JP4369818B2 - ステップバック式の遮蔽扉の設置工法 - Google Patents

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本発明は放射線などを遮蔽する必要がある施設の放射線等の遮蔽壁(以下、単に壁ともいう)に設けられる出入口用などの開口部に設置するステップバック式遮蔽扉の設置工法に関する。
ステップバック式の遮蔽扉は、遮蔽壁に形成された開口部に対し前後に移動させ、当該開口部に栓状に収めて開口部を閉鎖し、後退(ステップバック)して前記開口部の開放を行う扉として従来から公知である(例えば、特許文献1参照)。
しかし、ステップバック式の遮蔽扉には、遮蔽壁の厚さが大きい壁に設ける開口部に設置されることが多いため、様々な解決すべき問題点がある。
ステップバック式の遮蔽扉では、放射線等が遮蔽壁に形成した開口部の内周面と扉外周面の間に形成される隙間から漏洩することがないように、開口部の内周面と遮蔽扉の外周面とに、遮蔽壁の内側から外側に向けて順に大きくなる90度角の段差を付けた断面形状が採用されているが、この段差を持つ開口部内周面と扉外周面の間に許容されるクリアランスが数ミリ程度ときわめて厳しい精度条件であるため、この精度を実現するのに、多大の資材,労力,時間を要しているという現状があり、これが遮蔽扉設置のための工事期間を長期化し、また建設コストにも反映されているという点である。
即ち、遮蔽壁の開口部は、その遮蔽壁が建屋矩体の一部として形成される一方、その開口部に設置される遮蔽扉は矩体建設業者とは別の遮蔽扉の製造業者が別の場所で製造して搬入,設置するため、矩体工事で形成される開口部と別に製造される遮蔽扉との精度がクリアランス内に収まり難いことが多い。
そこで、実際に行われているのが、扉の製造業者が、自社で製造する遮蔽扉の形態(外形)に合せて開口部の枠体(扉受け)を作製し、遮蔽扉と開口部に設ける前記枠体のクリアランス精度を、当該枠体を矩体に組込んでしまう前にチェックして確保し、所定の精度が確保できた枠体を矩体(遮蔽壁)の建設現場に搬入し、その枠体の内部と外部に打設コンクリートに対する補強棧,補強柱,補強梁などを付けた状態で矩体側の開口部の形成位置に設置し、この状態で遮蔽壁用のコンクリートを打設することによって、この枠体を矩体(遮蔽壁)に組込んでしまい開口部を形成している。
そして、矩体壁の打設コンクリートの養生が完了しても、枠体の内部に張った補強材は、遮蔽扉本体が搬入されて設置されるまでそのままの状態に維持される。
上記のようにして遮蔽壁に形成される開口部に取付けられる枠体は扉製造メーカーで製造されて当該矩体(遮蔽壁)の建設現場に搬入されて矩体への組込みを行う一方、扉製造メーカーでは、上記枠体とのクリアランスのマッチングをとった扉本体(コンクリート打設前の外面構造、以下同じ)を、所定精度を実現して製造し、その扉本体の内部に必要な補強(棧,梁,柱など)を施し、かつ、必要な付属機構(車輪、モータ、伝導系、配線など)を取付けた状態で、上記枠体が設置されている現場に運び込み、レールや床などの所要付帯設備を構築してから前記矩体(遮蔽壁)に設置した枠体による開口部に対して扉本体を据え、当該扉本体の内部にコンクリートを打設し、その養生を行って前記開口部に対する遮蔽扉の設置を終える、といった大変に煩雑な手間と手順を経て設置されている。
従来のステップバック式遮蔽扉の設置が上記のような煩雑な手間と手順を不可欠とする最大の理由は、遮蔽扉が壁(矩体)に形成される開口部に、前後に進退して栓(プラグ)方式で装着される形態であるので、開口部に取付けられて扉受けとなる枠体を先に取付けて矩体と一体化してしまうと、この枠体に所定クリアランスを保持して着脱(開閉)される扉本体とのクリアランス精度が実現しにくいため、枠体を開口部に取付ける前に、遮蔽扉の製造メーカーで予め製造した枠体と遮蔽扉とが所定クリアランスを実現できることを確認した上で、その枠体を矩体建設現場に搬入して開口部設置位置に据付け、コンクリートを打設して矩体(壁)と枠体が一体になった開口部を造り、そこに遮蔽扉を設置するという設置形態だからである。
特開2002−214387号公報
そこで本発明では、従来のステップバック式遮蔽扉の設置工法を見直し、扉受けとなる枠体を遮蔽扉本体(扉の外面構造)の製造に先立って別に製造して所定精度を出したり、矩体のコンクリート打設前に該当部位(開口部)に前記枠体を据付ける手間を省くことができる遮蔽扉の設置工事を可能にしたステップバック式遮蔽扉の設置工法を提供することを課題とする。
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明設置工法の構成は、下面が平坦面に形成され、側面と上面にテーパー角度が異なりかつ直接連続した2つ以上の傾斜面を具備する大略弾頭状の遮蔽扉を予め作製し、作製した当該遮蔽扉を、遮蔽壁が形成されたら前記扉が設置されるべき開口部に、その開口部のコンクリート打設用の内枠型として据付け、当該遮蔽扉が置かれた開口部を含む遮蔽壁になる部位にコンクリートを打設してから内枠型として据付けた前記遮蔽扉を外して遮蔽壁に開口部を形成し、当該開口部に前記遮蔽扉を開閉動作可能にして設置することを特徴とするものである。ここで、予め作成した遮蔽扉は内部にコンクリートを打設したもの、又は、内部にコンクリートを打設しないもののいずれかであってもよい。
本発明工法では、ステップバック式の遮蔽扉を先に完成させて建屋矩体における壁形成前の開口部が形成される位置に据付け、この扉の外形を開口部の内型枠として用いるので、従来開口部に扉受けとして設けられていた枠体を予め製造したり、その枠体と遮蔽扉との予めのクリアランス調整や、コンクリート打設用の補強材の取付けなどの事前作業や工事が不要になり、従って、その分の手間が省け工期も短かくなる。
また、先に完成したステップバック式の遮蔽扉を開口部の内型枠とするので、遮蔽扉の外形が、従来のステップバック式扉のように、クリアランス精度が実現し易い階段状の90度の段付形状のものに限られない。もっとも本発明工法は、ステップバック式の遮蔽扉が従来の階段状段付き形状のものでも適用できるほか、従来工法では枠体の構造,形態が複雑になるため実施困難であった平断面形状が段付き弾頭状をなす遮蔽扉を使用することができる。
従って、本発明設置工法に用いて有用なステップバック式遮蔽扉の構成は、下面が平坦面に形成され、側面と上面にテーパー角度が異なりかつ直接連続した2つ以上の傾斜面を具備した大略弾頭状に形成した構成のものが挙げられる。
上記遮蔽扉は、その扉を設置する床に設けた当該扉の進退駆動系に遮蔽扉を接続することにより扉の開閉動作をするようにして、扉本体にモータ等の駆動源やその伝導系を設けないように形成したので、扉本体から外部側に出張る駆動系収容部を設ける必要がなくなり、スペース効率も向上する。
本発明工法を適用する遮蔽扉に接続される駆動系は、その扉の開閉のため進退する床にピットを設けそのピット内に収設するようにしたので、駆動系の設置スペースが床面上に現れてその床面を占有することはない。
ピット内部に設ける駆動系としては、後述する索のほか鎖やベルトのような掛回し部材による走行駆動系、パワーシリンダーのようなストローク運動の駆動系、送りネジのような回転−直進運動変換駆動系、これらと伸縮リンク機構の組合せなどの中から選択することができる。
次に本発明の実施形態例について、図を参照して説明する。図1は本発明工法により設置した遮蔽扉の一例の平断面図、図2は図1の遮蔽扉の側断面図、図3は図1,図2の遮蔽扉の正面図、図4は従来工法における開口部の枠体の設置例を説明するための正面図である。
本発明設置工法を適用する遮蔽扉は、一例として図1の平断面形状、図2の側断面形状を持つものである。図において1は、建物矩体と一体に形成される遮蔽壁Wに設けた開口部で、図1の左側が開口間口が狭い線源側1a(狭間口側1aともいう)、右側が開口間口が広い外部側1b(広間口側1bともいう)である。
図に例示した本発明工法を適用する遮蔽扉2は、上記開口部1にステップバック式で開閉される扉として設置されるもので、設置工法(設置形態)が公知のステップバック式の遮蔽扉と大幅に異なっているので、その工法の差異の説明に先立ち、そのような工法を可能としたこの遮蔽扉2の構造,形態について説明する。
図1において、2a,2bは前記開口部1の狭間口側1aに位置付けて形成した間口の中心線に関し対称なテーパー状の傾きに形成した遮蔽扉2における第一傾斜面、2c,2dは前記第一傾斜面2a,2bの後端から異なる傾斜角で連続した第二傾斜面、同様に2e,2fは第三傾斜面で、本発明工法を適用する遮蔽扉2は、平断面形状が中心軸に関し左右対称(図1では上下で対称)な3組の傾斜面2a〜2fにより形成された大略弾頭状に形成されている。
図2の側断面図において、本発明工法を適用する遮蔽扉2は、その上面に、上記の平断面における3組の傾斜面と順に交わる3つの傾斜面2g,2h,2iを備えて形成されている一方、この扉2の下面は平坦面2jに形成されている。この扉2の平坦な下面2jは、この扉2が設置される床Fにおいて、当該扉2の内面(狭間口側1a)を境にした床の境界に段差Fg(内側が高く、境界より外側が低い、図2参照)を付けることにより、放射線などの線の洩れを阻止する構造を採っている。なお、段差Fgの点は、従来のステップバック式遮蔽扉においても同様である。3a,3bと4a,4bは前記扉2の底面部の前後に左右を1組として2組配置した扉の走行手段の一例のローラユニットである。
本発明工法を適用するステップバック式遮蔽扉2の開閉のための走行は、その扉2の走行範囲において床Fに堀った浅いピットPに2条の高荷重レール5a,5bを敷設し、該レール5a,5bの上に上記ローラユニット3a〜4bを走行させることにより行う。
次に、この遮蔽扉2を開閉するために設ける走行駆動系の例について述べる、扉2の重心線近傍の底部には、2条のレール5a,5bに見合う間隔で左右1組の溝付プーリ6a,6bを設けると共に、前記レール5a,5bのエンド部(図の右方)に、前記プーリ6a,6bと平行に1組のプーリ7a,7bを設け、これら左,右2組のプーリ6a〜7bに索8を全体として環状をなすように掛回し、掛回した索8を扉後部(図の右方)の左右のローラユニット4a,4bの内部の駆動輪に通してからこの索8の両エンド側を、中継輪9を経由させて一例としてモータ式の巻上機構10に、巻取り,巻戻し自在にして配置することにより、巻上機構10を駆動して索8を例えば反時計回り方向に移動させると遮蔽扉2が右動(開放側に移動)し、この状態から前記索8を時計回り方向に移動させると遮蔽扉2が左動(閉鎖側に移動)するようにしている。本発明に用いる駆動系は、上記索8に代わる鎖やベルト、或は、送りネジ機構やパワーシリンダなど、若しくは、これらと伸縮リンク機構の組合せなどが適用可能である。
次に、上記のような形態,構造を具備した遮蔽扉2についての本発明設置工法の適用例について説明する。
上記の外形,構造を有する本発明工法を適用する遮蔽扉2は、扉製造工場などにおいて所定の製作精度でその外形が一例として鉄板により形成され、内部に必要な補強を施し、ローラユニット3a〜4bなども装着した状態で、設置現場に搬入する。
遮蔽扉2の設置現場では、開口部を形成すべき遮蔽壁の部位には、鉄筋、型枠などの設置を行い、この状態で矩体壁のコンクリート打設を待機する状態にある。一方、当該矩体壁の開口部が設置される部位に対応する床FにはピットPが仕上げられ、レール5a,5bを正規の高さ,位置に設置(又は仮設置)して、この状態でレール5a,5bや枕木などに必要な仮補強を施しておく。
そこへ、工場で外形を製して正規の内部補強を施したコンクリート打設前の遮蔽扉2の本体を搬入し、前記レール5a,5bにローラユニット3a,3b、4a,4bを載架支持させて、開口部1の所定位置に位置決めして据付ける。このとき、位置決めした扉2本体の左右両側の各傾斜面2a〜2fや上面2g〜2iには、後から打設されるコンクリートと扉2本体との密着を防いだり、開口部1の内張り材となる、ここでは面状乃至板状の離形部材11を配設しておく。
この状態は、後に形成される壁Wの開口部1に、上記扉2本体があたかも当該開口部1の内型として配置されていることを意味するので、この状態で壁Wとなる部分にコンクリートを打設することができる。壁Wとして打設されたコンクリート養成が終われば、内部コンクリートの打設が未了である扉2本体を前記開口部1から引出すことにより、壁W用の打設コンクリートによって、扉2本体を内型枠とする開口部1が形成されることとなる。このとき、離形部材11として薄い金属板などを用いる場合、当該金属板が矩体(壁)側と一体になって必らず残留するように、矩体に面した側に係止突部を設けたり、粗面に形成することが望ましい。また、離形部材11が例えばいわゆる離型剤であるときは、開口部の内周面はコンクリートの打放し面となる。
本発明工法を適用する遮蔽扉2は上記のようにして枠体を使用することなく遮蔽壁の開口部に、その内型枠として利用した後で、内部にコンクリートを打設し、その養成を終えて設置されることになるが、本発明設置工法の理解のため、従来工法において、開口部にコンクリートを打設する前に配置される枠体の例について、図4により説明する。
図4において、開口部の内枠(扉受け)となる枠体21は、その枠体形成部材(この部材は内,外で90度段付の遮蔽扉(図示せず)の外形を受け入れるため、内外に関して段付きとなるように矩形枠状を呈する2組の枠体21a,21bにより形成されているが、打設コンクリートによる圧力に耐えるため、枠体21の内部に柱状補強材31、梁状補強材32、筋違状の偶部補強材33のほか、枠体21の外部に脚状補強材41,42やこれら41,42を枠体21に結合するための結合部材43,44などを設けて、コンクリートの打設に備えている。
このため、従来工法では、コンクリート打設をした後、枠体21の外部の補強材41〜44などはいわゆる埋殺してそのまま壁の内部に残る一方、枠体内部の補強材31〜33は、設置される遮蔽扉の開閉の邪魔になるので、撤去しなければならない。
上記の点は次の難点の原因となる。即ち、壁内に残る補強材43,44は通常、鋼材であるため、壁を形成する打設コンクリートの割合が少なくなる原因となって、これが遮蔽性能の低下につながること、また、壁のコンクリート打設の後、枠体21の内部補強材31〜33を撤去する必要があるが、撤去する手間や撤去後の取付部の回復措置の手間など、その手間が工事期間長期化の要因の一つとなっているという点である。
この点、本発明工法によれば、コンクリート打設時の開口部に枠や枠体を予め設置しないので、上記のような従来工法の問題点はない。
本発明は以上の通りであって、本発明工法によれば、ステップバック式遮蔽扉を、平面形状が少なくとも2つ以上の角度が異なる傾斜面を具備して大略弾頭状に形成したため、予めその遮蔽扉を作製し、作製した該遮蔽扉を、遮蔽壁が形成されたら前記扉を設置する開口部に、そのコンクリート打設用の内枠型として据付け、当該遮蔽扉が置かれた開口部を含む部位にコンクリートを打設して遮蔽壁に開口部を形成することが可能になる。
また、本発明工法では、従来工法において用いた扉受けとなる枠体を開口部に予め取付けていた手法を採らないので、枠体の製造手間,その設置手間、或は、その枠体への補強材の取付けや撤去の手間など多くの手間と使用資材を省くことができ、従って、工期を短縮できるのみならず、使用資材も減じることができるので、工期,資材の両面からコスト低減を図ることができる。
更に、枠体の補強部材が打設コンクリート内に残留しないので、この面での遮蔽性能の向上も期待できる。
本発明工法により設置した遮蔽扉の一例の平断面図。 図1の遮蔽扉の側断面図。 図1,図2の遮蔽扉の正面図。 従来工法における開口部の枠体の設置例を説明するための正面図。
1 開口部
2 遮蔽扉
2a,2b〜2e,2f 扉側面の3組の傾斜面
2g〜2i 扉上面の傾斜面
2j 扉の下面
3a〜4b ローラユニット
5a,5b レール
6a,6b、7a,7b プーリ
8 索
9 中継プーリ
10 巻上機構
F 床
Fg 床の段差
P ピット

Claims (4)

  1. 下面が平坦面に形成され、側面と上面にテーパー角度が異なりかつ直接連続した2つ以上の傾斜面を具備する大略弾頭状の遮蔽扉を予め作製し、作製した当該遮蔽扉を、遮蔽壁が形成されたら前記扉が設置されるべき開口部に、その開口部のコンクリート打設用の内枠型として据付け、当該遮蔽扉が置かれた開口部を含む遮蔽壁になる部位にコンクリートを打設してから内枠型として据付けた前記遮蔽扉を外して遮蔽壁に開口部を形成し、当該開口部に前記遮蔽扉を開閉動作可能にして設置することを特徴とするステップバック式の遮蔽扉の設置工法。
  2. 予め作成した遮蔽扉は内部にコンクリートを打設したもの、又は、内部にコンクリートを打設しないもののいずれかである請求項1のステップバック式の遮蔽扉の設置工法。
  3. 遮蔽扉と開口部の打設コンクリートの間に前記扉とコンクリートを離型させる材料を介在させる請求項1又は2のステップバック式の遮蔽扉の設置工法。
  4. 離型させる材料は、開口部側と一体になる金属板,樹脂板、又は、適宜の化学的離型剤により形成した請求項1〜3のいずれかのステップバック式の遮蔽扉の設置工法。
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