従来から、産業用及び民生用の電子機器等においては、スイッチング電源装置が好適に用いられている。
このスイッチング電源装置は、例えば、入力される直流電圧からオン・オフ動作を繰り返すスイッチング素子によって矩形波状の直流電圧が生成され、その生成された矩形波状の直流電圧をインダクタンス素子及び平滑コンデンサ等からなる平滑回路で平滑して出力するように構成された電源装置である。そして、このスイッチング電源装置では出力電圧の変動に応じて前記スイッチング素子のオン・オフ比が調整されるため、電子機器等に対しては常に一定の電圧の直流が供給されるようになる。
ところで、近年の電子機器等の低価格化、小型化、高性能化及び省エネルギー化に伴い、このスイッチング電源装置に対しては、より小型であり、かつ出力電圧の安定性が高く高効率な電気的特性が強く求められている。そして、スイッチング電源装置の出力電圧の安定性に関して、スイッチング素子のオンオフ比を適切に制御するためには、アベレージカレントモード制御が有効であることが報告されている(例えば、非特許文献1)。ここで、このアベレージカレントモード制御が行われる従来のスイッチング電源装置の構成及び動作について、図面を参照しながら説明する。
図6は、アベレージカレントモード制御が行われる従来のスイッチング電源装置の基本的な構成を模式的に示す回路図である。
図6に示すように、従来のスイッチング電源装置500は、入力電源101の電圧が印加される入力端子102a及び102bと、入力される直流電圧を平滑する入力平滑コンデンサ103と、オン・オフ動作を行う第一のスイッチング素子104及び第二のスイッチング素子105と、平滑回路を構成するインダクタンス素子106及び出力平滑コンデンサ107と、負荷109に対して平滑回路から出力された直流電圧を出力する出力端子108a及び出力端子108bとを有している。又、このスイッチング電源装置500は、一定の電圧を出力する基準電源110と、正極端子及び負極端子に入力される電圧の電圧差を増幅して出力する第一の誤差増幅器111及び第二の誤差増幅器113と、三角波を発生する三角波発生器114と、正極端子及び負極端子に入力される電圧を比較するコンパレータ115と、入力される電圧を反転して出力するインバータ116と、インダクタンス素子106に流入する電流を検出する電流検出回路112とを有している。
先ず、アベレージカレントモード制御が行われる従来のスイッチング電源装置500の回路構成について図6を参照しながら説明する。
入力端子102a及び102bの両端子には、入力平滑コンデンサ103の両端子が接続されている。この入力平滑コンデンサ103の一方の端子は第一のスイッチング素子104の一方の端子(入力側)に接続されており、入力平滑コンデンサ103の他方の端子は第二のスイッチング素子105の一方の端子(入力側)に接続されている。又、第一のスイッチング素子104及び第二のスイッチング素子105の各々の他方の端子(出力側)は相互に接続され、更に、インダクタンス素子106の一方の端子(入力側)に接続されている。このインダクタンス素子106の他方の端子(出力側)は出力平滑コンデンサ107の一方の端子に接続されており、この出力平滑コンデンサ107の他方の端子は前記第二のスイッチング素子105の前記一方の端子に接続されている。そして、出力平滑コンデンサ107の一方の端子は出力端子108aに接続され、又、出力平滑コンデンサ107の他方の端子は出力端子108bに接続されている。この出力端子108a及び108bは、出力平滑コンデンサ107の両端子から出力される電圧を出力する。この出力端子108a及び108bには、負荷109が接続されている。この負荷109は、前記出力端子108a及び108bから印加される入力電源101に由来する直流電圧を消費する。尚、入力電源101は、通常スイッチング電源装置500の外部に設けられる。一方、基準電圧110の負極は、出力平滑コンデンサ107の前記他方の端子と、三角波発生器114の一方の端子とに接続されている。又、基準電源110の正極は、第一の誤差増幅器111の正極端子に接続されている。更に、第一の誤差増幅器111の負極端子は、出力平滑コンデンサ107の一方の端子に接続されている。この第一の誤差増幅器111の出力端子は、第二の誤差増幅器113の正極端子に接続されている。又、第二の誤差増幅器113の負極端子は、電流検出回路112に接続されている。この第二の誤差増幅器113の出力端子はコンパレータ115の正極端子に接続されており、このコンパレータ115の負極端子は、前記三角波発生器114の他方の端子に接続されている。コンパレータ115の出力端子はインバータ116の入力端子に接続され、このインバータ116の出力端子は、第二のスイッチング素子105のオンオフ動作を制御するためのここでは図示されない入力端子に接続されている。又、コンパレータ115の出力端子は、第一のスイッチング素子104のオンオフ動作を制御するためのここでは図示されない入力端子に接続されている。
次に、アベレージカレントモード制御が行われる従来のスイッチング電源装置500の動作について図6を参照しながら説明する。
スイッチング電源装置500が動作する際、第一のスイッチング素子104には、コンパレータ115が出力する第一のパルス幅変調信号(以下、第一のPWM信号)が印加される。この第一のPWM信号は、第二の誤差増幅器113の出力と三角波発生器114の出力とがコンパレータ115に入力され、その二つの出力を比較して生成される。一方、第二のスイッチング素子105には、前記第一のPWM信号がインバータ116によって反転されて得られる第二のPWM信号が印加される。従って、第一のスイッチング素子104と第二のスイッチング素子105とは、交互にオンオフ動作を繰り返すように動作する。つまり、第一のスイッチング素子104がオン状態でかつ第二のスイッチング素子105がオフ状態の時には、平滑回路を構成するインダクタンス素子106と出力平滑コンデンサ107との直列回路には入力電源101の電圧が印加される。反対に、第一のスイッチング素子104がオフ状態でかつ第二のスイッチング素子105がオン状態の時には、インダクタンス素子106と出力平滑コンデンサ107との直列回路は短絡される。これによって、出力端子108a及び108bからは、第一のスイッチング素子104及び第二のスイッチング素子105のオンオフ比に応じた所定の電圧の直流が出力されるようになる。そして、出力端子108a及び108bから出力される直流電圧は負荷109に印加され、この負荷109は所定の動作を行うようになる。
ところで、出力端子108a及び108bに接続されている負荷109の負荷電流は経時的に変動する場合がある。そして、例えば、負荷109の負荷電流が上昇した場合には、スイッチング電源装置500の出力電圧は降下する。この場合、図6に示すスイッチング電源装置500では、アベレージカレントモード制御が行われることによって前記降下した出力電圧が元の電圧に回復する。このアベレージカレントモード制御についてより具体的に説明すると、出力電圧が降下した時、第一の誤差増幅器111は出力端子108aの前記降下した出力電圧と基準電圧110の電圧との電圧差を検出し、その検出された電圧差を所定の増幅率で増幅して第二の電圧を出力する。尚、この第二の電圧は、出力端子108aの電位が低下していない場合の出力(これを第一の電圧とする)よりも低い電圧の出力となっている。そして、このように第一の誤差増幅器111の出力電圧が低下すると、電流検出回路112、第二の誤差増幅器113、コンパレータ115、インバータ116、第一のスイッチング素子104及び第二のスイッチング素子105で構成される、インダクタンス素子106に流入する電流を調整する電流制御ループが動作する。この電流制御ループが動作すると、第一の誤差増幅器111の出力を前記第二の電圧から前記第一の電圧に回復させるべく、第一のスイッチング素子104及び第二のスイッチング素子105に印加するPWM信号が電流制御ループによって調整される。そして、この電流制御ループの動作によるPWM信号の調整によってインダクタンス素子106を流れる電流が増加するので、出力端子108aの電位は元の電位に回復する。つまり、負荷109の負荷電流が変化した場合でも、このアベレージカレントモード制御によって出力端子108a及び108bからは常に一定の電圧の直流が連続的に出力されるようになる。これにより、負荷109は正常な動作を継続することが可能になる。
尚、アベレージカレントモード制御が行われない、出力電圧のみを監視して出力電圧が制御される従来のスイッチング電源装置では、出力電圧が変動した際の出力電圧の回復時間は、インダクタンス素子106及び平滑コンデンサ107の存在によって二次遅れが発生するため遅くなり、又、出力電圧は不安定になり易い。しかし、上記アベレージカレントモード制御が行われるスイッチング電源装置では、インダクタンス素子106を流れる電流を前記電流制御ループによって制御するので、インダクタンス素子106の影響は排除されて一次遅れのみとなる。そのため、位相遅れが少なくなり、又、出力電圧は安定となる。
UNITRODE Products & Applications Handbook 1995-96 U-140
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるスイッチング電源装置の構成を模式的に示す回路図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態1におけるスイッチング電源装置100は、入力電源1の電圧が印加される入力端子2a及び2bと、入力される直流電圧を平滑する入力平滑コンデンサ3と、オンオフ動作を行う第一のスイッチング素子4及び第二のスイッチング素子5と、平滑回路を構成するインダクタンス素子6及び出力平滑コンデンサ7と、負荷9に対して直流電圧を出力する出力端子8a及び出力端子8bとを有している。又、このスイッチング電源装置100は、一定の電圧を供給する基準電源10と、正極端子及び負極端子に入力される電圧の電圧差を増幅して出力する第一の誤差増幅器11及び第二の誤差増幅器13と、三角波を発生する三角波発生器14と、正極端子及び負極端子に入力される電圧を比較するコンパレータ15と、入力される電圧を反転して出力するインバータ16と、コンデンサ7を流れる電流を検出する電流検出回路12とを有している。尚、第一の誤差増幅器11及び第二の誤差増幅器13としては、オペアンプを用いることが望ましい。
先ず、本発明の実施の形態1におけるスイッチング電源装置100の回路構成について図1を参照しながら説明する。
入力端子2a及び2bの両端子には、入力平滑コンデンサ3の両端子が接続されている。この入力平滑コンデンサ3の一方の端子は第一のスイッチング素子4の一方の端子(入力側)に接続されており、入力平滑コンデンサ3の他方の端子は第二のスイッチング素子5の一方の端子(入力側)に接続されている。又、第一のスイッチング素子4及び第二のスイッチング素子5の各々の他方の端子(出力側)は相互に接続され、更に、インダクタンス素子6の一方の端子(入力側)に接続されている。このインダクタンス素子6の他方の端子(出力側)は出力平滑コンデンサ7の一方の端子に接続されており、この出力平滑コンデンサ7の他方の端子は前記第二のスイッチング素子5の前記一方の端子に接続されている。そして、出力平滑コンデンサ7の一方の端子は出力端子8aに接続され、又、出力平滑コンデンサ7の他方の端子は出力端子8bに接続されている。この出力端子8a及び8bは、出力平滑コンデンサ7の両端子から出力される電圧を出力する。この出力端子8a及び8bには、負荷9が接続されている。この負荷9は、前記出力端子8a及び8bから供給される入力電源1に由来する直流電圧を消費する。尚、入力電源1と負荷9とは、通常、スイッチング電源装置100の外部に配設される。一方、基準電圧10の負極は、出力平滑コンデンサ7の前記他方の端子と、三角波発生器14の一方の端子とに接続されている。又、基準電源10の正極は、第一の誤差増幅器11の正極端子に接続されている。更に、第一の誤差増幅器11の負極端子は、出力平滑コンデンサ7の前記一方の端子に接続されている。この第一の誤差増幅器11の出力端子は、第二の誤差増幅器13の正極端子に接続されている。又、第二の誤差増幅器13の負極端子は、電流検出回路12に接続されている。この第二の誤差増幅器13の出力端子はコンパレータ15の正極端子に接続されており、このコンパレータ15の負極端子は、前記三角波発生器14の他方の端子に接続されている。そして、コンパレータ15の出力端子はインバータ16の入力端子に接続され、このインバータ16の出力端子は第二のスイッチング素子5のオンオフ動作を制御するためのここでは図示されない入力端子に接続されている。又、コンパレータ15の出力端子は、第一のスイッチング素子のオンオフ動作を制御するためのここでは図示されない入力端子に接続されている。ここで、本発明の特徴は、電流検出回路12が、図6の従来例においてはインダクタンス素子106の電流を検出するのに対して、本実施の形態においては出力平滑コンデンサ7を流れる電流を検出する点である。
次に、本発明の実施の形態1におけるスイッチング電源装置100の動作について図1を参照しながら説明する。
スイッチング電源装置100が動作する際、第一のスイッチング素子4には、コンパレータ15が出力する第一のPWM信号が印加される。この第一のPWM信号は、第二の誤差増幅器13の出力と三角波発生器14の出力とがコンパレータ15に入力され、その二つの出力を比較して生成される。一方、第二のスイッチング素子5には、前記第一のPWM信号がインバータ16によって反転されて得る第二のPWM信号が印加される。従って、第一のスイッチング素子4と第二のスイッチング素子5とは、交互にオンオフ動作を繰り返すように動作する。つまり、第一のスイッチング素子4がオン状態でかつ第二のスイッチング素子5がオフ状態の時には、平滑回路を構成するインダクタンス素子6と出力平滑コンデンサ7との直列回路には入力電源1の電圧が印加される。反対に、第一のスイッチング素子4がオフ状態でかつ第二のスイッチング素子5がオン状態の時には、インダクタンス素子6と出力平滑コンデンサ7との直列回路は短絡される。これによって、出力端子8a及び8bからは、第一のスイッチング素子4及び第二のスイッチング素子5のオンオフ比に応じた所定の電圧の直流が出力されるようになる。そして、出力端子8a及び8bから出力される直流電圧は負荷9に印加され、この負荷9は所定の動作を行うようになる。
ところで、出力端子8a及び8bに接続されている負荷9の負荷電流が急激に増加した場合には、出力平滑コンデンサ7に蓄積されていた電荷が急激に移動して放電されるため、スイッチング電源装置100の出力電圧は急激に降下する。この時、出力平滑コンデンサ7に流れる電流は電流検出回路12によって瞬時に検出される。この電流検出回路12は、例えば磁気抵抗素子やホール素子等を用いて構成され、出力平滑コンデンサ7に流れる電流を間接的に検出することが望ましい。そして、電流検出回路12の出力は、第二の誤差増幅器13の負極端子に入力される。尚、この時、第一の誤差増幅器11の出力は、第一の誤差増幅器11が有する時定数の大きな積分回路の影響によって殆ど変化しない。そして、第二の誤差増幅器13は、スイッチング電源装置100の出力電圧が急激に降下した情報を含む出力を、コンパレータ15の正極端子に印加する。このコンパレータ15は第二の誤差増幅器13の出力と三角波発生器14の出力とに基づいてインダクタンス素子6に流れる電流を増加させるべくPWM信号を調整し、その調整したPWM信号を第一のスイッチング素子4とインバータ16とに印加する。インバータ16に印加されたPWM信号はインバータ16によって反転され、その反転されたPWM信号は第二のスイッチング素子5に印加される。これによって、第一のスイッチング素子4及び第二のスイッチング素子5のオンオフ比が変化してインダクタンス素子6に流れる電流が増加し、そのため負荷9に対して十分な電流が供給されるようになる。そのため、出力平滑コンデンサ7を流れていた電流は停止する。つまり、スイッチング電源装置100の出力電圧は元の電圧に急速に回復する。ここで、負荷9の負荷電流が急激に増加した場合のスイッチング電源装置100の動作について、図2を参照して詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態1におけるスイッチング電源装置の動作を模式的に説明するチャート図である。
図2において、図2(a)は、負荷9の負荷電流の変化を示している。又、図2(b)は、第一の誤差増幅器11の出力電圧の変化を示している。又、図2(c)は、スイッチング電源装置100の出力電圧の変化を示している。又、図2(d)は、電流検出回路12の出力波形の変化を示している。又、図2(e)は、インダクタンス素子6を流れる電流の変化を示している。
図2(a)に示すように、時刻T0から時刻T1にかけて負荷9の負荷電流が急激に増加すると、インダクタンス素子6を流れる電流は急激には増加しないので、負荷9に供給される電流は出力平滑コンデンサ7から供給される。この負荷9に対する出力平滑コンデンサ7からの電流の供給によって、出力平滑コンデンサ7の両端子間の電位差は縮小し始める。つまり、スイッチング電源装置100の出力電圧が降下し始める(図2(c)参照)。この時、第一の誤差増幅器11の出力は緩やかに変化し始めるが(図2(b)参照)、これはスイッチング電源装置100の出力電圧を急速に回復させることに対しては寄与しない。一方、時刻T0から時刻T1にかけて負荷9の負荷電流が急激に増加することに伴い出力平滑コンデンサ7を流れる電流は電流検出回路12によって瞬時に検出され(図2(d)参照)、その検出結果は第二の誤差増幅回路13に入力される。尚、この電流検出回路12を流れる電流は、インダクタンス素子6に流れる電流と負荷9に流れる電流との差に相当する。従って、第一の誤差増幅器11の出力が殆ど変化しなくても、インダクタンス素子6に流れる電流と負荷9に流れる電流とに差が生じている限りは、第二の誤差増幅器13にはその差が入力される。つまり、第二の誤差増幅器13にその差が直接入力されるので、その第二の誤差増幅器13の出力は時刻T0から時刻T1にかけて急激に変化する(図2(d)参照)。これによって、コンパレータ15が出力するPWM信号も急激に調整されるので、第一のスイッチング素子4及び第二のスイッチング素子5の高速制御が可能になる。ここで、時刻T0以前と負荷9の負荷電流が急変した後の安定状態である時刻T2以降では、インダクタンス素子6に流れる電流と負荷9に流れる電流との差は、インダクタンス素子6を流れる第一のスイッチング素子4及び第二のスイッチング動作5に起因するリップル電流を除くとゼロである。即ち、第一の誤差増幅器11の出力も時刻T0以前と時刻T2以降とで同じ値になることになる。従って、負荷9の負荷電流が急変した時においてスイッチング電源装置100の出力電圧が若干降下し、それに伴い第一の誤差増幅器11の出力が過渡的に変化したとしても、最終的には変化前の値に落ち着くため、第一の誤差増幅器11の出力の変動幅は最小限に抑えられる。特に、第一の誤差増幅器11は、積分回路の時定数を長く設定したとしてもその出力は殆ど変化しない。以上のように、第一の誤差増幅器11の出力が殆ど変化しなくても、負荷9に流れる電流とインダクタンス素子6に流れる電流との差は直接第二の誤差増幅器13に入力され、前記差がゼロになるようにPWM信号が制御される。尚、この時、負荷9に流れる電流の変動を除くと、電流検出回路12で検出される電流波形の変化分はインダクタンス素子6に流れる電流の変化分と直接的に等しくなるので、従来のカレントモード制御の安定性は保持される。
尚、出力端子8a及び8bに接続されている負荷9の負荷電流が緩やかに増加した場合、即ち、スイッチング電源装置100の出力電圧が緩やかに降下した場合には、第一の誤差増幅器11が出力端子8aの前記降下した出力電圧と基準電圧110の電圧との電圧差を検出し、その検出された電圧差を所定の増幅率で増幅して第二の誤差増幅器13に対して出力する。この出力は出力端子8aの電位が低下していない場合の出力よりも低い電圧の出力となっている。そして、このように第一の誤差増幅器11の出力電圧が低下すると、その第一の誤差増幅器の出力電圧を元の電圧に回復させるべく第一のスイッチング素子104及び第二のスイッチング素子105に印加するPWM信号がコンパレータ15によって調整される。そして、この調整されたPWM信号が第一のスイッチング素子4及び第二のスイッチング素子5に印加されることによって、第一のスイッチング素子4及び第二のスイッチング素子5のオンオフ比が調整されるので、インダクタンス素子106を流れる電流が増加する。そのため、出力端子8aの電位は、元の電位に回復する。これにより、負荷9は正常な動作を継続することが可能になる。
本実施の形態では、スイッチング電源装置100における電流検出回路12が出力平滑コンデンサ7を流れる電流を検出するように構成されている。そして、スイッチング電源装置100がこのように構成されていることによって、例えば負荷9の負荷電流が急激に増加して出力平滑コンデンサ7から電流が供給されるようになり、これによってスイッチング電源装置100の出力電圧が急激に降下した時、出力平滑コンデンサ7を流れる電流が電流検出回路12によって瞬時に検出され、その情報が第一の誤差増幅器11を介さずに直接第二の誤差増幅器13に入力されるので、インダクタンス素子6に流れる電流を急激に増加させることができるようになる。そのため、スイッチング電源装置100の出力電圧の降下を最小限に抑え、かつ出力電圧を迅速に回復させることが可能になる。その結果、出力電圧の降下による負荷9の誤動作を防止することが可能になる。又、電流検出装置12が出力平滑コンデンサ7を流れる電流を間接的に検出する場合、出力平滑コンデンサ7の平滑性能に対して何ら悪影響を与えないので、スイッチング電源装置100の出力電圧に対して悪影響を与えることが効果的に防止される。又、電流検出回路12を、例えば磁気抵抗素子を用いて構成する場合には、磁気抵抗素子は半導体磁気センサの中で最も感度が高いセンサであるため、高感度な電流検出回路12を構成することが可能になる。そのため、出力平滑コンデンサ7を流れる電流を精度良くかつ迅速に検出することができる。その結果、インダクタンス素子6を流れる電流の制御が正確かつ迅速に行われ、これにより、スイッチング電源装置100の出力電圧が正確かつ迅速に回復するようになる。又、電流検出回路12を、例えばホール素子を用いて構成する場合には、ホール素子は小型かつ軽量であり、又、消費電力が低いため、小型でかつ低消費電力な電流検出回路12を構成することが可能になる。これは、スイッチング電源装置100の高効率化や小型化、軽量化等に貢献する。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2におけるスイッチング電源装置の構成を模式的に示す回路図である。
本実施の形態と実施の形態1とで異なる点は、実施の形態1においてはスイッチング電源装置100がトランスを用いない非絶縁型であるのに対して、本実施の形態で示すスイッチング電源装置200は、トランス26を用いたハーフブリッジ絶縁型のスイッチング電源装置である点である。尚、以下、実施の形態1における図1で示した回路素子等と同一の回路素子等については同一の記号を付し、その説明は省略する。
図3に示すように、本実施の形態で示すスイッチング電源装置200は、実施の形態1で示したスイッチング電源装置100と比して、一次巻線26aと第一の二次巻線26b及び第二の二次巻線26cとがトランス用コア26dによって磁気的に結合されてなるトランス26と、第一の整流ダイオード27及び第二の整流ダイオード28と、振分回路29とを更に有している。又、実施の形態1で示したスイッチング電源装置100における入力平滑コンデンサ3に対応して、本実施の形態では、第一の分割コンデンサ22及び第二の分割コンデンサ23が配設されている。以下、スイッチング電源装置200の回路構成と動作とについて図3を参照しながら説明する。
入力端子2a及び2bには、入力電源1が接続されている。又、第一の分割コンデンサ22と第二の分割コンデンサ23との直列回路の両端は、入力端子2a及び2bに接続されている。つまり、入力電源1が印加する電圧は、第一の分割コンデンサ22と第二の分割コンデンサ23とによって各々容量に応じて分割される。尚、例えば第一の分割コンデンサ22と第二の分割コンデンサ23とが同一の容量である場合には、入力電源1が印加する電圧は、第一の分割コンデンサ22と第二の分割コンデンサ23とによって均等に分割される。一方、スイッチング電源装置200は、第一のスイッチング素子24と第二のスイッチング素子25とを有している。この第一のスイッチング素子24と第二のスイッチング素子25とは直列に接続されており、その両端は入力端子2a及び2bに接続されている。又、第一の分割コンデンサ22と第二の分割コンデンサ23との接続部はトランス26の一次巻線26aの一方の端子に接続されており、この一次巻線26aの他方の端子は、第一のスイッチング素子24と第二のスイッチング素子25との接続部に接続されている。従って、スイッチング電源装置200が動作中、つまり、第一のスイッチング素子24及び第二のスイッチング素子25が振分回路15の出力に応じて交互にオンオフ動作する際、第一のスイッチング素子24がオン状態でかつ第二のスイッチング素子25がオフ状態の場合には、第一の分割コンデンサ22の電圧がトランス26の一次巻線26aに印加される。又、第一のスイッチング素子24がオフ状態でかつ第二のスイッチング素子25がオン状態の場合には、第二の分割コンデンサ23の電圧がトランス26の一次巻線26aに逆向きに印加される。尚、振分回路15は、コンパレータ15が出力するPWM信号を交互に振り分けて、第一のスイッチング素子24と第二のスイッチング素子25とを交互に駆動するための回路である。そして、トランス26の一次巻線26aと、トランス26の第一の二次巻線26b及び第二の二次巻線26cとはトランス用コア26dによって磁気的に結合されているので、トランス26の第一の二次巻線26b及び第二の二次巻線26cには、トランス26の一次巻線26aに印加される電圧の変化に応じた交流が誘起する。トランス26の第一の二次巻線26b及び第二の二次巻線26cに誘起した交流は、第一の整流ダイオード27と第二の整流ダイオード28とによって直流に変換される。具体的には、第一のスイッチング素子24がオン状態のときには、トランス26の第一の二次巻線26bに誘起する交流は第一の整流ダイオード27によって整流される。一方、第二のスイッチング素子25がオン状態のときには、トランス26の第二の二次巻線26cに誘起する交流は第二の整流ダイオード28によって整流される。尚、第一のスイッチング素子24及び第二のスイッチング素子25の両方ともがオフ状態のときにはトランス26の一次巻線26aには電圧は印加されず、従って、第一の二次巻線26b及び第二の二次巻線26cには交流は誘起されない。この時、第一の整流ダイオード27と第二の整流ダイオード28とは同時にオン状態になり後述する平滑回路は短絡される。そして、トランス26の第一の二次巻線26b及び第二の二次巻線26cから出力され、第一の整流ダイオード27及び第二の整流ダイオード28によって整流されて得た直流は、インダクタンス素子6及び出力平滑コンデンサ7で構成される平滑回路に印加される。この平滑回路は、第一の整流ダイオード27及び第二の整流ダイオード28から出力された直流に含まれるリプル成分を低減し、そのリプル成分が低減された直流を出力端子8a及び出力端子8bに印加する。尚、出力端子8a及び出力端子8bには負荷9が接続されているので、負荷9は出力端子8a及び出力端子8bから供給される直流電圧を消費し所定の動作を行う。このように構成された本実施の形態のスイッチング電源装置200では、出力平滑コンデンサ7を流れる電流が電流検出装置12によって検出され、かつ電流検出装置12の出力が第二の誤差増幅器13に入力される。従って、このスイッチング電源装置200は、実施の形態1で示したスイッチング電源装置100と同様の動作を行うようになる。尚、その他の点については実施の形態1と同様である。
本実施の形態で示すスイッチング電源装置200では、トランス26や第一の整流ダイオード27及び第二の整流ダイオード28が新たに配設され、又、オンオフ動作を繰り返す第一のスイッチング素子24及び第二のスイッチング素子25に係る回路構成が実施の形態1における図1で示した回路構成と異なっているが、第一のスイッチング素子24及び第二のスイッチング素子25をPWM制御することにおいては実施の形態1と同様である。又、出力平滑コンデンサ7を流れる電流を電流検出回路12によって検出し、その検出結果を第二の誤差増幅器に入力することに基づいてスイッチング電源装置200の出力電圧を安定化することも、実施の形態1と同様である。従って、本実施の形態によっても実施の形態1と同様の効果が得られる。又、本実施の形態では、スイッチング電源装置200がトランス26を備えているので、トランス26の一次巻線26aに接続される一次側回路と、トランス26の第一の二次巻線26b及び第二の二次巻線26cに接続される二次側回路とがトランス用コア26dによって電気的に絶縁されている。従って、電気的な信頼性が高い、出力電圧の安定性に優れたスイッチング電源装置を提供することが可能になる。
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3におけるスイッチング電源装置の構成を模式的に示す回路図である。尚、ここでは、便宜的に出力平滑コンデンサを等価回路として示している。
本実施の形態と実施の形態1とで異なる点は、実施の形態1においては電流検出回路が出力平滑コンデンサに流れる電流を検出するように構成されているのに対して、本実施の形態では出力平滑コンデンサに並列接続するようにして該出力平滑コンデンサの等価回路を配設し、その等価回路を構成するコンデンサ及び抵抗の接続部の電圧を検出することによって出力平滑コンデンサを流れる電流を間接的に検出するように構成されている点である。
図4に示すように、本実施の形態で示すスイッチング電源装置300は、実施の形態1で示したスイッチング電源装置100と比して、コンデンサ17と抵抗19とを更に有している。ここで、コンデンサ17の容量値はC1であり、又、抵抗19の抵抗値はR1である。そして、本実施の形態では、電流検出回路12が、コンデンサ17と抵抗19とが直列に接続された連結素子21によって構成されている。又、上述したように、図4では、連結素子21によって構成されている電流検出回路12の動作を説明するために、出力平滑コンデンサ7は等価回路として示されている。ここで、コンデンサ18の容量値はC0であり、又、抵抗20の抵抗値はR0である。そして、図4に示すように、連結素子21と出力平滑コンデンサ7とは並列に接続されている。スイッチング電源装置300がこのような構成を有している場合、コンデンサ18(容量値C0)と抵抗20(抵抗値R0)との直列回路を流れる電流をI0と仮定し、コンデンサ17(容量値C1)と抵抗19(抵抗値R1)とを流れる電流をI1と仮定すると、キルヒホッフの法則から、式(1)が成立する。
(R0+1/(jωC0))I0=(R1+1/(jωC1))I1 ・・(1)
ここで、R0C0=R1C1が成り立つようにR1及びC1を設定すると、式(2)が成り立つ。
(I1/I0)=(C0/C1) ・・(2)
従って、出力平滑コンデンサ7を流れる電流と、電流検出回路12であるコンデンサ17と抵抗19とが直列に接続された連結素子21を流れる電流とは、双方共に波形が等しく、その比はコンデンサ17及びコンデンサ18の容量比に依存することになる。つまり、抵抗19の両端電圧を検出することによって、出力平滑コンデンサ7を流れる電流を正確に検出することが可能になる。そして、この検出した抵抗19の両端電圧を第二の誤差増幅器13に入力することで、スイッチング電源装置300は実施の形態1で示したスイッチング電源装置100と同様の動作を行うようになる。尚、その他の点については実施の形態1と同様である。
このような構成としても、実施の形態1と同様の効果が得られる。又、電流検出回路12を出力平滑コンデンサ7と並列に設けているので、出力平滑コンデンサ7に直列に電流検出回路12を挿入する場合に比べて出力平滑コンデンサ7の平滑能力が低下することは無く、更に安定な出力電圧を得ることが可能になる。又、出力平滑コンデンサ7を流れる電流値を電圧値として直接検出することが可能になるため、電流検出回路12の構成が簡易となる。尚、出力平滑コンデンサ7は実際にはインダクタンス成分を含むが、その影響は小さいため、ここでは無視している。仮に、出力平滑コンデンサ7のインダクタンス成分の影響が大きいときは、電流検出回路12として、LCRの直列回路のような、インピーダンスが定数倍になるような回路を設定すると良い。
(実施の形態4)
図5は、本発明の実施の形態4におけるスイッチング電源装置の構成を模式的に示す回路図である。
本実施の形態と実施の形態1とで異なる点は、実施の形態1においては電流検出回路が出力平滑コンデンサに流れる電流を検出するように構成されているのに対して、本実施の形態ではインダクタンス素子を流れる電流と負荷に流れる電流とを各々検出するように構成されている点である。
図5に示すように、本実施の形態で示すスイッチング電源装置400は、実施の形態1で示したスイッチング電源装置100と比して、差回路30を更に有している。又、図1で示した電流検出回路12は、本実施の形態では二つの第一の電流検出回路12a及び第二の電流検出回路12bに分割されている。そして、負荷9の負荷電流が急激に増加した時、第一の電流検出回路12aはインダクタンス素子6を流れる電流を検出し、又、第二の電流検出回路12bは負荷9に流れる電流を検出する。これらの第一の電流検出回路12a及び第二の電流検出回路12bによって検出された検出値は差回路30に入力され、その差回路30によってインダクタンス素子6を流れる電流と負荷9に流れる電流との差の電流が求められる。ここで、このインダクタンス素子6を流れる電流と負荷9に流れる電流との差の電流は、出力平滑コンデンサ7を流れる電流に相当する。従って、この差の電流を第二の誤差増幅器に入力することによって、スイッチング電源装置400は実施の形態1で示したスイッチング電源装置100と同様の動作を行うようになる。尚、その他の点については実施の形態1と同様である。
このような構成としても、実施の形態1と同様の効果が得られる。又、本実施の形態において、特に、負荷9が例えばマイクロプロセッサ等であり、その動作電流が予め分かっているときは、第二の電流検出回路12bを用いずに負荷9から直接負荷9に流れる電流に比例する制御信号を差回路30に入力することによっても、実施の形態1と同様な効果が得られる。尚、この場合には電流検出回路12bを設置する必要が無くなるので、電流検出回路12bに発生するインピーダンスが負荷9に供給される電圧に影響することを防止することが可能となり、そのため、より安定度の高いスイッチング電源装置を構成できるという効果も得られる。
以上、本発明の実施の形態1〜4では、非絶縁型又は絶縁型のスイッチング電源装置を一例として説明したが、非絶縁型又は絶縁型に関わらず、又、ドロッパ形のスイッチング電源装置等においても本発明を実施又は応用することが可能であることは言うまでも無い。このような構成としても、本発明の実施の形態で得られる効果と同様の効果が得られる。又、本発明の実施の形態1〜4では、降圧型のスイッチング電源装置を一例として説明したが、昇圧型のスイッチング電源装置等においても本発明を実施又は応用することが可能である。更に、絶縁型のフォワードコンバータである1石フォワードコンバータやその他の多石式コンバータ、又、マルチフェーズコンバータに代表されるように複数のコンバータの出力を並列に接続したコンバータにおいても出力部分にインダクタンス素子と平滑コンデンサ(複数のコンバータ出力を並列に接続したコンバータでは、複数のインダクタンス素子と平滑コンデンサ)とで構成された平滑回路を有していれば、本発明の実施の形態で得られる効果と同様の効果が得られる。
又、本発明の実施の形態1〜4では、オンオフ動作を行うスイッチング素子を模式的に図示しているが、具体的には、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(以下、MOSFET)や、バイポーラトランジスタ、又は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下、IGBT)が用いられる。そして、かかる構成としても、出力電圧の変動を最小限に抑えることが可能な好適なスイッチング電源装置を構成することが可能になる。
更に、実施の形態2では、整流回路が第一の整流ダイオード及び第二の整流ダイオードで構成されているが、これらの整流ダイオードの代わりにバイポーラトランジスタ、又は、IGBT、又は、MOSFETを用い、これによって同期整流回路を構成してもよい。かかる構成としても、本発明の実施の形態2と同様の効果が得られる。