JP4366811B2 - 転写媒体およびこれを使用した磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気情報を有する磁気記録カードを構成するための転写媒体(転写箔)に関し、更に詳しくは塩化ビニルシート上に磁気テープを配し、更にこれを隠蔽し、印刷層、保護層或いは印刷層、保護層及びホログラム箔を有するオーバープリントカードを構成するための転写媒体(転写箔)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁気記録媒体であるクレジットカードやキャッシュカードが広く利用されている。これらは、白色の塩化ビニル樹脂をコア材として用い、この両面に、所定の磁気テープをを所定位置に貼付した塩化ビニル樹脂シートを重ねて加熱加圧プレスしたものを基材として用いたものである。
【0003】
欧州や米国では白色のコア材に印刷を施し、後に透明シートをプレスする構成をとっている。しかし日本国内では、これら諸外国と同様の構成のカードの他に、透明シートをプレス接着した後に、表面にデザイン等の絵柄印刷を施す構成のカードも使用されている。
【0004】
これは、日本国内のみで通用するJIS規格の磁気テープがカード表面に付与されているためである。すなわち、諸外国ではカード表面に磁気テープがないため、印刷はシートの内側でかまわないが、日本ではカード表面にJIS規格磁気テープを使用し、磁気情報の記録消去を行う必要があるため、この磁気テープが基材の最表層付近になければならず、結果として透明シートの外側に磁気テープを設けることになる。したがって、デザイン上でこの磁気テープを隠蔽するための印刷を透明シートの外側に施すことになるのである。
【0005】
この透明シートの外側に印刷を施すカードをオーバープリントカード(以下、OPカード)と呼ぶことにする。
【0006】
OPカードの作成手順は次の通りである。白色塩化ビニルコアの両面に、あらかじめ所定位置に磁気テープを貼付した透明塩化ビニルシートを重ね、加熱加圧プレスしてカード基材を得る。その後、磁気テープを隠すための隠蔽層、デザインのための印刷層、印刷面を保護するための保護層が設けられ、表面を平らにするためのプレスを再度行ってカード形状に打ち抜き、最後にホログラムの箔転写及びエンボス工程を経て、OPカードとなる。
【0007】
以上のことからわかるとおり、印刷層が透明シートの内側にあって十分に保護されている諸外国のカードとは異なり、日本のOPカードの耐性は非常に薄い保護層のみによって保たれているので、保護層の役割は非常に重要である。また、要求される磁気特性を得るため、隠蔽層、印刷層、保護層の厚みは必要以上に厚くすることができず、さらに耐久性を増すことは困難になっている。
【0008】
この保護層を設ける方法としてはいくつか考えられ、グラビア塗工系の方式とスクリーン印刷系の方式、さらにオフセット印刷系の方式がある。しかし、このうちスクリーン印刷系は膜厚制御が困難であるので、磁気出力変動率が大きくなるおそれがある。また、オフセット印刷系の方式では、主に紫外線硬化型のオフセットインキを使用するが、これは様々なものとの密着性が悪い。さらに、耐擦過性を向上させるために滑材成分を添加すると、ほとんどのものが密着不可能である。したがって、後工程となるホログラム箔の転写が非常に困難となってしまう。以上のことから、保護層を設ける方法としてグラビア塗工系の方式が用いられてきている。
【0009】
しかしながら、上述のグラビア塗工系の方式によって保護層を設ける方法にも様々な問題がある。
まず、基材が溶剤に対して弱い材料である塩化ビニルであるにも関わらず、強い溶媒を多量に含む保護層の塗液を直接的に上から塗工するため、溶剤の浸透によって基材や印刷の歪みが生じやすい状況となる。
【0010】
また、溶剤が多量に含まれる塗液を塗工するので、塗工後には十分な乾燥が必要であるが、基材の塩化ビニルは耐熱性が低いため、高温かつ長時間の乾燥は無理であり、結果として溶剤が残留し、密着性低下や樹脂の可塑化等の悪影響を及ぼす。さらには、磁気出力の変動率を安定させるためには塗膜の膜厚を安定させる必要があるが、枚葉のシートへの塗工では膜厚安定性にも限界があり、安定した塗膜は得られにくい上、膜厚の管理も容易でないという問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題、すなわち、溶剤の残留がなく耐摩耗性に優れ、且つ膜厚安定性が優れ均一な厚みの保護層を設けることができる転写媒体と、該転写媒体(転写箔)を使用することで磁気出力の変動率が少ない磁気記録媒体を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、本発明は保護層を直接グラビア法によって塗工するのではなく、別の支持体上に塗工した保護層を有する転写媒体(転写箔)を作製し、この転写媒体(転写箔)を用いて磁気記録媒体の基材上に転写する方法をとるものである。
【0013】
すなわち、請求項1記載の発明は、支持体上に、剥離保護層、接着層を順次設けてなる転写媒体において、該剥離保護層が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を30重量%以上含有する組成で形成され、接着層は平均分子量5万以下のアクリル系樹脂を50重量%以上含有する組成で形成されてなり、かつ両層を形成する樹脂のガラス転移温度が被転写基材のガラス転移温度より高い転写媒体である。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の転写媒体であって、前記剥離保護層中に、ステアリン酸、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、テフロンワックス、シリコンワックス、カルナバワックスから選択される滑材成分を0.1〜20重量%含有することを特徴とする転写媒体である。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記接着層の厚みは乾燥厚みにて0.1μm以上、前記剥離保護層の厚みは乾燥厚みにて0.5μm以上であり、かつ両層の合計厚みは乾燥厚みにて1μm以上9μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の転写媒体である。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1、2および3のいずれか一項に記載の転写媒体を、磁気記録層を含む基材に転写せしめてなる磁気記録媒体であって、磁気記録層上の非磁性層厚みが1μm以上9μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の磁気記録媒体であって、前記基材の磁気記録層は目視不可能な状態で隠蔽されてなることを特徴とする磁気記録媒体である。
【0018】
【作用】
本発明によってなる転写媒体(転写箔)を用いることにより、塩化ビニル樹脂基材上に直接溶剤を多量に含む塗液を塗工する必要がなくなるので、基材や印刷の歪みを防止することができる。また、塗工後の乾燥工程が不要となり、残留溶剤による密着性低下や樹脂の可塑化等の悪影響を防ぐことができる。
【0019】
さらに、保護層の塗工がロールの状態で加工可能になるため、膜厚管理が容易で高いレベルでの管理が可能となるので、磁気特性の変動を抑制することができる上、塗工材料のガラス転移点が被転写材のガラス転移点より高いので、被転写材表面の凹凸を被転写材中に埋め込むことができ、転写後においても保護層膜厚が一定となり、安定したヘッドパス耐性を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の転写媒体(1)の構成を示す断面図である。転写媒体(1)は、支持体(2)上に剥離保護層(3)、接着層(4)の順に各層が形成されている。
図2は本発明の転写媒体(1)を被転写基材(21)上に転写し、磁気記録媒体(11)としてカード化した場合の一実施例を示すもので、図2(a)は被転写基材(21)の構成断面図、図2(b)は図1の転写媒体を用いて、被転写基材(21)に転写後のカードの構成断面図を示す。
【0021】
磁気記録媒体(11)は、カード基材(12)として塩化ビニルコア材(13)の両面に塩化ビニルシート材(14)が積層されている。この塩化ビニルシート材(14)の表面(図の上側)にJIS磁気テープ(15)が埋め込まれ、裏面(図の下側)にISO磁気テープ(20)が埋め込まれている。
このJIS磁気テープ(15)が埋め込まれた片側に、隠蔽層(16)、印刷層(17)が設けられ、被転写基材(21)が形成されている。この被転写基材(21)上に、転写媒体(1)上の剥離保護層(3)および接着層(4)が転写されて構成されたのが磁気記録媒体(11)である。
【0022】
転写媒体(転写箔)の支持体(2)としては厚みが安定しており、かつ耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いるのが一般的であるが、これに限るものではない。その他の材料としては、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が耐熱性が高いフィルムとして知られており、同様の目的で使用することが可能である。また、他のフィルム、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、耐熱塩化ビニル等の材料でも、塗液の塗工条件、さらに言えば乾燥条件が許せば使用可能である。
【0023】
次に、剥離保護層(3)および接着層(4)の組成について説明する。
剥離保護層(3)は、支持体(2)との密着性が軽度のものであって、転写媒体(1)の加熱プレス転写後には容易に剥離する材料でなければならない。さらに、転写後は保護層としての役割も果たさなければならない。さらには、保護層上へのホログラムの転写および転写後の密着性、あるいはエンボス加工時の適性も考慮される必要がある。
【0024】
以上のことを全て満たす組成として、発明者らが検討を重ねた結果、剥離保護層(3)の組成としては、
1)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を50重量%以上含有する組成であること。
2)ステアリン酸、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、テフロンワックス、シリコンワックス、カルナバワックスから選択される滑材成分を0.1〜20重量%含有する組成が好ましいこと。
3)剥離保護層3および接着層4を構成する樹脂のガラス転移温度が被転写基材21のガラス転移温度より高いことが好ましいこと。
が判った。
【0025】
1)は、後工程で転写されるホログラムの接着剤が塩化ビニル系の材料であるためである。なぜなら、諸外国で使用される場合は、ホログラムは透明塩化ビニルシート上に転写されるので、これと相性がよい材料が選択されているからである。したがって、保護層の樹脂系としては、塩化ビニル系の材料が主であることが好ましい。
【0026】
2)は、カードとして使用される場合、磁気ヘッドとの擦れが問題になる。一般的に、週に3回の割合で買い物をしてクレジットカードを使用することを考えると、一年当たりで150回、有効期限の5年間では750回、磁気ヘッドと擦れることになる。しかし、クレジットカードの利用時に通す、いわゆるCAT端末は、通常人間の手で通すので、カードと磁気ヘッドの当たり具合が均一でないため、さらにマージンを5倍程度見込むと、約4000回程度のヘッドパス耐性が必要と考えられる。
この耐性を満たすため、ステアリン酸、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、テフロンワックス、カルナバワックスから選択される滑材成分を0.1〜20重量%含有する組成が好ましいことがわかった。滑材添加量が0.1重量%未満では、ヘッド擦れの耐性が低すぎ、20重量%を超えて添加すると、滑材成分が表面へブリードしてくるため、カード表面が不均一にマット化されて曇ったた状態になり、見た目の印象が悪くなってしまう。
【0027】
3)は、加熱加圧による転写媒体の厚みムラを防ぐことが目的である。剥離保護層(3)および接着層(4)のガラス転移温度が被転写基材(21)のガラス転移温度より高いということは、加熱加圧プレス時に、先に被転写基材(21)の方が柔らかくなる。したがって、印刷層(17)は被転写基材(21)側に埋め込まれることとなり、剥離保護層(3)および接着層(4)の厚みは、設定通り保たれ、均一な膜厚が保持されるので、ヘッドパス耐性が安定して得られるという利点がある。
【0028】
接着層(4)の組成としては、重量平均分子量5万以下のアクリル系樹脂を50重量%以上含む組成として用いる。アクリル系樹脂としては、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート等のアクリル酸及びそのエステル系樹脂、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート等のメタクリル酸及びそのエステル系樹脂、あるいはこれらにエチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン等を共重合した樹脂等が挙げられる。
アクリル系樹脂が好ましい理由は、その下層として設けられる印刷層(17)が主に紫外線硬化型オフセットインキから構成されているためである。紫外線硬化型オフセットインキは、一般にアクリル酸系樹脂のモノマーやプレポリマーと紫外線照射によってラジカルを発生する光開始剤、および色材から構成される。したがって、樹脂の重合過程が樹脂製造時と塗工乾燥時に行われるという差はあるが、その成分は比較的似通ったものであり、密着性は比較的良好であるからである。しかし、単にアクリル系樹脂であれば密着するわけではない。
【0029】
一般的に、紫外線硬化型樹脂の硬化過程においては、雰囲気中の酸素が重合反応を阻害して、表面のごく近傍1〜10nm程度の深さまでは硬化反応が完全には進行しないといわれている。この酸素阻害を防止するために、紫外線ランプ付近に窒素ガスを充填する方法も実際に採られているが、一般の印刷機ではそのような機能は付いていないことが多い。したがって、ほとんどの紫外線硬化型オフセットインキを使用した印刷物の表面は未反応の層が存在している。
したがって、この未反応層の上に転写箔側の接着層(4)を熱で密着させようとしても、見かけ上は密着したように見えても、未反応層の強度が弱いため、強い力をかけると未反応層が破壊されて剥がれてしまう。そのため、熱で密着させる際には、この未反応層を超えて、下層の硬化層まで接着剤が浸透し、十分な密着をとることが必要である。
【0030】
そこで、本発明においては、アクリル系樹脂のうち、重量平均分子量が5万以下の樹脂を使用することにより、加熱時の粘度ができるだけ低い状態で樹脂を浸透させることが可能である。したがって、接着層(4)と印刷層(17)の密着強度が十分な磁気記録媒体(11)を得ることが可能となる。
【0031】
続いて、剥離保護層(3)と接着層(4)の厚みについて説明する。
JIS磁気テープ(15)上の厚みを制限する要因は、主にヘッドパス耐性と磁気出力である。発明者らの実験によれば、ヘッドパス耐性は、剥離保護層(19)の組成が同じ場合には、厚いほど向上する。逆に、磁気出力はJIS磁気テープ15上の非磁性層の厚みが厚いほど低下する。
【0032】
そこで、市販されている磁気テープのうち高出力のテープを使用して、非磁性層の厚み、すなわち、隠蔽層(16)、印刷層(17)、接着層(18)、剥離保護層(19)の合計厚みを変化させて実験を行ったところ、非磁性層の合計厚みが9μm以下で磁気情報の読み取りテストが合格となった。
【0033】
一方、一般的に、隠蔽層(16)の厚みは2〜3μm、印刷層(17)の厚みは2〜3μmであるから、各平均値は2.5μm、合計で5μmと見積もることができる。したがって、接着層(18)と剥離保護層(19)の合計厚みの上限は4μm以下が適当であるという結果が得られた。しかし、JIS磁気テープ(15)を隠蔽する方法としては、通常の銀ペーストを印刷する方法以外に、AlやSn等の金属を蒸着する方法もある。その場合には、実質的に隠蔽層(16)の厚みはほとんど0であるので、この場合は接着層(18)および剥離保護層(19)の合計厚みを9μm以下に設定すればよい。
【0034】
また、同時に行った実験で、接着層(18)の厚みを変化させると、0.1μm以上の厚みがあれば十分な密着性が得られることがわかった。さらに、0.1μmの接着層(18)を用いて剥離保護層(19)の厚みを変化させたところ、合計1μmをきったところでヘッドパス耐性が5000回もたず、不合格という結果が得られた。次に、接着層(18)と剥離保護層(19)の合計厚みを1μmとして、それぞれの層厚を変化させたところ、剥離保護層(19)の厚みが0.5μm以下ではヘッドパス耐性が不合格となり、剥離保護層(19)の厚みが0.5μm以上必要であることが示された。しかし、それぞれ必要な最低厚み、すなわち接着層(18)が0.1μm、剥離保護層(19)が0.5μmの組み合わせではヘッドパス耐性が不合格であり、さらに実験を重ねた結果、両層の合計厚みは少なくとも1μmが必要であることが示された。
【0035】
【実施例】
以下に、実施例を示す。
[表1]に剥離保護層(3)(後述の比較例2の場合は剥離保護層(19))の組成、[表2]に接着層(4)(同接着層(18))の組成一覧を示した。なお、[表1]、[表2]とも溶剤に関しては記述していないが、いずれの組成もグラビア系溶剤として、メチルエチルケトン/トルエンが溶媒として使用されており、固形分は10〜20%に調製されている。
【0036】
【表1】
Figure 0004366811
【0037】
【表2】
Figure 0004366811
【0038】
<実施例1>
・被転写基材の作成
0.56mm厚の白色塩化ビニルコア材(13)の両面に0.1mm厚の透明塩化ビニルシート材(14)を重ねて、カード裏面となる側に保磁力23.7kA/mのISO磁気テープ(20)を仮止めし、カード表面となる側に保磁力51.4kA/m、残留磁束17nWb/cmのJIS磁気テープ(15)を仮止めし、全体を温度150℃、圧力0.1Pa、時間30分の条件にて加熱加圧プレスを行い、カード基材(12)を得た。
続いて、隠蔽層(16)として、市販のアルミペーストスクリーンインキをスクリーン印刷法にて、3μm厚で全面に設けた。続いて、印刷層(17)として、市販の紫外線硬化型オフセットインキのプロセス4色である黄、紅、藍、墨にて絵柄を印刷し、紫外線ランプを照射してオフセットインキを硬化させ、被転写基材(21)を得た。
この状態で、JIS磁気テープ15上の非磁性層の厚みは約5μmであった。
【0039】
・転写媒体(転写箔)の作成
支持体(2)として表面未処理の25μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この上に、[表1]中の組成(1)にて厚み2μmで剥離保護層(3)をグラビア法にて設けて乾燥させ、[表2]の組成(A)〜(J)の接着層4を厚み0.1、1、2μmでグラビア法にて重ねて設けて乾燥させて、転写媒体(転写箔)(1)を得た。
【0040】
・カード化
以上のようにして得た転写媒体(1)の接着剤面を被転写材(21)と重ね合わせ、温度100℃、圧力0.1Pa、時間15分の条件にて加熱加圧プレスを行い、磁気記録媒体(11)を得た。
【0041】
<実施例2>
・被転写基材の作成
実施例1と同様に作成した。
・転写媒体(転写箔)の作成
実施例1と同様に、支持体(2)として表面未処理の25μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この上に、[表1]中の組成(1)〜(8)にて厚み0.5、1、2μmで剥離保護層(3)をグラビア法にて設けて乾燥させ、[表2]の組成(A)の接着層(4)を厚み1μmでグラビア法にて重ねて設けて乾燥させて、転写媒体(転写箔)(1)を得た。
・カード化
実施例1と同様にカード化した。
【0042】
<比較例1>
・被転写基材の作成
実施例1と同様に作成した。
・転写媒体(転写箔)の作成
実施例1と同様に、支持体(2)として表面未処理の25μm厚ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この上に、[表1]中の組成(1)にて厚み0.1、0.3、4μmで剥離保護層(3)をグラビア法にて設けて乾燥させ、[表2]の組成(A)の接着層(4)を厚み0、2μmでグラビア法にて重ねて設けて乾燥させて、転写媒体(転写箔)(1)を得た。
・カード化
実施例1と同様にカード化した。
【0043】
<比較例2>
・被転写媒体の作成
実施例1と同様に作成した。
・カード化
比較例2では、剥離保護層(19)および接着層(18)を転写媒体とせず、被転写基材21に直接ロールコータにて塗工した。まず、被転写基材(21)上に[表2]組成(A)のインキを約2μm厚設定で設け、40℃、30分間乾燥させ、続いて[表1]組成(1)のインキを同じく約2μm厚設定で設け、同様に乾燥させた。
膜厚を測定してみると、最も薄い部分で両層の合計が2μm、最も厚い部分で5μmであり、膜厚安定性が低かった。
【0044】
<評価方法>
それぞれ作成した転写媒体を、次のように評価した。
ヘッドパス耐性は、LTS105ヘッドパス評価機(フォルマントエンジニアリング社製)を使用し、5000回の往復試験を行い、表面を目視観察した。この際、JIS磁気テープ15が露出しているものを不合格とした。
転写箔密着性は、密着させたセロハンテープを90度方向に一気に剥離し、剥離が見られたものを不合格とした。
ホログラム密着性は、150℃、300mPaにて転写したホログラム転写箔上にセロハンテープを密着させ、90度方向に一気に剥離し、剥離が見られたものを不合格とした。
磁気読み取りは、JSC112ジッタ出力分析装置(フォルマントエンジニアリング社製)を用いて、210BPI、60mAの書き込み電流で磁気データを書き込み、これをアンプゲイン100倍にて読みとった際に、平均出力が6V未満であったものを不合格とした。
【0045】
<評価結果>
評価結果を[表3]、[表4],[表5]に示す。
【0046】
実施例1に関しては、接着層(18)の組成が、アクリル樹脂の重量平均分子量が5万を超えた場合とアクリル樹脂比が30%未満である際に転写箔密着性が明らかに低下しているという結果が得られた。また、この際は転写箔自体の密着性が悪いため、ホログラムの密着性評価は不能であった。
【0047】
【表3】
Figure 0004366811
【0048】
実施例2に関しては、剥離保護層(19)の組成が塩酢ビ樹脂の比率が30%を下回った組成にてホログラム密着性が低下するという結果が得られた。
【0049】
【表4】
Figure 0004366811
【0050】
比較例1では、剥離保護層(19)の厚みが0.5μm未満であるとヘッドパス耐性が低下すること、および剥離保護層(19)と接着層(18)の合計厚みが4μmを超えると磁気読み取りが不良となること、さらに接着層(18)を設けないと転写媒体の転写ができないが、接着層(18)が0.1μmあれば有効に機能していることが示された。
比較例2では、転写媒体1を用いず、従来通りの塗工方式により磁気記録媒体(11)を作成したが、大量の溶剤を含む塗液を二度塗工かつ乾燥させることや膜厚管理が困難なことから、ヘッドパス耐性はよかったものの、転写箔密着性、ホログラム密着性および磁気読み取りに関してはバラツキが大きく、安定しなかった。
【0051】
【表5】
Figure 0004366811
【0052】
上に述べた不良部分以外の組み合わせでは、いずれも評価結果は合格で、目標とする転写媒体(1)および磁気記録媒体(11)が得られた。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によってなる転写媒体(転写箔)を用いることにより、塩化ビニル樹脂基材上に直接溶剤を多量に含む塗液を塗工する必要がなくなるので、基材や印刷の歪みを防止することができる。また、塗工後の乾燥工程が不要となり、残留溶剤による密着性低下や樹脂の可塑化等の悪影響を防ぐことができる。
【0054】
さらには、膜厚管理が容易で高いレベルでの管理が可能となるので、磁気特性の変動を抑制することができる上、塗工材料のガラス転移点が被転写材のガラス転移点より高いので、被転写材表面の凹凸を被転写材中に埋め込むことができ、転写後においても保護層膜厚が一定となり、安定したヘッドパス耐性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転写媒体の一実施例の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の転写媒体を用い、これを転写して得られる磁気記録媒体の一実施例を示すもので(a)は被転写基材の構成断面図、(b)は図1の転写媒体を用いて、被転写基材に転写後のカードの構成断面図を示す。
【図3】ホログラムを設けた場合のカードの構成断面図であり、(a)は保護層の上にホログラムを設けた断面図であり、(b)は保護層の上にホログラムを設けた断面図である。
【符号の説明】
1 転写媒体
2 支持体
3 剥離保護層
4 接着層
11 磁気記録媒体
12 カード基材
13 塩化ビニルコア材
14 塩化ビニルシート材
15 JIS磁気テープ
16 隠蔽層
17 印刷層
18 接着層
19 剥離保護層
20 ISO磁気テープ
21 被転写基材
30 ホログラム

Claims (5)

  1. 支持体上に、剥離保護層、接着層を順次設けてなる転写媒体において、該剥離保護層が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を30重量%以上含有する組成で形成され、接着層は重量平均分子量5万以下のアクリル系樹脂を50重量%以上含有する組成で形成されてなり、かつ両層を形成する樹脂のガラス転移温度が被転写基材のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする転写媒体。
  2. 前記剥離保護層中に、ステアリン酸、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、テフロンワックス、シリコンワックス、カルナバワックスから選択される滑材成分を0.1〜20重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の転写媒体。
  3. 前記接着層の厚みは乾燥厚みにて0.1μm以上、前記剥離保護層の厚みは乾燥厚みにて0.5μm以上であり、かつ両層の合計厚みは乾燥厚みにて1μm以上9μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の転写媒体。
  4. 請求項1、2および3のいずれか一項に記載の転写媒体を、磁気記録層を含む基材に転写せしめてなる磁気記録媒体であって、磁気記録層上の非磁性層厚みが1μm以上9μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体。
  5. 前記基材の磁気記録層は目視不可能な状態で隠蔽されてなることを特徴とする請求項4記載の磁気記録媒体。
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