JP4372400B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無段変速機の制御装置に関し、特に、登坂路もしくは降坂路走行時における無段変速機の制御に適用して有効なものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の動力伝達系に適用される無段変速機(CVT)には、ベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機等があり、いずれの場合においてもその変速比は走行状態に応じて自動的に制御されるようになっている。
【0003】
ベルト式無段変速機は、入力軸に設けられる入力側のプライマリプーリと、出力軸に設けられる出力側のセカンダリプーリと、これらのプーリに掛け渡されるベルトやチェーンなどの動力伝達要素とを有しており、それぞれのプーリの溝幅を変化させて動力伝達要素の巻き付け径を変化させることによって、変速比を無段階に変化させて入力軸の回転を出力軸に伝達する。
【0004】
このようなベルト式無段変速機にあっては、スロットル開度と車速あるいはエンジン回転数などの運転状態を示すパラメータに基づいて変速比を自動的に制御するようにしている。つまり、パラメータに基づいて基本変速特性マップを参照して目標プライマリプーリ回転数を設定し、実プライマリプーリ回転数をこの目標プライマリプーリ回転数に収束させるようにそれぞれのプーリのプーリ溝幅を変化させて変速比を設定するようにしている。
【0005】
基本変速特性マップは、車両が標準重量で平地平坦路を最適に走行できるように、予め実験などから求めて設定されている場合が多い。したがって、登坂路走行時に上記基本変速特性マップに基づいて変速比を設定した場合には、トルク不足が生じて運転者に違和感を与えてしまう。また、降坂路走行時には、最適なエンジンブレーキ力を得ることができず、同様に違和感を与えてしまう。
【0006】
そこで、たとえば、特許文献1に示される無段変速機では、車両が登坂路や降坂路を走行するときには、基本変速特性マップ全体をダウンシフト方向に補正する登降坂制御を行うようにしている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−182665号公報
この登降坂制御では、現在の車速でのスロットル全開時の駆動力に坂路の勾配により生じる走行抵抗増加量分を加えてスロットル全開時の目標駆動力を設定し、この目標駆動力と現在の車速でのスロットル全開時の達成駆動力との偏差が所定値以内となるように、基本変速特性マップの補正量を設定するようにしている。つまり、達成駆動力を求める際に用いる目標プライマリプーリ回転数を補正前の目標プライマリプーリ回転数に目標プライマリプーリ回転数補正量を加えたものとし、目標駆動力と達成駆動力との偏差が所定値以内となるように目標プライマリプーリ回転数補正量を所定のオフセット量毎増加させて追従制御している。そして、このように設定された目標プライマリプーリ回転数補正量分だけ基本変速特性マップ全体をダウンシフト側に補正して、この補正された基本変速特性マップを参照して変速比を制御することにより、登坂路や降坂路走行時における変速比を適正化している。
【0008】
一方、過度のダウンシフト補正によるエンジン音の増大や振動の発生を防ぎ、十分なダウンシフト効果を生じさせるために、目標プライマリプーリ回転数補正量には上限値と下限値とが設定されている。これらの上限値および下限値はいずれも一定の値として設定されており、目標プライマリプーリ回転数補正量をこれらの上限値と下限値との間の範囲内に制限するようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように上限値および下限値が一定値となっていると、登降坂制御により基本変速特性がダウンシフト方向に補正された状態で車両が制動すると、急激なダウンシフトによるロー突き当たりショックが発生して運転者に違和感を与えることになる。また、下限値が一定値となっていると、登降坂制御の応答性を向上させるために下限値を目標プライマリプーリ回転数補正量に追従制御する際のオフセット量として使用した場合には、このオフセット量も車速に拘わらずに一定値となる。そのため、すべての車速において応答性を向上させるようにオフセット量を設定することは困難である。
【0010】
そこで、目標プライマリプーリ回転数補正量の上限値と下限値とを車速に応じて変化させるようにする試みがなされた。しかしながら、ロックアップクラッチが係合された状態ではエンジンにより直接入力側回転体を駆動するのでエンジン回転数を高めなくともエンジンブレーキを得ることができるのに対して、ロックアップクラッチを開放したときにはロックアップクラッチがスリップするのでエンジンブレーキを得るにはエンジン回転数を高める必要がある。このため、ロックアップクラッチの開放領域と係合領域でエンジン回転数を同一とした場合には、車両の駆動力差が大きくなってしまい、運転者に違和感を与えることになる。
【0011】
一方、ロックアップクラッチを車速が低いときに係合させるようにすると、ロックアップクラッチが係合される運転領域が大半となるので、目標プライマリプーリ回転数補正量の上限値と下限値とをロックアップ係合時を基準に設定すると、ロックアップ係合時と開放時とで大きな回転偏差が発生し、運転者に違和感を与えることになる。
【0012】
本発明の目的は、登降坂路走行時における走行感を向上させることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の無段変速機の制御装置は、エンジンにより駆動される入力側回転体の回転を動力伝達要素を介して無段階に変化させて出力側回転体に伝達する無段変速機の制御装置であって、前記エンジンと前記入力側回転体との間に設けられ、前記エンジンと前記入力側回転体とを直結状態と直結解除状態とに作動するロックアップクラッチと、車両が登坂路もしくは降坂路を走行していることを検出する登降坂路走行検出手段と、車両が登坂路もしくは降坂路を走行する際の前記入力側回転体の目標回転数の補正量を求める補正量演算手段と、前記目標回転数の補正量の上限値を前記ロックアップクラッチが係合状態の時には開放状態の時に比べて小さくさせる上限値設定手段とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の無段変速機の制御装置は、エンジンにより駆動される入力側回転体の回転を動力伝達要素を介して無段階に変化させて出力側回転体に伝達する無段変速機の制御装置であって、前記エンジンと前記入力側回転体との間に設けられ、前記エンジンと前記入力側回転体とを直結状態と直結解除状態とに作動するロックアップクラッチと、車両が登坂路もしくは降坂路を走行していることを検出する登降坂路走行検出手段と、車両が登坂路もしくは降坂路を走行する際の前記入力側回転体の目標回転数の補正量を求める補正量演算手段と、前記目標回転数の補正量の下限値を前記ロックアップクラッチが係合状態の時には開放状態の時に比べて小さくさせる下限値設定手段とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の無段変速機の制御装置は、エンジンにより駆動される入力側回転体の回転を動力伝達要素を介して無段階に変化させて出力側回転体に伝達する無段変速機の制御装置であって、前記エンジンと前記入力側回転体との間に設けられ、前記エンジンと前記入力側回転体とを直結状態と直結解除状態とに作動するロックアップクラッチと、車両が登坂路もしくは降坂路を走行していることを検出する登降坂路走行検出手段と、車両が登坂路もしくは降坂路を走行しているときに、前記入力側回転体の目標回転数の補正量を求める補正量演算手段と、前記目標回転数の補正量の上限値を前記ロックアップクラッチが係合状態の時には開放状態の時に比べて小さくさせる上限値設定手段と、前記目標回転数の補正量の下限値を前記ロックアップクラッチが係合状態の時には開放状態の時に比べて小さくさせる下限値設定手段とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、ロックアップクラッチが係合した状態と開放した状態では入力側回転体の回転数補正量の上限値を変化させるようにしたので、登降坂路走行時においてロックアップクラッチが作動した場合にも走行感を向上させることができる。また、ロックアップクラッチが係合した状態と開放した状態では入力側回転体の回転数補正量の下限値を変化させるようにしたので、登降坂路走行時においてロックアップクラッチが作動した場合に走行感を向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は無段変速機の一例としてのベルト式無段変速機の駆動系を示す概略図であり、この無段変速機はエンジン1のクランク軸2の回転がトルクコンバータ3と前後進切換装置4を介して伝達される駆動側のプライマリ軸5と、これと平行となった被駆動側のセカンダリ軸6とを有している。
【0018】
プライマリ軸5には入力側回転体としてのプライマリプーリ7が設けられており、このプライマリプーリ7はプライマリ軸5に一体となった固定プーリ7aと、これに対向してプライマリ軸5にボールスプラインなどにより軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ7bとを有し、プーリのコーン面間隔つまりプーリ溝幅が可変となっている。セカンダリ軸6には出力側回転体としてのセカンダリプーリ8が設けられており、このセカンダリプーリ8はセカンダリ軸6に一体となった固定プーリ8aと、これに対向してセカンダリ軸6に可動プーリ7bと同様にして軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ8bとを有し、プーリ溝幅が可変となっている。
【0019】
プライマリプーリ7とセカンダリプーリ8との間には動力伝達要素としてのベルト9が掛け渡されており、両方のプーリ7,8の溝幅を変化させてそれぞれのプーリに対するベルト9の巻き付け径の比率を変化させることにより、プライマリ軸5の回転がセカンダリ軸6に無段階に変速されて伝達されることになる。駆動ベルト9のプライマリプーリ7に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ8に対する巻き付け径をRsとすると、変速比つまりプーリ比iはi=Rs/Rpとなる。
【0020】
セカンダリ軸6の回転は減速歯車およびディファレンシャル装置10を有する歯車列を介して駆動輪11a,11bに伝達されるようになっており、前輪駆動の場合には駆動輪11a,11bは前輪となる。
【0021】
プライマリプーリ7の溝幅を変化させるために、プライマリ軸5にはプランジャ12が固定され、このプランジャ12の外周面に摺動自在に接触するプライマリシリンダ13が可動プーリ7bに固定されており、プランジャ12とプライマリシリンダ13とにより駆動油室14が形成されている。一方、セカンダリプーリ8の溝幅を変化させるために、セカンダリ軸6にはプランジャ15が固定され、このプランジャ15の外周面に摺動自在に接触するセカンダリシリンダ16が可動プーリ8bに固定されており、プランジャ15とセカンダリシリンダ16とにより駆動油室17が形成されている。それぞれの溝幅は、プライマリ側の駆動油室14に導入されるプライマリ圧Ppと、セカンダリ側の駆動油室17に導入されるセカンダリ圧Psとを調整することにより設定される。
【0022】
トルクコンバータ3はクランク軸2に連結されたポンプ側シェル18と、トルクコンバータ出力軸19に連結されたタービンランナー20とを有し、トルクコンバータ出力軸19にはポンプ側シェル18に固定されたフロントカバー21に係合するロックアップクラッチ22が取り付けられている。ロックアップクラッチ22の一方側にはアプライ室22aが形成され、他方側にはリリース室22bが形成されている。
【0023】
アプライ室22aとリリース室22bには調圧された作動油が供給され、リリース室22bの作動油の圧力を低下させるとアプライ室22aに供給される油圧によってロックアップクラッチ22はフロントカバー21に係合してロックアップ状態つまりクラッチ係合状態となる。一方、リリース室22bに供給される油圧を高めてリリース室22bからアプライ室22aを介して作動油をトルクコンバータ3内で循環させることによりロックアップクラッチ22が開放されてトルクコンバータ3は作動状態になる。そして、リリース室22bに供給する油圧を調圧することにより、ロックアップクラッチ22はフロントカバー21に対してスリップ状態つまり半クラッチ状態となる。
【0024】
図2は無段変速機の変速制御装置を示す概略図であり、駆動油室14,17にはエンジンあるいは電動モータにより駆動されるオイルポンプ23によってオイルパン内の作動油が供給されるようになっている。オイルポンプ23の吐出口に接続されるセカンダリ圧路24は、駆動油室17に連通されるとともにセカンダリ圧調整弁25のセカンダリ圧ポートに連通されている。このセカンダリ圧調整弁25によって駆動油室17に供給されるセカンダリ圧Psは、ベルト9に必要な伝達容量に見合った圧力に調整される。
【0025】
セカンダリ圧路24はプライマリ圧調整弁26のセカンダリ圧ポートに連通油路27を介して接続されており、プライマリ圧調整弁26のプライマリ圧ポートはプライマリ圧路28を介してプライマリ側の駆動油室14に連通されている。このプライマリ圧調整弁26によってプライマリ圧Ppは、目標変速比、車速などに応じた値に調整され、プライマリプーリ7の溝幅が変化して変速比が制御される。セカンダリ圧調整弁25およびプライマリ圧調整弁26は、それぞれ比例ソレノイド弁であり、変速機制御ユニット30からそれぞれのソレノイドコイル25a,26aに供給される電流値を制御することによってセカンダリ圧Psとプライマリ圧Ppが調整される。一方、リリース室22bの圧力を調整してロックアップクラッチ22を係合状態、開放状態およびスリップ状態に設定するための比例ソレノイド弁29のソレノイドコイル29aに変速機制御ユニット30から制御信号が送られるようになっている。
【0026】
変速機制御ユニット30にはプライマリプーリ7の回転数を検出するプライマリプーリ回転数センサ31,セカンダリプーリ8の回転数を検出するセカンダリプーリ回転数センサ32からの検出信号が入力される。さらに、エンジン回転数センサ33,スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ34,車両の走行速度を検出する車速センサ35,ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ36,運転者によるセレクトレバーの操作により選択されたレンジを検出するレンジ検出センサ37,その他の各種センサ38からの検出信号が変速機制御ユニット30に入力される。
【0027】
変速機制御ユニット30は、それぞれのセンサなどからの信号に基づいてソレノイドコイル25a,26a,29aに対する制御信号を演算するマイクロプロセッサCPUと、テーブル、マップおよび演算式などの制御用のデータと制御用のプログラムとを格納するROMと、一時的にデータを格納するRAMと、入出力ポートなどを備えている。
【0028】
変速機制御ユニット30は、スロットル開度センサ34から入力されるスロットル開度とセカンダリプーリ回転数センサ32から算出されるセカンダリプーリ回転数NSから得られる車速Vとに基づいてメモリ内に格納された基本変速特性マップを参照して目標プライマリプーリ回転数Npを設定し、実プライマリプーリ回転数Npiがこの目標プライマリプーリ回転数Npに収束するようにそれぞれのプーリのプーリ溝幅を変化させて変速比が設定される。また、車両が登坂路走行状態もしくは降坂路走行状態となったときには、変速比をダウンシフト側に補正するために、目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpが算出される。
【0029】
変速機制御ユニット30のメモリ内には、登降坂制御時の目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpの上限値Lmaxおよび下限値Lminを設定するために、登坂時と降坂時とのそれぞれについてロックアップ係合時と開放時とについての上限値設定テーブルおよび下限値設定テーブルが格納されている。
【0030】
図3はそれぞれ登降坂制御時における目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpの上限値Lmaxと下限値Lminを車速に応じて変化させた場合の上限値と下限値の変化特性を示すグラフであり、このグラフに示す特性に対応したテーブルが制御データとしてメモリに格納されている。図3(A)は車両が登坂路を走行している状態のもとで、ロックアップクラッチ22の係合時CLと開放時OPにおける補正量の上限値Lmaxの変化特性を示し、図3(B)は車両が登坂路を走行している状態のもとで、ロックアップクラッチ22の係合時CLと開放時OPにおける補正量の下限値Lminの変化特性を示す。また、図3(C)は車両が降坂路を走行している状態のもとで、ロックアップクラッチ22の係合時CLと開放時OPにおける補正量の上限値Lmaxの変化特性を示し、図3(D)は車両が降坂路を走行している状態のもとで、ロックアップクラッチ22の係合時CLと開放時OPにおける補正量の下限値Lminの変化特性を示す。
【0031】
図4は図1に示すベルト式無段変速機の登降坂路走行時の制御手順を示すフローチャートであり、以下に図4に示すフローチャートに従い登降坂路走行時の制御手順について説明する。まず、ステップS1において、基本変速特性マップを参照して目標プライマリプーリ回転数Npを算出する。そして、プライマリプーリ回転数センサ31により検出される実プライマリプーリ回転数Npiがこの目標プライマリプーリ回転数Npに収束するようにソレノイドコイル25a,26aに対する電流値を調整して実変速比iが設定されることになる。
【0032】
次に、ステップS2において車両が平坦路を走行しているか否かが判定され、平坦路を走行していると判定されたときにはステップS1に戻され、ステップS3においては車両が登坂路あるいは降坂路走行となったか否かが判定される。この判定は車両が登坂路や降坂路を走行する際には、車両の走行抵抗Rが変化するので、その走行抵抗増加量ΔRから求めることができる。走行抵抗増加量がΔR>0であれば、登坂路を走行しており、走行抵抗増加量がΔR<0であれば降坂路を走行していると判定される。
【0033】
ステップS3において、車両が登坂路を走行していると判定されたときには、ステップS4で目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpを算出し、車両が降坂路を走行していると判定されたときには、ステップS5で目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpを算出する。ステップS6では登坂路走行時にロックアップクラッチ22が係合状態であるか開放状態であるかが判定される。このステップで開放状態であると判定されたときには、ステップS8、S9が実行されて、図3(A)に示す開放時OPの特性テーブルに基づいて上限値Lmaxが読み出され、図3(B)に示す開放時OPの特性テーブルに基づいて下限値Lminが読み出される。一方、係合状態であると判定されたときには、ステップS10、S11が実行されて、図3(A)に示す係合時CLの特性テーブルに基づいて上限値Lmaxが読み出され、図3(B)に示す係合時CLの特性テーブルに基づいて下限値Lminが読み出される。
【0034】
一方、ステップS7では降坂路走行時にロックアップクラッチ22が係合状態であるか開放状態であるかが判定され、開放状態であると判定されたときには、ステップS12、S13が実行されて、図3(C)に示す開放時OPの特性テーブルに基づいて上限値Lmaxが読み出され、図3(D)に示す開放時OPの特性テーブルに基づいて下限値Lminが読み出される。一方、係合状態であると判定されたときには、ステップS14、S15が実行されて、図3(C)に示す係合時CLの特性テーブルに基づいて上限値Lmaxが読み出され、図3(D)に示す係合時CLの特性テーブルに基づいて下限値Lminが読み出される。
【0035】
次に、ステップ16において、この上限値Lmaxと目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpとを比較してΔNp>Lmaxと判断されると、ステップS17において目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpは上限値Lmaxと同値に設定されてステップS18に進む。一方、ΔNp<Lmaxと判断された場合には目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpを維持したままステップS18に進むことになる。つまり、ステップS16、S17により、目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpは上限値Lmax以下に制限されることになる。
【0036】
次に、ステップ18においては、下限値Lminと目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpとを比較して、ΔNp<Lminと判断されると、ステップS19において目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpが下限値Lminと同値に設定されてステップS20に進む。一方、ΔNp>Lminと判断された場合には目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpを維持したままステップS20に進むことになる。つまり、ステップS18、S19により、目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpは下限値Lmin以上に制限されることになる。
【0037】
ステップS20では、駆動力Fsを発生するときの目標プライマリプーリ回転数Npsに上限値Lmaxと下限値Lminとの間に制限された目標プライマリプーリ回転数補正量ΔNpを加算して、目標プライマリプーリ回転数Nptrgtを算出する。そして、目標プライマリプーリ回転数Npsが目標プライマリプーリ回転数Nptrgtと一致するように、ダウンシフト方向に変速比が補正される。
【0038】
算出された目標駆動力Ftrgtと、現在の車速においてスロットル全開時またはスロットル全閉時に発生することが予測される達成駆動力F(t)とが比較され、この比較により求められた偏差が所定範囲内に収束されるように変速比補正量Δrが設定される。この変速比補正量Δrを用いて基本変速特性マップに格納されている目標プライマリプーリ回転数Npの基本変速特性全体をダウンシフト側に補正する。そして、補正された基本変速特性マップを参照して目標プライマリプーリ回転数Npを設定し、登坂路走行時あるいは降坂路走行時の最終的な目標変速比isを設定する。このように設定される目標変速比isにプーリ比iが近づくように、プライマリプーリ7の駆動油室14に供給されるプライマリ圧Ppが制御されることになる。
【0039】
図5は目標プライマリプーリ回転数補正量の上限値と下限値とを車速のみに応じて変化させるようにした場合における車速とプライマリプーリ回転数Npとに応じた上限値と下限値との変化を示す特性線図である。図6は図5に示すように上限値と下限値とを車速のみに応じて変化させるようにした場合におけるエンジン回転数と車速とに応じたロックアップクラッチ開放時の目標プライマリプーリ回転数補正量と、ロックアップクラッチ係合時の目標プライマリプーリ回転数補正量との変化を示す特性線図である。
【0040】
図6に示すように上限値と下限値とを車速のみに応じて変化させるようにすると、前述したようにロックアップクラッチの開放領域と係合領域ではエンジン回転数を同一とした場合には、エンジン回転偏差εが大きくなり、車両の駆動力差が大きくなってしまうことになる。
【0041】
これに対して、本発明にあっては、ロックアップクラッチ22の係合時と開放時とで上限値や下限値を変化させるようにしたので、登降坂路走行時における走行感を向上させることができる。
【0042】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、前記実施の形態においてはベルト式無段変速機の変速制御装置として説明しているが、これに限らず、トロイダル式無段変速機など他の変速機に適用することもできる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、ロックアップクラッチが係合した状態と開放した状態では入力側回転体の回転数補正量の上限値を変化させるようにしたので、登降坂路走行時においてロックアップクラッチが作動した場合にも走行感を向上させることができる。
【0044】
また、ロックアップクラッチが係合した状態と開放した状態では入力側回転体の回転数補正量の下限値を変化させるようにしたので、登降坂路走行時においてロックアップクラッチが作動した場合に走行感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】無段変速機の駆動系を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態である無段変速機の変速制御装置を示す概略図である。
【図3】路面の勾配および車速と加重値との関係の一例を示すグラフである。
【図4】登降坂路走行時の変速制御の手順を示すフローチャートである。
【図5】目標プライマリプーリ回転数補正量の上限値と下限値とを車速のみに応じて変化させるようにした場合における上限値と下限値との変化を示す特性線図である。
【図6】上限値と下限値とを車速のみに応じて変化させるようにした場合におけるロックアップクラッチ開放時の目標プライマリプーリ回転数補正量と、ロックアップクラッチ係合時の目標プライマリプーリ回転数補正量との変化を示す特性線図である。
【符号の説明】
1 エンジン
7 プライマリプーリ(入力側回転体)
8 セカンダリプーリ(出力側回転体)
9 ベルト(動力伝達要素)
22 ロックアップクラッチ
30 変速機制御ユニット
Claims (3)
- エンジンにより駆動される入力側回転体の回転を動力伝達要素を介して無段階に変化させて出力側回転体に伝達する無段変速機の制御装置であって、
前記エンジンと前記入力側回転体との間に設けられ、前記エンジンと前記入力側回転体とを直結状態と直結解除状態とに作動するロックアップクラッチと、
車両が登坂路もしくは降坂路を走行していることを検出する登降坂路走行検出手段と、
車両が登坂路もしくは降坂路を走行する際の前記入力側回転体の目標回転数の補正量を求める補正量演算手段と、
前記目標回転数の補正量の上限値を前記ロックアップクラッチが係合状態の時には開放状態の時に比べて小さくさせる上限値設定手段とを有することを特徴とする無段変速機の制御装置。 - エンジンにより駆動される入力側回転体の回転を動力伝達要素を介して無段階に変化させて出力側回転体に伝達する無段変速機の制御装置であって、
前記エンジンと前記入力側回転体との間に設けられ、前記エンジンと前記入力側回転体とを直結状態と直結解除状態とに作動するロックアップクラッチと、
車両が登坂路もしくは降坂路を走行していることを検出する登降坂路走行検出手段と、
車両が登坂路もしくは降坂路を走行する際の前記入力側回転体の目標回転数の補正量を求める補正量演算手段と、
前記目標回転数の補正量の下限値を前記ロックアップクラッチが係合状態の時には開放状態の時に比べて小さくさせる下限値設定手段とを有することを特徴とする無段変速機の制御装置。 - エンジンにより駆動される入力側回転体の回転を動力伝達要素を介して無段階に変化させて出力側回転体に伝達する無段変速機の制御装置であって、
前記エンジンと前記入力側回転体との間に設けられ、前記エンジンと前記入力側回転体とを直結状態と直結解除状態とに作動するロックアップクラッチと、
車両が登坂路もしくは降坂路を走行していることを検出する登降坂路走行検出手段と、
車両が登坂路もしくは降坂路を走行しているときに、前記入力側回転体の目標回転数の補正量を求める補正量演算手段と、
前記目標回転数の補正量の上限値を前記ロックアップクラッチが係合状態の時には開放状態の時に比べて小さくさせる上限値設定手段と、
前記目標回転数の補正量の下限値を前記ロックアップクラッチが係合状態の時には開放状態の時に比べて小さくさせる下限値設定手段とを有することを特徴とする無段変速機の制御装置。
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JP2002266616A JP4372400B2 (ja) | 2002-09-12 | 2002-09-12 | 無段変速機の制御装置 |
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