JP4366942B2 - キャリアフィルム及びその製造方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明性、耐溶剤性及び離型性に優れたキャリアフィルムに関する。
【０００２】
【従来の技術】
キャリアフィルムは、溶液から流延フィルムを形成するために使用される支持フィルムであり、平滑な流延フィルムを得るために、キャリアフィルムには、表面平滑性、耐溶剤性、離型性（剥離性ともいう。）等の特性に優れることが要求される。
【０００３】
従来、キャリアフィルムとしては、離型フィルム用途に用いられるフッ素樹脂のフィルム（例えば、特許文献１を参照。）、シリコーン化合物の薄い表面層を有する２軸延伸ポリエチレンテレフタレートのフィルム（例えば、特許文献２を参照。）等が使用されている。
【０００４】
フッ素樹脂のフィルムは、耐溶剤性、離型性等の特性に優れるが、一般に高価である。フッ素樹脂のフィルムの厚さを薄くすると価格の低減をはかることができるが、フッ素樹脂の薄いフィルムにはしわが発生しやすく、取扱い性が低下する問題あった。また、シリコーン化合物の薄い表面層を有する２軸延伸ポリエチレンテレフタレートのフィルムでは、シリコーン化合物が流延フィルムの表面に転写する問題点があった。
【０００５】
流延フィルムには、膜厚ムラ、塵埃の混入等の欠陥がない高品質な流延フィルムが求められので、製造時にそのような欠陥箇所を光学的に検出するために、透明性に優れるキャリアフィルムが求められている。特許文献２には、接着剤を用いてフッ素樹脂のフィルムと２軸延伸ポリエチレンテレフタレートのフィルムとをドライラミネートして製造された、フッ素樹脂の表面層を有する延伸ＰＥＴフィルムからなるキャリアフィルムが開示されている。しかし、このキャリアフィルムは、透明性が充分でなかった。
【０００６】
【特許文献１】
特開平６−２２６８７３号公報
【特許文献２】
特開２００２−６７２４１号公報、［００１２］、［００１４］及び［００１８］
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題を解決し、透明性に優れ、かつ耐溶剤性及び離型性に優れるキャリアフィルムを提供することを目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリエステル樹脂の延伸フィルムの両面にテトラフルオロエチレン−エチレン系共重合体のフィルムが積層されてなる積層フィルムであって、ＪＩＳ Ｋ７１０５に準拠して測定される該積層フィルムのヘイズが５％以下であることを特徴とするキャリアフィルムを提供する。
【０００９】
また、本発明は、ポリエステル樹脂の延伸フィルムの両面にテトラフルオロエチレン−エチレン系共重合体を押出ラミネートにより積層することを特徴とする前記キャリアフィルムの製造方法を提供する。
【００１０】
【発明の実施の形態】
本発明におけるテトラフルオロエチレン−エチレン系共重合体（以下、ＥＴＦＥという。）としては、テトラフルオロエチレン（以下、ＴＦＥという。）、エチレン（以下、Ｅという。）及び式ＣＨ _２ ＝ＣＨ−Ｃ _ｎ Ｆ _２ｎ＋１ （ただし、ｎは２〜１０の整数。）で表される含フッ素ビニルモノマーの共重合体であって、ＴＦＥに基づく重合単位／Ｅに基づく重合単位のモル比が５０〜６０／５０〜４０であり、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位の含有量が全重合単位に対して２〜７モル％である。この範囲にあると、キャリアフィルムが透明性、耐溶剤性及び離型性に優れる。
【００１１】
ＴＦＥに基づく重合単位／Ｅに基づく重合単位のモル比は５３〜６０／４７〜４０がより好ましい。含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位の含有量は全重合単位に対して２〜５モル％がより好ましい。
【００１２】
前記含フッ素ビニルモノマーは、ＣＨ_２＝ＣＨ−Ｃ_ｎＦ_２ｎ＋１（ただし、ｎは２〜１０の整数。）で表される（ペルフルオロアルキル）エチレンである。含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位を含有すると、キャリアフィルムが透明性、耐溶剤性及び離型性に優れる。ｎとしては２〜６がより好ましい。その具体例としては、ＣＨ_２＝ＣＨ−Ｃ_２Ｆ_５、ＣＨ_２＝ＣＨ−Ｃ_３Ｆ_７、ＣＨ_２＝ＣＨ−Ｃ_４Ｆ_９、ＣＨ_２＝ＣＨ−Ｃ_５Ｆ_１１、ＣＨ_２＝ＣＨ−Ｃ_６Ｆ_１３等が挙げられる。より好ましくはＣＨ_２＝ＣＨ−Ｃ_４Ｆ_９である。
【００１３】
本発明におけるポリエステル樹脂の延伸フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート（以下、ＰＥＴという。）、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂を延伸したフィルムが挙げられる。なかでも、ＰＥＴの延伸フィルム（以下、延伸ＰＥＴフィルムともいう。）は、厚さ精度、熱的特性、機械的特性等に優れうえ、安価であるので好ましい。
【００１４】
本発明におけるポリエステル樹脂の延伸フィルム（以下、延伸ポリエステル樹脂フィルムともいう。）の厚さは、１０〜１００μｍが好ましく、２５〜５０μｍがより好ましい。延伸ポリエステル樹脂フィルムの厚さが薄すぎると、取扱い性が低下し、厚すぎるとキャリアフィルムの厚さ精度が低下する。この範囲にあるとキャリアフィルムが取扱い性及び厚さ精度に優れる。ポリエステル樹脂のフィルムの延伸方法としては、１軸又は２軸延伸が挙げられ、２軸延伸がより好ましい。２軸延伸されたポリエステル樹脂のフィルムは引張破断強度、透明性等に優れるので好ましい。
【００１５】
本発明のキャリアフィルムは、延伸ポリエステル樹脂フィルムの両面にＥＴＦＥを押出ラミネートにより積層することにより製造されることが好ましい。押出ラミネートとは、押出し機を用いてＥＴＦＥのフィルムを押出成形し、成形直後のＥＴＦＥのフィルムを延伸ポリエステル樹脂フィルムと重ね、ロールの間に挿入してラミネートすることをいう。
【００１６】
押出ラミネートでは、延伸ポリエステル樹脂フィルムとＥＴＦＥフィルムとを接着するために接着剤を使用することが好ましい。接着剤を用いるとＥＴＦＥフィルムと延伸ポリエステル樹脂のフィルムとの層間接着力が高いキャリアフィルムが得られるので好ましい。接着剤としては、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。その中で特にポリエステル系接着剤が好ましい。ポリエステル接着剤の具体例としては、旭硝子社製ＡＧ−９０１４Ａ、東亞合成社製ＰＥＳ１１１ＳＫ−２０、ＰＥＳ１４０、ＰＥＳ１２０等が挙げられる。
【００１７】
製造工程としては、次のような具体例が挙げられる。２軸延伸ＰＥＴフィルムにグラビアロールでポリエステル系接着剤を塗工・乾燥し、片面に接着剤層を有する２軸延伸ＰＥＴフィルム（以下、片面接着性ＰＥＴフィルムという。）を作成し、ロール状に巻き取る。該ロールを巻出機にセットする。押出機を用いて押出成形されたＥＴＦＥのフィルムを、成形直後に巻出機から繰り出した該片面接着性ＰＥＴフィルムと、片面接着性ＰＥＴフィルムの接着剤塗工面で重ね、加熱した金属ロールと水冷したシリコーンゴム製バックロールの間に挿入してラミネートし、得られた２層積層フィルムをロール状に巻き取る。ついで、２軸延伸ＰＥＴフィルムのもう一方の面に同様の操作を実施して、本発明のキャリアフィルムに一例であるＥＴＦＥフィルム／延伸ポリエステル樹脂フィルム／ＥＴＦＥフィルムの３層積層フィルムが製造される。
【００１８】
ここで、接着剤層の厚さは０.１〜５μｍが好ましく、０.３〜２μｍがより好ましい。金属ロールの加熱温度は、１００〜１７０℃が好ましく、１２０〜１５０℃がより好ましい。積層フィルムの巻取速度は５〜３０ｍ／分が好ましく、１５〜２０ｍ／分がより好ましい。
【００１９】
本発明のキャリアフィルムにおけるＥＴＦＥのフィルムの厚さは１〜１０μｍが好ましい。より好ましくは１〜７μｍ、最も好ましくは１〜５μｍである。この範囲にあると、キャリアフィルムが耐擦傷性に優れ、押出ラミネート時にピンホールの発生がなく、ＥＴＦＥの離型性、非粘着性等の良好な特性が維持される。
【００２０】
本発明のキャリアフィルムの厚さは１０〜２００μｍが好ましい。より好ましくは１２〜１５０μｍであり、最も好ましくは１５〜１００μｍである。この範囲にあると取扱い性に優れる。
【００２１】
本発明のキャリアフィルムは、ＪＩＳ Ｋ７１０５に準拠して測定されるヘイズが５％以下である。好ましくは４％以下であり、より好ましくは３％以下である。この範囲にあると透明性に優れ、流延フィルムの欠陥を光学検査する場合に光学検査機のＳ／Ｎ比が向上する傾向となる。
【００２２】
本発明のキャリアフィルムにおいて、ポリエステル樹脂のフィルムとＥＴＦＥのフィルムの層間接着力は、３〜８０ｇ／ｃｍが好ましく、６〜６０g／ｃｍがより好ましく、１０〜４０ｇ／ｃｍが最も好ましい。この範囲にあると使用時に層間が剥離しにくく、使用耐久性に優れる。
【００２３】
本発明のキャリアフィルムの用途としては、耐溶剤性離型フィルム、易剥離性フィルム、耐熱性離型フィルム、耐酸性離型フィルム、耐アルカリ性離型フィルム等が挙げられる。特に、無機粒子とバインダーを含有する組成物溶液からキャスト成膜されたフィルムを容易に剥離できる易剥離性キャリアフィルム、溶液から高分子フィルムをキャスト製膜する時に用いる耐溶剤性キャリアフィルム等が好ましい。
【００２４】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、キャリアフィルムの、離型性、ヘイズ、破断強度、伸びの測定は下記の方法を用いた。
【００２５】
［離型性］付加反応タイプの硬化型液状シリコーンゴム（信越化学工業社製ＫＥ１９８８（Ａ／Ｂ））をメチルエチルケトン／メチルイソブチルケトン／トルエン（質量比２５／２５／５０）の混合溶媒に溶解させ、固形分濃度５質量％の溶液を得た。積層フィルムに該溶液を塗工し、１５０℃で１分乾燥したシリコーンを硬化させた。ついで、手で積層フィルムから該シリコーンを剥離し、積層フィルムの離型性を評価した。容易に剥離できる場合を○、剥離しにくい場合を×と表した。
【００２６】
［ヘイズ（％）］スガ試験機社製ＳＭカラーコンピューターＳＭ−５を用い、ＪＩＳ Ｋ７１０５に準拠して、積層フィルムのヘイズを測定した。
【００２７】
［破断強度及び伸び］ＡＳＴＭ Ｄ−６３８に準拠し、キャリアフィルムの破断強度及び伸びを測定した。ＭＤは、フィルムの押出方向を、ＴＤはフィルムの幅方向を示す。
【００２８】
［実施例１］
厚さ３８μｍ、幅１２００ｍｍの２軸延伸ＰＥＴフィルム（帝人社製、ＧＥＣ３８）の片面に、ポリエステル系接着剤（旭硝子社製、ＡＧ−９０１４Ａ）を乾燥塗膜の厚さが０．４μｍとなるように塗工した。得られた接着剤塗工ＰＥＴフィルムを押出ラミネート装置に設置した。
【００２９】
ポリマー組成がＴＦＥに基づく重合単位／Ｅに基づく重合単位／（ペルフルオロブチル）エチレン（以下、ＰＦＢＥという。）に基づく重合単位＝５６．３／４０．７／３．０（モル比）であるＥＴＦＥを３２０℃で溶融押出し、押出されたＥＴＦＥフィルムの膜厚を４μｍになるようにリップを調整した。押出されたＥＴＦＥフィルムを１３０℃でバックロールを用いてＰＥＴフィルムの接着剤塗工面にラミネートした。
【００３０】
２軸延伸ＰＥＴの反対側の片面にも同様の操作を実施し、ＥＴＦＥフィルム／２軸延伸ＰＥＴフィルム／ＥＴＦＥフィルムの３層積層フィルムからなるキャリアフィルムを製造した。ＥＴＦＥ層の厚さは４μｍ、２軸延伸ＰＥＴ層の厚さは３８μｍであり、キャリアフィルムの厚さは４６．８μｍであった。厚さ差及び離型性を測定した結果を表１に示す。離型試験後のキャリアフィルムの表面にはしわや膨れ等が観察されず、耐溶剤性に優れることがわかった。得られたシリコーンゴムの流延フィルムは、しわ、フレアー（大きくな波打ち）等の欠陥のない平滑な表面を有した。
【００３１】
［比較例１］
組成がＴＦＥに基づく重合単位／Ｅに基づく重合単位／ＰＦＢＥに基づく重合単位＝５２．３／４６．４／１．３（モル比）あるＥＴＦＥを用いる以外は、実施例１と同様にして、２軸延伸ＰＥＴフィルムの両面にＥＴＦＥのフィルムが積層されてなる積層フィルムを得た。厚さ差及び離型性を測定した結果を表１に示す。
【００３２】
【表１】

【００３３】
【発明の効果】
本発明のキャリアフィルムは、透明性に優れ、耐溶剤性及び離型性に優れる。製造時に流延フィルムの欠陥の光学的検出が容易である。

Claims (4)

1. ポリエステル樹脂の延伸フィルムの両面に下記テトラフルオロエチレン−エチレン系共重合体のフィルムが積層されてなる積層フィルムであって、ＪＩＳ Ｋ７１０５に準拠して測定される該積層フィルムのヘイズが５％以下であることを特徴とするキャリアフィルム。
   テトラフルオロエチレン−エチレン系共重合体：テトラフルオロエチレン、エチレン及び式ＣＨ _２ ＝ＣＨ−Ｃ _ｎ Ｆ _２ｎ＋１ （ただし、ｎは２〜１０の整数。）で表される含フッ素ビニルモノマーの共重合体であって、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位／エチレンに基づく重合単位の含有モル比が５０〜６０／５０〜４０であって、含フッ素ビニルモノマーに基づく重合単位の含有量が全重合単位に対して２〜７モル％である。
2. テトラフルオロエチレン−エチレン系共重合体のフィルムの厚さが１〜１０μｍであることを特徴とする請求項１記載のキャリアフィルム。
3. ポリエステル樹脂の延伸フィルムとテトラフルオロエチレン−エチレン系共重合体のフィルムとの間に、接着剤からなる接着剤層を有することを特徴とする請求項１又は２に記載のキャリアフィルム。
4. ポリエステル樹脂の延伸フィルムの両面にテトラフルオロエチレン−エチレン系共重合体を押出ラミネートにより積層することを特徴とする請求項１、２又は３に記載のキャリアフィルムの製造方法。