JP4385436B2 - 新規なアゾアミド化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種極性溶媒への溶解性に優れ、重合開始剤等として有用なアゾアミド化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高分子化合物は汎用ポリマーから機能性ポリマーへと進展し、諸機能の効果的な発現が期待されるブロックポリマーが注目されている。このような状況下で、官能基含有アゾ化合物を用いて重合したポリマーの末端官能基を利用して、異なる性質を持った複数のポリマー同士を縮合させてブロックポリマーを得る試みや、アゾ化合物と二官能性化合物を交互重縮合することにより得られる、複数のアゾ基を有する直線状の高分子アゾ化合物及び分解活性の異なる2種類以上のアゾ化合物を重縮合することにより得られる高分子アゾ化合物などを用いてブロックポリマーを製造するという試みが提案されている。そしてこの目的のために、反応性官能基を有した、例えば2、2'-アゾビス(2-シアノペンタノール)、2、2'-アゾビス(2-シアノペンタン酸)及び水酸基含有アゾ化合物(特開昭61-63643号公報)等種々のアゾ化合物が検討されているが、溶媒溶解性及び保存安定性が必ずしも充分でないことから、実際にはそれほどの効果を上げていないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、各種極性溶媒への溶解性に優れた、ポリマー末端に水酸基を効率よく導入できる新規なアゾ化合物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式[1]
【0005】
【化2】
【0006】
(式中、R1、R2は夫々独立して低級アルキル基又はシアノ基を表し、R3は低級アルキル基を表し、Xは低級アルキレン基を表す。)で示されるアゾアミド化合物、の発明である。
【0007】
また、本発明は、上記アゾアミド化合物から成る重合開始剤、の発明である。
更に、本発明は、上記アゾアミド化合物を重合開始剤として用いることを特徴とするα,β−エチレン性不飽和モノマーの重合方法、の発明である。
【0008】
一般式[1]に於いて、R1、R2及びR3で示される低級アルキル基としては、夫々独立して直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、例えば炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3、更に好ましくは炭素数1〜2のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0009】
Xで示される低級アルキレン基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、例えば炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基が挙げられ、具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチルプロピレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基等が挙げられる。
【0010】
本発明の一般式[1]で示される化合物の構造的特徴は、アミド結合の窒素原子に結合している炭素原子が2級炭素原子であるという点にある。
【0011】
上記一般式[1]で示される本発明のアゾアミド化合物の具体例としては、例えば、
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】
【化7】
【0017】
等が挙げられる。
【0018】
本発明の一般式[1]で示されるアゾアミド化合物は、例えば一般式[2]
【0019】
【化8】
【0020】
(式中、R4は低級アルキル基を表し、R1及びR2は前記と同じ。)で示されるアゾジカルボン酸ジエステル化合物と例えば一般式[3]
【0021】
【化9】
【0022】
(式中、R3及びXは前記と同じ。)で示されるアミノアルコール類とを、適当な溶媒中或いは無溶媒で、アルカリ性有機金属化合物の存在下で反応させることにより得られる。
【0023】
一般式[2]に於いて、R4で示される低級アルキル基としては、直鎖状でも 分枝状でもよく、例えば炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられ、具体的には例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピ ル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチ ル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基等 が挙げられる。
【0024】
上記一般式[2]で示されるアゾジカルボン酸ジエステル化合物の具体例としては、例えばジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジエチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジプロピル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジブチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジペンチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルブチレート)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-シアノプロピオネート)、ジエチル2,2'-アゾビス(2-シアノプロピオネート)、ジメチル2,2'-アゾビス(2,2-ジシアノアセテート)、ジ-t-ブチル2,2'-アゾビス(2-シクロブチルブチレート)、ジシクロペンチル 2,2'-アゾビス(2-t-ブチルバレレート)等が挙げられる。
【0025】
上記一般式[3]で示されるアミノアルコール類の具体例としては、例えば3-アミノ-4-メチルペンタノール、2-アミノプロパノール、2-アミノブタノール、3-アミノブタノール、2-アミノ-2-シクロブチルエタノール、3-(1-アミノ-3,3-ジメチルブチル)シクロブタン-1-オール等が挙げられる。
【0026】
本発明のアゾアミド化合物を製造する際に用いられるアルカリ性有機金属化合物としては、例えばナトリウムメトキシド,ナトリウムエトキシド,カリウムメトキシド,カリウムエトキシド,カリウムtert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類、例えばn-ブチルリチウム,tert-ブチルリチウム等の有機リチウム化合物類等が挙げられる。
【0027】
反応溶媒としては、例えばトルエン,キシレン,ベンゼン等の炭化水素類、例えばメタノール,エタノール,n-プロパノール,イソプロパノール,n-ブタノール,イソブタノール,tert-ブタノール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは夫々単独で用いても、二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明のアゾアミド化合物を製造する際に用いられるアミノアルコール類の使用量は、使用するアミノアルコール類の種類によって異なるが、アゾジカルボン酸ジエステル化合物に対して通常1.5〜10倍モル、好ましくは2〜5倍モルである。
【0029】
また、アルカリ性有機金属化合物の使用量は、アミノアルコール類の種類によって異なるが、アゾジカルボン酸ジエステル化合物に対して通常0.05〜3当量、好ましくは0.1〜0.5当量である。
【0030】
反応温度は、特に限定されないが、高すぎるとアゾ基が分解し、低すぎると反応速度が遅くなり製造に時間を要するため、通常0〜40℃である。
【0031】
また、反応時間はアゾジカルボン酸ジエステル化合物やアミノアルコール類の種類により異なるが、通常1〜24時間である。
【0032】
上記以外の反応の操作および後処理等は自体公知の類似反応のそれに準じて行えばよい。
【0033】
尚、本発明の一般式[1]で示されるアゾアミド化合物を製造する際に使用する上記一般式[2]で示されるアゾジカルボン酸ジエステル化合物及び上記一般式[3]で示されるアミノアルコール類は、市販品を用いても或いは常法により製造したものを用いてもよい。
【0034】
このようにして得られた本発明のアゾアミド化合物は、加熱又は光照射によって容易にアゾ基が分解し窒素ガスの発生と共にラジカル種を生じる。その際に、各種の重合性モノマーが存在すれば速やかに重合を起こす。
【0035】
本発明のアゾアミド化合物を重合開始剤として用いて、重合性モノマーを重合或いは共重合させるには、本発明のアゾアミド化合物と、重合性モノマーとを適当な溶媒中或いは無溶媒で、要すれば不活性ガス雰囲気下で常法に従い重合反応を行えばよい。
【0036】
上記重合性モノマーとしては、例えば下記一般式[4]
【0037】
【化10】
【0038】
(式中、R5は水素原子,低級アルキル基,カルボキシル基,カルボキシアルキ ル基,アルキルオキシカルボニル基,ヒドロキシアルキルオキシカルボニル基,シアノ基又はアルデヒド基を表し、R6は水素原子,低級アルキル基,カルボキシル基,アルキルオキシカルボニル基,ヒドロキシアルキルオキシカルボニル基,シアノ基又はハロゲン原子を表し、R7は水素原子,低級アルキル基,ハロアルキル基,ヒドロキシル基,置換基を有していても良いアリール基,脂肪族ヘテロ環基,芳香族ヘテロ環基,ハロゲン原子,アルキルオキシカルボニル基,ヒドロキシアルキルオキシカルボニル基,スルホン酸基,シアノ基,含シアノアルキル基,アシルオキシ基,カルボキシル基,カルボキシアルキル基,アルデヒド基,アミノ基,アミノアルキル基,カルバモイル基,N−アルキルカルバモイル基及びヒドロキシアルキル基を表す。また、R5とR6とで脂肪族環を形成していてもよい。)で示されるα,β−エチレン性不飽和モノマー等が挙げられる。
【0039】
一般式[4]に於いて、R5〜R7で示される低級アルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、例えば炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,n-ブチル基,イソブチル基,tert-ブチル基,sec-ブチル基,ペンチル基,イソペンチル基,tert-ペンチル基,1-メチルペンチル基,n-ヘキシル基,イソヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0040】
R5及びR7で示されるカルボキシアルキル基としては、例えば上記した如き低級アルキル基の水素原子がカルボキシル基に置換されたもの等が挙げられ、具体的には例えばカルボキシメチル基,カルボキシエチル基,カルボキシプロピル基,カルボキシブチル基,カルボキシペンチル基,カルボキシヘキシル基等が挙げられる。
【0041】
R5〜R7で示されるアルキルオキシカルボニル基としては、例えば炭素数2〜11のアルキルオキシカルボニル基が好ましく、具体的にはメトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基,プロポキシカルボニル基,ブトキシカルボニル基,ペンチルオキシカルボニル基,ヘキシルオシカルボニル基,ヘプチルオキシカルボニル基,2-エチルヘキシルオキシカルボニル基,オクチルオキシカルボニル基,ノニルオキシカルボニル基,デシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0042】
R5〜R7で示されるヒドロキシアルキルオキシカルボニル基としては、上記した如き炭素数2〜11のアルキルオキシカルボニル基の水素原子の一部がヒドロキシル基に置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばヒドロキシメチルオキシカルボニル基、ヒドロキシエチルオキシカルボニル基、ヒドロキシプロピルオキシカルボニル基、ヒドロキシブチルオキシカルボニル基、ヒドロキシペンチルオキシカルボニル基、ヒドロキシオクチルオキシカルボニル基、ヒドロキシノニルオキシカルボニル基、ヒドロキシデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0043】
R6及びR7で示されるハロゲン原子としては、フッ素,塩素,臭素,ヨウ素等が挙げられる。
【0044】
R7で示されるハロアルキル基としては、例えば上記低級アルキル基がハロゲ ン化(例えばフッ素化,塩素化,臭素化,ヨウ素化等。)された炭素数1〜6のハロアルキル基が挙げられ、具体的には、例えばクロロメチル基,ブロモメチル基,トリフルオロメチル基,2-クロロエチル基,3-クロロプロピル基,3-ブロモプロピル基,3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0045】
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、例えばフェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基等が挙げられ、また、該置換基としては、例えばアミノ基,ヒドロキシル基,低級アルコキシ基,カルボキシル基,スルホン酸基等が挙げられ、置換アリール基の具体例としては、例えばアミノフェニル基,トルイジノ基,ヒドロキシフェニル基,メトキシフェニル基,tert-ブトキシフェニル基,カルボキシフェニル基,スルホフェニル基等が挙げられる。
【0046】
脂肪族ヘテロ環基としては、例えば5員環又は6員環の脂肪族ヘテロ環基が好ましく、異性原子として1〜3個の例えば窒素原子,酸素原子,硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいるものが挙げられ、その具体例としては、例えばピロリジル基,ピロリジル-2-オン基,ピペリジル基,ピペリジノ基,ピペラジニル基,モルホリノ基等が挙げられる。
【0047】
芳香族ヘテロ環基としては、例えば5員環又は6員環の芳香族ヘテロ環基が好ましく、異性原子として1〜3個の例えば窒素原子,酸素原子,硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいるものが挙げられ、その具体例としては、例えばピリジル基,イミダゾリル基,チアゾリル基,フラニル基,ピラニル基等が挙げられる。
【0048】
含シアノアルキル基としては、例えば上記した如き低級アルキル基の水素原子がシアノ基に置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばシアノメチル基,2-シアノエチル基,2-シアノプロピル基,3-シアノプロピル基,2-シアノブチル基,4-シアノブチル基,5-シアノペンチル基,6-シアノヘキシル基等が挙げられる。
【0049】
アシルオキシ基としては、カルボン酸由来の例えば炭素数2〜20のアシルオキシ基が好ましく、具体的には例えばアセチルオキシ基,プロピオニルオキシ基,ブチリルオキシ基,ペンタノイルオキシ基,ヘキサノイルオキシ基,ヘプタノイルオキシ基,オクタノイルオキシ基,ノナノイルオキシ基,デカノイルオキシ基,ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0050】
アミノアルキル基としては、上記した如き低級アルキル基の水素原子がアミノ基に置換されたものが挙げられ、具体的にはアミノメチル基,アミノエチル基,アミノプロピル基,アミノブチル基,アミノペンチル基,アミノヘキシル基等が挙げられる。
【0051】
N-アルキルカルバモイル基としては、カルバモイル基の水素原子がアルキル基で置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばN-メチルカルバモイル基,N-エチルカルバモイル基,N-n-プロピルカルバモイル基,N-イソプロピルカルバモイル基,N-n-ブチルカルバモイル基,N-tert-ブチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0052】
ヒドロキシアルキル基としては、上記した如き低級アルキル基の水素原子がヒドロキシル基に置換されたものが挙げられ、具体的にはヒドロキシメチル基,ヒドロキシエチル基,ヒドロキシプロピル基,ヒドロキシブチル基,ヒドロキシペンチル基,ヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。
【0053】
また、R5とR6とで形成された脂肪族環としては、炭素数3〜10のアルキレン鎖で環を形成しているものが挙げられ、環は単環でも多環でもよい。これらの環の具体例としては、ノルボルネン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロオクテン環、シクロデセン環等が挙げられる。
【0054】
一般式[4]で示されるα,β−エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、エチレン,プロピレン,ブチレン,イソブチレン等の炭素数2〜20のエチレン性不飽和脂肪族炭化水素類、例えばスチレン,4-メチルスチレン,4-エチルスチレン,ジビニルベンゼン等の炭素数8〜20のエチレン性不飽和芳香族炭化水素類、例えばギ酸ビニル,酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,酢酸イソプロペニル等の炭素数3〜20のアルケニルエステル類、例えば塩化ビニル,塩化ビニリデン,フッ化ビニリデン等の炭素数2〜20の含ハロゲンエチレン性不飽和化合物類、例えばアクリル酸,メタクリル酸,イタコン酸,マレイン酸,フマル酸,クロトン酸,ビニル酢酸,アリル酢酸,ビニル安息香酸等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和カルボン酸類(これら酸類は、例えばナトリウム,カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩であってもよい。)、例えばメタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸プロピル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸2-エチルヘキシル,メタクリル酸ステアリル,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸2-エチルヘキシル,メタクリル酸ラウリル,アクリル酸ステアリル,イタコン酸メチル,イタコン酸エチル,マレイン酸メチル,マレイン酸エチル,フマル酸メチル,フマル酸エチル,クロトン酸メチル,クロトン酸エチル,3-ブテン酸メチル等の炭素数4〜20のエチレン性不飽和カルボン酸エステル類、例えばアクリロニトリル,メタクリロニトリル,シアン化アリル等の炭素数3〜20の含シアノエチレン性不飽和化合物類、例えばアクリルアミド,メタクリルアミド等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和アミド化合物類、例えばアクロレイン,クロトンアルデヒド等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和アルデヒド類、例えばビニルスルホン酸,4-ビニルベンゼンスルホン酸等の炭素数2〜20のエチレン性不飽和スルホン酸類(これら酸類は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等、塩の形になっているものでもよい。)、例えばビニルアミン,アリルアミン等の炭素数2〜20のエチレン性不飽和脂肪族アミン類、例えばビニルアニリン等の炭素数8〜20のエチレン性不飽和芳香族アミン類、例えばN-ビニルピロリドン,ビニルピペリジン等の炭素数5〜20のエチレン性不飽和脂肪族ヘテロ環状アミン類、例えばビニルピリジン,1-ビニルイミダゾール等の炭素数5〜20のエチレン性不飽和芳香族ヘテロ環状アミン類、例えばアリルアルコール,クロチルアルコール等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和アルコール類、例えば4-ビニルフェノール等の炭素数8〜20のエチレン性不飽和フェノール類等が挙げられる。
【0055】
重合反応時に使用する重合開始剤としては、本発明のアゾアミド化合物を夫々単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、本発明のアゾアミド化合物以外の重合開始剤1種以上と本発明のアゾアミド化合物1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
【0056】
本発明のアゾアミド化合物以外の重合開始剤としては、例えば2,2-アゾビスイソブチロニトリル,2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル),2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩,2,2'-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン)-2-イル〕プロパン,2,2'-アゾビスイソブチルアミド 2水和物,ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート),4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物類、例えば過酸化ベンゾイル,過酸化ジt-ブチル等の有機過酸化物類、例えばベンゾインエチルエーテル等の光重合開始剤類等が挙げられる。
【0057】
重合反応の方法としては、例えば溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられる。
【0058】
反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン,ジエチルエーテル,ジオキサン等のエーテル類、例えばクロロホルム,塩化メチレン,1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、例えばトルエン,ベンゼン,キシレン等の炭化水素類、例えばメタノール,エタノール,イソプロパノール等のアルコール類、例えばアセトン,2-ブタノン,イソブチルメチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。これらの溶媒は夫々単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。 乳化重合を行う場合には、通常この分野で使用される界面活性剤を用いてもよい。
【0059】
重合反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素ガス,アルゴンガス等が挙げられる。
【0060】
上記重合反応を行う際の本発明のアゾアミド化合物の使用量は、使用する重合性モノマーの種類によっても変動するが、本発明のアゾアミド化合物を単独で使用する場合には、重合性モノマーに対して通常0.01〜100重量%、好ましくは0.05〜50重量%である。尚、本発明のアゾアミド化合物とそれ以外の重合開始剤と を併用する場合には、併用する重合開始剤の種類と、使用する重合性モノマーの種類及び目的とするポリマーの意図する物性等を考慮してその割合を選択すればよい。
【0061】
重合性モノマーの重合反応時に於ける溶媒中の濃度は、重合性モノマーの種類によっても異なるが通常5〜100重量%(無溶媒)、好ましくは10〜60重量%で ある。
【0062】
重合温度は特に限定されないが、低すぎるとアゾ基の分解が少ないため重合の進行が遅くなり、高すぎるとアゾ基の分解が多くなりすぎ重合の制御が困難となり、通常20〜150℃、好ましくは50〜130℃である。
【0063】
重合反応時間としては、反応温度や反応させる重合性モノマー及び使用する本発明のアゾアミド化合物の種類、或いは濃度等の反応条件により異なるが、通常2〜24時間である。
【0064】
本発明のアゾアミド化合物は、分子の末端に水酸基を有し、且つアミド結合の窒素原子に結合している炭素原子が2級炭素原子であるため、水、メタノール等の極性の大きい溶媒に対する溶解性に優れているだけでなく、極性の比較的小さい有機溶媒に対しても溶解性を持つ。
【0065】
重合開始剤として従来使用されていた例えばその構造中のアミド結合の窒素原子に結合している炭素原子が1級炭素原子である2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、或いは該炭素原子が3級炭素原子である2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等の水酸基含有アゾアミド化合物に比べると本発明のアゾアミド化合物は多種の極性溶媒に対して溶解性が大きい。
【0066】
重合開始剤が溶媒溶解性に優れているということは、当該開始剤を用いて重合し得るモノマーの種類や溶媒の選択肢が広がる。また、反応液中に開始剤を高濃度に溶解することができるのでスケールメリットが大きいし、仕込み時には開始剤を溶液状態として投入できるというメリットもある。
【0067】
本発明のアゾアミド化合物は、溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合等様々な重合系に使用し得る重合開始剤であり、ラジカル重合可能な多種のエチレン性モノマーの重合に使用できる。また、重合系或いは重合によって得られたポリマー又はオリゴマー中に残存するモノマーの低減にも使用可能である。本発明の化合物を用いた重合によって得られるポリマー又はオリゴマーの用途としては塗料、インキ、トナーバインダー、繊維及びその改質剤、コーティング剤、凝集剤、化粧品、紙処理剤、粘着剤、接着剤等が挙げられる。
【0068】
また、本発明のアゾアミド化合物は、分子末端に水酸基を有しているので、該水酸基に反応するような官能基を持つ化合物と反応させることにより、更に種々のアゾアミド化合物を製造し得る。それらの例としては、分子内に多数のアゾ基を有する繰り返し単位から成るマクロアゾイニシエーター、本発明の化合物と酸クロライド等との反応で得られる、アクリル基、メタクリル基、アリル基等を有するアゾ化合物、本発明の化合物とγ-イソシアネートアルコキシシラン等との反応によって得られるアゾ化合物等が挙げられる。
【0069】
更に、本発明のアゾアミド化合物を用いることにより、該アゾアミド化合物由来の水酸基を、得られるポリマーの末端へ導入することができる。
【0070】
末端に水酸基を有するポリマーの用途としては、例えばポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂等の各種樹脂、塗料、接着剤、インキ、各種ブロックポリマーの原料等が挙げられる。
【0071】
また、該ポリマー末端の水酸基に公知の有機反応を利用して、シリル基、ビニル基、エポキシ基等の官能基を導入できる。末端に官能基を有する該ポリマーはマクロモノマー等の合成原料として有用である。その他、本発明のアゾアミド化合物の用途としては、光重合開始剤、各種有機反応に利用できるラジカル発生剤等が挙げられる。
【0072】
以下に実施例及び実験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0073】
【実施例】
実施例1. 2,2'-アゾビス[N-(ブタノール-2-イル)-2-メチルプロピオンアミド]の合成
ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)23.0g、(R)-(-)-2-アミノ-1-ブタノール 19.6g、メタノール 10mlに28%ナトリウムメトキシド溶液 4.25gを 加え室温で7時間反応させた。一夜静置後、反応液に水 100mlを加え塩化メチレン 100mlで抽出した。抽出液を洗浄、乾燥後、減圧濃縮し粗晶 25.8gを得た。粗晶をアセトン 65mlに溶解した後、n-ヘキサン 140mlを加えて結晶化させ、濾取、乾燥して2,2'-アゾビス[N-(ブタノール-2-イル)-2-メチルプロピオンアミド]
【0074】
【化11】
【0075】
の微黄白色粉末晶 18.7gを得た。
mp : 79.5℃(分解)。1HNMR δppm (CDCl3) : 0.94 (6H, t, -CH2CH 3 ), 1.39 (12H, s, -CH 3 ), 1.60 (4H, m, -CH 2 CH3), 3.61 (4H, m, -CH 2 OH), 3.91 (2H, br, -NHCH)
UV : λmax 375nm (E1%=0.985/MeOH)。 10時間半減期温度=84.7℃
【0076】
実施例2. 2,2'-アゾビス[N-(プロパノール-2-イル)-2-メチルプロピオンアミド]の合成
ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート) 23.0g、(±)-2-アミノ-1- プロパノール 16.5g、メタノール 10mlに28%ナトリウムメトキシド溶液 4.25g を加え室温で4時間反応させた。反応後、反応液を冷却し、水 20mlを注入した後、析出晶を濾取、洗浄、乾燥して2,2'-アゾビス[N-(プロパノール-2-イル)-2-メチルプロピオンアミド]
【0077】
【化12】
【0078】
の微黄白色粉末晶 24.2gを得た。
mp : 141℃(分解)。1HNMR δppm (CD3OD) : 1.28 (6H, dd, -CHCH 3 ), 1.47 (12H,s, -CH 3 ), 3.63 (4H, d, -CH 2 OH), 4.12 (2H, br, -NHCH)
UV : λmax 375nm (E1%=1.057/MeOH)。 10時間半減期温度=83.1℃
【0079】
実験例1.溶解性試験
実施例1で得られた2,2'-アゾビス[N-(ブタノール-2-イル)-2-メチルプロピオンアミド](以下、本発明の化合物1と略記する。)及び実施例2で得られた2,2'-アゾビス[N-(プロパノール-2-イル)-2-メチルプロピオンアミド](以下、本発明の化合物2と略記する。)について種々の極性溶媒に対する溶解性試験を行った。結果を表1に示す。
【0080】
実験例2〜4.溶解性試験
本発明の化合物1の代わりに2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]
【0081】
【化13】
【0082】
(以下、公知化合物1と略記する。)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}
【0083】
【化14】
【0084】
(以下、公知化合物2と略記する。)及び2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}
【0085】
【化15】
【0086】
(以下、公知化合物3と略記する。)を用いた以外は実験例1と同様にして溶解性試験を行った。結果を表1に併せて示す。
表1 溶解性試験
【0087】
【表1】
【0088】
表1の結果から、実施例で得られた本発明のアゾアミド化合物は、極性が比較的低い2−ブタノン等の溶媒にも溶解することが判る。また、本発明の化合物1及び2の各種極性溶媒に対する溶解性は公知化合物1、2及び3のそれと比べると明らかに大きいことが判る。
【0089】
即ち、アゾアミド化合物のアミド結合の窒素原子と結合する炭素原子が2級炭素原子である場合には、それが1級炭素原子又は3級炭素原子である場合と比べ各種溶媒に対する溶解性が明らかに大きいことが判る。
【0090】
実施例3.
アクリルアミド 20gを蒸留水 380gに溶解し、重合開始剤として実施例1で得られた本発明の化合物1 4.0×10-5 molを添加した。窒素雰囲気下、80℃に加熱撹拌して重合を行った。重合開始後、所定時間毎に反応液の一部をサンプリングし、メタノールから沈殿させて生成ポリマーを分離した。これを乾燥して時間毎の重合率を夫々測定した。結果を表2に示す。
表2 重合時間における重合率(%)
【0091】
【表2】
【0092】
比較例1〜3.
本発明の化合物1の代わりに公知化合物1、公知化合物2及び公知化合物3を使用した以外は実施例3と同様にして時間毎の重合率を夫々測定し、結果を表2に併せて示す。
【0093】
表2から本発明のアゾアミド化合物を重合開始剤として重合を行った場合の重合率は、公知の重合開始剤を用いた場合のそれと同様或いはそれ以上の値を示していることが判る。
【0094】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明は、各種極性溶媒への溶解性に優れた新規なアゾアミド化合物を提供するものであり、該アゾアミド化合物を重合開始剤として用いて得られるポリマーは、該アゾアミド化合物由来の水酸基をポリマー末端に有していることから、各種の機能をポリマーに付与することが可能である。
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