JP4363889B2 - マグネットポンプのインペラ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インペラを回転させる従動マグネットとなる環状磁石を樹脂にて水密且つ密閉状態に被覆し、磁石を水分から保護することができる磁石の樹脂鋳ぐるみ構造を効率的に製造することができ、且つ回転性能に優れたものにできるマグネットポンプ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネットポンプのインペラを回転させる従動マグネット内周側にヨークを設けているものがある。例えば、特許文献1(特許3325918号)や特許文献2(特開平7−238896号)に開示されている。特許文献1では、羽根車回転体(インペラ)の着磁性材料と着磁性磁粉からなる着磁部の内側に空孔が設けられ、その空孔部にヨークが装着され、その着磁部は羽根車回転体の表面に存在しているものである。
【0003】
【特許文献1】
特許3325918号
【特許文献2】
特開平7−238896号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
マグネットポンプのように流体として水を扱うものでは、金属材からなる従動マグネットが露出した状態で装着されていると、水分に触れて錆,腐食が発生しやすくなる。そこで、特許文献1(特許3325918号)のように、磁力の高い希土類系の着磁性磁粉とプラスチックやゴム等とを混合したものが使用されているが、プラスチックやゴム等のために磁力が低下するものである。また、その着磁部は、そのまま使用すると水中に設置された状態となるため、直接的に水に触れてしまい、腐食や劣化のおそれがあるために、その表面処理が必要となる。
【0005】
このように、高い磁力を有する材質のものを従動マグネットとして使用することは極めて困難である。特に、従動マグネットに耐久性を持たせるには、極めてコストがかかるものである。例えば、特許文献2(特開平7−238896号)では、従動マグネットの内側にヨークを設け、且つ従動マグネットを覆うように筒状体をインペラのスリーブの外周に被嵌している。その従動マグネットの前後にOリング、あるいはスリーブなどのシール部材を装着して、従動マグネットを液密構造にして封止している。
【0006】
上記特許文献2では、従動マグネットが希土類系の高い磁力を有するものであっても、直接水中に存在していないので腐食や劣化を防止できるが、その環境はシール部材によるシール構造によって得られているので、シール部材が腐食した場合、シール部材を交換しなければならないし、その交換が適切に行われない場合、従動マグネットの腐食や劣化を発生させてしまうおそれがある。
【0007】
そのために、シール部材の交換用の部品を常時備えておく必要があり、そのシール部材の交換も適切な時期に行わないとマグネットポンプの性能劣化となる。そして、内燃機関などの厳しい環境の中で長期に亘って使用できるように保守,交換作業を続けなければならない。本発明の目的は、従動マグネットを長期に水分から保護し、且つその構造も極めて簡単なものにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、本発明を、筒状部の軸方向一端にフランジ部が形成されたヨークと、該ヨークが挿入する環状磁石と、前記ヨーク及び環状磁石とを前記ヨークの内周側から前記環状磁石の軸方向両端面の内方側寄りを鋳ぐるみ被覆成形する樹脂軸受部と、前記環状磁石の外周側面と軸方向両端面の外方側寄りを鋳ぐるみ被覆成形する樹脂インペラ部とからなり、前記樹脂軸受部と樹脂インペラ部との端縁相互が水密状に当接してなるマグネットポンプのインペラ及びその製造方法としたことにより、インペラを回転させる従動マグネットとなる環状磁石を樹脂にて水密且つ密閉状態に被覆し、磁石を水分から保護することができる磁石の樹脂鋳ぐるみ構造を効率的に製造することができ、且つ回転性能に優れたものにでき、特に従動マグネットに、希土類のように磁石としての性能に優れたものであるが、その反面,種々の環境に対して極めて脆弱なものを長期に亘って良好に使用することができ、上記課題を解決したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明におけるマグネットポンプのインペラは、図1(A),(B)に示すように、ヨーク1,環状磁石2,樹脂軸受部3及び樹脂インペラ部4とからなる。前記ヨーク1は、図2(A)に示すように、略円筒状の筒状部1aの方向端部にフランジ部1bが形成されている。該フランジ部1bは、前記筒状部1aの直径方向の外部に略円板鍔状として突出形成されたものであるが、その突出量は、筒状部1aの軸方向の長さに比較して極めて僅かな寸法でよい。
【0010】
また、前記筒状部1aの内周側を円筒内周側面1a1 と称し、前記筒状部1aの外周側を円筒外周側面1a2 と称する。さらに前記筒状部1aにおいて、フランジ部1b形成側の反対側端部を円筒端部1a3 と称する。そのヨーク1は、環状磁石2の磁力を増大させるものであり、また環状磁石を安定した状態で、ポンプハウジングAに装着する軸受の心材としての役目もなしている。そのヨーク1は鉄材で形成されており、環状磁石2より軸方向に長く形成されている。
【0011】
次に、環状磁石2は、種々の材質から構成されたものであり、鉄,ゴム等にて円筒環状に形成されたものである。また環状磁石2は、希土類の素材から構成されるものが存在する。その希土類磁石には、SM−Co系(サマリウム・コバルト)と、Nd−Fe−B系(ネオジム・鉄・ボロン)があり、希土類元素である材料が使用されている。希土類磁石は、フェライト磁石に比較して強力な磁力を有している。
【0012】
その環状磁石2は、図2(A)に示すように、環状又は円筒形状であり、その中心を貫通する貫通孔2aが形成されている。また、内周側面2b及び外周側面2cとからなり、前記内周側面2bは前記貫通孔2aの内周側であり、外周側面2cは環状磁石2の外周側となる。また軸方向の両端は、端面2d,2dと称する。該端面2d,2dは、平坦状な面となる。前記ヨーク1の筒状部1aが、前記環状磁石2の貫通孔2aに挿通され、フランジ部1bが一方の端面2dに当接される。その環状磁石2の他方の端面2dからヨーク1の筒状部1aの円筒端部1a3 が突出している。すなわち、図2(B)に示すように、ヨーク1の筒状部1aの軸方向長さが前記環状磁石2の軸方向の長さよりも大きな寸法となっている。
【0013】
そして、その環状磁石2に挿通された状態において、前記ヨーク1の内周側面2bから環状磁石2の両端面2d,2dの内周側を被覆するように樹脂にて鋳ぐるみしながら樹脂軸受部3が形成される。その樹脂軸受部3の軸受孔3aは、前記ヨーク1の内周側面2bを被覆する部位である。また、樹脂軸受部3は、前記ヨーク1の軸方向一端のフランジ部1bと他端側の環状磁石2の端面2dより突出した部位を被覆し、さらに環状磁石2の両端面2d,2dの内周側寄りの範囲まで被覆されるものである。
【0014】
この樹脂軸受部3の成形は、軸受成形金型10により行われる。該軸受成形金型10は、図2(C)に示すように、下型10a及び上型10bとからなり、それぞれに成形空間(キャビティー)10cを有するものである。さらに上型10bには湯口10dが形成されている。そして、前記ヨーク1を環状磁石2に挿入した状態で軸受成形金型10の下型10a及び上型10bにセットして、樹脂材を金型内の成形空間(キャビティ)10cに樹脂射出し、ヨーク1の内周側と、環状磁石2の両端面2d,2dから露出しているヨーク1のフランジ部1bと、その反対側の筒状部1aの突出した部分を鋳ぐるみしながら、樹脂軸受部3が成形される。その樹脂軸受部3が形成された軸受孔3aは、インペラの回転中心となる部位である。
【0015】
そのヨーク1は、樹脂軸受部3の芯金としての役目をなすもので、樹脂軸受部3の成形精度を良好にすることができるものである。さらに、ヨーク1の軸方向の長さを軸受の軸方向と略同じ長さとすることで、図10に示すように、樹脂軸受部3の成形工程における熱収縮による軸受の内径及び長さ等の変化を抑制して、成形精度を良好に保つことができる。
【0016】
次に、前記ヨーク1と環状磁石2を前記樹脂軸受部3とともに水密且つ密閉状に被覆する樹脂インペラ部4が装着される。その樹脂インペラ部4は、被覆部4aと羽根部4bとから構成され、被覆部4aが前記環状磁石2の外周側面2cと両端面2d,2dの外周側寄りを鋳ぐるみしながら被覆するものである。その被覆部4aは前記環状磁石2の外周側面2c及び両端面2d,2dの外周側寄りを鋳ぐるみ被覆するものである。また、前記羽根部4bは、図1(B),(C)に示すように、複数の羽根片4b1 ,4b1 ,…から構成されるものである。
【0017】
この樹脂インペラ部4の成形は、インペラ成形金型11により行われる。該インペラ成形金型11は、図5に示すように、下型11a及び上型11bとからなり、それぞれに成形空間(キャビティー)11cを有するものである。さらに上型11bには湯口11dが形成されている。そして、ヨーク1の内周側と前記ヨーク1と環状磁石2とを鋳ぐるみ成形した樹脂軸受部3をインペラ成形金型11の成形空間11cに配置して、樹脂材を金型内の成形空間11cに射出して環状磁石2の外周側及び両端面2d,2dの外周側を鋳ぐるみ被覆する。この成形過程において、インペラ成形金型11により樹脂インペラ部4が成形されるとともに、該樹脂インペラ部4は前記樹脂軸受部3と密着状に接合する。
【0018】
その樹脂インペラ部4は、前記樹脂軸受部3との樹脂材を同質の樹脂材が使用されることにより、このインペラは、樹脂軸受部3に対して、樹脂インペラ部4は、樹脂成形時の収縮作用によって絞り付けられ、密着状態となる。そして、同質の樹脂材であれば、樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4の被覆部4a箇所とは水密状態になり、その接合部の密着性を高め、良好な水密且つ密閉状態とすることができる。したがって、インペラの環状磁石2及びヨーク1の箇所に水等の液体が浸入することを完全に防ぐことができる。
【0019】
また、樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4との樹脂材をそれぞれ異質にする場合もある。この場合には、樹脂軸受部3には、低摩擦性,摺動性に優れたフッ素樹脂〔テフロン(登録商標)〕,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が使用される。或いは軸受性能に優れるようするために潤滑剤(例えばカーボン)などを配合し、良好な摺動性を得られるようにすることもできる。また樹脂インペラ部4には、機械的強度、剛性、寸法安定性に優れているポリフェニレンサルファイド(PPS)等が使用される。このように1つのインペラに2種類の樹脂材が使用されることで、それぞれの使用条件又は環境に応じた樹脂材が使用でき、無駄の無い良質な部品とすることができる。
【0020】
これによって、前記ヨーク1及び環状磁石2は、樹脂軸受部3及び樹脂インペラ部4による樹脂材によって完全に水密且つ密閉状態に被覆されるため、環状磁石2を水分から完全に遮断することができ、環状磁石2の腐食や、劣化を防止することができる。特に、環状磁石2に磁力の強い希土類磁石を素材とした場合には、強力な磁力を有する従動マグネットを備えたマグネットポンプとして使用することができる。
【0021】
また、前記樹脂軸受部3の軸受孔3aに面取り部3a1 と段付き逃し部3a2 をそれぞれ設けて、成形歪みの影響を防止し、更に成形精度を高めることができる。また、本発明を成形する際に、環状磁石2にヨーク1を装着したものを軸受成形金型10の成形空間10cに配置するときに、そのヨーク1のフランジ部1bに押えピンの当接孔hが成形されるような場合は、ヨークに防錆のメッキなどを施して表面処理面kをおけば好ましい〔図9(A),(B)参照〕。
【0022】
次に、本発明の製造方法について説明する。まず図2(B),(C)に示すように、ヨーク1を環状磁石2の貫通孔2aに挿入し、フランジ部1bと環状磁石2の軸方向の一端側端面2dとを当接させた状態にする。次に、図3に示すように、前記環状磁石2に前記ヨーク1を装着した状態で軸受成形金型10の成形空間10cに配置し、図4に示すように、その軸受成形金型10の成形空間10cに溶けた樹脂を注湯し、前記ヨーク1の内周側から前記環状磁石2の軸方向両端面2d,2dの内方側寄りを樹脂鋳ぐるみ被覆して樹脂軸受部3を成形する。
【0023】
次に、図6に示すように、前記ヨーク1,環状磁石2及び樹脂軸受部3による製造物をインペラ成形金型11の成形空間11cに配置し、図7に示すように、インペラ成形金型11の成形空間11cに溶けた樹脂を注湯し、前記ヨーク1と環状磁石2の外周側面2cと軸方向両端面2d,2dの外方側寄りを被覆部4aで樹脂鋳ぐるみ被覆して樹脂インペラ部4を成形する。そして、該樹脂インペラ部4の被覆部4aと前記樹脂軸受部3との接触箇所を水密且つ密閉的に当接させる。
【0024】
このとき樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4との樹脂素材が同質材の場合には、図8(A)に示すように、溶けた状態の樹脂インペラ部4を成形する樹脂材が流れ込み、図8(B)に示すように、これが樹脂軸受部3との接合面を溶融し、硬化することで図8(C)に示すように、熱融着状態による水密構造にすることができる。また、樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4との樹脂素材が異なる材質の場合には、樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4とは金型によって熱融着されるか或いはシール剤により水密且つ密閉状に処理する。
【0025】
その樹脂軸受部3は、インペラ軸12により支持され、インペラがポンプハウジングA内のポンプ室14内にて回動自在に装着される。また、マグネットカップ収納部16の内部には、アウターマグネット15が回動自在にポンプハウジングAに装着されている。具体的には、図1(A)に示すように、前記マグネットカップ収納部16には、駆動軸17がベアリングを介してマグネットカップ収納部16の内部と外部とに貫通するように装着され、その駆動軸17のマグネットカップ収納部16の内部側でアウターマグネット15に連結されている。また前記駆動軸17のマグネットカップ収納部16の外部側には、プーリ或いは図示しないチェーンスプロケット等を介して回転運動が伝達されるものである。図1(A)の符号5は、隔壁体である。
【0026】
【発明の効果】
請求項1の発明は、筒状部1aの軸方向一端にフランジ部1bが形成されたヨーク1と、該ヨーク1が挿入する環状磁石2と、前記ヨーク1及び環状磁石2とを前記ヨーク1の内周側から前記環状磁石2の軸方向両端面2d,2dの内方側寄りを鋳ぐるみ被覆成形する樹脂軸受部3と、前記ヨーク1に装着された環状磁石2の外周側面2cと軸方向両端面2d,2dの外方側寄りを鋳ぐるみ被覆成形する樹脂インペラ部4とからなり、前記樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4とが水密且つ密閉状に当接してなるマグネットポンプのインペラとしたことにより、マグネットポンプにおけるインペラを回転させる従動マグネットを樹脂にて水密且つ密閉状態に鋳ぐるみ被覆し、その環状磁石2を水分から保護し、また、環状磁石2の樹脂鋳ぐるみを効率的に製造することができ、且つ回転性能に優れたものにできる等の効果を奏する。
【0027】
上記効果を詳述すると、筒状部1aの軸方向一端にフランジ部1bが形成されたヨーク1が環状磁石2の内周側に挿通した状態で、前記ヨーク1の内周側から前記環状磁石2の軸方向両端面2d,2dの内方側寄りに亘って、樹脂軸受部3にて鋳ぐるみ成形されている。さらに、該樹脂軸受部3によって鋳ぐるみ被覆された前記ヨーク1と環状磁石2の該環状磁石2の外周側面2cと軸方向両端面2d,2dの外方側寄りを樹脂インペラ部4にて鋳ぐるみ被覆成形し、該樹脂インペラ部4と前記樹脂軸受部3とが水密且つ密閉状に当接している。
【0028】
このように、本発明においては、ヨーク1及び環状磁石2に対して新たにシール部材などを設ける必要がなく、ヨーク1の内周側より環状磁石2に向かって鋳ぐるみ被覆する樹脂軸受部3と、環状磁石2側より鋳ぐるみ被覆する樹脂インペラ部4とにより水密且つ密閉状態に鋳ぐるみ被覆され、水密且つ密閉状とした接合ができるものであり、樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4とが、ヨーク1及び環状磁石2を内周と外周から被覆するものであり、極めて簡単な構造にできる。そして、その密閉状態を長期に亘って安定したものとすることができ、たとえばマグネットポンプのインペラとして磁力の強い希土類磁石を使用する場合には、水中状態において腐食や劣化などなく安定して使用することができ、内燃機関などの厳しい環境の中でも長期にシール性を確保することができる。
【0029】
請求項2の発明は、請求項1において、前記環状磁石2は、希土類から形成されてなるマグネットポンプのインペラとしたことにより、インペラの従動マグネットとして、特に磁力に優れた希土類を環状磁石2の素材にすることで、回転力の極めて強力なインペラにすることができる。また、希土類は水分に対して極めて弱い性質であるが、この希土類から成形された環状磁石2が樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4とにより水密且つ密閉状に鋳ぐるみ被覆されているので、水分からの保護が確実になされ、希土類を使用した環状磁石2でありながら、耐久性があり長期に亘って使用できるものである。
【0030】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4とは同質の樹脂材から成形されてなるマグネットポンプのインペラとしたことにより、樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4との接合部は、金型成形段階において、高熱により熱融着にすることができる。また、熱融着による工程にて樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4の成形樹脂材の収縮作用によって、鋳ぐるみ被覆したヨーク1と環状磁石2に対して密着性を高めると共に、シール性をより向上させることができる。
【0031】
請求項4の発明は、請求項1又は2において、前記樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4とは異質の樹脂材から成形されてなるマグネットポンプのインペラとしたことにより、インペラの使用状態及び環境に応じて、樹脂軸受部3に好適な素材の樹脂材を使用し、また樹脂インペラ部4に好適な素材の樹脂材を使用することができる。すなわち、樹脂軸受部3には、摺動性に優れた材質のものが使用され、また樹脂インペラ部4には機械的強度、剛性、寸法安定性に優れた材質のものを使用することにより、摺動摩擦の抵抗を低減して、ポンプ駆動力損失を低減し、ポンプ効率を高めることができ、極めて使用環境に対して耐久性のあるインペラを成形することができる。
【0032】
請求項5の発明は、筒状部1aの軸方向一端にフランジ部1bが形成されたヨーク1を環状磁石2に挿入し、該環状磁石2に前記ヨーク1を装着した状態で前記ヨーク1の内周側から前記環状磁石2の軸方向両端面2d,2dの内方側寄りを軸受成形金型10により樹脂鋳ぐるみ被覆して樹脂軸受部3を成形し、前記ヨーク1と環状磁石2の外周側面2cと軸方向両端面2d,2dの外方側寄りをインペラ成形金型11により樹脂鋳ぐるみ被覆して樹脂インペラ部4を成形し、該樹脂インペラ部4と前記樹脂軸受部3との接触箇所を水密且つ密閉的に当接させてなるマグネットポンプのインペラの製造方法としたことにより、ヨーク1及び環状磁石2を鋳ぐるみ被覆する構造としたインペラの成形を極めて効率的に行うことができる。
【0033】
上記効果を詳述すると、環状磁石2にヨーク1を装着したものを樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4により鋳ぐるみ一体的に被覆する構造にするのに、まずヨーク1を環状磁石2に挿入し、該環状磁石2に前記ヨーク1を装着した状態で前記ヨーク1の内周側から前記環状磁石2の軸方向両端面2d,2dの内方側寄りを軸受成形金型10により樹脂鋳ぐるみ被覆して樹脂軸受部3を成形し、前記ヨーク1と環状磁石2の外周側面と軸方向両端面2d,2dの外方側寄りをインペラ成形金型11により樹脂鋳ぐるみ被覆して樹脂インペラ部4を成形してゆく。そして、その樹脂インペラ部4が成形されることで前記樹脂軸受部3との接触箇所を水密且つ密閉的に当接させる。
【0034】
すなわち、本発明では、樹脂軸受部3を成形してから、その後に樹脂インペラ部4を成形する別々の成形工程としているので、その樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4との2つの接合部は、後の樹脂インペラ部4の成形過程における収縮作用によって内部のヨーク1と環状磁石2にしっかりと密着させることができ、インペラの従動マグネットとして極めて安定した状態に環状磁石2を装着することができる。
【0035】
請求項6の発明は、請求項5において、前記環状磁石2は、希土類から成形されてなるマグネットポンプのインペラの製造方法としたことにより、軸受成形金型10に環状磁石2とヨーク1とが配置されて、そのヨーク1内周側より環状磁石2が鋳ぐるみ被覆され、その後に主に環状磁石2の外周側面より樹脂インペラ部4が被覆されるので、希土類から成形された環状磁石2に対して、大きな外力がかからずに安定した状態で環状磁石2を鋳ぐるみ被覆してゆくことができる。よって、比較的脆弱な希土類から成形された環状磁石2に樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4にて鋳ぐるみ被覆する過程において、なんら損傷を与えることなく極めて良好なる状態にて、環状磁石2を従動マグネットとしてインペラを製造することができる。
【0036】
請求項7の発明は、請求項5又は6において、前記樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4とは同質の樹脂材から成形されてなるマグネットポンプのインペラの製造方法としたことにより、樹脂軸受部3に対して樹脂インペラ部4との接合を金型成形する過程で高熱により熱融着構造とすることができ、製造効率を向上させることができる。
【0037】
請求項8の発明は、請求項5又は6において、前記樹脂軸受部3と樹脂インペラ部4とは異質の樹脂材から成形されてなるマグネットポンプのインペラとしたことにより、樹脂軸受部3には、摺動性に優れた材質のものを使用し、また樹脂インペラ部4には機械的強度、剛性、寸法安定性に優れた材質のものを使用することができ、インペラの使用環境に応じて、樹脂の材質を適宜に設定しながら耐久性のあるインペラを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明のインペラを使用したマグネットポンプの縦断側面図
(B)は本発明のインペラの縦断側面図
(C)は本発明のインペラの正面図
【図2】(A)はヨークと環状磁石の縦断側面図
(B)は環状磁石の貫通孔にヨークを挿入した状態の縦断側面図
(C)は下型と上型とから構成される軸受成形金型とヨーク,環状磁石との縦断側面図
【図3】軸受成形金型の成形空間にヨークが挿入された環状磁石が配置された縦断側面図
【図4】軸受成形金型にて樹脂軸受部が成形される縦断側面図
【図5】ヨークと環状磁石とを鋳ぐるみ被覆する樹脂軸受部と,下型と上型とから構成されるインペラ成形金型との縦断側面図
【図6】インペラ成形金型の成形空間にヨークと環状磁石とを鋳ぐるみ被覆した樹脂軸受部が配置された縦断側面図
【図7】インペラ成形金型にて樹脂インペラ部が成形される状態の縦断側面図
【図8】(A)は図7のイ部におけるインペラ成形金型内にて樹脂軸受部と溶けた樹脂が流れ込む状態図
(B)は図7のイ部における樹脂軸受部が溶けた樹脂にて溶融しはじめた状態図
(C)は図7のイ部における樹脂軸受部と樹脂インペラ部とが熱融着を完了した状態図
【図9】(A)はインペラの背面図
(B)はインペラ後方の拡大縦断側面図
【図10】ヨークにより樹脂軸受部の収縮による寸法誤差を防止する状態を示す作用図
【符号の説明】
1…ヨーク
1b…フランジ部
2…環状磁石
2d…軸方向両端面
3…樹脂軸受部
4…樹脂インペラ部
Claims (8)
- 筒状部の軸方向一端にフランジ部が形成されたヨークと、該ヨークが挿入する環状磁石と、前記ヨーク及び環状磁石とを前記ヨークの内周側から前記環状磁石の軸方向両端面の内方側寄りを鋳ぐるみ被覆成形する樹脂軸受部と、前記環状磁石の外周側面と軸方向両端面の外方側寄りを鋳ぐるみ被覆成形する樹脂インペラ部とからなり、前記樹脂軸受部と樹脂インペラ部との端縁相互が水密状に当接してなることを特徴とするマグネットポンプのインペラ。
- 請求項1において、前記環状磁石は、希土類から形成されてなることをを特徴とするマグネットポンプのインペラ。
- 請求項1又は2において、前記樹脂軸受部と樹脂インペラ部とは同質の樹脂材から成形されてなることを特徴とするマグネットポンプのインペラ。
- 請求項1又は2において、前記樹脂軸受部と樹脂インペラ部とは異質の樹脂材から成形されてなることを特徴とするマグネットポンプのインペラ。
- 筒状部の軸方向一端にフランジ部が形成されたヨークを環状磁石に挿入し、該環状磁石に前記ヨークを装着した状態で前記ヨークの内周側から前記環状磁石の軸方向両端面の内方側寄りを軸受成形金型により樹脂鋳ぐるみ被覆して樹脂軸受部を成形し、前記環状磁石の外周側面と軸方向両端面の外方側寄りをインペラ成形金型により樹脂鋳ぐるみ被覆して樹脂インペラ部を成形し、該樹脂インペラ部と前記樹脂軸受部との端縁相互を水密状に当接してなることを特徴とするマグネットポンプのインペラの製造方法。
- 請求項5において、前記環状磁石は、希土類から成形されてなることを特徴とするマグネットポンプのインペラの製造方法。
- 請求項5又は6において、前記樹脂軸受部と樹脂インペラ部とは同質の樹脂材から成形されてなることを特徴とするマグネットポンプのインペラの製造方法。
- 請求項5又は6において、前記樹脂軸受部と樹脂インペラ部とは異質の樹脂材から成形されてなることを特徴とするマグネットポンプのインペラの製造方法。
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