JP4369275B2 - ポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法および成形体 - Google Patents

ポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法および成形体 Download PDF

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本発明は、ポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法および成形体に関し、詳しくは、特定の繰返し構成単位を有するポリカーボネート共重合体を含むポリカーボネート系樹脂組成物を用いてその成形体を製造する方法および、該製造方法で得られた成形体、特に低複屈折、高転写性を有する光学成形体に関する。
現在、CD,DVD基板のような薄肉の光学製品については、ポリカーボネート(以下、PCと略記することがある。)樹脂を射出圧縮成形することにより製造されている。しかし、レンズ等の肉厚の光学製品については、冷却歪による複屈折の問題などがあり、所望の形状、光学特性を持つ製品を、通常の射出圧縮成形だけで製造することは困難である(例えば、特許文献1参照)。
一方、ポリカーボネートの射出圧縮成形において、金型の全体又は一部に超音波を付与することで、得られる成形品の複屈折を低減し、型転写性を向上させることも知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。しかし、この方法でも、ポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)が高いこともあって、高精度が求められるレンズ等の肉厚光学製品を前記の超音波を付与した射出圧縮成形だけで製造することは困難である。
また、成形材料にシクロオレフィンポリマーを用いると、複屈折の低減には効果があるが、耐衝撃性が低く脆いため、複雑な形状を持つ成形品には適さないなどの課題がある。
特開平9−272143号公報 特開平3−213315号公報 特開平9−99458号公報 特開2001−62878号公報 特開2002−321254号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ポリカーボネート系樹脂組成物を用いて、特に低複屈折、高転写性を有すると共に、耐衝撃性が高く複雑な形状に成形可能なポリカーボネート系樹脂成形体を効率良く製造する方法及び前記成形体、特にレンズなどとして好適な光学成形体を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の繰り返し単位を特定量有し、かつ粘度数が特定の範囲にあるPC共重合体を含むポリカーボネート系樹脂組成物に超音波を付与しながら成形することにより、上記特性を有するポリカーボネート系樹脂成形体が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法およびポリカーボネート系樹脂成形体を提供するものである。
(1). (A)下記一般式(I)で表される繰り返し単位(a)、及び(II)で表される繰り返し単位(b)を有し、一般式(II)で表される繰り返し単位の含有量{〔b/(a+b)〕×100}が1〜30質量%、粘度数が30〜71であり、280℃での流れ値(Q値)が30×10-2mL/s以上であるポリカーボネート共重合体、又は該ポリカーボネート共重合体と他のポリカーボネート樹脂との混合物を含むポリカーボネート系樹脂組成物を、超音波振動を付与しながら成形を行うことを特徴とするポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法。
Figure 0004369275
[式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に炭素数 1〜6のアルキル基を示す。Xは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、−S−、−SO−、−SO2 −、−O−、−CO−又は下記式(III−1)もしくは下記式(III−2)
Figure 0004369275
で表される結合を示す。R3 及びR4 は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yは、−CH2 −CH2 −CH2 −CH2 −、−CH2 −CH2 −CH2 −CH(CH3 )−及び−CH2 −CH2 −CH2 −から選ばれる一種以上のアルキレン基を示す。a〜dは、それぞれ0〜4の整数であり、nは2〜450の整数である。]
(2). 上記ポリカーボネート系樹脂組成物が、(A)上記ポリカーボネート共重合体、又は上記ポリカーボネート共重合体と他のポリカーボネート樹脂との混合物100質量部と、(B)分子量が200〜100,000のアクリル系樹脂0.01〜1.0質量部とを含む(1)のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法。
(3). ポリカーボネート系樹脂組成物が、さらに、(C)脂環式エポキシ化合物0.01〜1.0質量部及び/又は(D)アルコキシ基、ビニル基及びフェニル基から選ばれる一種以上を有するポリシロキサン化合物0.01〜1.0質量部を含む(2)のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法。
(4).(1)〜(3)のいずれかの製造方法で得られたポリカーボネート系樹脂成形体。
(5). 最大肉厚と最小肉厚の厚み比が1.1以上である(4)のポリカーボネート系樹脂成形体。
本発明によれば、特定の繰り返し単位を特定量有し、かつ粘度数が特定の範囲にあるPC共重合体を含むポリカーボネート系樹脂組成物を、超音波振動を付与しながら成形することにより、シクロオレフィンポリマー以上の低複屈折に優れ、高転写性を有すると共に、耐衝撃性が高く複雑な形状に成形可能なポリカーボネート系樹脂成形体を提供することができる。
本発明のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法に用いられるポリカーボネート系樹脂組成物における(A)成分のPC共重合体は、フェノール変性ジオール共重合ポリカーボネートであり、界面重合法と呼ばれる慣用の製造方法により製造することができる。すなわち、このPC共重合体は、二価フェノール、フェノール変性ジオール及びホスゲン等のカーボネート前駆体を反応させる方法により製造することができる。具体的には、例えば、塩化メチレンなどの不活性溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、更に必要により触媒や分岐剤を添加し、二価フェノール、フェノール変性ジオール及びホスゲン等のカーボネート前駆体を反応させる。
この(A)成分のPC共重合体は、二価フェノールとフェノール変性ジオールとを界面重合法によって共重合させることにより得られ、下記一般式(I)及び(II)で表される繰り返し単位を有するものである。
Figure 0004369275
(式中、R1 〜R4 、X、Y、a〜d及びnについては後述する。)
このPC共重合体を製造する際に用いられる二価フェノールとしては、一般式(Ia)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0004369275
一般式(I)及び一般式(Ia)において、R1 及びR2 は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示し、アルキル基は直鎖状、分岐状及び環状の何れであってもよい。アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチルル基、イソペンチルル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。a及びbは、それぞれR1 及びR2 の置換数を示し、0〜4の整数である。なお、R1 が複数ある場合、複数のR1 は互いに同一でも異なっていてもよく、R2 が複数ある場合、複数のR2 は互いに同一でも異なっていてもよい。
Xは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチリレン基、ヘキシレン基など)、炭素数2〜8のアルキリデン基(例えばエチリデン基、イソプロピリデン基など)、炭素数5〜15のシクロアルキレン基(例えばシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基など)、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基(例えばシクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基など)、−S−、−SO−、−SO2 −、−O−、−CO−結合又は下記式(III−1)もしくは下記式(III−2)で表される結合を示す。
Figure 0004369275
上記一般式(Ia)で表される二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称:ビスフェノールA]が好適である。ビスフェノールA以外のビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラクロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン;2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルネン;等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4’−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシジアリールフルオレン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタンなどのジヒドロキシジアリールアダマンタン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2,3−ジオキサペンタエン、α,ω−ビスヒドロキシフェニルポリジメチルシロキサン化合物などが挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
上記のPC共重合体を製造する際に用いられる分子量調節剤には、通常、PC樹脂の重合に用いられるものなら、各種のものを用いることができる。具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール,o−n−ブチルフェノール,m−n−ブチルフェノール,p−n−ブチルフェノール,o−イソブチルフェノール,m−イソブチルフェノール,p−イソブチルフェノール,o−t−ブチルフェノール,m−t−ブチルフェノール,p−t−ブチルフェノール,o−n−ペンチルフェノール,m−n−ペンチルフェノール,p−n−ペンチルフェノール,o−n−ヘキシルフェノール,m−n−ヘキシルフェノール,p−n−ヘキシルフェノール,p−t−オクチルフェノール,o−シクロヘキシルフェノール,m−シクロヘキシルフェノール,p−シクロヘキシルフェノール,o−フェニルフェノール,m−フェニルフェノール,p−フェニルフェノール,o−n−ノニルフェノール,m−ノニルフェノール,p−n−ノニルフェノール,o−クミルフェノール,m−クミルフェノール,p−クミルフェノール,o−ナフチルフェノール,m−ナフチルフェノール,p−ナフチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−クレゾール,ブロモフェノール,トリブロモフェノール、平均炭素数12〜35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール;9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(4−メトキシフェニル)フルオレン;9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;4−(1−アダマンチル)フェノールなどが挙げられる。これらの一価フェノールのなかでは、p−t−ブチルフェノール,p−クミルフェノール,p−フェニルフェノールなどが好ましく用いられる。
また、上記のPC共重合体を製造する際に用いられる触媒としては、相間移動触媒、例えば三級アミン又はその塩、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩などを好ましく用いることができる。三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアニリンなどが挙げられ、また三級アミン塩としては、例えばこれらの三級アミンの塩酸塩、臭素酸塩などが挙げられる。四級アンモニウム塩としては、例えばトリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどが、四級ホスホニウム塩としては、例えばテトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミドなどが挙げられる。これらの触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記触媒の中では、三級アミンが好ましく、特にトリエチルアミンが好適である。
この際に用いられる不活性有機溶剤としては、各種のものがある。例えば、ジクロロメタン(塩化メチレン);トリクロロメタン;四塩化炭素;1,1−ジクロロエタン;1,2−ジクロロエタン;1,1,1−トリクロロエタン;1,1,2−トリクロロエタン;1,1,1,2−テトラクロロエタン;1,1,2,2−テトラクロロエタン;ペンタクロロエタン;クロロベンゼンなどの塩素化炭化水素や、トルエン、アセトフェノンなどが挙げられる。これらの有機溶剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中では、特に塩化メチレンが好適である。
また、分岐剤として、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール;α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;1−[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン;フロログリシン,トリメリト酸,イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物を用いることもできる。
PC共重合体を製造する際に上記の二価フェノールと共重合させるフェノール変性ジオールは、下記一般式(IIa)で表される化合物である。
Figure 0004369275
一般式(II)及び(IIa)におけるR3 及びR4 は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yは炭素数2〜15の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。c及びdは0〜4の整数であり、nは2〜450の整数である。
3 およびR4 で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。R3 が複数ある場合、複数のR3 は互いに同一でも異なっていてもよく、R4 が複数ある場合、複数のR4 は互いに同一でも異なっていてもよい。Yで示される炭素数2〜15の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基及びイソペンチレン基などのアルキレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基及びイソペンチリデン基などのアルキリデン残基が挙げられる。nは2〜200であることが好ましく、より好ましくは6〜70である。
上記一般式(IIa)で表されるフェノール変性ジオールは、ヒドロキシ安息香酸又はそのアルキルエステル、酸塩化物とポリエーテルジオールから誘導される化合物である。フェノール変性ジオールは、特開昭62−79222号公報、特開昭60−79072号公報、特開2002−173465号公報等で提案されている方法により合成がすることができるが、これらの方法により得られるフェノール変性ジオールに対し適宜精製を加えることが望ましい。精製方法としては、例えば、反応後段で系内を減圧にし、過剰の原料(例えばパラヒドロキシ安息香酸)を留去する方法、フェノール変性ジオールを水又はアルカリ水溶液(例えば炭酸水素ナトリウム水溶液)等で洗浄する方法などが望ましい。
上記のヒドロキシ安息香酸アルキルエステルとしては、ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、ヒドロキシ安息香酸エチルエステルなどが代表例である。ポリエーテルジオールは、HO−(Y−O)n −Hで表され、炭素数2〜15の直鎖状または分岐状のアルキルエーテルの繰返しからなるものである。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。入手性及び疎水性の観点からポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。ポリエーテルジオールのエーテル部の繰返し数nは2〜200であり、6〜70であるものが好ましい。nが2以上であると、フェノール変性ジオールを共重合する際の効率が良く、nが70以下であると、PC共重合体の耐熱性の低下が小さいという利点がある。
また、酸塩化物の代表例としてはヒドロキシ安息香酸とホスゲンから得られるものが代表例である。より具体的には特許2652707号公報等に記載の方法により得ることができる。ヒドロキシ安息香酸又はそのアルキルエステルはパラ体、メタ体、オルト体のいずれでも良いが、共重合反応の面からはパラ体が好ましい。オルト体は水酸基に対する立体障害のため共重合の反応性に劣るおそれがある。
PC共重合体の製造工程において、フェノール変性ジオールは、その変質等を防ぐため、可能な限り塩化メチレン溶液として用いるのが好ましい。塩化メチレン溶液として用いることができない場合、NaOH等のアルカリ水溶液として用いることができる。
PC共重合体において、フェノール変性ジオールの共重合量を増やせば流動性は改善されるが耐熱性が低下する。従って、フェノール変性ジオールの共重合量は所望の流動性と耐熱性のバランスにより選択することが好ましい。フェノール変性ジオール共重合量が40質量%を超えると特開昭62−79222号公報に示されるように、エラストマー状となり、一般のPC樹脂と同様の用途への適用ができなくなるおそれがある。100℃以上の耐熱性を保持するにはPC共重合体中に含まれるフェノール変性ジオール残基の量は、本発明においては1〜30質量%であることを要し、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%である。
(A)成分のPC共重合体は、粘度数が30〜71(Mv(粘度平均分子量)=10,000〜28,100に相当)であり、好ましくは37〜62(Mv=13,100〜24,100に相当)である。後述するPC混合成物、PC系樹脂組成物においても同様の粘度数であることが好ましい。粘度数が30以上であると機械物性が良好であり、粘度数が71以下であると、コモノマーの共重合効果が良好に発揮される。また、高流動性を発現させようとすると多量のコモノマーが必要となるが、粘度数が71以下であると、コモノマーの使用に対して耐熱性が大きく低下することがない。なお、粘度数は、ISO 1628−4(1999)に準拠して測定した値である。
(A)成分のPC共重合体は、280℃における流れ値(Q値)が30×10-2mL/s以上であり、40×10-2mL/s以上であることが好ましい。流れ値(Q値)とは、JIS K7210に準拠し、高架式フローテスターで測定した溶融粘度であり、流れ値(Q値)が30×10-2mL/s以上であると、PC共重合体の溶融粘度が高くなりすぎることがない。後述するPC混合物、PC系樹脂組成物においても同様の流れ値(Q値)であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法においては、(A)上記のPC共重合体、又は上記のPC共重合体に他のPC樹脂を混合したPC混合成物が用いられるが、導光板や光学レンズなどに用いるときに光線透過率を上げる目的で、さらに(B)分子量が200〜100,000のアクリル系樹脂を配合したPC系樹脂組成物を用いても良い。また、この(B)成分に加えて、(C)脂環式エポキシ化合物及び/又は(D)アルコキシ基、ビニル基及びフェニル基から選ばれる一種以上を有するポリシロキサン化合物を配合したPC系樹脂組成物を用いることが好ましい。
上記のPC共重合体に混合する他のPC樹脂としては、市販されているPC樹脂を用いることができる。他のPC樹脂の配合量は、本発明の効果を損なわない点から、PC共重合体100質量部に対し300質量部以下が好ましく、10〜200質量部がより好ましい。
(B)成分のアクリル系樹脂は、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリロニトリル及びその誘導体のモノマー単位から選ばれる少なくとも一種を繰り返し単位とするポリマーであり、単独重合体又はスチレン、ブタジエン等との共重合体をいう。具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エチル−アクリル酸−2−クロロエチル共重合体、アクリル酸−n−ブチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。これらの中でも、特に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を好適に用いることができる。
(B)成分のアクリル系樹脂の分子量は200〜100,000であり、好ましくは20,000〜60,000である。分子量が200〜100,000であると、成形時に、PC共重合体及び他のPC樹脂と、アクリル系樹脂間の相分離が速くなりすぎることがないので、成形品において十分な透明性が得られる。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)としては公知のものを使用することができるが、通常、過酸化物、アゾ系の重合開始剤の存在下、メタクリル酸メチルモノマ−を塊状重合して製造されたものが好ましい。
アクリル系樹脂の配合量は、(A)成分のPC共重合体、又は該PC共重合体に他のPC樹脂を混合したPC混合物100質量部に対し、0.01〜1.0質量部であり、好ましくは0.05〜0.5質量部、より好ましくは0.1〜0.3質量部である。アクリル系樹脂の配合量が0.01質量部以上であると成形品の透明性が向上し、1.0質量部以下であると、他の所望物性を損なうことなく透明性を保持することができる。
上記(C)成分の脂環式エポキシ化合物は、脂環式エポキシ基、すなわち脂肪族環内のエチレン結合に酸素1原子が付加したエポキシ基をもつ環状脂肪族化合物であり、具体的には特開平11−158364号公報に示された下記式(1)〜(10)で表されるものが好適に用いられる。
Figure 0004369275
Figure 0004369275
(R:H又はCH3 を表す。)
Figure 0004369275
(R:H又はCH3 を表す。)
Figure 0004369275
Figure 0004369275
(a+b=1又は2である。)
Figure 0004369275
(a+b+c+d=1〜3である。)
Figure 0004369275
(a+b+c=n(整数),R:炭化水素基を表す。)
Figure 0004369275
(n:整数,R:炭化水素基を表す。)
Figure 0004369275
(R:炭化水素基を表す。)
Figure 0004369275
(n:整数,R:炭化水素基を表す。)
上記脂環式エポキシ化合物の中でも、式(1)、式(7)又は式(10)で表される化合物が、PC系樹脂への相溶性に優れ、透明性を損なうことがない点でより好ましく用いられる。上記(A)成分に(C)脂環式エポキシ化合物を配合することにより、より透明性を向上させることが可能になり、さらに耐加水分解性も向上させることが可能となる。(C)成分の脂環式エポキシ化合物の配合量は、(A)成分100質量部に対し、通常0.01〜1.0質量部であり、好ましくは0.02〜0.2質量部である。この配合量を0.01質量部以上とすることにより添加効果が得られ、1.0質量部以下とすることにより、相分離が助長されることがなく、透明性が得られる。
上記(D)成分のポリシロキサン化合物は、シリコーン系化合物に、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)、ビニル基及びフェニル基から選ばれる一種以上の官能基を導入した反応性シリコーン系化合物であり、オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。この(D)成分は、PC系樹脂において安定剤として作用する化合物であり、(D)成分を配合すると、成形時の熱劣化による黄変、シルバー(銀条)等の外観不良、気泡混入を防止することができる。(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、通常0.01〜1.0質量部、好ましくは0.1〜0.5質量部の範囲である。0.01質量部以上であると添加の効果が発現し、1.0質量部以下であると成形品に曇り等が生じることがない。
(A)成分のPC共重合体またはPC混合物、或いは本発明の製造法に用いられるPC系樹脂組成物には、上記各成分の他に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を配合してもよい。各種添加剤としては、例えば、アリールホスフィン系、亜リン酸エステル系、リン酸エステル系、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、脂肪族カルボン酸エステル系化合物、パラフィン系化合物、シリコーンオイル、ポリエチレンワックスなどの内部潤滑剤、常用の難燃化剤、難燃助剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤などが挙げられる。
本発明のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法において、前記各成分の配合及び混練については、特に制限はなく、通常用いられる方法で行えば良く、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリミキサー、ドラムタンブレーター、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等により行うことができる。混練に際してはの加熱温度は230〜320℃が適当である。
成形法は、射出成形、射出圧縮成形、押出成形などの金型やダイスを用いて行う成形法の全てに適用できる。
射出成形する場合、シリンダー温度を230〜320℃、金型温度を50〜120℃にして行うのが好ましい。高い透明性を得るにはポリカーボネートとアクリル系樹脂の相分離の発生防止の点から、急冷することが好ましく、金型温度を低めに設定するのが好ましい。プリズム転写を行う場合は、成形温度を300℃、金型温度を100〜120℃にするのがさらに好ましい。
成形装置としては、例えば光学用レンズを製造する場合には、図1および図2に示す構造の超音波射出成形装置が用いられる。この射出成形装置では、図1(立面図)に示すように、金型はレンズ製品2個取りキャビティで構成されており、図2(側面図)に示すように、キャビティに振動子より超音波が印加できるような構造となっている。また、射出圧縮仕様になっており、キャビティ部のみ圧縮される構造となっている。キャビティ形状に特に制限はないが、眼鏡レンズなどの肉厚のレンズ形状などが好ましい。
なお、本発明の製造方法は、光学用レンズ以外の用途に適用しても構わないが、成形体の最大肉厚と最小肉厚の厚みの比が1.1倍以上、好ましくは2倍以上、特に好ましくは5〜20倍となる成形体の製造に適用することが好ましい。前記肉厚比が大きいと、冷却歪が大きくなりやすいため、本発明の優位性が、従来技術より顕著に発現しやすい。
超音波振動子において用いられる振動周波数は1kHz〜1MHzの領域で良いが、超音波を大きく発現させるには出力を大きくする必要があり、好ましくは10kHz〜100kHzである。設定振幅は、用いる金型材質の疲労強度を考慮して設定されるが、好ましくは5〜20μmである。設定振幅を5μm以上とすることにより有効な振動効果が得られ、20μm以下とすることにより、キャビテーション発生による局所的な加熱や樹脂の劣化を避けることができる。
超音波振動の最大振幅は、金型を構成する材料の疲労強度で決定される、例えばSUS系の材料で金型を構成している場合には、最大振幅20μm程度、ジュラルミンでは40μm程度、チタン合金では100μm程度である。
超音波振動の振動モードは、材料に所定の振動(振幅及び振動数)を付与することができるものであれば良く、縦振動、横振動、径振動、ねじれ振動のいずれか、又はこれらの振動からなる複合振動でもよい。
超音波の印加時期は、成形サイクル中の任意の時期に設定できるが、利用する超音波効果によって設定するのが良い。例えば、流動性を向上させる場合は、樹脂充填時に印加し、転写性を向上させるには、樹脂充填開始から保圧まで印加する。複屈折を低減させるには保圧冷却時に印加するのが良い。超音波振動子は消耗品であり、長く使用するには、印加時間は少ない方が良いため、超音波印加時期は最適化するのが好ましい。
超音波発信器は、温度変化に伴う共振周波数の変化、或いは成形条件の変化に伴う音響的な負荷変動に対応するため、振幅制御回路付自動周波数追尾型であるのが好ましい。また、必要な超音波出力が一個の振動子では要求される値に達しない場合には、超音波振動子を複数個使用することも可能である。その際には、同じ振動特性を持つ超音波振動子を必要な本数用意し、振動体の外周面に均等間隔で取り付ければ良い。
超音波発信器としては、例えば特開平11−262938号公報などに記載のものを用いることができる。
さらに、大きな超音波振動を振動体に付与するために、公知の超音波出力合成器を用いることもできる。例えば、振動特性を損なわないように多角形(八角形以上)に形成した振動板の各辺に超音波振動子を接合し、これら超音波振動子を同一位相で振動させ、その出力を中央部に集めて、中央部に設けた共振棒から振動体に振動を付与するようにすると良い。
本発明はまた、この本発明の製造方法によって得られたポリカーボネート系樹脂成形体をも製造する。本発明の成形体は、光学成形体として、特に眼鏡レンズなどに好適に用いられる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例におけるPC系樹脂組成物の物性測定およびレンズの歪の判定は以下のように行った。
(1)粘度数(VN)の測定
ISO 1628−4(1999)に準拠して測定した。
(2)一般式(II)で表される繰返し単位の含有量[質量%]の測定
(フェノール変性ジオールカーボネート部の共重合量の測定)
共重合体の 1H−NMRを測定し、各プロトン(下線部)を以下のように帰属した。
δ1.4−1.9:BPAのC 3 、−O−CH2 −C 2 −C 2 −CH2
δ3.3−3.5:−O−C 2 −CH2 −CH2 −C 2
δ4.3−4.4:−CO−O−C 2 −CH2 −CH2 −CH2
それぞれの積分値から、上記一般式(II)で表されるフェノール変性ジオールカーボネート部と、上記一般式(I)で表されるBPAカーボネート部とのモル比を算出した後、質量換算し、算出した。その算出例を以下に示す。
<算出例>
δ1.4−1.9の積分値が858.6、δ3.3−3.5の積分値が118.7、δ4.3−4.4の積分値が10.21のとき、
繰返し数n=118.7÷10.21+1=12.6
BPA=[(858.6−118.7−10.21)/6]=121.6
フェノール変性ジオール=(10.21/4)=2.55
BPAカーボネート部のモル比は下記の計算により、97.9mol%である。
{[(858.6−118.7−10.21)/6]/〔(10.21/4 )+[(858.6−118.7−10.21)/6]〕}×100=97.9mol%
フェノール変性ジオールカーボネート部のモル比は下記の計算により、2.05mol%である。
{(10.21/4)/〔(10.21/4)+[(858.6−118.7−10.21)/6]〕}×100=2.05mol%
従って、フェノール変性ジオールカーボネート部の共重合量[質量%]は次式により8.9質量%となる。
{2.05×(136+120+12.6×72+12+16)÷(2.05×(136+120+12.6×72+12+16)+97.9×254)}×100=8.9質量%
(3)ガラス転移温度Tg(℃)
ISO 11357に準拠して測定した。
(4)流れ値(Q値)の測定
高架式フローテスターを用い、JIS K7210により、280℃、15.7MPaの圧力下に、直径1mm、長さ10mmのノズルより流出する溶融樹脂量(mL/sec)を測定した。溶融粘度の低下とともに流れ値(Q値)は増加する。
(5)レンズの歪の判定
レンズの歪は、ヘイドン(HEIDON)社の歪計(Strain detector)を使用し、直交ニコル法により、目視で判定した。
判定基準は、歪計の透明窓での目視により、レンズの中心部半径35mm以内の領域において、次のように判定した。
×:全体にわたり著しく、濃く着色のあるもの。
Δ:着色は見られるが、着色程度が軽微なもの。
○:光学的に着色が見られないもの。
製造例1
[ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)の合成]
窒素雰囲気下、ポリテトラメチレングリコール〔PTMG、Mn(数平均分子量)=1000〕100質量部とメチルp−ヒドロキシ安息香酸33.4質量部をジブチル錫オキシド0.5質量部の存在下で220℃で加熱し、メタノールを留去した。
反応系内を減圧にし、過剰のp−ヒドロキシ安息香酸メチルエステルを留去した。反応生成物5.0質量部を塩化メチレン30容量部に溶解した。この塩化メチレン溶液に8質量%炭酸水素ナトリウム水溶液10容量部を加え、20分間激しく混合した後、遠心分離により塩化メチレン相を採取した。塩化メチレン相を減圧下で濃縮し、フェノール変性ジオールであるポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)を得た。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により、ポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)中のp−ヒドロキシ安息香酸及びp−ヒドロキシ安息香酸メチルを、下記の方法により定量した結果、p−ヒドロキシ安息香酸は10質量ppm未満、p−ヒドロキシ安息香酸メチルは0.2質量%であった。
<p−ヒドロキシ安息香酸及びp−ヒドロキシ安息香酸メチルの定量>
下記の条件のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により、標準品により作成した検量線に基づいて定量した。
カラム:GLサイエンス社製ODS−3
カラム温度:40℃で、
溶媒:0.5質量%リン酸水溶液とアセトニトリルの容量比1:2混合液
流速:1.0mL/分
製造例2(PC共重合体の製造)
(1)PCオリゴマー合成工程
濃度5.6質量%水酸化ナトリウム水溶液に、後に溶解するビスフェノールA(BPAと記す。)に対して2000質量ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、ここにBPA濃度が13.5質量%になるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。内径6mm、管長30mの管型反応器に、上記BPAの水酸化ナトリウム水溶液を40L/hr及び塩化メチレンを15L/hrの流量で連続的に通すと共に、ホスゲンを4.0kg/hrの流量で連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。
管型反応器から送出された反応液は、後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここに更にBPAの水酸化ナトリウム水溶液を2.8L/hr、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.07L/hr、水を17L/hr、1質量%トリエチルアミン水溶液を0.64L/hrの流量で供給し、29〜32℃で反応を行った。槽型反応器から反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。このようにして得られたポリカーボネートオリゴマー溶液は、オリゴマー濃度329g/L、クロロホーメート基濃度0.74mol/Lであった。
(2)PC共重合体の重合工程
邪魔板、パドル型攪拌翼を備えた内容積50Lの槽型反応器に上記オリゴマー溶液7.5L、塩化メチレン4.7L、製造例1で得たポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)273g(PTMG鎖の数平均分子量(Mn)=1000)、トリエチルアミン4.4mLを仕込み、ここに6.4質量%水酸化ナトリウム水溶液1389gを攪拌下で添加し、10分間PCオリゴマーとポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)の反応を行った。次いで、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP92.9gを塩化メチレン0.3Lに溶解したもの)、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH266gと亜二チオン酸ナトリウム0.9gを水3.9Lに溶解した水溶液に、BPA443gを溶解したもの)を添加し、30分間重合反応を行った。希釈のため塩化メチレン30Lを加え10分間攪拌した後、PC共重合体を含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。
このようにして得られたPC共重合体の塩化メチレン溶液を、その溶液に対して15容量%の量の0.03mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.2mol/L塩酸で順次洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。洗浄により得られたPC共重合体の塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下100℃で乾燥した。NMRにより求めたポリテトラメチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)残基の量は4.5質量%であった。
また、得られたPC共重合体の粘度平均分子量は15000であった。
製造例3(PC系樹脂組成物の製造)
製造例2で得たPC共重合体69.8質量部とタフロンFN1500(商品名,出光石油化学(株)製 Bis−Aポリカーボネート,VN=39.5)を29.9質量部、ダイヤナールBR83(商品名,三菱レイヨン(株)製,アクリル系樹脂,分子量40,000)0.1質量部、KR511(商品名,信越シリコーン(株)製,メトキシ基及びビニル基を有するオルガノポリシロキサン)0.1質量部、セロキサイド2021P(商品名,ダイセル化学工業(株)製,脂環式エポキシ化合物)0.05質量部、アデカスタブPEP36(商品名,旭電化工業(株)製,リン系酸化防止剤)0.05質量部を配合し、ベント付き40mmφの押出機によって樹脂温度260℃で造粒し、ペレットを得た。得られたペレット(PC系樹脂組成物)の物性測定結果は以下の通りであった。
(1)粘度数(VN):39.6
(2)一般式(II)で表される繰返し単位の含有量:6.3質量%
(3)ガラス転移温度Tg:120℃
(4)流れ値(Q値):90×10-2mL/s
実施例1(レンズの成形)
製造例3で得られたPC系樹脂組成物を材料として、図1および図2で示される金型を用いて射出圧縮成形法によりマイナスレンズを製造した。成形温度250℃、金型温度100℃の条件でレンズ径77mmφ、最大厚さ7mm、最小厚さ1.4mmのマイナスレンズを成形した。超音波発振器には精電舎電子工業(株)製SONOPET12000を使用し、周波数を19kHz,振幅を5μmとした。
得られたマイナスレンズの歪の判定結果は○であった。
比較例1
実施例1において、材料としてポリカーボネート樹脂(出光石油化学(株)製、タフロンA1500)を用いた他は、実施例1と同じ条件で成形を行った。タフロンA1500の分子量は、製造例3で得られたPC系樹脂組成物におけるPC共重合体の分子量とほぼ同じである。得られたマイナスレンズの歪の判定結果は×であった。
比較例2
実施例1において、材料としてシクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製、ゼノア1430R1)を用い、成形温度280℃、金型温度120℃とし、超音波印加を無とした他は、実施例1と同じ条件で成形を行った。得られたマイナスレンズの歪の判定結果は△であった。
上記結果によれば、本発明の成形方法による実施例1では、従来のポリカーボネート樹脂を用いた比較例1より大きく複屈折が低減し、また、シクロオレフィンポリマーを用いた比較例2よりも測定部の複屈折が低減した。
以上から、本発明により、特定の繰り返し単位を特定量有し、かつ粘度数が特定の範囲にあるPC共重合体を含むポリカーボネート系樹脂組成物に超音波を付与しながら成形することによって、光学材料として現在多く使用されているシクロオレフィンポリマー(COP)以上の品質が得られることが分かる。
本発明のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法によれば、複屈折が低減され、優れた転写性を有する成形体が得られるので、輝度が向上し且つ複屈折が低減した光学成形品の製造に好適に用いられる。 また、本発明の製造方法は、ポリカーボネート系樹脂を成形するものであるから、透明で耐衝撃性が高く成形性に優れており、複雑な形状の成形体を容易に得ることができる。
従って、本発明のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法は、薄肉で且つ高い転写性が求められる導光板の成形にも用いられるが、特に高精度が求められるレンズ等の肉厚光学製品の製造に好適に用いられる。
超音波射出成形装置の一例を示す説明図(立面図)である。 超音波射出成形装置の一例を示す説明図(側面図)である。

Claims (5)

  1. (A)下記一般式(I)で表される繰り返し単位(a)、及び(II)で表される繰り返し単位(b)を有し、一般式(II)で表される繰り返し単位の含有量{〔b/(a+b)〕×100}が1〜30質量%、粘度数が30〜71であり、280℃での流れ値(Q値)が30×10-2mL/s以上であるポリカーボネート共重合体、又は上記ポリカーボネート共重合体と他のポリカーボネート樹脂との混合物を含むポリカーボネート系樹脂組成物を、超音波振動を付与しながら成形を行うことを特徴とするポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法。
    Figure 0004369275
    [式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に炭素数 1〜6のアルキル基を示す。Xは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基、−S−、−SO−、−SO2 −、−O−、−CO−又は下記式(III−1)もしくは下記式(III−2)
    Figure 0004369275
    で表される結合を示す。R3 及びR4 は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yは、−CH2 −CH2 −CH2 −CH2 −、−CH2 −CH2 −CH2 −CH(CH3 )−及び−CH2 −CH2 −CH2 −から選ばれる一種以上のアルキレン基を示す。a〜dは、それぞれ0〜4の整数であり、nは2〜450の整数である。]
  2. 上記ポリカーボネート系樹脂組成物が、(A)上記ポリカーボネート共重合体、又は上記ポリカーボネート共重合体と他のポリカーボネート樹脂との混合物100質量部と、(B)分子量が200〜100,000のアクリル系樹脂0.01〜1.0質量部とを含む請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法。
  3. 上記ポリカーボネート系樹脂組成物が、さらに、(C)脂環式エポキシ化合物0.01〜1.0質量部及び/又は(D)アルコキシ基、ビニル基及びフェニル基から選ばれる一種以上を有するポリシロキサン化合物0.01〜1.0質量部を含む請求項2に記載のポリカーボネート系樹脂成形体の製造方法。
  4. 請求項2又は3に記載の製造方法で得られたポリカーボネート系樹脂成形体。
  5. 最大肉厚と最小肉厚の厚み比が1.1以上である請求項4に記載のポリカーボネート系樹脂成形体。
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