JP4360043B2 - 粉末成形体の切断方法及び切断装置 - Google Patents

粉末成形体の切断方法及び切断装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼結前の粉末成形体を切断する切断方法及び切断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子回路等のセラミックコンデンサやチップインダクタの生産に用いられるチップ状の焼結体は、例えば以下のように量産されていた。
まず、金属粉末と有機系のバインダとを混練してシート状に成形する。次いで、このシート状の成形体を脱バインダした後、焼結する。しかる後、このシート状の焼結体を格子状に切断し、チップ状の焼結体を多数個取りする。
【0003】
ところが、焼結体は高硬度の脆性材であるから、カッタ寿命の短命化や切断時の割れを回避し得ない。
そこで、かかる不具合を回避すべく、近年、シート状の粉末成形体を焼結前に予めチップ状に切断しておき、これらチップ状の粉末成形体を脱バインダ後に焼結する方法が実施されている。
【0004】
図5〜図8は、この方法の実施に使用される切断装置の一例を示している。
この切断装置1は、回転自在に支持された円板状のカッタ2と、このカッタ2の側方から冷媒Cを噴射するノズル3,4と、切削点に向けてカッタ2の前方又は後方から冷媒Cを噴射するノズル5とを備えている。
このカッタ2は、メタルボンド又はレジンボンドと、ダイヤモンド等の超砥粒とからなる砥粒層を備えたものである。
【0005】
図6は、カッタ2とノズル3,4,5の位置関係を示す平面図、図7はカッタ2とノズル3,4との位置関係を示す正面図である。
ここで、ノズル3,4は、カッタ2の冷却及び粉末成形体6の洗浄を目的とするものであり、また、ノズル5は、カッタ2と粉末成形体6との接点、すなわち、切削点の冷却を目的とするものである。
【0006】
切断に際し、シート状の粉末成形体6は、シート状の接着体に張り合わされた状態で、図示せぬテーブル上に載置される。
そして、テーブルを駆動して粉末成形体6をカッタ2に向けて移動させ、周方向に回転するカッタ2で粉末形成体6に格子状の切り込みを入れる。この切断時、ノズル3,4,5からは冷媒Cが供給される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、切断に供されるシート状の粉末成形体6は、切断前に脱バインダ処理が何ら施されていないものであるから、粉末成形体6及び切断時に飛散する切屑7のいずれにも、粘着性のあるバインダが含まれていることになる。
このため、ノズル5からの噴射冷媒Cによって、粉末成形体6の送り方向前方に飛散した切屑7は、図8に示すように、粉末成形体6に付着してしまう。
【0008】
特に、粉末成形体6に格子状の切り込みを入れる、いわゆるダイシングカットにおいては、縦溝8の切断後、横溝9を切断した際に、送り方向前方に飛ばされた切屑7が縦溝8内に溜まり易く、切屑付着の傾向が顕著に現れる。
そして、これら粉末成形体6及び切屑7は、いずれもバインダを含むものであるから、粉末成形体6への切屑7の付着力は強固であり、エアー等を吹き付けても切屑7を吹き飛ばすことができない。このため、そのまま焼結すると不良品となって、歩留まりの低下を招く。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、焼結前の粉末成形体においては、切断時の温度条件が厳しくないことに着目して冷却条件を見直し、歩留まり向上を図ることのできる粉末成形体の切断方法及び切断装置の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明は以下の手段を採用した。
すなわち、本発明に係る切断方法は、超砥粒層を備えたカッタを使用して、冷媒を供給しつつ前記カッタによって、電子回路のセラミックコンデンサまたはチップインダクタの生産に用いられるチップ状の焼結体の焼結前の粉末成形体を格子状に切断する方法であって、回転自在に支持された円板状の前記カッタを回転させ、前記カッタの下部両面側にのみ配設された冷媒供給手段から冷媒を噴射し、しかる後、前記粉末成形体を前記カッタに向けて送ることにより前記粉末成形体の切断を行うとともに、切断時における冷媒供給を前記カッタの側方からのみ行うことを特徴とするものである。
【0011】
ここで、前記冷媒の供給角度は、前記粉末成形体を載置するテーブルに平行な面内では、カッタ側面に直交する方向を0゜とした場合に−80゜〜80゜の範囲に設定すると共に、送り方向に垂直な面内では、カッタ側面に直交する方向を0゜として下向きを正とした場合に−30゜〜90゜の範囲に設定し、また、前記冷媒の供給量は、0.5〜5(L/min)に設定し、さらに、前記冷媒の供給範囲は、前記カッタを回転自在に保持する保持部材よりも送り方向内側に設定しておくことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る切断装置は、超砥粒層を備えたカッタを使用して、冷媒供給手段から冷媒を供給しつつ前記カッタによって、電子回路のセラミックコンデンサまたはチップインダクタの生産に用いられるチップ状の焼結体の焼結前の粉末成形体を格子状に切断する装置であって、前記粉末成形体をテーブル上に載置しつつ搬送する搬送機構と、回転自在に支持された円板状の前記カッタと、前記カッタの下部両面側にのみ配設された前記冷媒供給手段とを備え、前記カッタを回転させ、前記粉末成形体を前記搬送機構を用いて前記カッタに向けて送ることにより前記粉末成形体の切断を行うとともに、前記冷媒供給手段は、前記カッタの側方からのみ冷媒を供給することを特徴とするものである。
【0013】
以上の構成によれば、切断時にはカッタの側方からのみ冷媒が供給されるので、粉末成形体から飛散した切屑を送り方向に導くことなく除去し得るようになり、粉末成形体への切屑の付着を有効に防止できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施の形態による粉末成形体の切断装置を示す側面図、図2は同切断装置の平面図、図3は同切断装置の正面図であり、これらの図において、符号10は粉末成形体の切断装置、11はシート状の粉末成形体、12はカッタ、13,14はノズルを示している。
【0015】
粉末成形体の切断装置10は、シート状の接着体が下面に貼り付けられた粉末成形体11をテーブル上に載置しつつ搬送する搬送機構と、回転自在に支持された円板状のカッタ12と、このカッタ12の両側方に、カッタ側面に対して所定の間隔をおいて配設されて冷媒供給源からの冷媒Cをカッタ側面に向けて噴射するノズル(冷媒供給手段)13,14とを備えている。
カッタ12の粉末成形体送り方向前方又は後方にノズルは配設されていない。
【0016】
ここで、カッタ12は、メタルボンド又はレジンボンドと、例えばダイヤモンド等の超砥粒とからなる砥粒層を備えて構成されたカッタである。また、カッタ12は、その両側から小径かつ円板状の保持部材15によって回転自在に保持されており、図1の矢印A方向、あるいは矢印B方向の何れの方向にも選択的に回転することができる。
ノズル13,14は、上記の通り、カッタ12の下部両面側にのみ、カッタ側面に対して所定の間隔をおいて配設されている。
【0017】
ノズル13,14からの冷媒噴射角度は、粉末成形体11を載置するテーブルに平行な面内では、カッタ側面に直交する方向(図2の矢印X)を0゜とした場合に−80゜〜80゜の範囲に設定し、送り方向に垂直な面内では、カッタ側面に直交する方向(図3の)を0゜として下向きを正とした場合に−30゜〜90゜の範囲に設定されている。
この範囲から逸脱すると、切断部に供給される冷却水が著しく減少し、洗浄,冷却効果が低下するからである。
【0018】
また、ノズル13,14からの冷媒Cの噴射量は、0.5〜5(L/min)に設定されている。
噴射量が0.5(L/min)よりも少ないと、粉末成形体11の切屑(ミスト)が残留し、5(L/min)よりも多いと、シート状の粉末成形体11から切り出されたチップ状の粉末成形体11が飛散するからである。
【0019】
さらに、ノズル13、14からの冷媒Cの噴射範囲は、切り込み量とカッタ外径とから算出される幾何学的干渉長さに設定されており、本実施の形態では、保持部材15の外径よりも送り方向内側となるように設定されている。
この範囲から逸脱すると、カッタと粉末成形体とが干渉する位置に冷却水がかからなくなるからである。
【0020】
次に、上記構成からなる切断装置10を用いた粉末成形体の切断方法について説明する。
まず、カッタ12を回転させ、ノズル13,14から冷媒Cを噴射する。
このとき、カッタ12の回転方向は、ダウンカットの場合には、図1中の矢印A方向に設定され、アップカットの場合には、矢印B方向に設定される。
【0021】
しかる後、粉末成形体11を図示せぬ搬送機構を用いてカッタ12に向けて一定速度で送る。
すると、ノズル13,14によってカッタ12の側方のみからカッタ側面に冷媒Cが噴射された状態で、カッタ12による粉末成形体11の切断が行われる。
【0022】
したがって、粉末成形体11から飛散した切屑が送り方向前方に案内されることなく除去され、粉末成形体11への切屑の付着を有効に防止しつつ、切断が行われる。
このとき、焼結前の粉末成形体11は軟らかいため、カッタ12の冷却はノズル13,14のみで十分であり、別ノズルを用いて切削点を集中的に冷却せずとも、カッタ寿命が短命化する虞はない。
【0023】
逆に、切削点を冷却すべく、カッタ12の前方又は後方にノズルを配置し、冷媒Cを粉末成形体11の送り方向に沿って噴射すると、切削時に飛散した切屑を粉末成形体11に付着させてしまう。
これに対し、本実施の形態による切断装置10では、粉末成形体11の送り方向に沿う方向には冷媒Cを噴射しないので、切屑の付着を有効に防止できる。
【0024】
図4は、ノズル13,14からの冷媒Cの噴射角度,噴射量,噴射範囲を上記の如く設定して切断した粉末成形体11の模式図である。
この図に示すように、粉末成形体11を格子状に切断した際の縦溝16と横溝17には切屑が溜まっておらず、粉末成形体11への切屑付着は殆どない。
以上説明したように、本実施の形態によれば、粉末成形体11を焼結前に切断する際の切屑付着と、粉末成形体11を焼結後に切断する際の割れとを同時に回避したことにより、歩留まりの大幅な向上を図ることができる。
【0025】
[第1実施例]
次に、本発明の第1実施例を説明する。
本実施例において、切断するワーク(焼結前の粉末成形体),使用機械,使用カッタ,及び切断条件は以下に示す設定とした。
また、比較例においても、切断装置が図5及び図6に示す構成である以外の点については、本実施例と同じ条件で切断した。
【0026】
ワーク :アルミナグリーンシート(110mm×110mm×1mm)
使用機械 :ダイサー
使用カッタ :電鋳ブレード(1A8 Type)
主軸回転数 :30000(l/min)
送り速度 :100(mm/sec)
ワーク固定 :U.V.テープ
カット方式 :ダウンカット
【0027】
上記条件にてアルミナグリーンシートを切断した後、切断されたチップ状のアルミナグリーンシート(以下、「チップ」という。)を焼結し、その良品率を比較例と比較すると、表1の通りになる。
【表1】
Figure 0004360043
【0028】
なお、表1中、「チップ飛び」とは、チップがU.V.テープから飛ぶ現象、「コーナ欠け」とは、チップのコーナ部に欠けが生じる現象、「良品率」とは、アルミナグリーンシートから切り出した4000個のチップのうち、良品として製品化できるチップの割合、すなわち、歩留まりをいう。
この表1に示すように、本発明の第1実施例では、良品率が比較例の81%に対して98%に上昇しており、歩留まりが大幅に向上した。
【0029】
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例を説明する。
本実施例では、第1実施例の使用カッタに代えて、以下に示す使用カッタを採用し、それ以外の点は第1実施例と同じである。
使用カッタ:電鋳ブレード(1A8スリット Type)
すなわち、本実施例では、カッタ2として、スリット入りの電鋳ブレードを使用した。
【0030】
かかる条件にてアルミナグリーンシートを切断した後、チップを焼結し、その良品率を比較例と比較すると、表2の通りになる。
【表2】
Figure 0004360043
【0031】
カッタにスリットを入れると切屑排出性は良好になるが、この表2と上記表1とを比較すると、比較例においては、切屑付着,チップ飛び,及びコーナ欠けのいずれもが増加しており、良品率は81%から75%に低下している。
これに対し、本発明の第2実施例では、良品率は95%となっており、カッタにスリットを入れた場合でも、比較例に比して歩留まりが大幅に向上した。
【0032】
[第3実施例]
次に、本発明の第3実施例を説明する。
本実施例では、第1実施例の送り速度に代えて、以下に示す送り速度を採用し、それ以外の点は第1実施例と同じである。
送り速度:300(mm/sec)
すなわち、本実施例は、高速切断を実施したものである。
【0033】
かかる条件にてアルミナグリーンシートを切断した後、チップを焼結し、その良品率を比較例を比較すると、表3の通りになる。
【表3】
Figure 0004360043
【0034】
送り速度を速める切断は高速になるが、この表3と上記表1とを比較すると、比較例においては、切屑付着,チップ飛び,及びコーナ欠けのいずれも大幅に増加しており、良品率は81%から21%へと大幅に低下している。
これに対し、本発明の第3実施例によれば、良品率は95%となっており、送り速度=300(mm/sec)という高速での切断が可能になっただけでなく、歩留まりも大幅に向上した。
【0035】
[第4実施例]
次に、本発明の第4実施例を説明する。
本実施例では、第3実施例のカット方式に代えて、以下に示すカット方式を採用し、それ以外の点は第3実施例と同じである。
カット方式:アップカット
すなわち、本実施例では、送り速度を速めてアップカットを実施した。
【0036】
かかる条件にてアルミナグリーンシートを切断した後、チップを焼結し、その良品率を比較例と比較すると、表4の通りになる。
【表4】
Figure 0004360043
【0037】
この表4に示すように、比較例においては、切屑付着,チップ飛び,及びコーナ欠けのいずれもが大幅に増加するばかりか、寸法不良さえも生じており、良品率は0%になっている。
これに対し、本発明の第4実施例によれば、良品率は87%となっており、従来技術では採用し得なかった条件での切断も可能になった。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想にもとづいて種々の設計変更が可能である。
例えば、ノズル13,14の他に、カッタ12の粉末成形体送り方向前方又は後方に別ノズルが配設されてなる切断装置の場合には、切断時に前記別ノズルからの冷媒供給を停止させるようにしてもよい。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、切断時にはカッタの側方からのみ冷媒が供給されるので、粉末成形体から飛散した切屑が送り方向に導かれることなく除去されるようになり、粉末成形体を焼結する前に切断する際の切屑付着と、これとは逆に焼結後に粉末成形体を焼結後に切断する際の割れとを同時に回避し得て、製品歩留まりを著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る粉末成形体の切断装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】 同切断装置の平面図である。
【図3】 同切断装置の正面図である。
【図4】 同切断装置によって切断した粉末成形体を模式的に示す平面図である。
【図5】 粉末成形体の切断装置の一従来例を示す側面図である。
【図6】 同切断装置の平面図である。
【図7】 同切断装置の正面図である。
【図8】 同切断装置によって切断した粉末成形体を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
10 切断装置
11 粉末成形体
12 カッタ
13、14 ノズル(冷媒供給手段)
C 冷媒

Claims (5)

  1. 超砥粒層を備えたカッタを使用して、冷媒を供給しつつ前記カッタによって、電子回路のセラミックコンデンサまたはチップインダクタの生産に用いられるチップ状の焼結体の焼結前の粉末成形体を格子状に切断する方法であって、
    回転自在に支持された円板状の前記カッタを回転させ、前記カッタの下部両面側にのみ配設された冷媒供給手段から冷媒を噴射し、しかる後、前記粉末成形体を前記カッタに向けて送ることにより前記粉末成形体の切断を行うとともに、切断時における冷媒供給を前記カッタの側方からのみ行うことを特徴とする粉末成形体の切断方法。
  2. 前記冷媒の供給角度は、前記粉末成形体を載置するテーブルに平行な面内では、カッタ側面に直交する方向を0゜とした場合に−80゜〜80゜の範囲に設定し、送り方向に垂直な面内では、カッタ側面に直交する方向を0゜として下向きを正とした場合に−30゜〜90゜の範囲に設定したことを特徴とする請求項1記載の粉末成形体の切断方法。
  3. 前記冷媒の供給量は、0.5〜5(L/min)に設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の粉末成形体の切断方法。
  4. 前記冷媒の供給範囲は、前記カッタを回転自在に保持する保持部材よりも送り方向内側に設定したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の粉末成形体の切断方法。
  5. 超砥粒層を備えたカッタを使用して、冷媒供給手段から冷媒を供給しつつ前記カッタによって、電子回路のセラミックコンデンサまたはチップインダクタの生産に用いられるチップ状の焼結体の焼結前の粉末成形体を格子状に切断する装置であって、
    前記粉末成形体をテーブル上に載置しつつ搬送する搬送機構と、回転自在に支持された円板状の前記カッタと、前記カッタの下部両面側にのみ配設された前記冷媒供給手段とを備え、前記カッタを回転させ、前記粉末成形体を前記搬送機構を用いて前記カッタに向けて送ることにより前記粉末成形体の切断を行うとともに、前記冷媒供給手段は、前記カッタの側方からのみ冷媒を供給することを特徴とする粉末成形体の切断装置。
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