JP4362187B2 - トラクタの前輪駆動クラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トラクタの前輪駆動クラッチ、特に左右後輪用の左右のブレーキを備えた後輪駆動系を有するトラクタにおいて、後輪駆動系の中途から分岐させた前輪駆動系中に設けられた前輪駆動クラッチに、関するものである。
【0002】
【発明の背景】
上記した前輪駆動クラッチを、スプリングの作用によって入れられ、油圧の作用によって切られるタイプのものに構成すると、前輪駆動クラッチは常時は入れられて前輪が後輪と共に回転駆動されることとし、左右後輪用の左右のブレーキの制動力が左右の前輪にまで及ぶこととするから、トラクタの走行中にエンジンの停止が起きたとき或いは油圧系のトラブルが生じたときにも、上記した左右のブレーキを入れることによって車両の空走距離を短くする。
【0003】
特開昭59−192619号公報には上記タイプの前輪駆動クラッチが、油圧の作用によって入れられスプリングの作用によって切られるタイプの、前輪駆動クラッチと共に記載されている。このうちスプリングの作用によって入れられ油圧の作用によって切られるタイプの前輪駆動クラッチは、前輪に伝動する伝動軸上にクラッチケースを固定設置し、この伝動軸上に遊嵌設置した駆動歯車のボス部を該クラッチケース内に延出させて、この歯車ボス部とクラッチケースとに複数枚宛の摩擦板を摺動自在且つ相対回転不能に支持させている。また該摩擦板群の一側でクラッチケース内に摺動可能なシリンダを、該シリンダと直列配置してクラッチケース内に設けた皿バネにより摩擦板方向に移動付勢して設け、さらにこのシリンダ内にピストンを摺動不能に設けて、上記伝動軸に穿設した油通路を上記シリンダとピストン間の油室に、油圧の作用によってシリンダが摩擦板群から遠去けられるように連通させている。したがって前輪駆動クラッチは、上記皿バネの付勢力より上記シリンダを介して摩擦板群間の係合を生じさせることで入れられ、油圧により該シリンダを摺動させることで切られる。この前輪駆動クラッチはクラッチケース内に、複数枚の摩擦板群とシリンダと皿バネとが直列に配置されているため、極めて長尺のものとなっており、また複数枚の摩擦板を有することから部品点数が多く高価につくものとなっている。
【0004】
実開昭52−103252号公報には同心配置された2本の伝動軸間に設けられた噛合いクラッチであって、スプリングの作用によって入れられ油圧の作用によって切られるクラッチが、記載されている。この噛合いクラッチはクラッチケース内で、受動爪を有する固定クラッチ部材を従動側伝動軸上に固定設置すると共に、駆動爪を有する可動クラッチ部材を駆動側伝動軸上に摺動可能に設置し、可動クラッチ部材と直列配置したスプリングによって該可動クラッチ部材を固定クラッチ部材方向に摺動付勢して受動爪に対する駆動爪の噛合いを得るようにする一方、クラッチケースに固定したシリンダに対し上記可動クラッチ部材を、複数個のシールリングを介して油密に嵌合し、クラッチケースを貫通させて設けたパイプを上記シリンダ内に、該パイプを介した油圧の作用により可動クラッチ部材が受動爪に対する駆動爪の噛合いを解除する方向に摺動せしめられるように、開口させている。この噛合いクラッチは、可動クラッチ部材とスプリングとが直列配置されているため長尺のものとなり、また特に可動クラッチ部材が上記シリンダ内で回転することから使用に伴い上記シールリングに損傷を生じて耐久性に乏しいと認められる。
【0005】
この発明の主な目的とするところは、スプリングの作用によって入れられ油圧の作用によって切られるタイプの前輪駆動クラッチであって、部品点数が少なく安価に製作できると共にクラッチ軸線方向の長さが圧縮されてコンパクトに構成でき、しかも相対回転により油密性が損なわれる部材がなくて耐久性に富む前輪駆動クラッチを、提供するにある。
【0006】
付随する目的は、組立てを容易に行える前輪駆動クラッチを提供するにある。
【0007】
【発明の要約】
この発明は、左右後輪用の左右のブレーキ(28)を備えた後輪駆動系を有するトラクタにおいて、後輪駆動系の中途から分岐させた前輪駆動系中に設けられた前輪駆動クラッチ(38)であって、前輪に伝動する伝動軸(36)上に遊嵌設置した駆動歯車(37)に一体形成された駆動爪(37a)と、上記伝動軸(36)上に該伝動軸(36)に対し相対回転不能且つ摺動可能に設置した可動クラッチ部材(52)に形成され、上記駆動爪(37a)に対し係脱可能な受動爪(52a)と、上記伝動軸(36)の軸線方向に沿わせ上記可動クラッチ部材(52)に形成した穴(52b)内に臨んで該可動クラッチ部材(52)に当接し、上記した駆動爪(37a)と受動爪(52a)とが噛合う方向に可動クラッチ部材(52)を移動付勢するスプリング(54;54A)と、上記した駆動歯車(37)の駆動爪(37a)の内側、及び該可動クラッチ部材(52)の受動爪(52a)の内側に構成した環状段部(52c)に内嵌され、上記伝動軸(36)上に固定設置したシリンダ部材(55)と、このシリンダ部材(55)に嵌合され、上記可動クラッチ部材(52)に対し、上記受動爪(52a)が上記駆動爪(37a)との噛合いを解除する方向に該クラッチ部材(52)を摺動させるように当接させてあるピストン(57)と、上記伝動軸(36)に穿設され上記シリンダ部材(55)内に導かれていて、上記可動クラッチ部材(52)を上記方向に摺動させる油圧を、上記ピストン(57)に対し作用させうる油通路(60)とから構成し、該ピストン(57)は、上記可動クラッチ部材(52)の中途に形成した環状段部(52c)に対し、受動爪(52a)が駆動爪(37a)と噛合いした状態で接当し、該噛合い状態から解除する際に、該ピストン(57)が可動クラッチ部材(52)の環状段部(52c)を押して摺動させるように構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明は、バネの付勢力より、シリンダを介して係合を生じさせることで入れられ、油圧により該シリンダを摺動させることで切られる構成の前輪駆動クラッチは、クラッチケース内に、複数枚の摩擦板群とシリンダと皿バネとが直列に配置されているため、極めて長尺のものとなっており、また複数枚の摩擦板を有することから部品点数が多く高価につくものとなっていたが、本発明の如く、可動クラッチ部材(52)に環状段部(52c)を構成して、ピストン(57)を嵌装配置した構成とすることにより、これらの不具合を解消することが出来たものである。
即ち、この発明の前輪駆動クラッチは上記スプリング(54;54A)による可動クラッチ部材(52)の移動付勢によって受動爪(52a)を駆動爪(37a)と噛合わせ、上記ピストン(57)に対する油圧の作用による可動クラッチ部材(52)の摺動によって駆動爪(37a)に対する受動爪(52a)の噛合いを解除するものに、構成されているから、スプリングの作用によって入れられ油圧の作用によって切られるものとなっているが、上記のように駆動爪(37a)と受動爪(52a)との係脱により伝動を入断する噛合いクラッチに構成された前輪駆動クラッチは複数枚の摩擦板を設けるものではないことから部品点数が少なく、摩擦多板式のものと同等の操作力で油圧の給排機構を軽快に操作できるものでありながら安価に製作できるものとなっている。
そしてこのように複数枚の摩擦板を設けるものでないこと、またシリンダ部材(55)を駆動爪(37a)及び受動爪(52a)の放射方向の内側で伝動軸(36)上に固定設置していること、そしてスプリング(54;54A)を可動クラッチ部材(52)に形成した軸線方向の穴(52b)内に臨ませて設けていることによって、クラッチ軸線方向の長さが大きく圧縮されてコンパクトに構成できるものとなっている。
さらに伝動軸(36)上に固定設置したシリンダ部材(55)は伝動軸(36)上に相対回転不能に設けた可動クラッチ部材(52)と一体回転するものであり、該シリンダ部材に嵌合したピストン(57)は勿論、シリンダ部材(55)と共に回転して該シリンダ部材との間で相対回転を生じることがないから、相対回転によりシールリングないし油密性が損なわれる部材がなくて、耐久性に富むものとなっている。
【0009】
この発明の一実施態様では前記伝動軸(36)を、トラクタのミッションケース(48)の底壁に該底壁の開口(49)を閉鎖させて装着するクラッチケース(50)に前後方向に沿わせて支持させ、このクラッチケース(50)に上記開口(49)を介しミッションケース(48)内に臨み前記駆動歯車(37)に対し伝動する歯車(32,33)を支持する一体的な支持部分(50a)、及び該クラッチケース前端の開口(50b)を閉鎖すると共に前記伝動軸(36)の前端部を支持する蓋板(50c)を設け、クラッチケース前端の上記開口(50b)を、前記した駆動歯車(37)及び可動クラッチ部材(52)の通過を許容する寸法のものに形成する。
【0010】
この構造によれば駆動歯車(37)に対し伝動する歯車(32,33)を、ミッションケース(48)に支持させた別の支持部材に支持させる必要がなくミッションケースの底壁に対するクラッチケース(50)の装着によって同歯車を一挙に該ミッションケース内に組込めると共に、前輪駆動クラッチの組立てを極く容易に行える。すなわちクラッチケース(50)外で伝動軸(36)上に前輪駆動クラッチを組付け、支持部分(50a)に上記のように歯車(32,33)を支持させた状態でミッションケース(48)の底壁に装着したクラッチケース(50)内に伝動軸(36)をクラッチケース前端の開口(50b)から、駆動歯車(37)及び可動クラッチ部材(52)を該開口を通過させつつ組込んで、蓋板(50c)により該開口(50b)を閉鎖することによって、所要のように前輪駆動クラッチを組立てうるのである。
【0011】
【実施例】
図1は、この発明の一実施例を装備したトラクタの伝動機構を示している。エンジン1に走行系の主クラッチ2を介して接続された中空の駆動軸3が設けられており、この駆動軸3とその下方に設けた出力軸4間には、出力軸4を車両の前進方向と後進方向とに選択的に回転させる前後進切替え装置5が配設されている。この前後進切替え装置5は、駆動軸3上に設けられた前進用同期クラッチ6と後進用同期クラッチ7を有する。出力軸4は後方向きに延びており、該出力軸4と駆動軸3に同心配置した中空の伝動軸8との間には、伝動軸8を高低2段の速度で選択的に回転させる高低速切替え装置9が配設されている。この高低速切替え装置9は、出力軸4上に設けられた高速用油圧クラッチ10と低速用油圧クラッチ11を有する。
【0012】
伝動軸8は後方向きに延びており、該伝動軸8と出力軸4に同心配置した従動軸12との間には、従動軸12を4段の回転数で選択的に回転させる機械式変速装置13が配設されている。この機械式変速装置13は、伝動軸8上に設けられた2個の複式同期クラッチ14,15を有する。従動軸12とその後方に同心配置したプロペラ軸16の間には、プロペラ軸16を4段の回転数で選択的に回転させる機械式変速装置17が配設されている。この機械式変速装置17は従動軸12により回転駆動される、伝動軸8と同心配置の中空のカウンタ軸18、及び歯車減速機構19によりカウンタ軸18に接続された変速用歯車を含む。プロペラ軸16上には該変速歯車とカウンタ軸18上の変速歯車とに選択的に噛合わせうるシフト歯車20、及びカウンタ軸18上の他の変速歯車と噛合う歯車21をプロペラ軸16に結合する位置と従動軸12とプロペラ軸16間を直結する位置とに選択的にシフトされる複式クラッチ22が、設けられている。
【0013】
プロペラ軸16は後端にベベルピニオン23を装備し、このベベルピニオン23は左右後輪24用の差動装置25の大径の入力傘歯車26と噛合わせある。差動装置25の左右の出力軸27には左右の後輪24を制動可能な左右のブレーキ28を配設してあり、また左右の該出力軸27は遊星歯車式の左右の減速装置29を介して左右の後輪車軸24aに対し接続されている。一側の出力軸27上には、差動装置25を選択的に非作動状態とするためのデフロッククラッチ30を設けてある。
【0014】
後輪駆動系が上記のように構成されているのに対し、該駆動系の変速最終部の軸である前記プロペラ軸16上には前輪駆動力取出し用の歯車31を固定設置してあり、この歯車31から前輪駆動系が導きだされている。この前輪駆動系は、上記歯車31に噛合わされた大径の歯車32及びそれと一体回転する小径の歯車33を支軸34上で遊転可能に支持し、また左右の前輪35に対し伝動する伝動軸36上に遊嵌設置した駆動歯車37を上記した小径の歯車33に対し噛合わせ、上記伝動軸36上にこの発明に係る前輪駆動クラッチ38を設けてあるものに、構成されている。伝動軸36は前後に長い伝動軸39へと接続されており、この伝動軸39の前端に、ベベルピニオン40を備えた伝動軸41が接続されている。ベベルピニオン40は左右前輪35用の差動装置42の大径の入力傘歯車43と噛合わせてあり、差動装置42の左右の出力軸44が、遊星歯車式の左右の減速装置45を介して左右の前輪車軸35aに対し接続されている。一側の出力軸44上には、差動装置42を選択的に非作動状態とするためのデフロッククラッチ46を設けてある。
【0015】
図2,3について前輪駆動クラッチ38の構成を説明すると、これらの図において48は前記機械式変速装置13,17(図1)を収容するミッションケースであって、このミッションケース48の底壁には開口49を形成してある。この開口49は、ミッションケース48の底面にボルト90によって装着したクラッチケース50によって閉鎖されている。クラッチケース50は開口49を介してミッションケース48内に臨む一体的な支持部分50aを有し、該支持部分50aにおいて前記支軸34を回転不能に支持している。前記伝動軸36は、クラッチケース50とその前端開口50bを閉鎖する蓋板50cに回転自在に支持させ前後方向に沿わせて設けられており、前端を蓋板50cの前方に突出させてある。前記駆動歯車37はニードルベアリングを介し駆動軸36上に遊嵌設置され、前記のように支軸34上の小径の歯車33と噛合わされている。蓋板50cはクラッチケース50に対し、ボルト91によって取外し可能に装着されている。
【0016】
前輪駆動クラッチ38は駆動歯車37のボス部に駆動爪37aを一体形成すると共に、伝動軸36の大径スプライン部36aにスプライン嵌め51して該伝動軸36上に可動クラッチ部材52を相対回転不能且つ摺動可能に設置し、駆動爪37aに対し噛合わせ得る受動爪52aを、この可動クラッチ部材52に形成して、噛合いクラッチに構成されている。可動クラッチ部材52には駆動歯車37の反対側に開口する複数個(例えば5個)の穴52bを、伝動軸36の軸線方向に沿わせて形成してあり、伝動軸36上に位置を規制して設けたリング53に基端を受けさせた複数個のコイルバネ54を、穴52b内に臨ませ先端で可動クラッチ部材52に対し当接させて、駆動爪37aに対し受動爪52aが、図2の上側及び図3に示すように噛合う方向に可動クラッチ部材52を摺動付勢している。
【0017】
伝動軸36の大径スプライン部36aの後端側で該伝動軸36上には駆動爪37a及び受動爪52aの放射方向の内側に位置させたシリンダ部材55を、キー56により固定設置してある。そして前端を開放した該シリンダ部材55にはピストン57を、外周面及び内周面に装備させたシールリング58,59により油密にシールして嵌合してある。このピストン57は可動クラッチ部材52の中途に形成した環状段部52cに対し、図2の下側に示すように受動爪52aが駆動爪37aとの噛合いを解除する方向で可動クラッチ部材52を摺動させうるように、当接させてある。
【0018】
伝動軸36には油通路60を、該伝動軸36後端側でクラッチケース50内に形成した油室61に基端で開口させると共にシリンダ部材55の油路穴55aを介し該シリンダ部材55内に先端側を開口させて、形成してある。この油通路60を介しての油圧の作用によってピストン57は前方向きに摺動せしめられ、それによって受動爪52aが駆動爪37aとの噛合いを解除する。クラッチケース50には、上記油室61に連通する油通路62を形成すると共に該油通路62に対し油配管を接続するための管継手63を装着してある。なおクラッチケース50の底壁には、潤滑油を出し入れするための開口を閉鎖する螺栓64を装備させてある。
【0019】
クラッチケース50はその支持部分50aに支軸34及び歯車32,33を支持させた状態で、該支持部分50aを前記開口49からミッションケース50内に臨ませ、ミッションケース48の底壁に装着されることとされている。伝動軸36の後端側を支持するベアリング65はそれ以前にクラッチケース50に装備させておくこととされ、次に駆動歯車37、可動クラッチ部材52及びコイルバネ54等を装備させた伝動軸36を、ベアリング66によって蓋板50cに支持させた状態で、前記開口50bを介しクラッチケース50内に組込み、蓋板50cをクラッチケース50に装着して組立てを行うこととされている。すなわちクラッチケース50前端の開口50bは駆動歯車37及び可動クラッチ部材52の外径よりも若干大きくされ、該駆動歯車37及び可動クラッチ部材52の通過を許容するものとされており、これによって伝動軸36上の諸部材を外部組立て可能とされているのである。なお勿論、前輪駆動クラッチ38の点検・保守も、ボルト91を抜取り蓋板50cを外し前輪駆動クラッチ38を装備する伝動軸36を該蓋板50cごとクラッチケース50外に取出すことによって、極く容易に行える。
【0020】
図4は前輪駆動クラッチ38の切り機構を模式的に示しており、リリーフ弁68にて油圧を設定される油圧ポンプ69の吐出回路70と前記油通路60を含み前記シリンダ部材55内に通じる作用回路71との間には、電磁方向切換弁72を設けてある。この電磁方向切換弁72は、図示のクラッチ入れ位置Nでは作用回路71を油タンクへと接続してコイルバネ54の力で前輪駆動クラッチ38を入れ、ソレノイド72aの励磁によって移されるクラッチ切り位置Cでは吐出回路70を作用回路71へと接続しピストン57に対し油圧を作用させて前輪駆動クラッチ38を切る。ソレノイド72aに接続してコントローラ73を設けてあり、このコントローラ73の一次側にはまず、四輪駆動位置4WDと二輪駆動位置2WDとに操作される前輪駆動レバー74により同レバー74の二輪駆動位置2WDでオンせしめられるスイッチ75が、接続されている。コントローラ73はスイッチ75のオンによりソレノイド72aを励磁させ、前輪駆動クラッチ38を切ってトラクタを二輪駆動状態とする。
【0021】
コントローラ73の一次側にはまた、前記した左右後輪用のブレーキ28(図1)を操作するための左右のブレーキペダル76L,76Rにより、同ペダル76L,76Rがブレーキ切り位置OFFからブレーキ入れ位置ONに操作されるとそれぞれオンせしめられるスイッチ77L,77Rが接続されている。コントローラ73はスイッチ75のオン状態或いはオフ状態において、何れか一方のスイッチ77L又は77Rがオンされるとそのままソレノイド72aを解磁状態或いは励磁状態に維持して四輪駆動状態或いは二輪駆動状態を維持させるが、両スイッチ77L,77Rがオンせしめられるとスイッチ75がオン状態或いはオフ状態にあろうと必ずソレノイド72aを解磁させ、トラクタを四輪駆動状態とするものに構成されている。すなわち左右のブレーキ28を制動作動させてトラクタを制動する場合にはその制動力が必ず左右の前輪にも及ぶこととして、車両の空走距離を短くするように図っているのである。
【0022】
図示のトラクタのPTO系駆動機構を図1について説明しておくと、エンジン1に対しPTO系の主クラッチ79を介して接続された駆動軸80を、中空の前記駆動軸3、伝動軸8及びカウンタ軸18を貫通させて設けてある。駆動軸80の後端には伝動軸81を連結してあり、この伝動軸81とその下方に配置され機体外に延出させてあるPTO軸82との間は、歯車減速機構83によって接続されている。
【0023】
図5は他の実施例を示すものであって、本実施例では可動クラッチ部材52に伝動軸36と同心的な環状の穴52bを形成し、前記コイルバネ54に代えて複数枚の皿バネ54Aを、前記同様にリング53に基端を受けさせ上記した環状の穴52b内に臨ませて可動クラッチ部材52に作用させている。他の構成は、前述実施例におけるのと変わりない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例を装備したトラクタの伝動機構を示す機構図である。
【図2】 上記実施例の縦断側面図である。
【図3】 図2の一部を拡大して示す拡大縦断側面図である。
【図4】 前輪駆動クラッチの切り機構を模式的に示す機構図である。
【図5】 この発明の他の実施例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
18 プロペラ軸
24 後輪
28 ブレーキ
31 歯車
32,33 歯車
34 支軸
35 前輪
36 伝動軸
37 駆動歯車
37a 駆動爪
38 前輪駆動クラッチ
48 ミッションケース
49 開口
50 クラッチケース
50a 支持部分
50b 開口
50c 蓋板
52 可動クラッチ部材
52a 受動爪
52b 穴
53 リング
54 コイルバネ
54A 皿バネ
55 シリンダ部材
55a 油路穴
56 キー
57 ピストン
60 油通路
Claims (2)
- 左右後輪用の左右のブレーキ(28)を備えた後輪駆動系を有するトラクタにおいて、後輪駆動系の中途から分岐させた前輪駆動系中に設けられた前輪駆動クラッチ(38)であって、前輪に伝動する伝動軸(36)上に遊嵌設置した駆動歯車(37)に一体形成された駆動爪(37a)と、上記伝動軸(36)上に該伝動軸(36)に対し相対回転不能且つ摺動可能に設置した可動クラッチ部材(52)に形成され、上記駆動爪(37a)に対し係脱可能な受動爪(52a)と、上記伝動軸(36)の軸線方向に沿わせ上記可動クラッチ部材(52)に形成した穴(52b)内に臨んで該可動クラッチ部材(52)に当接し、上記した駆動爪(37a)と受動爪(52a)とが噛合う方向に可動クラッチ部材(52)を移動付勢するスプリング(54;54A)と、上記した駆動歯車(37)の駆動爪(37a)の内側、及び該可動クラッチ部材(52)の受動爪(52a)の内側に構成した環状段部(52c)に内嵌され、上記伝動軸(36)上に固定設置したシリンダ部材(55)と、このシリンダ部材(55)に嵌合され、上記可動クラッチ部材(52)に対し、上記受動爪(52a)が上記駆動爪(37a)との噛合いを解除する方向に該クラッチ部材(52)を摺動させるように当接させてあるピストン(57)と、上記伝動軸(36)に穿設され上記シリンダ部材(55)内に導かれていて、上記可動クラッチ部材(52)を上記方向に摺動させる油圧を、上記ピストン(57)に対し作用させうる油通路(60)とから構成し、該ピストン(57)は、上記可動クラッチ部材(52)の中途に形成した環状段部(52c)に対し、受動爪(52a)が駆動爪(37a)と噛合いした状態で接当し、該噛合い状態から解除する際に、該ピストン(57)が可動クラッチ部材(52)の環状段部(52c)を押して摺動させるように構成したことを特徴とするトラクタの前輪駆動クラッチ。
- 前記伝動軸(36)を、トラクタのミッションケース(48)の底壁に、該底壁の開口(49)を閉鎖させて装着するクラッチケース(50)に前後方向に沿わせて支持させ、このクラッチケース(50)に上記開口(49)を介しミッションケース(48)内に臨み、前記駆動歯車(37)に対し伝動する歯車(32,33)を支持する一体的な支持部分(50a)、及び該クラッチケース前端の開口(50b)を閉鎖すると共に前記伝動軸(36)の前端部を支持する蓋板(50c)を設け、クラッチケース前端の上記開口(50b)を、前記した駆動歯車(37)及び可動クラッチ部材(52)の通過を許容する寸法のものに形成してある請求項1のトラクタの前輪駆動クラッチ。
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