JP4371654B2 - 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス。 - Google Patents

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  • Joining Of Glass To Other Materials (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の乗り物の風防ガラス、建築用窓ガラス等に用いられ、特にヘッドアップディスプレイ用として好適に用いることができる合わせガラス用中間膜、及び、当該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【0002】
自動車、航空機等の前面には、いわゆるフロントガラスとして風防ガラスが用いられている。このような風防ガラスには、通常、2枚の対向する板状のガラスと、その間に挟まれた合わせガラス用中間膜で構成された合わせガラスが用いられている。
【0003】
近年、安全性向上の見地から、例えば自動車用の風防ガラスについて、この風防ガラスと同じ視野内に、自動車走行データである速度等の計器表示をヘッドアップディスプレイ(HUD)として表示させようとする要望が高まっている。
【0004】
HUDの機構としては、これまで種々の形態のものが開発されている。例えば、HUD表示部が風防ガラス表面にはなく、風防ガラスに反射させることにより運転者に風防ガラスと同じ位置(即ち、同一視野内)で視認させる形態のものがある。このような形態のものでは、風防ガラスを構成する合わせガラスが2枚の平行なガラスから構成されているため、運転者の視野に写る表示器が二重に見えるという欠点があった。
【0005】
これを解決するために、米国特許第5013134号明細書では、中間膜として所定のくさび角度を有する中間膜を風防ガラス内に配設する技術が開示されている。また、米国特許第5087502号明細書には、くさび形をしたシート及びその調整法が開示されている。更に、米国特許第5639538号明細書にはシート両端から全面積の少なくとも20%を厚みの均等な部分とし、シート中央部に向かって厚みが次第に減少してゆき、中央部付近では切断するシートが開示されている。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第5013134号
【特許文献2】
米国特許第5087502号
【特許文献3】
米国特許第5639538号
【0007】
上記記載の種々の技術においては、合わせガラス用中間膜がくさび形であるため、厚さが均一でなく巻き取りが困難であったり、そのためにシワが発生しガラスとの積層時に脱気し難かったり、積層後にディストーションが発生したり、積層時のトリミング膜が多く発生し効率が悪いという欠点がある。また、シートの一部が均一でその後くさび形状となるため、均一厚み部とくさび形状部との境界においてガラスとの積層時に外観等の劣化が発生するおそれが高いという欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、ガラスとの積層時に外観不良等の問題を発生せず、しかも、従来の製造装置を改造等することなく容易に(特に巻き取りが容易)製造することができる優れた生産性を有する、HUD装置に適した合わせガラス用中間膜及び該中間膜を用いた合わせガラスを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、対向する2枚のガラス板に挟み込むことにより合わせガラスを形成させる合わせガラス用中間膜であって、上記合わせガラス用中間膜が、屈折率が異なり断面の厚さが徐々に減少している層(テーパー層)を少なくとも一層含有し、膜全体の厚さが均一である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜は、屈折率が異なり、厚さが徐々に変化している層(テーパー層)を含有していることに特徴がある。即ち、屈折率の異なるテーパー層を含有することにより、上記運転者の視野に写る表示器が二重に見えるという欠点を解消し、且つ、全体の厚さが均一であることにより、巻き取りの困難性、ガラスとの積層時のトリミング膜の増加による効率の低下を防止できる。また、シートの厚さが一様であるので、ガラスとの積層時に均一厚さ部とクサビ状部との境界において生じやすい外観の低下等の発生を抑制する。
【0011】
図1(a)、(b)、(c)は本発明の合わせガラス用中間膜の断面形状を表す模式図の例である。
図1の如く、本発明の中間膜は一方の端部(合わせガラスにした際に下部になる側)にテーパー層131を有しており、全体の厚さは一定である。テーパー層の幅(l)と膜全体の幅(L)との関係は(l)/(L)の値が1/3以下で、150mm以上であるのが好ましい。テーパー層(A)と他の層(B)との境界において極わずかに像が歪んで見える可能性があるが、(l)/(L)の値が1/3以下であれば、例え、極わずかに像が歪んでも運転者にとって視界を妨げることがないからである。また、(l)が150mm未満であると、HUDとして使用した場合の像の位置が非常に見にくい位置になるからである。
また、図1において、テーパー層131の端部での厚さ(t2)は厚いほど好ましく、少なくとも全体の厚さ(t1)の1/2以上であるのが好ましく、(t1)=(t2)であるのが最も好ましい。
また、テーパー層の厚さ方向の位置は、(a)の様に膜の一方にあっても良いし、(b)の様に中間に位置していても良い。さらに、(c)の様にテーパー層(A)の端部が他の層(B)の中身は入り込んでいても良い。但し、入り込んでいる距離は100mm以下が適当である。
【0012】
本発明の合わせガラス用中間膜を構成する素材としては、透明な熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、通常用いられるポリビニルブチラール、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等が挙げられる。
【0013】
上記のテーパー層(A)と他の層(B)に用いられる樹脂の種類としては、同じ種類の樹脂を使用するのが好ましい。異なった樹脂を使用すると屈折率の調節は容易であるが、テーパー層(A)と他の層(B)との境界での乱れが生じやすいからである。上記樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂が好適に用いられ、特にポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂からなる屈折率の異なったテーパー層(A)及び他の層(B)は、透明性を阻害しない範囲で添加物が加えられたり、原料のポリビニルアルコール(PVA)のケンカ度、アセタール化の際のアセタールの種類やアセタール化度等を変えることにより調整される。
【0014】
上記合わせガラス用中間膜の厚さ(t2)は特に限定されることなく、従来の中間膜として広く用いられている厚さでよく、通常は0.38〜1.52mmである。また合わせガラス用中間膜の表面は、ガラスと積層して合わせガラスとする際の脱気性を良くするためにエンボス加工等がなされているのが好ましい。
【0015】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は、特に限定されることなく、例えば、特公平1−43606号公報、特公昭54−26590号公報、特開昭57−14018号公報、特開昭61−270133、特開平4−259525号公報等に開示されている製造装置等を用いて製造され得る。
【0016】
【特許文献1】
特公平1−43606号公報
【特許文献2】
特公昭54−26590号公報
【特許文献3】
特開昭57−14018号公報
【特許文献4】
特開昭61−270133号公報
【特許文献5】
特開平4−259525号公報
【0017】
本発明の合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを製造する方法としては、本発明の合わせガラス用中間膜は、厚さが均一であり、形状等が従来の合わせガラス用中間膜と同じであるので、通常の合わせガラスの製法と同様でよく、予備圧着と本圧着とを行う。例えば、予備圧着は、二枚の透明な無機ガラス板の間に中間膜を挟み、この積層体をニップロールに通し、例えば、圧力約0.2〜1MPa、温度50〜100℃の条件で扱いて脱気しながら予備圧着する方法(扱き脱気法)、或いは上記積層体をゴムバックに入れ、ゴムバックを排気系に接続して約1〜5kPaの圧力下で、約60〜100℃で予備圧着する方法(減圧脱気法)により行われる。
次いで、予備圧着された積層体は、常法によりオートクレーブを用いるか或いはプレスを用いて、温度約120〜150℃、圧力約0.2〜15MPaで本圧着されて合わせガラスが製造される。
【0018】
本発明の合わせガラスは、上記合わせガラス用中間膜とガラスとを積層して得られるが、ガラスとしては特に限定されず、一般に使用されている透明板ガラスが使用できる。合わせガラスとして用いるガラスとしては無機ガラス以外に、透明性に優れたポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のいわゆる有機ガラスが用いられても良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図面を参照しながら説明する。
図1−a)、b)、c)は本発明の合わせガラス用中間膜13の断面を表した模式図である。図1の如く本発明の合わせガラス用中間膜13は、屈折率の異なるテーパー部131を含有しており、テーパー層131が合わせガラスの下部になるように積層される。テーパー層131の長さ(l)は合わせガラス用中間膜13の全体の長さ(L)の1/3以下が好ましい。(l)/(L)が1/3を超えると両層の境界部が視野にはいるようになり前方の視界が妨げられる。また、テーパー層131の端部における厚さ(t2)は、合わせガラス用中間膜全体の厚さ(t1)の1/2以上が好ましく、1/1が最も好ましい。(t2)/(t1)が1/2未満の場合には、本発明の効果が認められ難くなる。
また、テーパー層131は図1−a)の様に合わせガラス用中間膜の片側の面によっていても良いし、図1−b)の様に中間に位置していても良い。また、図1−c)の様に端部から中へ入り込んでいても良い。内部へ入り込む場合は、端部からの距離が100mm以下であることが好ましい。
【0020】
図2は従来の合わせガラスを使用した場合の、HUDの結像図を模式的に示した図である。合わせガラス110は、ガラス111、112と合わせガラス用中間膜113とが積層された構造になっており、合わせガラス用中間膜113は従来の中間膜であるので、厚さ、屈折率共に均一である。従って、合わせガラス全体は長さ方向及び幅方向において光学的に均一であり、ガラス111,112の両側面は平行である。図2において、像源20’からの光線A’は、線121に導かれてガラス111の内面で反射され、線122に沿って運転者の眼50に導かれる。像源20’からの付加的な光線が別の線に沿って導かれる。例えば、光線B’は線125に沿って導かれ、この光線B’の一部はガラス111の内面で反射され、線126に沿って運転者の方へ導かれる。しかしながら線126に沿う光線B’は図2に示すように眼50へ向けては導かれず、運転者によって見知されない。
【0021】
線125に沿って導かれる光線B’の一部は合わせガラス110の内部に進入し、線127に沿って屈折される。合わせガラス110の内部に導かれた光線はガラス112の外表面にて反射され光線128に沿って合わせガラス内を導かれ、合わせガラス111の表面で屈折し、光線129に沿って運転者の眼50に導かれる。この際、光が合わせガラス内へ導かれ、反射し、ガラス外へ導かれる際の屈折の仕方は、光線125とガラス111とのなす入射角、空気、ガラス、合わせガラス用中間膜等の密度、即ち、界面における屈折率により変化する。合わせガラスが光学的に一様である場合には、光線125とガラス111とがなす角度α’と光線129とガラス111とがなす角度β’とは同じ角度になり、光線126と光線129は平行となり、光線122と光線129は非平行となる。
【0022】
像源20’から2つの異なる線即ち線121及び線125に沿った光線A’およびB’が運転者の眼50に受け取られる。光線126,129は平行でなく運転者の眼に集中されるので、運転者は1つの像源20’を2つの像(虚像30,40)として知覚する。虚像30は線122によって導かれた光線A’の部分から運転者50により見られた像であり、虚像40は線129によって導かれた光線B’の部分から運転者50により見られた像である。このように2つの像を見る状態は二重像形性又はゴースト像形成と称され、ガラス111、112が平行で、合わせガラスが長さ方向及び幅方向において光学的に均一な場合に生じる。言い換えれば、二重像形性は、像源20’から出る光線A’、B’がガラス111及びガラス112によって反射された非平行な線、即ち、運転者の眼に集中する線122及び線129に沿って運転者の眼に向かって導かれる時に生じるのである。
【0023】
本発明は、上述した如く、HUDとして使用する領域を部分的に光学的に不均一とした合わせガラス用中間膜を用いることにより、運転者の眼に向けて導かれた光線A及びBが互いに重畳又は平行とされることによって、二重像形性又はゴースト像形成を軽減もしくは消滅せしめるのである。
【0024】
例えば、図3は本発明の合わせガラスを使用した場合の、HUDの結像図を模式的に示した図である。合わせガラス10は、ガラス11、12と合わせガラス用中間膜13とが積層された構造になっており、合わせガラス用中間膜13は本発明の中間膜であるので、自動車に取り付けた際にHUDとして使用する下部のテーパー層を含む部分のみが密度が均一でなく、光学的に不均一である。しかしながら、ガラス11,12の両側面は平行である。図3において、像源20からの光線Aは、線21に導かれてガラス11の内面で反射され、線22に沿って運転者の眼50に導かれる。像源20からの付加的な光線が別の線に沿って導かれる。例えば、光線Bは線25に沿って導かれ、この光線Bの一部はガラス11の内面で反射され、線26に沿って運転者の方へ導かれる。しかしながら線26に沿う光線Bは図3に示すように眼50へ向けては導かれず、運転者によって見知されない。
【0025】
線25に沿って導かれる光線Bの一部は合わせガラス10の内部に進入し、線27に沿って屈折される。合わせガラス10の内部に導かれた光線はガラス12の外表面にて反射され光線28に沿って合わせガラス内を導かれ、合わせガラス11の表面で屈折し、光線29に沿って運転者の眼50に導かれる。しかしながら、光線B’からの線129が光線A’からの線122とが非平行である図2とは違って、図3に示される本発明においては、角度は光線Bからの屈折光が線29に沿うように設定されており、即ち、線29に沿って移動するガラス11の面で反射された光線Aからの光と重畳又は平行するようになされるのである。
【0026】
言い換えれば、図2においては、合わせガラスが光学的に均一であるので、光線B’からの線125とガラス111とがなす角α’とガラスから出てくる線129とガラスのなす角β’とが等しいので線122と線129は非平行となり、上述した如く二重像を形成してしまう。一方図3においては、合わせガラスが光学的に不均一であるので、光線Bからの線25とガラス11とがなす角αとガラスから出てくる線29とガラスのなす角βとは等しくない線22と線29は互いに重畳又は平行となるので上述した如く二重像を形成することはない。
この結果光線A及びBによって形成されて運転者50によって見られた像は互いに重畳し又は平行となり、単一像30のみが見られるようになる。
【0027】
また、本発明の合わせガラス用中間膜の上部のテーパー層を含まない光学的に均一な部分は、従来の合わせガラス用中間膜と同様であるので、運転者が前方を見る際に、視界を妨げることが全くない。
【0028】
本発明の合わせガラス用中間膜及び該中間膜を用いた合わせガラスは、自動車等の乗り物の風防ガラスに限定されず、建築用の窓ガラス等の従来の合わせガラスが用いられている用途にも使用できる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上述した構成であるので、製造において特に問題となることもなく容易に製造することが出来る。また、本発明の合わせガラスは、上述したように光学的に不均一である合わせガラス用中間膜を使用しているので、HUD装置に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の合わせガラス用中間膜の断面の模式図
【図2】従来技術の合わせガラスを使用した場合の、HDUの結像を示す模式図
【図3】本発明の合わせガラスを使用した場合の、HDUの結像を示す模式図
【符号の説明】
10、110 合わせガラス
11、12 ガラス
13、113 合わせガラス用中間膜
131 テーパー層
132 均一層
20 源像
50 眼

Claims (3)

  1. 対向する2枚のガラス板に挟み込むことにより合わせガラスを形成させる合わせガラス用中間膜であって、
    前記合わせガラス用中間膜が、屈折率が異なり断面の厚さが徐々に減少しており全体の3分の一以下の長さ(l)からなる層(テーパー層)を含有し、膜全体の厚さが均一であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
  2. 前記テーパー層の屈折率が他の層の屈折率より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
  3. 請求項1〜3のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜を用いたことを特徴とする合わせガラス。
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