JP4384978B2 - 後部湾曲を有する僧帽弁の環状形成リング - Google Patents

Description

本発明は、一般に医療用デバイスに関し、詳しくは、環状成形リング、および患者の心臓の僧帽弁環を外科的に再構成するための関連した治療に関する。より詳しくは、本発明は、前部局面の下で低下した後部局面を有する機能的な僧帽弁逆流によって遭遇した病理学の異常な環に適合する、僧帽弁修復デバイスおよび対応する技術に関する。

ヒト心臓の解剖において、左心房は、肺静脈を通して肺から酸素を含んだ血液を受け入れる。僧帽弁は、左心房を左心室から切り離す。心拡張期の間、収縮が心房を通して洞房結節発展によって起こるので、酸素に富んだ血液は僧帽弁を通過して左心室に流れる。この局面において、上行大動脈に通じる大動脈弁は閉じ、それによって左心室が血液で満ちる。類似した静脈血の流れが、肺動脈弁を右心房から右心室まで生じる。一旦心室が満たされると、それらは心収縮期の間収縮して、心臓から血液を追い出す。心収縮期の間、僧帽弁は閉じ、そして大動脈弁は開く。このようにして、血液が左心房に逆流して血液を大動脈に、そして、そこから体の全体に送られることを防ぐ。心収縮期の間、左心室と関連した圧力は高いので、血液がシステムを通って逆流することを防ぐための僧帽弁の適切な機能は、極めて重要である。

左心室ＬＶおよび僧帽弁ＭＶのさまざまな解剖学的構成要素が、前後平面に沿った垂直断面に示すように、図Ｉにおいて表される。僧帽弁の環ＭＡは、左心房ＬＡおよび左心室ＬＶ間のオリフィスを囲む繊維状リングを備えている。平均的な人の僧帽弁環の断面積は、５〜１１ｃｍ^２である。僧帽弁環ＭＡの前部局面は、「心臓の骨格」の一部を形成し、左および右の繊維状の三角、ＬＴおよびＲＴを含む。図３は、手術の間に露出された、左心房から僧帽弁を示す。僧帽弁は、前小葉ＡＬと協同する後小葉ＰＬを有する二先弁である。左の三角ＬＴおよび右の三角ＲＴは、前小葉ＡＬおよび後小葉ＰＬの接合位置で示される。これらの接合位置は、また、小葉間の横連合として公知である。僧帽弁環ＭＡの後部局面は、前部局面とは対照的に、主に心臓の外壁の筋肉組織からなっている。

再び図１を参照して、一対の小突起状筋Ｐ１およびＰ２は、左心室ＬＶの内部壁の底部に付着している。腱索ＣＴは、小突起状筋Ｐ１およびＰ２、および前小葉および後部小葉ＡＬおよびＰＬの自由端の間を伸びて連結する。腱索は、外観上はひも様であり、時々「心臓ストリング」と呼ばれている。図示されないが、腱索ＣＴは、各々の小突起状筋Ｐ１およびＰ２と、両方の小葉の間を伸びる。小突起状筋Ｐ１およびＰ２の収縮は、腱索ＣＴを引く。そして、それは次々に小葉を開くように引き、そして筋肉が弛緩したときに、腱索がゆるくなり小葉が一緒に又は「接合」するようになる。図１に示されるように、左心室ＬＶの方へ相互に曲がった小葉の自由縁部を有し、通常機能している心臓における実質的な表面領域に沿って、小葉は接合する。

図１に示すように、そして、説明の目的のために、普通に健康な心臓の僧帽弁の環ＭＡは、一般に、僧帽弁ＭＶを介した平均的血流方向２２に対して垂直に規定される基準平面２０にある。典型的な僧帽弁の環ＭＡは三次元でもよいが、基準平面２０は、環の後部および前部で後部側の相対的位置を代表する。

多くの先進諸国において、うっ血性心不全は入院および死の主要な原因であり、そして、その発生率は増加している。僧帽弁における知覚低下により、血液が後方へ左心房（第２の僧帽弁逆流として公知）に流れ込むときには、左心室は体の全体にわたって血液を循環させるよう、かなり激しく送らなければならず、それは次第にうっ血性心不全を促進する。心臓移植は、選択された高度のうっ血性心不全および末期心疾患患者の標準の治療と考えられる。しかし、少数の移植用提供心臓だけは利用でき、そして、より弱い患者にはかなり手術の危険がある。したがって、代替の医療戦略および外科的戦略が、そのような状況を治療するために進歩している。

僧帽弁逆流の１つの典型的な原因は、環のより可撓性な後部局面に沿った僧帽弁の環ＭＡの奇形である。図２に示すように、一部の患者は、左心室ＬＶの拡大によって生じる環の後部局面の低下ｈを経験する。左心室ＬＶの拡大は、イオパチック（ｉｏｐａｔｈｉｃ）な拡張型心筋症または虚血性の心筋症患者の僧帽弁逆流に伴う症状、および他の病因（例えば、粘液マットの多い疾患、心内膜炎、先天性欠損またはリウマチ性弁膜疾患）からの長期の弁口逆流患者の症状である。上記から見られるように、図３はこの後部局面低下から後部および前部小葉ＡＬおよびＰＬ間の接合の二次の損失を例示する。

図２に示すように、左心室ＬＶの拡大は、一般に小突起状筋Ｐ１およびＰ２、および僧帽弁の環ＭＡの間の距離を増やす。これは、次々に腱索ＣＴの緊張を増やす。索で増加した緊張と結合する距離ｈだけ基準平面２０の下の環の後部局面の垂下または低下は、心収縮期の間一緒にくるために小葉の能力を減らす。

さまざまな介入が、逆流性のオリフィス面積のサイズを変えるために用いられてきた。
環状形成リングは、長年にわたって、弁の機能を減少する僧帽弁逆流および他の状況を修正するために、さまざまな形状および構成において開発されてきた。例えば、カルペンティエル（Ｃａｒｐｅｎｔｉｅｒ）らは、米国特許第４，０５５，８６１号において、その一つは閉じ（またはＤ形の）、他のものは開いている（またはＣ形の）心臓弁のための二つ半剛性支持体を開示する。閉構成において、リングは、通常、前後部平面について対称で、凸面後側部およびほぼ真っ直ぐな前側部を有する。米国特許第５，１０４，４０７号、５，２０１，８８０および５，６０７，４７１は、全て、それらの前側部にわずかに上方へ曲げられた閉環状形成リングを開示する。僧帽弁の環ＭＡの前部局面が繊維状で、従って、比較的柔軟性がない（少なくとも後部局面と比較して）ので、各々のリングの前側部の上方へのカーブはより密接にそのリングを僧帽弁の環の解剖学的輪郭に従わせ、そして、そのことが環の過度の変形を減らしている。

一般に、従来の環状形成リングは、僧帽弁の環ＭＡの原物の構成を復元することを目的とするか、換言すれば、図１に示すように、基準平面２０へできるだけ近くに環を持ってくる。図２に示すように、状態を修正するとき、リングが上方へ環を「引く」ので、高いストレスが、環状形成リングを環の後部局面に接続している縫合においてつくられる。縫合が組織を刺し通すので、ストレスはしばしばこの場所で、環からリングの裂開または分離を引き起こす。

大動脈の環の修正が、従って、僧帽弁の環を有する非常に異なるリングを必要とする点に、ここで注意されなければならない。例えば、米国特許第５．２５８，０２１および６，２３１，６０２は、３つの尖端大動脈の環の上下する形状に続く、洞様毛細血管（ｓｉｎｕｓｏｉｄａｌ）の又はいわゆる「波形模様に切られた」環状形成リングを開示する。そのようなリングは、僧帽弁欠乏を修復することに適していない。

うっ血性心不全および僧帽弁逆流の処置の良好な結果が、上記の方法および装置の予備使用において得られた一方、これらの結果が大幅に改善され得ると思われる。具体的には、従来のリングの移植を伴うストレスを減らすことができる僧帽弁の環状形成リングを製造することは望ましい。

（発明の要旨）
本発明は、その後部局面が異常に下方へ垂下するように、病的状態がある僧帽弁環の移植のために環状形成リングを提供する。環状形成リングは、前部セクションおよび後部セクションを有する丸いリング体を含む。リング体は、上方への方向および下方への方向（僧帽弁環を通した血流の方向に対応する下方への方向）を規定する中心流れ軸について配向される。リング体の後部セクションは、中心流れ軸と直交する平面から下方へ曲がる。

リング体は、それの一端から最下位点まで約２〜１５ｍｍの間で下方へ曲がることができ、望ましくは、その一端から最下位点まで約４〜８ｍｍの間で下方へ曲がることができる。リング体の湾曲は、後部セクションに集中でき、またはしなくてもよい。好ましくは、リング体の湾曲が手動で再形成できるように、リング体は展性の材料でできている。望ましく、リング体は、各鼓動サイクルの全体にわたって心臓の筋肉によって与えられるストレスに対抗して、その後部湾曲を保持する半硬質材料で形成されている。リング体は後部セクションにおいて以外は実質的に平坦であってもよく、又は、リング体の前部セクションはその一端から最下位点まで上方へ湾曲し得る。

平面図で、流れ軸に沿って見られるように、リング体は好ましくは短軸に対して直交する長軸を有する卵円形状を規定し、短軸が前部および後部セクションを二分する。さらに、後部セクションの湾曲は、約０〜４５°の角度θ（より好ましくは約３０°）によってリング体の回りに長軸から間隔を置いて配置される短軸を横切る対称の場所から始まることができる。

リング体は、後部セクション上の下方への湾曲の両側に、二つ上方への湾曲を更に含むことができる。そして、ここにおいて、下方への湾曲は約２〜１５ｍｍであり得る。実施例において、リング体は、同心で配置される複数のリング要素を含む。各リング要素の間にポリマーストリップを提供し得る。任意に、リング要素は、流れ軸に直交する寸法の高さより流れ軸寸法の高さが実質的にかなり高いバンドを有する。さらに、リング要素は、リング体が、リング体の剰余周辺より後部セクションで多く曲がるように、様々な高さを有し得る。

本発明の別の態様は、前部局面に関連して、血流軸に沿って下方へ低下させる後部局面を有する僧帽の心臓弁環を修復する方法である。該方法は、環の前部局面を嵌合するために大きさが設定された前部セクションおよび後部局面に大きさが設定された後部セクションを有する環状形成リングを移植することを含む。ここにおいて、リング後部セクションは、前部セクションと関連して中心軸と平行に下方へ曲がる。該環状形成リングは展性であり得、よって外科医は手で後部セクションの曲げを調整する。

本発明の他の態様は、後部局面、前部局面および血流軸を有する僧帽の心臓弁環を修復する方法である。該方法は、僧帽弁の環の形状を検査すること、および僧帽弁の環の形状に基づいて三次元環状形成リングを選択すること、を含む。該選択された環状形成リングは、通常、中心軸周辺に配置される前部セクションおよび後部セクションを有する。該中心軸は、上方への方向と下方への方向とを規定し、そこで、リング後部セクションは、中心軸に対して直交する平面から下方へ曲がる。該方法は、リング後部セクションを僧帽弁環の後部局面に取り付け、そして後部セクションが血流方向へ曲がるように、環状形成リングを移植することを含む。

（好ましい実施形態の説明）
添付の図は、本発明の環状形成リングのいくつかの例示的な実施形態を例示する。それらは、それは連続して、前側部、後側部および左右の側を有すると記載され得る。側部の全ては、それらの間で突然の移行を示すために、特別な境界なしで、ほぼ曲線形である。むしろ、隣接した側部間のなめらかな移行セクションは、リングにほぼ丸い（例えば、卵形の）形状を与える曲線の接続を提供する。

本発明の具体的な環状形成リング３０は、図４に示され、僧帽弁の環ＭＡ周辺に移植される。上述の通り、僧帽弁の環は、前部小葉ＡＬおよび後部小葉ＰＬを有する。リング３０が移植されるとき、小葉は、接合表面３２で接触するように、一緒に閉じおよび支持される。該リング３０は、このように機能的な僧帽弁逆流の問題を修正する。

リング３０は、カーブする後部セクション３６の反対側に、比較的まっすぐな前部セクション３４を有する卵円か又はややＤ形の外形を有する。一対の三角または，横連合標識３８ａ、３８ｂは、一般に前部側３４の限界を定め、一方、一対の対向する側部セクション４０ａ、４０ｂは、これらの各標識および後部セクション３６の間を伸びる。複数の結ばれた縫合糸ループ４２はリング３０を僧帽弁の環ＭＡに固定するために典型的に用いられる。但し、ステープル、フィブリン接着剤等のような他の締着具が用いられ得る。

環状形成リング３０が適している病的状態において、図２に図示するように、僧帽弁の環の後部局面は、前部局面に対して下げられる。図４の見るところでは、後部局面は、前部局面に対してページと下げられる。本発明の環状形成リング３０は、僧帽弁の環ＭＡの改質形状にほぼ従うよう形成された後部セクション３６を有する。換言すれば、後部セクション３６は、前部セクション３４に対してページと曲げられる。例えば、縫合４２を有する場所に固定されるとき、リング３０は、最初の実質的に平面構成へ環が転じようとすることよりむしろ、その改質形状に僧帽弁の環ＭＡを支持する。同時に、リング３０は、望ましくは、前部小葉ＡＬおよび後部小葉ＰＬを互いに近づけるように、環によって規定されるオリフィス円周を締めつける。リング３０は、僧帽弁の環ＭＡの後部局面をその改質位置から上方へ引かないので、高いストレスが取付け縫合４２において生じることはなく、よって、潜在的な裂開がより少ない。

図５および図６は、その後側部に押し下げられた僧帽弁の環より上に、斜視で具体的な環状形成リング３０を例示する。その後部セクション３６のリング３０の湾曲（ｂｏｗ）は、図６に最も良く示されるが、機能的な僧帽弁逆流によって遭遇した病理学の僧帽弁の環ＭＡの後部局面の低下を模倣している。

図４〜６の具体的な環状形成リング３０は、図７Ａ〜７Ｃにより詳細に示される。該リング３０は、繊維状カバーを有して完全に示されている。オリエンテーションの目的のために、図７Ａは、Ｘ軸およびＹ軸が、図１および図２に関して上記したようにほぼ基準平面２０を規定する直交軸を例示する。Ｘ軸は、最大寸法の点で、一方側４０ａから反対側４０ｂへリング３０を横切って伸びる。よって、Ｘ軸は、リング３０の長軸を規定する。Ｙ軸は、後部セクション３６の中間まで前側部３４の中間の間で伸びているリング３０のための対称面を規定する。Ｙ軸も、リング３０の短軸を規定する。

多くの従来のリングと同様に、長軸寸法に対する短軸寸法の比率は、望ましくは約３：４である。この大きさの比率は、僧帽弁の環の「クラシック」形状であって、環状形成リング３０の最高の構成であり得る。しかしながら、より小さい長軸に対する短軸の比率を有する他の形状が、実際には小葉接合を増加し得ることは考察される。幾何学的に正確でないにもかかわらず、非円形状リング構成は、卵形、楕円又はＤ形が考慮され得る。本発明は、また、例えば、Ｃ−形状を有する不連続なリングの形をとることができる点に留意すべきである。そのようなリングの中断は前部セクションにおいてあってもよく、後部セクションは連続し、説明されるように下方への湾曲を示す。

移植されるときに、図７ＢのＺ軸はリング３０を通した血流の軸に沿った状態にある。そして、陽のＺ方向が「上方への」方向であり、負のＺ方向が「下方への」方向であり、そして、血液が下方への方向へ流れるように、リング３０が僧帽弁環に移植されるように設計されることが理解される。

数ポイントは、後部湾曲を記載するのを助けるために、リング３０周辺で強調（ｎｏｔｅ）される。これらの位置および図８Ａ〜８Ｂに示されるものは、リング３０の横断面を通る想像上の中心点である。２つのポイントＡは、Ｘ軸から角距離θでＹ軸の両側に対称的に位置が決められる。後部セクション３６の中間点は、Ｂと示されている。位置ＢがＺ軸に沿って最も低い所にあるように、リング３０は後部ボウ（ｂｏｗ）を備えている。図７Ｃで、この後部の湾曲の大きさは、寸法Ｚ_１によって示される。後部セクション３６の両側の位置Ａは、後部の湾曲が開始する位置を表す。すなわち、後部セクションを除いて、リング３０は、好ましくは実質的に平坦である。しかしながら、従来技術の特定のリングにおいてのように、前部セクション３４は、約２〜４ｍｍ（０．０８〜０．１６インチ）間の距離だけ上方へ任意に曲げられ得る。後の実施例において、後部セクション３６は、三角標識３８ａ、３８ｂの立面に関して、Ｚ方向に下方へ湾曲する。

僧帽弁の環の全体のサイズ、後部局面の解剖学的垂下の範囲および外科医の好みを含むさまざまな他の要因によって決定される範囲の間を変化する寸法Ｚおよび角度θによって、図７Ａ〜７Ｃに示すように、リング３０のための様々な可能な構成が考察される。それにもかかわらず、本明細書に記載されるように、特定の解剖学的不規則を示す大多数の患者を支持し、かつ修正するのに、特定の範囲が適していると考えられる。下方への湾曲または後部湾曲は、位置Ａ間の大多数の後部セクション３６に沿って好ましくは伸びる。その位置は、Ｘ軸（θ）から０と４５°の間にある。より好ましくは、位置Ａは、２０〜４０°の間、さらに好ましくはＸ軸から約３０°である。リングの寸法に従い、湾曲Ｚ_１の大きさが、約２〜１５ｍｍ（０．０８〜０．５９インチ）の間にあり得、より典型的には、約４〜８ｍｍ（０．１６〜０．３１インチ）の間である。

Ｙ−軸について対象のようにリング３０が図７Ａ〜７Ｃに示されているが、必ずしもそうである必要があるというわけではない。例えば、下方への湾曲が後部セクション３６に集中していないように、位置ＢはＹ軸から移されることができる。非対称のリングは、図９Ａおよび図９Ｂに関して図示および記載される。

図８Ａ〜８Ｃは、上方および下方への湾曲を有する本発明の別の環状形成リング５０を例示する。また、リング５０は、繊維状カバーを有して全体が示されている。該リング５０は、前部セクション５２、後部セクション５４、およびそれらの間の一対の側部セクション（番号なし）を含む。リング５０は、前部セクション５２でほぼ平らで、後部セクション５４で形がつけられている。Ｙ軸を横切って対称的に配置されたポイントＡは、再び、リング５０が平面からカーブし始める両側の位置を意味する。本実施形態において、図８に最も良く示されるように、リングは位置Ａから高い位置Ｃまで、Ｚ軸方向に上方へカーブする。次に、後部セクション５４の中間点Ｂまで下方へもぐる。位置ＡおよびＢ間のリングの下方への湾曲は、寸法Ｚ_２として図８Ｃに示される。それは、図７Ｃで、Ｚ_１のために与えられたのと類似した大きさを有する。上方へのカーブは、患者の環形状によくマッチするように選択し得る。さらに、前部セクション５２は、約２〜４ｍｍ（０．０８〜０．１６インチ）の間の距離だけ、上方へ曲げることができる。

図８Ａ〜８Ｃに示されるリング５０のさまざまな交換は、多数の要因に基づいて変えられる寸法について考察される。ある具体例では、位置Ａは、望ましくはＸ軸から角距離αに配置され約０〜１５°の間であり、より望ましくは約５〜１０°の間である。リング５０の最大高さの位置Ｃは、好ましくはＸ軸から角距離βの間隔を置いて配置され、約１５〜４５°の間、より好ましくは、約２５〜３５°の間である。図７Ａ〜７Ｃの実施形態においてのように、リング５０の最下位点Ｂは、Ｚ軸に沿って曲げられることができ、その結果、示された図８Ｃのように、リングの寸法に従い、Ｚ_２は望ましくは約２〜１５ｍｍ（０．０８〜０．５９インチ）の間であり、さらに典型的には、約４〜８ｍｍ（０．１６〜０．３１インチ）の間である。従って、リング５０の総高さは、少なくとも２ｍｍであって、１５ｍｍより大きくてもよい。

図９Ａおよび図９Ｂは、本発明の環状形成リングで使用のための、内側リング体６０を示す。該リング体６０は、後部セクション６４の中央からオフセットした後部湾曲６２を有する。図示の実施例では、湾曲６２は、リング体６０の全ての長軸幅の約２０％だけ、後部中央側（右に）の方へオフセットされる。オフセットを述べる他の方法は、平面図で、湾曲６２が時計位置に集中しているということである（１２：００が前側部に集中している）。その意味において、湾曲６２が３：００および６：００の間に集中し、より好ましく５：００に中心がある。軸の湾曲Ｚ_３が示され、約２．０ｍｍ（０．０８インチ）から約４．０ｍｍ（０．１６インチ）、より好ましくは、約３．０ｍｍ（０．１２インチ）から約３．８ｍｍ（０．１５インチ）まで、リングサイズに基づいて変化させることができる。加えて、リング体６０は、約２〜４ｍｍ（０．０８〜０．１６インチ）間の距離だけ上方へ曲げられる前部セクション６６を有する。

内側リング体６０は、正中切開から移される後部環の湾曲を有する患者にかなう非対称のリングを示す。大部分の患者が本明細書において記載の異常な状況から生じたそのような奇形の解剖を有すると思われている。しかしながら、中央に置かれるかまたは左にオフセットされる後部湾曲が観察された。従って、本発明で具体化されるリングの１つの構成は、中央の後部湾曲または右に後部湾曲を有して予備形成されたものである。そして、それは展性があるので、患者の環の正確な形状の検査の後に、湾曲が外科医によって大きくされ、または小さくされ得る。さらに、この種の可変リングでは湾曲は、例えば、右から左へ移すことさえできる。リングの材料によって手で変形可能であるが、一旦移植され、通常の生理学的ストレスを受けたときに、更なる変形に耐えるよう充分に硬質である。

リングは、好ましくは内側リング体と、リング体が僧帽弁の環内に縫合される外部縫合鞘とを有する。その縫合鞘は、充分に多孔質でありおよび／または可撓性を有し、そこを通して縫合可能である。一つの具体的な構成は、管状の鞘（例えば、シリコーンなどの縫合透過材料からなる）内に、内部リング体を囲み、それは、例えばポリエチルテレフタレートなどの繊維状チューブで覆われる。

単に僧帽弁の環の円周を減らすように設計されている可撓性環状形成リングとは反対に、本発明の環状形成リングは半硬式でなければならない。それは、各鼓動サイクルの全体にわたって心臓の筋肉によって与えられるストレスに対抗して、その後部湾曲を保持しなければならない。例えば、リング体は、例えばＥｌｇｉｌｏｙ（コバルトニッケル合金）、チタンまたはニチノール（ニッケルチタン合金）のような材料から作ることができる。

図１０は、多数の平坦なエルジロイ（Ｅｌｇｉｌｏｙ）のバンドを、複合構造で利用する本発明の環状形成リングの内側本体の一つの具体的な構造を例示する。詳しくは、４つのバンド７０ａ、７０ｂ、７０ｃおよび７０ｄが外側から内部まである。４つのバンドは、リングの形状に同心で配置されている。各々のバンドは、約１．４〜２．０ｍｍ（０．０５６〜０．０７８インチ）の間の幅を有する材料からなる平坦なストリップである。一実施例において、バンド７０がリング体の前部セクション７２において重なり、複数の位置で例えば、スポット溶接などにより、一緒に固定されている。各ストリップの幅は、また後部セクション７４において前部セクション７２においてより大きくてもよく、そこは、リング体が他のいかなるセクションにおいてより、後部セクションでより可撓性であることを意味する。図示はしていないが、保護膜の複数のストリップが、各々のバンド７０間に、および外側バンド７０ａ．の外表面に使われる。該ストリップは、ポリマー（例えばマイラー）であり得る。ストリップは、バンド７０間の磨耗を減らし、更に縫合針を外側バンド７０ａから偏らせて、そのことがそこにスクラッチすることを防止するのを助ける。

現在の環状形成リングを有する僧帽弁環の支持が、後小葉が前小葉の下に押し下げられることを維持し、よって健康な弁膜においてよりそれらの間の接合の領域が異なることは、また容易に明らかである。これは、小突起状筋および後小葉が置き換えられた心室の病理学に必要とされる。しかしながら、当業者は、接合が利用できる小葉のサープラス（ｓｕｒｐｌｕｓ）領域のため、および、再編成が他の変化で、かなりの時間２つの小葉の接合を改良し、従って逆流を減少させる環の形状にオフセットするので、小葉のこのわずかな再編成が受け入れられることを認識する。

関連する技術の当業者は、さまざまな変更態様または変化が、本発明の意図された精神および範囲から逸脱することなく、この仮出願に記載されている本発明の実施例および実施形態になされることができると認識する。この点に関して、本明細書に記載されている本発明の具体例は、本出願に開示されるより広い発明の概念の実施例として理解されるべきである。

図１は、前および後小葉間の僧帽弁を通した健康な左心室の断面図である。 図２は、前および後小葉間の僧帽弁を通した拡張左心室の断面図である。 図３は、外科的手技の間に露出した図２の僧帽弁の心房の図である。 図４は、僧帽弁の能力を戻すために移植された本発明の環状形成リングの平面図である。 図５は、後側部から見た、異常な僧帽弁の上にある本発明の環状形成リングの斜視図である。 図６は、側方から見た異常な僧帽弁の図５の上にある環状形成リングの斜視図である。 図７Ａ〜７Ｃは、後部湾曲を有する本発明の具体的な環状形成リングの平面図、正面図および側面図である。 図８Ａ〜８Ｃは、２つの突起間の後部湾曲を有する本発明の代替の環状形成リングの平面図、正面図および側面図である。 図９Ａおよび図９Ｂは、それぞれ、中心を外れた後部湾曲および前部湾曲を有する、本発明の更なる環状形成リングの内側リング体の正面図および側面図である。 図１０は、複合バンド構造の詳細を示している本発明の環状形成リングの内側リング体の上面図である。

Claims (16)

1. 僧帽弁環の移植のための環状形成リング（３０、５０）であって、
   該僧帽弁環の前部局面上に移植されるように適合された前部セクション（３４、５２、６６、７２）および該僧帽弁環の後部局面上に移植されるように適合された後部セクション（３６、５４、６４、７４）を有する丸いリング体（６０）を有し；
   ここで、該リング体（６０）は中心流れ軸の周りに配向され、該流れ軸は、上方への方向および下方への方向を規定し、該下方への方向は該僧帽弁環を通る血流の方向に対応し、ここで、該流れ軸に沿って観察される平面図において、該リング体（６０）が短軸と直交する長軸を備えたほぼ卵形状を規定し、該短軸が該前部セクションおよび該後部セクションの両方を二分し；
   該後部セクション（３６、５４、６４、７４）において、該リング体（６０）は中心流れ軸と直交する平面から下方へ曲がり、そして該下方への曲がり（６２）が該短軸から離れて該後部セクションに中心があり、そして隣接するリング体セクションへの滑らかな曲線遷移を示すことを特徴とする、環状形成リング。
2. 前記後部セクション（３６、５４、６４、７４）において、前記リング体（６０）が、前記下方への曲がり（６２）が該下方への曲がりの最下位点に至るようにはじまる該リング体（６０）周囲の点から前記流れ軸に沿って測定されるとき、約２〜１５ｍｍの間で下方へ曲がる、請求項１に記載の環状形成リング。
3. 前記リング体（６０）が、約４〜８ｍｍの間で下方へ曲がる、請求項２に記載の環状形成リング。
4. 前記リング体（６０）の曲がり（６２）が、前記後部セクション（３６、５４、６４、７４）において、流入視野からみたとき該リング体の後部中央側に向いて中心がある、請求項１に記載の環状形成リング。
5. 前記後部セクション（３６、５４、６４、７４）における曲がり（６２）が、前記リング体（６０）の長軸全体の約２０％だけ後部中央側に向いて中心がある、請求項４に記載の環状形成リング。
6. 前記後部セクション（３６、５４、６４、７４）における曲がりが、時計位置で、前側部で１２：００に中心があり、そして該曲がりが３：００と６：００との間に中心がある、請求項４に記載の環状形成リング。
7. 前記リング体（６０）が、該リング体における曲がりが手で再形状化され得るように、展性材料から作製される、請求項１に記載の環状形成リング。
8. 前記リング体（６０）が、各鼓動サイクルの全体にわたって心臓の筋肉によって与えられるストレスに対抗して、その後部の曲がりを保持する半硬質材料から作製される、請求項１に記載の環状形成リング。
9. 前記前部セクション（３４、５２、６６、７２）において、前記リング体（６０）が、隣接する三角標識から上方へ曲がる、請求項１に記載の環状形成リング。
10. 前記リング体（６０）が、同心で配置される複数のリング要素（７０ａ、７０ｂ、７０ｃ、７０ｄ）を備える、請求項１に記載の環状形成リング。
11. 前記各リング要素の間にポリマーストリップを更に備える、請求項１０に記載の環状形成リング。
12. 前記リング要素は、前記流れ軸と直交する次元においてより実質的に大きい流れ軸の高さを有するバンド（７０ａ、７０ｂ、７０ｃ、７０ｄ）を備える、請求項１０に記載の環状形成リング。
13. 前記リング要素が様々な高さを有し、そのため前記リング体（６０）が該リング体の剰余周辺でより、前記後部セクション（３６、５４、６４、７４）においてより可撓性である、請求項１２に記載の環状形成リング。
14. 前記リング体（６０）が、前記後部セクション（３６、５４、６４、７４）を除いて実質的に平坦である、請求項１に記載の環状形成リング。
15. 前記リング体（６０）が、前記後部セクション（３６、５４、６４、７４）において前記下方の曲がりのいずれかの側に２つの上方の曲がりを備える、請求項１に記載の環状形成リング。
16. 前記リング体（６０）が、前記下方への曲がり（６２）が該下方への曲がりの最下位点に至るようにはじまる該リング体周囲の点から前記流れ軸に沿って測定されるとき、約２〜１５ｍｍの間で下方へ曲がる、請求項１５に記載の環状形成リング。

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