JP4364095B2 - 微小凸部の作製方法 - Google Patents
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Description
本発明の微小凸部の作製方法は、ガラス基材に圧力を局所的に印加すること、または圧力と熱とを局所的に印加した後冷却することにより、前記ガラス基材の表面及びその近傍に、使用するエッチング液に対するエッチングレートが他の部分と異なる圧縮応力部を形成し、該圧縮応力部を形成したガラス基材に対し、非圧縮応力部のエッチング量に対する前記圧縮応力部の残存量の割合であるエッチング選択比が第1の所定範囲にあるエッチング液による化学的エッチング処理を行う第1のエッチング工程と、前記エッチング選択比が前記第1の所定範囲とは異なる第2の所定範囲にあるエッチング液による化学的エッチング処理を行う第2のエッチング工程とにより、前記ガラス基材表面に前記圧縮応力部に対応した微小凸部を形成することを特徴とする。
ここで、エッチング選択比とは、非圧縮応力部のエッチング量に対する圧縮応力部の残存量の割合をいい、例えば、エッチング選択比が0.9の場合、非圧縮応力部が1μmエッチングされるとき、圧縮応力部4は0.1μmエッチングされ、0.9μm(残存量)の高さが形成される。
本発明に係る微小凸部の作製方法では、薄膜よりもガラス基材の方が速くエッチングされるようになるので、ガラス基材表面に高アスペクト比形状の微小凸部を形成し易くすることができる。
本発明に係る微小凸部の作製方法では、まず、エッチング選択比が第1の所定範囲にあるエッチング液によって化学的エッチング処理を行うが、エッチング選択比が大きいため、ガラス基材の表面または薄膜の表面には、山形形状の突起が形成される。その後、第1の所定範囲のエッチング選択比より小さい第2の所定範囲のエッチング選択比を有するエッチング液による化学的エッチング処理を行う。これにより、圧縮応力部が形成されている山形形状の突起部分がよりエッチングされるようになるので、山形形状の突起は相対的に細長くなる。したがって、ガラス基材の表面または薄膜の表面に、裾幅に対する高さの割合であるアスペクト比が高く、先端が鋭利な微小凸部を形成することができる。
本発明に係る微小凸部の作製方法では、圧子を押圧または走査した箇所に圧縮応力部が形成されるので、ガラス基材または薄膜をエッチング処理することにより所望の形状物を得ることができる。
本発明に係る微小凸部の作製方法では、成形型の形状に対応した立体的な圧縮応力部を形成するようになるので、ガラス基材または薄膜をエッチング処理することにより立体形状物を得ることができる。
本発明に係る微小凸部の作製方法では、成形型の突起形状に対応して尾根方向に延びた圧縮応力部が形成される。従って、まず、エッチング選択比が第1の所定範囲にあるエッチング液によって化学的エッチング処理を行うが、このとき、ガラス基材の表面または薄膜の表面には、山形形状、特に頂部が連なる山脈形状の突起が形成される。その後、エッチング選択比が第2の所定範囲にあるエッチング液によって化学的エッチング処理を行う際、圧縮応力部が形成されている山脈形状の突起部分がよりエッチングされるようになるので、結果的に、圧縮応力部に対応した、先端が鋭利な例えばナイフエッジ形状の微小凸部を形成することができる。
本発明に係る微小凸部の作製方法では、表面の少なくとも一部に導電性部材が被覆された微小凸部を得ることができ、この導電性部材を利用することによって、STM(走査型トンネル顕微鏡)測定や原子・分子操作が可能となる。
本発明に係る微小凸部の作製方法によれば、エッチング選択比が第1の所定範囲にあるエッチング液と、エッチング選択比が第1の所定範囲と異なる第2の所定範囲にあるエッチング液によるエッチング処理を行うため、簡易なプロセスにより高アスペクト比を有する例えば針形状やナイフエッジ形状の微小凸部を作製することが可能になる。
本発明の第1実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
本発明の第1実施形態に係るガラス基材表面に微小針5を形成する工程を説明する。
本実施形態では、加工対象とするガラス基材1として、酸性液(エッチング液)による化学的エッチング処理が行われることにより表面に凹凸を効果的に形成させるのに有利な、SiO2及び1モル%以上のAl2O3を含み且つSiO2含有量−Al2O3含有量が40〜67モル%であるガラス母材を用いる。このガラス母材は、多成分系ガラスであって、SiO2を主成分とし且つ1モル%以上のAl2O3が含有されており、このようなガラス母材では、Al2O3が酸性溶液に溶出し易いため、エッチング処理が促進され、また、これに含まれるSiO2とAl2O3のモル濃度の差(SiO2−Al2O3)が小さくなるに伴い(耐酸性の弱いAl2O3が相対的に多くなるに伴い)、その溶出が促進されエッチングレートが飛躍的に大きくなる。
続いて、ガラス基材1が昇温されると、図1(b)に示したように、圧子2を矢印Aに示したように降下し、圧子2をガラス基材1に押圧する。これにより、ガラス基材1の表面及びその近傍に昇温した状態の圧縮応力部3が形成される。尚、実際には、このときに圧子2の押圧によってガラス基材1の表面に凹が形成されるが、図1(b)では省略して示している(図1(c)において同じ)。
このようにして形成された圧縮応力部4は、他の部分(通常部)と異なる化学的性質を示し、酸性液による化学的エッチング処理を行った際にエッチングレートに差が生じる。詳しくは、圧縮応力部4では、他の部分に比べてエッチングレートが低くなる(エッチング速度が遅くなる)。このメカニズムは、完全には明らかになっていないが、圧縮応力部4では、ガラス構造の変化、相変態、密度上昇等が生じ、緻密化したシロキサンネットワークがその他の成分の溶出を妨げる一方、他の部分ではAl2O3が酸性液により選択的にエッチングされるためと考えられる。
ここで、エッチング選択比とは、非圧縮応力部のエッチング量に対する圧縮応力部の残存量の割合である。例えば、エッチング選択比0.9の場合、非圧縮応力部が1μmエッチングされるとき、圧縮応力部4は0.1μmエッチングされ、0.9μm(残存量)の高さの突起が形成されるということを示している。すなわち、エッチング選択比が大きいほど、高さの高い山形形状の突起を形成することができる。
次に、本発明に係る第2実施形態について、図3を参照して説明する。
この第2実施形態に係る微小針15の作製方法において、第1実施形態と異なる点は、第2実施形態では、ガラス基材11上に薄膜12を成膜し、薄膜12に複数の微小針15を形成する点である。
このような結晶化ガラス表面に微小針15の形状を形成させるため、まず、図3(a)に示したように、結晶化ガラス11上に、加工層となる無機材料からなる薄膜である応力印加用膜12を成膜する。この応力印加用膜12は、前述のような熱及び圧力を局所的に印加し冷却することでエッチングレートが他の部分と異なる圧縮応力部を形成可能なものであって、例えば、前述の第1実施形態において加工対象となったガラス基材1等である。
続いて、このようにして圧縮応力部が形成された応力印加用膜12を、図2に示す第1の所定範囲(エッチング選択比:0.8〜0.9)のエッチング液である60℃,0.05%のフッ酸(HF)中に浸漬させる。これによって、約6μmの化学的エッチング処理が行われ(第1のエッチング工程)、ガラス基材1の表面には、図3(c)に示すように、高さ5.4μmの圧縮応力部4からなる突起が複数形成される。
尚、本実施形態に係る工程では、応力印加用膜12の表面に形成された微小針15の形状を結晶化ガラス11にそのまま反映させるためにイオンエッチングによって応力印加用膜12を全て除去したが、必要に応じて、応力印加用膜12の一部を残すようにしても良い。
また、本実施形態は、例えば、ガラス基材が圧縮応力部を形成困難なものである場合等に有効である。
次に、本発明に係る第3実施形態について、図4を参照して説明する。
この第3の実施形態に係る微小凸部の作製方法において、第1の実施形態と異なる点は、ガラス基材21に圧力を局所的に印加するにあたって、圧子22を押圧しながら走査する手段を採用した点である。
次に、本発明に係る第4実施形態について、図5を参照して説明する。
この第4の実施形態に係る微小凸部の作製方法において、第3の実施形態と異なる点は、ガラス基材31に圧縮応力部32を形成するに当たり、圧子を走査する代わりに、尾根状の突起形状を有する成形型33を押圧することを利用した点である。
例えば、第1実施形態では、基板加熱装置によりガラス基材1を加熱させたが、加熱せずに圧力のみを印加させても良い。
また、本発明の微小針5,15は、薬品等を注入する注入針,細胞等の微小物体の処理(切断などの加工)を行うための針及びDVD等の記録用光ディスク検査用の高アスペクト比のカンチレバー等に使用するのに好適であり、ナイフエッジ形状の微小凸部24は、DNA等の切断に使用するのに好適である。
また、第1実施形態では、圧子2の先端の形状を球状としたが、これに限るものではなく、所望の圧縮応力部の形状に応じて、角錐,円錐等に変えることも可能である。さらに、圧子2、22や成形型14、33の代わりに、圧縮応力部4、23、32が所望の形状となるように粒子を制御して衝突させても良い。この場合には、粒子射出手段としてのサンドブラストのノズルにより、ガラス基材1、21、31や応力印加用膜12の表面に粒子を衝突させることで、所望の形状の微小針5,15あるいはナイフエッジ形状の微小凸部24を形成させることもできる。
また、微小針5あるいはナイフエッジ形状の微小凸部24をガラス基材1の表面から切り離さず、ガラス基材1の表面に形成されたまま医療用等の検査や切断用に用いることも可能である。
また、ガラス基材1または応力印加用膜12に対し、第1のエッチング工程および第2のエッチング工程の2回に分けてエッチング処理を行い所望の高さの微小針5,15あるいはナイフエッジ形状の微小凸部24を形成したが、それぞれエッチング選択比の異なるエッチング液を用いてエッチング処理を3回以上行っても良い。このようなエッチング処理を行うことにより、ガラス基材1または応力印加用膜12に、高アスペクト比を有するとともに、先端が鋭利な微小針等をさらに精度良く形成することが可能となる。
2、22 圧子
3 昇温した状態の圧縮応力部
4、23、32 圧縮応力部
5、15 微小針
11 結晶化ガラス
12 応力印加用膜(薄膜)
13 下型
14、33 成形型
24 微小凸部
Claims (8)
- ガラス基材に圧力を局所的に印加すること、または圧力と熱とを局所的に印加した後冷却することにより、前記ガラス基材の表面及びその近傍に、使用するエッチング液に対するエッチングレートが他の部分と異なる圧縮応力部を形成し、
該圧縮応力部を形成したガラス基材に対し、非圧縮応力部のエッチング量に対する前記圧縮応力部の残存量の割合であるエッチング選択比が第1の所定範囲にあるエッチング液による化学的エッチング処理を行う第1のエッチング工程と、前記エッチング選択比が前記第1の所定範囲とは異なる第2の所定範囲にあるエッチング液による化学的エッチング処理を行う第2のエッチング工程とにより、前記ガラス基材表面に前記圧縮応力部に対応した微小凸部を形成することを特徴とする微小凸部の作製方法。 - ガラス基材上に一層以上の無機材料からなる薄膜を成膜し、
該薄膜に圧力を局所的に印加すること、または圧力と熱とを局所的に印加した後冷却することにより、前記薄膜の表面及びその近傍に、使用するエッチング液に対するエッチングレートが他の部分と異なる圧縮応力部を形成し、
該圧縮応力部を形成した前記薄膜に対し、非圧縮応力部のエッチング量に対する前記圧縮応力部の残存量の割合であるエッチング選択比が第1の所定範囲にあるエッチング液による化学的エッチング処理を行う第1のエッチング工程と、前記エッチング選択比が前記第1の所定範囲とは異なる第2の所定範囲にあるエッチング液による化学的エッチング処理を行う第2のエッチング工程とにより、前記薄膜表面に前記圧縮応力部に対応した微小凸部を形成することを特徴とする微小凸部の作製方法。 - 前記ガラス基材として、前記薄膜よりもエッチングレートの高いものを使用することを特徴とする請求項2に記載の微小凸部の作製方法。
- 前記第1の所定範囲のエッチング選択比が、前記第2の所定範囲のエッチング選択比より大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微小凸部の作製方法。
- 前記圧力が、圧子を押圧または走査することによって印加されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の微小凸部の作製方法。
- 前記圧力が、複数の突起形状を有する成形型を押圧することにより印加されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の微小凸部の作製方法。
- 前記圧力が、尾根状の突起形状を有する成形型を押圧することにより印加されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の微小凸部の作製方法。
- 前記微小凸部の表面の少なくとも一部に導電性部材を被覆する工程を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の微小凸部の作製方法。
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