JP4367739B2 - エアコン洗浄方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアコンの洗浄方法に係り、特に、熱交換器に設置されるフィンの洗浄と、洗浄液自体に改良を加えたエアコンの洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、エアコン内の汚れは冷暖房能力の低下を招く原因となっている。また、汚れに付着した細菌や真菌が増殖して臭ったり、アレルゲンの温床となる。エアコンが増殖した細菌などを含む空気を吹出すと、これを吸込んだ居住者がアレルギー反応を起こすおそれがある。したがって、健康的な生活を維持する上で、エアコンの洗浄は重要である。
【0003】
ここで、エアコン構成の概略について、天井カセット型を例にとり、図9を用いて説明する。図に示すように、エアコン本体1は天井内部に埋め込まれており、天井面に位置する露出面にはプラスチック製の外装パネルであるフェース2が設置されている。フェース2の内部にはフィルタ3が水平に設置されている。エアコン本体1内部の中央にはファンモータ5が配置されており、ファンモータ5の回転軸にはファン4が取付けられている。ファンモータ5の周辺部には電装部材(図示せず)などが設けられている。以上の部材はいずれも分解可能であり、洗浄時には分解されて洗浄される。そこで、このような部材を分解部材と呼ぶことにする。
【0004】
さらに、エアコン本体1内部にはファン4を挟むようにしてアルミフィン6を有する熱交換器7が固定されている。熱交換器7の下部には発泡スチロール製のドレンパン8が取付けられている。ドレンパン8はエアコン本体1内での空気の迷走を防ぐために隣接する部材に隙間なく配置されている。また通常、ドレンパン8には電装系統(図示せず)が設置されている。なお図9中の符号32(一点鎖線)は洗浄廃液を受けるホッパーであり、洗浄時にエアコン本体1に設置されるものである。また、図示しないが、エアコン本体1内部にはエアコン制御用の電装部(図示せず)が固定されている。
【0005】
以上の構成を有するエアコンの洗浄方法の手順について、下記の表1を用いて具体的に説明する。
【表1】
【0006】
a.アルミフィン洗浄前の工程
まず、エアコンが設置された周辺部の壁や室内の床にビニルシートやブルーシートを設置して床養生を行う[手順1…15分]。続いて、エアコン本体1内部に取付けられている分解部材(フェース2、フィルタ3、ファン4、ファンモータ5及び電装部材)並びにドレンパン8の取外し作業を行う[手順2〜6…45分]。次に、外した部材を屋外に搬出[手順7…15分]し、屋外にて洗浄する[手順8〜10…40分]。作業開始からここまでで1時間55分かかる。なお、フィルタ3はフェース2と一体的に外れるので、表1ではフェース2の取外し時間及び洗浄時間だけを記載している。
【0007】
b.アルミフィン洗浄に関する工程
分解部材及びドレンパン8を取外した後、エアコン本体1内部の電装部に対し完全な養生を行い[手順11…15分]、洗浄廃液を受けるホッパー32をエアコン下部に設置した上で[手順12…10分]、アルミフィン6の前清掃、洗浄液塗布、すすぎ、水切り及び乾燥を行う[手順13〜17…50分]。すすぎは高圧スプレーにより水を噴射して行っている。このようなアルミフィン洗浄に関する工程の所要時間は1時間15分である。アルミフィン6に付着する汚れとしては、煙草のヤニや油煙などがほとんどである。そのため、短時間でこれを落とす洗浄液として、強アルカリ性のものを使用している。強アルカリ性の洗浄液はアルミフィン6だけではなく、前記分解部材の洗浄でも用いている。
【0008】
c.片付け工程
片付け工程では、まず、ホッパー32及びエアコン本体1内部の電装部の養生を撤去し[手順18,19…10分]、取外してあったドレンパン8並びに分解部材(ファンモータ5、ファン4、電装部材、フィルタ3、フェース2)をエアコン本体1に取付ける[手順20〜24…50分]。最後に室内の養生を片付ける[手順25…30分]。以上の片付け工程の所要時間は1時間30分、上記a〜cの全工程の合計作業時間は4時間40分となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のエアコン洗浄方法には次のような問題点があった。第1に作業時間が極めて長い点である。上述したようにエアコン洗浄を行う上での手順は全部で25工程あり、作業時間は4時間40分にも及ぶ。仮に、作業を2人で行うとして、屋外に搬出した分解部材の洗浄とアルミフィンの洗浄を別々の作業者が並行して行うとしても、その短縮時間は屋外での洗浄時間である40分だけである。そのため、1日の作業可能時間を9時間として1日に2台洗うことが精一杯であり、洗浄コストを増大させる主要因となっている。
【0010】
具体的には現在、エアコンの洗浄料金は1台当り35000円〜50000円程度に設定されることが多く、定期的な洗浄は経済的に大きな負担となっている。前述したように、健康な生活を維持する上でエアコンを清潔に保つことは極めて重要であり、エアコン洗浄に対するニーズは高い。そのため、洗浄コストの低下は急務となっている。
【0011】
エアコン洗浄の手順の中でも、特に、ドレンパン8の取外し[手順6]は細心の注意が必要であり、作業効率を低下させている。ドレンパン8の取外しについて詳しく説明すると、ドレンパン8をエアコン本体1に取付けているねじはフェース2の取付ねじと兼用されており、ドレンパン8を貫く30cm程度の長ねじが採用されている。そのため、押さえナットを外すには長いねじ部分を回さなければ外れない構造となっており、外す場合も組み立てる場合も困難な作業となっている。
【0012】
また、前述したようにエアコン本体1内での空気の迷走を防ぐためにドレンパン8は隙間なく配置されており、隣接する部材に密着し易い。しかも、発泡スチロール製なので着脱作業の際に破損する可能性が大きい。したがって、慎重な作業とならざるを得ない。さらに、ドレンパン8には電装系統が設置されているため、配線を外す前に結線状態を記録する必要もあり、非常に手間がかかっている。
【0013】
また、水損を防止するための養生にも時間がかかっている。すなわち、エアコンが設置された室内にはOA機器などの電気製品が置かれている場合が多く、これらに水がかかると水損する可能性が高い。しかも、強アルカリ性洗浄液を使用しているので、洗浄液がアルミフィン6に付着したままだと、アルミ表面に塗布してある親水膜を破壊し、フィンを腐食させかねない。したがって、アルミ表面に洗浄液が残留しないように大量の水を使用して洗浄液を入念にすすがなくてはならない。この結果、水の使用量が多くなり、従来ではエアコン1台当り30〜40リットルにも達する。
【0014】
このように大量の水を使用するため、エアコン周辺に対しては十分な養生が不可欠となる。また、ドレンパン8を取外した後、エアコン本体1内部には電装部が固定されたままなので、アルミフィン6を洗浄する際に電装部に対して水がかからないように完全に養生しなくてはならない。このように水損を防止するための養生は熟練を要する入念な作業を必要としており、長い作業時間がかかっている。
【0015】
作業時間の短縮を図るエアコン洗浄方法として、ロボット洗浄機による自動洗浄が提案されているが、全ての工程が自動化されるわけではなく、エアコンへのロボット洗浄機の取付け及び取外しは作業者が行うほかない。また、分解部材の着脱に関しても手作業であることは従来とかわりがない。このため、実際の作業時間の短縮分はフィン洗浄に関するうちの数分だけでしかない。
【0016】
第2に、強アルカリ性洗浄液の使用自体に問題がある。強アルカリ性洗浄液が付着したアルミフィン6は腐食し易いことは既に述べたが、フェース2などのプラスチック製部材に強アルカリ性洗浄液が付着した場合にも、薬品焼けや洗浄むらが出ることがある。したがって、強アルカリ性洗浄液が付着した部材を十分にすすぐことは不可欠であり、これにより強アルカリ性洗浄液を含む廃液の増大がもたらされている。
【0017】
ところで、環境保護が地球規模で問題となっている現在、化学物質は厳しい規制対象となっており、PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)の成立に至っている。PRTR法に基づき、化学物質を含む強アルカリ性洗浄液の廃液は、これを回収し、処理する義務が生じると予想される。
【0018】
したがって、廃液回収や廃液処理を行うための設備が必要となり、膨大な費用がかかることになる。また、作業者が刺激に敏感な場合、強アルカリ性洗浄液を吸引したり、作業者に付着したりすると、炎症を起こすおそれもある。このように強アルカリ性洗浄液の使用は、環境面だけではなく、コスト面や安全面から見ても問題となっており、化学物質を含まない洗浄液の使用が強く望まれている。
【0019】
第3の問題点は、エアコン本体1から外したフェース2などの分解部材の洗浄に関してである。すなわち、従来のエアコン洗浄方法では、分解部材を屋外にて洗浄しているため、室内から屋外までの搬出入経路や洗浄場所、さらには洗浄後の部材を乾燥させる保管場所を確保しなくてはならない。特に、洗浄場所を確保する場合、強アルカリ性洗浄液を含む廃液が草木を枯れさせるおそれがあるので、植栽のない場所を選ぶなど洗浄場所の選定には制約がある。また、保管場所では部材がいたずらされたり、風で倒れたりして壊れないように監視する必要がある。さらに、夜間作業では騒音が問題となる。
【0020】
第4の問題点として、アルミフィン6の洗浄が困難化していることが挙げられている。近年ではエアコンの小形化が進んでおり、フィンピッチが狭くなる傾向にある。そのため、アルミフィン6の奥側まで均一に洗浄することが難しくなっている。また、掃除機のノズルなどをアルミフィン6に直接当てて汚れを吸取ったり、ブラシで強く擦ったりすることも行われているが、この場合、フィンが変形するおそれがある。
【0021】
本発明は、上述したような従来技術の持つ問題点を解決するために提案されたものであり、その主たる目的は、部材の取外し作業を省力化して洗浄時間の短縮を図ると共に、洗浄液の改善により環境調和性を高め、経済性及び安全性に優れたエアコン洗浄方法を提供することにある。
【0022】
また、本発明の他の目的は、エアコン本体から取外した分解部材も効率良く洗浄できるエアコン洗浄方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、変形させることなく高い洗浄度でフィンを洗浄できるエアコン洗浄方法を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、内部にフィンを有する熱交換器が設置されると共にフィルタ及びファンを含む分解部材が取外し可能に配置され、前記熱交換器の下部にはドレンパンが取付けられたエアコンを洗浄する方法において、前記分解部材をエアコン本体から取外す分解部材取外し工程と、前記分解部材を洗浄する分解部材洗浄工程と、エアコン本体内部に前記ドレンパンを取付けたまま、前記フィンに蒸気及び沸騰水を吹付けてフィンを洗浄するフィン洗浄工程と、前記フィン洗浄工程において前記フィンに蒸気及び沸騰水を吹付けた際に発生するもやを、前記フィンに近接して固定配置したもや取りノズルによって、前記フィン洗浄工程の実施と同時に吸取る、もや取り工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
煙草のヤニや油煙といった汚れは温度を高くすると落ち易いことが知られている。そこで、請求項1の発明では、高温の蒸気及び沸騰水をフィンに吹付けることにより前記の汚れを効率良く落とすことができる。このときの沸騰水の使用量は従来の高圧スプレーによるすすぎ用の水の使用量に比べて、非常に少ない量で済む。しかも、フィンに吹付けた沸騰水のうち、1〜2割は蒸発するので、洗浄廃液量はさらに少なくなり、廃液の回収量はわずかで済む。したがって、廃液回収が義務付けられるPRTR法施行後の洗浄方法として好適である。
【0025】
また、水の使用量が少ないため、床や電装部に対する養生を省いたり簡易化することが可能である。さらに、ドレンパンをエアコン本体に取付けたままフィンの洗浄を行うため、面倒なドレンパンの着脱作業を省くことができる。しかも、フィン洗浄に用いる蒸気及び沸騰水は高温であるため、洗浄後、フィンを素早く乾燥させることができる。
【0026】
以上のような養生作業やドレンパン着脱の省力化、さらには迅速な乾燥といったことにより、作業時間の大幅な短縮が可能となる。作業時間の短縮、並びに水使用量及び洗浄廃液の減少はコストの削減をもたらし、エアコン洗浄料金の低価格化が実現する。これにより、定期的にエアコンを洗浄しても、経済的な負担は軽くて済む。したがって、エアコンを常に清潔に保つことが可能になり、エアコン性能の低下を防ぐと共に、快適で健康的な生活を維持することができる。
【0027】
また、フィン洗浄工程時に蒸気及び沸騰水によって発生するもやを吸取るので、視界がくもることがない。したがって、洗浄作業中にフィンが見え難くならず、優れた作業性を発揮できる。
【0028】
請求項2の発明は、請求項1記載のエアコン洗浄方法において、前記分解部材に蒸気及び沸騰水を吹付けて前記分解部材洗浄工程を屋内にて行うことを特徴とする。
【0029】
以上の請求項2の発明では、分解部材に蒸気及び沸騰水を吹付けて洗浄することにより、前記請求項1の発明と同様、水使用量及び洗浄廃液量が大幅に低減する。そのため、洗浄場所及び保管場所の選定も容易となり、分解部材洗浄工程を屋外ではなく、屋内にて行うことが可能となる。したがって、分解部材を屋外に搬出する必要がなく、分解部材の監視や夜間作業時の騒音も気にしないで済み、作業効率が向上する。
【0032】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のエアコン洗浄方法において、前記フィン及び前記ドレンパンに付着した洗浄廃液を強制的に吸取る廃液回収工程を含むことを特徴とする。
【0033】
以上の請求項3の発明では、フィンに付着した洗浄廃液を強制的に吸取ることでフィンに付いたしつこい汚れを取ることができる。また、フィンからの洗浄廃液がエアコン本体から外していないドレンパンに流れ込み、ドレンパンの汚れを浮かす。そして、ドレンパンに付着した洗浄廃液を強制的に吸取ることにより、ドレンパンの汚れを取除くことができる。このとき、スライム状に固まった汚れも吸込むため、洗浄後にドレンパン及びドレンポンプが詰まるといったことがなく、作業性が向上する。さらに、フィン及びドレンパンに付着した水分を吸取ることで両部材の乾燥に要する時間を短縮できる。
【0034】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアコン洗浄方法において、洗浄液としてアルカリ水を用いることを特徴とする洗浄液としてアルカリ水を用いることを特徴とする。
【0035】
アルカリ水は水に少量のNaClを混ぜ電解して作る機能水であり、化学物質を全く含んでいない。請求項4の発明では、このようなアルカリ水を用いてエアコンを洗浄するので、PRTR法に触れることもなく、廃液の回収及び処理にかかる費用が低減する。また、強アルカリ性洗浄液が持つ不具合、すなわち、アルミフィンの腐食やプラスチック製品の薬品焼けあるいは洗浄むら、さらには作業者の炎症のおそれなどは全くなく、安全性が高い。
【0036】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアコン洗浄方法において、前記分解部材洗浄工程は、取外した前記分解部材を専用洗浄施設に持ち運んで、ここで分解部材を洗浄する分解部材洗浄工程を行うものであることを特徴とする。
【0037】
以上のような請求項5の発明では、専用洗浄施設に搬入してから分解部材を洗浄するため、施設内に設けた洗浄設備にて高品位な洗浄が実施できる。分解部材のうち、外装パネルは直接人目に触れる部分であるにもかかわらず、形状が複雑で壊れ易い繊細な部分が多く、洗浄が難しい。そこで、エアコンが設置された現場よりも設備が充実した施設で洗浄を行うことにより、洗浄度を高めることが可能となる。
【0038】
また、洗浄廃液の回収や処理に関しても、限られた空間だけを考慮すれば良いので十分な対策を立て易く、PRTR法施行下でのアピール度が高い。なお、専用洗浄施設としては、サービスステーションなどの固定された施設に限定されるものではなく、ワゴン車を改造したサービスカーであっても良い。
【0039】
請求項6の発明は、請求項5記載のエアコン洗浄方法において、前記専用洗浄施設での分解部材洗浄工程にて分解部材を超音波洗浄することを特徴とする。
【0040】
以上のような請求項6の発明によれば、専用洗浄施設にて分解部材を超音波洗浄することにより、分解部材の形状が複雑であったり、壊れ易い繊細な部分があったりしても、隅々まで洗浄することができ、高品位な洗浄を実現することができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例について、図面を参照して具体的に説明する。下記の実施の形態はいずれも、図9に示した天井カセット型のエアコンに適用したものである。
【0047】
(1)第1の実施の形態
[構成]
第1の実施の形態について、図1のエアコン洗浄装置の構成及び作業状況を説明する図を用いて説明する。
【0048】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るエアコン洗浄装置には、120℃の蒸気及び沸騰水を噴射するスチームノズル9と、もやを吸取るもや取りノズル10と、洗浄廃液を強制的に吸取るバキュームノズル11とが設けられている。スチームノズル9は噴射ノズルであり、もや取りノズル10及びバキュームノズル11は吸引ノズルである。また、エアコン本体1の下方には廃液受け用のホッパー12が吊下げ用鎖17によって取付けられている。このホッパー12にはスチームノズル9、もや取りノズル10及びバキュームノズル11をそれぞれ接続するノズル接続部13a,13b,13cが設けられている。
【0049】
スチームノズル9は耐熱性を有するニードルノズル(穴径1.5mm)から構成されている。スチームノズル9の基端部にはホース9aが接続されており、ホース9aの長さはスチームノズル9が作業領域全域に届くように設定されている。もや取りノズル10は先端がアルミフィン6に近接するようにノズル接続部13bに固定されている。バキュームノズル11は先端がドレンパン8につかるように自在に変形する蛇腹状のホースから構成されている。
【0050】
図2及び図3にも示すように、ホッパー12は縁部を有する四角い廃液受け皿14と、この廃液受け皿14の四隅から斜め上方に延びる4本の角柱状の押さえ棒15と、各押さえ棒15の間に張られる防水シート16とから構成される。また、図4及び図5に示すように、廃液受け皿14には前記ノズル接続部13a,13b,13cが配置されると共に、廃液受け皿14から廃液を排出するドレンパイプ18が接続されている。廃液受け皿14の底面はドレンパイプ18に向って傾斜するように形成されている。
【0051】
図6は防水シート16の斜視図である。この図に示すように、防水シート16はギャザー仕上げで、上下端部にゴムが入れてあり、内側及び外側に伸縮するようになっている。
【0052】
次に、第1の実施の形態に係る洗浄方法の手順について、下記の表2を参照して説明する。なお、表2においても表1と同様、フェース2の取外し時間及び洗浄時間にフィルタ3の取外し時間及び洗浄時間が含まれている。
【表2】
【0053】
a.アルミフィン洗浄前の工程
まず、床養生とフェース2及びファン4の取外し[手順1〜3…25分]までは、表1にて示した従来方法と変わらない。ただし、ファンモータ5、電装部材及びドレンパン8はエアコン本体1から外さない。スチームノズル9から蒸気及び沸騰水を噴射して、フェース2及びファン4を屋内にて洗浄する[手順4,5…30分]。作業開始からここまでで55分である。つまり、分解部材を外す時間、それらを搬出する時間及びドレンパン8を洗浄する時間の合計1時間が短縮されたことになる。なお、ドレンパン8の洗浄に関しては後述するが、洗浄しないのではなくアルミフィン洗浄と同時に行うと考えて良い。
【0054】
b.アルミフィン洗浄に関する工程
フェース2とファン4を取外した後、ドレンパン8をエアコン本体1に取り付けたまま、ファンモータ5、電装部材及びエアコン本体1内部の電装部に対して簡単な養生を行い[手順6…5分]、洗浄後の廃液を受けるホッパー12を吊下げ用鎖17にてエアコン下部に設置した上で[手順7…5分]、アルミフィン6を前清掃する[手順8…10分]。
【0055】
続いて、スチームノズル9から蒸気及び沸騰水を噴射して洗浄する[手順9…15分]。この蒸気噴射を伴う洗浄を、以下スチーム洗浄と呼ぶ。なお、スチーム洗浄と同時にバキュームノズル11がドレンパン8にたまった洗浄廃液を強制的に吸取っている。この吸取りによりドレンパン8の洗浄を行う。また、スチームノズル9がアルミフィン6に蒸気及び沸騰水を吹付ける際、もやが発生するが、もや取りノズル10がこれを吸取っている。
【0056】
スチーム洗浄後、アルミフィン6を乾燥させる[手順10…10分]。ただし、蒸気及び沸騰水によって洗浄しているので乾燥は素早く、実際には従来の乾燥時間である10分よりも短くなる。以上のアルミフィン洗浄に関する工程の所要時間は45分である。ここでは従来と比べて、電装部に対する養生の簡略化で10分、ホッパー12の設置で5分、フィンの洗浄の15分、合計30分の短縮化を図っている。
【0057】
c.片付け工程
片付け工程では、まず、ホッパー12の撤去[手順11…5分]及びエアコン内部の電装部の養生を撤去し[手順12…10分]、取外してあったファン及びフェースをエアコン本体に取付ける[手順13,14…15分]。最後に室内の養生を片付ける[手順15…20分]。以上の片付け工程の所要時間は45分、ファンモータ5、ドレンパン8の取付及び電送部の配線にかかる35分と、養生片付けの簡易化による10分、都合45分が短縮される。上記a〜cの全工程の合計作業時間は2時間25分であり、従来方法と比べて2時間15分、作業時間を短くすることができる。
【0058】
[作用効果]
以上のような第1の実施の形態の作用効果は次の通りである。アルミフィン6に付着する汚れは主に煙草のヤニや油煙であるが、これらは温度を高くすると落ち易い。第1の実施の形態では、スチームノズル9がアルミフィン6に蒸気及び沸騰水を吹付けることによりこれらの汚れを効率良く落とすことができる。その際の沸騰水使用量はエアコン1台当り1〜2リットル程度であり、30〜40リットル使用していた従来の高圧スプレーによる水の使用量に比べて、1/15以下にまで減らすことが可能となる。しかも、使用した沸騰水の1〜2割は蒸発するので、廃液回収量は若干であり、廃液回収が義務付けられるPRTR法施行後の洗浄方法として極めて有効である。
【0059】
水使用量及び廃液回収量の低減は、床や電装部に対する養生の簡易化をもたらし、熟練を要する作業が必要なくなる。さらに、ドレンパン8をエアコン本体1に取付けたままアルミフィン6の洗浄が可能なので、周辺部に密着したドレンパン8の破損事故を防止するだけではなく、結線状態の記録なども伴う面倒な着脱作業自体が不要となる。
【0060】
この結果、先にも述べたように合計作業時間を2時間25分まで短縮することが可能となる。1日の作業可能時間を9時間とすると1日当りの洗浄台数は4台弱となり、従来に比べて約2倍となる。これに加えて、水使用量及び洗浄廃液が減少したことでもコスト削減を図ることができ、社会的に要請の強い洗浄料金の大幅な値下げに応えることができる。経済的な負担が軽くなったことで、定期的なエアコン洗浄が可能となり、エアコン性能の維持並びに健康的な生活の維持に寄与することができる。
【0061】
また、第1の実施の形態では、フェース2及びファン4を屋内で洗浄しているが、これも水使用量及び廃液回収量を低減したために可能となったものである。分解部材の洗浄を室内で行うことにより、搬出入の手間がかからないのはもちろんのこと、洗浄場所及び保管場所の確保、部材の監視が容易になり、夜間作業での騒音問題も解消する。この結果、高い作業効率を得ることができる。さらに、スチームノズル9からの蒸気及び沸騰水によりもやが発生しても、もや取りノズル10がこれを吸取っている。このため、フィン洗浄工程時にアルミフィン6が見え難くならず、澄んだ視界を確保でき、優れた作業性を発揮できる。
【0062】
ところで、ドレンパン8はエアコン本体1に取付けたままなのでアルミフィン6からの洗浄廃液が流れ込み、ドレンパン8の汚れを浮かすことになる。そして、バキュームノズル11がドレンパン8にたまった洗浄廃液を強制的に吸取るので、ドレンパン8の汚れを確実に落とすことができる。このとき、スライム状の汚れなどもバキュームノズル11が吸込むことができるので、ドレンパン8及びドレンポンプが詰まるといったこともなく、高品質の洗浄作業を実施することができる。
【0063】
ホッパ12は、廃液受け皿14にてエアコン本体1から落下してくる僅かな洗浄廃液をも受止め、防水シート16により洗浄液及び洗浄廃液の飛沫が周囲に拡散することを防いでいる。このため、室内に大掛かりな床養生を行う必要がなくなり、作業時間の短縮に寄与できる。また、ギャザー仕上げである防水シート16は優れた伸縮性を持ち、作業者がホッパー12の防水シート16を軽く押すだけで、防水シート16は押された部分が内側に畳まれて作業者はエアコン本体1にスムーズに近付くことができる(図1及び図7参照)。
【0064】
また、防水シート16は高い透明度を有しており、作業領域が暗くならず、作業環境の劣化を招く心配がない。さらにホッパー12は、防水シート16を張ったままの押さえ棒15を、廃液受け皿14から取外すだけで分解でき、撤収作業を短時間で実施できる。また、防水シート16をギャザーに沿って畳むことによりコンパクトに収納することができる。一方、ホッパー12を組立てる場合には、防水シート16を広げて押さえ棒15を廃液受け皿14に取付けさえすればホッパー12の完成であり、組立作業も極めて容易である。
【0065】
以上述べたような第1の実施の形態によれば、ドレンパン8の取外しを省力化して洗浄時間の短縮を図り、蒸気及び沸騰水の噴射により使用水量及び洗浄廃液量を削減して環境調和性を高めることによって、高品質で低価格なエアコン洗浄方法を提供することができる。
【0066】
(2)第2の実施の形態
[構成]
第2の実施の形態は、洗浄液としてアルカリ水を用いた点に特徴がある。
【0067】
[作用効果]
以上のような第2の実施の形態では、アルカリ水を用いて洗浄しているため、洗浄液には化学物質は全く含まれていない。したがって、PRTR法に抵触しない。この結果、アルカリ性洗浄液を含む廃液の回収及び処理に伴う膨大な費用を節約することができ、経済的に極めて有利である。また、強アルカリ性洗浄液によるアルミフィン6の腐食やプラスチック製品の薬品焼けあるいは洗浄むら、さらには作業者の炎症などの不具合も防ぐことができ、環境面、コスト面及び安全面といったいずれの面から見ても優れた洗浄方法を提供することができる。
【0068】
(3)第3の実施の形態
[構成]
第3の実施の形態は、取外した分解部材を専用洗浄施設であるサービスステーションに持ち運み、これを超音波洗浄する点にある。図8は第3の実施の形態に係るサービスステーションの構成図である。すなわち、サービスステーション31(一点鎖線)には、超音波洗浄機21、給水タンク22、洗浄液濾過機23、エアコンプレッサ24、バキューム機25、ワッシャー機26、発電機27、分電盤28が設けられている。
【0069】
超音波洗浄機21は超音波発振機29と分解部材(ここではフェース2)を収容可能な洗浄ブース30とから構成されている。洗浄ブース30には洗浄液の流入口30a及び洗浄廃液の流出口30bが設けられ、内部に洗浄液が満たされている。ワッシャー機26にはフェース2を斜めに立てかけるネット26aが設けられ、このネットに対向して以下の3つの部材、すなわち、フェース2にすすぎ用の水を噴射する水噴射ノズル31と、フェース2に洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズル32と、高圧エアを噴射するノズル33とが設置されている。このうち、ノズル33には高圧エアを供給するエアコンプレッサ24が接続されている。また、ワッシャー機26の下部には洗浄液溜めが形成され、洗浄液の流入口26a及び洗浄廃液の流出口26bが設けられている。
【0070】
洗浄液濾過機23には洗浄廃液を取入れる取入口23a,23bと、濾過した洗浄液を送り出す送出口23c,23d,23eが設けられている。取入口23a及び23bには洗浄ブース30の流出口30b及びワッシャー機26の流出口26bがそれぞれ接続されている。また、送出口23c,23d,23eには洗浄ブース30の流入口30a、ワッシャー機26の洗浄液ノズル32及び流入口26aがそれぞれ接続されている。
【0071】
給水タンク22は洗浄液濾過機23とワッシャー機26の水噴射ノズル31に水を供給するようになっている。また、バキューム機25はフェース2からごみを吸取るものである。発電機27は分電盤28を介して超音波洗浄機21、給水タンク22、洗浄液濾過機23、エアコンプレッサ24、バキューム機25に電気を供給するように構成されている。
【0072】
このようなサービスステーション31では次のようにしてフェース2の洗浄を行う。まず、バキューム機25にてフェース2に付着したごみを吸取り、続いて、洗浄ブース30にフェース2を収容して超音波発振機29を動作させ、フェース2を超音波洗浄する。次に、フェース2を洗浄ブース30から取出し、ワッシャー機26のネットにフェース2を立てかけ、洗浄液噴射ノズル32による洗浄、水噴射ノズル31によるすすぎ、ブロア33による乾燥を行う。最後にサービスステーション31から出荷スタイルでフェース2を搬出する。
【0073】
[作用効果]
以上の第3の実施の形態では、サービスステーション31内で分解部材(ここではフェース2)を洗浄するため、洗浄場所や保管場所をゆとりを持って確保することができ、洗浄ブース30の大形化も容易であるため、大量の分解部材を一括して迅速に洗浄することができる。特に、フェース2は直接人目に触れる部分なので高品位な洗浄が要求されるが、超音波洗浄機21により、この要求に応えることができる。しかも、フェース2の形状が複雑で洗浄し難い部分や、壊れ易い繊細な部分があっても、これを隅々まで洗浄することができる。
【0074】
また、洗浄廃液の回収や処理に関しても、洗浄ブース30やワッシャー機26の流出口30b,26bを洗浄液濾過機23の取入口23a,23bを接続することにより、廃液回収及び処理を確実に実施できる。したがって、PRTR法施行下での洗浄方法として有効であり、環境面に優れた洗浄方法として強くアピールすることができる。
【0075】
なお、上記の第3の実施の形態では、分解部材の洗浄場所であるサービスステーション31として、工場のような固定施設を想定しているが、規模はもっと小さくても良い。例えば、ワゴン車を改造したサービスカーを移動用サービスステーションとしても良い。近年のエアコンの小型化に応じて分解部材の小形化も進んでいるので、小形化した超音波洗浄機21やワッシャー機26でも対応可能であり、これらを積載したサービスカーをサービスステーションとし、ここで分解部材洗浄工程を行っても良い。このような実施の形態によれば、サービスステーション自体が移動するので、分解部材を運搬する時間を節約することができ、洗浄時間をいっそう短縮化することが可能となる。
【0076】
(4)他の実施の形態
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、第2の実施の形態にホッパー12を設置しても良い。また、各部材の構成などは適宜変更可能である。例えば、噴射ノズルとしては、フェース洗浄用としてフェース2表面の細かい凹凸の汚れを取るためのブラシが付いたものが有効である。また、ファン4などの入り組んだ形状を有する部材を洗浄する場合には、噴射流体の直進性が高い方が望ましい。具体的には、幅42mmの中に直径1mmの穴を千鳥状に16個並べた噴射ノズルなどが考えられる。
【0077】
また、洗浄廃液を吸取る吸引ノズルはドレンパン8に設置するだけではなく、アルミフィン6に付着した洗浄廃液を吸取るために設置したり、廃液受け皿14にたまった洗浄廃液を吸取るためにドレンパイプ18に接続しても良い。アルミフィン6用の吸引ノズルとしては、通称「はぼき」と呼ばれるノズルを利用すればアルミフィン6の変形を回避する上で好適である。このようなノズルはアルミフィン6の前清掃にも適している。さらに、もやを取るにせよ洗浄廃液を吸取るにせよ、吸引ノズルであれば、その動力源は共通で良く、単一の動力源に複数のノズルを取付けることにより構成の簡略化を図ることができる。これは、噴射ノズルを複数設けた場合でも、その動力源を共通化することができ、同じく構成を簡略化できる。
【0078】
エアコンに噴射する洗浄液の種類としては、高い洗浄能力を有する中性洗浄液や、アルカリ水に界面活性機能を持つヒドロキシルイオン水を混合したものなどがある。これらの洗浄液を用いた場合、洗浄廃液の処理が容易であり、洗浄コストの低減と環境調和性の向上に貢献することができ、PRTR法施行後の洗浄液として特に有効である。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ドレンパンをはじめとした部材の取外し作業を省力化して洗浄時間の短縮を図ると共に、洗浄液として蒸気及び沸騰水あるいはアルカリ水を用いて環境調和性を高め、経済性及び安全性に優れたエアコン洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るエアコン洗浄装置の構成及び作業状況の説明図。
【図2】第1の実施の形態におけるホッパーの平面図。
【図3】第1の実施の形態におけるホッパーの正面図。
【図4】第1の実施の形態におけるホッパーの廃液受け皿及び押さえ棒の平面図。
【図5】第1の実施の形態におけるホッパーの廃液受け皿及び押さえ棒の正面図。
【図6】第1の実施の形態におけるホッパーの防水シートの斜視図。
【図7】第1の実施の形態におけるホッパーの防水シートの斜視図(作業時)。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るサービスステーションの構成図。
【図9】一般的な天井カセット型エアコンの構成図。
【符号の説明】
1…エアコン本体
2…フェース
3…フィルタ
4…ファン
5…ファンモータ
6…アルミフィン
7…熱交換器
8…ドレンパン
9…スチームノズル
10…もや取りノズル
11…バキュームノズル
12,32…ホッパー
13a,13b,13c…ノズル接続部
14…廃液受け皿
15…押さえ棒
16…防水シート
17…吊下げ用鎖
18…ドレンパイプ
21…超音波洗浄機
23…洗浄液濾過機
25…バキューム機
26…ワッシャー機
29…超音波発振機
30…洗浄ブース
31…サービスステーション
Claims (6)
- 内部にフィンを有する熱交換器が設置されると共にフィルタ及びファンを含む分解部材が取外し可能に配置され、前記熱交換器の下部にはドレンパンが取付けられたエアコンを洗浄する方法において、
前記分解部材をエアコン本体から取外す分解部材取外し工程と、
前記分解部材を洗浄する分解部材洗浄工程と、
エアコン本体内部に前記ドレンパンを取付けたまま、前記フィンに蒸気及び沸騰水を吹付けてフィンを洗浄するフィン洗浄工程と、
前記フィン洗浄工程において前記フィンに蒸気及び沸騰水を吹付けた際に発生するもやを、前記フィンに近接して固定配置したもや取りノズルによって、前記フィン洗浄工程の実施と同時に吸取る、もや取り工程と、を含むことを特徴とするエアコン洗浄方法。 - 前記分解部材に蒸気及び沸騰水を吹付けて前記分解部材洗浄工程を屋内にて行うことを特徴とする請求項1記載のエアコン洗浄方法。
- 前記フィン及び前記ドレンパンに付着した洗浄廃液を強制的に吸取る廃液回収工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のエアコン洗浄方法。
- 洗浄液としてアルカリ水を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアコン洗浄方法。
- 前記分解部材洗浄工程は、取外した前記分解部材を専用洗浄施設に持ち運んで、ここで分解部材を洗浄する分解部材洗浄工程を行うものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアコン洗浄方法。
- 前記専用洗浄施設での分解部材洗浄工程にて前記分解部材を超音波洗浄することを特徴とする請求項5記載のエアコン洗浄方法。
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