JP4385397B2 - 排水トラップ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺菌性金属によりメンテナンスフリーでぬめりを防止することが可能な排水トラップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常排水トラップは水が常時溜まっている封水部と、水が流れる時のみ水が接触する壁面により構成されている。最初に水が流れる時のみ水が接触する壁面の汚れについて説明する。従来、排水トラップ壁面は有機物を多く含むお湯が接触するため、細菌が繁殖しやすく、また、常に水と接触しているわけではなく、適度に乾燥するため、かびの繁殖も多く見られた。そのような細菌やかび等の微生物汚れはぬめりの原因となったり、見た目にも汚れているといった悪い印象を与える問題があった。さらに、キッチンの排水トラップにおいては、その部分に排水かごが設置されており、その排水かごも同様に細菌が繁殖しやすい問題があった。
水が溜まる封水部は下水道からのゴキブリや、ねずみの進入を防止するため、水が常に存在し、人や石鹸などの有機物が多く存在しており、さらに水温が40℃程度のお湯が定常的に流れてくるため、細菌が繁殖しやすい環境となっている。そのため、封水部は細菌に由来するぬめりや、悪臭が発生する問題が多く生じている。このように封水部、壁面ともに排水トラップは菌やかび由来の汚れが多いにもかかわらず、そこに手を入れて掃除をするには抵抗が強く、掃除頻度が少なくなり、さらにぬめりや臭いが多くなり、より掃除を行うことに抵抗を感じるようになるといった悪循環となりやすい。
従来、有機化合物の金属塩よりなる抗菌、防カビ剤を含有する繊維状物質を排水トラップの上部に設置し、水が通過するときに金属イオンが水中に溶け込み、その金属イオンの効果により排水トラップのぬめりを防止する方法がある(例えば特許文献1参照)。また、排水トラップ上部に薬剤を収納する収納部設置し、薬剤の殺菌効果によりぬめりを防止する方法がある(例えば特許文献2参照)。
また、電気分解によって銀イオンや次亜塩素酸イオンを発生させて殺菌作用を持たせることは知られているが、排水トラップにおいて電源を用いることは適当であるとは言い難い。電源を用いない方法として、銀電極と、銀よりイオン化傾向の小さい金属を組み合わせて自己電池を形成し、銀イオンを放出させ、抗菌効果を持たせる技術が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−45352号公報
【特許文献2】
特開2001−65021号公報
【特許文献3】
特開平10−263054号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の方法においては、金属塩を含有した繊維は金属イオンを初期に大量に溶出し、含有された銀イオンが無くなってしまうため、徐々に放出量が少なくなり、そのため、初期は確かにぬめり防止効果があるが、新しいものと交換せずに使用していると銀イオンが不足するため、ぬめり防止効果がなくなり、交換が必要となる問題があり、このことは利用者が手間となるだけでなく、ランニングコストが高くなる問題があった。これはどんなに金属塩含有率を上げても、初期の溶出量が増加するだけで問題を解決することはできなかった。また、浴室、キッチンとも排水トラップ上部は水が勢いよく流れ込んだり、キッチンにおいては利用者が触ったり、食器や食材が当たるため、強度が必要であるが、金属塩を含有させた繊維は非常に強度が弱く、耐久性に問題があった。また、特許文献2に記載の方法においては薬剤を使用するため、薬剤収納部自体を交換、あるいは薬剤を収納部に投入することが随時必要となり、利用者に負荷がかかると同時にランニングコストが高くつく問題があった。また、薬剤を使用しているため、子供などが誤って口に入れた時に危険であったり、環境負荷がかかる問題があった。また、排水トラップの材料自体に銀を配合することも可能であるが、例えば樹脂などに全体に銀を分散させると数%レベルで銀を配合しても、材料表面よりも中心部に銀が固まってしまう問題があり、実際に殺菌に関与できる銀が少なくなってしまう。そのため、ほとんど銀イオンの溶出は見られず、殺菌効果を示すことはできなかった。また、銀イオンの溶出を上げるために銀含有率を上げると黒ずみがでてくるため、含有率には限界がある。
【0005】
一方、特許文献3記載の、自己電池を形成して銀イオンを放出させる技術を排水トラップに応用するには単に有機金属塩含有繊維や薬剤と置き換えるだけでは殺菌効果を発揮させるのは困難である。例えば洗い場で水をたらいに溜めて少しずつ利用する場合は流量が少なく、浴槽に溜めた水を一気に排水する場合には流量が非常に多く、流速も早くなる。そのため、銀とその対極を共に排水トラップの上部に設けても、どの部分に水が流れるかは、その時々に応じて異なるため、銀とその対極が両方同時に水と接触し、電流が流れるようにするという状況には必ずしもなるとは限らず、安定して十分な殺菌性を得ることはできなかった。また、浴槽水排水時も洗い場利用時も流速が一定でないため、流速が早い時には、水と銀電極の接触時間が短く、銀イオンを十分溶出させる時間がなく、濃度を高めることができなかった。
【0006】
そこで本発明は水溜まり部を設けることで、銀とその対極が確実に同一系において水と接触することが可能となり、さらに銀イオン濃度を高めることができ、電源が要らずに自己電池を形成し、殺菌性の銀イオンを安定的に供給でき、メンテナンスフリーで排水トラップ全体の殺菌を可能とし、細菌やかびの繁殖を抑制することができる排水トラップを提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
上記課題を解決するためになされた本発明は、排水トラップであって、前記排水トラップの上部に水溜まり部を備え、前記水溜まり部は水出口を少なくとも1つ有し、前記水溜まり部は少なくとも表面の一部に銀電極を有し、前記銀電極は電気的に接合された対極を有し、前記対極は銀よりもイオン化傾向の小さい金属からなり、前記対極は、前記水溜まり部内に配置されたことを特徴とする。
【0008】
浴槽あるいは洗い場からの排水経路に銀電極を設けると水の流れは様々であるため、水の流れによっては、銀電極と対極が、水を通しての電子の授受が出来ず、自己電池を形成することができない。水溜まり部があることで、銀電極と対極が自己電池を構成することができる。確実に自己電池を構成できるよう、水出口は入口より小さくするなどして水がたまっている時間が長くなる構成が好ましい。
水溜まり部に溜まった水には徐々に銀イオンが溶出し、少しずつ排出され、排水トラップ壁面を流れ、封水部に達する。その際銀イオンの殺菌効果により、排水トラップの壁面のぬめりと封水部のぬめりを共に防止することができる。
この方式においては自己電池を利用しているため、電源が要らず、また、銀は微少濃度において殺菌効果が得られるため、水溜まり部に少量銀が配合されているだけで、薬剤のような取り替えや、メンテナンスが必要なくなる。なお、銀よりイオン化傾向の小さい金属の例としては、金や白金が挙げられる。また、水溜まり部は、なるべく上にあることが好ましいが、排水トラップの封水部の喫水面より上であればかまわない。
【0009】
また、本発明の一態様においては、水が貯留する封水部を有する排水トラップであって、前記排水トラップの上部に水溜まり部を設け、該水溜まり部は水出口を少なくとも1つ有し、前記水溜まり部は少なくとも表面の一部に銀電極を有し、前記銀電極は電気的に接合された対極を有し、前記対極は銀よりもイオン化傾向の小さい金属からなり、前記対極は、前記封水部内に配置されたことを特徴とする。
【0010】
水出口に汚れが詰まってしまっている時は水溜まり部に溜まった水に銀イオンを溶出させても、徐々に水溜まり部に溜まった水が排水されないため、排水トラップの殺菌効果がなく、無駄に銀イオンを溶出させてしまうことになる。そのため、封水部内に対極を設けることにより、水溜まり部の水が水出口から確実に排水されている時のみ、封水部内の水と、水溜まり部の水が同一系でつながるため、自己電池を形成することができ、無駄に銀イオンを溶出させることを防止することができる。
【0011】
また、本発明の一態様においては、水が貯留する封水部を有する排水トラップにおいて、該封水部は少なくとも表面の一部に銀電極を有し、前記銀電極は電気的に接合された対極を有し、さらに前記銀電極と対極は共に前記封水部内の水面より低い位置に設置され、前記対極は銀よりもイオン化傾向の小さい金属からなることを特徴とする。
【0012】
封水部全体あるいは一部を銀電極とすることで封水部近傍の銀イオン濃度が高くなり、より確実にトラップ壁面のぬめりを防止することができる。また、銀電極を洗浄することができ、銀電極が汚れて銀イオンの溶出が少なくなったりすることなく安定的に銀イオンを溶出させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様においては、前記銀電極と対極は前記水溜まり部の最も下部に配置されたことを特徴とする。
【0014】
本態様においては、水溜まりから、すべての水が排水される直前まで、自己電池を形成し、銀イオンを溶出させることができる。
【0015】
また、本発明の好ましい態様においては、前記水入口にフィルターを設けたことを特徴とする。
【0016】
キッチンにおいては食材、浴室においては髪の毛などの洗い汚れが、水溜まり部に入り、水溜まり部に汚れが溜まったり、水出口が詰まることを防止することができる。
【0017】
また、本発明の好ましい態様においては、前記水出口は排水トラップ壁面にそって設けられていることを特徴とする。
【0018】
浴室においては、ぬめりやかびが問題となるのは壁面のみであるため、壁面側に出口を設けることにより、壁面を通らずに銀イオンを含有する水を無駄に落下させることを防止し、壁面に確実に銀イオンを含有する水を流すことができる。
【0019】
また、本発明の好ましい態様においては、前記水出口が最も下部になるように傾斜を成していることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、水溜まり部に溜まった、銀イオンを含有する水を確実に排水することで、銀イオン水をすべて有効利用することができる。
【0021】
また、本発明の好ましい態様においては、前記銀電極は、前記水溜り部を構成する部材に膜状にコーティングされていることを特徴とする。
また、本発明の好ましい態様においては、前記銀電極は、前記封水部を構成する部材に膜状にコーティングされていることを特徴とする。
【0022】
銀電極を例えば樹脂やゴム等にコーティングすることで、少ない銀量で銀同士が互いに電気的に接合されたまま水溜まり部全体に行き渡らせることができるため、銀イオンを含有する水を排水トラップ壁面全体に流すことができる。
【0023】
また、本発明の好ましい態様においては、前記対極は、前記銀電極に膜状にコーティングされていることを特徴とする。
【0024】
対極に白金あるいは金などを使用すると、高コストとなる問題がある。そこで銀電極に蒸着させることにより、薄い膜状に付着し、白金や金などの異なる金属の使用量を極少量にすることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1において、1は浴槽、2は水栓、3は洗い場、4は排水トラップである。図2は図1の断面図であり、5は排水トラップ蓋、6は水が常に溜まっている封水部、7は排水ホースである。図3は排水トラップ4の拡大断面図であり、8は水溜まり部、9は排水トラップ壁面、14は対極である。通常浴槽1の溜め水や、洗い場3で体や髪を洗う時に流れる水は排水トラップ4を通り、戸外へ排水される。また、排水トラップは、通常下水からのゴキブリや、ねずみの進入や、悪臭を防止するため、水が常に溜まるようにトラップ構造となっている。封水部6には常に水が溜まるような構成となっているため、下水道からのゴキブリや、ねずみの進入や、悪臭は、封水部の溜まり水により防止することができる。しかし、封水部の水が常に溜まっている部分は有機物が豊富に存在している、水が常に存在している、お湯が頻繁に流れてくる、という細菌が繁殖しやすい環境となっている。そのため、封水部では菌由来のぬめりが生じやすいという問題がある。また、排水トラップの壁面9も同様に細菌が繁殖しやすく、さらに適度に乾燥されることもあるため、水中では繁殖しにくいかびの繁殖も促進され、細菌、かびともに問題となってくる。
【0026】
本発明の第一の実施形態について添付図面を用いて詳細に説明する。図3において排水トラップ上部に水溜まり部8を設け、洗い場2あるいは浴槽1からの水溜まり部8を通り、大部分の水はオーバーフローすることで、封水部6に直接流れ込み排水されるが、排水終了時には一部の水は水溜まり部8に溜まる構成となっている。図示されていないが、水溜まり部8は銀電極を有している。水溜まり部全体が銀でできていても良いし、水溜まり部の一部が銀でできていて他は樹脂やゴムなどの別の材質で構成することも可能である。また、使用銀量を少なくするために、樹脂やゴムなど別の素材に銀が全体あるいは一部にコーティングされていたり、樹脂やゴム全体の表面に銀を網目状に配されていることがさらに好ましい。さらに銀電極には対極14が設けられている。この対極は銀と比較してイオン化傾向が低く、溶出しにくい金属である必要がある。具体的には白金あるいは金が挙げられる。銀電極は対極14と電気的に接合されている。電気的に接合されているとは電子の移動が起こるような接合ということで、銀電極と対極が直接接合されている、あるいは導電性の電線などによって接合されていることを指す。また、導電性の電線などによって接合する場合には、電線の溶出により銀イオンの溶出が阻害されることがないように、電線などを樹脂等でコーティングするのが望ましい。
このようにすることで、銀電極と対極の間で自己電池が形成され、電流が流れ、水溜まり部に溜まった水中に銀イオンが溶出する。対極は電子の移動を起こさせることが重要であるため、少量で十分である。板状でも良いし、さらに少量にし、コストを削減するためには銀にコーティングされているのが望ましい。またコーティングする時は、銀電極全体にコーティングすると銀イオンの溶出が制限されてしまうため、銀電極の一部にコーティングするのが望ましい。
【0027】
次に水溜まり部8の構成と水出口13の構成の実施形態について添付図面を用いて詳細に説明する。図4は水溜まり部8を上から見た図である。水溜まり部8は下部にあるいは側部の下側に水出口13を有しており、水出口13は排水される水が制限されるように、水入口の総面積を水出口の総面積より大きくなるように構成されている。望ましくは穴径を数mm程度と小さくする。このように構成することで、早い流速で流れ込んでくる水を水溜まり部に一旦ため、水溜まり部に溜まった水が時間をかけて、例えば1滴ずつ滴下するようにできる。この滴下する時の流量は穴径によって制御することが可能であり、穴径を小さくすればするほど排出量は小さくなる。同量、同表面積の銀を使用すれば流量を小さくすればする程、水溜まり部に溶出する銀濃度を高めることが可能となる。
通常浴槽や洗い場から流れ込んでくる水は流速が大きく、排水トラップ入口に前述したような構成の銀電極を設けるだけでは銀電極と対極が自己電池を必ずしも形成しないことや、水と銀電極の接触時間が短く、十分な濃度の銀イオンが溶出されない課題があるが、上記のように水溜まり部を設けることで、銀と対極が自己電池を形成するように共に水と接触し、銀イオンを水溜まり部に溜まった水に十分な量溶出させることが可能となる。銀が溶出した溜り水は前述したように徐々に水出口から排水され、排水トラップ壁面9を伝って落ち、壁面を確実に殺菌、殺かびし、さらに封水部に流れ落ちた後は、封水部6の壁面に銀イオンが吸着し、封水部6の壁面も殺菌することができる。
【0028】
前記溜り水の排水時間の一例を説明する。はじめに水溜まり部に200ccの水を溜めることが可能であり、5秒間に1滴ずつ滴下されると仮定する。水1滴は約0.1ccであり、水出口を水溜まり部全体に仮に10ヶ所配置すると、10秒間に約1ccづつ滴下されることとなる。すべての水を排水するのに1000秒つまり約16分要することになる。水の銀濃度は銀の量や、表面積の大きさ等により制御することができるが、通常の浴槽あるいは洗い場からの流速のままであると殺菌効果を出すためには膨大な量の銀が必要となり、排水トラップという狭い空間においてはほとんど実現不可能である。本発明においては前述した通り非常に流速を遅くすることが可能となるため少量の銀において、殺菌効果のある濃度まで上げることができる。また、水溜まり部8においては水がほとんど攪拌されないため、銀近傍において銀イオン濃度が高くなっている。そのため、水出口13付近に銀電極を設置することが最も望ましく、銀電極近傍に生成した高濃度の銀イオン水が水入口側の低濃度の水と混ざることなく排水され、少量の銀で排水トラップ壁面と封水部を効率的に殺菌することが可能となり、ぬめりやかびの発生を防止することができる。
【0029】
水出口13の望ましい設置位置について説明する。排水トラップの壁面に確実に銀イオンを含有した水が流れるように、水出口13は壁面に沿って設けられるのが望ましい。壁面に沿って設けられる、とは水出口から排水された銀イオン水が壁面をつたって落ちる構成となっていることである。本発明においては、壁面と封水部をともに殺菌することが目的であるが、高い濃度の銀イオン水が壁面を通らずに滴下されると、封水部は殺菌することができるが、壁面が効率的に殺菌されない可能性がある。そのため、壁面に沿って水出口を設けることで、封水部、壁面とも効率的に殺菌することが可能となる。
また、銀電極と対極14をともに、水溜まり部8、特にその底部に設ける形態も好ましい。例えば水の使用量が少ない時など水溜まり部8にいっぱいに水が溜まらない可能性があり、そういった場合でも確実に銀電極と対極が自己電池を形成することができ、水溜まり部8に溜まった水に銀イオンを溶出させることができる。
【0030】
以上のように、排水トラップ上部には自己電池による銀電極を有する水溜まり部を設けることと、封水部の部材自体に銀電極を有することで、排水トラップの水が常に溜まっている部分である封水部と、水が通り抜けるだけで、水接触と乾燥を繰り返すような排水トラップ壁面共に汚れを防止可能となる。
【0031】
また、封水部6の部材に銀電極を設けることにより、最もぬめりの発生の多い封水部6の殺菌を確実に行うことができる。このとき対極も封水部に設ける必要がある。前述したような構成の銀電極をぬめりやすい封水部6自体の表面あるいは封水部6全体に設けると、封水部6には常に水が溜まっている状態であるため、常に銀イオンが溶出している。また、ぬめりが問題となる部分自体が銀電極となっているため封水部6の壁面近傍は特に銀濃度が高い状態となる。排水トラップトラップ水に汚れが多く含有している場合などは有機物と銀が反応しやすいためこのように封水部自体に銀電極を有することで、ぬめり防止に特に有効に働く。また、溶出した銀イオンは排水トラップの水自体の殺菌や脱臭にも効果を発揮し、水から発生する悪臭を防止することも可能である。また、銀は溶出後、水の殺菌や脱臭だけでなく、壁面に付着してぬめりを防止する効果があるため、封水部の部材すべてを銀電極にする必要はなく、一部を銀電極とすることで封水部の水浸漬部全てのぬめりを防止することができる。ただし、前述したように銀電極の近傍においては銀濃度が高くなっているため、排水トラップのトラップ全面に銀電極が配されているのが望ましい。また、全面に銀電極が配され、かつ使用銀量を少なくするために、銀を膜状にコーティングしたり、網目状に配することが好ましい。
【0032】
次に本発明の第二の実施形態を添付図面を用いて詳細に説明する。図5において、水溜まり部8に銀電極が設けられており、対極14は封水部6内に設けられている。銀電極と対極14は電気的に接合されている。封水部6内は常に水が溜まっているため、対極14は常に水と接触している。また、浴槽水や洗い場での使用水が流れ込んでくると、水溜まり部8に水が溜まる。ここまでは前述した実施形態と同様である。ここで、本実施の形態においては、水溜まり部8に銀電極が設けられ、対極が封水部に溜まった水の中に設けられているため、壁面に水が流れていない状態では、銀と対極はともに水と接しているが、水が分離しており、この状態では、自己電池を形成しない。その後、水溜まり部8に溜まった水が、水出口から徐々に排水されると、排水が壁面9をつたって流れ、封水部に溜まった水中に達するため、水が流れている状態では、壁面を流れる水によって、銀と対極それぞれが接触している水が分離しておらず、自己電池を形成する。このような構成にすることで、水出口が詰まった時などには銀イオンを溶出しないようになり、無駄に銀イオンを溶出させることを防止することができる。
【0033】
次に本発明の第三の実施形態を添付図面を用いて詳細に説明する。図6において100はキッチンの排水トラップ、101は水溜まり部、102は排水かご、103は生ごみ、104は封水部である。図では対極105は封水部内に設けられているが、水溜まり部に設けてもよい。
図7はキッチンの排水トラップを上部から見た図であり、107は水出口である。水溜まり部の構成は前述した浴室の排水トラップと同様の構成となっている。図6で示した通りキッチンの排水トラップは生ゴミが溜まる排水かご102を設置しているため、排水かご102の壁面部分もぬめりが発生しやすい問題がある。そこで水出口107を排水トラップ壁面にそって設置するとともに、排水かご壁面にそって設けるのが望ましい。その結果、排水トラップの壁面と排水かごの壁面の両方に銀イオンを含有する水が徐々に流れ落ち殺菌することが可能となる。
【0034】
次に本発明の第四の実施形態について添付図面を用いて説明する。図8において110は水溜まり部、111は水出口である。本実施の形態においては水出口111が水溜まり部の最も下部となるように傾斜が設けられており、水溜まり部に溜まった水を確実にすべて排出するような構成となっている。図のように、水溜まり部に向かって波状に傾斜を成していても良いが、壁面に沿って水出口111が設けられている場合は壁面側が下部になるように傾斜を成していても良い。
【0035】
次に本発明の第五の実施形態について添付図面を用いて説明する。図9において120は水溜まり部、121は水入口に設けられたフィルターである。通常水溜まり部には浴室であれば排水中に含まれた髪が入ったり、キッチンにおいては生ごみなどの大きい汚れが入り込んだりする可能性がある。髪などが入り込むと汚れている印象を与え、利用者が不快感を持つことや、大きな生ごみが入り込むと水溜まり部に有機物が溶出し、せっかく溶出した銀イオンが有機物と反応してしまうことがある。このため、フィルター121を水入口上部に設けることで、大きい汚れが入り込むことを防止することができる。フィルター121の目は細かくすることが望ましいが、あまり細かくすると水が入り込みにくくなり、水が溜まらなくなることがあるため、水出口の穴径よりは目の径を大きくすることが望ましい。しかし、水出口の穴径と同レベルの径としても、フィルター121の目の数を十分多くすることで、大きな汚れの進入を防止し、さらに水溜まり部に水を溜めることが可能となる。
【0036】
次に本発明の第六の実施形態について添付図面を用いて説明する。図10において14は銀電極洗浄手段を兼ねた対極であり、対極14と接する部分に銀電極が形成されている。本実施の形態においては、対極が通常の水の排水によって、銀電極と接触と非接触を繰り返すような構成となっている。対極と銀電極は電線で繋がれている。電線は排水が流れ込んでくると流動し、それに伴い対極14がゆれ、銀電極に接触と非接触を繰り返すように構成されている。この結果、対極が当たることで、銀電極に付着した汚れを効率的に落すことができ、銀イオンの溶出レベルが落ちることを防止することが可能となる。
【0037】
次に本発明の第七の実施形態について添付図面を用いて説明する。図11において130は銀電極を洗浄するための回転翼である。図示されていないが、封水部内に銀電極が設けられている。回転翼130は、水流により回転し、封水部中の銀電極と水平方向で重なっているため、回転による通常の水の排水による水流とは異なる水流が銀電極近傍にでき、銀電極に付着した汚れを流すことが可能となる。また、銀の溶出速度は攪拌することにより格段に大きくなるため、排水終了後においても回転翼が多少回転することによって、封水部6内を攪拌することができ、銀イオンの溶出にも大きな効果を示すことが可能となる。この結果、銀電極の汚れを落す効果と、攪拌の効果の2つの効果で銀イオンによる殺菌効果をより高めることができる。
【0038】
次に本発明の第八の実施形態について添付図面を用いて説明する。図12において140は銀電極を洗浄するためのノズルである。図示されていないが、封水部内に銀電極が設けられている。浴室から排水された水は排水ホース7を通り、封水部6に流れ込むが、排水ホース7の先端には銀電極を洗浄するためのノズルがついており、ノズルは銀電極に向かって水が噴き出す構成となっている。水がノズルから噴き出すと銀電極近傍に水流ができ、銀電極に付着した汚れを洗い流すことができ、銀イオンの溶出を安定的に維持することが可能である。
【0039】
次に本発明の第九の実施形態について添付図面を用いて説明する。図13において150は銀電極を洗浄するためのエジェクタである。図示されていないが、封水部内に銀電極が設けられている。エジェクタの構成は、排水ホースの一部に急激に流路が狭くなる部分を設け、その直後に再び、流路を広げ空気投入口151を設けると、流路が急激に狭くなることにより負圧部分が生じ、圧力差により自然に空気が液中に入り込む構成となっている。空気が巻き込まれることにより排水は気泡混入水となって排水ホース7から封水部6に吹き込まれる。気泡水は同水量での水圧が高く、また気泡がはじける時に超音波が発生するため、銀電極を効果的に洗浄することができる。
【発明の効果】
本発明により、電源を用いず、取り替え不要で安定的に銀イオンを溶出し、ぬめりを防止することができる排水トラップの提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 浴室の平面図
【図2】 浴室の断面図
【図3】 第一の実施形態の断面図
【図4】 浴室排水トラップの平面図
【図5】 第二の実施形態の断面図
【図6】 第三の実施形態の断面図
【図7】 第三の実施形態の平面図
【図8】 第四の実施形態を示す図
【図9】 第五の実施形態の平面図
【図10】 第六の実施形態の断面図
【図11】 第七の実施形態の断面図
【図12】 第八の実施形態の断面図
【図13】 第九の実施形態の断面図
【符号の説明】
1…浴槽、2…水栓、3…洗い場、4…排水トラップ、5…排水トラップ蓋、6…封水部、7…排水ホース、8…水溜まり部、9…壁面、10…水入口、13…水出口、14…対極、100…キッチン排水トラップ、101…水溜まり部、102…排水かご、103…生ごみ、104…封水部、105…対極、107…水出口、110…水溜まり部、111…水出口、120…水溜まり部、121…フィルター、130…回転翼、140…ノズル、150…エジェクター、151…空気混入口

Claims (11)

  1. 排水トラップであって、前記排水トラップの上部に水溜まり部を備え、前記水溜まり部は水出口を少なくとも1つ有し、前記水溜まり部は少なくとも表面の一部に銀電極を有し、前記銀電極は電気的に接合された対極を有し、前記対極は銀よりもイオン化傾向の小さい金属からなり、前記対極は、前記水溜まり部内に配置されたことを特徴とする排水トラップ。
  2. 水が貯留する封水部を有する排水トラップであって、前記排水トラップの上部に水溜まり部を設け、該水溜まり部は水出口を少なくとも1つ有し、前記水溜まり部は少なくとも表面の一部に銀電極を有し、前記銀電極は電気的に接合された対極を有し、前記対極は銀よりもイオン化傾向の小さい金属からなり、前記対極は、前記封水部内に配置されたことを特徴とする排水トラップ。
  3. 水が貯留する封水部を有する排水トラップにおいて、該封水部は少なくとも表面の一部に銀電極を有し、前記銀電極は電気的に接合された対極を有し、さらに前記銀電極と対極は共に前記封水部内の水面より低い位置に設置され、前記対極は銀よりもイオン化傾向の小さい金属からなることを特徴とする排水トラップ。
  4. 前記銀電極を洗浄する手段を備えたことを特徴とする、請求項3に記載の排水トラップ。
  5. 前記銀電極と対極は前記水溜まり部の最も下部に配置されたことを特徴とする請求項1記載の排水トラップ。
  6. 前記水入口にフィルターを設けたことを特徴とする請求項1あるいは2何れか一項記載の排水トラップ。
  7. 前記水出口は排水トラップ壁面に沿って設けられていることを特徴とする請求項1あるいは2何れか一項記載の排水トラップ。
  8. 前記水溜まり部は前記水出口が最も下部になるように傾斜を成していることを特徴とする請求項1あるいは2何れか一項記載の排水トラップ。
  9. 前記銀電極は、前記水溜り部を構成する部材の表面に膜状にコーティングされていることを特徴とする請求項1あるいは2何れか一項記載の排水トラップ。
  10. 前記銀電極は、前記封水部を構成する部材の表面に膜状にコーティングされていることを特徴とする請求項3記載の排水トラップ。
  11. 前記対極は、前記銀電極に膜状にコーティングされていることを特徴とする請求項1又は3何れか一項記載の排水トラップ。
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