JP4370043B2 - スペクトル拡散通信方式 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直接拡散型のスペクトル拡散通信方式に係り、特に集積回路チップ内の回路ブロック間の配線あるいは集積回路チップ間の配線のような比較的短距離の有線通信に用いられるスペクトル拡散通信方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のスペクトル拡散通信方式については、例えば、2000 IEEE International Solid-State Circuits Conference, Digest of Technical Papers、370〜371ページに記載されている。
【0003】
図20は従来のスペクトル拡散通信方式の構成例を示すブロック図である。図20において、101、102、…、10Nは情報信号入力端子、15は加算回路、16は伝送路、18は乗算回路、19は積分回路、20は判定回路、21は出力端子、22はU/B変換回路(ユニポーラ/バイポーラ変換回路)、611、612、…、61Nは送信部、621、622、…、62Nは排他的論理和回路、631、632、…、63NはU/B変換回路、641、642、…、64NはM系列発生回路、65は受信部、66はM系列発生回路である。図20は、Nチャネル多重通信システムを表しており、それゆえ、N個の送信部611、612、…、61Nを有する。受信部65は代表として1チャネルのみ示しているが、実際には、その他のチャネルに対しても同様の回路が必要になる。
【0004】
まず、1番目のチャネルを例にとって、送信部611の動作を説明する。情報信号入力端子101から入力された情報信号は、排他的論理和回路621において、M系列発生回路641からのM系列と排他的論理和演算を行う。一般に、M系列発生回路641からのM系列の周期をLとすると、情報信号の1ビットに対してLビットのM系列と排他的論理和演算が行われるため、情報信号の周波数帯域がL倍に拡散されることになる。更に、U/B変換回路631で、“0”と“1”のユニポーラ信号を“−1”と“+1”のバイポーラ信号へ変換する。他のチャネルの送信部612、613、…、61Nも、同様に動作する。
【0005】
各送信部611、612、…、61Nからの信号は、加算回路15で加算され、伝送路16を伝送され、受信部65へ入力される。加算回路15は、信号線の結合等により、実現することもあり得る。いま、受信部65は、1番目のチャネルに対するものであるとすると、M系列発生回路66では、1番目のチャネルの送信部611内のM系列発生回路641と同じM系列を発生する。そして、U/B変換回路22でバイポーラ信号に変換された後で、乗算回路18において、伝送路16からの受信信号と乗算され、積分回路19でM系列の周期Lの期間積分される。判定回路20は、積分回路19の出力の極性を調べ、例えば、それが正であれば情報を“1”、負であれば情報を“0”と判定し、出力端子21へ出力する。
【0006】
乗算回路18での乗算と積分回路19での積分操作は、送信部611で用いたM系列と受信部65のM系列との相関値を計算していることになる。このため、図18に示すスペクトル拡散通信方式においては、送受信で用いたM系列間の相関特性が重要になるが、特に有線通信においては送受信間の同期をとることが容易であるため、同じM系列を異なったビット数だけ巡回シフトしたものを各チャネルで用いることで、良好な相関特性を実現できる。この場合、各M系列発生回路641、642、…、64Nは、発生するM系列の初期状態が異なるだけで、同じ回路構成で実現することができる。
【0007】
図21に、M系列の自己相関特性を示す。二つのM系列の時間差が0でピーク値Lとなり、他では−1となる理想的な特性を有する。1番目のチャネルの受信部65では、送信部611内のM系列発生回路641で発生するM系列と全く同じM系列で相関値を計算するため、送信部611からの信号に対する積分回路19の出力は、情報信号の極性を無視して、大きさLとなる。一方、他のチャネルからの信号に対する積分回路19の出力は、情報信号の極性を無視して、大きさ1となり、Lが大きい場合には殆ど無視できる。このため、判定回路20では、所望のチャネルの情報のみを判定できる。
【0008】
M系列の周期Lが比較的小さい場合には、図21に示したM系列の自己相関特性におけるサイドローブ値−1を無視することができなくなる。このような場合には、各M系列発生回路641、642、…、64Nで発生するM系列に対して、同じ時刻に“0”を付加した長さL+1の系列を用いることで、これを改善することができる。この系列の自己相関特性は、ピーク値L+1とサイドローブ値0を有する。それゆえ、チャネル間干渉を完全に0にすることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のスペクトル拡散通信方式においては、例えば集積回路チップ内の回路ブロック間の配線あるいは集積回路チップ間の配線に適用した場合に、集積回路内のグローバルクロック信号を用いて送受信間の同期をとることが考えられるが、各送信部から受信部への信号経路とグローバルクロック信号経路は完全に一致しないため、送受信間で比較的小さな同期ずれを生じる可能性が大きく、それゆえ、積分回路19の出力が図21に示す自己相関特性のピークからずれた位置に対応する値になり、通信性能が劣化するという問題があった。
【0010】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、例えば集積回路チップ内の回路ブロック間の配線あるいは集積回路チップ間の配線のような比較的短距離の有線通信において生じる比較的小さな送受信間の同期ずれが存在しても良好な通信性能を有するスペクトル拡散通信方式を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第1の本発明は、情報信号の周波数帯域幅を拡散して通信路に送信する1つまたは複数の送信手段と、前記通信路から到来した受信信号より所望の情報信号を復元する1つまたは複数の受信手段とを有するスペクトル拡散通信方式において、前記送信手段は、3値以上の値を有する拡散信号を発生する多値拡散信号発生手段と、前記情報信号をバイポーラ信号に変換する情報信号変換手段と、該情報信号変換手段の出力と前記多値拡散信号発生手段の出力とを乗算する多値乗算手段を有し、前記受信手段は、2値拡散信号を発生する2値拡散信号発生手段と、該2値拡散信号発生手段の出力をバイポーラ信号に変換する拡散信号変換手段と、該拡散信号変換手段の出力を前記受信信号に乗じる2値乗算手段と、該2値乗算手段の出力を前記2値拡散信号の周期で積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有するよう構成した。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を巡回遅延する複数の遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該複数の遅延手段の出力を加え合わせる加算手段とを有し、前記複数の遅延手段における遅延量は1ビットから始まる連続したビット数に対応する量であるよう構成した。
【0013】
第3の発明は、第1の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの複数の出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段とを有し、前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で連続する複数の出力を前記変換加算手段への入力とするよう構成した。
【0014】
第4の発明は、第1の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を巡回遅延する奇数個の遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該奇数個の遅延手段の出力を加え合わせる加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、前記奇数個の遅延手段における遅延量は1ビットから始まる連続したビット数に対応する量とし、前記初期位相設定手段は、前記加算手段の出力である多値拡散信号の連続する先頭あるいは後端の値が前記奇数個の遅延手段と同じ数のビット数の期間だけ零になるように前記送信側M系列発生手段の初期位相を与えるよう構成した。
【0015】
第5の発明は、第1の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を巡回遅延する偶数個の遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該偶数個の遅延手段の出力を加え合わせる加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、前記偶数個の遅延手段における遅延量は1ビットから始まる連続したビット数に対応する量とし、前記初期位相設定手段は、前記加算手段の出力である多値拡散信号の連続する先頭あるいは後端の値が前記偶数個の遅延手段と同じ数のビット数の期間だけ+1あるいは−1になるように前記送信側M系列発生手段の初期位相を与えるよう構成した。
【0016】
第6の発明は、第1の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの偶数個の出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段と、前記送信側M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で連続する偶数個の出力を前記変換加算手段への入力とし、前記初期位相設定手段は、前記変換加算手段の出力である多値拡散信号の連続する先頭あるいは後端の値が前記変換加算手段の入力の数と同じ数のビット数の期間だけ零になるように前記複数の遅延回路の初期値を与えるよう構成した。
【0017】
第7の発明は、第1の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの奇数個の出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段と、前記送信側M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で連続する奇数個の出力を前記変換加算手段への入力とし、前記初期位相設定手段は、前記変換加算手段の出力である多値拡散信号の連続する先頭あるいは後端の値が前記変換加算手段の入力の数と同じ数のビット数の期間だけ+1あるいは−1になるように前記複数の遅延回路の初期値を与えるよう構成した。
【0018】
第8の発明は、第1の発明において、前記送信手段を、正及び負の一定値と零の3値の拡散信号を発生する多値拡散信号発生手段と、情報信号をバイポーラ信号に変換する情報信号変換手段と、前記多値拡散信号が正の一定値、負の一定値、零のときには、それぞれ、前記情報信号変換手段の出力信号、該情報信号変換手段の出力を極性反転した信号、零信号を出力する極性反転手段とを有する送信手段に置換して構成した。
【0019】
第9の発明は、第1又は第8の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を1ビットだけ巡回遅延する遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該遅延手段の出力を加え合わせる加算手段とを有するよう構成した。
【0020】
第10の発明は、第1又は第8の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を1ビットだけ巡回遅延する遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該遅延手段の出力を加え合わせる加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、前記初期位相設定手段は、前記遅延手段の入力あるいは出力が“01”あるいは“10”で始まり、かつ、他のチャネルの送信手段内の多値拡散信号発生手段の遅延手段の入力あるいは出力と同じにならないように、前記送信側M系列発生手段の初期位相を与えるよう構成した。
【0021】
第11の発明は、第1又は第8の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの2つの出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段と、前記送信側M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で後ろから2つの出力を前記変換加算手段への入力とし、前記初期位相設定手段は、前記複数の遅延回路の内で後ろから2つのものの初期値を “01”あるいは“10”とし、他の遅延回路の初期値は他のチャネルの送信手段内の多値拡散信号発生手段の複数の遅延回路でM系列の次数より1少ない長さの同じパターンを初期値に持たないように前記複数の遅延回路の初期値を与えるよう構成した。
【0022】
第12の発明は、第1又は第8の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、クロックに合せてM系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列の最後の位置に零信号を付加して出力すると共にこの期間は前記送信側M系列発生手段へのクロックを止める零付加手段と、該零付加手段の出力をバイポーラ信号に変換する系列変換手段と、該系列変換手段の出力を1ビットだけ巡回遅延する遅延手段と、前記零付加手段の出力と該遅延手段の出力を加え合わせる加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、前記初期位相設定手段は、前記遅延手段の入力あるいは出力が“01”で始まり、かつ、他のチャネルの送信手段内の多値拡散信号発生手段の遅延手段の入力あるいは出力と同じにならないように前記送信側M系列発生手段の初期位相を与えるよう構成した。
【0023】
第13の発明は、第1又は第8の発明において、前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、クロックに合せてM系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの2つの出力の最後の位置に零信号を付加して出力すると共にこの期間は前記M系列発生手段へのクロックを止める零付加手段と、該零付加手段の2つの出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で後ろから2つの出力を前記零付加手段への入力とし、前記初期位相設定手段は、前記複数の遅延回路の内で後ろから2つのものの初期値を “01”とし、他の遅延回路の初期値は他のチャネルの送信手段内の多値拡散信号発生手段の複数の遅延回路でM系列の次数より1少ない長さの同じパターンを初期値に持たないように前記複数の遅延回路の初期値を与えるよう構成した。
【0024】
第14の発明は、第2乃至第7,第9乃至第11のいずれか1つの発明において、前記受信手段の前記2値拡散信号発生手段は、前記送信側M系列発生手段で発生するM系列と同じM系列を発生する手段であるよう構成した。
【0025】
第15の発明は、第1又は第8の発明において、前記受信手段を、2値拡散信号を発生する2値拡散信号発生手段と、該2値拡散信号発生手段の出力に応じて前記受信信号を極性反転または非反転させて出力する極性反転手段と、該極性反転手段の出力を前記2値拡散信号の周期で積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換して構成した。
【0026】
第16の発明は、第2乃至第7,第9乃至第11のいずれか1つの発明において、前記受信手段を、前記送信手段内の前記送信側M系列発生手段で発生するM系列と同じM系列を発生する2値拡散信号発生手段と、該2値拡散信号発生手段の出力に応じて前記受信信号を極性反転または非反転させて出力する極性反転手段と、該極性反転手段の出力を前記M系列の周期で積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換して構成した。
【0027】
第17の発明は、第1乃至第11の発明のいずれか1つの発明において、前記受信手段を、2値拡散信号を発生する2値拡散信号発生手段と、該2値拡散信号発生手段の出力を前記受信信号に乗じる2値乗算手段と、該2値乗算手段の出力を前記2値拡散信号の周期で積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換して構成した。
【0028】
第18の発明は、第2乃至第7,第9乃至第11のいずれか1つの発明において、前記受信手段を、前記送信手段内の送信側M系列発生手段で発生するM系列と同じM系列を発生する2値拡散信号発生手段と、該M系列が予め定めた値のときのみ受信信号を通過させるゲート手段と、前記2値拡散信号発生手段からのM系列の周期で該ゲート手段の出力を積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換して構成した。
【0029】
第19の発明は、第14,第16,又は第18の発明において、前記受信装置内の前記2値拡散信号発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有するよう構成した。
【0030】
第20の発明は、第12又は第13の発明において、前記受信装置内の前記2値拡散信号発生手段は、クロックに合せてM系列を発生する受信側M系列発生手段と、該受信側M系列発生手段の出力に零信号を付加して出力すると共にこの期間は前記受信側M系列発生手段へのクロックを止める零付加手段とを有するよう構成した。
【0031】
第21の発明は、第20の発明において、前記受信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有するよう構成した。
【0032】
第22の発明は、第1乃至第21の発明のいずれか1つにおいて、前記受信手段内の前記積分手段に代えてローパスフィルタを用い、前記受信手段内の前記判定手段では、前記2値拡散信号発生手段の出力信号の1周期当り1回の適切なタイミングで前記ローパスフィルタの出力をサンプリングした値を閾値判定するよう構成した。
【0033】
第23の発明は、第1又は第8の発明において、前記受信手段を、2値拡散信号を時間反転した形の単位パルス応答を有するタップ付き遅延回路と、該タップ付き遅延回路の長さに対応する時間当り1回の適切なタイミングで該タップ付き遅延回路の出力をサンプリングした値を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換して構成した。
【0034】
第24の発明は、第2乃至第7,第9乃至第11のいずれか1つの発明において、前記受信手段を、前記送信手段内の前記送信側M系列発生手段で発生するM系列と同じM系列をバイポーラ化した信号を時間反転した形の単位パルス応答を有するタップ付き遅延回路と、該タップ付き遅延回路の長さに対応する時間当り1回の適切なタイミングで該タップ付き遅延回路の出力をサンプリングした値を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換して構成した。
【0035】
第25の発明は、第2乃至第7,第9乃至第11のいずれか1つの発明において、前記受信手段を、前記送信手段内の前記送信側M系列発生手段で発生するM系列を時間反転した形の単位パルス応答を有するタップ付き遅延回路と、該タップ付き遅延回路の長さに対応する時間当り1回の適切なタイミングで該タップ付き遅延回路の出力をサンプリングした値を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換して構成した。
【0036】
第26の発明は、第12又は第13の発明において、前記受信手段を、前記送信手段内の前記零付加手段の出力をバイポーラ化した信号を時間反転した形の単位パルス応答を有するタップ付き遅延回路と、該タップ付き遅延回路の長さに対応する時間当り1回の適切なタイミングで該タップ付き遅延回路の出力をサンプリングした値を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換して構成した。
【0037】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のスペクトル拡散通信方式の実施の形態(請求項1)のブロック図である。図1において、101、102、…、10Nは情報信号入力端子、111、112、…、11Nは送信部、121、122、…、12NはU/B変換回路、131、132、…、13Nは乗算回路、141、142、…、14Nは多値拡散信号発生回路、15は加算回路、16は伝送路、17は受信部、18は乗算回路、19は積分回路、20は判定回路、21は出力端子、22はU/B変換回路、23は2値拡散信号発生回路である。図1は、Nチャネル多重通信システムを表しており、それゆえ、N個の送信部111、112、…、11Nを有する。受信部17は代表として1チャネルのみ示しているが、実際には、その他のチャネルに対しても同様の回路が必要になる。
【0038】
まず、1番目のチャネルを例にとって、送信部111の動作を説明する。情報信号入力端子101から入力された情報信号は、U/B変換回路121で、“0”と“1”のユニポーラ信号を“−1”と“+1”のバイポーラ信号へ変換し、乗算回路131において、多値拡散信号発生回路141で発生される多値拡散信号と乗算される。一般に、多値拡散信号発生回路141からの多値拡散信号の周期をLとすると、U/B変換回路121の出力信号の周波数帯域幅は、乗算回路131での乗算により、L倍に拡散されることになる。他のチャネルの送信部112、113、…、11Nも、同様に動作する。
【0039】
各送信部111、112、…、11Nからの信号は、加算回路15で加算され、伝送路16を伝送され、受信部17へ入力される。加算回路15は、信号線の結合等により、実現することもあり得る。いま、受信部17は、1番目のチャネルに対するものであるとすると、2値拡散信号発生回路23では、1番目のチャネルの送信部111内の多値拡散信号発生回路141で発生される多値拡散信号に対応した2値拡散信号を発生する。この対応関係の詳細は、更に詳しい構成例を用いて、後述する。そして、U/B変換回路22でバイポーラ信号に変換された後で、乗算回路18において、伝送路16からの受信信号と乗算され、積分回路19で2値拡散信号の周期Lの期間積分される。判定回路20は、積分回路19の出力の極性を調べ、例えば、それが正であれば情報を“1”、負であれば情報を“0”と判定し、出力端子21へ出力する。
【0040】
図1の実施の形態は、本発明のスペクトル拡散通信方式の基本的な構成を示すものであり、以下に、1番目のチャネルに対する送信部111と受信部17の構成例を用いて、詳細な構成と動作を説明する。以下の説明では、代表として、1番目のチャネルに対する構成を示すが、他のチャネルに対しても同様である。
【0041】
図2は、送信部111の第1の構成例(請求項2,9)を示すブロック図である。図2において、24は送信出力端子、25は加算回路、26はM系列発生回路、27はU/B変換回路、281、282、…、28Mは遅延回路であり、図1と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。
【0042】
図2の送信部111の構成例では、多値拡散信号発生回路141は、初期位相の異なった複数のM系列をバイポーラ信号として加算することで多値拡散信号を生成する。すなわち、M系列発生回路26からの出力は、U/B変換回路27でバイポーラ信号に変換された後、それぞれ1ビット期間の遅延を与えるM個の遅延回路281、282、…、28Mを通過し、加算回路25でU/B変換回路27の出力と各遅延回路281、282、…、28Mの出力の合計M+1個の信号を加え合わせ、多値拡散信号が生成される。この多値拡散信号は、情報信号入力端子101からの情報信号をU/B変換回路121でバイポーラ信号に変換した信号と、乗算回路131において乗算され、送信出力端子24に出力される。なお、遅延回路を1個とすることにより請求項9の構成を実現できる。
【0043】
図3は、受信部17の第1の構成例(請求項14)を示すブロック図である。図3において、29は受信信号入力端子、30はM系列発生回路であり、図1と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。
【0044】
M系列発生回路30は、図2に示す送信部111のM系列発生回路26で発生するM系列と同じM系列を発生し、基本的に両者は同じ回路になる。また、M系列発生回路30は、図1の2値拡散信号発生回路23に対応し、2値拡散信号として、送信部111で用いた多値拡散信号を生成する源のM系列を用いることを意味する。M系列発生回路30からのM系列は、U/B変換回路22でバイポーラ信号に変換された後で、乗算回路18において、受信信号入力端子29からの受信信号と乗算され、積分回路19でM系列の周期Lの期間積分される。判定回路20は、積分回路19の出力の極性を調べ、例えば、それが正であれば情報を“1”、負であれば情報を“0”と判定し、出力端子21へ出力する。
【0045】
図4は、図2に示す送信部111の第1の構成例における多値拡散信号発生回路141からの多値拡散信号と図3に示す受信部17の第1の構成例におけるU/B変換回路22からのM系列をバイポーラ化した信号(以下、バイポーラM系列と呼ぶ)との相互相関特性の説明図である。図4は、図2において、遅延回路の数Mが2の場合を示している。
【0046】
図2に示す送信部111の第1の構成例で用いた多値拡散信号発生回路141での処理と図3に示す受信部17における乗算回路18と積分回路19による相関演算処理は共に線形処理であるため、送信部111の加算回路25へのそれぞれの入力信号、すなわち、U/B変換回路27と各遅延回路281、282、…、28Mからの出力信号は、独立に考えることができる。U/B変換回路27と各遅延回路281、282、…、28Mからの出力信号は位相が異なったバイポーラM系列であり、それぞれのバイポーラM系列信号と受信部17のU/B変換回路22からのバイポーラM系列信号との相互相関特性は、図19に示すような山形特性を有する。但し、U/B変換回路27と各遅延回路281、282、…、28Mからの出力信号の位相が1ビットずつ異なっていることから山形の位置がずれ、図4に破線で示すようになるため、送信部111の多値拡散信号と受信部17のバイポーラM系列との相互相関特性は、これらの合成特性として、図4の実線で示すような台形特性になる。いま、送受信間で同期が完全に合っている場合の相関値が台形の中央に対応するように受信側のM系列の位相を調整しておくと、図2に示す遅延回路の数Mが2の場合には、前後に1ビットまでの同期ずれが存在しても相関値の劣化を生じないことが分る。相関値の劣化を生じない同期ずれの範囲は、遅延回路の数Mを大きくするほど広くできる。しかし、1つのチャネルの多値拡散信号の生成に用いたと同じ位相のM系列を他のチャネルの多値拡散信号の生成のために用いることはできないため、同時に通信できるチャネルの数の最大値はL/(M+1)となり、遅延回路の数Mが大きくなるほど少なくなる。このため、遅延回路の数Mは、両者の妥協で決める必要がある。
【0047】
図5は、受信部17の第2の構成例(請求項15,16)を示すブロック図である。図5において、31は極性反転回路であり、図1及び3と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。
【0048】
極性反転回路31には、受信信号入力端子29からの受信信号とM系列発生回路30からのM系列が入力され、M系列の値が“1”であれば受信信号をそのまま出力し、一方、M系列の値が“0”であれば受信信号の極性を反転した信号を出力する。極性反転回路31からの出力は、積分回路19でM系列の周期Lの期間積分され、更に、判定回路20で極性を調べ、例えば、それが正であれば情報を“1”、負であれば情報を“0”と判定し、出力端子21へ出力する。図5では、M系列が“1”と“0”の2値系列であることを利用して、極性反転回路31を用いることにより、図3よりも簡単な構成にしている。
【0049】
図4に示すように、図2に示す送信部111の第1の構成例と図3または図5に示す受信部17の第1または2の構成例を用いた場合、台形相関特性のピーク値はLよりも遅延回路の数Mだけ小さくなり、一方、チャネル間干渉の原因になるサイドローブ値はM+1となる。M系列の周期Lが比較的小さな場合、遅延回路の数Mに依存する性能劣化は無視できなくなる。
【0050】
図6は、受信部17の第3の構成例(請求項17,18)を示すブロック図である。図6において、32はゲート回路であり、図1及び3と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。
【0051】
ゲート回路32には、受信信号入力端子29からの受信信号とM系列発生回路30からのM系列が入力され、M系列の値が“1”であれば受信信号をそのまま出力し、一方、M系列の値が“0”であれば零信号を出力する。ゲート回路32からの出力は、積分回路19でM系列の周期Lの期間積分され、更に、判定回路20で極性を調べ、例えば、それが正であれば情報を“1”、負であれば情報を“0”と判定し、出力端子21へ出力する。
【0052】
図6に示す受信部17の第3の構成例は、受信信号に対し、M系列発生回路30からのM系列を、バイポーラ信号に変換することなく相関を計算することを意味する。図3で、単純にU/B変換回路22を除いても同じ出力を得ることができるが、図6では、ゲート回路32を用いることで更に簡単な構成にしている。
【0053】
図7は、図2に示す送信部111の第1の構成例における多値拡散信号発生回路141からの多値拡散信号と図6に示す受信部17の第3の構成例におけるM系列との相互相関特性の説明図である。図4の場合と同様に、図2における遅延回路の数Mが2の場合を示している。
【0054】
送信部111内の多値拡散信号発生回路141で多値拡散信号を発生するために用いるバイポーラM系列と受信部17のM系列との相互相関特性は、図7の破線で示すように、ピーク値が(L+1)/2でサイドローブが0の山形となる。それゆえ、多値拡散信号とM系列との相互相関特性は、位相がずれた山形特性の合成特性として、ピーク値が(L+1)/2でサイドローブが0の台形特性となる。このため、遅延回路の数Mによる性能劣化を招くことがない。
【0055】
図8は、送信部111の第2の構成例(請求項3)を示すブロック図である。図8において、33は変換加算回路、341、342、343、344は遅延回路、35は排他的論理和回路であり、図1及び2と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。図8は、例として、図2において、M系列発生回路26のM系列の次数を4、遅延回路の数Mを2とした場合に相当する構成を示している。
【0056】
図8では、多値拡散信号発生回路141をシフトレジスタを用いて構成する。すなわち、1ビット期間の遅延を与える遅延回路341、342、343、344と排他的論理和回路35でM系列を生成するシフトレジスタを構成している。排他的論理和回路35への入出力の位置が、M系列を生成するための原始多項式に対応する位置になっている。そして、3つの位相が異なったM系列を合成するために、遅延回路342、343及び344の出力が変換加算回路33へ入力され、それぞれバイポーラ信号に変換された後で加算される。変換加算回路33の出力が多値拡散信号発生回路141からの多値拡散信号となり、情報信号入力端子101からの情報信号をU/B変換回路121でバイポーラ信号に変換した信号と、乗算回路131において乗算され、送信出力端子24に出力される。
【0057】
図9は、受信部17の第4の構成例を示すブロック図である。図9において、361、362、363、364は遅延回路、37は排他的論理和回路であり、図1、3及び6と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。図9は、図8と対応して、M系列発生回路30のM系列の次数を4とした場合に相当する構成を示している。
【0058】
図9の受信部17の構成例では、M系列発生回路30を、シフトレジスタを用いて構成する。すなわち、1ビット期間の遅延を与える遅延回路361、362、363、364と排他的論理和回路37でM系列を生成するシフトレジスタを構成している。M系列発生回路30からの出力は、遅延回路363からの出力として得られる。これは、図7に示したように、台形の相関特性の中心で同期を合せるために、図8に示した送信部111内の多値拡散信号発生回路141の変換加算回路33への3つの入力の中心と時間を合せたためである。
【0059】
ゲート回路32には、受信信号入力端子29からの受信信号とM系列発生回路30からのM系列が入力され、M系列の値が“1”であれば受信信号をそのまま出力し、一方、M系列の値が“0”であれば零信号を出力する。ゲート回路32からの出力は、積分回路19でM系列の周期Lの期間積分され、更に、判定回路20で極性を調べ、例えば、それが正であれば情報を“1”、負であれば情報を“0”と判定し、出力端子21へ出力する。
【0060】
図10は、送信部111の第3の構成例(請求項4,5,10)を示すブロック図である。図10において、38は初期位相設定回路であり、図1及び2と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。
【0061】
図10の構成例は、図2に示す送信部111の第1の構成例において、初期位相設定回路38を加えて、M系列発生回路26で発生するM系列の初期位相を制御できるようにしたものである。それ以外の構成や動作は、図2と同じである。
【0062】
図11は、情報信号を考慮した詳細な動作の説明図である。図11は、一例として、多値拡散信号の周期Lが15の場合を示している。すなわち、多値拡散信号を生成するためのM系列の次数は4である。
【0063】
まず、図11の(1)は、M系列の初期位相を適切に選択しなかったために、送信部111の多値拡散信号と受信部17のM系列の間の相互相関特性が劣化する場合の例を示しており、図10における多値拡散信号発生回路141内の遅延回路の数Mが1の場合となっている。(a1)と(a2)は、それぞれ、M系列発生回路26からの出力と1ビット遅れた出力を示し、これをバイポーラ信号に変換して加え合わせることで、多値拡散信号発生回路141からの多値拡散信号が、(b)のように得られる。図10では、M系列発生回路26からの出力をU/B変換回路27でバイポーラ信号に変換してから遅延回路281に入力しているが、図11のように、M系列を遅延してから、それぞれの信号をU/B変換しても同じ結果になる。(c)は、U/B変換回路121からのバイポーラ化された情報信号を表している。図内の縦の点線は情報信号の区切りを表しており、特に、右の点線の右側で情報信号が変化していることに注意されたい。(d)は、(b)と(c)を乗算した乗算回路131の出力を示し、これに対して、(e)に示す受信部17のM系列を乗算して積分することで、図6に示す受信部17の積分回路19の出力が得られる。(e)を時間的にずらして、時間差に対して相関値を描いたものが多値拡散信号(この場合は、遅延回路の数Mが1なので3値になる)とM系列との相互相関特性になり、(f)に示される。(f)より、情報信号に変化が生じていない時間差0より左側では理想的な特性が得られているが、情報信号が変化している時間差0より右側では、相関値が劣化し、台形特性が得られていないことが分る。これは、情報信号の存在により、いわゆる奇相関と呼ばれる特性の影響を受けているためである。この相互相関特性の劣化が、スペクトル拡散通信方式の通信性能を劣化させることになる。
【0064】
図11の(2)は、最大1ビットの同期ずれまで考慮した場合の相互相関特性が劣化しない場合の例である。各信号の意味は、図11の(1)と同様である。(b)の多値拡散信号において、先頭の1ビット期間に対応する値が0であることに注意されたい。このため、この期間は、情報信号の値に無関係に、送信部141からの出力は0になる。それゆえ、(f)に示すように、時間差0の右側でも、少なくても1ビットの期間は理想的な相関値となり、台形相関特性の頂上の平坦特性が保たれる。時間差0の右側1ビットを越える部分では相関値が0になるとは限らないが、これは1ビットを越える同期ずれに対応する部分であるため、考慮範囲外であり、問題にならない。なお、図では、(b)の多値拡散信号の先頭を0になるようにし、(e)の受信部17のM系列として(a1)と同じ位相のM系列を用いたが、(b)の多値拡散信号の後端が0になるようにし、(e)の受信部17のM系列として(a2)と同じ位相のM系列を用いても、(f)の相関特性がずれるだけで同様の効果が得られる。
【0065】
図11の(3)は、最大2ビットの同期ずれまで考慮した場合の相互相関特性が殆ど劣化しない場合の例である。図10における多値拡散信号発生回路141内の遅延回路の数Mが2の場合となっている。(a1)、(a2)及び(a3)は、それぞれ、M系列発生回路26からの出力、1ビット遅れた出力及び更に1ビット遅れた出力を示し、これをバイポーラ信号に変換して加え合わせることで、送信部111の多値拡散信号発生回路141からの多値拡散信号が、(b)のように得られる。他の各信号の意味は、図11の(1)及び(2)と同様である。この場合は、(b)の多値拡散信号は4値になるため、図11の(2)のように、先頭の2ビット期間に対応する値を0にすることはできないが、最小値である+1あるいは−1にすることは可能である。そうすることで、(f)に示すように、時間差0の右側の2ビットの対応する期間の平坦特性からのずれを±2に抑えることができる。
【0066】
図11には、図10に示す多値拡散信号発生回路141内の遅延回路の数Mが小さい場合を示したが、一般的に、遅延回路の数Mが奇数の場合には、多値拡散信号の先頭あるいは後端のMビット期間に対応する値を0にするM系列の初期位相が存在する。一方、遅延回路の数Mが偶数の場合には、多値拡散信号の先頭あるいは後端のMビット期間に対応する値を±1(+1又は−1)にするM系列の初期位相が存在する。初期位相設定回路38には、そのような位相を記憶しておき、M系列発生回路26に与えることで、Mビットまでの同期ずれがあっても、情報信号に無関係に良好な通信品質を保つスペクトル拡散通信方式を構成できる。なお、図10において、遅延回路を1個とすることにより請求項10の構成を実現できる。
【0067】
図12は、送信部111の第4の構成例(請求項6,7)を示すブロック図である。図1、2、8及び10と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。図8と同様に、図10において、M系列発生回路26のM系列の次数を4、遅延回路の数Mを2とした場合に相当する構成を示している。
【0068】
図12の構成例は、図8に示す送信部111の第2の構成例において、初期位相設定回路38を加えて、M系列の初期位相を制御できるようにしたものである。初期位相設定回路38は、Mが奇数の場合には多値拡散信号の先頭あるいは後端のMビット期間に対応する値を0にするように、一方、Mが偶数の場合には多値拡散信号の先頭あるいは後端のMビット期間に対応する値を±1(+1又は−1)にするように、M系列を発生するシフトレジスタを構成する遅延回路341、342、343及び344の初期値を与える。それ以外の構成や動作は、図8と同じである。
【0069】
ここで、図11の(2)に示す例のように、最大1ビットの同期ずれまで考慮した場合の相互相関特性が劣化しないように、(b)の多値拡散信号(この場合は、3値拡散信号)の先頭を0にする具体的なM系列の初期位相設定方法を説明する。図12に示すシフトレジスタを用いた多値拡散信号発生回路141の構成を考えると、この場合、変換加算回路33への入力信号は遅延回路343と344の2つの出力信号となり、初期位相として、遅延回路343と344の値を異なったものにすれば、変換加算回路33からの多値拡散信号の最初の値は0になることが分る。したがって、便宜上、遅延回路344、343、342及び341の値を順に連続した4ビット列で表せば、多値拡散信号の先頭を0にするためには、遅延回路の初期値を、例えば、
0100、0101、0110、0111、100*、101*
とすればよい。ここで、100*の*は、0100から始まるM系列が更に1ビット進んだ状態と同じにならない値とすることを意味する。101*の*も、同様に、0101から始まるM系列が更に1ビット進んだ状態と同じにならない値とすることを意味する。また、この他に、
1000、1001、1010、1011、010*、011*
という組み合わせも可能である。いずれにせよ、採り得る遅延回路の初期値の数は6であり、同時に通信できる最大チャネル数は6になる。以上はM系列の次数が4(周期Lが15)の場合の例であるが、他の値のときにも同様に考えることができ、同時に通信できる最大チャネル数は、3(L+1)/8となる。
【0070】
図13は、送信部111の第5の構成例(請求項8,11)を示すブロック図である。図13において、39は極性反転回路であり、図1、2、8及び10と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。図13は、図12と同様に、M系列発生回路26のM系列の次数を4とした場合に相当する構成を示している。
【0071】
図13の多値拡散信号発生回路141は、変換加算回路33への入力信号を2つに減らしたこと以外は、図12の場合と同じである。変換加算回路33への入力信号を2つに減らし、Mを1としたことで、多値拡散信号発生回路141からの多値拡散信号は、例えば、+2、0、−2の3値になっている。極性反転回路39は、この3値の多値拡散信号の値により、これが正、0及び負であったら、それぞれ、U/B変換回路121からの出力信号をそのまま、0値及びU/B変換回路121からの出力信号を極性反転した信号を出力する。このような極性反転回路39を用いることで、比較的複雑な乗算回路131を用いなくてすむようになる。
【0072】
図6または9に示すような受信部17でM系列との相関をとる方法は、図7で説明したように、サイドローブが0になるが、ピーク値も(L+1)/2となり、図4のピーク値と比べて約1/2に小さくなる。これは、スペクトル拡散通信方式の特長であるプロセスゲインを約1/2に小さくしていることを意味する。すなわち、受信部17でユニポーラ信号であるM系列をそのまま用いることは、振幅が1/2のバイポーラM系列と大きさ1/2の直流分の合成信号との相関を求めていることと等価であり、それゆえ、情報伝送に利用されていない直流分がプロセスゲインに寄与しないことから、不利となる。
【0073】
図14は、送信部111の第6の構成例(請求項13)を示すブロック図である。図14において、40はクロック制御回路、41は零付加回路であり、図1、2、8、10及び13と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。また、1点破線は、クロック制御信号を表している。図13と同様に、M系列発生回路26のM系列の次数を4とした場合に相当する構成を示している。
【0074】
図14では、クロック制御回路40は、M系列の周期Lビットの期間、各遅延回路341、342、343及び344へクロックを供給したら、次の1ビットの間はクロックを止めて各遅延回路341、342、343及び344の動作を停止し、その代わり零付加回路41を動作させて、遅延回路343と344の出力に“0”信号を付加する。その他の動作は、図13と同様である。
【0075】
図15は、受信部17の第5の構成例を示すブロック図である。図15において、42はクロック制御回路、43は零付加回路であり、図1、3、6及び9と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。また、1点破線は、クロック制御信号を表している。図15は、図14に対応して、2値拡散信号発生回路23内で発生するM系列の次数を4とした場合に相当する構成を示している。
【0076】
図15の受信部17の構成例では、2値拡散信号発生回路23は、図14の多値拡散信号発生回路141からの多値拡散信号に対応して、M系列の最後に“0”を付加した系列を発生する。M系列の発生は、図9と同様に、シフトレジスタを用いて構成されており、図14の多値拡散信号発生回路141と同様に、クロック制御回路42と零付加回路43を用いて、“0”信号を付加する。すなわち、クロック制御回路42は、M系列の周期Lビットの期間、各遅延回路361、362、363及び364へクロックを供給したら、次の1ビットの間はクロックを止めて各遅延回路361、362、363及び364の動作を停止し、その代わり零付加回路43を動作させて、遅延回路363の出力に“0”信号を付加する。図15では、図5と同様に、極性反転回路31を用いている。極性反転回路31は、零付加回路43からの出力が“1”であれば受信信号入力端子29からの受信信号をそのまま出力し、一方、零付加回路43からの出力が“0”であれば受信信号の極性を反転した信号を出力する。極性反転回路31からの出力は、積分回路19でM系列の周期Lの期間積分され、更に、判定回路20で極性を調べ、例えば、それが正であれば情報を“1”、負であれば情報を“0”と判定し、出力端子21へ出力する。
【0077】
図16は、図11の(2)と同じ最大1ビットまでの同期ずれを考慮した場合の詳細な動作の説明図である。図11の(2)と比べて、情報信号1ビットに対応する期間がM系列の1ビット期間だけ長くなっており、また、(e)の受信側のM系列として、バイポーラM系列の最後に“−1”(元のM系列の“0”)を付加した系列を用いている。図15では、極性反転回路31を用いてM系列の値により受信信号の極性を制御しているが、動作を分かり易くするため、本来のバイポーラ信号を乗算する形で表している。(f)に示すように、図14に示す送信部111と図15に示す受信部17の構成を用いることで、サイドローブが0のままで、ピーク値をL+1に大きくでき、プロセスゲインL+1を実現できる。
【0078】
ここで、図14に示す送信部111と図15に示す受信部17の構成を用いたときの同時に通信できる最大チャネル数を求める。図11の(2)に示す例で検討した場合と同様に、初期位相として図14の多値拡散信号発生回路141を構成する遅延回路343と344を異ならせればよいように考えられるが、それだけでは十分ではない。すなわち、便宜上、遅延回路344、343、342及び341の値を順に連続した4ビット列で表し、
1000、1001、1010、1011
という位相は、これを1ビット進めた図16の(a1)に対応する信号の後端が“1”になり、“0”を付加するということと矛盾する。このため、
0100、0101、0110、0111
の4通りが可能となり、同時に通信できる最大チャネルは4となる。また、M系列の周期を一般化して拡張すると、同時に通信できるチャネル数は、(L+1)/4となる。
【0079】
なお、図14の送信部111の第6の構成例を示すブロック図では、図13の送信部111の第5の構成例を示すブロック図に対して、M系列の最後に”0”を付加した系列を発生するように変更するため、クロック制御回路40と零付加回路41を付加して、多値拡散信号発生回路141を構成している。図10の送信部111の第3の構成例を示すブロック図に対しても、同様に、クロック制御回路40と零付加回路41を付加して、M系列の最後に”0”を付加した系列を発生するように変更することができる。但し、この場合、遅延回路282から28Mは不要であり、遅延回路281のみとなり、初期位相設定回路38により、遅延回路281の入力あるいは出力が”01”で始まるようにM系列発生回路26の初期位相が設定される(請求項12)。
【0080】
図17は、受信部17の第6の構成例(請求項22)を示すブロック図である。図17において、44はLPF(ローパスフィルタ)、45は判定回路であり、図1、3、6、9及び15と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。また、1点破線は、クロック制御信号を表している。図17は、図15と同様に、2値拡散信号発生回路23内で発生するM系列の次数を4とした場合に相当する構成を示している。
【0081】
図17では、極性反転回路31からの出力を積分する代わりに、LPF44を用いて平滑化し、判定回路45において、適切なタイミングでサンプリングした値を閾値判定する。LPF44は、理想的には周波数領域で方形の特性を有する理想LPFにする必要があるが、実用上は、適当に近似構成することができる。図17は、図15の構成例に対して、積分回路19と判定回路20をそれぞれLPF44と判定回路45で置き換えているが、他の受信部17の実施例に対しても同様の置き換えを行うことができる。
【0082】
図18は、受信部17の第7の構成例(請求項23,24,26)を示すブロック図である。図18において、461、462、…、46Kは遅延回路、47、48は加算回路、49は減算回路、50はタップ付き遅延回路、51は判定回路であり、図3と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。
【0083】
図18は、図5において、M系列発生回路30、極性反転回路31、積分回路19の代わりにタップ付き遅延回路50を用いて、同様の機能を実現するものである。遅延回路461、462、…、46Kの数Kは、M系列の長さL−1であり、K+1=L個のタップ出力が加算回路47あるいは48に入力される。そして、減算回路49において、加算回路47の出力から加算回路48の出力が減算される。タップ出力は、図5における極性反転回路31からのバイポーラM系列を時間反転したパターンに対応して、それが+1であれば加算回路47に入力され、一方、それが−1であれば加算回路48へ入力される。減算回路49の出力は、判定回路51において、Lビットに1回の適切なタイミングで閾値判定を行い、情報信号を復元する。
【0084】
図18は、いわゆるマッチドフィルタを構成している。図18では、遅延回路461、462、…、46K、加算回路47及び48、減算回路49でタップ付き遅延回路50を構成するようにしたが、電荷結合素子(CCD)や弾性表面波素子(SAW)を用いて構成することもできる。また、図15で説明したM系列に零を付加した2値拡散信号に対しても、遅延回路を1つ加えるだけで対応することができる。
【0085】
図19は、受信部17の第8の構成例(請求項25)を示すブロック図である。図19において、図18と同じ構成要素には、同じ参照符号を付している。
【0086】
図19は、図6において、M系列発生回路30、ゲート回路32、積分回路19の代わりにタップ付き遅延回路50を用いて、同様の機能を実現するものである。M系列の1に対応するタップ出力のみを加算回路47で加えればすむことから、加算回路48と減算回路49は不要になっている。その他の動作は、図18と同様である。
【0087】
以上、スペクトル拡散通信方式の実施の形態について説明したが、本発明は、上述したような実施の形態に限定されるものではなく、他にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、様々な変形実施可能であることは勿論である。
【0088】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、送信部では位相の異なる複数のM系列をバイポーラ信号として加算して生成される多値拡散信号を用いて情報信号の周波数帯域幅を拡散し、受信部では送信部の多値拡散信号の生成に用いたと同じM系列をバイポーラ化した2値拡散信号を用いて受信信号との相互相関をとることで復調を行うため、相互相関特性が台形となり、それゆえ、比較的小さな送受信間の同期ずれが存在しても相互相関値が変化せず、良好な通信性能を有するスペクトル拡散通信方式を提供することができる。
【0089】
また、受信部の2値拡散信号をM系列とすることにより、対応できる送受信間の同期ずれの範囲を広くするために送信部の多値拡散信号を生成するためのM系列の数が増えても、相互相関特性の劣化を除去でき、更に良好な通信性能を有するスペクトル拡散通信方式を提供することができる。
【0090】
また、送信部の多値拡散信号の先頭が零になるようにM系列の初期位相を設定することにより、情報信号の値に無関係に台形の相互相関特性を得ることができ、情報信号の値に無関係に良好な通信性能を有するスペクトル拡散通信方式を提供することができる。
【0091】
更に、送信部の多値拡散信号を1ビット位相の異なる2つのM系列に“0”を付加した系列をバイポーラ信号として加算して生成し、受信部の2値拡散信号を送信部の多値拡散信号の生成に用いたM系列に“0”を付加した系列をバイポーラ化した信号とすることで、プロセスゲインを理想的な多値拡散信号の周期に対応する値にすることができ、1ビットまでの送受信間の同期ずれの範囲で、雑音に強く、更に良好な通信性能を有するスペクトル拡散通信方式を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスペクトル拡散通信方式の送信部と受信部の実施の形態のブロック図である。
【図2】 送信部の第1の構成例を示すブロック図である。
【図3】 受信部の第1の構成例を示すブロック図である。
【図4】 送信部の第1の構成例における多値拡散信号発生回路からの多値拡散信号と受信部の第1の構成例におけるU/B変換回路からのバイポーラM系列との相互相関特性の説明図である。
【図5】 受信部の第2の構成例を示すブロック図である。
【図6】 受信部の第3の構成例を示すブロック図である。
【図7】 送信部の第1の構成例における多値拡散信号発生回路からの多値拡散信号と受信部の第3の構成例におけるM系列との相互相関特性の説明図である。
【図8】 送信部の第2の構成例を示すブロック図である。
【図9】 受信部の第4の構成例を示すブロック図である。
【図10】 送信部の第3の構成例を示すブロック図である。
【図11】 情報信号を考慮した詳細な動作の説明図である。
【図12】 送信部の第4の構成例を示すブロック図である。
【図13】 送信部の第5の構成例を示すブロック図である。
【図14】 送信部の第6の構成例を示すブロック図である。
【図15】 受信部の第5の構成例を示すブロック図である。
【図16】 最大1ビットまでの同期ずれを考慮した場合の詳細な動作の説明図である。
【図17】 受信部の第6の構成例を示すブロック図である。
【図18】 受信部の第7の構成例を示すブロック図である。
【図19】 受信部の第8の構成例を示すブロック図である。
【図20】 従来のスペクトル拡散通信方式の送信部と受信部のブロック図である。
【図21】 M系列の自己相関特性を示す説明図である。
【符号の説明】
101、102、…、10N:情報信号入力端子、111、112、…、11N:送信部、121、122、…、12N:ユニポーラ/バイポーラ変換回路、131、132、…、13N:乗算回路、141、142、…、14N:多値拡散信号発生回路、15:加算回路、16:伝送路、17:受信部、18:乗算回路、19:積分回路、20:判定回路、21:出力端子、22:ユニポーラ/バイポーラ変換回路、23:2値拡散信号発生回路、24:送信出力端子、25:加算回路、26:M系列発生回路、27:ユニポーラ/バイポーラ変換回路、281、282、…、28M:遅延回路、29:受信信号入力端子、30:M系列発生回路、31:極性反転回路、32:ゲート回路、33:変換加算回路、341、342、343、344:遅延回路、35:排他的論理和回路、361、362、363、364:遅延回路、37:排他的論理和回路、38:初期位相設定回路、39:極性反転回路、40:クロック制御回路、41:零付加回路、42:クロック制御回路、43:零付加回路、44:ローパスフィルタ、45:判定回路、461,462,…、46K:遅延回路、47、48:加算回路、49:減算回路、50:タップ付き遅延回路、51:判定回路、611、612、…、61N:送信部、621、622、…、62N:排他的論理和回路、631、632、…、63N:ユニポーラ/バイポーラ変換回路、641、642、…、64N:M系列発生回路、65:受信部、66:M系列発生回路。

Claims (26)

  1. 情報信号の周波数帯域幅を拡散して通信路に送信する1つまたは複数の送信手段と、前記通信路から到来した受信信号より所望の情報信号を復元する1つまたは複数の受信手段とを有するスペクトル拡散通信方式において、
    前記送信手段は、3値以上の値を有する拡散信号を発生する多値拡散信号発生手段と、前記情報信号をバイポーラ信号に変換する情報信号変換手段と、該情報信号変換手段の出力と前記多値拡散信号発生手段の出力とを乗算する多値乗算手段を有し、
    前記受信手段は、2値拡散信号を発生する2値拡散信号発生手段と、該2値拡散信号発生手段の出力をバイポーラ信号に変換する拡散信号変換手段と、該拡散信号変換手段の出力を前記受信信号に乗じる2値乗算手段と、該2値乗算手段の出力を前記2値拡散信号の周期で積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有することを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  2. 請求項1において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を巡回遅延する複数の遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該複数の遅延手段の出力を加え合わせる加算手段とを有し、前記複数の遅延手段における遅延量は1ビットから始まる連続したビット数に対応する量であることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  3. 請求項1において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの複数の出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段とを有し、
    前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で連続する複数の出力を前記変換加算手段への入力とすることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  4. 請求項1において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を巡回遅延する奇数個の遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該奇数個の遅延手段の出力を加え合わせる加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、
    前記奇数個の遅延手段における遅延量は1ビットから始まる連続したビット数に対応する量とし、
    前記初期位相設定手段は、前記加算手段の出力である多値拡散信号の連続する先頭あるいは後端の値が前記奇数個の遅延手段と同じ数のビット数の期間だけ零になるように前記送信側M系列発生手段の初期位相を与えることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  5. 請求項1において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を巡回遅延する偶数個の遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該偶数個の遅延手段の出力を加え合わせる加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、
    前記偶数個の遅延手段における遅延量は1ビットから始まる連続したビット数に対応する量とし、
    前記初期位相設定手段は、前記加算手段の出力である多値拡散信号の連続する先頭あるいは後端の値が前記偶数個の遅延手段と同じ数のビット数の期間だけ+1あるいは−1になるように前記送信側M系列発生手段の初期位相を与えることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  6. 請求項1において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの偶数個の出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段と、前記送信側M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、
    前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で連続する偶数個の出力を前記変換加算手段への入力とし、
    前記初期位相設定手段は、前記変換加算手段の出力である多値拡散信号の連続する先頭あるいは後端の値が前記変換加算手段の入力の数と同じ数のビット数の期間だけ零になるように前記複数の遅延回路の初期値を与えることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  7. 請求項1において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの奇数個の出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段と、前記送信側M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、
    前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で連続する奇数個の出力を前記変換加算手段への入力とし、
    前記初期位相設定手段は、前記変換加算手段の出力である多値拡散信号の連続する先頭あるいは後端の値が前記変換加算手段の入力の数と同じ数のビット数の期間だけ+1あるいは−1になるように前記複数の遅延回路の初期値を与えることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  8. 請求項1において
    前記送信手段を、正及び負の一定値と零の3値の拡散信号を発生する多値拡散信号発生手段と、情報信号をバイポーラ信号に変換する情報信号変換手段と、前記多値拡散信号が正の一定値、負の一定値、零のときには、それぞれ、前記情報信号変換手段の出力信号、該情報信号変換手段の出力を極性反転した信号、零信号を出力する極性反転手段とを有する送信手段に置換したことを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  9. 請求項1又は8において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を1ビットだけ巡回遅延する遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該遅延手段の出力を加え合わせる加算手段とを有することを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  10. 請求項1又は8において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列をバイポーラ信号に変換するM系列変換手段と、該M系列変換手段の出力を1ビットだけ巡回遅延する遅延手段と、前記M系列変換手段の出力と該遅延手段の出力を加え合わせる加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、
    前記初期位相設定手段は、前記遅延手段の入力あるいは出力が“01”あるいは“10”で始まり、かつ、他のチャネルの送信手段内の多値拡散信号発生手段の遅延手段の入力あるいは出力と同じにならないように、前記送信側M系列発生手段の初期位相を与えることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  11. 請求項1又は8において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、M系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの2つの出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段と、前記送信側M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、
    前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で後ろから2つの出力を前記変換加算手段への入力とし、
    前記初期位相設定手段は、前記複数の遅延回路の内で後ろから2つのものの初期値を “01”あるいは“10”とし、他の遅延回路の初期値は他のチャネルの送信手段内の多値拡散信号発生手段の複数の遅延回路でM系列の次数より1少ない長さの同じパターンを初期値に持たないように前記複数の遅延回路の初期値を与えることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  12. 請求項1又は8において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、クロックに合せてM系列を発生する送信側M系列発生手段と、該M系列の最後の位置に零信号を付加して出力すると共にこの期間は前記送信側M系列発生手段へのクロックを止める零付加手段と、該零付加手段の出力をバイポーラ信号に変換する系列変換手段と、該系列変換手段の出力を1ビットだけ巡回遅延する遅延手段と、前記零付加手段の出力と該遅延手段の出力を加え合わせる加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、
    前記初期位相設定手段は、前記遅延手段の入力あるいは出力が“01”で始まり、かつ、他のチャネルの送信手段内の多値拡散信号発生手段の遅延手段の入力あるいは出力と同じにならないように前記送信側M系列発生手段の初期位相を与えることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  13. 請求項1又は8において、
    前記送信手段内の前記多値拡散信号発生手段は、クロックに合せてM系列を発生する送信側M系列発生手段と、該送信側M系列発生手段からの2つの出力の最後の位置に零信号を付加して出力すると共にこの期間は前記M系列発生手段へのクロックを止める零付加手段と、該零付加手段の2つの出力をバイポーラ信号に変換してから加算する変換加算手段と、前記M系列発生手段の初期位相を与える初期位相設定手段とを有し、
    前記送信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有し、前記複数の遅延回路の各出力の内で後ろから2つの出力を前記零付加手段への入力とし、
    前記初期位相設定手段は、前記複数の遅延回路の内で後ろから2つのものの初期値を “01”とし、他の遅延回路の初期値は他のチャネルの送信手段内の多値拡散信号発生手段の複数の遅延回路でM系列の次数より1少ない長さの同じパターンを初期値に持たないように前記複数の遅延回路の初期値を与えることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  14. 請求項2乃至7,9乃至11のいずれ1つにおいて、
    前記受信手段の前記2値拡散信号発生手段は、前記送信側M系列発生手段で発生するM系列と同じM系列を発生する手段であることを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  15. 請求項1又は8において、
    前記受信手段を、2値拡散信号を発生する2値拡散信号発生手段と、該2値拡散信号発生手段の出力に応じて前記受信信号を極性反転または非反転させて出力する極性反転手段と、該極性反転手段の出力を前記2値拡散信号の周期で積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換したことを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  16. 請求項2乃至7,9乃至11のいずれ1つにおいて、
    前記受信手段を、前記送信手段内の前記送信側M系列発生手段で発生するM系列と同じM系列を発生する2値拡散信号発生手段と、該2値拡散信号発生手段の出力に応じて前記受信信号を極性反転または非反転させて出力する極性反転手段と、該極性反転手段の出力を前記M系列の周期で積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換したことを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  17. 請求項1乃至11のいずれ1つにおいて、
    前記受信手段を、2値拡散信号を発生する2値拡散信号発生手段と、該2値拡散信号発生手段の出力を前記受信信号に乗じる2値乗算手段と、該2値乗算手段の出力を前記2値拡散信号の周期で積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換したことを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  18. 請求項2乃至7,9乃至11のいずれ1つにおいて、
    前記受信手段を、前記送信手段内の送信側M系列発生手段で発生するM系列と同じM系列を発生する2値拡散信号発生手段と、該M系列が予め定めた値のときのみ受信信号を通過させるゲート手段と、前記2値拡散信号発生手段からのM系列の周期で該ゲート手段の出力を積分する積分手段と、該積分手段の出力を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換したことを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  19. 請求項14,16又は18において、
    前記受信装置内の前記2値拡散信号発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有することを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  20. 請求項12又は13において、
    前記受信装置内の前記2値拡散信号発生手段は、クロックに合せてM系列を発生する受信側M系列発生手段と、該受信側M系列発生手段の出力に零信号を付加して出力すると共にこの期間は前記受信側M系列発生手段へのクロックを止める零付加手段とを有することを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  21. 請求項20において、
    前記受信側M系列発生手段は、発生するM系列の次数に等しい数の縦続接続された複数の遅延回路と、該複数の遅延回路の各出力の内で該M系列の生成多項式に対応した出力同士の排他的論理和演算を行い結果を先頭の遅延回路に入力する排他的論理和回路とを有することを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  22. 請求項1乃至21のいずれか1つにおいて、
    前記受信手段内の前記積分手段に代えてローパスフィルタを用い、
    前記受信手段内の前記判定手段では、前記2値拡散信号発生手段の出力信号の1周期当り1回の適切なタイミングで前記ローパスフィルタの出力をサンプリングした値を閾値判定することを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  23. 請求項1又は8において、
    前記受信手段を、2値拡散信号を時間反転した形の単位パルス応答を有するタップ付き遅延回路と、該タップ付き遅延回路の長さに対応する時間当り1回の適切なタイミングで該タップ付き遅延回路の出力をサンプリングした値を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換したことを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  24. 請求項2乃至7,9乃至11のいずれか1つにおいて、
    前記受信手段を、前記送信手段内の前記送信側M系列発生手段で発生するM系列と同じM系列をバイポーラ化した信号を時間反転した形の単位パルス応答を有するタップ付き遅延回路と、該タップ付き遅延回路の長さに対応する時間当り1回の適切なタイミングで該タップ付き遅延回路の出力をサンプリングした値を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換したことを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  25. 請求項2乃至7,9乃至11のいずれか1つにおいて、
    前記受信手段を、前記送信手段内の前記送信側M系列発生手段で発生するM系列を時間反転した形の単位パルス応答を有するタップ付き遅延回路と、該タップ付き遅延回路の長さに対応する時間当り1回の適切なタイミングで該タップ付き遅延回路の出力をサンプリングした値を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換したことを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
  26. 請求項12又は13において、
    前記受信手段を、前記送信手段内の前記零付加手段の出力をバイポーラ化した信号を時間反転した形の単位パルス応答を有するタップ付き遅延回路と、該タップ付き遅延回路の長さに対応する時間当り1回の適切なタイミングで該タップ付き遅延回路の出力をサンプリングした値を閾値判定する判定手段とを有する受信手段に置換したことを特徴とするスペクトル拡散通信方式。
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