JP4383225B2 - セラミックス焼結体、切削インサート、切削工具およびその製造方法 - Google Patents

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この発明は、セラミックス焼結体、切削インサートおよび切削工具に関し、さらに詳しくは、高い硬度と優れた靭性とを有するセラミックス焼結体、このセラミックス焼結体により形成されて成る切削インサートおよびこの切削インサートを備えて成る切削工具に関する。
耐磨耗性材料、耐衝撃性材料などとして有用であるセラミックスは、その特性により、切削工具、研磨工具、研削工具などに広く使用されている。このようなセラミックスの中でも、AlにTiCを分散させたセラミックスは、高い硬度を有し、しかも窒化珪素系のセラミックスと比較して鉄との親和性が低く、化学的安定性が高いことから、優れた耐摩耗性を有する材料として有用である。このため、従来より、鋼または鋳鉄などの高速仕上げ加工用切削工具として実用化されている。しかしながら、粗加工または断続加工に対しては、耐欠損性が不足していて、広く普及するには、いまだその実用性能が不十分であった。
近年、鋼または鋳鉄などの加工に当って、コスト低減の要求はますます高まってきており、例えば、従来は2工程により行っていた粗加工と仕上げ加工とを1工程により行うこと、部品点数を可能な限り削減しようとすることから部品が複雑な形状となり、断続加工を余儀なくされることなどにより、耐磨耗性を維持しつつ耐欠損性を向上させることのでる切削工具の開発が急務となっている。
ところで、前記粗加工または断続加工においては、強大な衝撃力がかかるため、工具には高い硬度と優れた靭性とが必要とされる。そこで、これまでに、Al粒子内に粒径が0.3μmという微細な炭窒化Ti粒子を複合化させ、硬度と靭性とを向上させることを企図したセラミックスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平3−290356号公報 しかしながら、このセラミックスは、原料である微細な炭窒化Ti粒子の製造が困難を極め、このために高価になるという問題があった。そこで、コストの低減を図るために、廉価な粗粒原料を粉砕し、微細な粒子として用いることが試みられているが、粉砕に多大の労力と時間とを要する上に、粉砕の際に不純物が混入し易く、得られるセラミックスの純度を低下させることとなっていた。このように、品質、コスト共に解決すべき問題を残しているセラミックスであった。
また、Al粒子内にTiCを分散させ、かつ優れた靭性を付与することのできるZrOを複合化したセラミックスも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平5−319910号公報 しかしながら、ZrO2は、Al2O3およびTiCに比較して、硬度が低く、単純に複合化したのみでは、強度および靭性は向上するものの、硬度が低下して耐摩耗性が劣化するという問題があった。
この発明は、このような従来の問題を解消し、高い硬度を維持しつつ高い強度と優れた靭性とを有するセラミックス焼結体、このセラミックス焼結体により形成されて成る切削インサートこの切削インサートを備えて成る切削工具およびその製造方法を提供することをその課題とする。
本発明者は、前記課題を解決するために、Zrを固溶させたTiの炭窒化物、AlおよびZrOを含むセラミックス焼結体におけるAlおよび正方晶ZrOの特定面のX線回折法によるピーク強度について種々検討を重ねた結果、正方晶ZrOのピーク強度比を一定範囲にすることによって、前記課題を解決することができるということを見出し、この知見に基づいてこの発明を完成するに到った。
すなわち、この発明の前記課題を解決するための第1の手段は、
(1)Zrを固溶させたTiの炭窒化物、AlおよびZrOを含むセラミックス焼結体であって、Zrを固溶させたTiの炭窒化物相中にZrO が存在する相構成を有し、X線回折法により測定された、前記Alの(113)面のピーク強度をαとし、前記ZrOにおける正方晶ZrOの(111)面のピーク強度をβとしたとき、[β/(α+β)]が0.05〜0.70であり、
ZrとTiとは前記Zrを固溶させたTiの炭窒化物中の質量比[Zr/(Zr+Ti)]が0.05〜0.30であり、前記Zrを固溶させたTiの炭窒化物はそのCの量が、質量比[C/(C+N)]で0.10〜0.5であることを特徴とするセラミックス焼結体である。
この発明の前記第1の手段における好ましい態様としては、下記(イ)〜()のセラミックス焼結体を挙げることができる。
(イ)10〜50質量%のAl元素を含むセラミックス焼結体。
(ロ)前記Al粒子の平均粒径が、大きくとも2.0μmであるセラミックス焼結体。
(ハ)室温におけるビッカース硬度が、小さくとも18GPaであるセラミックス焼結体。
(ニ)原料粉末として炭化ジルコニウムを使用することを特徴とするセラミックス焼結体。
(ホ)原料を不活性ガス中で1700〜1800℃で1〜5時間加熱処理する一次焼結処理と、100〜150MPaの不活性ガス中で1500〜1600℃で0.5〜1時間加熱処理する二次焼結処理とにより形成されることを特徴とするセラミックス焼結体。
また、この発明の前記課題を解決するための第2の手段は、
(2)前記第1の手段であるセラミックス焼結体により形成されて成ることを特徴とする切削インサートである。
さらに、この発明の前記課題を解決するための第3の手段は、
(3)ホルダーに前記第2の手段である切削インサートを備えて成ることを特徴とする切削工具である。
さらに、この発明の前記課題を解決するための第4の手段は、
(4)バインダーを使用することなく、窒化チタン、炭化チタン、炭化ジルコニウム、酸化アルミニウム、及び焼結助剤を配合してなる成形体を不活性ガス中で1700〜1800℃で加熱処理する一次焼結処理と、100〜150MPaの不活性ガス中で1400〜1600℃で加熱処理する二次焼結処理とにより形成され、
Zrを固溶させたTiの炭窒化物、AlおよびZrOを含み、X線回折法により測定された、前記Alの(113)面のピーク強度をαとし、前記ZrOにおける正方晶ZrOの(111)面のピーク強度をβとしたとき、[β/(α+β)]が0.05〜0.70であることを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法である。
この発明によれば、Zrを固溶させたTiの炭窒化物およびAlを含むセラミックス焼結体中に、本来は、低い硬度を有する相ではあるが、優れた靭性を有するZrOを複合化させると共に、X線回折法により測定された、前記Alの(113)面のピーク強度をαとし、前記ZrOにおける正方晶ZrOの(111)面のピーク強度をβとしたとき、[β/(α+β)]を0.05〜0.70とすることによって、高い硬度を維持しつつ高い強度と優れた靭性とを有するセラミックス焼結体とすることができる。
したがって、このセラミックス焼結体を耐磨耗性部材、耐衝撃性部材または摺動部材などとして用いた場合、その性能が長期間に亘って発揮され、特に、このセラミックス焼結体により形成されて成る切削インサートおよびこの切削インサートを備えて成る切削工具としてきわめて有用である。
(1)この発明のセラミックス焼結体は、Zrを固溶させたTiの炭窒化物、AlおよびZrOを含み、前記ZrOはZrを固溶させたTiの炭窒化物(この炭窒化物をTi1−xZr1−yと示すことができる。ただしxはTiとZrとの合計モル(原子)数を1とした場合のジルコニウムのモル数であり、yはCとNとの合計モル(原子)数を1とした場合の窒素原子のモル数である。)中に生成している。前記Ti 1−x Zr 1−y は高強度を有し、そのTi 1−x Zr 1−y 相中に高靭性のZrOが存在するという特異な相構成を有するので、この発明に係るセラミックス焼結体は高強度及び高靭性を発揮することができる。もっとも、このセラミックス焼結体は、X線回折法により測定されたAlの(113)面のピーク強度をαとし、前記ZrOにおける正方晶ZrOの(111)面のピーク強度βの比率[α/(α+β)]が0.05〜0.7、好ましくは0.1〜0.6である。ピーク強度の比率を決定するにあたり、ピーク強度として、前記Alの(113)面及び前記正方晶ZrOの(111)面を選択した理由は、いずれも各成分の最大ピークであるために、精度良く測定することができるからである。前記(β/α+β)は、この発明のセラミックス焼結体を製造するに際し、使用する焼結助剤の添加により調節することができる。
なお、結晶相の同定はX線回折ピークデータICDDカードのデータとをコンピュータにより比較することにより可能である。
また、前記比率が0.05未満であると、正方晶ZrOの含有量が少な過ぎて高靭性のセラミックス焼結体を得ることができず、また、前記比率が0.7よりも大きいとZrを固溶させたTiの炭窒化物の含有量が相対的に少なくなって高強度のセラミックス焼結体を得ることができない。また、この発明のセラミックス焼結体においては、前記ZrOの結晶形態が正方晶であることは言うまでもなく好ましいのであり、この発明の目的を阻害しない範囲で立方晶が混在していても構わない。
また、このセラミック焼結体がより一層充分な高強度及び高靭性を発揮するようにするには、セラミックス焼結体におけるZr及びTiの量比[Zr/(Zr+Ti)]が0.05〜0.30であり、好ましくは0.05〜0.2であることが望ましい。前記Zr及びTiの量比が0.05よりも小さいときには、セラミック焼結体における前記ZrOの含有量が相対的に少なく成りすぎて高い靭性のセラミック焼結体とならないことがあり、前記Zr及びTiの量比が0.30よりも多いと、セラミック焼結体におけるZrを固溶させたTiの炭窒化物の含有量が少なく成りすぎて強度の大きなセラミック焼結体とならないことがある。Zr及びTiの量比は、透過型電子顕微鏡(以下において、「TEM」と称することがある。)により観察されるTiZrCN相のエネルギー分散分析(以下において、EDSと称することがある。)により容易に決定することができる。
セラミック焼結体における前記Zrを固溶させたTiの炭窒化物は、結晶格子中におけるTiがZrと一部置き換えられた構造と考えられ、また、結晶格子中における炭素が窒素と一部置き換えられた構造であると考えられる。前記炭窒化物においては炭素及び窒素の含有比率については特に制限なくこの発明の目的を達成することができるものの、炭窒化物における炭素と窒素との好ましい質量比[C/(C+N)]は0.10〜0.50であり、更に好ましい前記質量比は0.2〜0.45である。前記質量比が0.10未満であると、換言すると炭素原子の含有量が小さいと、このセラミックス焼結体を製造する際に、原料として共存するアルミナが異常粒成長してセラミックス焼結体の硬度及び強度が向上しないことがあり、前記質量比が0.50を超えると、ZrOが満足に形成されることがなくて靭性の向上しないセラミックス焼結体が得られることがある。
この発明に係るセラミックス焼結体における、Zrを固溶させたTiの炭窒化物中にZrOが生成しているという特異な組織は、後述するこのセラミックス焼結体の製造方法における原料としてのAl元素の存在に大きく依存するものと推定されるのであり、したがって、この発明に係るセラミック焼結体においてはその組織におけるAl元素の好適な含有量が存在する。すなわち、この発明におけるセラミックス焼結体におけるAl元素の含有量は、10〜50質量%、特に20〜45質量%であるのが、好ましい。Al元素の含有量が10質量%よりも少ない場合には、ZrOの含有量が少なくなって高靭性を有するセラミックス焼結体とならない場合があり、Al元素の含有量が50質量%よりも多すぎると高強度のセラミックス焼結体にならない場合がある。Al元素の含有量が前記範囲内にあると、焼結時におけるAl粒子の成長を抑制して均一な粒子とし、したがって粗大粒子やマイクロポア等の材料欠陥を形成させることなく微細で均一なセラミックス組織とすることができる。なお、セラミックス焼結体に含まれるAl元素の含有量は、セラミックス焼結体を形成するために使用されるAlの配合量と実質的に同じである。


セラミックス焼結体における微細で均一なセラミックス組織においては、Al粒子の大きさにつき好適な範囲がある。通常、このセラミックス焼結体におけるAl粒子の平均粒径は大きくとも2μmであり、特に0.5〜1.5μmが好ましい。Al粒子の平均粒径が2μmを超えると、セラミックス焼結体の組織に材料欠陥を生じることがある。
かくしてこの発明に係るセラミックス焼結体は、高強度及び高靭性である。このセラミックス焼結体を切削インサートに使用する場合には、このセラミックス焼結体自体の硬度は、ビッカース硬度で、通常、少なくとも18GPaであり、高ければ高いほどよい。硬度が前記値を有するセラミックス焼結体は、特に焼き入れされた硬度の大きな鋼材料を切削するのに好適な、耐摩耗性の良好な切削インサートとして利用することができ、したがってこのセラミックス焼結体を利用した切削工具とすることができる。
この発明に係るセラミックス焼結体は、以下のようにして製造することができる。
セラミックス焼結体を製造する原料粉末としては、窒化チタン、炭化チタン、炭化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び焼結助剤を挙げることができる。これら原料粉末の平均粒径としては、大きくても2μmであり、特に0.1〜1.0μmであることが好ましい。原料粉末の平均粒径が2μmを超えると、本発明の目的を達成することができず、たとえば強度低下といった不都合が生じる。
前記焼結助剤としては、セラミックス焼結体の焼結に使用される一般的な焼結助剤を挙げることができ、例えば酸化マグネシウム、及び酸化カルシウム等の第2族Aに属するアルカリ土類金属の酸化物、並びに希土類元素の酸化物等を具体例として挙げることができる。この発明における焼結助剤として、これらの中でも希土類元素の酸化物が好ましく、特にランタノイド元素の酸化物が好ましく、さらには、Y、及びDy等が好ましい。
この発明に係るセラミックス焼結体の製造においては、前記原料粉末を所定の割合で混合することが望ましい。前記各原料粉末の配合量範囲として、窒化チタン、炭化チタン、炭化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び焼結助剤の合計量に対して、窒化チタンは10〜40質量部、好ましくは15〜35質量部、炭化チタンは5〜40質量部、好ましくは10〜30質量部、炭化ジルコニウムは5〜40質量部、好ましくは5〜30質量部、及び酸化アルミニウムは30〜70質量部、好ましくは40〜60質量部の範囲から選ぶことができる。
好適な原料粉末の配合比は、原則的には、この発明に係るセラミックス焼結体における元素比になるように決定される。原料粉末を焼結してセラミックス焼結体を製造する場合、原料粉末中の元素比とセラミックス焼結体中の元素比とが焼結にもかかわらず殆ど変わらないので、好適な原料粉末の配合比として、Zr及びTiの量比[Zr/(Zr+Ti)]が0.05〜0.30であり、好ましくは0.05〜0.2であり、かつ炭素と窒素との質量比[C/(C+N)]が0.10〜0.50であり、好ましくは0.2〜0.5であるように、適宜に決定される。
この発明のセラミックス焼結体の製造においては、まず、前記原料粉末を配合し、この配合物を成形して成形体を得る。成形方法としては、例えば、加圧成形法、射出成形法、押出成形法などを挙げることができ、この中でも、加圧成形法が好ましい。次いで、この成形体を0.1〜1MPa下のHe、Ne、Arなどの不活性ガス中で1700〜1800℃に、0.5〜5時間、加熱処理し(この加熱処理を「一次焼結処理」と称することがある。)、さらに100〜150MPaの前記不活性ガス中で1400〜1600℃に、通常は0.5〜3時間、加熱処理することにより(この加熱処理を「二次焼結処理」と称することがある。)製造することができる。
この発明において注目されるべきことは、この発明に係るセラミックス焼結体が前記一次焼結処理と前記二次焼結処理とからなる二段焼結により好適に製造されることができることである。前記一次焼結処理をすると、一次焼結体には酸化ジルコニウム(ZrO)が形成されていず、又は形成されているにしてもわずかであり、Zrを固溶させたTiの炭窒化物相が形成される。そして前記二次焼結をすると、焼結助剤及び酸化アルミニウム中の酸素が、チタンとジルコニウムとの炭窒化物相中のジルコニウムと反応することにより、正方晶及び/又は立方晶の酸化ジルコニウムが形成されると推察される。この発明に係るセラミックス焼結体においては、Zrを固溶させたTiの炭窒化物相は、事実上は、複合化したAl相との界面に薄い酸化物相として形成されているものと推測される。
(2)この発明の切削インサートは、前記(1)のセラミックス焼結体により形成されて成る。
この発明の切削インサートの形状に制限はないが、例えば、図1に示す略直方体形状である切削インサート1を挙げることができる。この切削インサート1が、前記(1)のセラミックス焼結体により形成されていて、逃げ面2とすくい面3とを有している。切削インサート1は、前記(1)のセラミックス焼結体を研磨加工して作製する。
(3)また、この発明の切削工具は、前記(2)の切削インサートを備えて成る。
この発明の切削工具の形状にも制限はないが、例えば、図2に示す切削工具4を挙げることができる。この切削工具4は、前記切削インサート1を備えると共に、この切削インサート1を支持するホルダー5とを備えて成っている。ホルダー5は、切削インサート1を支持できる構造を有していればよく、その構造に特に制限はない。ホルダー5は、通常、合金鋼等から形成されている。
この発明の切削インサートは、高い硬度を維持しつつ高い強度と優れた靭性とを有するセラミックス焼結体から形成されていることから、この切削インサート備えて成る切削工具は、耐磨耗性および耐衝撃性に富み、その性能が長期間に亘って発揮される。
以下、実施例を挙げてこの発明をさらに具体的に説明するが、これら実施例によって、この発明はなんら限定されることはない。
(実施例1〜11および比較例1〜4)
平均粒径0.5μmのAl、平均粒径1.0μmのTiC、平均粒径1.0μmのTiN、平均粒径1.0μmのZrCおよび表1に示す焼結助剤を表1に示す組成となるよう、ボールミルにより混合した。得られた混合物を金型プレス成形して、焼結後に研磨して国際標準化機構(ISO)に準拠するISO1832に示すスローアウェイチップの形状をした成形体を製造した。次いで、この成形体を0.1MPaのAr雰囲気中、1800℃で1時間、熱処理し、さらに、100MPaのAr雰囲気中、1500℃で1時間、HIP処理して、セラミックス焼結体を得た。
Figure 0004383225
表1中の項目は、以下のとおりである。
正方晶ZrO相のピーク強度比:(β/α+β)
Zr/Zr+Ti:セラミックス焼結体中の質量比
C/C+N:炭窒化物相中の質量比
Al:セラミックス焼結体中の質量%
焼結助剤:セラミックス焼結体中の質量%
なお、(β/α+β)は、X線回折装置による測定から算出した。また、ZrおよびTiの量は、蛍光X線分析装置により、Cの量は、軽元素分析装置により、Nの量は、軽元素分析装置により測定した。
実施例1〜11および比較例1〜4により得られたセラミックス焼結体について、性能評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0004383225
評価方法は、以下のとおりである。
〔Al相を形成するAl粒子の粒径〕
セラミックス焼結体を鏡面研磨し、サーマルエッチングを行った後に、走査型電子顕微鏡観察を行い、画像解析ソフト(三谷商事社製WinROOF)により算出した。
〔ビッカース硬度〕
JIS Z 2244により測定した。
〔曲げ強度〕
JIS R 1601に定められた3点曲げにより測定した。
〔破壊靭性値〕
JIS R 1607に定められたIF法により、荷重9.8Nで測定した。
表2に示す結果から、(β/α+β)が0.05〜0.30にあることにより、得られたセラミックス焼結体は、高いビッカース硬度を維持している上に、高い曲げ強度と優れた破壊靭性値とを有していることが分る。
(実施例12〜22および比較例5〜8)
実施例1〜11および比較例1〜4により得られたセラミックス焼結体を用い、図1に示す切削インサート(大きさ:ISO1832に準拠する。)を作製し、この切削インサートを備えた図2に示す切削工具(ホルダーの材料:合金鋼、ホルダーの大きさ:ISO5610に準拠する。)を作製した。
実施例12〜22および比較例5〜8により作製された切削工具について、その切削性能評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0004383225
切削性能(切削距離m)は、切削インサートが欠損するまでの切削距離である。
なお、切削性能を評価するための切削試験の条件は、以下のとおりとした。
速度:250m/min、f=0.1mm/rev、d=0.2mm、DRY
被切削材:焼き入れ鋼(SCM420/HRC60)
チップ形状:SNGN120408
刃先処理:0.15mm×25°
表3に示す結果から、実施例1〜11により得られたセラミックス焼結体を用いて作製された切削インサートを備えた切削工具は、前記切削試験における切削距離がきわめて長く、耐磨耗性および耐衝撃性に富んだ切削工具であることが分る。
図1は、この発明の切削インサートの一例を示す概略図である。 図2は、この発明の切削工具の一例を示す概略図である。
符号の説明
1 切削インサート
2 逃げ面
3 すくい面
4 切削工具
5 ホルダー



Claims (9)

  1. Zrを固溶させたTiの炭窒化物、AlおよびZrOを含むセラミックス焼結体であって、
    Zrを固溶させたTiの炭窒化物相中にZrO が存在する相構成を有し、
    X線回折法により測定された、前記Alの(113)面のピーク強度をαとし、前記ZrOにおける正方晶ZrOの(111)面のピーク強度をβとしたとき、[β/(α+β)]が0.05〜0.70であり、
    ZrとTiとは前記Zrを固溶させたTiの炭窒化物中の質量比[Zr/(Zr+Ti)]が0.05〜0.30であり、
    前記Zrを固溶させたTiの炭窒化物はそのCの量が、質量比[C/(C+N)]で0.10〜0.5であることを特徴とするセラミックス焼結体。
  2. 10〜50質量%のAl元素を含む請求項1に記載のセラミックス焼結体。
  3. 前記Alの平均粒径が、大きくとも2.0μmである請求項1または2に記載のセラミックス焼結体。
  4. 室温におけるビッカース硬度が、小さくとも18GPaである請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体。
  5. 原料粉末として炭化ジルコニウムを使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体。
  6. 原料を不活性ガス中で1700〜1800℃で1〜5時間加熱処理する一次焼結処理と、100〜150MPaの不活性ガス中で1500〜1600℃で0.5〜1時間加熱処理する二次焼結処理とにより形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体により形成されて成ることを特徴とする切削インサート。
  8. ホルダーに請求項7に記載の切削インサートを備えて成ることを特徴とする切削工具。
  9. バインダーを使用することなく、窒化チタン、炭化チタン、炭化ジルコニウム、酸化アルミニウム、及び焼結助剤を配合してなる成形体を不活性ガス中で1700〜1800℃で加熱処理する一次焼結処理と、100〜150MPaの不活性ガス中で1400〜1600℃で加熱処理する二次焼結処理とにより形成され、
    Zrを固溶させたTiの炭窒化物、AlおよびZrOを含み、X線回折法により測定された、前記Alの(113)面のピーク強度をαとし、前記ZrOにおける正方晶ZrOの(111)面のピーク強度をβとしたとき、[β/(α+β)]が0.05〜0.70であることを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法。
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