JP4378591B2 - 電磁駆動装置、それを用いた電磁弁装置および電磁駆動装置の製造方法 - Google Patents

電磁駆動装置、それを用いた電磁弁装置および電磁駆動装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁駆動装置、それを用いた電磁弁装置および電磁駆動装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コイルに通電することにより収容部に収容された可動コアと吸引部との間で磁力を発生し、吸引部に可動コアを吸引する電磁駆動装置において、収容部または吸引部の一方を樹脂でインサート成形するものが知られている。特開平10−38126号公報に開示されている電磁弁では、吸引部をインサート成形している。
【0003】
例えば図3に示すような端部形状の吸引部(または収容部)200を樹脂でインサート成形する場合、矢印方向に成形型210に吸引部200を挿入し、吸引部200の軸方向端面201と成形型210の段差係止部211とを当接させる。軸方向端面201と段差係止部211とが全周で当接することにより、樹脂を充填するときに、吸引部200の内周壁に樹脂が漏れることを防止する。収容部をインサート成形するときも同様の成形型を用いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示すように吸引部200の軸方向端面201と成形型210の段差係止部211とを当接させ、吸引部200の内壁側に樹脂が漏れ出さないようにするためには、軸方向端面201および段差係止部211、つまり吸引部200および成形型210の軸方向寸法を高精度に加工する必要がある。部材の径方向寸法は、プレスまたは鍛造によって高精度に加工することができる。しかし、軸方向寸法をプレスまたは鍛造によって高精度に加工することは困難である。軸方向寸法を高精度に加工するためには製造工数が増加する切削等の加工により行う必要がある。したがって、製造コストが増加する。
【0005】
インサート成形型は通常切削等により寸法を高精度に加工されている。しかし、電磁駆動装置の吸引部または収容部は電磁駆動装置の製造個数分加工しなければならないので、吸引部または収容部の軸方向寸法を切削等により高精度に加工すると、製造工数および製造コストが増加する。
【0006】
吸引部または収容部の軸方向寸法の加工精度が低く、樹脂充填時に樹脂が吸引部または収容部の内壁に漏れると、インサート成形後に漏れ出た樹脂を切削等で除去する必要がある。樹脂の除去作業により製造工数が増加するという問題がある。
【0007】
また可動コアと往復移動可能な弁部材を電磁弁装置が備え、弁部材がボールを有していることがある。ボールは可動コアと別働可能であるから、例えばボールが弁座から離座し弁座周囲の凹凸に引っかかると、ボールが弁座に着座不可になる恐れがある。ボールが凹凸等に引っかかることを防止するため、弁座に向けてボールを付勢するスプリングを備える電磁弁装置が知られている。しかし、部品点数が増加するので、製造工数および製造コストが増加するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、製造工数および製造コストを低減する電磁駆動装置、それを用いた電磁弁装置および電磁駆動装置の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、樹脂によるインサート成型時に樹脂の漏れを防止する電磁駆動装置、それを用いた電磁弁装置および電磁駆動装置の製造方法を提供することにある。
本発明のまた他の目的は、部品点数を増加せずボールによる流体流量の調整を維持する電磁駆動装置、それを用いた電磁弁装置および電磁駆動装置の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項記載の電磁駆動装置、あるいは請求項記載の電磁駆動装置の製造方法または請求項記載の電磁弁装置によると、樹脂成形部材にインサート成形されている収容部は、吸引部側の端部内壁に大径内壁と小径内壁とが形成する段差を有している。
【0010】
基本的に、部材の径方向寸法は、製造工数が少ないプレスまたは鍛造による加工によっても高精度に加工することができる。したがって、大径内壁の径方向寸法を製造工数が少ないプレスまたは鍛造により高精度に容易に加工することができる。径方向寸法を高精度に加工された大径内壁にインサート成形型の外壁を当接させれば、大径内壁とインサート成形型の外壁との間に径方向に形成されるクリアランスは、大径内壁に成形型を挿入可能で、かつ大径内壁と成形型の外壁との間に充填樹脂が漏れないように加工できる。また、大径内壁と成形型の外壁との間に充填樹脂が漏れたとしても、小径内壁まで樹脂が漏れなければ、漏れた樹脂を切削等により除去する必要がない。
製造工数が少ないプレスまたは鍛造によりインサート成形される収容部または吸引部の一方を加工できるので、製造工数および製造コストを低減できる。
【0011】
特に本発明の請求項記載の電磁駆動装置のように、収容部がインサート成形され収容部が可動コアを摺動自在に支持するものでは、収容部と可動コアとの径方向クリアランスを極力小さくし、磁気吸引力を増加することが望ましい。したがって、可動コアを支持する収容部の内壁に樹脂が漏れると、漏れ出た樹脂を除去する作業が必要である。したがって、簡単な加工で樹脂の漏れを防止できる本発明の電磁駆動装置の構成を請求項記載の電磁駆動装置に用いれば、製造工数を低減するとともに磁気吸引力を増加することに効果的である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す実施例を図に基づいて説明する。
本発明の一実施例による電磁弁装置を図1に示す。電磁弁装置1は、車両等の自動変速機の油圧制御装置に供給する作動油の油圧を制御する油圧制御装置である。
電磁駆動装置としてのソレノイド10は、有底円筒状のヨーク11、収容コア15、可動コア20、コイル25等を有する。ヨーク11および収容コア15は固定コアを構成している。ヨーク11、収容コア15、可動コア20は磁性材で形成されている。
【0014】
ヨーク11は収容コア15のフランジ19をかしめ固定している。ヨーク11の吸引部12は、可動コア20の往復移動方向の一方向側で可動コア20と向き合い、可動コア20側に凹んでいる。コイル25への通電をオンすると、吸引部12と可動コア20との間に吸引力が働き、可動コア20を図1の上方に吸引する。
【0015】
収容コア15はプレスまたは鍛造で形成されており、後述する樹脂成形部材40にインサート成形されている。収容コア15は、可動コア20を往復移動自在に収容し支持する円筒状の収容部16と、ヨーク11と接続しヨーク11にかしめ固定されるフランジ19とを有している。収容部16は、ヨーク11の吸引部12と可動コア20の往復移動方向に並んで配置されている。収容部16と可動コア20との密着を防止するため、収容部16の内周面、あるいは可動コア20の外周面に非磁性材がコーティングまたはめっきされている。
収容部16の吸引部12側の端部内壁に、大径内壁17と、大径内壁17の反吸引部側に大径内壁17よりも小径で大径内壁17と段差を形成している小径内壁18とが形成されている。
【0016】
コイル25は、巻回部としてのボビン41の外周に巻回されており、ボビン41とヨーク11の外筒部13との間に配置されている。ボビン41は、吸引部12および収容部16の外周に配置されている。コネクタ26はボビン41の端部に接続している。ターミナル27はコイル25と電気的に接続している。ターミナル27からコイル25に電流が供給されると、ヨーク11、収容コア15および可動コア20によって構成された磁気回路に磁束が流れ、ヨーク11の吸引部12と可動コア20との間に磁気吸引力が発生する。すると、可動コア20およびシャフト30は図1の上方に移動する。
【0017】
弁部材としてのシャフト30は可動コア20に圧入またはかしめ固定されており、可動コア20とともに往復移動する。シャフト30は、可動コア20に圧入またはかしめ固定されているシャフト本体31と、シャフト30の反可動コア側に形成され、シャフト本体31よりも小径の先端部32とを有している。
【0018】
樹脂成形部材40は、ボビン41と流路部材としての流路部42とを有しており、収容コア15および弁座部材50をインサート成形している。流路部42は、シャフト30およびボール55を収容し、流入口100、流出口101およびドレイン口102を形成している
【0019】
弁座部材50は、流入口100、流出口101およびドレイン口102と連通する流路103を有している。流路103を通り弁座部材50にシャフト30の先端部32が往復移動可能に貫挿している。弁座部材50は、シャフト30の当接部33が着座可能な弁座51をドレイン口102側に形成し、ボール55が着座可能な弁座52を流入口100側に形成している。ボール55は、弁座52の流入口100側に配置され、流路部42の案内部43に案内されている。
【0020】
シャフト30の当接部33が弁座51に着座すると流入口100とドレイン口102との連通が遮断され、ボール55が弁座52に着座すると流入口100と流出口101およびドレイン口102との連通が遮断される。ボール55はシャフト30とともに弁部材を構成している。シャフト30は可動コア20ともに往復移動するが、ボール55は可動コア20およびシャフト30と別働可能である。
【0021】
フィルタ60は、流入口100側に配設されている。フィルタ60は、フィルタ本体61と、フィルタ本体61を流入口100の樹脂成形部材40に取付ける支持部62とを有している。支持部62は、ボール55に向かって突出する突部62aを有している。
樹脂成形部材40に収容コア15をインサート成形する製造方法を図2に示す。図2に示さない弁座部材50も収容コア15と同時にインサート成形される。
【0022】
大径内壁17側から成形型110に収容コア15を挿入する。成形型110は小径外壁111と小径外壁111よりも大径の大径外壁112とを有している。収容コア15の大径内壁17の内径は、成形型110に収容コア15を挿入可能で、かつ大径外壁112と大径内壁17とが形成する径方向のクリアランスに充填樹脂が漏れない寸法に加工されている。
成形型110に収容コア15を挿入してから樹脂を充填し、樹脂成形部材40に収容コア15および弁座部材50をインサート成形する。
【0023】
次に、電磁弁装置1の作動について説明する。
(1) コイル非通電時
コイル25への通電オフ時、スプリング21の付勢力により、シャフト30の当接部33は弁座51に着座し、シャフト30の先端部32の先端は弁座部材50からフィルタ60側に飛び出している。先端部32が弁座部材50からフィルタ60側に飛び出しているので、ボール55は弁座52から離座している。したがって、流入口100と流出口101とは連通し、流入口100および流出口101とドレイン口102との連通は遮断される。流入口100から流入する作動油は流出口101から流出し、流出口101に接続する部材に油圧が加わる。
【0024】
(2) コイル通電時
コイル25への通電をオンすると、吸引部12と可動コア20との間に吸引力が働き、可動コア20およびシャフト30は図1の上方に移動する。シャフト30の当接部33は弁座51から離座し、シャフト30の先端部32の先端は弁座部材50のフィルタ60側端面よりも弁座部材50内に引っ込む。ボール55は流入口100側の油圧により弁座52に着座する。したがって、流入口100と流出口101およびドレイン口102との連通は遮断され、流出口101とドレイン口102とが連通する。流出口101からドレイン口102側に作動油が排出されるので、流出口101に接続する部材に加わっていた油圧は低下する。
【0025】
以上説明した本発明の上記実施例では、収容部16の吸引部12側の端部内壁に、大径内壁17と小径内壁18とからなる段差を形成している。大径内壁17の内径はプレスまたは鍛造により高精度に容易に加工できる。したがって、成形型110に大径内壁17側から収容コア15を挿入し収容コア15の大径内壁17と成形型110の大径外壁112とを当接させた状態で、インサート成形時に充填する樹脂が収容部16の大径内壁17と成形型110の大径外壁112との間に漏れないように、プレスまたは鍛造により収容コア15を容易に加工できる。収容部16の大径内壁17と成形型110の大径外壁112との間に充填樹脂が漏れても、小径内壁18側まで漏れることを防止できるので、漏れる樹脂を切削等により除去する必要がない。したがって、製造工数および製造コストを低減できる。
【0026】
また、フィルタ60の支持部62が突部62aを有し、突部62aがボール55の可動範囲を案内部43に案内される範囲に限定しているので、ボール55が案内部43以外の位置に移動し弁座52に着座不能になることを防止する。作動油中の異物を除去するフィルタ60がボール55の可動範囲を制限する部品を兼ねているので、ボール55の可動範囲を制限する部品を新たに用いる必要がない。したがって、組付工数、すなわち製造工数が低減し、製造コストが低減する。
【0027】
上記実施例では、収容部16の吸引部12側の端部内壁に大径内壁17および小径内壁18を形成する構成と、フィルタ60の支持部62に突部62aを形成する構成とを同時に実現しているが、一方の構成だけを実現してもよい。また、収容部16が可動コア20を往復移動自在に軸受けしたが、シャフト30が軸受けされる構成も可能である。また、収容部を有する収容コアに代えて吸引部を有するコア側をインサート成形してもよい。
上記実施例では、自動変速機の油圧制御装置の電磁駆動部に本発明の電磁駆動装置を用いた。これ以外にも、流路の開閉弁等、どのような電磁弁装置や装置の駆動装置として本発明の電磁駆動装置を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による電磁弁装置を示す断面図である。
【図2】本実施例の収容部とインサート成形型とを示す模式的断面図である。
【図3】従来の収容部とインサート成形型とを示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1 電磁弁装置
10 リニアソレノイド(電磁駆動装置)
11 ヨーク(固定コア)
12 吸引部
15 収容コア(固定コア)
16 収容部
17 大径内壁
18 小径内壁
20 可動コア
25 コイル
30 シャフト(弁部材)
40 樹脂成形部材
41 ボビン(巻回部)
42 流路部(流路部材)
55 ボール(弁部材)
60 フィルタ
61 フィルタ本体
62 支持部
62a 突部
110 成形型
112 大径外壁

Claims (4)

  1. 可動コアと、
    前記可動コアを往復移動自在に収容する収容部、ならびに前記収容部に対し前記可動コアの一方の往復移動方向に配置され、前記可動コアを往復移動方向の一方向に吸引する磁力が前記可動コアとの間に働き、前記可動コアおよび前記収容部と磁気回路を形成する吸引部を有する固定コアと、
    通電することにより前記吸引部に前記可動コアを吸引する磁力を発生するコイルと、
    前記収容部および前記吸引部の外周に配置され前記コイルを巻回している巻回部を有し、前記収容部を樹脂でインサート成形している樹脂成形部材と、
    を備える電磁駆動装置であって、
    前記樹脂成形部材にインサート成形されている前記収容部は前記吸引部側の端部内壁に環状の大径内壁と、前記大径内壁の反前記吸引部側に前記大径内壁よりも小径で前記大径内壁と段差を形成している小径内壁とを有することを特徴とする電磁駆動装置。
  2. 前記収容部は前記可動コアを摺動自在に支持していることを特徴とする請求項1記載の電磁駆動装置。
  3. 請求項1、または2記載の電磁駆動装置の製造方法であって、
    樹脂でインサート成形される前記収容部を前記大径内壁側から成形型に相対的に挿入し、前記大径内壁に前記成形型の外壁を当接させることを特徴とする電磁駆動装置の製造方法。
  4. 請求項1または2記載の電磁駆動装置と、
    流路を形成する流路部材と、
    前記可動コアとともに往復移動可能であり前記流路を流れる流体流量を調整可能な弁部材と、
    を備えることを特徴とする電磁弁装置。
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