次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る移動部停止装置A及びこの移動部停止装置Aを備える射出成形機1の構成について、図1〜図5を参照して説明する。
射出成形機1は、図2に示すように、機台10上に設置した型締装置1cと、左右に並べて設置した一対の射出装置1ia,1ibを備える。型締装置1cは、機台10の中程に固定した固定盤7と、機台10の端部に固定した支持盤11と、この支持盤11と固定盤7間に架設した四本のタイバー12…を備えるとともに、各タイバー12…にスライド自在に装填した可動盤6を備える。なお、各タイバー12…は、図5に示すように、可動盤6(支持盤11,固定盤7)の四隅に配される。また、図3及び図4に示すように、可動盤6の前面(内面)には、移動部2である回転盤2rを重ねるように配するとともに、可動盤6の後面(外面)には、回転盤2rを正逆回転させる回転盤回転駆動部13を配設する。
回転盤回転駆動部13は、回転盤2rの裏面に固定し、かつ同軸上に配したリングギア14と、可動盤6の後面に取付けたサーボモータ8と、このサーボモータ8の回転シャフトに取付けた駆動ギア16を備え、この駆動ギア16は、リングギア14の内周面に形成したネジ部14nに噛合する。このため、可動盤6の前面には、リングギア14及び駆動ギア16等を収容する収容凹部17を設けてある。
一方、18は、サーボモータ8をフィードバック制御するサーボ回路20(図1)を内蔵するコントローラであり、サーボモータ8はこのサーボ回路20の出力部に接続する。サーボモータ8の後端には、このサーボモータ8の回転数を検出するロータリエンコーダ(エンコーダ)9を付設し、このロータリエンコーダ9は、コントローラ18(サーボ回路20)に接続する。
図1は、コントローラ18の具体的回路を示し、このコントローラ18には、ホストコントローラ部18mとサーボ回路20を含む。サーボ回路20は、偏差演算部21,22,23、位置制御部24、速度制御部25、電流制御部26、インタフェース27、電流検出部28を備え、図1に示す系統によりサーボ制御系(サーボ回路20)を構成する。そして、電流制御部26の出力側(出力部)からサーボモータ8に対して給電が行われるとともに、このサーボモータ8に付設したロータリエンコーダ9から出力するエンコーダパルス(パルス列)は、インタフェース27に付与され、このインタフェース27から位置フィードバック信号(位置検出値)として、位置偏差Deを出力する偏差演算部21の反転入力部に付与されるとともに、インタフェース27から速度フィードバック信号(速度検出値)として、速度偏差を出力する偏差演算部22の反転入力部に付与される。また、電流検出部28の検出信号(電流検出値)は、トルク偏差を出力する偏差演算部23の反転入力部に付与される。
サーボ回路20では、回転盤2rに対する速度制御及び位置制御が行われる。即ち、ホストコントローラ部18mから偏差演算部21の非反転入力部に対して位置指令値が付与され、ロータリエンコーダ9のエンコーダパルスに基づく位置検出値と比較されるとともに、偏差演算部21から位置偏差Deが得られるため、この位置偏差Deに基づいて位置のフィードバック制御が行われる。また、位置偏差Deは、位置制御部24により補償されて偏差演算部22の非反転入力部に速度指令値として付与され、ロータリエンコーダ9のエンコーダパルスに基づく速度検出値と比較されるとともに、偏差演算部22から速度偏差が得られるため、この速度偏差に基づいて速度のフィードバック制御が行われる。さらに、速度偏差は、速度制御部25により補償されて偏差演算部23の非反転入力部にトルク指令値(電流指令値)として付与され、電流検出部28から得るトルク検出値(電流検出値)と比較されるとともに、偏差演算部23からトルク偏差が得られるため、このトルク偏差に基づいてトルクのフィードバック制御が行われる。このトルク偏差は、電流制御部26に付与され、電流制御部(ドライバ)26から駆動電流がサーボモータ8に供給される。これにより、回転盤2rをフィードバック制御により回転(移動)させる駆動部3が構成される。
他方、ホストコントローラ部18mは、コントローラ本体31、位置指令部32、比較処理部33、設定処理部34を備え、図1に示す系統により各種の制御及び処理等を行うコンピュータ機能を有するホストコントローラ部18mを構成する。この場合、位置指令部32は、位置指令値を偏差演算部21の非反転入力部に付与する。また、ホストコントローラ部18mは、回転盤2rを、後述するストッパ機構部4に係止する直前の目標位置Xsまで所定の標準速度Vnにより回転(移動)させ、目標位置Xsに達したなら標準速度Vnよりも低速の突当速度Vsにより回転(移動)させるとともに、フィードバック制御系で発生する位置偏差Deを、比較処理部33により監視し、この位置偏差Deが設定処理部34により予め設定された閾値Dsに達したなら回転盤2rに対する停止制御を行う制御部5を構成する。さらに、18dは、コントローラ18に接続したタッチパネル式のディスプレイであり、各種の設定及び表示を行うことができる。
また、可動盤6の後面における中心位置には、図3に示すように、回転盤2rを軸方向へ僅かに押出して可動盤6から離間させ、かつ軸方向へ引込むことにより可動盤6に当接させる回転盤進退駆動部41を配設する。図3に示すLsは、回転盤2rを軸方向へ押出した際に、回転盤2rと可動盤6間に生じる隙間を示しており、この隙間Lsは、回転盤2rと可動盤6の接触を解除できる数〔mm〕程度で足りる。回転盤進退駆動部41は、可動盤6の後面に固定した進退シリンダ42を備え、この進退シリンダ42に内蔵するピストン43のピストンロッド43rは、可動盤6に挿通させるとともに、先端を回転盤2rの裏面に固定する。したがって、このピストンロッド43rは、回転盤2rの回転軸を兼用する。一方、進退シリンダ42の後室及び前室は、油圧回路44に接続するとともに、油圧回路44は、上述したコントローラ18に接続する。これにより、油圧回路44は、コントローラ18により制御される。
さらに、図3及び図5に示すように、回転盤2rと可動盤6間には、回転盤2rに対して機械的に係止して停止させるストッパ機構部4を配設する。ストッパ機構部4は、回転盤2rの裏面における外周付近に固定したブロック状のストッパ51を備えるとともに、可動盤6の収容凹部17の内部であって、ストッパ51の移動軌跡上に固定した一対のストッパ受部52a,52bを備える。これにより、回転盤2rが正逆方向にそれぞれ回転した際には、ストッパ51が各ストッパ受部52a,52bに突当たり、回転盤2rの回転範囲が180〔°〕に規制されるストッパ機構部4が構成される。
以上の構成において、回転盤回転駆動部13,ストッパ機構部4及びコントローラ18は、駆動部3,ストッパ機構部4及び制御部5を含む本実施形態に係る移動部停止装置Aを構成する。
他方、回転盤2r上であって、中心に対して180〔°〕対向する位置には、一対の可動型Cam,Cbmを取付けるとともに、各可動型Cam,Cbmに対面する固定盤7上には、一対の固定型Cac,Cbcを取付ける。可動型Cam,Cbmと固定型Cac,Cbcは、一対の金型Ca,Cbを構成する。この場合、可動型Cam,Cbmは、前述した金型Ca,Cbにおける一方の型Cam,Cbmを構成する。これにより、一方の固定型Cac側が一次金型Ca、他方の固定型Cbc側が二次金型Cbとなる。なお、各可動型Cam,Cbmは、交互に入替えて用いられるため、符号Cam,Cbmは、個々の可動型を指すものではなく、固定型Cacに対向する可動型が一次側の可動型Camとなり、固定型Cbcに対向する可動型が二次側の可動型Cbmとなる。
各固定型Cac,Cbcには、それぞれ四本のガイドピン61…を備え、各ガイドピン61…は、各可動型Cam,Cbmに向かって突出する。一方、各可動型Cam,Cbmには、各ガイドピン61…に対向するガイドブッシュ62…を備える。これにより、型締工程では、各ガイドピン61…が各ガイドブッシュ62…に進入し、可動型Cam,Cbmと固定型Cac,Cbcの正確な位置決めが行われる。
また、一次金型Caの位置に対応する支持盤11の背面には、型締シリンダ63aを取付けるとともに、二次金型Cbの位置に対応する支持盤11の背面には、型締シリンダ63bを取付ける。そして、各型締シリンダ63a,63bの図に現れないピストンロッドの先端は可動盤6に結合する。各型締シリンダ63a,63b(アクチュエータ)は、それぞれ前述した油圧回路44に接続する。一方、一次金型Caの位置に対応する可動盤6の後面には、突出シリンダ64aを取付けるとともに、二次金型Cbの位置に対応する可動盤6の後面には、突出シリンダ64bを取付ける。そして、各突出シリンダ64a,64bのピストンロッド64ar…の先端はエジェクタ65a…に結合する。各突出シリンダ64a,64b(アクチュエータ)は、それぞれ前述した油圧回路44に接続する。なお、油圧回路44には、メインポンプとサブポンプを内蔵する。
さらに、図3に示すように、複合成形品Mを排出する一対のシュータ66a,66bを備える。この場合、一方のシュータ66aは一次金型Caの下方に配するとともに、他方のシュータ66bは二次金型Cbの下方に配する。これにより、シュータ66aに落下した複合成形品Mは、機台10の右側に排出されることにより、不図示のコンテナに収容されるとともに、シュータ66bに落下した複合成形品Mは、機台10の左側に排出されることにより、不図示のコンテナに収容される。
次に、本実施形態に係る移動部停止装置Aに関連する設定画面について、図6及び図7を参照して説明する。
図6及び図7は、ディスプレイ18dに表示される設定画面であって、図6は、ユーザ設定画面Vuの一部、図7は、調整画面Vcの一部をそれぞれ示す。図6に示すユーザ設定画面Vuにおいて、Kaは、型回転選択キーであり、「ON」に切換えたときは、回転盤2rの回転が行われるとともに、型回転選択キーKaをタッチして「OFF」に切換えたときは、回転盤2rの回転は行われない。したがって、「OFF」に切換えたときは、二台分の単体射出成形機として利用できる。
Kbは、回転モード選択キーであり、回転盤2rを回転させて一方の型Cam,Cbmを入替える型替工程以降に複合成形品Mを離型する突出工程を行う「型回転→突出」モードと、突出工程以降に型替工程を行う「突出→型回転」モードを選択できる。「突出→型回転」モードを選択すれば、回転盤2rの回転が行われる前に突出工程が行われるため、離型した複合成形品Mは、左側のシュータ66bから排出されるとともに、「型回転→突出」モードを選択すれば、回転盤2rの回転が行われた後に突出工程が行われるため、離型した複合成形品Mは、右側のシュータ66aから排出される。
Kcは、同時動作選択キーであり、「ON」に切換えれば、同時動作(オーバラップ動作)を実行することができるとともに、「OFF」に切換えれば、同時動作を解除できる。したがって、成形品取出ロボットを付設する場合など、型開工程が完全に終了し、可動盤6が型開停止位置(全開位置)に達した時点で突出工程を開始させたいときは、同時動作選択キーKcを「OFF」に切換えればよい。
Kdは、回転開始位置設定キーであり、同時動作選択キーKcを「ON」に切換えた際に、型開工程による型開き途中におけるどのタイミングで回転盤2rの回転を開始させるかを可動盤6の位置(設定位置)により設定できる。この回転開始位置設定キーKdを用いれば、成形時間を短縮する観点から個々の金型Ca…に対応した最適(最大)な回転開始タイミングを設定でき、この設定は、金型Ca…の交換毎にユーザサイドで任意に行うことができる。よって、同時動作選択キーKcを「ON」に切換えるとともに、回転開始位置設定キーKdにより、可動盤6に対する設定位置を設定すれば、後述するように、型替工程の動作を、型開工程の動作に並行して同時動作させることができる。
なお、ガイドピン61…がガイドブッシュ62…から完全に抜け切らない前に回転盤2rの回転するのを防止するため、必要により保護手段を設けることができる。例えば、ガイドピン61…は型厚よりも長くなることがないため、予め、型厚から型開停止位置まで許容設定範囲として設定し、ユーザがこの許容設定範囲を越えて入力した場合に警報を発するなどの保護手段を設けることができる。なお、同時動作選択キーKcを「ON」に切換えた時点における回転開始位置設定キーKdの設定値(設定位置)には、安全性を考慮して、型開停止位置(全開位置)が設定されている(例示は400.0〔mm〕)。
一方、図7に示す調整画面Vcにおいて、Keは、回転盤2rが左方向へ回転した際にストッパ51がストッパ受部52bに突当たる角度を設定する左回転限角度設定キーであり、この左回転限角度設定キーKeを用いて、標準値「0.00」に対する微調整を行うことができる。Kfは、回転盤2rが右方向へ回転した際にストッパ51がストッパ受部52aに突当たる角度を設定する右回転限角度設定キーであり、この右回転限角度設定キーKfを用いて、標準値「180.00」に対する微調整を行うことができる。
Kgは、ストッパ51をストッパ受部52a又は52bに突当てる際の速度を設定する突当速度設定キーである。回転盤2rを回転させる際は、まず、標準速度Vnにより回転させ、ストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たる直前で一旦停止させるとともに、この後、低速となる突当速度Vsにより回転させ、ストッパ51をストッパ受部52a又は52bに突当てる動作を行うが、突当速度設定キーKgは、この突当速度Vsを設定するためのものである。なお、ストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たる直前では一旦停止させてもよいし、一旦停止させることなくそのまま突当速度Vsに移行させてもよい。
Khは、ストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たったことを判別するための閾値Dsを位置偏差Deに対して設定するための突当偏差許容範囲設定キーである。回転盤2rは、サーボモータ8により回転するとともに、フィードバック制御により突当速度Vsとなるように制御されるため、ストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たった際は、回転速度がゼロになる。この結果、目標位置が無限大に設定された位置制御に係わるフィードバック制御系の位置偏差Deは急激に増加するため、この位置偏差Deが閾値Dsに達したことによりストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たったことを判別(確認)できる。突当偏差許容範囲設定キーKhは、この位置偏差De(例示は、ロータリエンコーダ9からのパルス数)に対する閾値Dsを設定するためのものである。
Kiは、標準速度Vnが0から100%に達するまでの加速時間を設定する加速係数設定キー、Kjは、標準速度Vnが100から0%に達するまでの減速時間を設定する減速係数設定キーをそれぞれ示す。Kmは、速度ゼロ検出閾値設定キーであり、回転盤2rが回転し、ストッパ51がストッパ受52a又は52bに突当たる直前となる目標位置Xsに到達して停止したか否かを判断するための閾値を設定する。例示の場合、0.10〔%〕に設定してあるため、標準速度Vn×0.10〔%〕まで速度が低下したなら目標位置Xsに到達して停止したものと判断する。
Kkは、回転盤2rが回転途中で異常等により停止した際の判断を行うモニタ時間(例示は0.10〔秒〕)を設定する回転停止モニタ設定キーである。通常、回転盤2rが正規の停止位置まで回転した際は、コントローラ18からサーボモータ8を停止させる停止指令信号が出力するとともに、これに応答して、サーボモータ8側からは停止確認信号を出力する。この場合、停止指令信号を出力した後、設定したモニタ時間内に、サーボモータ8側から停止確認信号が出力すれば、正常動作であることを判断できるが、停止確認信号の出力を確認できなければ、異常動作であると判断し、電源回路を遮断するなどの異常処理が行われる。
次に、本実施形態に係る移動部停止装置Aの動作を含む射出成形機1の全体動作について、図1〜図11参照して説明する。
まず、前述した同時動作選択キーKcは、「ON」に切換えるとともに、回転開始位置設定キーKdにより、前述した可動盤6に対する所定の設定位置を設定する。また、回転モード選択キーKbは、「型回転→突出」モードに設定した場合を想定する。なお、図9は、一成形サイクルにおける実験上のドライサイクル、即ち、射出工程及び計量工程を行わないドライサイクルにおける各工程のタイミングチャートを、実測に基づいて示している。同図中、Qcは油圧回路44に備えるメインポンプの油圧に対するパーセント指令値を示すとともに、Qpはメインポンプの油圧検出値を示す。また、Ucは油圧回路44に備えるサブポンプの油圧に対するパーセント指令値を示すとともに、Upはサブポンプの油圧検出値を示す。
今、型締装置1cは型開状態、即ち、可動盤6が型開停止位置(全開位置)にあるものとする。まず、型締シリンダ63a,63bが駆動制御され、型閉工程を含む型締工程Pcが行われる。型締工程Pcでは、型開停止位置(全開位置)から可動盤6が前進し、図9に示すように、高速型閉Pcf,低速型閉Pcd,高圧型締Pcpが順次行われる。
型締工程Pcが終了することにより、射出工程Pmが行われる。この場合、射出工程Pmには、本来の射出工程のみならず、計量工程及び冷却工程が含まれるとともに、射出装置1ia,1ibを前進させてノズルタッチを行うノズルタッチ工程、圧抜きを行う圧抜き工程等も含まれる。射出工程Pmでは、図10に示すように、一次金型Caにおいては、一次射出工程Pmifにより射出装置1iaから一次射出が行われ、一次射出工程Pmifの終了により一次冷却工程Pmcf及び一次計量工程Pmmfが行われる。一方、二次金型Cbにおいては、二次射出工程Pmisにより射出装置1ibから二次射出が行われ、二次射出工程Pmisの終了により二次冷却工程Pmcs及び二次計量工程Pmmsが行われる。この場合、一次射出と二次射出では、樹脂の種類や樹脂量等が異なることから、一次射出と二次射出に伴う全体の処理時間も異なることになる。
射出工程Pmが終了することにより、可動盤6を後退させて型開きを行う型開工程Poが行われる。型開工程Poでは、型締位置から可動盤6を後退させる。そして、可動盤6を型開停止位置(全開位置)まで後退させたなら可動盤6を停止させる。これにより、型開工程Poが終了する。
一方、型開工程Poの開始後、型開き途中において、可動盤6が予め設定した設定位置、即ち、前述した回転開始位置設定キーKdにより設定した設定位置に達したなら、型替工程Prが行われる。そして、この型替工程Prにおいて、本実施形態に係る移動部停止装置Aにより回転盤2rに対する停止処理が行われる。図8は、型替工程Prにおける処理手順をフローチャートで示している。
まず、型替工程Prでは、最初に進退シリンダ42が駆動制御され、図3に示すように、回転盤2rが軸方向に押出される(ステップS1)。図3中、Lsは、回転盤2rを軸方向に押出した際の回転盤2rと可動盤6間に生じる隙間を示している。この後、サーボモータ8が駆動制御され、回転盤2rは、図11に示す標準速度Vnにより回転する(ステップS2)。この場合、ホストコントローラ部18からは、目標位置Xs,標準速度Vn,スピードアップ区間及びスローダウン区間に対応する指令パルスを出力する。指令パルスは、図11に示すように、速度が速くなるに従ってパルス間隔が短くなる。サーボ回路20には、この指令パルスが指令値として付与される。そして、回転盤2rが目標位置Xsに達することにより、停止処理が行われる。
この停止処理は次のように行われる。まず、目標位置Xsは、ストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たる直前に設定されており、ストッパ51がこの目標位置Xsに達したなら一旦停止する(ステップS3,S4)。この目標位置Xsが図11にta時点となる。このような一旦停止させる制御を行なうことにより、安定かつ確実に突当速度Vsに移行させることができる。この後、図11に示すように、低速に設定された突当速度Vsにより回転盤2rが再回転する(ステップS5)。この際、回転盤2rは、サーボモータ8により回転し、フィードバック制御により突当速度Vsとなるように制御されるとともに、目標位置は無限大に設定される。また、突当速度Vsによる移動時のトルクは、トルクリミッタにより標準速度Vnによる移動時のトルクよりも低く設定される。このようなトルク設定により、無用な衝撃や応力付加を発生させることなく安定した停止制御を行うことができる。
これにより、ストッパ51は、ある時点でストッパ受部52a又は52bに突当たり、回転速度がゼロになる。図11中、tb時点は、突当った時点を示している。この場合、偏差演算部21の反転入力部に付与されるパルス列は零となるが、非反転入力部に付与される位置指令値に係る指令パルスは入力し続けるため、偏差演算部21から出力する位置偏差De、即ち、位置制御に係わるフィードバック制御系の位置偏差Deは急激に増加する。この位置偏差Deは、比較処理部33により監視され、位置偏差Deが設定処理部34により設定された閾値Dsに達すれば、ストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たったものと判別する(ステップS6,S7)。例示の閾値Dsは、500Pulse(図7参照)であるため、位置偏差Deが500Pulseに達すれば、突当たったものと判別する。なお、位置偏差Deとしてパルス数を用いた場合を示したが、パルス数を電圧値等に変換した変換値を用いても同様に行うことができる。
よって、目標位置Xsは、ストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たる直前に設定し、位置偏差Deの監視により突当たったか否かの判断を行うため、ストッパ51をストッパ受部52a又は52bに対して確実に突当てることができるとともに、ストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たったことを確実に確認でき、しかも、バックラッシュによる誤差の影響も排除される。また、フィードバック制御の位置偏差Deを監視する手法を採るため、回転盤2rの回転に係わる動作条件を変更した場合であっても回転盤2rの停止制御に係わる処理条件は変更することなくそのまま利用できる利点がある。
そして、ストッパ51がストッパ受部52a又は52bに突当たったことを判別したなら、暴走を防止するため、位置偏差Deを全てクリアし(ステップS8)、サーボモータ8に対する停止制御、即ち、位置偏差Deが閾値Dsに達した時点における回転盤2rの位置を保持する位置制御による停止制御を行う(ステップS9)。図11中、tc時点が位置偏差Deが閾値Dsに達した時点を示している。このような停止制御を行うことにより、停止維持のための無用な応力付加を発生させることなく正確な位置に停止させることができる。
この後、進退シリンダ42が駆動制御され、回転盤2rが軸方向に引込まれる(ステップS10)。図4に示す回転盤2rの位置は、引込まれた位置を示しており、回転盤2rは可動盤6に当接した状態となる。したがって、例示の型替工程Prは、図8に示すように、回転盤2rを軸方向に押出す押出動作Prpとこの押出動作Prp後に回転盤2rを回転させる回転動作Prcとこの回転動作Prc後に回転盤2rを軸方向に引込む引込動作Priが含まれる複合動作Prmとなる。以後、型替工程Prが発生した際には、停止制御が解除され、同様の処理が行われる(ステップS11)。
型替工程Prが終了することにより、突出工程Peが行われる。突出工程Peでは、突出シリンダ64a,64bが駆動制御され、エジェクタ65a…が所定ストロークだけ前進することにより、可動型Cam(Cbm)に付着した複合成形品Mを離型するとともに、この後、後退して元の位置に戻る。この場合、回転盤2rが回転した後、即ち、二次側に位置する可動型Cbmが一次側に移動してから突出工程Peが行われるため、離型した複合成形品Mは、右側のシュータ66aに落下し、機台10の右側に排出される。
突出工程Peが終了することにより、中間工程が行われる。中間工程は、次の成形サイクルへ安定に移行させるためのインターバルであり、このインターバルはユーザサイドで任意に設定することができる。したがって、中間工程は、必要により設けるものであり、必ずしも設けることを要しない。以上により、一成形サイクルが終了するため、さらに、次の成形がある場合には、上述した一連の成形動作が同様に繰り返される。
よって、本実施形態に係る移動部停止装置Aによれば、機械的位置決め手段であるストッパ機構部4に対する機械的な衝撃や停止維持のための応力付加が発生しないため、ストッパ機構部4の位置ズレや損傷等を回避でき、耐久性の向上及び位置決め精度の維持確保を図ることができる。また、機械的位置決め手段と電気的制御手段(駆動部3及び制御部5)の効果的な組合わせにより停止させるため、停止制御を行うまでは比較的高速となる標準速度により移動させることができ、成形サイクル時間の短縮化、更には生産効率及び量産性の向上に寄与できる。しかも、電気的制御手段により移動制御及び停止制御を行うため、回転盤2rが所定の停止位置に位置決めされた状態で停止しているか否かを容易に確認することができ、安全性及び信頼性を高めることができる。
特に、射出成形機として、可動盤6と固定盤7間に複数の金型Ca,Cbを配するとともに、可動盤6と固定盤7間に配した移動部2である回転盤2rに各金型Ca,Cbを構成する一方の型Cam,Cbmを取付け、回転盤2rを回転させることにより一方の型Cam,Cbmを順次入替えて複合成形品Mを成形する射出成形機1を適用したため、同射出成形機に備える回転盤2rを位置決めして停止させるに最適な移動部停止装置Aを構成することができる。
なお、本実施形態では、型替工程Prの少なくとも一部の動作を型開工程Poの動作に並行して同時動作させている。これにより、全体の成形時間(成形サイクル)の短縮化が図れ、生産効率及び量産性をより高めることができる。また、個々の工程における処理時間を短縮することなく、全体の成形時間を短縮できるため、個々の工程における他の性能等が犠牲になる不具合を回避できるとともに、個々の工程における処理時間を設定するに際して柔軟に対応できるため、例えば、回転盤2rの回転速度を若干低下させて駆動系の大型化や無用な衝撃を回避するなど、必要により他の性能等を向上させることもできる。しかも、型替工程Prと型開工程Poは、予め設定した任意のタイミングにより同時動作させているため、個々の金型Ca…に対応した成形時間に対する最適(最大)な時間短縮を実現できる。
図8に示すオーバラップ区間Roは、型替工程Prの一部の動作と型開工程Poの動作が並行して同時動作し、従来の動作制御方法に対して、図8に示す時間Trだけ成形時間(成形サイクル)の短縮化を図れることを示している。即ち、図8中、Perは、従来の動作制御方法により行われる突出工程のタイミングを示しているが、従来の動作制御方法では、型開工程Poが終了した後、所定のインターバルTdを経て型替工程Prに移行させるため、オーバラップ区間RoとインターバルTdに対応する時間Trだけ、本実施形態の場合よりも長くなる。
また、回転モード選択キーKbにより、複合成形品Mの排出方向を容易に設定できる。即ち、「型回転→突出」モード又は「突出→型回転」モードを選択するのみで、複合成形品Mを射出成形機1の左側へ排出するか右側へ排出するかの設定(選択)を容易に行うことができる。この結果、排出方向の変更に伴う無用な工数の発生を回避でき、生産効率向上やコストダウンに寄与できるとともに、射出成形機1の設置性向上にも寄与できる。特に、射出成形機1に成形品取出ロボットを付設する場合には、機台10の左側又は右側のどちらにも設置できるため、設置が一方側に限られる不具合を解消でき、取出ロボットの小型化,無用な電力消費の低減,省スペース性の向上等に寄与できる。
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,手法,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、複数の金型Ca…として、一対の金型Ca,Cbを順次交換して成形する場合を示したが、三以上の金型Ca…であっても一方の型Cam…を順次入替えて成形することにより同様に実施できる。また、型替工程Prは、回転盤2rを軸方向に押出す押出動作Prpとこの押出動作Prp後に回転盤2rを回転させる回転動作Prcとこの回転動作Prc後に回転盤2rを軸方向に引込む引込動作Priを含む複合動作Prmを例示したが、押出動作Prp及び引込動作Priを行うことなく回転盤2rを回転させるのみの単純動作であってもよい。
一方、射出成形機として、可動盤6と固定盤7間に複数の金型Ca,Cbを配するとともに、可動盤6と固定盤7間に配した移動部2である回転盤2rに各金型Ca,Cbを構成する一方の型Cam,Cbmを取付け、回転盤2rを回転させることにより一方の型Cam,Cbmを順次入替えて複合成形品Mを成形する射出成形機1を例示したが、他のタイプの射出成形機にも同様に適用できる。また、移動部2も、例示する回転盤2rのように回転する移動のみならず、直進方向に移動するなど、回転しない各種の移動部2に同様に適用することができる。
1:射出成形機,2:移動部,2r:回転盤,3:駆動部,4:ストッパ機構部,5:制御部,6:可動盤,7:固定盤,8:サーボモータ,9:エンコーダ,A:移動部停止装置,Xs:目標位置,Vn:標準速度,Vs:突当速度,De:フィードバック制御の偏差(位置偏差),Ds:閾値,Ca:金型,Cb:金型,Cam:一方の型(可動型),Cbm:一方の型(可動型),M:複合成形品