JP4381088B2 - 血液適合性中空糸型膜およびその製造方法 - Google Patents

血液適合性中空糸型膜およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は医療用途の血液適合性に優れた中空糸型膜に関する。特に疎水性高分子と親水性高分子からなる血液浄化用の中空糸型膜に関するものである。
血液浄化などを目的とした医療用中空糸型血液浄化器に用いられる中空糸型膜素材には、天然素材であるセルロース、またその誘導体であるセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、合成高分子としてはポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどが広く用いられている。特に最近では合成高分子、中でもポリスルホン系のポリマーを主原料とした中空糸型膜が注目されている。ポリスルホンなどの疎水性高分子は単独ではタンパクが吸着し易いなど血液適合性に問題があり、親水性高分子をブレンドし膜の親水性を向上させる方法が開発されている。親水性高分子をブレンドすることにより、膜の親水性が向上して血液中の蛋白が抑制され、膜特性の経時的変化が少なく、分画特性に優れた膜となる。
しかし、このような材料は合成物であるため、生体にとっては異物と認識され、さまざまな生体反応が起こる。たとえば、血液と接触した際には、血小板の付着や白血球の活性化などが起こり、血液適合性が悪いことがある。
特許文献1や特許文献2では血液接触表面の凹凸を制御することによって血液適合性を向上させる技術が開示されている。これらの技術においては表面の凹凸はいずれも白色干渉顕微鏡によって測定された値から規定されている。これらの方法によると、白色干渉顕微鏡で観察するエリアは数十μmから100μmと局所的であり、ストロー形状である中空糸型膜の内面、特にクリンプなどの特殊な加工を施した中空糸型膜の全体を精度良く観察できるとは言い難い。また、表面の物理的な性状の制御は血液適合性向上のひとつの手法として有効であると考えられるが、生体にとって本質的に異物である材料を使用している以上、このアプローチのみでは十分な血液適合性は望めない。
特開2000−126286号公報(1頁〜3頁) 特開平11−309353号公報(1頁〜2頁)
本発明は、上記課題を解決し、血液適合性に優れた中空糸型膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の中空糸型膜は、
1.ポリエーテルスルホン、ポリビニルピロリドン、溶媒、非溶媒からなる紡糸原液と内腔形成剤として流動パラフィンをノズルから吐出し、空中走行部を経て、凝固浴に導き、凝固浴内で延伸を掛けながら凝固させた後、水洗して中空糸型膜を得る際に、紡糸原液中のポリエーテルスルホンに対するポリビニルピロリドンの比を4〜13.2重量%とし、紡糸原液を溶解するときの加熱温度と加熱時間の積を400℃h以上1300℃h以下とし、ノズルから吐出される内腔形成剤の吐出線速度を紡糸原液の吐出線速度の3〜10倍とし、空中走行部長さを50〜300mmとし、凝固浴内で20〜80%の延伸を掛け、RO水で洗浄することにより、中空糸型膜の内腔にクエン酸加牛血液を封入し、カルシウムを含有する等張液に10分間浸漬した後の該封入血に凝固および凝固に起因する中空糸型膜のつまりを生じない。
2.中空糸型膜を得る際に、水洗した中空糸型膜をさらに10〜70重量%のグリセリン水溶液で処理し、含水率が2.1〜15重量%になるように乾燥することにより、中空糸型膜へのメチレンブルーの吸着率が40%以上80%以下としたものである
3.中空糸型膜の血液接触表面のポリビニルピロリドンの重量割合が15〜40重量%である。
4.中空糸型膜の不溶成分含量が2重量%以下である。
の特徴を有する。
主として疎水性高分子と親水性高分子とからなる中空糸型膜において、中空糸型膜の親−疎水バランスと荷電状態を適正化し、細孔の整列性を向上することにより、内表面に接触した血液が凝固反応を起こしにくい特性を有する血液適合性に優れた中空糸型膜を得ることが可能となった。
従来、血液適合性を示す指標として、血液と接触した際の血小板の粘着を評価する方法がある。血液適合性向上のために、血小板粘着量を減少させることを目標に検討がなされてきているが、生体にとって異物である材料との接触による血液成分の活性化は、その程度の差はあってもある意味で不可避であると考えられる。血小板粘着量が非常に少ない膜では、見かけの血液適合性は良好であると判断されてしまうが、実際は、異物である材料との接触で活性化された血小板までもが血液中に放出されてしまっている可能性がある。このようなことから、血小板粘着量の評価のみでは血液適合性を評価するには十分でないと考え、血液適合性評価について、鋭意検討を行った結果、実際に血液を封入し、材料に接触した血液全体を観察する方法、すなわち、血液の凝固状態を観察する方法が適切であるということがわかり、本発明に到った。血液を中空糸型膜内に封入する試験において、血液封入10分後に、封入した血液が中空糸型膜を詰まらせていないこと、また中空糸型膜から押し出した血液が生理食塩水に均一に分散し塊がない状態であることが好ましい。この評価方法では、従来の血小板粘着を評価する方法で見落とされていた、材料に吸着しなかった血液の状態を調べることが可能となる。
本発明における中空糸型膜の血液との適合性は次の方法によって行う。
(1)20cmに切りそろえた中空糸型膜を10本束ね、両末端をシリコンチューブに差しこみ、接着剤で固定したマイクロモジュールを作成する。
(2)マイクロモジュールの中空糸型膜部分をキンダリー液に浸漬する。
(3)クエン酸を添加した(ACD)牛血液をシリンジを用いマイクロモジュール内腔に充填する。
(4)充填後、マイクロモジュール両末端は鉗子で閉じる。
(5)血液封入10分後、鉗子をはずし、マイクロモジュール片端からシリンジで内封した血液を生理食塩水を満たしたシャーレ内に押し出す。
(6)(5)の血液押し出し時に、内封血液が出てこない場合を「つまり」とする。
(7)シャーレ中に押し出した血液が生理食塩水中で均一にならずに、塊状になっているものを「凝固」とする。
(8)シャーレ中に押し出した血液が生理食塩水中で均一になった場合は「凝固反応無し」とする。
本発明における中空糸型膜のメチレンブルーの吸着率は、40%以上80%以下が好ましい。メチレンブルーはカチオン性の化合物であり、アニオン性の物質と接触すると結合する性質を持つ。またメチレンブルーが膜表面に物理的に吸着することも考えられる。よって、ここでいうメチレンブルー吸着率とは膜内表面の荷電状態、親水性−疎水性バランス、非特異的な吸着能の指標として考えることができる。メチレンブルーの吸着率が40%以上80%以下の範囲であるとき、膜表面状態が最適化され、血液適合性に優れた性質となると考えられる。メチレンブルーの吸着率が40%未満の場合は、陰性荷電が少なくなりすぎ、表面が陰性に荷電している血小板との静電的な相互作用が強くなり血小板が粘着しやすく血液適合性が低下する傾向になる。また80%以上の吸着率の場合は、陰性荷電が強くなりすぎ、疎水性相互作用、非特異な吸着が増し、血液成分が吸着しやすくなり、血液浄化機能の耐久性に劣ることがある。さらに、陰性荷電が強いと血液中のキニン産生を誘発するため血液適合性に劣ることがある。
本発明におけるメチレンブルーの吸着率とは、次の方法によってメチレンブルー溶液灌流前後の溶液中のメチレンブルー濃度から算出した値を示す。
(1)メチレンブルーを0.5ppmの濃度になるよう水に溶解してメチレンブルー溶液を調製する。
(2)膜と接触する前のメチレンブルー溶液をサンプリングしておく。
(3)メチレンブルー溶液1000mLを測り採り、膜面積1.5m2の中空糸型膜モジュールの血液側、透析液側を満たす。
(4)モジュール充填後、余ったメチレンブルー溶液をプールし、モジュールの血液側に200mL/minの流量で灌流する。この際、溶液プールから流れ出た溶液はモジュールの血液側を通過し、プールに戻るように回路を組む。
(5)5分の灌流を行った後、モジュールに充填されたメチレンブルー溶液と、プールされたメチレンブルー溶液を併せ、サンプリングを行う。
(6)メチレンブルー水溶液の紫外吸収スペクトルの最大吸収波長490nmの吸光度から、検量線を作成し、膜接触前後のメチレンブルー溶液の濃度を測定する。
(7)次の式からメチレンブルー吸着率を算出する。
(メチレンブルー吸着率)[%]=100×(灌流後の溶液のメチレンブルー濃度)/灌流前の溶液のメチレンブルー濃度)
本発明の中空糸型膜の素材は、主として疎水性高分子と親水性高分子である。疎水性高分子には、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミドなどが挙げられる。本発明においては、物理的特性の優れたポリスルホン系樹脂が好ましい。ポリスルホン系樹脂は陰性荷電を有するため単独ではキニン産生を亢進する性質を持ち、血液適合性には問題があるが、後述するように、親水性高分子とブレンドしポリマーアロイ化することにより親疎水バランスを調整することが可能となり、疎水性高分子起因の血液への悪影響の度合いをコントロールすることができる。ポリスルホン系樹脂とは、スルホン結合を有する高分子化合物の総称であり、特に規定はしないが、ポリスルホンが入手容易なため好ましく、中でもポリエーテルスルホン(PES)がガラス転移温度が高く加工性に優れていて好ましい。
親水性高分子にはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デンプン、酢酸セルロースなどが使用できる。特にポリビニルピロリドン(PVP)がポリスルホン系樹脂と相溶性が良く血液接触面の親水性−疎水性のバランスをコントロールし易く好ましい。
親水性高分子の重量平均分子量は、中空糸型膜の孔径や、架橋反応に影響するので、その目的に応じて任意に選定しなければならないが、通常は500〜1,200,000程度のものが使用できる。親水性高分子の選択は、第一に、使用する疎水性高分子との相溶性が良いもの、第二に、製膜後の膜表面への親水性ポリマーの存在率、すなわち、膜表面へどれだけ留まる性質をもつか、簡単に溶出してしまわないかなどを検討した上で判断する。これらの検討項目は親水性高分子の分子量に依存している場合が多いが、条件が許す範囲内で、より高分子量のものを使用する方が、紡糸工程中の熱履歴による低分子量化の心配がなく好ましい。ポリエチレングリコールとしては、重量平均分子量300〜100,000程度のものが好適に使用できる。例えば、疎水性高分子がポリエーテルスルホンである場合、親水性高分子は相溶性のよいポリビニルピロリドンが好ましく、さらにその分子量については、前記したように、高分子量のものが好ましく、例えば、BASF社製の分子量10,000(K−15)から分子量1,200,000(K−90)が好ましい。より好ましくは100,000〜1,200,000、さらに好ましくは250,000〜1,200,000、よりさらに好ましくは450,000〜1,200,000である。このような高分子量の親水性高分子を用いると、製膜後の親水性高分子の膜表面への固定化のコントロールが容易であり、親水性高分子の大量の溶出を抑制することができる。また、親水性高分子は中空糸型膜中で実質的に架橋されていないことが、膜内表面からの微量の親水性高分子のリリースを促し、血液適合性を高めるため好ましい。実質的に架橋されていないとは、後述するように中空糸型膜中の不溶成分量が2重量%以下であることを指す。
本発明の中空糸型膜を構成する疎水性高分子は、親水性高分子により親水化されており、特に血液接触側表面に15〜40重量%程度の親水性高分子が存在するのが好ましい。17重量%以上38重量%以下がより好ましく、19重量%以上36重量%以下がさらに好ましく、21重量%以上34重量%以下がよりさらに好ましい。15重量%未満では親水性に乏しく蛋白や血小板の吸着、粘着が増加する傾向があるとともに、疎水性高分子の影響を受けて血中のブラジキニンの産生が加速されることがある。また40重量%以上では、中空糸型膜からの親水性高分子の溶出抑制のコントロールが困難なことがある。内表面近傍の親水性高分子の存在比をこのように15重量%以上40重量%以下の存在比にコントロールすることで、血液浄化膜として適切な性能を発揮できるとともに、血液適合性に優れた膜となる。
本発明において、血液適合性をはじめとする上記の特性を持たせるための手段としては、中空糸型膜の血液接触面である内表面について、親水性高分子と疎水性高分子のバランスをコントロールすること、適度な陰性荷電を持たせること、表面を平滑にすることである。
親水性と疎水性のバランスは、紡糸原液中の親水性高分子と疎水性高分子の割合、紡糸原液の溶解時の熱履歴による親水性高分子の架橋状態、また、紡糸工程でのエアーギャップ長、そして凝固条件(組成、濃度、温度)でコントロールするのが好ましい。適度な陰性荷電を持たせるには、紡糸工程において、ドープを二重紡糸口金の外側から、内腔形成剤を二重紡糸口金の内側から吐出する際の、内腔形成剤とドープ間の摩擦があること、また、紡糸工程中の中空糸型膜の走行工程や巻き取り工程において静電気が適度に抑制されていることが好ましい。表面の平滑性を得るには、内腔形成剤に非凝固性のものを使用すること、凝固浴中で延伸を施すことが好ましい。
例えば、疎水性高分子がPES、親水性高分子がPVPの場合、ドープの各々の組成は、PESが10重量部から50重量部の範囲、PVPが1重量部から10重量部の範囲、溶媒はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、非溶媒にトリエチレングリコール(TEG)とし、それぞれを混合し加熱して均一状態とする。ドープ溶解時の熱履歴は親水性高分子の架橋反応に影響を与えるため180℃以下であることが好ましい。さらには160℃以下であることがより好ましい。加熱温度と加熱時間の積は1600℃h以下であることが好ましく、1500℃h以下であることがさらに好ましい。溶解時の加熱積が100℃h以下である場合は、ドープ組成の溶解が不十分となり均一な中空糸型膜が得られないことがある。そのためドープ溶解時の加熱積はより好ましくは200℃h以上、さらに好ましくは300℃h以上、よりさらに好ましくは400℃h以上である。また1600℃h以上で加熱した場合には親水性高分子の架橋反応が進行し、表面からの適度な親水性高分子の溶出が抑制され血液適合性に劣ることがある。したがって、ドープ溶解時の加熱積は1500℃h以下がより好ましく、1400℃h以下がさらに好ましく、1300℃h以下がよりさらに好ましい。本発明の中空糸型膜に含まれる親水性高分子は不溶化されていないことが好ましく、具体的には不溶成分の含有率が膜全体に対して2重量%未満であることが好ましい。より好ましくは1.5重量%未満、さらに好ましくは1.0重量%未満である。PESとPVPを前記範囲にすることが、中空糸型膜内表面の親疎水バランスを適正化する第一のポイントとなる。PESのより好ましい範囲は12〜48重量部、さらに好ましい範囲は15〜45重量部である。PVPのより好ましい範囲は1〜9重量部、さらに好ましい範囲は2〜8重量部である。疎水性高分子に対して親水性高分子が多すぎると、製膜後の洗浄においても過剰の親水性高分子を洗い落とすことが困難となることがある。また、親水性高分子の添加量が少なすぎると疎水性の強い膜になり、タンパクの吸着が多くなったり、吸着タンパクの影響により溶質透過性が低下することがある。したがって、紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の重量割合は、2〜100重量%が好ましい。4〜54重量%がより好ましい。この範囲であれば、中空糸型膜の親疎水バランスをコントロールしやすくなる。
中空糸型膜を紡糸する際には、ドープを内腔形成剤とともに二重管型のノズルから吐出し、空走部分を経て凝固浴に導き凝固させる。ノズルから吐出された直後の内腔形成剤吐出線速度とドープ吐出線速度が、内腔形成剤吐出線速度>ドープ吐出線速度の関係にあると中空糸内表面と内腔形成剤の界面にてずり応力が働き、摩擦が生じ、適度な荷電が付与されるので好ましい。内腔形成剤吐出線速度はドープ吐出線速度の3倍〜10倍の大きさであることがより好ましい。3倍未満であると中空糸内表面と内腔形成剤の界面での応力が小さく適度に荷電をコントロールできない可能性がある。10倍を超えると紡糸口金の圧損が大きくなり吐出むらが発生し膜の形状が不均一になることがある。また、ドープ吐出速度は10000cm/min以下であることが好ましい。これ以上のドープ吐出速度の場合、紡糸口金の圧損が大きくなり吐出むらが発生し紡糸が不安定になったり、膜構造も不均一となる可能性がある。
吐出線速度と線速度比は次の式で算出できる。
(吐出直後の吐出線速度)(cm/min)=吐出量(ml/min)/(吐出孔面積)(cm2)
(線速度比)=(内腔形成剤の線速度)/(ドープの線速度)
上記の関係を得るためには、内腔形成剤はドープに対して非凝固性の液体が良く、例えば流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルなど、あるいはこれらの混合物、さらに、これらとDMF、DMAc、DMSO、NMPなど疎水性高分子の溶媒との混合物などが、界面に適度な摩擦が起こりやすく好ましい。また、これらの非凝固性の液体の内腔形成剤は、内表面の凝固反応を緩やかにし、膜の内面の平滑化を向上させるため好ましい。
エアーギャップ長は50〜300mmが好ましく、60〜280mmがより好ましい。エアギャップ長が長すぎると、糸切れ、糸揺れによる融着が発生しやすくなり紡糸安定性が低下することがある。また、エアギャップ長が短すぎると、相分離の進行が不十分になるため均一な細孔径が得られなくなることがある。
凝固浴の組成は8〜70重量%のNMP水溶液が好ましい。10〜60重量%がより好ましく、10〜50重量%がさらに好ましく、10〜40重量%がよりさらに好ましい。また、凝固浴中で、1〜120%の延伸を行うことが好ましい。5〜100%の延伸を行うことがより好ましい。10〜90%がさらに好ましく、15〜85%がよりさらに好ましい。ここで言う延伸とは、第二凝固浴入口ローラー速度と第二凝固浴出口ローラー速度との比である。延伸は一般に細孔形状の変形や配向をもたらす。極端な延伸は細孔の変形、つぶれ、過度の配向につながり、このような内表面を持つ中空糸型膜は血液と接触した際に血小板粘着および血中蛋白の吸着、積層化により、膜性能が経時的に低下することがある。一方、PESのような結晶化しにくいポリマーを非凝固性の内腔形成剤を用いて紡糸する場合は、凝固反応がゆるやかであり、凝固浴中における延伸効果はマイルドである。したがって、このような条件の延伸工程を経た中空糸型膜は膜のスポンジ構造の変形が微視的であり、また血液接触部である内表面の状態は、細孔形状の変形が大きくなりすぎず、孔の分布が均一な状態となり、血液適合性を目的とするには十分な表面の平滑性が得られる。このような凝固条件を使用することで膜表面の緻密化がある程度抑制され、余剰の親水性高分子が洗い流され易くなり、使用時の溶出物量を低減できる。また、凝固液の温度は室温以下であることが好ましい。具体的には0〜30℃がより好ましく、さらに好ましくは5〜25℃、よりさらに好ましくは10〜25℃である。この条件にすることにより膜表面の緻密化を抑制できるので好ましい。
また、紡糸工程で親水性、疎水性バランスをある程度整えた後、洗浄工程で中空糸型膜の親水性、疎水性バランスを最適化するのが好ましい。さらに、乾燥条件を適正化することにより中空糸型膜中の親水性高分子を固定化することが好ましい。洗浄工程では、凝固工程で固定化しきれなかった過剰の親水性高分子を洗い落とすとともに、膜表面に存在する親水性高分子の表面への局在化と膨潤を促す。一方、乾燥工程では、疎水性高分子と親水性高分子の物理的な相互作用、すなわち疎水性高分子鎖と親水性高分子鎖の絡み合いの程度を強くし、親疎水バランスを整えることができる。洗浄方法としては、凝固浴から引き上げた中空糸型膜を、RO水からなる水洗槽に導き30℃以上で60秒以上かけて通過させるのが好ましい。使用するRO水は、水道水をRO装置により純水化したもので、比抵抗が0.3〜2MΩcmのものが好ましく、0.4〜1.9MΩcmのものがより好ましい。0.5〜1.7MΩcmがさらに好ましく、0.7〜1.5MΩcmがよりさらに好ましい。温度が低すぎると、過剰の親水性高分子を洗浄しきれず、水洗槽を長くしたり、紡糸速度を遅くしたりする必要があるなどコストアップに繋がることがある。また、温度が高すぎると水が沸騰してしまい中空糸型膜が安定して走行しなくなることがある。水洗槽の温度は90℃以下が好ましい。より好ましい温度は35〜80℃、さらに好ましくは35〜75℃、よりさらに好ましくは35〜60℃である。
適度な陰性荷電を持たせるためには、膜表面の静電気を少なくすることが好ましい。膜表面の静電気は主に乾燥や摩擦により発生する。中空糸型膜の乾燥を防ぐ方法として、乾燥工程で絶乾しないことやグリセリン処理をすることが挙げられる。グリセリン処理に用いるグリセリン水溶液の濃度は10〜70重量%が好ましく、15〜65重量%がより好ましい。また、別の手段として、乾燥時のエアーを除電することが有効である。除電処理はプラスとマイナスを発生する除電機器を用いて、膜の帯電量に応じた中空糸型膜の耐電極性とは反対極性のイオンを与えることによって膜の静電気を中和することによって行われる。帯電量に応じた反対極性のイオンを供給する方法としては、Ion Current Control方式を取り入れた除電機器を用いた方法を用いて中空糸型膜を直接除電することができる。Ion Current Control方式とは、帯電物と除電機器のアース電極との電位差によって生じるイオン電流をセンシングすることで、帯電物の帯電状況を把握し、その帯電量に応じた反対極性のイオンを供給するように、プラス、マイナスそれぞれの電極針に高電圧をかける時間(パルス幅)を制御するものである。静電気を起こす摩擦を防ぐ方法として、紡糸機のローラーやガイドの素材を適正化することも効果的である。ローラーやガイドの素材としては、テフロン(R)、ベークライト、ステンレス、プラスチックなどがあるが、中空糸型膜との摩擦を最小限にするステンレスが適している。またそれらの形状は中空糸との摩擦を最小限にするために、接触部が滑らかな曲線になっていることが好ましい。また、アースをつけることも好ましい。このように静電気や摩擦が起こらないような工程管理をすることにより、疎水性高分子が本来もっている陰性荷電を適度にコントロールすることができる。
また、乾燥時に絶乾しないことが好ましい。具体的には、疎水性高分子の平衡水分率以上の含水率で乾燥を止めることが好ましい。例えば、ポリエーテルスルホンでは2.1重量%以上の含水率であることが好ましい。含水率が2.1重量%以上であれば、前述したように、疎水性高分子と親水性高分子の絡み合いの程度が適切となり血液浄化使用時の親水性高分子の溶出が少なくなるため好ましい。含水率が多すぎると、中空糸型膜保存中に雑菌が増殖したり、モジュール作製において端部をウレタン樹脂等で接着する際、樹脂と膜中の水分が反応し発泡することがあるので、含水率は15重量%以下が好ましい。より好ましくは12重量%以下である。さらに好ましくは10重量%以下である。乾燥温度は50℃〜100℃が好ましく、さらには60℃〜90℃が好ましい。乾燥温度が高すぎると親水性高分子が熱劣化・分解し、溶出物量が増える可能性がある。また乾燥温度が低すぎると、乾燥時間が延びるため中空糸型膜の製造コストが上がることがある。また、過乾燥防止対策として、後述するようなグリセリン水溶液に浸漬してもよい。
本発明における中空糸型膜としては、内径が100〜300μm、膜厚が10〜70μmであることが好ましい。内径が100〜300μmであれば、通常の血液透析での血液流量100〜300mL/minにおいて血液剪断速度が適切であり、タンパク吸着や血液に与えるダメージを最小限に抑えることができるため好ましい。より好ましい内径は130〜280μm、さらに好ましくは150〜250μmである。また、膜厚が薄すぎると血液処理に必要な耐圧性が損なわれる可能性がある。また膜厚が厚すぎると溶質透過性が低下することがある。したがって、膜厚は12〜60μmがより好ましく、13〜50μmがさらに好ましく、14〜40μmがよりさらに好ましく、14〜30μmが特に好ましい。
本発明の中空糸型膜を製造する典型的な方法の一つは、後述する実施例などにおいてみるとおり、疎水性高分子と親水性高分子、共通溶媒、非溶媒などからなる紡糸原液を、ノズルから内腔形成剤とともに吐出し空中走行部を経て凝固浴内に導き、凝固浴内で適度な延伸を掛けながら中空糸型膜を凝固させる手法により入手することができるものである。この延伸速度、延伸倍率を適度に制御しないと、延伸方向に配向することによるフィブリル化のような、いわゆる孔が繊維方向につぶれるという現象が発生する。孔のつぶれは、血中タンパク質のリークや、タンパク質の過剰吸着の原因になることがある。本発明ではこのような障害を克服している。
本発明の内表面の細孔形状が均一性が高い微細構造であるということは、スポンジ構造の変形がないということであり、このような変形を防止する為に、ドープと内腔形成剤の線速度のコントロール、凝固浴中での延伸倍率、延伸速度などの延伸条件を微妙に制御することにより達成できる。さらに、孔径の均一性が高いということは、孔径のばらつきが少なく、ボイドのような孔も少ないということである。そして、本発明の中空糸型膜の孔は不均一に形成されているわけではなく、多くの孔が整然と整列されたように配置されているということである。
このような構造の中空糸型膜を製造する場合に、疎水性高分子、親水性高分子の種類、紡糸原液の仕様、凝固条件などの違いが構造にも微妙に影響するが、本発明は、従来公知の凝固条件からは予想できない、制御された製造条件と工程、特に中空糸型膜の凝固速度にあわせて延伸を付与することによって達成できたものである。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(溶出物(UV値)の測定)
中空糸型膜1.0gを水100mlに浸漬し70℃水浴中1時間加温し試験液を調整する。試験液の吸光度を波長220〜350nmの範囲で測定する。なお人工腎臓装置承認基準では、本条件での規格を0.1以下としている。
(中空糸型膜内表面の親水性高分子量の測定)
中空糸型膜を両面テープの上に並べた後、カッターで繊維軸方向に切開し、中空糸型膜の内側が表になるように押し広げたものを試料とし、X線光電子分光(ESCA)を用いて光電子脱出角度45度にて測定する。ポリビニルピロリドンの場合、C1s、O1s、N1s、S2pスペクトルの面積強度より、装置付属の相対感度係数を用いて窒素の表面濃度(N)と硫黄の表面濃度(S)を求め、
表面PVP濃度=N×100/(N×111+S×442)
より表面PVP濃度を算出する。
(不溶成分の含有率の測定)
中空糸型膜の重量(膜重量)を測定し、製造の際に使用した溶媒で10重量%の濃度になるよう溶解する。この液を遠心分離により1500rpm、10分で不溶成分を分離し、上清を除去する。遠心、上清除去操作を3回繰返し、残った不溶成分を蒸発乾固して重量(不溶成分重量)を測定する。次の式から不溶成分の含有率を算出する。
(不溶成分の含有率)[%]=100×(不溶成分重量)÷(膜重量)
(含水率の測定)
中空糸型膜束を秤量(乾燥前重量)した後、105℃に設定した乾燥器に入れ3時間乾燥させる。デシケータ内で冷却後、秤量(乾燥後重量)する。含水率を次の式から算出する。
(含水率)[重量%]=100−(乾燥後重量)/(乾燥前重量)×100
(比抵抗の測定)
水の比抵抗は電気伝導率計(東亜電波工業株式会社製 CM-40V)にて測定した電気伝導率より算出する。
(比抵抗)[MΩcm]=1/(電気伝導率)
(内径、膜厚の測定)
中空糸型膜を長さ方向に対して垂直に鋭利な剃刀でカットし、断面を倍率200倍で顕微鏡で観察する。内径値と外径値をそれぞれn=5で測定し、平均値を算出する。
膜厚[μm]={(外径)−(内径)}/2
実施例1(中空糸型膜の製造と評価)
PES(住化ケムテックス社4800P)およびBASF社製PVP(K−90)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=8:2)にそれぞれ43重量%、3.5重量%になるよう混合し150℃で8時間撹拌し溶解、均一な溶液とした。このときのドープ溶解の加熱積は1200℃hであった。紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の重量割合は8.1重量%であった。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、紡糸原液に対して非凝固性である流動パラフィンを内腔形成剤として吐出した。吐出面積は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.04×10-3cm2、2.70×10-3cm2、吐出量は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.30ml/min、0.90ml/minであったので、吐出直後の線速度は内腔形成剤、ドープそれぞれ1127cm/min、333cm/minであった。線速度比は3.4であった。口金から凝固層までの200mmの乾式部分を経て25℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内腔形成剤を落とし込み凝固させた。このときのドラフト比は25であった。凝固浴は15重量%NMP水溶液を用いた。凝固浴中で80%延伸をかけて中空糸型膜として成形した。凝固浴へは、ステンレス製のガイドとローラーによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もステンレス製のガイドによって中空糸型膜の進路を整えた。凝固浴から引き上げた中空糸型膜は、50℃のRO水からなる水洗浴に導き90秒間浸漬通過させ、過剰のPVPと溶媒を除去した。30重量%のグリセリン水溶液浴を経ることで表面へのグリセリン塗布を行った後、70℃の熱風乾燥機中に導き乾燥処理を行った。乾燥後の中空糸型膜は、除電ブロワー(キーエンス社製 梗塞除電ブロワーSJ−F020)により静電気を除去しながらワインダーにて75m/minの速度でボビン芯に巻取った。実施例1の紡糸工程で用いた水は全てRO水であり、比抵抗は1.1MΩcmであった。得られた中空糸型膜の内径は200.7μm、膜厚は15.1μm、含水率は2.1重量%であった。
これらの中空糸型膜10098本をポリエチレン製パイプに挿入し、30cmの長さに切断しバンドルとした。
バンドルを充填率60vol%でケースに充填し、端部をウレタン樹脂で接着し、樹脂を切り出し中空糸型膜端部が開口したモジュールとした。このモジュールを20kGyでガンマ線照射して滅菌済み完成品とした。
完成したモジュールを壊し、中空糸型膜を取り出し10本束ねマイクロモジュールを作成し、血液封入試験を行った。結果を表1に示した。
完成したモジュールを用い、メチレンブルー吸着率を測定した。結果を表1に示した。
完成したモジュールの中空糸型膜について溶出物(UV値)の測定、膜内表面のPVPの量、不要成分量を測定した。結果を表1に示した。
実施例2(中空糸型膜の製造と評価)
PES(住化ケムテックス社4800P)およびBASF社製PVP(K−90)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=8:2)にそれぞれ38重量%、5重量%になるよう混合し140℃で9時間撹拌し溶解、均一な溶液とした。このときのドープ溶解の加熱積は1260℃hであった。紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の重量割合は13.2重量%であった。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、紡糸原液に対して非凝固性である流動パラフィンを内腔形成剤として吐出した。吐出面積は内腔形成剤、ドープそれぞれ、9.5×10-5cm2、39.3×10-5cm2、吐出量は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.40ml/min、1.90ml/minであったので、吐出直後の線速度は内腔形成剤、ドープそれぞれ25263cm/min、4835cm/minであった。線速度比は5.2であった。口金から凝固層までの80mmの乾式部分を経て25℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内腔形成剤を落とし込み凝固させた。このときのドラフト比は30であった。凝固浴は15%NMP水溶液を用いた。凝固浴中での20%延伸工程を経て中空糸型膜として成形した。凝固浴へは、ステンレス製のガイドとローラーによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もステンレス製のガイドによって進路を整えた。凝固浴から引き上げた中空糸型膜は、40℃のRO水からなる水洗浴に導き90秒間浸漬通過させ、過剰のPVPと溶媒を除去した。30重量%のグリセリン水溶液浴を経ることで表面へのグリセリン塗布を行った後、70℃の熱風乾燥機中に導き乾燥処理を行った。乾燥後の中空糸型膜は、除電ブロワー(キーエンス社製 梗塞除電ブロワーSJ−F020)により静電気を除去しながらワインダーにて75m/minの速度でボビン芯に巻取った。実施例2の紡糸工程で用いた水は全てRO水であり、比抵抗は1.0MΩcmであった。得られた中空糸型膜の内径は199.2μm、膜厚は14.8μm、含水率は2.2重量%であった。
モジュール化および評価は実施例1と同様に行い、結果を表1に示した。
比較例1(中空糸型膜の製造と評価)
PES(住化ケムテックス社4800P)およびBASF社製PVP(K−90)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=8:2)にそれぞれ43重量%、3.5重量%になるよう混合し150℃で12時間撹拌し溶解、均一な溶液とした。このときのドープ溶解の加熱積は1800℃hであった。紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の重量割合は8.1重量%であった。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、窒素を内腔形成剤として吐出した。吐出面積は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.04×10-3cm2、2.70×10-3cm2、吐出量は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.28ml/min、0.88ml/minであったので、吐出直後の線速度は内腔形成剤、ドープそれぞれ1116cm/min、325cm/minであった。このときの線速度比は3.4であった。口金から凝固層までの20mmの乾式部分を経て25℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内腔形成剤を落とし込み凝固させた。このときのドラフト比は25であった。凝固浴は15重量%NMP水溶液を用いた。凝固浴中での延伸をかけずに中空糸型膜として成形した。凝固浴へは、ステンレス製のガイドとローラーによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もステンレス製のガイドによって中空糸型膜の進路を整えた。凝固浴から引き上げた中空糸型膜は、50℃の水道水からなる水洗浴に導き90秒間浸漬通過させ、過剰のPVPと溶媒を除去した。30重量%のグリセリン水溶液浴を経ることで表面へのグリセリン塗布を行った後、70℃の熱風乾燥機中に導き乾燥処理を行った。乾燥後の中空糸型膜をワインダーにて75m/minの速度でボビン芯に巻取った。得られた中空糸型膜の内径は200.5μm、膜厚は14.9μm、含水率は2.1重量%であった。
モジュール化および評価は実施例1と同様に行い、結果を表1に示した。
内腔形成剤が窒素であり、液体でないことから、ドープとの界面に摩擦起こりにくく、適度な陰性荷電のコントロールができなかった。さらに、洗浄工程では水道水を用いたため、表面の荷電のコントロールができなかった。エアーギャップ長が短いこと、凝固浴中での延伸工程がなかったことから、内表面構造に均一性がなく、中空糸型膜内表面の状態を最適にすることができず、また、ドープの溶解に要した時間が長く、PVPが一部架橋し、表面の新疎水性バランスが悪く、そのため表面からの微量の溶出が無く、血液封入試験では血栓を形成し、血液適合性に劣ったと考えられる。
比較例2(中空糸型膜の製造と評価)
PES(住化ケムテックス社4800P)およびBASF社製PVP(K−90)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=8:2)にそれぞれ43重量%、3.5重量%になるよう混合し150℃で9時間撹拌し溶解、均一な溶液とした。このときのドープ溶解の加熱積は1350℃hであった。紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の重量割合は8.1重量%であった。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、流動パラフィンを内腔形成剤として吐出した。吐出面積は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.04×10-3cm2、2.70×10-3cm2、吐出量は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.30ml/min、1.20ml/minであったので、吐出直後の線速度は内腔形成剤、ドープそれぞれ1127cm/min、444cm/minであり、吐出直後の線速度の比は2.5倍であった。口金から凝固層までの20mmの乾式部分を経て25℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内腔形成剤を落とし込み凝固させた。このときのドラフト比は25であった。凝固浴は15重量%NMP水溶液を用いた。凝固浴中で20%の延伸をかけ中空糸型膜として成形した。凝固浴へは、ステンレス製のガイドとローラーによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もステンレス製のガイドによって中空糸型膜の進路を整えた。凝固浴から引き上げた中空糸型膜は、50℃のRO水(比抵抗は1.0MΩcm)からなる水洗浴に導き90秒間浸漬通過させ、過剰のPVPと溶媒を除去した。30重量%のグリセリン水溶液浴を経ることで表面へのグリセリン塗布を行った後、70℃の熱風乾燥機中に導き乾燥処理を行った。乾燥後の中空糸型膜をワインダーにて75m/minの速度でボビン芯に巻取った。得られた中空糸型膜の内径は189.5μm、膜厚は16.9μm、含水率は1.9重量%であった。
モジュール化および評価は実施例1と同様に行い、結果を表1に示した。
吐出直後の線速度の比(内腔形成剤の線速度/ドープの線速度)が2.5倍と低く、ドープと内液界面での摩擦が十分でなく、適度な陰性荷電にコントロールすることが出来なかった。このことから、血液封入試験では血栓を形成し、血液適合性に劣ったと考えられる。また、乾燥工程では、過乾燥状態となったため、溶出物が基準より多い結果となった。
比較例3(中空糸型膜の製造と評価)
PES(住化ケムテックス社4800P)およびBASF社製PVP(K−90)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=8:2)にそれぞれ43重量%、3.5重量%になるよう混合し150℃で9時間撹拌し溶解、均一な溶液とした。このときのドープ溶解の加熱積は1350℃hであった。紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の重量割合は8.1重量%であった。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、流動パラフィンを内腔形成剤として吐出した。吐出面積は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.04×10-3cm2、2.70×10-3cm2、吐出量は内腔形成剤、ドープそれぞれ、10.2ml/min、1.20ml/minであったので、吐出直後の線速度は内腔形成剤、ドープそれぞれ5000cm/min、444cm/minであり、吐出直後の線速度の比は11倍であった。口金から凝固層までの20mmの乾式部分を経て25℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内腔形成剤を落とし込み凝固させた。凝固浴は15重量%NMP水溶液を用いた。凝固浴中で20%の延伸をかけ中空糸型膜として成形した。凝固浴へは、ステンレス製のガイドとローラーによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もステンレス製のガイドによって中空糸型膜の進路を整えた。凝固浴から引き上げた中空糸型膜は、50℃のRO水(比抵抗は1.0MΩcm)からなる水洗浴に導き90秒間浸漬通過させ、過剰のPVPと溶媒を除去した。30重量%のグリセリン水溶液浴を経ることで表面へのグリセリン塗布を行った後、70℃の熱風乾燥機中に導き乾燥処理を行った。乾燥後の中空糸型膜をワインダーにて75m/minの速度でボビン芯に巻取った。得られた中空糸型膜の内径と膜厚を測定したが、膜厚、孔径共に不揃いであった。含水率は1.8重量%であった。
モジュール化および評価は実施例1と同様に行い、結果を表1に示した。
吐出直後の線速度の比(内腔形成剤の線速度/ドープの線速度)が11倍と高く、安定した紡糸ができなかったため、均一な中空糸型膜が得られず、内表面の状態が悪く、血液適合性に劣る結果となったと考えられる。また、乾燥工程では、過乾燥状態となったため、溶出物が基準より多い結果となった。
比較例4(中空糸型膜の製造と評価)
PES(住化ケムテックス社4800P)およびBASF社製PVP(K−90)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=8:2)にそれぞれ45重量%、0.5重量%になるよう混合し150℃で9時間撹拌し溶解、均一な溶液とした。このときのドープ溶解の加熱積は1350℃hであった。紡糸原液中の疎水性高分子に対する親水性高分子の重量割合は1.1重量%であった。この溶液を十分減圧脱泡した後、孔径40μmの焼結フィルターで濾過し、不純物を除いて紡糸原液とし120℃でキープした。この紡糸原液を120℃に加熱した二重環状スリット口金から吐出すると同時に、流動パラフィンを内腔形成剤として吐出した。吐出面積は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.04×10-3cm2、2.70×10-3cm2、吐出量は内腔形成剤、ドープそれぞれ、2.50ml/min、1.10ml/minであったので、吐出直後の線速度は内腔形成剤、ドープそれぞれ1225cm/min、407cm/minであった。したがって、線速度比は3.0であった。口金から凝固層までの10mmの乾式部分を経て35℃にコントロールした凝固層内に紡糸原液/内腔形成剤を落とし込み凝固させた。凝固浴は15重量%NMP水溶液を用いた。凝固浴中で50%の延伸をかけ中空糸型膜として成形した。凝固浴へは、ステンレス製のガイドとローラーによって液面方向に進路を整えた。さらに凝固液中もステンレス製のガイドによって中空糸型膜の進路を整えた。凝固浴から引き上げた中空糸型膜は、50℃のRO水(比抵抗は1.1MΩcm)からなる水洗浴に導き90秒間浸漬通過させ、過剰のPVPと溶媒を除去した。30重量%のグリセリン水溶液浴を経ることで表面へのグリセリン塗布を行った後、70℃の熱風乾燥機中に導き乾燥処理を行った。乾燥後の中空糸型膜をワインダーにて75m/minの速度でボビン芯に巻取った。得られた中空糸型膜の内径と膜厚はそれぞれ202.3μm、15.6μmであった。含水率は1.7重量%であった。
モジュール化および評価は実施例1と同様に行い、結果を表1に示した。
ドープのPVPとPESの比が1.1と低く、口金から凝固層までの乾式部分も10mmと短く、凝固浴温度が35℃と高いことから、親疎水性バランスのコントロールが不十分であり、内表面PVP量が低い値となった。さらに、親水性高分子量が少ないことから、容易に過乾燥状態となり、血液適合性に劣る結果となったと考えられる。またこれらのことより、内表面は物質が吸着しやすい状態であり、メチレンブルーの吸着率がいっそう高くなったと考えられる。
参考例1(中空糸型膜の評価)
市販のポリスルホン膜血液透析器について血液封入試験およびメチレンブルー吸着量を測定した。結果を表1に示した。
参考例2(中空糸型膜の評価)
市販のセルロースアセテート膜血液透析器について血液封入試験およびメチレンブルー吸着量を測定した。結果を表1に示した。
Figure 0004381088
血液浄化を目的とした中空糸型膜において、疎水性高分子と親水性高分子とからなる血液適合性に優れた中空糸型膜を得る。この中空糸型膜からなる血液浄化器はの腎臓疾患の治療法である定期的な短時間の血液浄化療法および急性疾患や重症疾患に対する持続的血液浄化療法に適応できるため、産業の発展に寄与することが大である。

Claims (4)

  1. ポリエーテルスルホン、ポリビニルピロリドン、溶媒、非溶媒からなる紡糸原液と内腔形成剤として流動パラフィンをノズルから吐出し、空中走行部を経て、凝固浴に導き、凝固浴内で延伸を掛けながら凝固させた後、水洗して中空糸型膜を得る際に、紡糸原液中のポリエーテルスルホンに対するポリビニルピロリドンの比を4〜13.2重量%とし、紡糸原液を溶解するときの加熱温度と加熱時間の積を400℃h以上1300℃h以下とし、ノズルから吐出される内腔形成剤の吐出線速度を紡糸原液の吐出線速度の3〜10倍とし、空中走行部長さを50〜300mmとし、凝固浴内で20〜80%の延伸を掛け、RO水で洗浄することにより、中空糸型膜の内腔にクエン酸加牛血液を封入し、カルシウムを含有する等張液に10分間浸漬した後の該封入血に凝固および凝固に起因する中空糸型膜のつまりを生じないことを特徴とする血液適合性中空糸型膜。
  2. 中空糸型膜を得る際に、水洗した中空糸型膜をさらに10〜70重量%のグリセリン水溶液で処理し、含水率が2.1〜15重量%になるように乾燥することにより、中空糸型膜へのメチレンブルーの吸着率が40%以上80%以下としたことを特徴とする請求項1に記載の血液適合性中空糸型膜。
  3. 中空糸型膜の血液接触表面のポリビニルピロリドンの重量割合が15〜40重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の血液適合性中空糸型膜。
  4. 中空糸型膜の不溶成分含量が2重量%以下であることを特徴とする請求項1〜いずれかに記載の血液適合性中空糸型膜。
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