JP4363655B2 - 酸化触媒の温度制御方法及び内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
このうち、後処理装置としてDPFを備えた場合には、時間の経過に伴い、捕集したPMによって目詰まりを生じるために、PMを定期的に燃焼させて、DPFを再生させる必要がある。そのため、DPFの上流側にPMを燃焼させる手段を配置することが一般的に行われているが、その際に、かかる燃焼手段によって、DPFが過熱され破損しないように留意する必要がある。
そこで、別のDPFの再生方法として、DPFの上流側に酸化触媒を配置して、排気ガスの温度を昇温させた上でDPFに流入させることにより、捕集されたPMを燃焼させる方法も実施されている。かかるDPFの再生方法においては、酸化触媒における排気ガスの昇温効率を高めるために、エンジンにおける燃料の噴射タイミングを遅らせて、排気ガス中に多量の未燃焼の燃料(生ガス:HC)を含ませたり、あるいは、酸化触媒に対して、直接生ガスを吹き付けたりしている。すなわち、このように酸化触媒に生ガスを供給することにより、多量の生ガスが酸化反応し、酸化熱の発生が促進されるため、効率的に排気ガスの温度を昇温させることができる。
すなわち、本発明の目的は、内燃機関の運転状態が変化した場合であっても、排気ガスの温度の急激な上昇を防いで、下流側に配置された排気浄化部材の損傷を防止することができる酸化触媒の温度制御方法及び内燃機関の排気浄化装置を提供することである。
また、かかる酸化触媒の温度制御方法によれば、酸化触媒が活性化状態に達していない状態にある場合に、酸化触媒を部分的に通過させることにより、排気ガスが通過する領域においては、集中的に酸化反応を生じさせて、酸化触媒の温度を上昇させることができる。一方、排気ガスが通過しない領域においても、上昇しつつある排気ガスが通過する領域における酸化触媒の温度の影響によって、温度を上昇させることができる。したがって、エンジン始動時等の、酸化触媒が低温状態にある場合には、酸化触媒全体として、効率的に活性化温度まで上昇させることができる。
(1)基本的構成
本発明にかかる内燃機関の排気浄化装置は、図1(a)及び(b)に示すように、内燃機関51の排気通路20中に備えられ、排気ガスDを浄化するための排気浄化装置10であって、酸化触媒11と、当該酸化触媒11の下流側に配置された排気浄化部材12と、を含む内燃機関の排気浄化装置10である。
かかる排気浄化装置10は、排気ガスの温度の温度を測定するための温度センサ14と、温度センサ14によって測定される温度をもとに、酸化触媒11に流入する排気ガスDを、当該酸化触媒11の一部又は全部を選択的に通過させるための流路制御手段13と、を備えることを特徴とする。
ここで、図1(a)は、本発明の排気浄化装置を概略的に示す図であり、図1(b)は、図1(a)中の矢印方向から排気浄化装置を眺めた場合の概略図である。
すなわち、排気浄化部材12としてディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備える場合には、排気ガスD中のPMを捕集するとともに、捕集されたPMを、酸化触媒11によって高温状態にされた排気ガスDによって燃焼し、排出することができる。また、排気浄化部材12としてSCR触媒を備える場合には、酸化触媒11によって排気ガスD中の一酸化窒素(NO)から二酸化窒素(NO2)を生成し、当該NOとNO2との比率を、還元速度が速くなるような比率に近づけた上で、アンモニア(NH3)を供給することにより、NOXを効率的に還元除去することができる。
図1中、矢印Dで示される排気ガスを排出する内燃機関51としては、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンが典型的であるが、排気浄化装置10の取り付けが必須であるばかりか、その再生が必須のディーゼルエンジンを対象とすることが適している。
また、排気通路20は、内燃機関の排気口22に接続されており、その途中に、酸化触媒11やDPF等の排気浄化部材12が配設される。かかる排気通路20の断面形状は、円形、楕円、あるいは角柱の排気通路20であれば特にその形態は特に制限されるものではない。
また、酸化触媒11は、排気ガス中に含まれるCOやHCを酸化させて、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に分解したり、排気ガス中に含まれるNOを酸化させて、NO2を生成したりするとともに、その反応熱によって排気ガスDの温度を昇温させるための部材である。
すなわち、排気浄化部材12としてDPFを備える場合には、排気ガス中に含まれるCOやHCが発熱剤として働き、酸化反応による酸化熱が発生するために、排気ガスの温度を迅速に昇温させて、DPFに捕集されたPMを効率的に燃焼させることができる。また、排気浄化部材12としてSCR触媒を備える場合には、NOからNO2を効率的に生成し、NOとNO2との比率を、NOXの還元速度が速くなるような比率に制御することにより、SCR触媒における還元効率を著しく向上させることができる。
かかる酸化触媒11としては、特に制限されるものではなく、公知のもの、例えば、アルミナに白金を担持させたものに、所定量のセリウム等の希土類元素を添加したものを用いることができる。
この理由は、後述する流路制御手段13による排気ガスの通過位置の切換えと合わせて、酸化触媒11の配置位置を変えることにより、酸化触媒11における排気ガスの通過位置や通過面積等を容易に制御することができるためである。
したがって、酸化触媒11の温度をよりきめ細かく制御することができるために、排気浄化部材12を損傷させることを防止して、排気ガスの浄化を効率的に行うことができる。
また、酸化触媒11の下流側に備えられる排気浄化部材12としては、例えば、DPFや、SCR触媒等が挙げられる。
一例としてのDPFは、排気ガス中に含まれるPMを捕集するとともに燃焼させて、排気ガスを浄化するためのフィルタである。かかるDPFの種類は特に制限されるものではなく、公知のものを好適に使用することができる。
また、SCR触媒は、NOX触媒とアンモニア(NH3)供給手段とを備え、NOX触媒で吸着したNOXに対して、アンモニア(NH3)を還元剤として噴射して、窒素(N2)と水(H2O)とに分解して排出する触媒ユニットである。かかるSCR触媒においてNOやNO2に対して噴射される還元剤としての尿素の態様についても、特に制限されるものではなく、尿素水、尿素粉末、アンモニアガス、アンモニウム塩等を好適に使用することができる。さらに、これらの尿素を、上述のSCR触媒に対して噴射する際の噴射手段についても、インジェクタ等、公知のものを使用することができる。
また、排気通路20の途中における、酸化触媒11の上流側及び下流側には、排気ガスの温度を測定するための温度センサ14を備えている。かかる温度センサ14によって測定される排気ガスの温度をもとに酸化触媒11の活性化状態を推定することにより、酸化触媒11の温度を制御して、排気浄化部材12の損傷を防止するためである。
かかる温度センサ14は、酸化触媒11中に備えて、酸化触媒11の温度を直接的に測定することが最も好ましい態様であるが、現実には、酸化触媒11中に温度センサ14を備えることは困難であるために、酸化触媒11の上流側及び下流側に備えられる。また、酸化触媒の上流側で測定される温度と、下流側で測定される温度との差が所定値を超える場合に、酸化触媒11が異常な状態にあることを検知することができる。
また、排気通路20における酸化触媒11の上流側には、酸化触媒11に流入する排気ガスを、酸化触媒11の一部を選択的に通過させるための流路制御手段13が備えられている。すなわち、酸化触媒11における一部の領域にのみ大部分の排気ガスを通過させて、酸化触媒11の温度が高温状態にある場合には、効率的に温度を低下させて、排気浄化部材12の損傷を防ぐ一方、酸化触媒11の温度が低温状態にある場合には、効率的に温度を上昇させて、酸化触媒11を活性化させることができる。
かかる流路制御手段13としては、例えば、図2(a)に示すように、回転軸18を中心に回転可能な扇体部材17を含む流路制御弁13とすることが好ましい。この理由は、かかる流路制御弁13であれば、比較的簡易な構成で、排気ガスの流路を容易に制御することができるためである。
このように、かかる流路制御手段13を備えることにより、内燃機関の運転状態が変化した場合であっても、酸化触媒11の温度が過度に高温状態になることを防いで、排気浄化部材12が損傷することを有効に防止することができる。
このように、かかる流路制御手段13を備えることにより、内燃機関の冷間始動時等において、酸化触媒11の温度を効率的に昇温活性化させることができる。
なお、具体的な酸化触媒11の温度制御方法については、後述する。
また、図示しないものの、流路制御手段13の位置を決定するための制御手段が備えられていることが好ましい。この理由は、例えば、排気ガスの温度から酸化触媒11の温度を推定して、流路制御手段13の位置を決定することはもちろんのこと、酸化触媒11の一部に対して排気ガスを通過させる場合であっても、その通過位置を所定のタイミングで切り換えるように制御するためである。
したがって、酸化触媒11の全面を均一に温度制御することができる。また、エンジンの運転時間の変化にしたがって、所定タイミングで酸化触媒11の温度制御をすることができるために、排気浄化部材12における排気ガスの浄化効率を向上させることができる。
また、酸化触媒11の下流側に、酸化触媒11を通過した排気ガスを拡散させるための穴開き部材15を備えることが好ましい。
この理由は、温度センサ14による排気ガスの温度測定の精度を向上させるためである。より具体的には、排気ガスが、流路制御弁13によって酸化触媒11の一部を通過するようにされた状態においては、酸化触媒11を通過した排気ガスが層流となって、測定位置によって、排気ガスの温度がばらつく場合がある。そこで、図3に示すように、かかる穴開き部材15によって排気ガスを拡散させることにより、排気ガスの温度を均一化して、酸化触媒の下流側における温度の測定を精度良くすることができるようになる。
かかる穴開き部材15としては、例えば、耐熱性に優れたパンチングメタルやスワーラー等を使用することができる。
次に、図4〜図5を参照して、上述した構成の排気浄化装置10における、酸化触媒11の温度制御方法について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、内燃機関51としてディーゼルエンジンを用いるとともに、排気浄化部材12としてDPFを備えた例を説明する。
これにより、排気ガスが、酸化触媒11の一部の領域Aに集中的に流入するため、排気ガスに含まれるCOやHC、NO等が酸化反応することによって発生する反応熱によって、当該領域Aの酸化触媒11の温度を効率的に上昇させることができる。また、排気ガスが通過しない領域Bにおいても、当該昇温される領域Aからの影響を受け、温度を徐々に上昇させることができる。
このように、排気ガスの通過位置を所定タイミングでくり返し切り換えることにより、酸化触媒11全体を均一にかつ効率的に昇温させることができる。したがって、酸化触媒11の温度が著しく低い場合であっても、効率的に昇温させて活性化状態とすることができる。
例えば、流路制御手段として、上述の流路制御弁を用いた場合には、図4(c)に示すように、排気ガスDの流れ方向に平行となるように流路制御弁13を配置することにより、流路制御弁13によって排気ガスの流れを変えることなく、酸化触媒11の全面に対して排気ガスDを流入させることができる。
この理由は、酸化触媒11を通過した排気ガスが層流となって、測定箇所によってばらつきが生じる場合があるためである。したがって、より正確に排ガスの温度を測定できるために、流路の変更を精度良く行うことができるためである。
より詳細には、酸化触媒により排気ガスの温度を昇温させて下流側のDPFに流入させるために、エンジンにおける燃料の噴射タイミングを遅らせる、いわゆるポストインジェクションを行ったり、酸化触媒の上流側で排気通路中に直接燃料ガス(HC)を含む生ガスを噴射したりする場合がある。例えば、このような場合に、酸化触媒の温度が低かったり、燃料が気化するほどに排気温度が上昇していなかったりすると、未燃焼の燃料(HC)が酸化触媒にそのまま付着してしまう。このような状態において、高負荷運転等で触媒温度が上昇し活性温度を超えた時に、減速したりアイドリング状態にしたりすると、排気中の酸素濃度が急激に上昇し、酸化触媒に付着した未燃焼の燃料やPMが急激に燃焼し始める。そうすると、かかる条件の下では、排気ガスの流量が減少している状態であるために、排気ガスが酸化触媒の温度上昇による熱エネルギを持ち去ることができず、さらに酸化触媒の温度が上昇し続け、排気ガスの温度も、例えば、1200℃を超えるほどになる。したがって、酸化触媒の下流側に配置されたDPFが熱により破損してしまう。
一方、酸化触媒11における排気ガスが通過しない領域Bにおいても、酸素が供給されないために酸化反応がほとんど起こらず、自然放熱によって、酸化触媒11の温度を低下させることができる。
その後、さらに、酸化触媒11における排気ガスの通過位置を、所定タイミングでくり返し切り換えることにより、酸化触媒11全体として温度のばらつきが生じることを防ぎつつ、酸化触媒11の温度を効率的に低下させることができる。
そして、再度、測定温度が所定値を上回った場合には、上述した流路制御手段の制御を繰り返すこととなる。
まず、温度センサにより、酸化触媒の上流側及び下流側の温度を測定する(S1)。このとき、酸化触媒の下流側における排気ガスの温度が所定値未満、例えば、300℃未満の場合には、エンジンは通常運転状態にあると判断されるため、上述の流路制御弁を排気ガスの流れ方向と平行に配置する。一方、かかる排気ガスの温度が例えば300℃以上の場合には、エンジンに備えられた運転状態の検知手段により、エンジン回転数を検知する(S2)。
ここで、検知されるエンジンの回転数が所定値を超える場合、例えば、1000rpmを超えている場合には、エンジンは未だ通常運転状態にあると判断することができるため、やはり、上述の流路制御弁を排気ガスの流れ方向と平行に配置する。一方、エンジンの回転数が例えば1000rpm以下の場合には、ラムダセンサにより、排気ガス中の酸素濃度(ラムダ値)を測定する(S3)。
また、測定されるラムダ値が所定値未満、例えば、5未満である場合には、エンジンは未だ通常運転状態にあると判断することができるため、やはり、上述の流路制御弁を排気ガスの流れ方向と平行に配置する。一方、かかるラムダ値が5以上の場合には、酸化触媒が異常に昇温される熱暴走への遷移状態にあると判断し、当該熱暴走回避モードへ移行する。
ここで、かかる温度の差が所定値未満、例えば、50℃未満となった場合には、酸化触媒における熱暴走が回避されたと判断できるため、再び、上述の流路制御弁を排気ガスの流れ方向と平行に配置する。一方、かかる温度の差が50℃以上の場合には、さらに、熱暴走回避モードを継続する必要があるため、今度は、上述の流路制御弁を、排気ガスの流れ方向に対して−60度の傾斜角となるように配置して、排気ガスを、酸化触媒の一部を通過させるように設定する(S6)。また、上述したのと同様に、酸化触媒の上流側と下流側とにおける排気ガスの温度差を算出する(S7)。
そして、かかる温度の差が所定値未満、例えば、50℃未満となった場合には、酸化触媒における熱暴走が回避されたと判断できるため、再び、上述の流路制御弁を排気ガスの流れ方向と平行に配置する。一方、かかる温度の差が未だ50℃以上の場合には、さらに、熱暴走回避モードを継続する必要があるため、S4工程に戻り、上述の流路制御弁を、排気ガスの流れ方向に対して60度の傾斜角となるように配置する(S4)。
このように、本発明の酸化触媒の温度制御方法によれば、酸化触媒の温度をきめ細かく制御できるために、酸化触媒の熱暴走を防ぎつつ、排気ガスを効率的に浄化することができる。したがって、下流側に備えられたDPF等の排気浄化部材の破損等を有効に防止することができる。
Claims (7)
- 内燃機関の排気浄化装置に備えられる酸化触媒の温度制御方法であって、
前記酸化触媒の上流側及び下流側における排気ガスの温度を測定するとともに、前記排気ガスの温度をもとに、前記酸化触媒に流入する排気ガスの流路を変更することにより、前記内燃機関から排出される排気ガスの全量を、前記酸化触媒の一部又は全部の領域を選択的に通過させることを特徴とする酸化触媒の温度制御方法。 - 内燃機関の排気浄化装置に備えられる酸化触媒の温度制御方法であって、
前記酸化触媒の上流側及び下流側における排気ガスの温度を測定するとともに、前記排気ガスの温度をもとに、前記酸化触媒に流入する排気ガスの流路を変更することにより、前記内燃機関から排出される排気ガスの全量を、前記酸化触媒の一部又は全部の領域を選択的に通過させ、
前記排気ガスの全量を、前記酸化触媒の一部の領域を通過させる場合に、前記酸化触媒における前記排気ガスの通過位置を切り換えながら、前記排気ガスを通過させることを特徴とする酸化触媒の温度制御方法。 - 前記酸化触媒の下流側における前記排気ガスの温度を測定する際に、前記酸化触媒を通過した排気ガスを、穴開き部材を通過させて拡散させることにより、前記排気ガスの温度を均一化した状態で測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化触媒の温度制御方法。
- 前記排気ガスの流路を、前記酸化触媒に流入する排気ガス中の酸素濃度にさらに対応させて変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化触媒の温度制御方法。
- 内燃機関の排気通路中に備えられ、排気ガスを浄化するための排気浄化装置であって、酸化触媒と、当該酸化触媒の下流側に配置された排気浄化部材と、を含む内燃機関の排気浄化装置において、
前記排気ガスの温度の温度を測定するための温度センサと、
前記温度センサによって測定される温度をもとに、前記内燃機関から排出され前記酸化触媒に流入する前記排気ガスの全量を、当該酸化触媒の一部又は全部の領域を選択的に通過させるための流路制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。 - 前記温度センサを、前記酸化触媒の上流側及び下流側に配置することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の排気浄化装置。
- 前記酸化触媒の下流側に、前記酸化触媒を通過した排気ガスを拡散させるための穴開き部材を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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