JP4381996B2 - 建具 - Google Patents

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Description

本発明は、建具に関し、詳しくは、少なくとも一方が開閉可能に設けられた室内外一対の障子を備え、当該室内側障子の内召合せ框と室外側障子の外召合せ框とが重なって閉じた状態において錠装置によって施錠可能な建具に関する。
従来、引違い窓や片引き窓等の建具において、召合せ框に設けたクレセント錠および錠受けからなる錠装置が一般的である。このクレセント錠は、通常、室内側障子の内召合せ框に回動可能に設けられた鎌錠が、室外側障子の外召合せ框に設けられた錠受けに係合して施錠できるようになっている。このような錠装置において、錠受けが係合可能な位置にない状態でクレセント錠の施錠操作をしてしまう、いわゆる空掛けを防止する機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたクレセント錠では、錠受けが係合可能位置にあることを感知する感知部が設けられ、この感知部により空掛けが防止できるようになっている。すなわち、錠受けが係合可能位置になく感知部が錠受けに当接しない場合には、クレセント錠の回動が規制されて施錠操作が継続できず、錠受けが係合可能位置にあって感知部が錠受けに当接した場合には、感知部が移動されて施錠操作が継続できるようになっている。
特開平9−158585号公報
しかしながら、従来の錠装置では、感知部などの可動部品が必要になるためにクレセント錠の構造が複雑になってしまったり、空掛け時に回動が規制された状態で無理にクレセント錠を回動させようとして部品が破損してしまったり、クレセント錠を回動させるまで空掛け状態であることが判別できなかったりするなどの問題があった。
さらに、従来の錠装置では、クレセント錠が内召合せ框の見付け方向外側面(見込み面)に取り付けられ、錠受けが外召合せ框の見付け方向内側に取り付けられているため、障子のガラスパネルを通して室外から視認されやすくなっている。このため、施錠または解錠のいずれの状態であるかが室外から一目で分かってしまうとともに、施錠状態であっても錠装置の位置が特定され、ガラス破り等による不法行為を抑止しにくくなってしまうことから、防犯性の向上が期待できなかった。
本発明の目的は、簡単な構造で確実に空掛けが防止できるとともに、防犯性を向上させることができる建具を提供することにある。
本発明の建具は、少なくとも一方が開閉可能に設けられた室内外一対の障子を備え、当該室内側障子の内召合せ框と室外側障子の外召合せ框とが重なって閉じた状態において錠装置によって施錠可能な建具であって、前記外召合せ框は、前記内召合せ框よりも見付け寸法が大きく、かつ前記一対の障子を閉じた状態で室内空間に露出する室内露出面部を有して形成され、前記錠装置は、前記室内露出面部に設けられて室内側から操作可能な操作部と、前記内召合せ框を係止する施錠位置と係止しない解錠位置との間を移動可能な係止部材を有した複数の施錠部と、前記操作部の施錠操作を前記複数の施錠部における各々の係止部材に伝達する伝達部と、を備え構成され、前記各々の係止部材は、前記伝達部を介して伝達された前記操作部の施錠操作により施錠位置に移動されるとともに、当該各々の係止部材ごとの解錠操作により解錠位置に移動されることを特徴とする。
ここで、本発明の建具としては、引違い窓や片引き窓、上げ下げ窓等の引違い形式のサッシ窓が好適である。
以上の建具によれば、障子を閉じた状態において室内側に露出する室内露出面部に錠装置の操作部を設けたので、障子を閉じていない状態においては、室内露出面部が室内側障子(内召合せ框)に重なって、操作部が操作不能になる。従って、障子を閉じなければ操作部を操作することができないため、空掛けを防止することができ、空掛けを感知する感知部などの可動部品を設けなくても、空掛け状態であることが判別できるとともに、錠装置の構造を簡単にすることができる。そして、空掛け状態で無理に操作部を操作してしまうこともないため、錠装置の破損を防止することができる。
さらに、室内露出面部に操作部が設けられているので、室外から操作部を視認することができず、施錠または解錠のいずれの状態であるかが分からないとともに、操作部の位置が特定できないためガラス破り等を抑止することができ、防犯性を向上させることができる。
さらに、伝達部によって操作部の施錠操作を複数の施錠部における各々の係止部材に伝達することで、一度の施錠操作で複数の施錠部を容易に施錠することができるとともに、複数の施錠部によって防犯性を一層向上させることができる。
一方、複数の施錠部において各々の係止部を解錠操作しなければ、障子が解錠されないので、万一、操作部近傍のガラスパネルが破られたとしても、操作部の操作によっては障子が解錠されず、かつ複数の施錠部全ての近傍のガラスパネルが破られなければ、障子が解錠できない。これにより、ガラス破りに長時間(例えば、5分以上)を要することから、不法行為を行う者が途中で諦める可能性が高まり、例えガラス破りにあったとしても、室内への浸入を未然に防止することができ、より一層防犯性を高めることができる。
この際、本発明の建具では、前記複数の施錠部は、それぞれ前記外召合せ框に固定されるとともに前記係止部材を回動自在に支持する施錠部本体と、この施錠部本体に対して前記係止部材を施錠位置または解錠位置に付勢する係止部材付勢手段と、前記施錠部本体に移動自在に支持されるとともに前記係止部材および前記伝達部に接続された接続部材とを有して構成され、前記伝達部を介して伝達された前記操作部の施錠操作により前記接続部材が移動され、この移動に伴って前記係止部材が施錠位置に回動されることが好ましい。
このような構成によれば、複数の施錠部が施錠部本体を有し、この施錠部本体に係止部材および接続部材を支持させたことで、複数の施錠部をユニット化することができ、外召合せ框への取付が容易にできる。さらに、係止部材付勢手段で係止部材を施錠位置または解錠位置に付勢することで、振動等により係止部材が不用意に移動してしまうことが防止でき、係止部材の施錠位置または解錠位置を維持して、施錠および解錠を確実に実施することができる。
この際、本発明の建具では、前記係止部材は、前記外召合せ框の室内露出面部から室内側に突出して前記内召合せ框の見込み面に当接することで一対の障子を施錠する施錠位置と、前記外召合せ框の室内露出面部と略フラットに前記施錠部本体内部に没入する解錠位置との間を回動自在に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、室内露出面部から室内側に突出した施錠位置と室内露出面部に没入した解錠位置との間を係止部材が回動するだけで、施解錠が実施できるので、従来のクレセント錠のように略180°回動させる必要がなく、施錠部の構造を簡単化できるとともに、操作部の操作距離や伝達部の移動距離を小さくして、これらの構造も簡単化することができる。さらに、室内露出面部から室内側に突出した係止部材が内召合せ框の見込み面に当接して障子が施錠されるので、内召合せ框に従来のような錠受けを設ける必要がなく、この点でも錠装置の構造を簡単化して部品点数を削減することができる。
さらに、本発明の建具では、前記伝達部は、前記外召合せ框に沿った長尺状の伝達部材と、この伝達部材を前記操作部の施錠操作方向と逆向きに付勢する伝達部材付勢手段とを有して構成され、前記伝達部材には、前記施錠部の接続部材を余裕を持って挿通可能な開口が長さ方向に沿って複数形成され、前記操作部の施錠操作に伴って前記伝達部材付勢手段の付勢力に抗して前記伝達部材が初期位置から移動されるとともに、前記開口の一方の端縁が前記接続部材を押圧して移動させ、前記操作部の施錠操作を中止すれば、前記伝達部材付勢手段の付勢力により前記伝達部材が初期位置に戻されることが好ましい。
このような構成によれば、長尺状の伝達部材を有して伝達部が構成されたことで、操作部と複数の施錠部とを互いに大きく離れた位置に設置することができ、さらに防犯性を向上させることができるとともに、操作しやすい位置に操作部を設けることで操作性の向上も図ることができる。さらに、伝達部材の長さ方向に沿って複数形成した開口で施錠部の接続部材を移動させるようにしたことで、複数の開口のうちの任意の開口位置に合わせて施錠部を設置することができ、設置の自由度が高められるとともに、召合せ框の長さ寸法に関わらず伝達部材を共通化することができる。
また、伝達部材付勢手段の付勢力により伝達部材が初期位置に戻されることで、この伝達部材に連結された操作部も初期位置に戻されるため、利用者が操作部を戻す必要がなく、操作性を向上させることができる。さらに、伝達部材の開口が接続部材を余裕を持って挿通可能な大きさに設定されているので、伝達部材が初期位置に戻される際に、接続部材や係止部材を解錠方向に移動させることなく、伝達部材および操作部のみを初期位置に戻して施錠部の施錠状態を維持させることができる。
また、本発明の建具では、前記操作部は、前記外召合せ框に固定される操作部本体と、この操作部本体に進退自在に支持されるとともに前記伝達部に連結された進退部材と、この進退部材に支持されて施錠操作される操作部材と、この操作部材を前記進退部材に対して施錠操作方向と逆向きに付勢する操作部材付勢手段とを有して構成され、前記操作部材付勢手段の付勢力は、施錠操作における所定の操作力よりも大きく設定されており、この所定の操作力を超える力で前記操作部材が施錠操作された場合に、前記操作部材付勢手段の付勢力に抗して当該操作部材が前記進退部材に対して移動されることが好ましい。
このような構成によれば、操作部が操作部本体を有し、この操作部本体に進退部材および操作部材を支持させたことで、操作部をユニット化することができ、外召合せ框への取付が容易にできる。さらに、施錠操作における所定の操作力を超える力で操作部材が施錠操作された場合に、操作部材が進退部材に対して移動される、つまり、何らかの原因で施錠部の係止部材の移動が規制された状態で無理矢理操作部材を操作してしまうと、伝達部や施錠部が破損する可能性があるが、このような大きな力で操作された場合には、操作部材付勢手段が変形することで、操作部材付勢手段の付勢力を超える無理な力が伝達部や施錠部に作用しないようにして、これらの破損を防止することができる。
この際、本発明の建具では、前記伝達部は、前記外召合せ框に沿った長尺状の伝達部材と、この伝達部材を前記操作部の施錠操作方向と逆向きに付勢する伝達部材付勢手段とを有して構成され、前記操作部材付勢手段の付勢力は、前記伝達部材付勢手段の付勢力よりも大きく設定されていることが好ましい。
このような構成によれば、通常の施錠操作においては、操作部材付勢手段よりも付勢力の小さい伝達部材付勢手段が変形することで、伝達部材に接続された施錠部の係止部材を施錠位置に移動させることができ、前述のように係止部材の移動が規制された状態で操作部材が大きな力で操作された場合には、操作部材付勢手段が変形することで伝達部や施錠部の破損を防止することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(A),(B)は、本発明の実施形態に係る建具である引違い窓1の障子2,3を示す室内側から見た斜視図である。図2(A),(B)は、引違い窓1の召合せ框に設けられた錠装置10を示す縦断面図である。図3および図4は、それぞれ錠装置10の施錠部を示す横断面図および分解斜視図である。図5は、錠装置10の操作部を示す横断面図である。図6(A)〜(C)は、錠装置10の動作を示す斜視図である。
図1〜図3において、引違い窓1は、窓枠(図1には、下枠1Aのみを示す)内部に開閉自在に支持された室内外一対の障子2,3を有して構成されている。障子2,3は、それぞれアルミ形材製の上框(不図示)、下框4、および左右の縦框5(戸先框および召合せ框であって、図1には、内召合せ框5Aおよび外召合せ框5Bのみを示す)を四周框組みした内部に、ガラスパネル6を嵌め込んで構成されている。そして、引違い窓1は、内召合せ框5Aおよび外召合せ框5Bが見込み方向に重なって閉じるようになっている。外召合せ框5Bは、内召合せ框5Aよりも大きな見付け寸法を有し、障子2,3を閉じた状態で内召合せ框5Aと重ならずに室内空間に露出する室内露出面部5Cを室内側側面に有して形成されている。
外召合せ框5Bの室内露出面部5Cには、障子2,3を施錠するための錠装置10が設けられている。
錠装置10は、室内側から操作可能な操作部20と、複数の施錠部30と、操作部20の施錠操作を複数の施錠部30に伝達する伝達部40とを有して構成されている。複数の施錠部30は、それぞれ外召合せ框5Bの室内露出面部5Cから室内側に突出して内召合せ框5Aの見込み面5Dに当接する施錠位置と、外召合せ框5Bの室内露出面部5Cに没入する解錠位置との間を回動自在に設けられた係止部材31を有して構成されている。すなわち、係止部材31が施錠位置に回動されて内召合せ框5Aを係止することで一対の障子2,3の開移動が規制された施錠状態(図1(B)および図2(B)に示す状態)となり、係止部材31が解錠位置に回動されて内召合せ框5Aを係止しないことで一対の障子2,3が開放可能な解錠状態(図1(A)および図2(A)に示す状態)となる。
複数の施錠部30は、それぞれ図4にも示すように、外召合せ框5Bに固定されるとともに係止部材31を回動自在に支持する施錠部本体としてのケース体32と、このケース体32に対して係止部材31を施錠位置または解錠位置に付勢する係止部材付勢手段としての板ばね33と、ケース体32に回動自在に支持されるとともに係止部材31および伝達部40に接続された接続部材としての回動ピン34とを有して構成されている。
係止部材31は、ケース体32および当該係止部材31を貫通する回動軸35によって軸支され、その下部がケース体32から室内側に向かって突没可能になっている。そして、係止部材31は、その室外側側面から突出して回動ピン34に押圧される被押圧部311と、室外側下端部から斜め下方に突出して板ばね33に付勢される被付勢部312とを有して形成されている。被付勢部312は、板ばね33に形成された2つの凹部331,332のいずれかに嵌まって移動が規制されるようになっており、これにより係止部材31は、施錠位置または解錠位置のいずれか一方に位置決めされるようになっている。
回動ピン34は、その一端がケース体32の一方の見込み方向側面にピン36で軸支され、他端がケース体32の他方の見込み方向側面に上下に長く形成された挿通孔321から突出されている。そして、回動ピン34の他端側が挿通孔321に沿って上下に移動可能になっており、この回動ピン34の下面に係止部材31の被押圧部311が当接されている。従って、回動ピン34の下方への回動に伴って被押圧部311が下方に押圧され、これにより係止部材31が施錠位置に向かって回動されるようになっている。
錠装置10の操作部20は、図5にも示すように、外召合せ框5Bに固定される操作部本体としての外ケース体21と、この外ケース体21内に進退自在(上下方向にスライド自在)に支持されるとともに伝達部40に連結された進退部材としての内ケース体22と、この内ケース体22に進退自在に支持されて施錠操作される操作部材としての操作レバー23と、この操作レバー23を内ケース体22に対して施錠操作方向と逆向き(上向き)に付勢する操作部材付勢手段としてのコイルばね24とを有して構成されている。
内ケース体22は、上方に開口した略箱状に形成されており、この開口から内部に挿入された操作レバー23が上下方向にスライド自在で、かつコイルばね24によって内ケース体22の底面に対して上方に付勢されている。また、内ケース体22の下端部には、見付け方向側方に向かって突出するとともに、外ケース体21に設けられた挿通孔(不図示)から突出して伝達部40に連結される連結ピン221が形成されている。
伝達部40は、外召合せ框5Bの内部に沿った長尺状の伝達部材41と、この伝達部材41を操作部の施錠操作方向と逆向き(上向き)に付勢する伝達部材付勢手段としてのコイルばね42とを有して構成されている。伝達部材41は、折り曲げ加工された板材からなり、外召合せ框5Bの内側面に形成された爪部に係止されることで、上下方向に進退自在に支持されている。この伝達部材41には、長さ方向に沿って略等間隔に角形の開口411が複数形成されている。これらの開口411は、施錠部30の回動ピン34の他端を余裕を持って挿通可能な大きさに形成されており、回動ピン34が上方に回動された状態で回動ピン34の上面が開口411の上端縁に当接し、回動ピン34が下方に回動された状態で回動ピン34と開口411の上下端縁とが当接しないようになっている。一方、開口411のうちの1つには、操作部20の内ケース体22の連結ピン221が挿入されており、この連結ピン221の下面と開口411の下端縁とが当接するようになっている。
伝達部40のコイルばね42は、伝達部材41の下端部と外召合せ框5Bの内部側面との間に設けられており、伝達部材41を上方に付勢するとともに、この付勢力により開口411および連結ピン221を介して操作部20の内ケース体22および操作レバー23を付勢して、これらの伝達部材41、内ケース体22および操作レバー23を初期位置(図2(A)の位置)に位置決めできるようになっている。
このような伝達部40では、初期位置に付勢された操作レバー23が下方に施錠操作された際に、コイルばね24を介して内ケース体22が下方に押し下げられ、これに伴って連結ピン221に開口411の下端縁を押圧された伝達部材41が押し下げられる。そして、開口411の上端縁により施錠部30の回動ピン34が押圧されて下方に回動され、この回動した回動ピン34が被押圧部311を押圧することで、係止部材31が施錠位置に向かって回動されるようになっている。
また、伝達部40のコイルばね42の付勢力は、操作部20のコイルばね24の付勢力よりも小さな値に設定されている。すなわち、通常の施錠操作を行って操作レバー23を下方に押し下げた場合には、付勢力の大きい操作部20のコイルばね24はほとんど変形せず、付勢力の小さいコイルばね42が変形して伝達部材41が下方に移動され、係止部材31が施錠位置に回動される。一方、何らかの原因で施錠部30の係止部材31の施錠位置への移動が規制されている状態において、操作レバー23を下方に押し下げる施錠操作を行った場合には、回動ピン34に係止されて伝達部材41が下方に移動できず、内ケース体22も移動不能なため、所定の施錠操作の操作力よりも大きな力で操作レバー23が押し下げられてしまう。このような大きな力が操作レバー23に作用した場合には、操作部20のコイルばね24が変形することで、各部材の破損が防止できるようになっている。換言すると、コイルばね24の付勢力は、伝達部40のコイルばね42の付勢力よりも大きく、かつ各部材の少なくともいずれかが破損する施錠操作の操作力よりも小さな値に設定されている。
以上のような錠装置10における施錠操作および解錠操作について、図6に基づいて説明する。
図6(A)に示すように、操作部20の内ケース体22および操作レバー23、伝達部40の伝達部材41が初期位置にあり、施錠部30の係止部材31が解錠位置にある状態で、室内外の障子2,3を閉じれば、操作部20が室内側から操作可能になる。この際、操作部20の連結ピン221を挿通した伝達部材41の開口411の下端縁と、当該連結ピン221の下面とが当接し、施錠部30の回動ピン34を挿通した伝達部材41の開口411の上端縁と、当該回動ピン34の上面とが当接している。
次に、図6(B)に示すように、操作部20の操作レバー23を下方に押し下げる施錠操作を実行すると、前述したように内ケース体22、連結ピン221、伝達部材41および回動ピン34を介して係止部材31が施錠位置に回動される。これにより係止部材31が外召合せ框5Bの室内露出面部5Cから室内側に突出し、内召合せ框5Aの見込み面5Dに当接することで、室内外の障子2,3が施錠される。この際、前述したように、係止部材31の施錠位置への移動が規制されていれば、操作部20のコイルばね24が変形することで、伝達部材41が下方に移動せず、係止部材31が施錠位置へ回動しないため、利用者は、施錠不能なことに気付いて施錠操作を中止し、係止部材31の移動を規制している障害等を取り除くことができる。
以上のように係止部材31が突出した状態で、操作レバー23の押し下げを中止すれば、図6(C)に示すように、コイルばね42の付勢力によって伝達部材41が上方に移動され、開口411および連結ピン221を介して内ケース体22および操作レバー23が初期位置に戻される。この際、回動ピン34は開口411の下端縁に当接することがないため上方に移動されず、これにより係止部材31は解錠位置に回動されることなく施錠位置を維持することになる。従って、室内外の障子2,3の施錠状態が維持されるとともに、操作部20および伝達部40が初期位置に復帰する。
一方、錠装置10における解錠操作は、複数の施錠部30の各位置において実施される。すなわち、複数の施錠部30において、室内側に突出した係止部材31を室外側に向かって押し込み、板ばね33の付勢力に抗して解錠位置まで回動させることで、板ばね33によって係止部材31が解錠位置に位置決めされる。この際、係止部材31の被押圧部311が回動ピン34の下面に当接する位置まで移動され、再度の施錠操作に備える。このような操作を複数の施錠部30において行うことで、解錠操作が完了し、室内外の障子2,3が開放可能になる。
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、障子2,3を閉じた状態において室内側に露出する室内露出面部5Cに錠装置10の操作部20を設けたので、障子2,3を閉じていない状態においては、室内露出面部5Cが室内側障子2(内召合せ框5A)に重なって、操作部20が操作不能になる。従って、障子2,3を閉じなければ操作部20を操作することができないため、空掛けを確実に防止することができる。
(2)そして、空掛けを感知する感知部などの可動部品を設けなくても、空掛け状態であることが判別できるので、錠装置10の構造を簡単にすることができるとともに、空掛け状態で無理に操作部20を操作してしまうこともないため、錠装置10の破損を防止することができる。
(3)さらに、室内露出面部5Cに操作部20が設けられているので、室外から操作部20を視認することができず、施錠または解錠のいずれの状態であるかが分からないとともに、操作部20の位置が特定できないためガラス破り等を抑止することができ、防犯性を向上させることができる。
(4)そして、伝達部40によって操作部20の施錠操作を複数の施錠部30における各々の係止部材31に伝達することで、一度の施錠操作で複数の施錠部30を容易に施錠することができるとともに、複数の施錠部30によって防犯性を一層向上させることができる。
(5)また、複数の施錠部30において各々の係止部材31を解錠操作しなければ、障子2,3が解錠されないので、万一、操作部20近傍のガラスパネルが破られたとしても、操作部20の操作によっては解錠されず、かつ複数の施錠部30全ての近傍のガラスパネルが破られなければ、障子2,3が解錠できない。これにより、ガラス破りに長時間を要することから、不法行為を為す者が途中で諦める可能性が高まり、例えガラス破りにあったとしても、室内への浸入を未然に防止することができ、より一層防犯性を高めることができる。
(6)また、施錠部30において室内側に突出した施錠位置と室内露出面部5Cに没入した解錠位置との間を係止部材31が回動するだけで、施解錠が実施できるので、従来のクレセント錠のように略180°回動させる必要がなく、施錠部30の構造を簡単化できるとともに、操作部20の操作レバー23の操作距離や伝達部40の伝達部材41の移動距離を小さくして、これらの構造も簡単化することができる。
(7)さらに、室内露出面部5Cから室内側に突出した係止部材31が内召合せ框5Aの見込み面5Dに当接して障子2,3が施錠されるので、内召合せ框5Aに従来のような錠受けを設ける必要がなく、この点でも錠装置10の構造を簡単化して部品点数を削減することができる。
(8)また、操作部20のコイルばね24の付勢力を伝達部40のコイルばね42の付勢力よりも大きく設定したことで、所定の操作力を超える力で操作レバー23が施錠操作された場合に、コイルばね24が変形することで、無理な力が伝達部40や施錠部30に作用しないようになっているので、これら各部材の破損を防止することができる。
(9)また、伝達部材41が長尺状に形成されているので、操作部20と複数の施錠部30とを互いに離れた位置に設置することができる。さらに、伝達部材41の長さ方向に沿って複数形成した開口411が操作部20の連結ピン221および施錠部30の回動ピン34に接続されていることで、伝達部材41の複数の開口411のうちの任意の開口位置に合わせて操作部20や施錠部30を設置することができ、設置の自由度が高められるとともに、召合せ框5A,5Bの長さ寸法に関わらず伝達部材41を共通化することができる。
(10)さらに、コイルばね42の付勢力により伝達部材41が初期位置に戻されることで、この伝達部材41に連結された操作部20の内ケース体22および操作レバー23も初期位置に戻されるため、利用者が操作レバー23を戻す必要がなく、操作性を向上させることができる。そして、伝達部材41の開口411が回動ピン34を余裕を持って挿通可能な大きさに形成されているので、伝達部材41が初期位置に戻される際に、回動ピン34を移動させることなく、係止部材31による施錠状態を維持させることができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、引違い窓1に錠装置10を設けた例を示したが、本発明の建具はこのような引違い窓1に限られず、片引き窓や上げ下げ窓等であってもよい。片引き窓としては、外動片引き窓および内動片引き窓のいずれであってもよく、外動片引き窓の場合には、室内側障子が固定障子となってその縦骨が内召合せ框となり、内動片引き窓の場合には、室外側障子が固定障子となってその縦骨が外召合せ框となる。
また、前記実施形態では、2つの施錠部30を有した錠装置10について説明したが、施錠部30の数は、3つ以上であってもよい。さらに、施錠部30は、前記実施形態のように外召合せ框5Bの室内露出面部5Cに設けられたものに限らず、障子2,3閉鎖時において内召合せ框5Aと対向する外召合せ框5Bの室内側側面に設けられていてもよい。そして、施錠部30の係止部材は、前記実施形態のように室内外に突没自在に回動するものに限らず、一般的なクレセント錠のように略180°回動して錠受けに係合するものでもよく、また進退移動して錠受け孔に挿入されるボルト等から構成されたものでもよい。
また、施錠部30と伝達部40との接続構造は、前記実施形態のような回動ピン34を介したものに限らず、図7に示すような構造とされていてもよい。すなわち、図7において、施錠部30の係止部材31は、その室外側側面から突出した接続ピン313を有して形成されており、この接続ピン313がケース体32の室外側側面に設けられた挿通孔321を貫通して伝達部40側に延び、接続ピン313の先端が伝達部材41の開口411に挿通されている。そして、操作部20の施錠操作により下方に移動された際に、伝達部材41の開口411上端縁によって接続ピン313が下方に押圧され、これにより、係止部材31が施錠位置へ向かって回動されるような構造が採用可能である。
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
(A),(B)は、本発明の実施形態に係る建具の障子を示す斜視図である。 (A),(B)は、前記建具の召合せ框に設けられた錠装置を示す縦断面図である。 前記錠装置の施錠部を示す横断面図である。 前記錠装置の施錠部を示す分解斜視図である。 前記錠装置の操作部を示す縦断面図である。 (A)〜(C)は、前記錠装置の動作を示す斜視図である。 (A)〜(C)は、本発明の変形例に係る錠装置を示す横断面図、正面図、縦断面図である。
符号の説明
2,3…障子、5A…内召合せ框、5B…外召合せ框、5C…室内露出面部、5D…見込み面、10…錠装置、20…操作部、21…操作部本体である外ケース体、22…進退部材である内ケース体、23…操作部材である操作レバー、24…操作部材付勢手段であるコイルばね、30…施錠部、31…係止部材、32…施錠部本体であるケース体、33…係止部材付勢手段である板ばね、34…接続部材である回動ピン、40…伝達部、41…伝達部材、42…伝達部材付勢手段であるコイルばね、411…開口。

Claims (6)

  1. 少なくとも一方が開閉可能に設けられた室内外一対の障子を備え、当該室内側障子の内召合せ框と室外側障子の外召合せ框とが重なって閉じた状態において錠装置によって施錠可能な建具であって、
    前記外召合せ框は、前記内召合せ框よりも見付け寸法が大きく、かつ前記一対の障子を閉じた状態で室内空間に露出する室内露出面部を有して形成され、
    前記錠装置は、前記室内露出面部に設けられて室内側から操作可能な操作部と、前記内召合せ框を係止する施錠位置と係止しない解錠位置との間を移動可能な係止部材を有した複数の施錠部と、前記操作部の施錠操作を前記複数の施錠部における各々の係止部材に伝達する伝達部と、を備え構成され、
    前記各々の係止部材は、前記伝達部を介して伝達された前記操作部の施錠操作により施錠位置に移動されるとともに、当該各々の係止部材ごとの解錠操作により解錠位置に移動される建具。
  2. 前記複数の施錠部は、それぞれ前記外召合せ框に固定されるとともに前記係止部材を回動自在に支持する施錠部本体と、この施錠部本体に対して前記係止部材を施錠位置または解錠位置に付勢する係止部材付勢手段と、前記施錠部本体に移動自在に支持されるとともに前記係止部材および前記伝達部に接続された接続部材とを有して構成され、
    前記伝達部を介して伝達された前記操作部の施錠操作により前記接続部材が移動され、この移動に伴って前記係止部材が施錠位置に回動される請求項1に記載の建具。
  3. 前記係止部材は、前記外召合せ框の室内露出面部から室内側に突出して前記内召合せ框の見込み面に当接することで一対の障子を施錠する施錠位置と、前記外召合せ框の室内露出面部と略フラットに前記施錠部本体内部に没入する解錠位置との間を回動自在に設けられている請求項2に記載の建具。
  4. 前記伝達部は、前記外召合せ框に沿った長尺状の伝達部材と、この伝達部材を前記操作部の施錠操作方向と逆向きに付勢する伝達部材付勢手段とを有して構成され、
    前記伝達部材には、前記施錠部の接続部材を余裕を持って挿通可能な開口が長さ方向に沿って複数形成され、前記操作部の施錠操作に伴って前記伝達部材付勢手段の付勢力に抗して前記伝達部材が初期位置から移動されるとともに、前記開口の一方の端縁が前記接続部材を押圧して移動させ、前記操作部の施錠操作を中止すれば、前記伝達部材付勢手段の付勢力により前記伝達部材が初期位置に戻される請求項2または請求項3に記載の建具。
  5. 前記操作部は、前記外召合せ框に固定される操作部本体と、この操作部本体に進退自在に支持されるとともに前記伝達部に連結された進退部材と、この進退部材に支持されて施錠操作される操作部材と、この操作部材を前記進退部材に対して施錠操作方向と逆向きに付勢する操作部材付勢手段とを有して構成され、
    前記操作部材付勢手段の付勢力は、施錠操作における所定の操作力よりも大きく設定されており、この所定の操作力を超える力で前記操作部材が施錠操作された場合に、前記操作部材付勢手段の付勢力に抗して当該操作部材が前記進退部材に対して移動される請求項1から請求項4のいずれかに記載の建具。
  6. 前記伝達部は、前記外召合せ框に沿った長尺状の伝達部材と、この伝達部材を前記操作部の施錠操作方向と逆向きに付勢する伝達部材付勢手段とを有して構成され、
    前記操作部材付勢手段の付勢力は、前記伝達部材付勢手段の付勢力よりも大きく設定されている請求項5に記載の建具。
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