JP4385600B2 - 開口制限素子および光ヘッド装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、開口制限素子および光ヘッド装置に関し、特に光ヘッド装置については光記録媒体の情報の記録および再生を行う光ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一つの光ヘッド装置を用いて、規格の異なる光ディスクであるCDまたはDVDの記録および再生を行うことのできる、CD/DVD互換型光ヘッド装置が製品化されている。CDとDVDのそれぞれの光ディスクでは、記録および再生に用いる光の波長、光ディスクの厚さ、記録密度などの規格が異なるため、CDの記録または再生時とDVDの記録または再生時とでそれぞれ光学系の開口数を変える必要がある。
【0003】
波長655nmのDVD用に設計された開口数0.6程度の対物レンズを用いて、CDの記録および再生を実行するための従来の開口制限素子の例を図6に示す。開口制限素子201は、透明基板21上に、たとえばTiOなどからなる高屈折率誘電体膜(H層)とSiOなどからなる低屈折率誘電体膜(L層)とが交互に積層された波長選択性の誘電体多層フィルタ膜(以下、フィルタ膜という。)26が形成された周辺領域Dと、SiOなどの単一材料からなる位相調整膜22が形成された中央領域Cとから構成されている。
【0004】
周辺領域Dのフィルタ膜26は、DVDの波長λ(655nm)の光束Lを透過させるが、CD用の波長λ(785nm)の光束Lは反射させる。中央領域Cの位相調整膜22は、λ、λの両方の波長の光束を透過させる。それと同時に、中央領域Cと周辺領域Dとを透過した波長λの2つの光束の位相差が生じないように位相調整膜22は設計される。
【0005】
従来、位相調整膜としてSiO膜などが用いられている。しかし、例えばSiO膜を用いる場合には、(1)式で求められる、フィルタ膜26の平均屈折率nと位相調整膜22の屈折率nとの差が大きいために、2つの異なる領域を透過した光束間の位相差の波長依存性が大きい。このため、用いるレーザ光の波長が変動すると、2つの異なる領域を透過した光束が光ディスク表面に収束する際の収差が大きくなり、実用上CDまたはDVDの性能を劣化させる問題があった。
【0006】
上記のフィルタ膜と位相調整膜とを透過する光束の位相差の波長依存を最小にする例が、特許文献1に提示されている。図7に示す開口制限素子301は、透明基板31上に位相差調整用の誘電体多層膜32が形成された中央領域Cと波長選択用のフィルタ膜33が形成された周辺領域Dを有している。
【0007】
フィルタ膜33は、図6に示す開口制限素子201と同じく、H層とL層が交互に積層されて、DVD用の波長λの光束Lを透過させるが、CD用の波長λの光束Lは透過させないフィルタとして機能する。一方、位相差調整用の誘電体多層膜32は、開口制限素子201とは異なり、周辺領域のフィルタ膜33と同様、H層とL層とが交互に積層されて形成され、DVD用の波長λとCD用の波長λの両方の光束をともに透過させるとともに、中央領域Cと周辺領域Dとを透過した波長λの2つの光束の位相を揃える機能とを持っている。
【0008】
さらに、フィルタ膜36および位相調整膜32のどちらもそれぞれの最上層および最下層に中間屈折率を持つ第3の材料からなる調整層を導入して位相差の波長依存性を少なくしている。開口制限素子301では、フィルタ膜および位相調整膜がともに、ほぼ同じ材料からなる多層膜によって形成されるので、可変開口制限素子201で問題であった位相差の波長依存性は小さく抑えられている。
【0009】
しかしながら、開口制限素子301は、中央領域Cと周辺領域Dとにそれぞれの多層膜を形成する製造工程において、すべての層の膜厚を精密に制御する必要のある15層前後の誘電体多層膜の形成を2回、リフトオフ用のマスクの形成を2回、リフトオフを2回繰り返す多数の工程が必要となる。これらの複雑で高度の制御精度を要求する工程は、歩留まり低下の原因となり、より簡単な工程による開口制限素子の製造が望まれていた。また位相差の波長依存性を小さくするために、L層、H層とは異なる中間屈折率を有する第3の材料を用いており、このため1台の膜形成装置の内部に、蒸着装置では3種類の蒸着源またはスパッタ装置では3種類のスパッタターゲットが必要であり、膜形成装置の大型化を要するために使用できる装置に制約があった。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−328715号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服して、波長選択性フィルタ膜と位相調整膜との位相差の波長依存性が小さく、かつ製造工程数が少なくて作製が容易で、生産歩留まりが高い開口制限素子、およびそれを用いた光ヘッド装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光透過性基板上に、波長λの光束Lと、波長λ(λ≠λ)の光束Lのうち、波長λの光束Lのみを透過する波長選択性を有するフィルタ域と、両方の光束を透過する透明域とを形成した開口制限素子であって、前記フィルタ域は開口制限素子表面の周辺領域にあって、相対的に屈折率の低い誘電体膜と相対的に屈折率の高い誘電体膜とが交互に積層された波長選択性を有する誘電体多層膜から構成され、かつ前記透明域は開口制限素子表面の中央領域にあって、前記透明域には前記低屈折率誘電体および前記高屈折率誘電体の混合物からなるとともに前記誘電体多層膜の平均屈折率nに等しい屈折率nを有する単層の中間屈折率誘電体によって位相調整膜が形成されており、前記位相調整膜の屈折率と膜厚は、入射する光束Lに対して中央領域と周辺領域とでその透過光の位相差が生じないように調整されていることを特徴とする開口制限素子を提供する。
【0013】
また、前記開口制限素子の少なくとも一方の面に反射防止膜が形成され、この反射防止膜を含めて、入射する光束L に対して中央領域と周辺領域とで透過光の位相差が生じないように調整されている上記の開口制限素子を提供する。
【0014】
また、前記誘電体多層膜の全膜厚と、前記位相調整膜の膜厚とが、等しくなるように設計されて平坦化された上記の開口制限素子を提供する。また、前記位相調整膜の上層または下層、あるいはその両方に反射防止膜が形成され、前記誘電体多層膜の全膜厚と、前記位相調整膜と前記反射防止膜との合計膜厚とが、等しくなるように設計されて平坦化された上記の開口制限素子を提供する。
【0015】
また、光源と、前記光源から出射された光を光ディスクの表面に集光させる対物レンズと、前記光ディスクで反射された光を検出する光検出器と、を備える光ヘッド装置において、前記光源と前記対物レンズとの間の光路中に上記の開口制限素子が配置された光ヘッド装置を提供する。
【0016】
また、光源と、前記光源から出射された光を光ディスクの表面に集光させる対物レンズと、前記光ディスクで反射された光を検出する光検出器と、を備える光ヘッド装置において、前記光源と前記対物レンズとの間の光路中に上記の開口制限素子が配置され、さらに、上記の開口制限素子の表面上に波長板が積層されている上記の光ヘッド装置を提供する。さらに、前記波長板が高分子液晶から構成される上記の光ヘッド装置を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明における開口制限素子は、波長λの光束Lと波長λ(λ≠λ)の光束Lのうち、波長λの光束Lのみを透過する波長選択性のフィルタ域と、両方の光束LおよびLを透過する透明域とからなる開口制限素子である。そして開口制限素子は、その表面の周辺領域にフィルタ域として高屈折率誘電体膜(H層)と低屈折率誘電体膜(L層)とが交互に積層された波長選択性の誘電体多層膜(以下、フィルタ膜ともいう。)が形成され、かつ透明域は、開口制限素子表面の中央領域にあって、フィルタ域に用いられるものと同一の低屈折率誘電体および高屈折率誘電体の混合物または化合物からなる誘電体によって構成されている。さらにこの位相調整膜の屈折率と膜厚は、入射する光束Lに対して中央領域と周辺領域とで透過光の位相差が生じないように、すなわち位相差がほぼゼロになるように調整されている。
【0018】
さらに、中央領域の位相調整膜は、周辺領域のフィルタ膜に使用される低屈折率誘電体膜の屈折率nと高屈折率誘電体膜の屈折率nとするとき、(1)式で定義される平均屈折率nにほぼ等しい屈折率を有する誘電体膜から構成されることが好ましい。ここで、波長選択性誘電体多層膜の総膜厚d、i番目の層のL層の膜厚をdLi、j番目の層のH層の膜厚をdHjとし、ΣまたはΣは同じ材料の層すべてを加えることとを意味する。
【0019】
【数1】
Figure 0004385600
【0020】
また、開口制限素子を透過すべき光束の光量を最大にするために、開口制限素子の少なくとも一方の面、すなわち位相調整膜の空気側(上層)または透明基板側(下層)、あるいはその両側に単数または複数層からなる反射防止膜が形成され、この反射防止層を含めて位相調整を行うように構成されることが好ましい。また、位相調整膜は、その両側または片側に形成される複数層からなる反射防止膜を除けば単層膜である。
【0021】
具体的には、フィルタ膜の平均屈折率nと等しい屈折率を持つ、L層およびH層材料の混合物からなる誘電体膜の形成は、L層およびH層の両材料を同時にその両者の放電パワー比を制御して組成比を調整する、いわゆる、コスパッタ法により、組成および膜厚の制御を精度よく行う。
【0022】
従来の蒸着法では、2つの屈折率nとnの中間の任意の屈折率を持つ誘電体膜を、制御性よく形成することはほとんど不可能であった。スパッタ法では酸化物誘電体薄膜の作製技術および制御精度が向上し、コスパッタ法によりこのような中間屈折率を持つ誘電体膜を形成することが、比較的容易に行うことができるようになった。
【0023】
なお、2つのターゲットを同時に放電させて誘電体膜を成膜するコスパッタ法では、通常は2つの誘電体材料の混合物の薄膜が形成され、特別な条件を用いない限り、新たな化合物を生成することはほとんどないので、コスパッタ法によって得られる薄膜の屈折率は、ほとんどの場合両者の中間の値が得られる。
【0024】
このように本発明においては、周辺領域に形成されるフィルタ膜を構成する膜材料として、例えばH層にTiO膜、L層にSiO膜を用いる場合には、コスパッタ法により中央領域に形成される位相調整膜としてTiO−SiOの混合膜を用いることができる。さらにこの位相調整膜の片側または両側に形成される反射防止膜も同じTiO膜(H層)とSiO膜(L層)を用いて構成できるので、開口制限素子全体の膜を同じ2つの材料系から構成できる。
【0025】
また、2つの異なる領域を通過した波長λの光束Lの位相差をほぼゼロに保った上で、膜厚をほぼ同じ厚さにでき、しかも、フィルタ膜の平均屈折率と位相調整膜の屈折率とはほぼ等しいため、2つの領域において屈折率の波長分散もほぼ等しくなり、使用するレーザ光源の波長の変動があっても、2つの異なる領域を通過した光束の位相差をほぼゼロに保つことができる。
【0026】
さらに、前記のように開口制限素子の各層が限られた材料から構成される(通常、ターゲット材料としては、L層材料とH層材料の2種類のみでよい)ので、生産の材料コストを最小に押さえることができる。
【0027】
また一般に、フィルタ膜中の適当な位置に、L層とH層の中間の屈折率を持つ誘電体膜(N層)を挿入すると、多層膜の全膜厚や層数を減らしたり、光学特性を改善できることが知られている。本発明においては、このようなN層を利用する場合でも、L層、H層とは異なる第3の材料である必要はなく、前記コスパッタ法により中間の屈折率を有するN層が簡便に形成できる。
【0028】
N層の屈折率は、コスパッタ時のL膜ターゲットとH膜ターゲットに供給するパワー比を変えて容易に制御できるので、位相調整膜の屈折率nとは同じである必要はなく、波長選択膜に必要な所望の分光曲線を得るのに都合の良い値を選択できる。
さらに、本発明の開口制限素子は周辺領域にある波長選択性の誘電体多層膜の全膜厚と、中央領域にある位相調整膜または位相調整膜と反射防止膜との合計膜厚とがほぼ等しい厚さに設計され形成されて、開口制限素子全面が平坦になっており、この平坦な開口制限素子の表面上に、さらに他の光学機能素子、たとえば波長板を積層する。この積層は本来の波長板の機能を何ら損うことなく、平坦な基板面に直接単独の波長板を形成するのと同一のプロセスによって積層し一体に集積することができる。このように、開口制限素子と他の光学機能を有する波長板などの薄膜素子が集積されている光学素子を光ヘッド装置に搭載することは、多機能でありながら装置を小型化でき好ましい。
【0029】
また、波長板が高分子液晶を用いている光ヘッド装置とすることは、入射角の違いに対して位相差の変動が少ないことや波長板の厚さを10μm以下と薄くできることなどの理由により好ましい。しかし、開口制限素子上に高分子液晶により波長板を積層しても位相差に悪い影響を与えないためには、基板面が平坦であることが不可欠であり、本発明により開口制限素子に対しても高分子液晶が利用できるようになる。
【0030】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の開口制限素子101を搭載した光ヘッド装置の構成例を示している。DVD用ディスク6およびCD用ディスク7に記録および再生を行う光ヘッド装置であり、光源として、DVD用の波長λの光束Lを出射する半導体レーザ1AとCD用の波長λの光束Lを出射する半導体レーザ1Bとを備えている。
【0031】
半導体レーザ1Aおよび1Bを出射した光束L、Lはそれぞれ、ビームスプリッタ2および3で反射され、コリメートレンズ4を透過後、開口制限素子101を透過して、対物レンズ5によって、DVD用ディスク6またはCD用ディスク7上に集光される。DVD用ディスク6またはCD用ディスク7で反射した光は、最終的に光検出器8上に集光する。また、9は位相板であり、4分の1波長板を用いることで、CD7への情報記録時に半導体レーザ1Bへの同一偏光方向の戻り光を防ぎ、半導体レーザ1Bの発振特性を安定させることができる。
【0032】
図2に本発明の第1実施態様である開口制限素子101の(a)断面図と、(b)平面図を示す。透明基板11の下面の中央領域Aには膜厚がdである位相調整膜12とその上下両面に反射防止膜13、13’が、周辺領域Bには全膜厚がdである波長選択性の誘電体多層膜(フィルタ膜)16が形成されている。また、透明基板11の上面にも、反射防止膜14が形成されている。透明基板11としては、ガラス、石英ガラスなどの光学的に等方的な材料を用いることができる。
【0033】
また、フィルタ膜16としては、DVD用の波長λの光束Lに対し95%以上の透過率、CD用の波長λの光束Lに対し10%以下の透過率を有する10層から20層程度の誘電体多層膜を形成する。ただし、CD用の光束Lの透過率としては、CD用ディスクの情報記録面上への不要な光の集光を防ぐため、5%以下が好ましい。したがって、フィルタ膜16を周辺領域Bに成膜することで、開口制限素子101はCD用の光束Lの径を中央領域Aの径に制限できる。
【0034】
中央領域の位相調整膜としては、DVD用の波長λおよびCD用の波長λの両方の波長の光に対して透明な誘電体膜を使用する。特にフィルタ膜16を構成する相対的に低い屈折率を持つ材料Lおよび高い屈折率を持つ材料Hの混合物からなる誘電体膜材料Mを用いて中央領域と周辺領域を通過する波長λの光束の位相差を最小にする。この位相調整膜の上層または下層、あるいはその両方に反射防止膜を形成することで、中央領域の位相調整膜を透過するDVD用の波長λおよびCD用の波長λの両方に対して95%以上の透過率を得ることができる。反射防止膜14としては、DVD用の光束LとCD用の光束Lが、ともに98%以上透過し、容易に作製できる3、4層程度の誘電体多層膜を使用する。
【0035】
図1の本発明の開口制限素子101を搭載した光ヘッド装置では、開口制限素子101によって、DVD用の光束Lの径を制限することなく開口数0.6の光束をDVD用ディスク6上に集光できる。一方、CD用の光束Lに対しては、その径を制限し、開口数0.45から0.5程度までの光束をCD用ディスク7上に集光できるので、DVD用ディスク6やCD用ディスク7のように厚さの異なる光ディスク上に単一の対物レンズを用いて、安定に記録および再生ができる。
【0036】
次に、図3を用いて、本発明の開口制限素子101の製造方法について説明する。まず、図3の(a)に示すように、透明基板11の下面に反射防止膜13をスパッタ法または蒸着法にて作製し、さらに位相調整膜12をコスパッタ法または同時蒸着法によって成膜した後、この位相調整膜12の上層および透明基板11の上面に、反射防止膜13’、14を真空蒸着法、またはスパッタ法にて成膜する。つぎに図3の(b)のように反射防止膜13’の上にフォトレジスト15を積層し、フォトリソグラフィによりパターニングして、図3の(c)のように、反射防止膜13’、13と位相調整膜12をドライエッチング法にて連続してエッチングを行う。さらに、図3の(d)のように、残ったフォトレジスト15を、そのままリフトオフ用のマスクとして用い、フィルタ膜16を、スパッタ法、または真空蒸着法にて成膜したのち、フォトレジスト15を剥離液などで剥離して、図3の(e)の開口制限素子101が作製される。
【0037】
ここで、位相調整膜12の膜厚dは、DVD用の光束Lに対して、図2の(b)に示す開口制限素子101の、中央領域Aを透過する光の光路長と、周辺領域Bを透過する光の光路長が等しくなるように決定される。すなわち、反射防止膜13、13’の合計の厚さd、フィルタ膜16の厚さd、および反射防止膜13、13’の平均屈折率n、フィルタ膜16の平均屈折率nとすると、(2)式から決められる。
【0038】
【数2】
Figure 0004385600
【0039】
ここで平均屈折率nは、前記(1)式の定義の通り、多層膜を構成する各層の屈折率と厚さの積の総和を、多層膜の厚さで除算したものを意味する。なお、nについても、同様である。
【0040】
実用上はこの位相調整膜の上層側または下層側、あるいは両側に反射防止層を形成する必要があるが、(1)、(2)式で得られた屈折率および膜厚を初期値として与え、これに適当な反射防止膜を加えて計算機で各膜厚の最適化を行えばよく、本質的な問題ではない。実際、通常は反射防止膜13、13’の合計膜厚は、位相調整膜12に比べるとはるかに薄い。
【0041】
なお、中央領域Aと周辺領域Bとで、必ずしも厚さを同じにする必要がない場合には、例えば、中央領域Aの位相調整膜と反射防止膜との合計厚さ(da+d)の方が、周辺領域Bの波長選択性の誘電体多層膜の膜厚dよりも小さい場合には、その厚さの差をdとすると、位相調整膜の厚さdは、
={(n−1)・d−(n−1)・d}/(n−1)から決められる。
両者の厚さの関係が反対の場合でも、同様の考えにより位相調整膜12の厚さdを求めることができる。
【0042】
本発明の開口制限素子101の製造方法によると、15層前後の誘電体多層膜と数層の誘電体膜の成膜工程が各1回、ドライエッチング工程が1回、リフトオフ工程が1回といった簡単な工程で、生産性が高くかつ歩留まりよく、開口制限素子を作製できる。
【0043】
【実施例】
「例1」
本例は、DVDおよびCDの情報の記録および再生を行う光ヘッド装置の例であり、図1を用いて説明する。光源として、DVD用の波長λ(655nm)の光束Lを出射する半導体レーザ1AとCD用の波長λ(780nm)の光束Lを出射する半導体レーザ1Bとの2種の光源を備えており、コリメートレンズ4と対物レンズ5との間に開口制限素子101を設置する。
【0044】
また、ビームスプリッタ2として、光束Lに対して、ハーフミラーとなり、光束Lに対して全透過するビームスプリッタを用いる。ビームスプリッタ3として、光束Lに対して全透過し、光束Lに対して、ハーフミラーとなるビームスプリッタを用いる。また、CD用ディスク7への情報記録時に半導体レーザ1Bへの戻り光を防ぎ、半導体レーザ1Bの発振を安定させるため位相板9である4分の1波長板を搭載する。
【0045】
図2に示す開口制限素子101の周辺領域Bに形成する波長選択性の誘電体多層膜(フィルタ膜)の構成を表1(a)に、また、中央領域Aに形成する反射防止膜13、13’を含めた位相調整膜12の構成を表2(a)に示す。この設計に基づいて、図3に示した製造方法にしたがって以下の製作手順で、開口制限素子101を作製する。
【0046】
【表1】
Figure 0004385600
【0047】
図3(a)に示すように、透明基板11の上面に反射防止膜14をスパッタによって成膜したのち、この透明基板11の下面に反射防止膜13、位相調整膜12、反射防止膜13’をこの順序でスパッタ法により成膜する。反射防止膜14は光束Lおよび光束Lに対し反射率が0.5%以下である。位相調整膜12は、SiO(n=1.461)とTiO(n=2.311)の混合酸化物(n=1.827、d=1.27μm)をコスパッタ法によって成膜する。ここで、SiOとTiOの放電パワー比を膜の混合比が55:45になるように調整して、位相調整膜の屈折率nが、表1(b)に示すように、フィルタ膜16の平均屈折率n=1.827と等しくする。
【0048】
【表2】
Figure 0004385600
【0049】
また、上下層の反射防止膜13、13’を形成することより、図4に示すように光束Lおよび光束Lを含む広い波長範囲にわたって、位相調整膜の反射率は1%以下となっている。特に、波長λ(655nm)の光束Lおよび波長λ2(780nm)の光束Lに対しては、反射率は0.5%以下である。反射防止膜13、13’、14はいずれも、SiOおよびTiOからなる多層膜を用いる。表2(b)に示すように、位相調整膜単体の屈折率は、フィルタ膜16の平均屈折率と等しいが、反射防止膜13、13’が加わったために、全体としては若干屈折率値がフィルタ膜16の値よりも小さくなっている。
【0050】
つぎに図3の(b)に示すように反射防止膜13’の上にフォトレジスト15を塗布し、フォトリソグラフィによりパターニングして、図3の(c)に示すように、ドライエッチング法にて位相調整膜12および反射防止膜13、13’を同一バッチで連続してエッチングする。さらに、図3の(d)に示すように、前記図3の(C)で残ったフォトレジスト15を、そのまま次のリフトオフ用のマスクとして用い、フィルタ膜16をスパッタリング法にて形成する。
【0051】
このフィルタ膜16は、SiO(L層)およびTiO(H層)を表1(a)の構成で13層を交互に積層して、全膜厚d=1.537μmとなるように形成する。この膜構成により図5に示すように、DVD用の波長λ(655nm)の光束Lに対して反射率は約0.1%であり、CD用の波長λ2(780nm)の光束Lに対して透過率は約1.5%である。
【0052】
続いて、フォトレジスト15を専用の剥離液で、その上のフィルタ膜とともに剥離(リフトオフ)して、図3の(e)に示す開口制限素子101を作製する。この結果、中央領域Aの厚さは1.501μm、周辺領域Bの厚さは、1.537μmであり、両者はほぼ等しい膜厚になり、両者の膜厚差は、約36nmである。この時のDVD用の波長λの光束Lに対して、中央領域Aの位相調整膜12を透過した光束と周辺領域Bのフィルタ膜16を透過した光束との位相差は、1°以下で、しかも波長が10nm程度ずれても位相差は5°程度のズレに収まっており、フィルタ膜の平均屈折率とほぼ等しい屈折率の位相調整膜を用いる有利さが示されている。
【0053】
「例2」
例1よりも最終の平坦性が良い素子形状、すなわち、中央領域Aと周辺領域Bとの幾何学的な膜厚差をなくするために、位相調整膜12の屈折率をフィルタ膜16の平均屈折率からわずかにシフトさせ、さらにその膜厚を変化させて厚さの最適化を試みた(図2参照)。すなわち、中央領域Aの位相調整膜12と反射防止膜13、13’との合計膜厚と周辺領域Bのフィルタ膜16の全膜厚との膜厚差が、ほぼ0nmとなり、しかも波長λの光束Lに対し2つの領域を透過した光束の位相差が0となるように、位相調整膜12のL、H材料の混合比をわずかに調整して、nを変化させる。設計結果を表3(a)、(b)に示す。
【0054】
【表3】
Figure 0004385600
【0055】
この位相調整膜12を持つ開口制限素子101の作製プロセスは、例1と同様で、コスパッタ法によるSiOとTiO混合膜作製時の両者の放電パワーを調整し混合酸化物膜の屈折率をn=1.802、膜厚を1.307μmとなるように成膜する。このとき、本開口制限素子の中央領域Aも周辺領域Bもともに全膜厚は1.537μmとなり、しかもDVD用の波長λの光束Lに対して、中央領域Aの位相調整膜12を透過した光束と周辺領域Bのフィルタ膜16を透過した光束との位相差は、ほぼ3°程度になる。
【0056】
このように、位相調整膜12におけるSiOとTiOの混合比を変えてその屈折率を調整することにより、位相差の波長依存が少なく、しかも素子表面上に段差のない平坦性の良い開口制限素子が実現できるので、例2では、引き続き高分子液晶の波長板薄膜を、通常の平坦なガラス基板に形成するのと同様の手順で作製し集積することができ、小型で信頼性の高いヘッド装置とできる。
【0057】
上記のように、15層程度の誘電体多層膜膜(フィルタ膜)および誘電体単層厚膜(位相調整膜)の成膜工程が各1つ、ドライエッチング工程が1つ、リフトオフ工程が1つという、リソグラフィの工程が1回で済む比較的単純で、しかも制御性の良い工程で開口制限素子101を作製できる。この開口制限素子を搭載した光ヘッド装置は、DVDおよびCDの厚さの異なる光ディスクに対し、1つの光学系で高い集光性能を実現でき、良好な記録および再生特性を示す。
【0058】
【発明の効果】
上記において説明したように本発明によると、開口制限素子の中央領域を通過する光束と周辺領域を通過する光束の間の位相差の波長依存性が非常に小さくて、収差の少ない集光特性を得ることができる。しかも、波長板など他の機能を有する光学素子を集積統合することが容易にでき、さらに製造工程が比較的容易で、各層の膜厚の制御精度が高いために品質性能のバラツキが少なくて、生産歩留まりのよい開口制限素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施態様の開口制限素子を搭載した光ヘッド装置の光学配置図。
【図2】本発明の第1実施態様の開口制限素子の構成を示す図で、(a)断面図、(b)平面図。
【図3】本発明の開口制限素子の製造プロセスを示す概念図。
【図4】本発明の位相調整膜(反射防止膜つき)の反射分光曲線。
【図5】本発明のフィルタ膜の透過と反射分光曲線。
【図6】位相調整膜がSiO膜からなる従来の開口制限素子の構成例を示す図。
(a)断面図、(b)平面図。
【図7】位相調整膜が誘電体多層膜からなる従来の開口制限素子の構成を示す断面図。
【符号の説明】
101、201、301:開口制限素子
1A、1B:半導体レーザ
2、3:ビームスプリッタ
4:コリメートレンズ
5:対物レンズ
6:DVD用ディスク
7:CD用ディスク
8、8A、8B:光検出器
9:位相板
11、17、21、31:透明基板
12、22、32:位相調整膜
13、13’、14:反射防止膜
15:フォトレジスト
16、26、36:誘電体多層膜(フィルタ膜)
A、C:中央領域
B、D:周辺領域

Claims (7)

  1. 光透過性基板上に、波長λの光束Lと、波長λ(λ≠λ)の光束Lのうち、波長λの光束Lのみを透過する波長選択性を有するフィルタ域と、両方の光束を透過する透明域とを形成した開口制限素子であって、
    前記フィルタ域は開口制限素子表面の周辺領域にあって、相対的に屈折率の低い誘電体膜と相対的に屈折率の高い誘電体膜とが交互に積層された波長選択性を有する誘電体多層膜から構成され、
    かつ前記透明域は開口制限素子表面の中央領域にあって、前記透明域には前記低屈折率誘電体および前記高屈折率誘電体の混合物からなるとともに前記誘電体多層膜の平均屈折率nに等しい屈折率nを有する単層の中間屈折率誘電体によって位相調整膜が形成されており、
    前記位相調整膜の屈折率と膜厚は、入射する光束Lに対して中央領域と周辺領域とでその透過光の位相差が生じないように調整されていることを特徴とする開口制限素子。
  2. 前記開口制限素子の少なくとも一方の面に反射防止膜が形成され、この反射防止膜を含めて、入射する光束Lに対して中央領域と周辺領域とで透過光の位相差が生じないように調整されている請求項1に記載の開口制限素子。
  3. 前記誘電体多層膜の全膜厚と、前記位相調整膜の膜厚とが、等しくなるように設計されて平坦化された請求項1または2に記載の開口制限素子。
  4. 前記位相調整膜の上層または下層、あるいはその両方に反射防止膜が形成され、
    前記誘電体多層膜の全膜厚と、前記位相調整膜と前記反射防止膜との合計膜厚とが、等しくなるように設計されて平坦化された請求項1または2に記載の開口制限素子。
  5. 光源と、前記光源から出射された光を光ディスクの表面に集光させる対物レンズと、前記光ディスクで反射された光を検出する光検出器と、を備える光ヘッド装置において、
    前記光源と前記対物レンズとの間の光路中に請求項1〜4いずれか1項に記載の開口制限素子が配置された光ヘッド装置。
  6. 光源と、前記光源から出射された光を光ディスクの表面に集光させる対物レンズと、前記光ディスクで反射された光を検出する光検出器と、を備える光ヘッド装置において、
    前記光源と前記対物レンズとの間の光路中に請求項3または請求項4に記載の開口制限素子が配置され、さらに、請求項3または請求項4に記載の開口制限素子の表面上に波長板が積層されている請求項5に記載の光ヘッド装置。
  7. 前記波長板が高分子液晶から構成される請求項6に記載の光ヘッド装置。
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