JP4383042B2 - セラミックス焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、温度変化に伴う寸法変化や形状変化を嫌う、半導体製造装置、精密制御機械、光学機器、触媒担体等に採用できるセラミックス焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、低熱膨張セラミックス焼結体として、石英ガラス、β−スポジューメンやβークリプタイ等のリチウムアルミノシリケート(LAS)、コーディエライト、チタン酸アルミニウムなどが知られている。
【0003】
これらの低熱膨張セラミックス焼結体は、0.1ppm/K台又はそれ以下の熱膨張係数を有しているので、熱による変形が殆ど無く、高い寸法精度が得られる。
また、熱による寸法変化や形状変化を抑えるためには、熱変形を抑制するとともに、剛性が高くする必要があり、このため、組成や構成要件を工夫することにより、熱膨張係数が低く、ヤング率及び比剛性に優れた各種のセラミックス焼結体が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−219572号公報 (第2頁)
【特許文献2】
特開平11−100275号公報 (第2頁)
【特許文献3】
特許第3090914号公報 (第2頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの低熱膨張セラミックス焼結体は、絶縁性であるために、例えば半導体製造装置の様な精密部品に使用した場合、静電気によりゴミが付着して、製造される製品に必要な精度が得られないことがある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するものであり、その目的は、導電性を有するとともに低熱膨張性を有し、しかも剛性に優れたセラミックス焼結体及びその製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
(1)請求項1の発明(セラミックス焼結体)は、コーディエライトを主成分とし、La、Ce、Pr、Ndの希土類元素から選ばれる1種以上の希土類元素の酸化物と、Tiの酸化物とを含有するセラミックス焼結体であって、前記希土類元素と前記Tiとの酸化物換算での合計量が、3.5〜7.5重量%であり、体積固有抵抗が1×10 5 Ω・m〜1×10 12 Ω・mの範囲の導電性を有するとともに、20〜25℃における熱膨張係数の絶対値が、0.15ppm/K以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明では、熱膨張係数の低いコーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)を主成分としているので、セラミックス焼結体全体の熱膨張係数が極めて低く、温度変化に伴う寸法変化や形状変化が少ない。つまり、本発明のセラミックス焼結体は、優れた低熱膨張セラミックス焼結体である。尚、コーディエライトの含有量は、92.5重量%以上が好ましい。
【0009】
また、本発明では、La、Ce、Pr、Ndの希土類元素から選ばれる1種以上の希土類元素の酸化物とTiの酸化物とを同時に含有することにより、セラミックス焼結体全体として導電性を有している。このため、静電気が帯電しにくいので、ゴミ等が付着しにくい。
つまり、本発明では、(導電性を有する)前記希土類元素及びTiは、酸化物換算で3.5重量%以上であるので、体積固有抵抗が1×10 5 Ω・m〜1×10 12 Ω・mの範囲の十分な導電性を有している。よって、例えば静電チャック等にゴミが付着することを抑制できる。
更に、(コーディエライトと比べて熱膨張係数の高い)前記希土類元素及びTiは、酸化物換算で7.5重量%以下であるので、セラミックス焼結体の熱膨張係数が低く、温度変化に伴う寸法変化や形状変化が少ない。詳しくは、本発明では、20〜25℃における熱膨張係数(絶対値)が、0.15ppm/K以下と極めて低いので、温度変化に伴う寸法変化や形状変化が非常に少ないという利点がある。
しかも、本発明では、上述したセラミックス焼結体を構成するための材料を焼成することにより、高い密度とすることができ、高比剛性(=ヤング率/密度)を併せ持つセラミックス焼成体を得ることができる。
【0010】
従って、上述したセラミックス焼結体を用いることにより、温度変化に伴う寸法変化や形状変化が少なく、導電性によりゴミの付着が少なく、且つ高い剛性を有するセラミックス部品、例えば半導体製造装置、精密制御機械、光学機器、触媒担体等に好適に用いることができるセラミック部品を得ることができる。
尚、Tiの酸化物換算とは、TiO 2 (酸化物)に換算することを意味する(以下同様)。また、希土類元素(RE)の酸化物換算とは、希土類元素酸化物RE 2 O 3 (ただしCeはCeO 2 、PrはPr 6 O 11 )に換算することを意味する(以下同様)。
【0011】
(2)請求項2の発明では、前記希土類元素を、酸化物換算で1〜3.5重量%含有することを特徴とする。
本発明は、希土類元素の好ましい範囲を例示したものである。
本発明では、(導電性を有する)前記希土類元素は、酸化物換算で1重量%以上であるので、ゴミの付着を抑制できる程度に十分な導電性を有している。また、(コーディエライトと比べて熱膨張係数の高い)前記希土類元素は、酸化物換算で3.5重量%以下であるので、セラミックス焼結体の熱膨張係数が低く、温度変化に伴う寸法変化や形状変化が少ない。
【0012】
(3)請求項3の発明では、前記Tiを、酸化物換算で1〜4重量%含有することを特徴とする。
【0013】
本発明は、Tiの好ましい範囲を例示したものである。
本発明では、(導電性を有する)Tiは、酸化物換算で1重量%以上であるので、ゴミの付着を抑制できる程度に十分な導電性を有している。また、(コーディエライトと比べて熱膨張係数の高い)Tiは、酸化物換算で4重量%以下であるので、セラミックス焼結体の熱膨張係数が低く、温度変化に伴う寸法変化や形状変化が少ない。
【0016】
(4)請求項4の発明は、前記希土類元素(RE)と前記Tiとのモル比(即ちREのモル数/Tiのモル数)が、0.2〜1.2の範囲であることを特徴とする。
本発明は、希土類元素(RE)とTiとのモル比(REのモル数/Tiのモル数:以下単にRE/Tiと記す)の好ましい範囲を例示したものである。
【0017】
前記モル比(RE/Ti)が0.2〜1.2の範囲を外れると導電性が低下するので、この範囲内であれば十分な導電性を有し好適である。
(5)請求項5の発明では、ムライトの含有量が、4体積%以下であることを特徴とする。
【0018】
ムライトの熱膨張係数はコーディエライトに比べると大きいので、セラミックス焼結体の低熱膨張性を確保するためには、ムライトの含有量が4体積%以下であることが好ましい。
ここで、ムライトの含有量の意味について説明する。
【0019】
一般に、コーディエライトは生成可能範囲が狭く、組成ずれにより、スピネルやムライト等の他の相が生成する。この様なコーディエライト以外の相は、多量に析出すると熱膨張係数の増加につながる。また、市販のコーディエライト粉末は、組成ずれがあり、コーディエライト単相ではない。しかも、ムライト等の他の結晶相の析出量も、組成によって異なってくる。これらのコーディエライト以外の析出相の量は、熱膨張係数に影響を与えるので、例えば0.1ppm/K以下の低い熱膨張係数を得るためには、MgO、Al2O3、SiO2をコーディエライト原料粉末に適宜添加し、コーディエライト以外の析出相の量を抑制する必要がある。
【0020】
特に、コーディエライトは、1470℃以上の高温で液相とムライトに分解することにより、不適切な焼成条件により、多量のムライト相が析出することとなる。よって、熱膨張係数を例えば0.1ppm/K以下に抑制するためには、ムライトの含有量を4体積%以下とすることが望ましい。
【0024】
(6)請求項6の発明では、密度が、2.5g/cm3以上であることを特徴とする。
本発明は、好ましい密度の範囲を例示したものである。
ここでは、密度が2.5g/cm 3 以上と高く緻密であるため、剛性が向上し(従ってヤング率が高く)、よって比剛性も向上する。
【0025】
(7)請求項7の発明は、比剛性が、52GPa/g/cm3以上であることを特徴とする。
本発明は、好ましい剛性の範囲を例示したものである。
ここでは、比剛性(ヤング率/密度)が52GPa/g/cm3以上と高いので、高い剛性を有し、この点からも、寸法変化や形状変化を抑制できるという効果がある。
【0026】
(8)請求項8の発明では、(セラミックス焼結体が)半導体製造装置用の部材であることを特徴とする。
本発明は、セラミックス焼結体の用途を例示したものである。
従って、本発明のセラミックス焼結体を、例えば半導体ウェハの製造に用いる半導体製造装置用の部材として採用することにより、ゴミの付着を防止するとともに熱による装置の変形を抑制することができるので、寸法精度に優れた半導体ウェハを得ることができる。
【0027】
(9)請求項9の発明では、(セラミックス焼結体が)真空チャック用の部材であることを特徴とする。
本発明は、セラミックス焼結体の用途を例示したものである。
従って、本発明のセラミックス焼結体を、例えば半導体ウェハの製造に用いられる真空チャック用の部材として採用することにより、ゴミの付着を防止するとともに熱による部材の変形を抑制できるので、寸法精度に優れた例えば半導体ウェハを得ることができる。
【0028】
(10)請求項10の発明では、(セラミックス焼結体が)静電チャック用の部材であることを特徴とする。
上述したセラミックス焼結体は、例えば半導体露光装置に用いられる静電チャックにも適用可能である。(例えばクーロン力を使って半導体ウェハを保持する場合など)
従って、本発明のセラミックス焼結体を、例えば半導体ウェハの製造に用いられる静電チャック用の部材として採用することにより、ゴミの付着を防止するとともに熱による部材の変形を抑制できるので、寸法精度に優れた例えば半導体ウェハを得ることができる。
【0029】
(11)請求項11の発明は、前記請求項1〜10のいずれかに記載のセラミックス焼結体の製造方法に関するものであり、本発明では、セラミックス焼結体の材料を、Ar又はN2の非酸化雰囲気中、若しくはCO又はH2を含む還元雰囲気中にて焼成することを特徴とする。
【0030】
本発明では、(例えばMgO、Al2O3、SiO2や、La、Ce、Pr、Ndの希土類元素や、Tiを含む)セラミックス焼結体の材料を、Ar又はN2の非酸化雰囲気中、若しくはCO又はH2を含む還元雰囲気中にて焼成することにより、導電性及び低熱膨張性を有するセラミックス焼結体が得られる。
【0031】
また、本発明では、例えば1気圧の雰囲気下で焼成することにより、ほぼ緻密な焼結体(相対密度96〜98%)を得ることが可能であり、更に、ホットプレス焼成又は熱間等方加熱(HIP)処理をすることにより、残留気孔の無い緻密な焼結体を得ることができる。
【0032】
更に、本発明では、前記セラミックス焼結体の材料として、上述した成分を含む原料粉末を用いることができる。例えば「Mg酸化物粉末、Al酸化物粉末、Si酸化物粉末、前記希土類酸化物粉末、及びTi酸化物粉末」、又は、「加熱により各酸化物となる化合物粉末(例えば各金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、及び硝酸塩等の粉末)」、或いは、「上記金属の複合酸化物粉末(コーディエライト、ムライト、アルミノシリケート等の粉末)」などを用いることができる。
【0033】
また、これらの粉末の平均粒径は、高い比剛性を得るためには、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.9μm以下、更に好ましくは1.8μm以下である。
尚、本発明では、前記焼成に際して、カーボン発熱体、カーボン鞘、カーボン粉末による埋め焼き等の焼成方法を採用できる。
【0034】
ここで、上述した発明における導電性発現のメカニズムに関して、その推察した内容について述べる。
非酸化雰囲気もしくは還元雰囲気中において、構成成分の一つであるTiO2が還元されTiO2−xとなることにより導電性が付与されると考えられる。また、希土類元素(例えば希土類酸化物)を含有しない場合、TiO2相はコーディエライト基材中に粒子状に分布するため、導電相であるTiO2−xが孤立しており、連続層を形成しない。このため、TiO2のみを添加する場合には導電性が発現しないと考えられる。
【0035】
また、TiO2を多量に添加する場合には、粒子状のTiO2でも連続相を形成して導電性が発現するが、この場合には、多量に添加するTiO2により熱膨張係数が大きくなる。これに対して、例えば希土類酸化物とTiO2を同時に添加した場合、TiO2を含む液相を生成し、これが粒界に薄くフィルム状に広がるため、熱膨張係数に影響を与えない程度の少量でも導電性を付与することが可能になると考えられる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のセラミックス焼結体及びその製造方法の実施の形態の例(実施例)について説明する。
(実施例)
a)まず、本実施例のセラミックス焼結体の構成について説明する。
【0037】
本実施例のセラミックス焼結体は、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)を主成分とし、La、Ce、Pr、Ndの希土類元素から選ばれる1種以上と、Tiとを含有している。
このうち、希土類元素を、酸化物換算で1〜3.5重量%、Tiを、酸化物換算で1〜4重量%含有するとともに、希土類元素とTiとを、その合計量で、酸化物換算で3.5〜7.5重量%含有している。
【0038】
更に、希土類元素とTiとのモル比(RE/Ti)は、0.2〜1.2の範囲であり、ムライト(3Al2O3・2SiO2)の含有量は、4体積%以下である。
特に、本実施例のセラミックス焼結体は、下記表1からも明らかな様に、その体積固有抵抗が、1×105Ω・m〜1×1012Ω・mの範囲であり、ゴミ等の付着防止のための十分な導電性を有している。
【0039】
更に、セラミックス焼結体は、20〜25℃における熱膨張係数の絶対値が、0.15ppm/K以下であり、熱による寸法や形状の変化が極めて少ない低熱膨張性を有している。
その上、セラミックス焼結体の密度は、2.5g/cm3以上で、その比剛性は、52GPa/g/cm3以上であり、高い剛性を有しているので、その点からも、寸法変化や形状変化が少ないという特徴がある。
【0040】
b)次に、本実施例のセラミックス焼結体の製造方法について説明する。
市販のコーディエライト粉末、希土類酸化物粉末(La2O3、CeO2、Pr6O11、又はNd2O3)、TiO2粉末、MgO粉末、Al2O3粉末、SiO2粉末を、焼成後の焼結体が下記表1に示す所定の比率となるように秤量した。
【0041】
この秤量した材料粉末を、高純度アルミナ球石(純度99.9%以上)を用いて、水(エタノールでもよい)を溶媒として湿式粉砕を行った。粉砕後の粉末の平均粒径は1.7μmであった。
その後、バインダーを添加し、湯煎乾燥(噴霧乾燥でもよい)を行った。次いで、所定の形状(具体的にはφ18mmのペレットの形状)に成形し、焼成した。
【0042】
このときの焼成は、すべての試料において、Ar(N2でもよい)雰囲気中、常圧で行い、焼成温度1300〜1400℃、保持時間は2時間として、本発明の範囲(具体的には請求項1〜11の全ての条件を満たす範囲)である実施例1〜19の各試料を得た。
【0043】
尚、上述した製造方法以外に、例えば焼成時に、CO又はH2の還元雰囲気を炉内に導入することもできる。また、成形体をカーボンで埋めて焼成を行い、COを発生させることにより強い還元雰囲気で焼成も行うことも可能である。
また、同様に、本実施例以外の構成を有する比較例1〜11の各試料も得た。
【0044】
下記表1に、各試料の焼結体組成(酸化物換算)、ムライト含有量、及び希土類元素(RE)とTiのモル比(RE/Ti)の各値を示す。また、下記表2に、体積固有抵抗、熱膨張係数、密度、ヤング率、及び比剛性の各値を示す。尚、表1におけるMgO、Al2O3、SiO2により、コーディエライトが形成されている。
【0045】
また、図1に実施例2の焼結体のX線回折チャートを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
c)次に、前記表1及び表2に示す物性等の評価方法について説明する。
<焼結体組成>
焼結体組成は、焼結体の原料組成(仕込み組成)と同様である。尚、仕込み組成と焼結体組成との間にずれがないことは、蛍光X線分析により確認した。
【0049】
<ムライト含有量>
ムライト含有量は、X線回折法により、ムライト結晶(111)面のピーク強度値とコーディエライト結晶(212)面のピーク強度値の比率から、検量線法により求めた。検量線は、コーディエライトにムライトを0、5、10体積%添加した焼結体を作製し、これら焼結体をX線回折測定し、ムライト結晶(110)面のピーク強度とコーディエライト結晶(110)面とのピーク強度の比から求めた。
【0050】
尚、コーディエライト含有量も、同様なX線回折法により求めることができる。また、ピーク強度値は、X線回折チャートからバックグラウンドを除去した上で算出した。
<RE/Tiのモル比>
REとTiのモル比は、表1の希土類元素とTiとの組成から求めた。
【0051】
<体積固有抵抗>
体積固有抵抗は、JIS C 2141で規定する3端子法により求めた。
<熱膨張係数>
熱膨張係数は、JIS R 1618で規定する熱機械分析法、及び、JIS R 3251に規定するレーザー干渉法を用いて評価を行い、20〜25℃の平均熱膨張係数として算出した。
【0052】
<焼結体密度>
焼結体密度は、JIS R 1634で規定するアルキメデス法により評価を行い、数値はJIS Z 8401によって小数点以下2桁にまるめた。
<ヤング率>
ヤング率は、JIS R 1602で規定する超音波パルス法により室温で測定を行った。
【0053】
<比剛性>
比剛性は、ヤング率の値を密度で除して算出した。
d)次に、前記実施例の効果について説明する。
表1、表2、及び図1に示すように、本発明の範囲の実施例1〜19のセラミックス焼結体は、コーディエライトを主成分とするとともに、希土類酸化物が1.81〜3.29重量%、TiO2が1.23〜3.50重量%、希土類酸化物とTiO2との合計量が3.53〜5.61重量%、ムライト含有量が2.8体積%以下、RE/Tiモル比が0.28〜1.02である。
【0054】
従って、体積固有抵抗が1×1012Ω・m以下と十分な導電性を有しており、また、熱膨張係数が0.15ppm/K以下と十分な低熱膨張性を有していることが分かる。更に、密度が2.52g/cm3以上、ヤング率が133GPa以上、比剛性が52.5GPa/g/cm3以上であり、高い剛性を有していることが分かる。
【0055】
これに対して、比較例1では、希土類酸化物が含まれていないので、体積固有抵抗が高く好ましくない。比較例2、5、10、11では、希土類酸化物及びTiO2の合計量が少なく、また、比較例3では、TiO2の含有量が少ないので、体積固有抵抗が高く好ましくない。比較例4では、TiO2が含まれていないので、体積固有抵抗が高く好ましくない。比較例6〜8では、希土類酸化物の含有量が多いので、熱膨張係数が高く且つ比剛性が低く好ましくない。比較例9では、希土類酸化物の含有量が少ないので、体積固有抵抗が高く好ましくない。
【0056】
この様に、本実施例のセラミックス焼結体は、熱膨張係数の低いコーディエライトを主成分としているので、セラミックス焼結体全体の熱膨張係数が極めて低く、温度変化に伴う寸法変化や形状変化が少ない。また、La、Ce、Pr、Ndの希土類元素から選ばれる1種以上の希土類元素の酸化物とTiの酸化物とを含んでいるので、セラミックス焼結体全体として導電性を有している。しかも、上述したセラミックス焼結体を構成するための材料を焼成することにより、高い密度とすることができ、高比剛性を併せ持つセラミックス焼成体を得ることができる。
【0057】
従って、上述したセラミックス焼結体を用いることにより、温度変化に伴う寸法変化や形状変化が少なく、導電性を有することでゴミの付着が少なく、且つ高い剛性を有するセラミックス部品、例えば半導体製造装置、精密制御機械、光学機器、触媒担体等に好適に用いることができるセラミック部品を得ることができるという顕著な効果を奏する。
【0058】
e)次に、上述したセラミックス焼結体からなるセラミック部材の用途について説明する。
(1)まず、前記実施例の構成を有するセラミックス焼結体を用いた真空チャックと、その真空チャックを用いた半導体製造装置を示す。
【0059】
図2に示す様に、真空チャック1は、減圧による吸引力によって、半導体ウェハ3を吸着して保持する円盤状の吸着プレートである。
この真空チャック1は、円盤状の基板5と、基板5を板厚方向に貫く(減圧のための)吸着孔7と、基板5の吸着面K側(半導体ウェハ3側)に突出する多数の突起部9と、突起部9の周囲を環状に囲む様に突出するシール部11とを備えている。
【0060】
上述した真空チャック1は、図示しないが、半導体製造装置の一部を構成する周知のポリッシングマシンに装着して用いられる。このポリッシングマシンは、半導体ウェハ3に対して、化学的機械的研磨(CMP)を行うCMP装置であり、主として、回転可能に配置されたプラテンと、その上面側に配置された真空吸引装置である研磨ヘッドとから構成されている。
【0061】
そして、ポリッシングマシンでは、研磨ヘッドに真空チャック1を取り付け、真空ポンプを作動させて、研磨ヘッド内の減圧空間の気圧を下げ、これにより、真空チャック1の吸着孔7の内外に気圧差を発生させて、真空チャック1の吸着面Kに半導体ウェハ3を吸着させる。
【0062】
次に、プラテンの研磨パッドと真空チャック1との間に半導体ウェハ3を配置した状態で、研磨パッドの表面にCMP用のスラリーを供給し、プラテン及び研磨ヘッドを回転させて、半導体ウェハ3の表面の研磨を行う。
この様に、前記真空チャック1は、上述した性質を有するセラミックス焼結体からなり、導電性及び低熱膨張性並びに高い剛性を有しているので、ゴミが真空チャック1や半導体ウェハ3などに付着し難く、しかも温度変化に対する寸法変化や形状変化が少ないので、寸法精度の高い半導体ウェハ3を製造することができる。
【0063】
(2)次に、他の適用例として、前記実施例の構成を有するセラミックス焼結体を用いた静電チャックについて説明する。
図3に示す様に、静電チャック21は、上述したセラミックス焼結体からなる円盤状の部材を基体23としており、静電チャック21の一方の面(同図下方の裏面)には、接合層25を介して金属製の円盤状のベース板27が接合されている。尚、静電チャック21にベース板27が接合されたものを静電チャック装置29と称する。
【0064】
前記静電チャック21の内部(従って基体23の内部)には、一対の内部電極31、33が埋設されており、静電チャック21の他方の面(同図上方の表面)は、例えば半導体ウェハ35を吸着固定する吸着面(チャック面)37とされている。
【0065】
尚、静電チャック21及びベース板27を図1の上下方向に貫いて、貫通孔(図示せず)を設け、この貫通孔を介して、チャック面37側に冷却用のHeガスを供給してもよい。
上述した構成の静電チャック21を使用する場合には、両内部電極31、33間に、例えば±3000V程度の直流電圧を印加し、これにより、半導体ウェハ35を吸着する静電引力(吸着力)を発生させ、この吸着力を用いて半導体ウェハ35を吸着して固定する。
【0066】
尚、直流電圧ではなく、1000Hz以下(例えば50Hz)の1000Vの交流電圧を印加することも可能である。
この様に、前記静電チャック21は、上述した性質を有するセラミックス焼結体からなるので、ゴミが真空チャック21や半導体ウェハ35などに付着し難く、しかも温度変化に対する寸法変化や形状変化が少ないので、寸法精度の高い半導体ウェハ35を製造することができる。
【0067】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2のセラミックス焼結体のX線回折のチャートである。
【図2】 半導体ウェハとセラミックス焼結体からなる真空チャックとを一部破断して示す斜視図である。
【図3】 静電チャックとベース板とからなる静電チャック装置を一部破断して示す斜視図である。
【符号の説明】
1…真空チャック(吸着プレート)
3、35…半導体ウェハ
5…基板
7…吸着孔
9…突起部
11…シール部
21…静電チャック
27…ベース板
31、33…内部電極
29…静電チャック装置
Claims (11)
- コーディエライトを主成分とし、La、Ce、Pr、Ndの希土類元素から選ばれる1種以上の希土類元素の酸化物と、Tiの酸化物とを含有するセラミックス焼結体であって、
前記希土類元素と前記Tiとの酸化物換算での合計量が、3.5〜7.5重量%であり、体積固有抵抗が1×10 5 Ω・m〜1×10 12 Ω・mの範囲の導電性を有するとともに、20〜25℃における熱膨張係数の絶対値が、0.15ppm/K以下であることを特徴とするセラミックス焼結体。 - 前記希土類元素を、酸化物換算で1〜3.5重量%含有することを特徴とする前記請求項1に記載のセラミックス焼結体。
- 前記Tiを、酸化物換算で1〜4重量%含有することを特徴とする前記請求項1又は2に記載のセラミックス焼結体。
- 前記希土類元素(RE)と前記Tiとのモル比(即ちREのモル数/Tiのモル数)が、0.2〜1.2の範囲であることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス焼結体。
- ムライトの含有量が、4体積%以下であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス焼結体。
- 密度が、2.5g/cm3以上であることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックス焼結体。
- 比剛性が、52GPa/g/cm3以上であることを特徴とする前記請
求項1〜6のいずれかに記載のセラミックス焼結体。 - 半導体製造装置用の部材であることを特徴とする前記請求項1〜7のいずれかに記載のセラミックス焼結体。
- 真空チャック用の部材であることを特徴とする前記請求項1〜8のいずれかに記載のセラミックス焼結体。
- 静電チャック用の部材であることを特徴とする前記請求項1〜9のいずれかに記載のセラミックス焼結体。
- 前記請求項1〜10のいずれかに記載のセラミックス焼結体の製造方法において、
前記セラミックス焼結体の材料を、Ar又はN2の非酸化雰囲気中、若しくはCO又はH2を含む還元雰囲気中にて焼成することを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法。
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