請求項1に記載の発明は、永久磁石を有する回転子と三相巻線を有する固定子からなるブラシレスDCモータと、前記三相巻線に電力を供給するインバータと、三相巻線とつながる端子における電圧と任意の基準電圧のレベルを比較して信号を出力する端子電圧検出回路と、前記端子電圧検出回路が出力する信号からその信号が雑音であると判定する雑音判定部と、雑音と区別して真の相対位置信号であることを判定する信号判定部と、基本的には前記信号判定部が検出した回転子の相対位置に応じて波形を出力するが雑音発生時間が任意の時間以上継続した時には波形を強制的に出力することもできる位置検駆動波形発生部と、所定周波数を変化させながらその周波数に同期させて通電角180度未満の波形を出力する同期駆動波形発生部と、前記同期駆動波形発生部と前記位置検駆動波形発生部とをモータの運転状態によって切り替える切替判定部とを有し、モータの運転状態に応じて最適な駆動手段に切り替えて運転するものであり、強制的に波形を発生させることもできる位置検駆動波形発生部がモータを駆動している最中に、端子電圧検出回路から回転子の位置情報が出力されない様な負荷状態から一向に回避されない場合には、所定の周波数を変化させながらその周波数に同期させて波形を出力する同期駆動波形発生部に切り替え、同期駆動波形発生部がモータを駆動中に、位置情報が出力されるような負荷状態になった場合には、位置検駆動波形発生部に切り替える切替判定部を備えることで、運転状態に応じて最適な駆動手段に切り替えて運転継続を可能にし、システムの異常停止、不安定運転時に発生する騒音・振動、ピーク電流を回避することができ、システムの安定性向上といった効果を発揮できる。また、効率が必要なときは位置情報を認識しながらの運転、位置情報が認識しにくい高速運転時には所定周波数を変化させながら同期して駆動する運転に切り替えることができる装置でもあり、低速で高効率な運転から高速で高トルクな運転まで幅広く運転できるというような性能向上にも効果を発揮できる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ブラシレスDCモータが、回転子の鉄心に永久磁石を埋め込んでなる回転子であり、かつ突極性を有する回転子を有したものであり、スパイク幅が比較的大きくなる特性を持つモータにおいても、たとえ位置情報が認識できなくても運転を実現し、モータのロック状態からの回避などモータ自身の信頼性向上や、高効率モータ(低トルクモータ)の高速運転時における安定性の向上といった効果を発揮する。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、ブラシレスDCモータが圧縮機を駆動するものであり、冷蔵庫やエアコンなど高効率で低速な運転から高トルクで高速な運転まで広い運転範囲を必要とされるシステムの圧縮機において、通常運転されている状態である低速領域では効率を向上させ、急冷・急凍・システムインしたイニシャル時などの高速領域ではトルクを安定して上昇することができるといった効果を発揮する。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のブラシレスDCモータの駆動装置を搭載した冷蔵庫であり、圧縮機の不安定状態から速やかに脱出できることで、それが引き起こす脱調停止を防止することが可能となり、冷蔵庫における不冷、鈍冷現象の発生を防止するといった効果を発揮する。また、安定した高速運転を可能とすることによる急冷性能の向上、更には回転数変動、騒音・振動の抑制効果もあり、省エネ、ハイパワー、静音といった多岐にわたるニーズのある冷蔵庫においてこれらの効果は非常に重要である。
以下、本発明による冷蔵庫の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における波形発生部による駆動に関するブラシレスDCモータの駆動装置のブロック図である。
図1において、商用電源1は、日本の場合周波数50Hzまたは60Hz、電圧100Vの交流電源である。
整流回路2は商用電源1の交流電圧を直流電圧に変換する。整流回路2はブリッジ接続された整流用ダイオード2a〜2dと平滑用の電解コンデンサ2e、2fと電圧調整回路2gからなり、図1に示すような倍電圧整流回路の場合、商用電源1のAC100V入力から280V程度の直流電圧を得ることができる。ここでは倍電圧整流としたが、電圧調整回路2gは直流電圧可変式のチョッパ回路や倍電圧整流/全波整流の切替方式回路に相当する。
インバータ回路3は、6個のスイッチ素子3a、3b、3c、3d、3e、3fを3相ブリッジ構成されている。また、各々のスイッチ素子には各スイッチ素子の逆方向に還流電流用のダイオードが入っているが本図では省略している。
ブラシレスDCモータ4は、永久磁石を有する回転子4aと3相巻線を有した固定子4bとからなる。インバータ3により作られた3相交流電流が固定子4bの3相巻線に流れることにより、回転子4aを回転させることができる。回転子4aの回転運動はクランクシャフト(図示せず)により、往復運動に変更され、ピストン(図示せず)がシリンダ(図示せず)内を往復運動することにより、冷媒を圧縮する圧縮機の駆動を行う。なお、スイッチ素子3a(3b)と接続された3相巻線部分をU相巻線、スイッチ素子3c(3d)と接続された3相巻線部分をV相巻線、スイッチ素子3e(3f)と接続された3相巻線部分をW相巻線と呼ぶことにする。
また、3相巻線とスイッチ素子と端子電圧検出回路との接続点である図中のU、V、WをU端子、V端子、W端子と呼ぶことにする。
端子電圧検出回路5は、U端子、V端子、W端子のそれぞれの電圧と予め設定された基準電圧との比較を行い、電圧変化の情報を出力することができる。なお、この出力情報から、ブラシレスDCモータ4の運転状態を検出することが可能となる。具体的には、ブラシレスDCモータ4の永久磁石を有する回転子4aが回転することにより発生する逆起電圧から、回転子4aの回転相対位置を検出することが可能となる。また、還流電流用ダイオードに電流が流れる時間の増減を検出することにより、モータ電流の乱れや負荷状態の変化を検出することも可能となる。
なお、U、V、Wの3つの端子に発生する電圧からブラシレスDCモータ4の運転状態を検出する構成としたが、回転子4aの位置検出やモータ電流の状態検出などが可能な手段であれば電流検出などの他の手段を用いた構成でも良い。
雑音判定部6は、端子電圧検出回路5から出力される信号をもとにして、回転子4aの相対位置に関する信号を阻害する雑音とその発生時間を検出し雑音の終了を判定する。例えば、端子電圧検出回路5が、前述のような3相巻線の各相の端子電圧と任意の基準電圧との比較から信号を出力する構成をとる場合、インバータ3のスイッチ素子3a〜3fがoffした時に発生するスパイク電圧を検出し、その終了時点にスパイク電圧の発生時間とスパイク電圧が終了したという情報を信号判定部7に出力する。
信号判定部7は、雑音判定部6から雑音終了の情報をもとに、端子電圧検出回路5から出力される信号を区別して判定する。具体的には、雑音終了情報を受信した後に端子電圧検出回路5の出力信号が変化を検出して回転子4aの位置信号であると認識する。
波形発生部8は、信号判定部7が出力する雑音の終了情報と回転子4aの位置情報をもとに、ロジカルな信号変換を行い、インバータ3のスイッチ素子3a、3b、3c、3d、3e、3fを駆動する信号を作り出す。ただし、一定時間経過しても雑音が終了しない場合には、位置情報に応じず、目標周波数やその時点の実周波数をもとに強制的に波形を出力する機能も波形発生部8は有している。また、位置情報に応じた運転中には、回転数を一定に保つためにPWM制御のデューティ制御や通電角の制御も行っている。回転位置に従って、ブラシレスDCモータ4の実回転数を検出し、目標回転数との比較を行いながら最適なデューティで運転させることができるため、最も効率的な運転が可能となる。この実回転数の検出は信号判定部7による位置信号の出力タイミングから一定時間カウントまたは周期測定などによって実現可能である。
ドライブ部9は、波形発生部8からの出力信号により、インバータ3のスイッチ素子3a、3b、3c、3d、3e、3fを駆動する。この駆動によりインバータ3から最適な交流出力をブラシレスDCモータ4に印加することができるので回転子4aを回転させることができる。
マイクロコンピュータ10は前述の機能を実現する。これらの機能はマイクロコンピュータのプログラムによって実現可能である。
基準電位Gは本ブロック図中の電位の基準となる点で、整流ダイオード2dと電解コンデンサ2fの接続点にあたる。商用電源1が供給する電圧がAC100Vの場合、この基準電位Gと電解コンデンサ2e−整流ダイオード2cの接続点との間に280V程度の直流電圧を得ることができ、インバータ3に供給されることになる。
次に図1における動作について、図1、図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態1における波形発生部による駆動時の雑音判定部と信号判定部の動作を示した模式図である。
本図2は、波形発生部8による運転における、3相巻線のうちのU相に関わる2つのスイッチ素子3a、3bにドライブ部9が出力する信号波形と、U端子と基準電位G間の電位差を観測した電圧波形“U相電圧”と、その電圧と基準電圧との比較結果から端子電圧検出回路5が出力する信号波形“U5”とをa)からc)の運転状態に区別して示している。電圧波形“U相電圧”の左端に記されているPはインバータ3に供給される電圧(ポジティブ側の電位)を示しており商用電源1がAC100Vの場合280V程度の直流電圧に相当する。また、Nはインバータ3に供給される電圧の基準電位G(ネガティブ側の電位)を示しており0Vに相当する。本図において上から、a)は端子電圧検出回路5が位置信号を出力しているときの波形、b)は端子電圧検出回路5が位置信号を出力していないときの波形、c)は回転子4aがロック状態であるときの波形をそれぞれ示している。但しここでは、進角7.5°で運転しているときの波形をもとに説明するが、本実施例が進角を限定するわけではないことを補足しておく。また、進角とは、回転子4aの回転によって発生する逆起電圧に対する固定子4bに流れる電流の進み度合いを電気角で表したものである。なお、ここでは説明を簡易にするため代表してU相の説明だけに留めるが、他の2相V相、W相についても全く同じ動作をする。また、ここでは、通電角150°の場合についてのみ説明し、150°以下の他の通電角についても同様なので省略する。
まず、これら3つの波形について説明する。第一に、ドライブ部10が出力する信号波形について説明する。スイッチ素子3a、3bともに電気角にして150°の間ON、210°の間offといった動作を繰り返す。本図では、スイッチ素子3aが150°導通、スイッチ素子3bが210°非導通となるタイミングを中心に信号波形が記されている。本図の中央付近で縦に描かれている二点鎖線は、スイッチ素子3aの導通期間の中央位置を示している。なお、この図はデューティ100%運転時の信号波形である。第二に、U相の電圧波形“U相電圧”について説明する。ここでは、便宜上図a)を用いて説明する。左の方には凸状、右の方には凹状の網掛部分があるが、これをスパイク電圧と呼ぶことにする。スパイク電圧は、スイッチ素子3a、3bがoffした直後に、固定子4b(U相巻線)に蓄えられたエネルギが還流用ダイオードを通して放出される間発生し、offする直前におけるU相巻線に流れていた電流とU相巻線のインダクタンス等によって発生時間が変化する。そのため、蓄えられていたエネルギによってはこのスパイク電圧の幅は大きくなったり小さくなったりして、場合によっては発生しない場合もある。スイッチ素子3b(ネガティブ側)がoffした時は還流ダイオードを通して電解コンデンサ2e側(ポジティブ側)に電流を回生させるため凸状になり、スイッチ素子3a(ポジティブ側)がoffした時は電解コンデンサ2f側(ネガティブ側)に電流を回生させるため凹状になる。また、左の方には右上がり状、右の方には右下がり状の太線破線部分があるが、これは回転子4aが回転することにより発生する逆起電圧がU相の電圧波形上に現れている部分である。逆起電圧は、3相巻線のU相、V相、W相のそれぞれについて現れるが、各相に接続されている2つのスイッチ素子がともにoff中であるときのみ現れる。つまりU相の場合、スイッチ素子3a、3bのどちらかがONすると電圧波形がP側、N側に張り付いてしまうため、両スイッチ素子がともにoffの時だけ現れる。そして、中央付近に横に描かれている点線は端子電圧検出回路5が3相巻線の電圧波形から信号を出力するために必要となる基準電圧である。この基準電圧を示す点線上にある丸印はスパイク電圧との交点を表し、同点線上にある米印は逆起電圧との交点を表している。第三に、端子電圧検出回路5が出力する信号“U5”について説明する。端子電圧検出回路5は、基準電圧とU相電圧波形とを比較して、U相電圧波形の方が小さい場合にはロウレベル信号(以降、L信号という)を出力し、逆に大きい場合はハイレベル信号(以降、H信号という)を出力する。波形上の丸印は、スパイク電圧終了時に出力された信号のエッジ部を示している。米印は、逆起電圧と基準電圧が同レベルになったときに出力された信号のエッジ部を示し、この米印部分のエッジが回転子4aの相対位置を表すことになる。
次に、各運転状態毎に描かれた図a)、b)を用いて雑音判定部6、信号判定部7、波形発生部8の動作について詳しく説明する。なお、図c)のロック状態については他の図を用いて後に説明するのでここでは割愛する。
図中a)は通常運転状態にあるときの波形を表した図である。図からも分かるようにスパイク電圧の幅が7.5°(22.5°未満)の場合、逆起電圧波形はスイッチ素子3a、3bのON動作前に現れ、なおかつ基準電圧と交差するので、相対位置(○印)も、スパイク電圧(雑音)の終了時点(*印)も共に検出可能となる。
波形発生部8による駆動中に、電流が十分低く安定した運転を行っている場合、通常状態a)の様な波形となっている。まず、雑音判定部6が、スイッチ素子3a、3bの両方offの期間(スイッチ素子3bがoffしてから3aがONするまでの間、もしくは、スイッチ素子3aがoffしてから3bがONするまでの間)端子電圧検出回路5からの信号を観測し、その信号レベルの変化点を検出することでスパイク電圧(雑音)終了時点を認識する(図中○印)。次に、雑音判定部6から雑音終了の信号を入力した信号判定部7は、端子電圧検出回路5から出力される信号を観測しながら波形発生部8に雑音発生が終了したという情報を出力する。そして、端子電圧検出回路5が、逆起電圧と基準電圧が交差するポイントで信号のレベルを変化させた時点で、その変化を入力した信号判定部7は位置信号と判定して波形発生部8にその情報を出力する。その後、波形発生部8は、その位置信号をもとに進角が7.5°となるように波形を出力する。すなわち、信号判定部7が出力する位置信号を受け取った時点から電気角にして7.5°経過した時点で波形発生部8がドライブ部9に波形を出力する。さらに、波形発生部8は、信号判定部7から位置信号が出力される周期も観測し、目標の周期に合致するようにデューティや通電角を調整した上で波形を出力して、回転数が一定になるよう制御している。
図中b)は過負荷運転状態にあるときの波形を表した図である。図からも分かるようにスパイク電圧幅が22.5°(22.5°以上)の場合、逆起電圧波形はスイッチ素子3a、3bのON動作前に現れるものの、基準電圧とは交差しないので、相対位置の検出も、スパイク電圧の終了時点の検出もともにできない状態となる。
波形発生部8による駆動中に、負荷トルクが上昇してくると、モータ電流が増加し、スパイク電圧(雑音)の発生時間が拡大された過負荷状態b)の様な波形となっている。まず、雑音判定部6が、スイッチ素子3a、3bの両方offの期間(スイッチ素子3bがoffしてから3aがONするまでの間、もしくは、スイッチ素子3aがoffしてから3bがONするまでの間)端子電圧検出回路5からの信号を観測する。しかし、雑音が終了すると同時に逆起電圧が基準電圧のレベルに達しているため、端子電圧検出回路5が出力する信号レベルが変化せず、雑音判定部6は一向に雑音終了時点を検出することができない。また、雑音判定部6から雑音終了の信号を入力できないため、信号判定部7は端子電圧検出回路5から出力される信号の観測を開始できず、位置信号を検出できない。そして、信号判定部7から位置情報はおろか雑音終了情報も入力できない波形発生部8は、任意の時間以上情報が入力されないために、予め決定されている時間経過後に強制的に波形を出力する。この様にして、位置情報が無くても運転を継続し、トルクが低くなってくるとb)の右側波形のように位置検出可能な通常状態に変化する。例えば、ブラシレスDCモータ4が圧縮機を駆動するモータの場合、圧縮機の吸入行程から吐出行程に向かう間は負荷トルクが段々高くなっているが、逆に吐出行程から吸入行程に向かう間は負荷トルクが段々低くなっている。この様に負荷変動の有るシステムにおいては、b)左側のように雑音幅が大きくなる高負荷時だけ強制的に波形を発生させて運転を継続すれば、次第にb)右側の様な雑音幅の小さい波形に変化していく。言いかえると、圧縮機のようなシステムを運転する場合の波形がb)の様な波形となる。
次に図1における詳細な動作について、図1〜図5を用いて更に詳しく説明する。
図3は、本実施の形態1における無視期間を有していない雑音判定部と信号判定部の動作を示したフローチャートである。なお図3から図5では、3相巻線のどの相の場合も動作が共通しているので、代表してU相の動作を説明する。
なお、図3においてSTEP31、STEP32は雑音判定部6の処理、その他は信号判定部7の処理である。
まず、STEP31において、波形発生部8が出力するスイッチ素子3a、3bに対する信号の両方がoffであるかどうかを判定している。その判定の結果、ともにoffしていればSTEP32に移行する。スイッチ素子3a、3bのどちらかがONしている場合はスタートに戻る。
また、STEP32において、端子電圧検出回路5からの信号を入力し、雑音が終了したかどうかを判定している。判定の結果、雑音が終了していればSTEP33に移行する。終了していなければスタートに戻る。判定方法は、スイッチ素子3aがONされる直前の場合はL信号、3bがONされる直前の場合はH信号が入力された時に雑音が終了したと判定する。この様な判定方法なので、雑音が発生しなかった場合でも終了したという判定が可能となる。次に図2のa)を用いて、スイッチ素子3bがoffしてから3aがONするまでの間を例にとって、雑音終了検出動作について説明する。スイッチ素子3bがoffすると、図2からわかるように雑音(スパイク電圧)が発生し、端子電圧検出回路5がH信号を出力する。雑音が終了すると、端子電圧検出回路5はL信号を出力し、雑音判定部6がスパイク電圧の終了時点と判定してSTEP33に移行する。ただし、スイッチ素子3bがoffしても雑音が発生しなかった場合は、端子電圧検出回路5はoff前後で同じL信号を出力し続けるので、雑音判定部6はSTEP32でoff判定した直後に雑音終了を判定しSTEP33に移行することになる。また、ここでは雑音終了判定1処理で雑音終了と判定されれば直ちにSTEP33に移行しているが、スパイク電圧終了時に発生する雑音の除去等の目的で、時間判定処理をSTEP33の前に挿入される場合もあることを補足しておく。ここでいうスパイク電圧終了時に発生する雑音の長さや大きさは、還流ダイオードの特性によって左右される。
また、STEP33において、端子電圧検出回路5から出力される信号のレベルの変化を観測、判定している。判定の結果、変化が生じていればSTEP34に移行する。変化が生じていなければSTEP35に移行する。判定方法は、スイッチ素子3aがONされる直前の場合はH信号、3bがONされる直前の場合はL信号が入力されている時に雑音終了時のレベルに比べて信号に変化が生じたと判定する(つまり、相対位置信号が入力されたと判定することになる)。このことからもわかるように、前述の雑音終了時点の判定と逆の論理の判定となり、信号レベルがスパイク電圧終了時点から反転した時に相対位置信号が入力されたと判定する。次に図2のa)を用いて、スイッチ素子3bがoffしてから3aがONするまでの間を例にとって、相対位置信号検出動作について説明する。スパイク電圧(雑音)が終了すると、図2からわかるように“U相電圧”には逆起電圧が現れ、しばらく端子電圧検出回路5はそのままL信号を出力しているのでSTEP35に移行する。その後、逆起電圧が基準電圧よりも高くなった時に端子電圧検出回路5はH信号を出力し、信号判定部7が位置信号を入力し終わったと判定しSTEP34に移行する。
また、STEP34において、波形発生部8に相対位置信号の検出情報を出力し、スタートに戻る。信号検出情報とは、スイッチ素子がoffしてから信号判定部7が相対位置信号を検出するまでの時間で表される位置信号検出時間などを指す。
最後に、STEP35において、波形発生部8に対して雑音終了情報を出力し、スタートに戻る。
図4は、本実施の形態1における無視期間を有している雑音判定部と信号判定部の動作を示したフローチャートである。また、本図において、図3と共通の処理については既に説明しているので説明を割愛する。
なお、図4においてSTEP41、STEP42は雑音判定部6の処理、その他は信号判定部7の処理である。
まず、STEP41において、波形発生部8が出力するスイッチ素子3a、3bに対する信号の両方がoffになってから予め設定されている任意の時間が経過したかどうかを判定している。その判定の結果、時間が経過していればSTEP42に移行する。時間が経過していない場合はスタートに戻る。ここでいう任意の時間とは、スパイク電圧(雑音)を無視するために設けられた時間であり、この期間において雑音判定部6は端子電圧検出回路5の信号を入力しない。
次に、STEP42において、端子電圧検出回路5からの信号を入力し、雑音が終了したかどうかを判定している。判定の結果、雑音が終了していればSTEP33に移行する。終了していなければスタートに戻る。ただし、この判定はSTEP41から移行したときだけ行い、その時点の判定結果が保持されるような処理となっている。つまり、スイッチ素子3a、3bに対する信号の両方がoffになってからの経過時間が任意に設定された時間と一致したときのみ判定し、判定の結果雑音が終了していればスイッチ素子3a、3bのどちらかがONするまでSTEP33への移行を継続し、終了していなければスタートに戻り続ける処理となっている。判定方法は、スイッチ素子3aがONされる直前の場合はL信号、3bがONされる直前の場合はH信号が入力されている時に雑音終了状態にあると判定する。この様な判定方法なので、雑音が発生しなかった場合でも終了したという判定が可能となる。次に図2を用いて、スイッチ素子3bがoffしてから3aがONするまでの間を例にとって、雑音終了検出動作について説明する。なお、ここではSTEP41で設定されている無視期間を電気角にして15°として説明する。1例としてa)においては、端子電圧検出回路5は、雑音の発生と共に電気角にして7.5°の間H信号を出力した後にL信号を出力している。雑音の発生時間“7.5°”が無視期間“15°”に対して短いため、雑音終了判定2処理が初めて実行される時点において既に雑音が終了しており、それ以降は必ずSTEP33に移行することとなる。他の例としてb)においては、端子電圧検出回路5は、電気角にして22.5°の間H信号を出力した後にL信号を出力している。雑音の発生時間“22.5°”が無視期間“15°”に対して長いため、雑音終了判定2処理が初めて実行される時点において未だ雑音が終了おらず、それ以降は必ずスタートに戻ることとなる。無論、スイッチ素子3bがoffしても雑音が発生しなかった場合は、常にSTEP33に移行することとなる。また、ここでは雑音終了判定2で終了と判定されれば直ちにSTEP33に移行しているが、スパイク電圧終了時に発生する雑音の除去等の目的で、時間判定処理をSTEP33の前に挿入される場合もあることを補足しておく。ここでいうスパイク電圧終了時に発生する雑音の長さや大きさは、還流ダイオードの特性によって左右される。
STEP33からSTEP35については、既に図3にて説明済みであるので詳しい説明は割愛するが、図3の処理方法と図4の処理方法との違いについて説明を加える。まず、図3では無視期間を設けず、図4では無視期間を設けている点がいうまでもないことではあるが一番大きな違いである。すなわち、図3の処理方法ではタイマ演算処理などの時間計測処理(タイマ割込処理)が省略できる。しかし、無視期間を設けていないために位置信号を検出する処理(外部割込処理)の前に、端子電圧検出回路5の出力信号の変化を検出する外部割込処理をもう一度設ける必要がある。これに引き替え、図4の処理方法であればタイマ割込処理が一つ必要ではあるものの、外部割込処理は1度だけ実行すればよいことになる。なお、タイマ割込処理や外部割込処理はマイクロコンピュータ10が有する特色ある機能であり、マイクロコンピュータによってはどちらかの割込処理だけに高性能である場合がある。図3、図4に示す2つの方法は、マイクロコンピュータの性能に応じて使い分けられることがある。
図5は、本実施の形態1における波形発生部の動作を示したフローチャートである。
まず、STEP51において、信号判定部7が出力する情報からスパイク電圧(雑音)の終了を検出できたかどうかを判定している。判定の結果、雑音の終了が検出できていればSTEP52に移行する。終了を検出できていなければSTEP550に移行する。
次に、STEP52において、信号判定部7が出力する情報から位置信号を検出できたかどうかを判定している。判定の結果、位置信号が検出できていればSTEP530に移行する。位置信号が検出できていなければSTEP540に移行する。
また、STEP530において、信号判定部7が位置信号を検出してから所望の進角を実現するための時間が経過したかどうかを判定している。判定の結果、経過していればSTEP531に移行する。経過していなければスタートに戻る。ここで、判定方法について図2a)を用いてもう少し詳しく説明する。本図では進角7.5°、通電角150°の場合の波形を表しており、位置信号が検出された米印のポイントから電気角にして7.5°経過した時点で波形発生部8はスイッチ素子3aがONとなるような波形を発生している。電気角7.5°は、回転周波数が180Hzの場合およそ116μsecに相当する。つまり、本進角判定処理における判定条件(判定時間)は、この例の場合、116μsecとなる。
また、STEP531において、位置検出駆動波形出力処理を実行しスタートに戻っている。本処理では、位置検出信号に応じてデューティや通電角、波形を出力するタイミングを調整しており、それによって所望の周波数での運転が安定して継続できるようになる。
また、STEP540において、運転状態の異常判定をしている。判定の結果、異常状態であると判定した場合にはSTEP541に移行する。異常状態でない場合はスタートに戻る。ここで判定方法について詳しく説明する。本STEP540に移行するのは、雑音が終了しているにもかかわらず位置信号が検出されない状態である。正常な運転状態において雑音が終了していれば、3相巻線の各相に接続されている2つのスイッチ素子が共にoffしてから電気角にしておよそ30°(通電角が150°の場合)の時間が経過するまでに位置信号が発生するはずである。しかし、端子電圧検出回路5が突然故障した場合や回転子4aの回転速度が急激に低下した場合など極めて異常な状態が起こった時には電気角にして30°の時間が経過しても位置信号が発生しない。そこで、本判定処理においては、スイッチ素子3a、3bがともにoffされた時点から十分な時間が経過しているにもかかわらず、位置信号が検出されない場合には異常状態と判定してSTEP541に移行する。なお、ここでいう“十分な時間”とは、位置信号検出されるのに十分な時間のことであるから、例えば、電気角にして60°相当の時間とする。ちなみに、運転周波数が180Hzの場合、60°はおよそ926μsecに相当する。
また、STEP541において、保護動作処理を実行してスタートに戻る。ここでは、STEP540にて異常状態と判定されているから、モータを不安全状態から脱出させるために、直ちに波形出力を停止する等の処理を行う。
また、STEP550において、運転状態が過負荷状態かどうかを判定している。判定の結果、過負荷状態であればSTEP551に移行する。過負荷状態でなければスタートに戻る。ここで判定方法について詳しく説明する。雑音終了が検出されていない状態で本STEP550に移行する。通常の負荷状態で運転している場合、3相巻線の各相に接続されている2つのスイッチ素子が共にoffしてから電気角にしておよそ30°(通電角が150°の場合)の時間が経過するまでに雑音終了が検出されるはずである。しかし、過負荷状態(モータ電流が大いに必要な負荷トルクの高い状態)においては、図2のb)の様にスパイク電圧(雑音)が終了した時点で既に逆起電圧が基準電圧と交差するポイントを過ぎているために端子電圧検出回路5の信号レベルが変化しないまま電気角にして30°の時間が経過する。そこで、本判定処理では、2つのスイッチ素子3a、3bがともにoffとなってから30°の時間が経過しているにもかかわらず雑音終了時点が検出できない場合に過負荷状態と判定しSTEP551に移行する。ちなみに、30°の基準となる運転周波数が180Hzの場合、30°は463μsecに相当する。
ただし、STEP550で基準としている“運転周波数”は、“システムが目標としている所望の運転周波数”であったり、“その時点で実際に波形発生部が出力している運転周波数”であったり、場合によって判定条件を変化させた方がより高精度な判定処理となることがある点を付け加えておく。なぜなら、“所望の運転周波数”と“その時点の運転周波数”とに大きく乖離があった場合に“所望の運転周波数”を基準として波形を出力すると、その波形の出力タイミングに回転子4aの回転が追従できず、ピーク電流を発生したり、ひいては脱調停止に至ることも考えられる。逆に乖離がほとんど無かった場合には、“所望の運転周波数”を基準とした方が目標の周波数によりいっそう近づけることができるので“その時点の運転周波数”を基準とするよりも最適な判定方法であると言える。
最後に、STEP551において、強制駆動波形出力処理を実行しスタートに戻っている。ここでは、STEP550にて過負荷状態と判定されているから、位置信号が検出されなくてもモータの運転を継続させるために、直ちに波形を出力する処理を行う。
なお、STEP530、STEP540、STEP550の判定処理においては、それぞれ異なる時間を基準として判定している。一方、本実施の形態は、基本的には位置信号に応じた駆動波形を出力し、スパイク電圧(雑音)の終了時点も位置信号も共に検出できない場合にはその時の運転周波数に応じた駆動波形を強制的に出力し、雑音終了は検出できているのに位置信号が速やかに検出されない場合は異常状態と判定して波形出力を停止させるような波形発生部8を備えたブラシレスDCモータの駆動装置である。つまり、まずはSTEP531を基本処理とし、STEP531の処理が不可能な状態ではSTEP551の処理を行い、その処理も不可能な状態であればSTEP541の処理を行うといった、STEP531、STEP551、STEP541という優先順位を設ける必要がある。よって、本実施の形態を実現するためには、STEP530の判定処理における時間条件を最も短くなるように設定し、STEP540の判定処理における時間条件を最も長くなるように設定しなければならないことを補足しておく。
以上のように、本実施の形態においては雑音の終了時点を判定できる雑音判定部を有することにより、高負荷・高速運転環境下で特に起こる可能性のあるスパイク電圧(雑音)発生時間の長い状態でも、確実に位置信号を検出することが可能となり、回転数変動や脱調停止・保護停止といった不安定状態が起こりにくくなる。また、雑音判定部でも検出できないほど極めて長い時間雑音が発生した場合でも、目標周波数や実周波数に応じて強制的に波形を発せさせることもできる波形発生部を有することにより、前述のような不安定状態から脱出可能となり、システム停止の防止、システムの信頼性の確保などの効果を発揮することができる。
図10に示すような従来の駆動装置では、逆起電圧検出回路105に逆起電圧を検出する機能しか有していなかったため、回転子104aが電流位相の不安定な状態に陥ったことを検出することができなかった。そこで、スパイク電圧終了時点の検出機能を有することにより、波形発生部8による駆動中において、不安定状態の検出が可能となり、運転状態の安定化や信頼性の向上といった効果をもたらす。さらに、転流回路106は回転子104aの位置に応じた駆動しかできなかったため、雑音が極めて長い時間発生したときなどは、正確な位置情報が獲得できないために回転数変動を起こしたり、ひいては脱調停止に至るなど不安定な状態からの脱出が不可能であった。そこで、波形発生部8に位置情報を獲得できないときには強制的に波形を出力しながら運転を継続する機能を有することにより、瞬時的に発生する不安定な状態を乗り切ることが可能となり、強制駆動と位置検出駆動とを繰り返しながら運転を持続できるようになるため、システムの安定性向上や信頼性の更なる向上といった効果を発揮できる。
また、モータ効率化の手段の1つとして、固定子の巻線量(ターン数)を増加させる方式があるが、この方式ではモータの鉄損を低減できる反面、雑音発生時間が増加し、高負荷運転中(モータ電流が大いに必要な運転状態)に位置信号を検出しにくいという短所があった。このようなモータにおける駆動制御の安定化に対しても、本実施の形態の制御装置は大いに効果を発揮する。効率化の他の手段として、回転子の構造をIPM型構造にする方式もあるが、この場合もスパイク電圧自身やスパイク電圧終了時に出現する雑音の発生時間が増加傾向にあるため前述のような短所が及ぼす影響が更に大きく、IPM構造のモータに対しても本実施の形態は効果を発揮する。
更に、冷蔵庫やエアコンなど近年著しくインバータ化の進んでいる製品において、電源高調波歪みの抑制が不可欠となっている。この抑制方式としては、アクティブフィルタ方式や変圧方式などいろいろな手段があるが、特に冷蔵庫においては、安価でシステムインしやすい“リアクトル方式”が一般的な手段となっている。リアクトル方式は、電源高調波歪みを抑制する一方で、インバータに供給する電力を低減させ、その結果スパイク電圧発生時間が増加し、位置信号を検出しにくくする短所も有している。この様なインバータへの供給電力が低下した状況下での高負荷運転(モータ電流が大いに必要な運転状態)の安定化にも、本実施の形態の制御装置が非常に有用である。
図6は、本発明の実施の形態1における異常状態判定部を備えたブラシレスDCモータの駆動装置のブロック図である。なお、図6中の構成部品において図1と同じものについては、既に説明しているので割愛する。
図6において、異常状態判定部60は、信号判定部7の位置情報をもとにロック状態などの異常状態を判定する。具体的には、波形発生部8が強制的波形を出力しながら運転を継続しているにもかかわらず、一向に信号判定部7からの位置情報が入力されず、モータが安定して回転しているのかどうかが判定できない状態が、通常ではあり得ないほどの間継続した場合に、異常状態と判定する。異常状態と判定した後は、保護動作などの指令を波形発生部8に出力し、システムの運転状態を不安定な状態から脱却させる様な処理も行う。たとえば、波形出力の停止などによるシステムの保護動作処理や、波形発生部8の出力する周波数を低下させることにより電流を低下させ、位置信号を阻害している雑音の発生時間を低減させる処理によって不安定状態からの脱却を図る。
次に図1における動作について、図1、図2を用いて説明する。なお、図2に関してa)からc)に共通する内容やa)、b)に関する詳しい説明については既に終えているので割愛する。
図中c)は回転子4aがロック状態にあるときの波形を表した図である。図からも分かるように、スイッチ素子3a、3bの両方offの期間(スイッチ素子3bがoffしてから3aがONするまでの間、もしくは、スイッチ素子3aがoffしてから3bがONするまでの間)も電圧波形はP、Nのどちらかに張り付いたままとなり、相対位置の検出も、スパイク電圧(雑音)の終了時点の検出もともにできない状態となる。
波形発生部8による駆動中に、インバータ3がブラシレスDCモータ4に供給している電力に比べて負荷トルクが非常に大きい場合などは、脱調したあげくにロック状態c)の様な波形となる場合がある。雑音判定部6が、スイッチ素子3a、3bの両方offの期間(スイッチ素子3bがoffしてから3aがONするまでの間、もしくは、スイッチ素子3aがoffしてから3bがONするまでの間)端子電圧検出回路5からの信号を観測する。しかし、“U相電圧”波形がP、Nのどちらかに張り付いたままとなるため、端子電圧検出回路5が出力する信号レベルが変化せず、雑音判定部6は一向に雑音終了時点を検出することができない。また、雑音判定部6から雑音終了の信号を入力できないため、信号判定部7は端子電圧検出回路5から出力される信号の観測を開始できず、位置信号を検出できない。そして、信号判定部7から位置情報はおろか雑音終了情報も入力できない波形発生部8は、任意の時間以上情報が入力されないために、予め決定されている時間経過後に強制的に波形を出力する。この様にして、モータの運転状態情報が全く得られないながらも、強制的に波形を出力しながら転流を継続しているにも関わらず、通常では考えられないほどの間運転状態情報が得られない場合は、異常状態と判定し波形発生部8は保護動作処理を実行する。
次に図6における詳細な動作について、図2、図6,図7を用いて更に詳しく説明する。
図7は、本実施の形態1における異常状態判定部と波形発生部の動作を示したフローチャートである。また、本図において、図5と共通の処理については既に説明しているので説明を割愛する。なお、本図7においてSTEP752、STEP753、STEP754は異常状態判定部の処理、それ以外は波形発生部の処理を表している。
まず、STEP752において、強制駆動波形を出力した回数をカウントしてSTEP753に移行する。なお、この回数はSTEP52、STEP754に移行したときにクリアされる。
次に、STEP753において、異常判定2処理を実行する。判定の結果、異常状態である場合はSTEP754に移行する。正常状態である場合はスタートに戻る。ここで、判定方法について説明する。通常の運転状態においては、運転周波数に応じて強制的に波形を出力しながら転流を継続していると、信号判定部7が位置信号を検出できる負荷状態に変化してくる。たとえ、位置信号が検出できない様な負荷状態の場合でも、少なくとも雑音判定部6がスパイク電圧(雑音)の終了を検出できるような負荷状態には変化する。そこで、本判定処理では、通常考えられないほどの間、雑音終了時点すら検出できない状態が継続することを判定するために、STEP752で加算された転流回数が予め設定された任意の回数以上になったときに異常状態と判定して、STEP754に移行する。なお、“任意の回数”とは異常状態と判定するのに十分な回数であり、例えば10回転に相当する180転流回数(但し回転子4aの磁極数が6の場合)等とする。
最後に、STEP754において、保護動作2処理を実行しスタートに戻る。保護動作2処理は、システムを異常状態から脱却させるための処理であり、停止処理や回転速度減速処理がそれにあたる。図2からわかるように、STEP753で異常状態と判定される状態はb)、c)の2種類が考えられる。まず、b)の場合、回転子4aは回転しているもののスパイク電圧(雑音)が大きいために、端子電圧検出回路5が信号レベルを変化させることができないような状態である。この場合、回転子4aは回転しているから波形出力を停止させる必要はなく、雑音の発生時間を小さくする必要がある。具体的な方法としては、回転速度を小さくすることで、固定子4bに流れる電流を低減し、雑音の発生時間を抑えるという方法があり、先程述べた“回転速度減速処理”が保護動作処理となるわけである。一方、c)の場合、回転子4aはロック停止状態にあるため、速やかに波形出力を停止させてシステムを不安全状態から脱却させる必要があり、“停止処理”も保護動作処理となるわけである。本処理では、まず“回転速度減速処理”を実行し、それでもSTEP753に移行する場合には、1度目の判定回数に対して半分の回数で異常状態と判定して“停止処理”を実行するような構成にすれば、端子電圧検出回路5の出力信号だけでは、過負荷状態かロック状態かの区別が付かない場合でも、過負荷状態に誤って停止処理してしまうような誤動作を防止でき、なおかつ、ロック状態の場合でも比較的速やかに停止できることを付け加えておく。
以上のように、本実施の形態においてはシステムの異常状態から脱却できる異常状態判定部を有することにより、高負荷・高速運転環境下で特に起こる可能性のあるスパイク電圧(雑音)発生時間の長い状態でも、運転速度は低下してしまうものの、回転数変動や脱調停止・保護停止といった不安定状態が起こりにくくなる。また、端子電圧検出回路の出力信号だけでは、ロック状態か過負荷常態化の区別が付かないような場合でも、速やかに、かつ、誤動作なく不安定状態から脱出可能となり、システム停止の防止、システムの信頼性の確保などの効果を発揮することができる。
図10に示すような従来の駆動装置では、逆起電圧検出回路105に逆起電圧を検出する機能しか有していなかったため、ロック状態や過負荷状態のような運転状態では安定した運転を保証することはできなかった。そこで、スパイク電圧終了時点の検出機能と異常状態検出機能を有することにより、波形発生部8による駆動中において、不安定状態の検出が可能となり、なおかつ、誤動作なく異常状態から脱却でき、運転状態の安定化や信頼性の向上といった効果をもたらす。
また、モータ効率化の手段の1つとして、固定子の巻線量(ターン数)を増加させる方式があるが、この方式ではモータの鉄損を低減できる反面、雑音発生時間が増加し、高負荷運転中(モータ電流が大いに必要な運転状態)に位置信号を検出しにくいという短所があった。このようなモータにおける駆動制御の安定化に対しても、本実施の形態の制御装置は大いに効果を発揮する。効率化の他の手段として、回転子の構造をIPM型構造にする方式もあるが、この場合もスパイク電圧自身やスパイク電圧終了時に出現する雑音の発生時間が増加傾向にあるため前述のような短所が及ぼす影響が更に大きく、IPM構造のモータに対しても本実施の形態は効果を発揮する。
更に、冷蔵庫やエアコンなど近年著しくインバータ化の進んでいる製品において、電源高調波歪みの抑制が不可欠となっている。この抑制方式としては、アクティブフィルタ方式や変圧方式などいろいろな手段があるが、特に冷蔵庫においては、安価でシステムインしやすい“リアクトル方式”が一般的な手段となっている。リアクトル方式は、電源高調波歪みを抑制する一方で、インバータに供給する電力を低減させ、その結果スパイク電圧発生時間が増加し、位置信号を検出しにくくする短所も有している。この様なインバータへの供給電力が低下した状況下での高負荷運転(モータ電流が大いに必要な運転状態)の安定化にも、本実施の形態の制御装置が非常に有用である。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における切替判定部を備えたブラシレスDCモータの駆動装置のブロック図である。なお、図6中の構成部品において図1と同じものについては、既に説明しているので割愛する。
図8において、位置検駆動波形発生部80は、信号判定部7が出力する雑音の終了情報と回転子4aの位置情報をもとに、ロジカルな信号変換を行い、インバータ3のスイッチ素子3a、3b、3c、3d、3e、3fを駆動する信号を作り出す。ただし、一定時間経過しても雑音が終了しない場合には、位置情報に応じず、目標周波数やその時点の実周波数をもとに強制的に波形を出力する機能も位置検駆動波形発生部80は有している。さらに、任意の時間以上、もしくは、任意の転流回数以上強制的に波形を出力しているにもかかわらず、一向に信号判定部7が回転子4aの相対位置情報を出力できない状況から脱却されない場合、回転速度を減速したり保護停止したりするようなシステム保護動作を実行する機能も有している。本位置検駆動波形発生部80の駆動する信号は矩形波通電を基本として行っており、通電角が150度以下の矩形波を作り出している。また、ここでは矩形波以外でもそれに準じる波形として立ち上がり/立ち下がりに若干の傾斜を持たせた台形波であってもよい。また、位置情報に応じた運転中には、回転数を一定に保つためにPWM制御のデューティ制御や通電角の制御も行っている。回転位置に従って、ブラシレスDCモータ4の実回転数を検出し、目標回転数との比較を行いながら最適なデューティで運転させることができるため、最も効率的な運転が可能となる。この実回転数の検出は信号判定部7による位置信号の出力タイミングから一定時間カウントまたは周期測定などによって実現可能である。
同期駆動波形発生部81は、デューティを一定にしたまま、出力する周波数と通電角を変化させ、インバータ3のスイッチ素子3a、3b、3c、3d、3e、3fを駆動する信号を作り出す。この駆動する信号は通電角が180度未満の矩形波を作り出している。また、矩形波以外でも正弦波や歪波などのそれに準じる波形であってもよい。なお、同期駆動は、モータ自身の自己進角特性を活かすことにより、高トルクが求められる高回転運転領域に適応させた波形発生手段である。また、図8には示されていないが、位置信号判定部7が出力する信号から、運転状態の安定性を判断し、異常を検出した場合には保護停止などをおこなってシステムの安定化を図ることのできる構成としても良い。
本実施例において、同期駆動波形発生部81が出力する波形は、デューティ一定としているが、よりきめ細やかな制御を必要とする場合はこの限りではない。強制駆動とは、回転子4aの相対位置とは関係なく所定周波数に応じて波形を出力する駆動方法のことを指し、デューティなどの要素を一定に保つ性質まで限定するものではない。
切替判定部82は、位置検駆動波形発生部80が算出した回転数、その回転数をもとに制御しているデューティや通電角、雑音終了時点が検出できない状況で位置検駆動波形発生部80が強制的に波形を出力した連続転流回数、同期駆動波形発生部81が制御している周波数や通電角、信号判定部7からの負荷状態情報、冷蔵庫等の用途におけるシステムの温度状態といった要素に基づいてブラシレスDCモータ4の運転状態を判断し、インバータ3を動作させる波形を位置検駆動波形発生部80か同期駆動波形発生部81かを選択し切り替えるものである。たとえば、負荷トルクが低い場合位置検駆動波形発生部80からの信号を選択し、負荷トルクが高い場合同期駆動波形発生部81からの信号を選択してインバータ3を動作させる。
次に図8における動作について、図8、図9を用いて説明する。なお、本実施の形態2における位置検駆動波形発生部は、実施の形態1における波形発生部と異常状態判定部の両方の機能を有するものであり、詳細な説明については、実施の形態1における図2〜図4、図7を用いて説明は終えているのでここでは割愛する。
図9は、本実施の形態2における位置検駆動波形発生部による動作時の切替判定部の動作を示したフローチャートである。
まず、STEP91において、位置検駆動波形発生部80が強制的に波形を出力しながら転流を続けた回数が多いかどうかを判定している。判定の結果、判定回数よりも少ない場合はSTEP92に移行する。任意の回数よりも多い場合はSTEP98に移行する。強制転流回数判定処理の目的は、位置検駆動波形発生部80が、強制的に波形を出力しながら転流を繰り返しているにも関わらず一向に回転子4aの位置信号を取得できていないような異常状態(過負荷状態など)を検出することである。なお、判定回数は、確実に異常状態を検出できる回数とし、例えば180転流(回転子4aの磁極数が6の場合:10回転相当)のような回数とする。
次に、STEP92において、デューティ判定を行う。判定の結果、デューティが判定条件より大きければSTEP93に移行する。小さければSTEP94に移行する。デューティ判定処理の目的は、位置検駆動波形発生部80の運転限界(限界デューティへの到達)を検出することである。よって、判定条件となるデューティの値は100%に限りなく近い値となる。
また、STEP93において、通電角判定を行う。判定の結果、通電角が小さければSTEP94に移行する。大きければSTEP96に移行する。通電角判定処理の目的は、位置検駆動波形発生部80の運転限界(限界通電角への到達)を検出することである。よって、判定条件となる通電角の値は150°、もしくは150°に限りなく近い値となる。
また、STEP94において、システム温度判定を行う。判定の結果、システム温度が低ければSTEP95に移行する。高ければSTEP96に移行する。システム温度判定処理の目的は、位置検駆動波形発生部80の運転限界負荷(限界温度への到達)を検出することである。よって、判定条件となる温度の値はシステムにより異なり、予め実験などで抽出された限界温度の値となる。
また、STEP95において、回転数判定を行う。判定の結果、回転数が高ければSTEP96に移行する。低ければSTEP97に移行する。回転数判定処理の目的は、位置検駆動波形発生部80の運転限界(限界回転数への到達)を検出することである。よって、判定条件となる回転数の値はシステムにより異なり、予め実験などで抽出された限界回転数の値となる。
また、STEP96において、切替判定部82が同期駆動波形発生部81を選択する。STEP91〜STEP95の判定処理を終え位置検駆動波形発生部80による運転限界に達していると判定された場合に本STEP96に移行し、駆動手段を切り替えて運転する。
また、STEP97において、切替判定部82が位置検駆動波形発生部80を選択する。STEP91〜STEP95の判定処理を終え位置検駆動波形発生部80による運転限界に達していないと判定された場合に本STEP97に移行し、駆動手段をそのままにして運転を継続する。
また、STEP98において、同期駆動波形発生部82により転流した回数が多いかどうかの判定を行う。判定の結果、転流回数が判定条件より多ければSTEP99に移行する。少なければSTEP96に移行する。同期駆動回数判定処理の目的は、位置検駆動波形発生部80による駆動中に、雑音終了が検出できない負荷状態(過負荷状態またはロック状態)に陥り、STEP91にて運転限界到達していると判定され、STEP96で同期駆動波形発生部81による駆動を続けているにも関わらず、一向に雑音終了が検出できない場合に、システムが不安全な状態であることを検出することである。よって、判定条件となる転流回数は、STEP91と同様、確実に異常状態を検出できる回数とする。ただし、STEP91で一度確実に異常状態を検出しているから、ここではSTEP91ほど大きな判定回数としなくてもよく、判定回数を可能な限り小さくした方が、速やかにSTEP99へ移行可能となり、システムの安定性向上のためにも小さい方が適している。
最後に、STEP99において、保護停止処理を行う。本処理により、ロック状態などの極めて異常なシステム状態から脱却することができるようになる。
なお、STEP98、STEP99は、位置検駆動波形発生部80で駆動中に異常を検出して同期駆動波形発生部81に駆動手段を切り替えたにもかかわらず、異常状態から脱却されない場合に実行する処理であるから、厳密には同期駆動波形発生部81によって駆動中の処理となることを補足しておく。
以上のように、本実施の形態においては周波数を変化させながら強制的に同期駆動する方法に切り替えることのできる駆動手段切替機能を有することにより、位置検駆動波形発生部の運転可能限界に到達した時に速やかに同期駆動波形発生部への切替が可能となり、運転可能領域拡張などの性能向上効果を発揮することができる。また、位置検駆動波形発生部による運転中に異常な運転状態であることは判別できるものの、回転子がロック状態に陥っているか、過負荷状態にて運転しているのかが不明な場合でも、同期駆動波形発生部に一旦切り替えることでそれらの状態の区別が可能となり、過負荷状態で運転中の誤動作による保護停止を防止でき、モータ駆動の安定性向上といった効果を発揮することができる。さらに、同期駆動波形発生部に切り替えても異常な運転状態から脱却できない状態に陥った場合にロック状態であることを速やかに検出することが可能となり、異常状態では速やかなるシステム停止も実現でき、モータ自身やシステム全体の信頼性向上といった効果も発揮できる。
図10に示すような従来の駆動装置では、逆起電圧検出回路105に逆起電圧を検出する機能しか有していなかったため、回転子104aの電流位相が非常に遅れている状態やスパイク電圧発生時間が長いこと、ロック状態に陥ったことを区別して検出することができず、切替回路109は備えているものの適切な判断ができずに転流手段を切り替えることができなかった。つまり、図2のb)、c)の区別ができないために、ロック状態時に実行する緊急停止処理の優先が不可欠となり、正常にb)の状態で運転している場合でも停止せざるを得なかった。そこで、スパイク電圧終了時点が検出できないときには、強制的に波形を出力する機能を有することにより一時的な運転継続が可能となる。また、所定周波数を変化させながら同期駆動する方法に切り替えることのできる駆動手段切替機能とを有することにより、強制的に波形を出力しながら運転を継続しても一向に雑音終了時点が検出できない場合でも、一旦同期駆動に切り替えて進角を増加させ、雑音終了時点を検出しやすくすることで、ロック状態との区別を正確に判断することが可能となる。これら2つの機能を備えることで過負荷運転中の誤動作(保護停止)を防止できるといった効果をもたらす。また、電流の実効値が増加し雑音発生時間が長くなり、位置信号が検出できないような運転状態でも、そのような過負荷状態から一旦停止させることなく脱出することが可能となり、システム運転効率の向上といった効果ももたらす。
また、モータ効率化の手段の1つとして、固定子の巻線量(ターン数)を増加させる方式があるが、この方式ではモータの鉄損を低減できる反面、スパイク電圧発生時間が増加し、位置検駆動波形発生部による運転中に位置信号を検出しにくいという短所があった。このようなモータの運転中における位相状態(図2のb)、c)の状態)の区別に対しても、本実施の形態の駆動装置は大いに効果を発揮する。効率化の他の手段として、回転子の構造をIPM型構造にする方式もあるが、この場合もスパイク電圧自身やスパイク電圧終了時に出現する雑音の発生時間が増加傾向にあるため同様な短所があり、IPM構造のモータに対しても本実施の形態は効果を発揮する。
更に、冷蔵庫やエアコンなど近年著しくインバータ化の進んでいる製品において、電源高調波歪みの抑制が不可欠となっている。この抑制方式としては、アクティブフィルタ方式や変圧方式などいろいろな手段があるが、特に冷蔵庫においては、安価でシステムインしやすい“リアクトル方式”が一般的な手段となっている。リアクトル方式は、電源高調波歪みを抑制する一方で、インバータに供給する電力を低減させ、その結果スパイク電圧(雑音)発生時間が増加し、位置信号を検出しにくくする短所も有している。この様なインバータへの供給電力が低下した状況下での位置検駆動波形発生部による運転中における、ロック状態誤検出による保護停止の防止、ひいては不冷・鈍冷状態の回避にもつながるため本実施の形態の制御装置が非常に有用である。