)式を満たす。
第1の斜方膜25a及び第2の斜方膜25bはそれぞれ、上記(1)式及び(2)式を満たすので、ヘイズをそれぞれ0.1%以下に抑制できる。2層の斜方膜25a、25bを積層するとヘイズが積算されるため、位相差板31としてのヘイズは上昇する。しかし、各斜方膜25a、25bが上記(1)式及び(2)式を満たすことにより、積層した場合のヘイズも抑制することができ、積層した場合のヘイズを0.3%以下にできる(後記図28参照)。2層以上の斜方膜25a、25bを備えている場合にヘイズが0.3%以下の位相差板であれば、位相差補償素子20として液晶表示素子に適用した場合に、Re(30)比が4超えの場合と比較してコントラストを向上することができ、かつ、黒表示ムラを抑制することができる。
位相差板31においては、第1の斜方膜25aの遅相軸S21と第2の斜方膜25bの遅相軸S22とが略直交する、90°±3°の交差角度で交差するように、第1の斜方膜25a、第2の斜方膜25bが配置されている。
既述の通り、斜方膜25を単層で備えた位相差板21においては、液晶表示素子10において、斜方膜25の遅相軸S1と液晶層17の進相軸Fとが平行になるように、配置される。2層の斜方膜25a、25bを備えた位相差板31の場合には、第1の斜方膜25aの遅相軸S21と第2の斜方膜25bの遅相軸S22とが合成して形成される合成遅相軸S2が液晶層17の進相軸Fと平行になるように、配置される。これによって、液晶分子75のプレチルトによって生じる位相差と、位相差板31によって生じる位相差とは互いに正負が逆になるので、プレチルトによって生じる位相差を補償することができる。
例えば、図17Aに示すように、液晶表示素子10において液晶層17のチルト成分の進相軸Fが45°方位にある場合、第1の斜方膜25aの遅相軸S21を90°方位に一致させ、第2の斜方膜25bの遅相軸S22を0°方位に一致するように配置する。このように配置することで、遅相軸S21と遅相軸S22とを合成した合成遅相軸S2は45°方位となり、進相軸Fと一致する。
ここで、第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bの遅相軸の交差角度について検討する。本発明者らの検討によれば、交差角度は90°からわずかにずれていることが好ましい。90°に対し、±5°の範囲でずれていることが好ましく、±3°の範囲でずれていることがより好ましい。以下にその理由について説明する。
まず、斜方膜25の面内の光学異方性について図18を参照して説明する。図18Aに示すように、斜方膜25の面内において、蒸着方向28(図3及び図4参照)を膜形成面23a(図3参照)に投影した軸は遅相軸S1と直交する。なお、蒸着方向28を膜形成面23aに投影した軸と成長方向29を膜形成面23aに投影した軸とは一致する。この遅相軸S1と直交する進相軸F1を方位0°-180°とする。図18Bは、図18Aで示す斜方膜25の進相軸F1に沿った断面であり、図18Cは、図18Aで示す斜方膜25の遅相軸S1に沿った断面である。柱状構造体24は進相軸F1に沿った断面において傾斜している。そのため、入射角θが同じあっても、入射する方位が異なると、柱状構造体24を通過する際に光が受ける位相差は異なる。なお、以降において、入射角θ、方位角ηでの位相差をRe(θ)ηと表記する場合がある。例えば、入射角15°、方位角90°での位相差はRe(15)90°となる。なお、図9で説明した、法線から成長方向に傾いた入射角θの入射光に対する位相差Re(θ)は本表記に倣えば、Re(θ)180であり、法線から成長方向と反対側に傾いた入射角θの入射光に対する位相差Re(-θ)は本表記に倣えば、Re(θ)0である。
なお、本例の液晶表示素子10における方位は、図17に示すように、液晶層17の液晶分子75のプレチルトによる進相軸を45°方位として定めており、単層の斜方膜において説明した上記の方位とは異なる。以下において位相差板31の方位は液晶表示素子10における方位に従う。
既述の通り、液晶表示素子10においては、位相差板31は、第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bの遅相軸S21、S22の合成遅相軸S2が45°方位となるように設置される。
第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bの位相差Re(θ)はそれぞれ方位角依存性を有する。そして、両者を積層した位相差板31についての位相差Re(θ)は、第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bの位相差が加算されたものとなる。
第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bとが、互いの遅相軸が90°の交差角度となるように配置されている場合、位相差板31における45°方位±45°の範囲、すなわち0°から90°方位における位相差Re(0)及びRe(15)の方位角依存性を図19に模式的に示す。この場合、図19に示すように、位相差板31の正面位相差Re(0)は、直交配置された第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bとでキャンセルされ、0°から90°方位において、ゼロとなる。
液晶層17は、45°方位のプレチルト成分により正面位相差成分を有し、45°方位においてピークを有し、±45°の範囲で略対称な方位角依存性を示す。しかし、2層の斜方膜25aと25bが、互いの遅相軸が90°の交差角度で配置されている場合、位相差板31のRe(0)45はゼロであるため、液晶層17の正面位相差については補償ができない。
一方、第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bの互いの遅相軸が90°からわずかにずれて配置されている場合、位相差板31における45°方位±45°の範囲、すなわち0°から90°方位における位相差Re(0)及びRe(15)の方位角依存性を図20に模式的に示す。この場合、図20のように、位相差板31の正面位相差Re(0)は、45°方位にピークを有する方位角依存性を示す。位相差板31において、45°方位における正面位相差Re(0)を0.1nm~5nm程度発生させることにより、液晶層17の進相軸方位の正面位相差と同じ程度の位相差とすることができ、液晶層の45°方位における正面位相差を良好に補償することが可能となる。すなわち、位相差板31としては、遅相軸方位における正面位相差Re(0)が0.1nm~5nmであることが好ましい。
なお、第1及び第2の2層の斜方膜25a、25bを積層して備えた位相差板31について2層の各斜方膜25a、25bの遅相軸の交差角度と、45°方位における位相差板のRe(0)45及びRe(15)45との関係は、一例として、図21のようになる。図21においては、遅相軸を直交させた場合を0°として、90°より交差角度が大きくなる場合を正、交差角度が90°より小さくなる場合を負としている。ここで、単層の斜方膜としては、Re(0)=32nm、Re(30)比=2.5の斜方膜を用いている。なお、単層の斜方膜についてのRe(0)、Re(30)比は図9を用いて説明した定義に従う。
図21に示すように、遅相軸を直交した状態から±10°変化させることにより位相差板31の正面位相差Re(0)をゼロから±10nmの範囲で変化させることが可能である。同様に位相差板31の位相差Re(15)についても直交した状態での値(9nm)から±10nmの範囲で変化する。適用する液晶表示素子10における液晶層17の45°方位における正面位相差Re(0)に応じて、積層する2層の斜方膜25a、25bの遅相軸の交差角度を設定すればよい。
なお、本発明者の検討によれば、第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bの遅相軸同士の交差角度の90°からのずれは±5°程度以内とすることが好ましく、±3°程度以内とすることがさらに好ましい。
既述の通り、液晶層17は、45°方位のプレチルト成分により正面位相差成分を有し、45°方位においてピークを有し、±45°の範囲で略対称な方位角依存性を示す。なお、液晶層17においては、他の入射角θでの入射させた場合の位相差Re(θ)についても、45°方位においてピークを有し、±45°の範囲で略対称な方位角依存性を示す。液晶層17で生じる位相差を効果的に補償するためには、45°方位±45°の範囲において、液晶層の位相差と逆位相の位相差を有することが好ましい。すなわち、位相差板31の位相差Re(θ)が45°方位±45°の範囲で方位45°を中心として、位相差Re(θ)が略対称であることが好ましい。45°方位+45°である90°方位における位相差Re(15)90と、45°方位-45°である0°方位における位相差Re(15)0との差は対称性の指標となり、この差が小さいほど方位45°に対する対称性が高いことを示す。具体的には、位相差板31において、位相差Re(15)90と位相差Re(15)0との位相差が±6nm以内であることが好ましい。
通常、位相差板31の位相差Re(θ)は、合成遅相軸S2の一方の方位において正の最大ピークを示す。液晶層17における位相差を効率よく補償するため、最大ピークを示す合成遅相軸の方位を液晶層17の進相軸Fと一致して配置する。ここで、位相差板31は、0°から360°の方位角の中で、法線に対して+15°の入射角の入射光に対して生じる位相差Re(15)が最大となる方位角を基準方位角ηaとする。液晶層17の進相軸が45°方位であれば、基準方位角ηaを45°となるように位相差板31は配置される。すなわち、位相差板31は、方位角が基準方位角ηaに対して+45°の場合の入射光の第1位相差Re(15)ηa+45と、方位角が基準方位角ηaに対して-45°の場合の入射光の第2位相差Re(15)ηa-45との差の絶対値が6nm以下であることが好ましい。
位相差Re(15)が最大となる方位角ηaを中心にηa+45°方位における位相差Re(15)ηa+45と、ηa-45°方位における位相差IRe(15)ηa-45との差が±6nm以内であることは、位相差板31が、方位角ηaを中心として、ηa±45°の方位角範囲での対称性が高いことを意味する。位相差板31が、方位角ηaを中心として、ηa±45°の方位角範囲での対称性が高ければ、方位角依存性を有する液晶層の進相軸の方位を中心として±45°の範囲に亘って、逆位相の位相差を有する位相差板を実現できる。液晶層17においては、プレチルト方位±45°の範囲での位相差が最も大きいことから、この範囲に亘って逆位相の位相差を示す位相差板31であれば、液晶層17の位相差を効果的に補償することができる。そのため、このような位相差板31を液晶表示素子10の位相差補償素子20として適用した場合、効果的にコントラストを向上することができ、かつ黒表示ムラを抑制することが可能となる。
なお、上記において、2層の斜方膜25a、25bは同一の屈折率異方性を有するものとして説明したが、両者の屈折率異方性は完全に同一でなくてもよい。但し、第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bのそれぞれの正面位相差Re(0)の差ΔRe(0)が3nm以下であることが好ましい。
2層の斜方膜25a、25bを積層した位相差板31について、第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bのそれぞれの正面位相差Re(0)の差ΔRe(0)と、位相差板31のIRe(15)が最大である方位(ピーク方位)とは、一例として図22に示すような関係にある。ここで「I」は位相差板31の位相差であり、各斜方膜25a、25bのそれぞれの位相差と区別するために付与している。
ΔRe(0)とIRe(15)ピーク方位との関係を調べた結果を図22に示す。図22に示すように、ΔRe(0)がゼロの場合にIRe(15)ピーク方位は液晶層17のプレチルト成分による進相軸方位である45°方位に一致する。一方、ΔRe(0)がゼロより小さくなるとIRe(15)ピーク方位が大きくなり、ΔRe(0)がゼロより大きくなるとIRe(15)ピーク方位が小さくなる。IRe(15)ピーク方位が45°方位からずれることにより位相差補償の効率が低下するおそれがある。
また、ΔRe(0)と、0-360°方位における位相差板31の位相差IRe(15)のピーク値IRe(15)maxとは図23のような関係にある。図23に示すように、IRe(15)maxは、ΔRe(0)がゼロの場合に9nm程度で最も小さい。これに対し、ΔRe(0)の絶対値が大きくなるにつれてIRe(15)maxは大きくなる。この場合、位相差の過補償が生じ、位相差補償の効率が低下するおそれがある。
さらに、ΔRe(0)と、位相差板31における合成遅相軸S2の方位±45°におけるIRe(15)の差、すなわち、IRe(15)90-IRe(15)0の差であるΔIRe(15)とは、図24に示すような関係にある。ΔIRe(15)が0に近いことは、合成遅相軸S2の方位を中心として、±45°の範囲の対称性が高いことを意味する。液晶層17においては、プレチルト成分による進相軸Fの方位±45°の範囲において、位相差が大きく生じる。また、液晶層17において生じる位相差は進相軸Fの方位を中心に±45°の範囲で対称である。したがって、位相差板31としては、合成遅相軸S2の方位を中心として±45°の範囲の対称性が高いほど、位相差補償の効率が高いと考えられる。
すなわち、45°方位にプレチルト成分を有する液晶層17の位相差補償のためには、IRe(15)ピーク方位が45°方位近傍にあり、45°方位±45°の範囲で対称性が高いことが好ましい。したがって、2層の斜方膜25a、25bの正面位相差のΔRe(0)は±3nm以内であることが好ましく、±1nm以内であることが好ましく、正面位相差の差が0であることが最も好ましい。
「設計変更例」
図25~図32を参照に2層の斜方膜を備える位相差板についての設計変更例を説明する。なお、図16及び図25~図32において、同一の要素には同一の符号を付している。
上記第2の実施形態の位相差板31においては、図25に示すように、基板23の両面に反射防止膜41、42を備え、さらに、位相差板31の最表面となる第1の斜方膜25aの一面、及び第2の斜方膜25aの一面にそれぞれ反射防止膜43、44を備えることが好ましい。反射防止膜41、42、43、44を備えることにより、各界面における入射光の反射を抑制し、透過率を高め、さらにヘイズの抑制効果を高めることができる。
第2の実施形態の位相差板31は基板23の一方の面に第1の斜方膜25aを備え、他方の面に第2の斜方膜25bを備えている。斜方膜25を2層以上積層する形態としては、図26に示す位相差板32のように、基板23の片面に2層の斜方膜25a、25bが形成されていてもよい。但し、図16のように、基板23の両側にそれぞれ1層ずつ斜方膜25a、25bを備える方が、斜方膜25a、25bを直接積層した場合に生じる界面での散乱を抑制することが可能となり、結果としてヘイズを抑制することができ、好ましい。
基板23の片面に2層の斜方膜25a、25bを積層する場合にも、図19に示すように、基板23の両面及び、位相差板32の最表面となる第2の斜方膜25bの一面にそれぞれ反射防止膜45、46、47を備えていることが好ましい。反射防止膜45、46、47を備えることにより、界面における入射光の反射を抑制し、透過率を高め、さらにヘイズの抑制効果を高めることができる。
ここで、斜方膜25を2層積層して備えた位相差板におけるヘイズについて説明する。
図12に示したデータのうち、基板設置角度ωを35°、50°、75°及び90°で作製した斜方膜とそれぞれ同一条件にて、斜方膜を2層備えた位相差板を作製した。ここで、基板の両面にそれぞれ1層ずつ斜方膜を形成した位相差板31(図16参照)と、基板の片面に2層の斜方膜を積層した位相差板32(図26参照)と、を作製し、それぞれのヘイズを測定した。ヘイズと基板設置角度ωとの関係を図28に示す。なお、各位相差板31、32は、第1の斜方膜25aが蒸着された後、基板を略90°回転させた状態で第2の斜方膜25bが形成されており、第1の斜方膜と第2の斜方膜の互いの遅相軸S21、S22が略直交している(図16、図26参照)。また、基板の両面及び位相差板の最表面には、反射防止膜41~47のいずれかを備えた構成とした(図25、図27参照)。
図28において、括弧付きにて示している数値は、単膜の斜方膜25についてのRe(30)比である。図28に示すように、Re(30)比が4以下であれば、ヘイズは概ね0.3%以下に抑制できている。また、図28から、斜方膜25a、25bを基板の両面に振り分けて形成した位相差板31の方が、片面に2層積層した位相差板32と比較して、いずれのRe(30)比であっても、ヘイズが低く抑えられている。2層の斜方膜25a、25bを基板の両面に振り分けて形成した位相差板31では、Re(30)比が4以下であれば、ヘイズを概ね0.2%以下に抑制できる。既述の通り、斜方膜25a、25bを基板の両面に一層ずつ形成することで、2層の斜方膜25a、25bを直接接触させて積層した場合に2層の斜方膜25a、25bの界面で生じる散乱を抑制した効果が示されていると考えられる。
なお、片面に2層の斜方膜25a、25bを積層して備えた位相差板32については、図29に示すように、第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bとの間に平坦化層26を備えることが好ましい。
平坦化層26は、中間層の一例である。平坦化層26は、先に形成された第1の斜方膜25aの表面に生じる微細な凹凸を平坦化する機能を有する。平坦化層26としては、シリコン酸化膜(SiO)に限らず、五酸化タンタル(Ta)あるいはフッ化マグネシウム(MgF)など、酸化金属を用いることができる。平坦化層26は、例えば、斜方蒸着ではなく、基板の直下に蒸着源を配置し、正面蒸着させることにより形成する。
第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bとの間に、平坦化層26を備えることにより、第1の斜方膜25aの表面の微細な凹凸が平坦化され、第2の斜方膜25bを平坦な面状に形成することができる。このように、第1の斜方膜25aの表面に平坦化層26を備え、第2の斜方膜25bの膜形成面の表面粗さを小さくしておくことで、界面での散乱を抑制することができるので、位相差板32におけるヘイズを抑制することができる。また、第1の斜方膜25a上に直接第2の斜方膜25bを形成する場合と比較して、黒表示ムラ、コントラストの改善効果が高い。
斜方膜25a、25bの間にシリコン酸化膜15nmの平坦化層26を設けた位相差板32(図29参照)について、ヘイズと基板設置角度ωとの関係を図30に示す。図30において、平坦化層26を備えた位相差板32についてのデータを黒三角のマーカーで示す。また、図30には、比較のため、図28に示したデータを同時に示している。図30に示すように、基板の片面に斜方膜25a、25bを積層する場合に、斜方膜25a、25b間に平坦化層26を備えた位相差板31は、斜方膜25a、25bを接触させて積層した位相差板32と比較して大幅にヘイズを低下させることが可能である。Re(30)比が4以下であれば、ヘイズを概ね0.25%以下に抑制できる。
平坦化層26の好適な膜厚について以下のように検討した。図29に示した層構成の位相差板32において、平坦化層26として、SiO、TaまたはMgFを用い、それぞれ膜厚5nm~30nmで変化させたサンプルを作製した。この際、斜方膜としてRe(30)比が2.0のものを用いた。これらのサンプルについてヘイズを測定し、同等の斜方膜を基板の両面に備えた位相差板におけるヘイズHと比較して以下のように評価した。
A:ヘイズHの1.2倍未満
B:ヘイズHの1.2倍以上、1.5倍以下
C:ヘイズHの1.5倍超
評価結果を表2に示す。
表2において、屈折率は400nm波長に対する値である。表2に示すように、平坦化層26の厚みとしては、光路長が40nm程度、すなわち400nm波長に対して1/10程度以下であることが好ましい。また、物理膜厚を10nm以上とすることで、斜方膜の膜面を平坦化して散乱を抑制する効果を高められる。
上記の実施形態及び設計変更例においては、斜方膜25a、25bを2層積層して備えた位相差板として1つの基板23の両面に1層ずつもしくは片面に2層、形成された態様について説明した。斜方膜25a、25bを2層積層して備えた位相差板としては、2つの斜方膜がそれぞれ形成される2つの基板を有する位相板でもよい。例えば、図31に示すように、第1基板22aに第1の斜方膜25aが形成された第1位相差板35aと、第2基板22bに第2斜方膜25bが形成された第2位相差板35bを重ねて配置した位相差板35としてもよい。本明細書において斜方膜を2層以上積層して備える態様には、このように、1つの基板23に斜方膜25a、25bが複数積層されている態様のみならず、それぞれ異なる基板22a、22bに形成された斜方膜25a、25bを光路上に重ねて配置する態様を含む。
図31のように、第1基板22aに第1の斜方膜25aが形成された第1位相差板35aと、第2基板22bに第2斜方膜25bが形成された第2位相差板35bを備えた位相差板35であれば、適用する液晶表示素子10に応じて、組み立て時にXS軸中心に一方を他方に対して回転させることで、互いの進相軸S31、S32の回転角度を変化させることができる。液晶表示素子10において、製造バラツキのある液晶層17の位相差Re(0)、Re(15)に対して、最も効率よく位相差補償ができるように、すなわちコントラスト性能が最大となるように個別に対応することが可能となる。このように、液晶層17と位相差補償素子20を備えた液晶表示素子10において、位相差膜が少なくとも1層形成された複数の基板22a、22bのうち、少なくとも1つの基板22bを、膜形成面に垂直なXS軸を中心に、他の基板22aに対して回転させることにより、液晶表示素子10のコントラストを調整することができる。
上記において、斜方膜25が2層積層された位相差板31、32、36について説明したが、本開示の位相差板は、斜方膜25が3層以上積層されてもよい。例えば、図32に示すように、基板23の一方の面に斜方膜25a、25bを備え、さらに他方の面に、斜方膜25cを備えた位相差板36を位相差補償素子20として用いることもできる。位相差板36は、基板23の両面及び位相差板36の最表面のそれぞれに反射防止膜41、42、43、44を備えている。
斜方膜25が3層である位相差板36の場合、第1の斜方膜25aの遅相軸S21と第2の斜方膜25bの遅相軸S22と、第3の斜方膜25cの遅相軸S23が合成して形成される遅相軸S3が液晶層17の進相軸Fと平行になるように、配置される。これによって、液晶分子75のプレチルトによって生じる位相差と、位相差板36によって生じる位相差とは互いに正負が逆になるので、プレチルトによって生じる位相差を補償することができる。
例えば、図33に示すように、液晶層17のチルト成分の進相軸Fが45°方位にある場合、第1の斜方膜25aの遅相軸S21と第2の斜方膜25bの遅相軸S22の合成遅相軸S2が0°方位となるように第1の斜方膜25aと第2の斜方膜25bとを配置する。また、第3の斜方膜25cを、その遅相軸S23が90°方位となるように配置する。これによって、合成遅相軸S2と遅相軸S23とをさらに合成した合成遅相軸S3を液晶層17のチルト成分の進相軸Fの方位と一致させることができる。このように、2層以上の斜方膜25a、25b、25cを備えた場合でも、2層の斜方膜25a、25bを備えた場合と同様の位相差補償が可能となる。
一方で、斜方膜を3層以上積層した場合、位相差板としての位相差の方位角依存性において、45°方位±45°における45°方位中心とした対称性が斜方膜2層の位相差板と比較して低下する傾向にある。既述の通り、液晶層のプレチルト成分による位相差の方位角依存性は45°方位±45°の範囲で45°方位を中心に対称であることから、対称性が低下すると位相差補償の効果が低下する。そのため、高い対称性を得るには斜方膜は2層とすることが好ましい。もっとも3層以上であっても、位相差板36における位相差Re(15)90と位相差Re(15)0との位相差が±6nm以内となる対称性を有していれば、十分に位相差補償の効果を得ることができ、液晶表示素子に適用した場合において、コントラストを高め、かつ、黒表示ムラを抑制することができる。
ここで、試験例2~4を挙げて、位相差板31、32、33の作用を説明する。
[試験例2]
図25に示す層構成の位相差板のサンプル2-1~サンプル2-13を作製した。正面位相差Re(0)が23nmである斜方膜を、両面に反射防止膜を備えたガラス基板の両面に一層ずつ斜方蒸着により形成した。この際、2層の斜方膜の遅相軸は93°の交差角度となるようにした。また、斜方膜の表面に反射防止膜を形成した。斜方膜の材料にはTaを用いた。基板の設置角度ωを変化させることにより蒸着角度を変化させ、それぞれ異なるRe(30)比の斜方膜を備えた位相差板サンプル2-1~サンプル2-13を作製した。一つのサンプルにおいて積層されている斜方膜同士は同じRe(30)比を有する。
サンプル2-1~サンプル2-13について、試験例1と同様の手法によりコントラスト及び黒表示ムラを評価し、点数化した。結果を表3に示す。
表3に示すサンプル2-2~サンプル2-11は、本開示の位相差板の実施例に相当する。Re(30)が1.2~4である実施例のサンプルは、Re(30)が4超えのサンプルと比較してコントラストの評価が高く、高コントラスト化の向上が図れている。また、Re(30)が1.4~3.0のサンプルでより高いコントラストと黒表示ムラ抑制の効果が得られ、さらに、Re(30)が1.5~2.5のサンプルで、さらに高い効果が得られた。
[試験例3]
図27に示す層構成の位相差板のサンプル3-1~サンプル3-13を作製した。正面位相差Re(0)が23nmである斜方膜を、両面に反射防止膜を備えたガラス基板の一方の面に、斜方蒸着により重ねて積層形成した。また、二層目の斜方膜の表面に反射防止膜を形成した。斜方膜の材料としてTaを用いた。基板の設置角度ωを変化させることにより蒸着角度を変化させ、それぞれ異なるRe(30)比の斜方膜を備えた位相差板サンプル3-1~サンプル3-13を作製した。一つのサンプルにおいて積層されている斜方膜同士は同じRe(30)比を有する。
サンプル3-1~サンプル3-13について、試験例1と同様の手法によりコントラスト及び黒表示ムラを評価し、点数化した。結果を表4に示す。
表4に示すRe(30)が1.2~4であるサンプル3-2~サンプル3-11は、本開示の位相差板の実施例に相当する。実施例のサンプルは、Re(30)が4超えのサンプルと比較して高い総合点数が得られている。また、Re(30)が1.4~4のサンプルはRe(30)比が4超のサンプルと比較して、高いコントラストが得られている。Re(30)が1.4~2.5のサンプルでは、より高い総合評価が得られ、さらに、Re(30)が1.5~2.3のサンプルでは、コントラストの向上効果及び黒表示ムラでより高い効果が得られた。
[試験例4]
図29に示す層構成の位相差板のサンプル4-1~サンプル4-13を作製した。試験例3のサンプルと同様にして、但し、斜方膜間に15nmの酸化シリコン膜を形成した。基板の設置角度ωを変化させることにより斜方膜の蒸着角度を変化させ、異なるRe(30)比の斜方膜を備えた位相差板サンプル4-1~サンプル4-13を作製した。一つのサンプルにおいて積層されている斜方膜同士は同じRe(30)比を有する。
サンプル4-1~サンプル4-13について、試験例1と同様の手法によりコントラスト及び黒表示ムラを評価し、点数化した。結果を表5に示す。
表5に示すRe(30)が1.2~4であるサンプル4-2~サンプル4-11は、本開示の位相差板の実施例に相当する。実施例のサンプルは、Re(30)が4超えのサンプルと比較し高い総合点数が得られている。また、Re(30)が1.4~3のサンプルでは、より高い総合点数が得られている。さらに、Re(30)が1.5~2.5のサンプルでは、コントラストの向上効果及び黒表示ムラでより高い効果が得られた。
ここで、試験例5を挙げて、位相差板において、位相差IRe(15)が最大となる方位εを中心にηa+45°方位における位相差IRe(15)ηa+45と、ηa-45°方位における位相差IRe(15)ηa-45との差が±6nm以内であることの作用を説明する。
[試験例5]
Re(0)=32nmである斜方膜を2層積層した位相差板において、2層の斜方膜の遅相軸の交差角度を変化させてΔRe(15)ηaが1nm~7nmであるサンプルを作製した。
また、それぞれRe(0)=21nm、Re(0)=14nm、Re(0)=17nmである3層の斜方膜を積層した位相差板において、3層の斜方膜の遅相軸の交差角度を変化させて、ΔRe(15)ηaが1nm~7nmであるサンプルを作製した。
各サンプルについて、それぞれ試験例1の場合と同様にしてコントラストを測定した。位相差板を備えていない場合のコントラストを基準コントラストとして、各サンプルのコントラストを以下のように評価した。
A:基準コントラストの3倍以上
B:基準コントラストの2倍以上3倍未満
C:基準コントラストの1.5倍以上2倍未満
D:基準コントラストの1.5倍未満
評価結果を表6に示す。
表6に示すように、斜方膜を2層積層した場合も3層積層した場合もΔRe(15)ηaが6nm以下でコントラストの改善率1.5倍以上の結果が得られた。なお、ΔRe(15)ηaが1nm~5nmでコントラストの改善率は2倍以上となり、3nm~4nmでは3倍以上の改善率が得られた。
「第3の実施形態の位相差板」
以上においては、斜方膜を1層もしくは2層以上積層して備えた位相差板について説明したが、位相差板においては、斜方膜のみならず、さらにCプレートを備えてもよい。第3実施形態の位相差板として、Cプレートを備えた一例の位相差板37について説明する。
図34に示すように、本実施形態の位相差板37は、基板23とCプレート50と、斜方膜25a、25bと、反射防止膜48、49とを備える。Cプレート50は、基板23の両面に備えられた第1部分Cプレート50aと、第2部分Cプレート50bとを含む。第1の斜方膜25aは第1部分Cプレート50a上に備えられており、第1の斜方膜25a上に反射防止膜48が備えられている。また、第2の斜方膜25bは第2部分Cプレート50b上に備えられており、第2の斜方膜25b上に反射防止膜49が備えられている。
Cプレート50は、図35に示すように、相対的に屈折率の高い高屈折率層51と、相対的に屈折率の低い低屈折率層52とが交互に積層された多層膜から構成される。Cプレート50は、面内に垂直に入射する光、すなわち入射角0°で入射する光に対しては位相差を示さないが、入射角が0以外の斜め入射する光に対して位相差を生じさせる屈折率異方性を有する。
Cプレート50に入射角0°、10°及び15°で入射した光に対する位相差特性を図35に示す。図36に示すように、入射角0°で入射した光に対する位相差Re(0)は0nmである。入射角が大きくなるにつれて位相差Reは大きくなる。一方、位相差Re(θ)は方位角依存性を有さず、0~360°の方位角において一定である。なお、位相差Re(15)の値は、Cプレートを構成する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差及び層数で決定される。Cプレートは、ヘイズが0.4%以下であることが好ましい。斜方膜と重ねて用いるため、位相差板におけるヘイズは斜方膜のヘイズとCプレートのヘイズは積算されたものとなる。Cプレートのヘイズを0.4%以下とすることにより、位相差板のヘイズを抑制することができ、液晶表示素子の位相差補償板として適用した場合に、コントラストを向上させ、かつ黒表示ムラを抑制することができる。
なお、位相差板37としてのヘイズが1%以下であることが好ましい。複数層の斜方膜25に加えCプレートを積層することによって、全体としてヘイズは上昇するが、位相差板37としてのヘイズを1%以下に抑制すれば、コントラストの向上効果、黒表示ムラの抑制効果を十分得ることができる。
既に説明したとおり、2層の斜方膜25a、25bを備えた位相差板31においては、合成遅相軸S2が液晶層17の進相軸Fと一致するように配置される。この時、両者の位相は逆であるため、液晶層17で生じる位相差を位相差板31により補償することができる。さらに、液晶層17の進相軸方位における位相差と位相差板31の遅相軸方位の位相差の絶対値が一致していれば、液晶層の進相軸方位における位相差を良好に補償することができる。具体的には、液晶層17のプレチルト方位は45°方位にあるとした場合、液晶層17の45°方位における位相差と位相差板31の45°方位における位相が逆であり、かつ、位相差の絶対値が一致していれば、45°方位における位相差をさらに良好に補償することができる。
一方で、正面位相差を補償するために、2層の斜方膜25a、25bは、互いの遅相軸S21、S22を直交から僅かにずらして配置することが好ましい点についても既に述べた。互いの遅相軸S21、S22を直交からずらすことによって、位相差板31における位相差の方位角依存性の45°方位を中心とする対称性がずれる。そのため、液晶層17のプレチルト成分による位相差Re(15)の位相値と45°方位における位相差板31のRe(15)を一致させると、他の方位において過補償となる方位が生じる可能性がある。
そこで、液晶層の15°入射角45°方位の位相差をA、位相差板31の15°入射角45°方位の位相差をBとした場合、A<Bとして、その差B-AをCプレートの位相差C(=B-A)で補償することが好ましい。
C=B-Aを満たすには、Aを大きくした場合は、Cを小さくし、Aを小さくした場合は、Cを大きくする必要がある。斜方膜を積層した場合の合成遅相軸方位における位相差Aは斜方膜のRe(30)比に依存し、Re(30)比の増加に伴って増加する。既に述べた通り、斜方膜のRe(30)比が増加するとヘイズが大きくなる傾向にある。Cプレートの位相差はその膜厚に依存し、位相差を大きくするには多層膜の積層数を増加させ、全体としての膜厚を大きくする必要がある。Cプレートは膜厚が大きくなるとヘイズが大きくなる傾向にあると共に、製造コストが高くなり製造適性が下がる。ここで、Re(30)比を1.1~4.0とし、Cプレートと組み合わせることで、ヘイズ抑制の効果と、Cプレートの製造適性を両立することができる。
なお、Cプレート50を備える場合、図34の位相差板37のように基板23の一方の面に第1部分Cプレート50aを備え、他方の面に第2部分Cプレート50bを備えてもよいし、図37に示すように、基板23の片面にCプレート50を形成してもよい。また、Cプレート50は、反射防止機能を有していることが好ましい。第1部分Cプレート50a、第2部分Cプレート50b、Cプレート50を構成するそれぞれの多層膜中に反射防止機能を組み込むことができる。基板23とCプレート50との間、及びCプレート50と斜方膜25との間に別途に反射防止膜を設ける必要がなくなり、位相差板37の薄板化を図ることができる。
図34に示すように、位相差板37において、Cプレート50を基板23の両面に振り分けて形成した場合(以下において、両面タイプという)と、図37に示ように、基板23の片面に形成した場合(以下において片面タイプという)とでヘイズとCプレートの位相差Re(30)の関係を調べた。両面タイプのCプレートと、片面タイプのCプレートとについて、それぞれRe(30)が0~35nmとなる層構成でサンプルを作製した。Cプレートは、高屈折率層がNb層であり、低屈折率層がSiO層である交互多層膜とした。両面タイプ及び片面タイプいずれについても、Cプレートを構成する多層膜中の各層の膜厚及び全体の層構成を調整することによって反射防止機能を備えた構成とした。
各サンプルについてヘイズを測定した結果を図38に示す。
図38に示すように、いずれのRe(30)においても両面タイプの方がヘイズを低く抑えることができた。すなわち、ヘイズ抑制の観点から、位相差板においてCプレートを備える場合には、Cプレートを基板の両面に振り分けて形成することが好ましい。
本例で作製したCプレートのうち、Re(30)=26nmのCプレートであって、反射防止機能を含むCプレートの層構成を表7及び表8に示す。表7及び表8において、Nbはニオブ酸化物(Nb)、Siはシリコン酸化物(SiO)をそれぞれ意味する。
表7は、両面タイプのCプレートの層構成である。Re(30)=26nmを得るために表7に示す39層、合計膜厚931nmの多層膜を、基板の両面にそれぞれ積層形成した。なお、図38に示す通り、表の多層膜を計2層備えた両面タイプのCプレートのヘイズは0.2%であった。
表8は、片面はタイプのCプレートの層構成である。Re(30)=26nmを得るために表8に示す82層、合計膜厚1743nmの多層膜を、基板の片面に積層形成した。なお、図38に示す通り、表8の多層膜を備えた片面タイプのCプレートのヘイズは0.35%であった。
ここで、試験例6を挙げて、位相差板37の作用を説明する。
[試験例6]
正面位相差Re(0)が23nmである斜方膜を2層、互いの遅相軸を93°の交差角度で交差させて積層した。ガラス基板上に斜方蒸着により形成した。斜方膜の材料としてTaを用いた。試験例1の結果に基づいて、基板の設置角度ωを変化させることで、Re(30)比1~5のサンプルを作製した。なお、Cプレートとしては、各サンプルにおける斜方膜の合成遅相軸方位における位相差Re(15)の値Aと、Cプレートの位相差Re(15)の値Cにより、液晶層のプレチルト方位におけるRe(15)の位相差Bとの関係がA+C=Bとなるように、Bに応じてCを設定した。このようにしてサンプル6-1~サンプル6-13を作製した。
サンプル6-1~サンプル6-13について、試験例1と同様の手法によりコントラスト及び黒表示ムラを評価した。さらに、本例においては、Cプレートの製造適性についても評価した。Cプレートの製造適性は、以下のように評価した。
A:層数90層以下かつ反射率0.3%以下
B:層数91層以上110層以下、かつ反射率0.3%以下、又は層数80層以下かつ反射率0.5%以下0.3%超
C:層数111層以上130層以下&反射率0.3%以下、又は層数79層以下かつ反射率0.5%超
D:層数131層以上かつ反射率0.3%以下
Cプレートの製造適性の評価結果についてもコントラスト及び黒表示ムラと同様にして点数化し、コントラスト、黒表示ムラ及びCプレート製造適性についての総合点数を算出した。結果を表9に示す。
表9に示すサンプル6-2~サンプル6-11は、本開示の位相差板の実施例に相当する。実施例のRe(30)が1.2~4であるサンプルは、Re(30)が4超えのサンプルと比較してコントラストの評価が高く、高コントラスト化の向上が図れている。また、Re(30)が1.5~2.5のサンプルでは、非常に高いコントラストと黒表示ムラ抑制の効果が得られ、かつ、Cプレートの製造適性に優れている。
正面位相差の差3nm以下がよい効果を示す。
ここで、試験例7を挙げて、2層の斜方膜を備えた位相差板において、2層の斜方膜の正面位相差の差ΔRe(0)が±3nm以下であることの作用について説明する。
[試験例7]
一方の斜方膜はRe(0)=32nm、Re(30)比=2.0とし、他方の斜方膜のRe(0)を-28nm~36nmで変化させて正面位相差の差ΔRe(0)が-4nm~+4nmである、2層の斜方膜を備えた位相差板のサンプルを作製した。
また、上記と同様の斜方膜の組み合わせにCプレートを備えた位相差板のサンプルを作製した。
試験例1と同様にしてコントラストを測定し、試験例1と同一の基準で評価した。評価結果を表10に示す。
表6に示すように、Cプレートの有無にかかわらず、2層の斜方膜の正面位相差の差を±3nmとすることで、±3nmを超える場合と比較してコントラストの向上効果を得ることができる。Cプレートを備えないサンプルでは、ΔRe(0)が±1nmの範囲でよりコントラストの向上効果が図れる。また、Cプレートを備えたサンプルでは、ΔRe(0)が±2nmの範囲でよりコントラストの向上効果が図れ、ΔRe(0)が±1nmの範囲でさらにコントラストの向上効果が図れる。
なお、上記においては、上記条件式(1)及び条件式(2)を満たす斜方膜25を2層以上積層した位相差板31について、方位角が基準方位角ηaに対して+45°の場合の入射光の第1位相差Re(15)ηa+45と、方位角が基準方位角ηaに対して-45°の場合の入射光の第2位相差Re(15)ηa-45との差の絶対値が6nm以下であることが好ましい旨述べた。
しかし、条件式(1)及び条件式(2)を満たさない斜方膜からなる位相差膜であっても、位相差膜を2層以上積層した位相差板について、方位角が基準方位角ηaに対して+45°の場合の入射光の第1位相差Re(15)ηa+45と、方位角が基準方位角ηaに対して-45°の場合の入射光の第2位相差Re(15)ηa-45との差の絶対値が6nm以下であることが好ましい。このような位相差板は、液晶層のプレチルト方位に基準方位を一致させることにより、液晶層で生じる位相差を精度よく補償することができる。
既述の通り、説明した実施形態の位相差板21、31、32、35、36、27は、位相差補償素子20として液晶表示素子10に適用可能である。以下に、液晶表示素子を備えた液晶プロジェクタ110について説明する。
「液晶プロジェクタ」
図39に示すように、本開示の液晶プロジェクタ110は、投映レンズ116、プロジェクタ駆動部117、表示光学系118を備えている。
また、プロジェクタ110は、筐体119の上面にズームダイヤル121、フォーカスダイヤル122、光量調節ダイヤル123などを備える。さらに、筐体119の背面には、コンピュータなどの外部機器と接続するための接続端子(図示しない)などが設けられている。
投映レンズ116は、表示光学系118から入射した投映光を拡大し、スクリーン124(図40参照)上に投映する。この投映レンズ116は、例えば、ズームレンズ、フォーカスレンズ、絞りなどから構成される。ズームレンズやフォーカスレンズは、投映光軸L11に沿って移動自在に設けられている。ズームレンズは、ズームダイヤル121の操作に応じて移動し、投映像の表示倍率を調節する。また、フォーカスレンズは、ズームレンズの移動やフォーカスダイヤル122の操作に応じて移動し、投映像のピントを調節する。さらに、絞りは、光量調節ダイヤル123の操作に応じて絞り開口の面積を変化させることで、投映像の明るさを調節する。
プロジェクタ駆動部117は、プロジェクタ110の各部の電気的な動作を制御する。例えば、プロジェクタ駆動部117は、プロジェクタ110に接続されるコンピュータなどから画像データなどを受信し、後述する液晶表示素子に表示させる。
また、プロジェクタ駆動部117は、投映レンズ116の各部を駆動するモータをそれぞれ備えており、これら各モータをズームダイヤル121、フォーカスダイヤル122、光量調節ダイヤル123などの操作に応じて駆動する。
表示光学系118は、光源から発せられた光を赤色光、緑色光及び青色光に分解し、各色の情報を表示する液晶表示素子10A,10B,10C(図2参照)にそれぞれ透過させて、各色の情報光を生成する。そして、これらの情報光を合成して投映光とし、投映レンズ116を介してスクリーン124上に投映する。
図40に示すように、表示光学系118は、光源部131と、この光源部131が発した光から情報光を生成する情報光生成部132などから構成される。
光源部131は、ランプ133、反射鏡134、紫外線カットフィルタ136、インテグレータ137、偏光板138、リレーレンズ141、コリメートレンズ142などから構成される。
ランプ133は、例えばキセノンランプなどの高輝度光源であり、特定の偏光方向を持たない自然な白色光を発する。ランプ133から発せられた白色光は、紫外線カットフィルタ136を透過して、インテグレータ137に入射する。
紫外線カットフィルタ136は、ランプ133から発せられた白色光から紫外光を除去することで、この白色光により、有機高分子の重合体などからなる各種フィルタ(図示しない)に褐色等の劣化が生じるのを防止する。
反射鏡134は、例えば楕円曲面状の鏡であり、この楕円曲面の一方の焦点の近傍にランプ133が設けられる。さらに、もう一方の焦点の近傍には、インテグレータ137の一端が設けられている。これにより、ランプ133から発せられる白色光は、効率よくインテグレータ137に導かれる。
インテグレータ137は、例えば、ガラスロッドと、このガラスロッドの端面に設けられたマイクロレンズアレイなどから構成され、ランプ133から発せられた白色光を集光し、リレーレンズ141を介してコリメートレンズ142へと導く。ランプ133からインテグレータ137に入射する光の量は、光源光軸L12から離れるほど減少し、光源光軸L12を中心として不均一に分布する。そこで、インテグレータ137は、このような不均一な光量分布の光を、光源光軸L12を中心とした所定の範囲内で略均一に分布させる。これにより、投映像はスクリーン124の全面で略均一の明るさとなる。
コリメートレンズ142は、インテグレータ137から射出した光を光源光軸L12に平行な光に整える。偏光板138は、コリメートレンズ142から入射した無偏光の光を紙面に垂直な偏光成分(以下、S偏光成分)の直線偏光光に変換する。そして、S偏光成分の光は、反射鏡143aを介して情報光生成部132へと導かれる。
情報光生成部132は、ダイクロイックミラー146,147、液晶表示素子10A,10B,10C、位相差補償素子20A、20B,20C、及びダイクロイックプリズム61などから構成される。
ダイクロイックミラー146は、その表面の法線方向と入射する光の光軸とのなす角が45°となるように設けられる。また、ダイクロイックミラー146は、光源部131から入射したS偏光の白色光のうち、赤色光成分を透過させて、反射鏡143bへと導く。反射鏡143bは、ダイクロイックミラー146を透過した赤色光を液晶表示素子10Aに向けて反射する。
また、ダイクロイックミラー146は、光源部131から入射したS偏光の白色光のうち、緑色光成分と青色光成分とをダイクロイックミラー147に向けて反射する。ダイクロイックミラー147は、その表面の法線方向と入射する光の光軸とのなす角が45度となるように設けられる。また、ダイクロイックミラー147は、ダイクロイックミラー146から入射したS偏光の光のうち、緑色光成分を液晶表示素子10Bに向けて反射する。
一方、ダイクロイックミラー147は、ダイクロイックミラー146から入射したS偏光の光のうち、青色光成分を透過させて反射鏡143cへと導く。この青色光成分は、反射鏡143c及び反射鏡143dに反射され、液晶表示素子10Cに入射する。
液晶表示素子10Aは、図1に示した液晶表示素子10である。液晶表示素子10Aは、プロジェクタ駆動部117によって駆動されており、コンピュータなどから受信した投映像データの中の赤色成分をグレースケールで表示する。この液晶表示素子10Aを透過することで、赤色光は、投映像の赤色成分の情報を持つ赤色の情報光となる。
同様に、液晶表示素子10Bは、図1に示した液晶表示素子10であり、コンピュータなどから受信した投映像データの中の緑色成分をグレースケールで表示する。この液晶表示素子10Bを透過することで、緑色光は、投映像の緑色成分の情報を持つ緑色の情報光となる。
さらに同様に、液晶表示素子10Cは、図1に示した液晶表示素子10であり、コンピュータなどから受信した投映像データの中の青色成分をグレースケールで表示する。この液晶表示素子10Cを透過することで、青色光は、投映像の青色成分の情報を持つ青色の情報光となる。
位相差補償素子20Aは、液晶表示素子10Aからダイクロイックプリズム160に入射する赤色の情報光の位相差を補償する。すなわち、位相差補償素子20Aは、液晶分子のプレチルトに起因して生じる位相差を補償する。
同様に、位相差補償素子20Bは、液晶表示素子10Bからダイクロイックプリズム160に入射する緑色の情報光の位相差を補償し、位相差補償素子20Cは、液晶表示素子10Cからダイクロイックプリズム160に入射する青色の情報光の位相差を補償する。
ダイクロイックプリズム160は、ガラスなどの透明素材を用いて略立方体形状に作製されており、その内部に互いに直交するダイクロイック面162,163を備える。ダイクロイック面162は、赤色光を反射し、緑色光を透過させる。一方、ダイクロイック面163は、青色光を反射し、緑色光を透過させる。
したがって、ダイクロイックプリズム160は、液晶表示素子151,152,153からそれぞれ入射する赤色,緑色,青色の情報光を合成して投映光とし、これを投映レンズ116へと導いて、スクリーン124に投映像をフルカラーで表示させる。
液晶プロジェクタ110においては、位相差補償素子20A,20B、20Cとして、本開示の位相差板、例えば既述の位相差板31、32、33、36、又は37を用いることにより、液晶分子のプレチルトに起因して生じる位相差を効率よく補償することができる。これにより、コントラストを従来よりも向上させ、かつ黒表示ムラを抑制した投影像を得ることができる。
2020年6月30日に出願された日本国特許出願2020-113612の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (21)

  1. 基板と前記基板の少なくとも一面に形成された位相差膜とを備え、前記位相差膜は、前記基板において前記位相差膜が形成された膜形成面の法線に対して傾斜した柱状構造体を有する斜方膜であり、かつ、光学特性として屈折率異方性を示す位相差板であって、
    前記屈折率異方性を示す二軸性の屈折率楕円体における3つの主屈折率をnx、ny、nzとし、そのうち、前記柱状構造体の長手方向であるX軸方向の主屈折率をnxとし、前記X軸に垂直な楕円における長軸方向であるY軸方向の主屈折率をny、短軸方向であるZ軸方向の主屈折率をnzとした場合に、以下の条件式(1)を満足し、
    かつ、前記法線を基準として前記X軸側に傾く方向の入射角を正とし、+30°の入射角の入射光の位相差をRe(+30)、-30°の入射角の入射光の位相差をRe(-30)、かつ、Re(+30)とRe(-30)の比である位相差比をRe(30)比とした場合に、下記条件式(2)を満足する位相差板。
    ny>nx>nz (1)
    Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.1~4.0 (2)
  2. 前記3つの主屈折率のうちの最大の主屈折率nyに対応する前記Y軸を前記膜形成面と平行な面に投影したYS軸であり、前記主屈折率nyに対応して前記入射光の位相が最も遅れるYS軸を遅相軸、前記X軸を前記膜形成面に投影した軸をZS軸とした場合において、前記遅相軸は前記ZS軸と直交する、請求項1に記載の位相差板。
  3. 前記Re(30)比は、以下の条件式(2-1)を満足する、請求項1又は2に記載の位相差板。
    Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.2~4.0 (2-1)
  4. 前記Re(30)比は、以下の条件式(2-2)を満足する、請求項1から3のいずれか1項に記載の位相差板。
    Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.4~3.0 (2-2)
  5. 前記Re(30)比は、以下の条件式(2-3)を満足する、請求項1から3のいずれか1項に記載の位相差板。
    Re(30)比=Re(30)/Re(-30)=1.5~2.5 (2-3)
  6. 前記斜方膜は、Si、Nb、Zr,Ti、La、Al、Hf及びTaの少なくとも1種を含有する酸化物からなる、請求項1から5のいずれか1項に記載の位相差板。
  7. 前記位相差膜が2層以上積層されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の位相差板。
  8. 前記3つの主屈折率のうちの最大の主屈折率nyに対応する前記Y軸を前記膜形成面と平行な面に投影したYS軸であり、前記主屈折率nyに対応して前記入射光の位相が最も遅れるYS軸を遅相軸とし、かつ、前記基板を、前記法線を中心に回転させた場合の前記遅相軸の向きを前記基板の方位角とした場合において、
    0°から360°の前記方位角の中で、前記法線に対して+15°の前記入射角の前記入射光に対して生じる位相差が最大となる前記方位角を基準方位角とし、前記方位角が前記基準方位角に対して+45°の場合の前記入射光の第1位相差と、前記方位角が前記基準方位角に対して-45°の場合の前記入射光の第2位相差との差の絶対値が6nm以下である、請求項7に記載の位相差板。
  9. 正面位相差が0.1nm~5nmである、請求項7又は8に記載の位相差板。
  10. 散乱光の発生の程度を示すヘイズ値が0.3%以下である、請求項7から9のいずれか1項に記載の位相差板。
  11. 前記位相差膜は、前記基板の両面に一層ずつ形成されている、請求項7から10のいずれか1項に記載の位相差板。
  12. 前記位相差膜は、前記基板の一面に2層以上積層されており、
    さらに、隣接する前記位相差膜間に中間層を備えた、請求項7から10のいずれか1項に記載の位相差板。
  13. 前記位相差膜が少なくとも1層形成された前記基板を複数枚備えている、請求項7から12のいずれか1項に記載の位相差板。
  14. 前記位相差膜は2層積層されており、互いの遅相軸が90°から±3°以内の交差角度でずれて配置されている、請求項7から13のいずれか1項に記載の位相差板。
  15. 前記位相差膜は2層積層されており、互いの正面位相差の差が±3nm以下である、請求項7から14のいずれか1項に記載の位相差板。
  16. 散乱光の発生の程度を示すヘイズ値が0.4%以下である負のCプレートを、さらに備えた、請求項7から15のいずれか1項に記載の位相差板。
  17. 前記Cプレートが反射防止機能を有する、請求項16に記載の位相差板。
  18. 散乱光の発生の程度を示すヘイズ値が1%以下である、請求項16又は17に記載の位相差板。
  19. 基板と前記基板の少なくとも一面に形成された位相差膜とを備えた位相差板であって、
    前記位相差膜は2層以上積層されており、
    前記基板の前記位相差膜が形成された膜形成面と平行な面内において、入射光の位相が最も遅れる軸を遅相軸とし、前記基板を、法線を中心に回転させた場合の前記遅相軸の向きを前記基板の方位角とした場合において、
    0°から360°の前記方位角の中で、前記法線に対して+15°の入射角の前記入射光に対して生じる位相差が最大となる前記方位角を基準方位角とし、前記方位角が前記基準方位角に対して+45°の場合の前記入射光の第1位相差と、前記方位角が前記基準方位角に対して-45°の場合の前記入射光の第2位相差との差の絶対値が6nm以下である、位相差板。
  20. 液晶層と、
    前記液晶層で生じる位相差を補償する位相差補償素子とを備え、
    前記位相差補償素子として、請求項1から19のいずれか1項に記載の位相差板を備える、液晶プロジェクタ。
  21. 液晶層と、前記液晶層で生じる位相差を補償する位相差補償素子を備えた液晶表示素子のコントラスト調整方法であって、
    前記位相差補償素子として、請求項13又は請求項13を引用する請求項14から18のいずれか1項に記載の位相差板を用い、
    前記位相差膜が少なくとも1層形成された複数の前記基板のうち、少なくとも1つの基板を、前記膜形成面に垂直な軸を中心に、他の基板に対して回転させることにより、前記液晶表示素子のコントラストを調整するコントラスト調整方法。
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