JP4386400B2 - 電磁波シールド材料及びその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、機能性材料としてのリグニンの炭化物に関し、より詳細には、電磁波シールド材料としてのリグニン炭化物及びこの炭化物を用いて構成された電磁波シールドに関する。
【0002】
【従来の技術】
リグニンは植物細胞を構成するフェノール系ポリマーで、自然界ではセルロースに次ぐ量の約3×1011トンが蓄積され、毎年2×1010トンが生合成されている。この膨大な天然資源の有効利用法開発は古くから検討され、これまでに代表的な単離リグニンであるパルプ廃液リグニンについては分散剤、沈殿剤、擬集剤等の高分子剤的利用、樹脂原料やゴム充填剤等の高分子材料的利用が実現している。しかし、これらのリグニン製品の性能、品質は特別優れているわけではなく、石油由来製品で十分代用出来ることから廃棄副産物の低レベル利用の域を脱していない。リグニンを新・高機能性材料として積極的に利活用するためには、潜在的な化学的反応性の高さを保持させたかたちで炭水化物成分との高効率分離を図る必要がある。
このような観点から木材にフェノール/硫酸を適用する相分離システムが開発され、本システムで回収されるリグニン(即ち、リグフェノール又はリグノクレゾール、以下、LCという。)は化学構造、分子量特性、フェノール性水酸基等の点から機能性材料素材として興味が持たれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、既にカラマツの木部(いわゆる木材)と樹皮を原料とし、これに酢酸ニッケル4水和物(CH3COO)2Ni・4H2Oを水溶液含浸法(Pre-imp)により添加して900℃で炭化するとニッケルの触媒効果(T効果)によって炭化物炭素の結晶構造が発達し、優れたEMS性能を有することを報告した(T. Suzuki, Pro. Of ICEUP’99, Chi-tou, Taiwan, pp.141-46(1999))。しかし、このシールド効果は十分であるとはいえなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、このLCを低温(1000℃以下)で炭化して電磁波シールド(EMS)材を製造することを目的とし、いくつかの単離リグニンから調整した炭化物のEMS性能を比較してLCの炭化剤原料としての適性等を調べた。
即ち、炭化物の炭素結晶子の厚さ(Lc)を発達させて炭素を導電性とすればEMS性能が付与されると考え、これを低コストで実現するためには出来るだけ熱処理温度を低下させる必要があるので、Niの触媒作用を利用することとした。しかし、900℃処理ではNiの単独添加でLcを発達させることは出来なかったが、本発明者はNiの触媒作用機構を考慮して助触媒(凝集抑制剤)の添加(Na)を試したところ、適量のNiとNaの範囲でニッケルは期待した触媒効果を発揮して、この温度で炭化物のLcを大きく発達させることに成功し、生成した炭化物が実用性有りと判定出来るシールド効果(約30dB以上)を有することを見出した。
【0005】
即ち、本発明は、Ni塩及びNa塩とリグニンとの混合物を炭化して得られる、リグニンの炭化物から成る電磁波シールド材料であって、前記混合物中における前記リグニン100重量部に対するNi及びNaの割合がそれぞれ2〜7重量部及び2〜8重量部であり、前記炭化物中に、Niを9重量%以上含み、Naを8重量%以上含む電磁波シールド材料である。
また、本発明は、Ni塩及びNa塩をリグニンと混合して炭化することから成る電磁波シールド材料の製法であって、リグニン100重量部に対するNi及びNaの割合をそれぞれ2〜7重量部及び2〜8重量部とし、前記炭化の温度が800〜1000℃である電磁波シールド材料の製法である。
【0006】
更に、本発明は上記のいずれかの電磁波シールド材料を少なくとも一部に含む電磁波シールドである。この電磁波シールド(電磁波遮蔽)を、後述のように、この電磁波シールド材料を成形可能な材料(樹脂、バインダー、接着剤等)に混合して、適宜所望の形状に成形したり、リグニン等の原料を、必要に応じて成形可能な材料と混合して、所望の形状に成形した後に炭化することにより、得てもよい。また、この電磁波シールド(電磁波遮蔽)は本発明の炭化物をその一部にのみ含むものであってもよい。
【0007】
本発明においては、出来るだけ低い炭化温度を採用することを目的として700℃、800℃、900℃の3点で検討したところ、適正濃度範囲のNiとNaを添加しても700℃と800℃では不十分であったが、900℃では高いEMS性能を有する炭化物を与えた。従って、炭化温度は800〜1000℃、特に900±20℃であることが好ましい。なお、リグニンのような難黒鉛化炭素では、触媒無添加あるいは効果の小さな触媒(酸化クロム等)添加によってLcを大きく発達させるには一般に1500℃以上の高温が必要とされので、これらの温度は非常に低いといえる。
【0008】
【発明の実施の形態】
リグニンとは、植物体の主成分の一つでありフェニルプロパン骨格とする構成単位体が縮合してできた網状高分子化合物をいい、植物の種類によって構造が異なるが、本発明においては、リグノ(リグニン)スルフォン酸以外(例えば、リグノ(リグニン)スルフォン酸カルシウムとナトリウム)の一般にリグニンと呼ばれているものを全て含む。本発明においては、クラフト法とソルボリシス法による木材パルプ製造廃液から回収したリグニンとフェノール/硫酸相分離システムによって回収されるリグノフェノールを用いてもよい。
【0009】
本発明の鉄族から選択される少なくとも一種の元素(以下、第一の元素という。)として、ニッケル、鉄、コバルトが挙げられるが、Niが好ましい。ただし、鉄やコバルトを用いる場合の所要量はニッケルより多いと考えられる。
この元素を含む化合物としては、リグニンへの添加は水溶液含浸で行われるので水溶性でなければならず、酸化物や水酸化物よりも、塩の形態が好ましい。具体的には、水溶性塩のうち、塩化物や硫酸塩よりも、酢酸塩や硝酸塩が好ましく、酢酸ニッケル4水和物(CH3COO)2Ni・4H2Oや硝酸ニッケル6水和物Ni(NO3)2・6H2Oがより好ましい。
【0010】
本発明の、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される少なくとも一種の元素(以下、第二の元素という。)としてはアルカリ金属、特にNa及びKが好ましく、Naがより好ましい。アルカリ土類金属の場合にはCaが好ましい。この元素を含む化合物としては、上記と同様の理由から、これらの塩が好ましく、特に塩酸塩、硝酸塩などがより好ましく、例えば、塩化ナトリウムや硝酸ナトリウムが有効であり、更にこれら以外の一般の水溶性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム等)や、水溶性のカルシウム化合物(水酸化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム)も有効である。
【0011】
本発明において、炭化物を生成するために、第一の元素のみでは不十分であり、第一の元素と第二の元素の両者が必須である。即ち、第二の元素が共存しないと第一の元素は望ましい触媒効果を発揮しない。これは第二の元素が第一の元素、例えばNi粒子の凝集を抑制し、その結果第一の元素の活性低下が抑制されるためと考えられる。
【0012】
次に、本発明のシールド材料及びこの材料を用いたシールドの製法の具体例を示す。これらは一例であって、本発明を制限するものではない。なお、以下、第一の元素としてNi、第二の元素としてNaを用いて説明する。
(1)リグニン試料へのニッケル塩とナトリウム塩の添加:
各リグニン30gを2000ccの容積のビーカー中で水またはテトラヒドロフランに溶解し、これにニッケル塩((CH3COO)2Ni)の10重量%水溶液60〜75ccとナトリウム塩(Na2CO3)の10重量%水溶液24〜30ccとを加え、室温でマグネティックスターラーを使用して10〜15分攪拌する。
(2)溶媒の留去、乾燥:
上記の溶液を2000ccの容積のナス型フラスコに移し、ロータリーエバポエーターにセットしてアスピレーターで滅圧(20〜30mmHg=3〜4kPa)加熱(湯浴温度40〜50℃)して溶媒(水またはテトラヒドロフラン)を留去する。溶媒がほぼ完全に留去し終わったら、フラスコごとを減圧乾燥機(ほぼ真空、50℃)に移して乾燥リグニン試料を得る。
【0013】
(3)リグニン試料の炭化:
各乾燥リグニン試料10gをステンレス製容器(内容積約80cc)に採り、これを縦型ステンレス製反応管に入れ、窒素を流しながら(約200ml/分)加熱し、10〜50℃/分で900℃まで昇温し、この温度に1時間保持する。この操作に用いるための装置の一例を図1に示す。
なお、原料として添加したNiとNaは炭化物中に残るが、加えたNi及びNaの全量が残存しているわけではなく、炭化中に5〜20%は失われると考えられる。X線回折(後述の図4)では金属Niのピークが出現し、Niが金属ニッケルとして存在することが分かるが、Na(炭酸ナトリウム)のピークは現れない。しかし、炭酸ナトリウムが回折線を与えないのは十分に結晶化していないためであって、存在していないということではない。
(4)電磁波シールドの作成:
本発明の電磁化シールド材料を用いて、外部から電磁波が入らないように機器(電磁波受発信パーツ)を鎧で覆うように、適宜公知の成形方法により所望の形状に成形する。機器類(電磁波受発信パーツ)は様々な形状をしているため、それに合わせて鋳型をつくり、その鋳型に炭化物(粉末)と樹脂液を練り混ぜて注入し、加圧成形すれば所望の覆い(鎧)を得ることができる。その例を図2に示す。
【0014】
【実施例】
以下、実施例で本発明を例証するが、本発明を制限することを意図したものではない。また「%」は特記しない限り「重量%」を表す。
本実施例では、ヒノキLC(ヒノキリグノクレゾール(Two step Process II))、水可溶アルカリリグニン(AL−S、東海化成製「リグニン(90%)、アルカリ、500g入り」、ロット番号GI01、コード番号L0082)、水不溶アルカリリグニン(AL−I、シグマ社製 Indulin AT)、AL−Iから調整したオゾン酸化リグニン(OzL、ジオキサン:メタノール/1:2に溶解してオゾン酸化した後、エーテル中で滴下し、沈殿した部分を用いた。)、市販のオルガノソルブリグニン(OrL、アルドリッチ社製、Lignin, organosolv、ロット番号12008DS カタログ番号37,101-7)をリグニン原料とした。各原料中の灰分(600℃燃焼残渣)はそれぞれ0.3、15.7、1.6、2.4、0.9%であった。
【0015】
これら5種のいずれかのリグニン30gを1000ccの水またはテトラヒドロフランに溶解し(AL−S, AL−I, OzL, OrLでは水、LCではテトラヒドロフランを使用)、これに上記のニッケル塩水溶液と炭酸ナトリウム水溶液(ニッケル塩と炭酸ナトリウム水溶液の濃度はともに10重量%)を加える。前者の添加量は60〜75cc、後者の添加量は24〜30ccである。この後ロータリーエバポレーター中で溶媒(水、テトラヒドロフラン)を留去し、さらに減圧乾燥(50℃)を行って乾燥リグニン試料を得る。次に、乾燥後各リグニン試料の10〜30gをステンレス容器にとり、縦型反応管(石英反応管)に移してN2気流中で10℃/分で昇温、900℃で1時間保持して、炭化物を得る。
EMS性能を測定するための円板試料は、炭化物3gと所定量のエポキシ樹脂(原液12ml、硬化剤3ml)をステンレス成型器中で練り混ぜ、60Kg/cm2で10分間加圧した後12時間放置して調製した。
なお、使用するリグニン量、溶解させる水とテトラヒドロフランの量、ニッケル塩と炭酸ナトリウム水溶液の濃度は任意でよい。要は、900℃炭化後に得られる炭化物にNi、Naが共に約10重量%含まれていればよい。
【0016】
得られた炭化物をCu−Kα線を用いたX線回折測定装置(理学 RINT1200)により回折角2θ=3〜70°のプロファイルを測定し、2θ=22−26°の線幅から(002)面における炭素の平均結晶サイズを計算した。この結晶の厚さをLcで表し、(002)面の間隔をd002で表すと、これらは下式で計算される。
Lc(オングストローム)=0.9×λ/β1/2×cosθ
d002(オングストローム)=λ/2sinθ
【0017】
得られた炭化物の収率(重量%)は無水無灰無触媒基準で求めた。NiとNaの含有量は炭化物の燃焼残渣をHCl−HNO3−HFに溶解して原子吸光法により測定して求めた。
炭化物収率(%)は(炭化物重量−Ni重量−Na2CO3重量)/(仕込み試料重量−(CH3COO)2Ni・4H2O重量−Na2CO3重量)×100で表す。
【0018】
EMS性能の測定は3gの炭化物を適量のエポキシ樹脂と練り混ぜて作成した直径40mm、厚さ7〜9mmの円板試料(成形圧60kgf/cm2)について行い、50〜800MHz間のシールド効果(SE値)を求めた。
シールド効果(電磁波減衰量)の測定は、非拘束型試験片には同軸伝送線路法(高温学会誌,21-5(1995) 183-191)、拘束型試験片には同軸管の内部導体と金属膜との間に絶縁体が介在し同軸伝送線路法を適用できないので、同法に自由空間法(同上)の要素を取り入れた同軸キャビテイ管法と呼ぶ図3に示す構造の装置を用いて行った。この装置は、左右対称の同軸管の中間部にキャビテイ管(中空管)を設け、内部導体の先端に送信用と受信用の直径30mmの円盤状アンテナを取り付けたもので、両アンテナ間の距離は20〜180mmに可変でき、試験片は両アンテナの中間部にボルトで固定される。電界強度はアンテナ間距離が短いほど大きく、周波数帯によっては最大30dB程度変動しているので、測定に際してはアンテナ間距雌を電界強度の大きな20mmに設定し、周波数依存性をコンピュータ処理によって相殺、基準化した。減衰量は試験片の取り付け前後の電界強度差であり、ダイナミックレンジ127dB内で測定できる。
電磁波シールド効果(SE値)は下式によって定めた。
SE値(dB)=20log(E0/Es)
ここで、E0及びEsはそれぞれ試験片のない場合及び試験片を置いた場合の電界強度(V/m)を表す。
【0019】
試験片として、市販のシナノキ合板、石膏ボード、セメントボード(寸法:70×70−9mm、平衡含水率:約13%)をブラスト法または木工用サンドペーパ(80#)によつて粗面化後、金属の溶射皮膜または箔と次のような方法で複合化し試験片とした。(1)ガスフレーム溶射で純度99%以上の銅皮膜、アルミニウム皮膜をt=100〜400μmに被覆したもの、(2)純度99.9%以上でt=10〜300μmの銅箔、アルミニウム箔を酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤で貼付したもの(以上、非拘束型)、(3)2枚のシナノキ合板(寸法:φ72−4mm)の間に溶射皮膜、箔を挟み上記接着剤で接着したもの、(4)有孔の溶射皮膜、箔(パンチングシート)を挟み接着したもの(以上、拘束型)。溶射条件は報文(高温学会誌,21-5(1995) 183-191)に記載のとうりに行い、有孔皮膜・箔の表示は、例えば、孔径5mm、孔と孔のピッチ10mmのものはφ5とした。シールド材料に必要な特性としては、反射損失の確保には比導電率/比透磁率が大きいこと、吸収損失の確保には比導電率×比透磁率が大きいこと、実用面からは軽量で低価格であることが求められる。ここで用いた銅及びアルミニウムはこれらの条件を比較的バランス良く満たしている材料である。
【0020】
炭素の結晶構造
図4に、(a)無添加炭、(b)代表的なニッケル添加炭、及び(c)ニッケルとナトリウムを共添加したLC炭のX線回折プロファイルを示し、表1にこれらのLc及びd002を示す。なお、Ni量とNa量は炭化物中の値を表す。
図4(a)に示すように、ニッケル無添加炭はいずれも22と44°付近にブロードなピークを与えた。これらの回折線は無定形炭素に由来するが、LC炭素は比較的結晶性が高くAL−S炭素の結晶性は非常に低かった。
また図4(b)に示すように、ニッケルを添加するとOrL炭ではNi量約4%で26°付近にT成分(乱層構造炭素)に相当する鋭いピークを生じ、この回折強度はNi量増加によって増大した。このピークは、AL−S炭でもNi量6.5%以上で現れたが、LC、AL−I、OzL炭ではNi10%以上の添加でも出現しなかった。即ち、OrLとAL−Sではニッケルが触媒効果を発揮したが、LC、AL−I、OzLには明確な触媒作用は認められなかった。このようなリグニンによる違いは性状そのものより共存する無機成分(灰分)の影響に関係すると考えられ、実際LCにAL−S中に多量に含まれるNa2CO3を共存させると、図4(c)に見られるようにT成分による回折ピークが現れた。Na2CO3の共存効果はAL−I、OzLでも同様に観測された(表1)。(炭酸)ナトリウムそれ自体は触媒能は有していないがニッケルの凝集抑制剤として働く結果としてニッケルの効果を発現させると考えられる。なお、図4(b)と4(c)に認められる44と57°の大きな鋭い回折線は金属ニッケルに帰属し、30〜40°付近に現れる複数の小さな回折線は主として炭酸ナトリウムに由来する。
【0021】
【表1】
この表から、NiにNaを共存させるとLcが大きくなることがわかる。即ち、要求されるEMS性能を付与するためにはNaを適量加える必要がある。
AL−SやOrLではナトリウムを添加しなくても炭素の結晶子径Lcが増大して比較的大きなEMS効果を与える。この場合AL−Sには元々炭酸ナトリウムが含まれおり、OrLではまだ不明であるがナトリウムと同様の働きをする無機成分が含まれているためと考えられる。
しかし、表1に示したAL−S及びOrL炭の結晶構造でも、まだ実用的な電磁波遮蔽効果を発揮するには至らなかった。従って、これらのリグニンについても適正なニッケルとナトリウムの添加量を検討する必要があった。
【0022】
炭化物収率
表2に5種のリグニン試料の炭化物収率とNa及びNi含有量との関係を示す。
適当量のナトリウムのみを添加した場合の炭化物収率は36〜42%であり、リグニン原料による違いは分子量や含酸素官能基などに関係する熱分解抵抗性の違いを反映したものと考えられる。このナトリウム量を保持してニッケル添加量を増加すると、いずれのリグニンでも熱分解反応が促進される結果収率は低下し、ニッケル量10重量%前後で23〜34%となった。このニッケル添加量では炭素の結晶構造発達が顕著であるが、収率には依然として各リグニンの熱分解抵抗性の違いが現れている。
【0023】
【表2】
【0024】
EMS性能
表3に各リグニン炭化物の800MHzにおけるSE値をLc及びd002と共に示す。800MHzにおいては、いずれの試料もSE値が最低となり、この最低SE値が約30dBを超えると実用性有りと判定出来る。この表から、炭化物中にNiが約9%以上、好ましくは10%以上、且つNaが8%以上、好ましくは10%以上あれば、好ましいSE値を与えることが分かる。また、Ni量及びNa量の好ましい上限値は14%程度と考えられる。
【表3】
【0025】
EMS性能は炭素の結晶構造と密接な関係があり、いずれの炭化物でも上記のNa量共存のNi量9%以上でSE値が実用値またはその値近くに達するのはT成分が顕著に生成してLcが増大、d002が減少するためである。なお、LCでは30dBに達するのに必要なNi添加量は約8%であり、OzL及びOrLでは9%程度、AL−S及びAL−Iでは10〜11%であった。LCの所要Ni量が他のリグニンより少ないのは、残留炭素が結晶化し易いという特徴(図4)に関係すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リグニンの炭化の装置の一例を示す図である。
【図2】成形体を用いる電磁波シールドの例を示す図である。
【図3】シールド効果の測定装置(同軸キャビテイ管法)を示す図である。
【図4】ニッケル無添加炭と代表的なニッケル添加炭のX線回折プロファイルを示す図である。
Claims (3)
- Ni塩及びNa塩とリグニンとの混合物を炭化して得られる、リグニンの炭化物から成る電磁波シールド材料であって、前記混合物中における前記リグニン100重量部に対するNi及びNaの割合がそれぞれ2〜7重量部及び2〜8重量部であり、前記炭化物中に、Niを9重量%以上含み、Naを8重量%以上含む電磁波シールド材料。
- 請求項1に記載の電磁波シールド材料を少なくとも一部に含む電磁波シールド。
- Ni塩及びNa塩をリグニンと混合して炭化することから成る電磁波シールド材料の製法であって、リグニン100重量部に対するNi及びNaの割合をそれぞれ2〜7重量部及び2〜8重量部とし、前記炭化の温度が800〜1000℃である電磁波シールド材料の製法。
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