JP4360603B2 - サーマルヘッド及びそれを用いたサーマルプリンタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱素子の発する熱を利用して感熱紙、記録紙等に印画を形成するサーマルヘッド及びサーマルプリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ファクシミリやビデオプリンタ等の記録デバイスとしてサーマルヘッドが用いられている。
【0003】
かかる従来のサーマルヘッドとしては、例えば図5に示す如く、複数の発熱素子23及び該発熱素子23に電気的に接続される接続パッド25を有するヘッド基板と、前記接続パッド25に導電材26を介して電気的に接続される配線導体29を有した外部配線板28と、を備えた構造のものが知られており、サーマルヘッド上に配設されるプラテンローラを用いて感熱紙やインクリボン、記録紙等の記録媒体を発熱素子23上に搬送しながら、外部からの印画信号に基づいて複数の発熱素子23を個々に選択的に発熱させるとともに、該発熱した熱を発熱素子23上の記録媒体に伝導させ、該伝導させた熱によって感熱紙や記録紙に所定の印画が形成される。
【0004】
ところで、FAX用サーマルヘッドをはじめ種々のサーマルヘッドにおいて、サーマルヘッドの低コスト化、小型化が一層求められるようになっており、それに伴い、接続パッド25の面積をより一層小さくすることが求められている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−230224号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、接続パッド25の面積を小さくすると、接続パッド25と導電材26との機械的強度が低下し、取り扱い時にわずかな力が加わっただけで導電材26の一部が剥離することがある。それ故、電気的接続の信頼性が低下して、サーマルヘッドの動作に異常を生じるという問題が発生する。すなわち、このようなサーマルヘッドの取り扱い時には、ヘッド基板21と外部配線板28とを接続する導電材26に機械的応力が加わらないように注意する必要があり、サーマルヘッドを機器に組み込む際の作業性が悪くなるという問題点を誘発する。
【0007】
上述した問題は、線膨張係数が互いに異なるヘッド基板と外部配線板とを半田接合によって電気的に接続する場合、両者の線膨張係数の差に起因した熱応力によって導電材26である半田と接続パッド25との電気的接続が低下し易くなるため、特に問題であった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、ヘッド基板と外部配線板との接続を確実かつ強固とし、信頼性の高いサーマルヘッド及びサーマルプリンタを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のサーマルヘッドは、配列されている複数の発熱素子、及び該複数の発熱素子に対して電気的に接続されている複数の接続パッドを有するヘッド基板と、前記複数の接続パッドに対して導電材を介して接続されている複数の配線パッドを有する外部配線板とを備えており、前記複数の接続パッドは、前記ヘッド基板の1つの辺に沿って配列されているとともに、厚み方向に貫通し、かつ前記ヘッド基板の前記1つの辺に略平行な溝を備えており、該溝の内部には、前記導電材の一部が充填されていることを特徴とするものである。
【0011】
更に本発明のサーマルヘッドにおいて、前記複数の接続パッドのそれぞれは、前記溝を複数備えていることが好ましい。
【0012】
そして、本発明のサーマルプリンタは、上述のサーマルヘッドと、該サーマルヘッドを駆動する駆動手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の一形態に係るサーマルヘッドの断面図であり、図2は図1のサーマルヘッドを構成するヘッド基板の平面図(保護膜不図示)であり、同図に示したサーマルヘッドは、大略、ヘッド基板1と外部配線板8とで構成され、両者を導電材6で電気的に接続している。
【0018】
前記ヘッド基板1は、アルミナセラミックスや単結晶シリコン、Fe−Ni合金等の種々の材料により長方形状を成すように形成されたベースプレート1aの上面にグレーズ層2や発熱素子3、回路導体4、接続パッド5、保護膜7等を有しており、その上面でグレーズ層2や発熱素子3、回路導体4、接続パッド5、保護膜7等を支持する支持母材として機能する。
【0019】
前記ヘッド基板1を構成するベースプレート1aは、アルミナセラミックスから成る場合、例えばアルミナ、シリカ、マグネシア等のセラミックス原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加、混合して泥漿状になすとともに、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによってセラミックグリーンシートを得、しかる後、このセラミックグリーンシートを長方形状に打ち抜いた上、高温で焼成することによって製造される。
【0020】
また、前記ベースプレート1aの上面には、ガラス製のグレーズ層2が被着されている。
【0021】
前記グレーズ層2は、ベースプレート1aの上面全体にわたり略均一厚みに被着されるベース部2b上に基板1の一方長辺に沿って帯状に配される突出部2aを部分的に形成した構造をしている。
【0022】
前記グレーズ層2は、ベース部2bの厚みが50μm〜250μmに、突出部2aの頂部の厚みが20μm〜80μmにそれぞれ設定されており、該突出部2aの頂部付近には複数の発熱素子3が被着されている。
【0023】
このグレーズ層2は、例えば、熱伝導率が0.7W/m・K〜1.0W/m・Kのガラスにより形成されているため、その内部に発熱素子3の熱の一部を蓄積してサーマルヘッドの熱応答性を良好に維持する作用、具体的には、発熱素子3の温度を短時間で印画に必要な所定の温度まで上昇させる蓄熱層としての作用を為す。
【0024】
尚、前記グレーズ層2は、ガラス粉末に適当な有機溶剤を添加、混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板1の上面全体に印刷、塗布するとともに、これを従来周知のエッチング法やサンドブラスト法によって所定パターンに加工し、これを高温(850℃〜950℃)で焼き付けることによって形成される。
【0025】
また前記発熱素子3は、例えば600dpi(dot per inch)の密度で直線状に配列されており、各々がTaSiO系、TiSiO系、TiCSiO系等の電気抵抗材料から成っているため、その両端に接続される回路導体4を介して外部からの電力が供給されるとジュール発熱し、感熱紙に印画を形成したり、あるいは、インクリボンのインクを溶融したりするのに必要な温度、例えば150℃〜400℃の温度に発熱する。
【0026】
また、前記各発熱素子3の両端に接続される回路導体4は、発熱素子3に所定の電力を供給する給電配線として機能するものであり、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属材料により所定パターンに形成され、その一端を基板1の他方長辺の近傍(基板の端部より100μm〜300μm離間した位置)まで導出させて該導出部を接続パッド5と成している。
【0027】
前記複数の接続パッド5は、その上面に半田やボンディングワイヤ等の導電材6(本実施形態においては半田)を介して外部配線板8の配線導体9と電気的に接続させるためのものであり、基板1の他方長辺に沿って配列されている。
【0028】
このような接続パッド5は、ベースとなる回路導体4の導出部に例えばNi層及びAu層を順次被着させた構造をしており、各々の接続パッド5には基板1の他方長辺と略平行な溝5aが単数又は複数形成されている(本実施形態においては単数)。
【0029】
前記溝5aは、その幅が5μm〜150μmに、深さが2.5μm〜5.0μmにそれぞれ設定されており、溝5aの底面よりグレーズ層2の一部が露出するように形成され、溝5aの内部に導電材6の一部を充填して接続パッド5と導電材6との接合強度を高めている。
【0030】
尚、上述の発熱素子3及び回路導体4は、従来周知の薄膜形成技術、例えばTaSiO系等の抵抗膜及びAl等の金属膜を従来周知のスパッタリング法や蒸着法によって順次所定厚み(抵抗膜0.015μm〜0.02μm:金属膜0.9μm〜1.2μm)に積層するとともに、該積層体を従来周知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を採用することによって所定パターンに形成され、また前記接続パッド5は、回路導体4の所定領域に例えば従来周知の無電解メッキ法を採用することによってNi層及びAu層を順次積層するとともに、該積層体に従来周知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を採用することによって前記溝5aを設けることで形成される。
【0031】
そして、前記発熱素子3及び回路導体4の上面には保護膜7が被着されており、該保護膜7によって発熱素子3や回路導体4が共通に被覆されている。
【0032】
前記保護膜7は、窒化珪素(Si3N4)や酸化珪素(SiO2)、サイアロン(Si-Al-O-N)等の耐磨耗性に優れた無機質材料から成り、発熱素子3や回路導体4等を記録媒体の摺接による磨耗や大気中に含まれている水分等の接触による腐食から保護する作用を為す。
【0033】
尚、前記保護膜7は、従来周知の薄膜形成技術、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタリング等を採用し、窒化珪素(Si3N4)や酸化珪素(SiO2)、サイアロン(Si-Al-O-N)等の無機質材料を発熱素子3や回路導体4等の上面に5μm〜10μmの厚みに被着させることにより形成される。
【0034】
一方、前記ヘッド基板1に電気的に接続される外部配線板8は、例えば、銅やアルミニウム等の金属材料により形成された複数の配線導体9をポリイミド樹脂等の比較的軟らかい樹脂材料からなる一対のフィルムで挟持した構造をしており、一端側をヘッド基板1に、他端側を外部電気回路にそれぞれ接続することで外部電気回路から接続パッド5や回路導体4を介して発熱素子3に所定の電力を供給する作用を為している。
【0035】
かかる外部配線板8は、一端側の一方のフィルムに開口を設けて配線導体の一部を露出させて該露出部を配線パッド10に成し、かかる配線パッド10と前記接続パッド5とを導電材6を介して接合することにより、ヘッド基板1の接続パッド5と外部配線板8の配線パッド10とを個々に電気的に接続している。
【0036】
ここで、先に述べた如く、前記接続パッド5に溝5aを設け、該溝5aの内部に出来た領域に前記導電材6の一部を充填したことから、接続パッド5と導電材6との接続面積が広くなり、両者の接合強度を高くすることができる。従って、接続パッド5の面積を小さくすることによって生じる問題、すなわち、サーマルヘッドの取り扱い時に加わる機械的応力や熱応力によって導電材6が接続パッド5より剥離するといった問題を少なくすることができ、ヘッド基板1と外部配線板8との電気的信頼性を高く保つことが可能となる。
【0037】
尚、前記外部配線板8は、フレキシブル配線板から成る場合、例えばポリイミド樹脂からなるフィルム上に銅箔を貼着するとともに、該銅箔を従来周知のフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を採用することにより所定パターンに加工し、しかる後、該加工した銅箔をポリイミド樹脂からなるフィルムで被覆することによって製造される。
【0038】
また前記外部配線板8とヘッド基板1との接合は、導電材6が半田からなる場合、例えば、配線導体9の露出部に予め半田を設けた状態で、半田がヘッド基板1の接続パッド5上に位置するように外部配線板8の一端側をヘッド基板1に重畳させるとともに、該重畳部をヒーターバー等で圧接、加熱することによって行われる。また、導電材6がボンディングワイヤである場合、ヘッド基板1の接続パッド5と外部配線板8の配線導体9とを従来周知のワイヤボンディング法を採用することにより電気的に接続する。
【0039】
ここで、導電材6である半田を溝5aの内部に充填するには、半田を約230度の温度で10秒以上加熱すれば良い。このとき、前記溝5aの幅を、その底面側よりも開口部側で大きくなるように設定しておけば、溝5aの内部に導電材6が良好に入り込み易くなり、サーマルヘッドの生産性向上に供することができる。尚、溝5aの幅を底面側よりも開口部側で大きくするにはエッチング時間を通常よりも長くすればよい。
【0040】
そして、上述のようなサーマルヘッドが組み込まれるサーマルプリンタには、図3に示す如く、サーマルヘッドTを駆動する駆動手段Cを備えており、記録媒体をサーマルヘッドTの発熱素子3上に搬送する搬送手段として、プラテンローラ11や搬送ローラ12a,12b,12c,12d等が配設されている。
【0041】
前記駆動手段Cは、シフトレジスタやラッチ、スイッチングトランジスタ等を高密度に集積したドライバーICや該ドライバーICにストローブ信号やラッチ信号等の制御信号を供給する制御回路等を備えており、制御回路からの制御信号に基づいてドライバーIC内のスイッチングトランジスタのオン・オフを切り換えることにより、発熱素子3の発熱を制御している。
【0042】
一方、搬送手段としてのプラテンローラ11は、SUS等の金属から成る軸芯の外周にブタジエンゴム等を3mm〜15mm程度の厚みに巻きつけた円柱状の部材であり、サーマルヘッドTの発熱素子3上に回転可能に支持され、記録媒体を発熱素子3に対して押圧しつつ記録媒体を発熱素子3の配列と直交する方向(図中の矢印方向)に搬送する。
【0043】
また前記搬送ローラ12a,12b,12c,12dは、その外周部が金属やゴム等によって形成されており、サーマルヘッドTに対し記録媒体の搬送方向上流側と下流側に分かれて配設され、これらの搬送ローラ12a,12b,12c,12dと前述のプラテンローラ11とで記録媒体の走行を支持している。
【0044】
そして、これと同時に多数の発熱素子3を駆動手段Cの駆動に伴い選択的にジュール発熱させ、これらの熱を記録媒体に伝導させることによって所定の印画が形成される。
【0045】
尚、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良が可能である。
【0046】
例えば、上述の実施形態においては、前記グレーズ層2をベースプレート1aの上面全体に被着させるようにしたが、これに代えて、断面山状を成す帯状のグレーズ層をベースプレート1aの上面に部分的に被着させるようにしても良い。また上述の実施形態におけるグレーズ層2の突出部2aを設けず、ベースプレート1aの全面にわたり略均一な厚みのグレーズ層を形成するようにしても構わない。
【0047】
また上述の実施形態において、前記溝5’aを、図4に示す如く、少なくとも接続パッド5のエッジ近傍(エッジより100μmまでの領域内)に設けるようにしておけば、導電材6との密着強度が不足しがちな接続パッド5のエッジ付近の強度を確実に高くすることができ、サーマルヘッドの信頼性をより向上させることが可能となる。
【0048】
更に、上述の実施形態において、前記接続パッド5を構成するNi層やAu層等の無電解メッキ層を溝5の内面まで導出しておけば、溝5の内部に半田などの導電材6を充填し易くなるとともに、溝5の内面と導電材6との密着性をより高めることができ、サーマルヘッドの生産性、信頼性をより向上させることが可能となる。
【0049】
また更に上述の実施形態において、前記外部配線板8の配線パッド10にも、接続パッド5と同様に溝を形成し、該溝内に導電材6を充填するようにしておけば、導電材6と配線パッド10との接合強度を高めることができるという利点もある。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、ヘッド基板上の接続パッドに溝を設け、該溝の内部に、接続パッドと配線パッドとを電気的に接続する導電材の一部を充填したことから、接続パッドと導電材との接触面積を広くすることができ、両者の接合強度を高くすることができる。従って、接続パッドの面積を小さくすることによって生じる問題、すなわち、サーマルヘッドの取り扱い時に加わる機械的応力や熱応力によって導電材が接続パッドより剥離するといった問題が生じるのを少なくすることができ、ヘッド基板と外部配線板との電気的信頼性を高く保つことが可能となる。またこれによってサーマルプリンタの信頼性も高くすることができる。
【0051】
かかる作用効果は前記溝を各接続パッドに複数設けることにより、更に高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるサーマルヘッドの断面図である。
【図2】図1のサーマルヘッドを構成するヘッド基板の平面図である(保護膜不図示)。
【図3】図1のサーマルヘッドを組み込んで構成したサーマルプリンタの概略側面図である。
【図4】本発明の他の実施形態にかかるサーマルヘッドの断面図である。
【図5】従来のサーマルヘッドの断面図である。
【符号の説明】
1・・・基板
2・・・グレーズ層
3・・・発熱素子
4・・・回路導体
5・・・接続パッド
5a,5’a・・・溝
6・・・導電材
7・・・保護膜
8・・・外部配線板
9・・・配線導体
10・・・配線パッド
11・・・プラテンローラ
12a,12b,12c,12d・・・搬送ローラ
Claims (3)
- 配列されている複数の発熱素子、及び該複数の発熱素子に対して電気的に接続されている複数の接続パッドを有するヘッド基板と、
前記複数の接続パッドに対して導電材を介して接続されている複数の配線パッドを有する外部配線板とを備えており、
前記複数の接続パッドは、前記ヘッド基板の1つの辺に沿って配列されているとともに、厚み方向に貫通し、かつ前記ヘッド基板の前記1つの辺に略平行な溝を備えており、
該溝の内部には、前記導電材の一部が充填されていることを特徴とするサーマルヘッド。 - 前記複数の接続パッドのそれぞれは、前記溝を複数備えていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
- 請求項1または請求項2に記載のサーマルヘッドと、該サーマルヘッドを駆動する駆動手段とを備えていることを特徴とするサーマルプリンタ。
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