JP4359992B2 - フィルムキャリアの製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子(チップ)を搭載可能な両面配線層を有するフィルムキャリアの製造方法に関し、特に、両面配線層とその導通用孔との間の導通状態に関する信頼性を向上し得るフィルムキャリアの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プリント配線板は、テレビ、携帯電話、ゲーム機、ラジオ、音響機器、VTR等の民生用電子機器や、電子計算機、OA機器、電子応用機器、電気計測器、通信機等の産業用電子機器に広く使用されている。
【0003】
また、これら電子機器は、より一層の高性能化と、より一層のコンパクト化とを達成するように要求が高まっている。これら要求を満たすため、プリント配線板は、電子機器の小型化、高密度化及び高性能化に対応させて設計され、これに伴い、配線の細線化、ビアホールの小径化、ランド、パッドの小径化、基材のフレキシブル化、多層化及びファイン化が急速に進んでいる。
【0004】
また、プリント配線板の基材としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂が従来から使用されていたが、最近では、機械的強度及び耐熱性に優れたポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等が使用されており、更に高性能化の観点からフッ素系樹脂及びポリフェニャリアの開発が進んでいる。なお、プリント配線板のうち、フィルムを基材に用いたものをフィルムキャリアという。
【0005】
ここで、一般的なフィルムキャリアの製造方法について述べる。すなわち、フィルムキャリアの製造方法としては、両面に金属箔を有するフィルムが用いられ、このフィルムに対してレーザドリルやポリイミドエッチング等により導通孔が形成される。続いて、導通孔内に両面の導体層を電気的に接続するように金属めっきが施され、その後、金属箔に配線パターン及び電極パッド等がパターニングされる。このパターニングの完了により、半導体チップを搭載可能なフィルムキャリアが完成する。
【0006】
なお、フィルムキャリアの完成後、半導体チップが搭載されて樹脂封止されることにより、外部要素のマザーボード等に実装可能な半導体装置が製造される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のようなフィルムキャリアの製造方法では、金属めっきを施して導通孔内に金属導体を形成する際に、導通孔の開口部に金属箔が隣接しているため、導通孔の開口部に電流が集中し、導通孔の内部よりも開口部で高速に金属めっきが成長する。
【0008】
このようなめっきの成長速度の違いは、導通孔部に変形やボイドを生じさせ、フィルムキャリアの電気的特性に悪影響を与えてしまう。例えば、変形に伴う静電容量の発生やボイド等による抵抗値の増大により、Hレベルのデジタル信号がLレベルに検出されるというように、導通状態に関する信頼性を低下させてしまう可能性がある。
【0009】
本発明は上記実情を考慮してなされたもので、両面配線層とその導通孔との間の導通に関する信頼性を向上し得るフィルムキャリアの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に対応する発明は、少なくとも以下の工程[a]〜[f]を含んでいるフィルムキャリアの製造方法である。
【0012】
[a]長尺状の絶縁フィルムの一方の面に第一導体層を形成すると共に、他方の面に12±3μm厚の第二導体層を形成し、また、前記絶縁フィルムの両端に長手方向に沿って複数のスプロケットホールを形成する工程。
【0013】
[b]前記第二導体層における導通孔形成領域を除去する工程。
【0014】
[c]前記導通孔形成領域の除去により露出した絶縁フィルムにレーザ光を照射し、当該絶縁フィルムから第一導体層に達する導通用孔を形成する工程。
【0015】
[d]前記各スプロケットホール及びその周辺部を覆うようにスプロケットホール保護層を形成する工程。
【0016】
[e]前記スプロケット保護層の形成後、前記第二導体層上及び前記導通用孔にスパッタ蒸着を施して薄膜導体層を形成し、前記スプロケットホール保護層を剥離し、前記第一導体層上と、前記第二導体層上及び前記導通用孔内の薄膜導体層上とに電解めっき処理を施して金属導体層を形成する工程。
【0017】
[f]前記金属導体層の形成後、前記第一導体層、前記第二導体層、前記薄膜導体層及び前記金属導体層をパターニング処理して配線パターンを形成する工程。
【0019】
(作用)
従って、請求項1に対応する発明は以上のような手段を講じたことにより、フィルムのめっき処理側の面上には厚さを12±3μmと薄めに規定した第二導体層を形成し、この第二導体層の上から電解めっき処理を行うようにしたので、めっき処理の際に、導通孔の開口部と導通孔の内部との各導体層の厚さの不均一性が問題にならない程度に解消されたことにより、めっき電流の集中が緩和され、めっきの成長速度が略均一化される。
【0020】
このため、従来技術におけるめっきの成長速度の不均一に起因した開口部の変形やボイド等が無くなり、両面配線層とその導通孔との間の導通に関する信頼性を向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るフィルムキャリアの構成を示す模式図であり、図2は図1の2−2線矢視断面図である。このフィルムキャリア10は、巻取り自在な絶縁性のフィルム11の両面に接着剤層12を有し、フィルム11両端の長手方向に沿ってスプロケットホール13が形成され、両端のスプロケットホール13間には、フィルム11の両面に互いに導通孔14を介して電気的に接続された配線パターン15を有し、且つ接着剤層12側の面には、導通孔14又は配線パターン15に接続されたパッド電極16を備えた構成となっている。
【0022】
ここで、両面の配線パターン15は、フィルムの片面に選択的に形成された12±3μm厚の第一導体層31と、フィルム11の他面に選択的に形成された12±3μm厚の第二導体層32と、両導体層31,32上に形成されためっき層33とから構成される。なお、めっき層33は、導通孔14内部にも形成されている。
【0023】
また、第二導体層32の厚さは、導通孔14の開口部の変形やボイドの発生を容易且つ確実に回避可能な観点から最大9〜15μmの範囲を意味するが、本発明の作用効果を容易且つ確実に得る観点から、9〜12μmの範囲内にあることが好ましい。
【0024】
また、ここでは、第一及び第二導体層31,32の厚さを同一としたが、少なくとも第二導体層32の厚さが12±3μmの範囲にあればよく、例えば、第一導体層31の厚さを18μm等のように厚くしても、本発明を実施可能である。
【0025】
次に、以上のようなフィルムキャリアの製造方法について図3及び図4を用いて説明する。
図3(a)に示すように、ポリイミドフィルムからなる絶縁性のフィルム11の両面に接着剤層12が形成され、しかる後、全体が所定幅に断裁加工されて接着剤層付フィルム30が作製される。
【0026】
次に、前述同様にスプロケットホール13が打抜き形成され、図3(b)に示すように、スプロケットホール領域13aを除く接着剤層付フィルム30の両接着剤層12面に12±3μm厚の銅箔からなる第一及び第二導体層31,32が形成される。
【0027】
次に、第二導体層32上に感光層が形成され、パターニング処理されて、図3(c)に示すように、第二導体層32の所定位置に開口部32aが形成される。
【0028】
次に、図3(d)に示すように、開口部32aが形成された第二導体層32をマスクにしてエキシマレーザのレーザ光Lが照射され、接着剤層12及びフィルム11に開口部32aと同径の導通孔14が形成される。続いて、過マンガン酸カリウム溶液により、導通孔14及びフィルム11面上のスミアが除去され、導通孔14内の第一導体層31面を含めて清浄化される。
【0029】
なお、レーザ光線の種類としては、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UV−YAGレーザ等が使用可能となっている。また、導通孔の位置決めには、レーザ光の位置を制御する方式又はマスク(ガラス版)を使用する方式などが使用可能となっている。
【0030】
次に、図3(e)に示すように、スプロケットホール領域13aにマスキングテープがラミネートされてスプロケット保護層18が形成される。スプロケットホール保護層18の形成方法としては、保護テープの貼着に限らず、例えば耐酸性のレジストをスクリーン印刷してもよい。なお、スプロケットホール保護層18は、図3(d)に述べた導通孔14の形成よりも前に形成してもよい。
【0031】
次に、めっき前処理として、図4(a)に示すように、開口部32a側よりスパッタ蒸着が施され、導通孔14内を含む全面に薄膜導体層15aが形成される。このめっき前処理は、選択性がなく、スプロケットホール保護層18上及び第二導体層32上の全面に施される。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、スプロケット保護層18が除去された後、薄膜導体層15a及び第一導体層31をカソード電極とし、電解めっきを施して第一導体層31上及び導通孔14内に銅からなるめっき層33が形成される。
【0033】
なお、電解めっきの際に、開口部32aの第二導体層32が12±3μm厚と薄いことにより、開口部32aの電流集中が緩和されるため、開口部32aのめっき成長速度が導通孔14内のめっき成長速度とほぼ等しくなる。このため、開口部のめっき層33は、導通孔14内のめっき層33と同様に成長し、且つボイド(気孔)を含まないものとなっている。
【0034】
次に、レジスト液が塗布又は感光性ドライフィルムが貼着され、露光、現像、エッチング及びレジスト除去などにより、図4(c)に示すように、フィルム11の第一及び第二導体層31,32及びめっき層33をパターニング処理し、パッド電極16及び配線パターン15を形成して、フィルムキャリアの作製を完了する。
【0035】
なお、このフィルムキャリアは、後段の製造工程において、パッド電極16とは反対側の面において配線パターンと電気的に接続されるように半導体チップが搭載されて樹脂封止され、しかる後、打抜き加工されることにより、外部要素のマザーボード等に実装可能な半導体装置となる。
【0036】
上述したように本実施形態によれば、フィルム11のめっき処理側の面上には厚さを12±3μmと薄めに規定した第二導体層32を形成し、この第二導体層32の上からめっき処理を行うようにしたので、めっき処理の際に、導通孔14の開口部と導通孔14の内部との各導体層の厚さの不均一性が問題にならない程度に解消されたことにより、めっき電流の集中が緩和され、めっきの成長速度が略均一化される。
【0037】
このため、従来技術におけるめっきの成長速度の不均一に起因した開口部の変形やボイド等が無くなり、両面配線層とその導通孔との間の導通に関する信頼性を向上させることができる。
【0038】
また、導通孔14に変形が無く、パッド電極とパターンの接続が優れ、且つ、電気特性の優れたフィルムキャリアを得ることができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、図3(a)〜(c)により、フィルム11に接着剤層12を貼着し、スプロケットホールを形成し、その後、第一導体層17を貼着するという順番で製造工程を説明したが、これに限らず、以下の(a−1)に述べる製造工程としても、本発明を同様に実施して同様の効果を得ることができる。
【0040】
(a−1)すなわち、スプロケットホール13をフィルム11に形成し、次に、フィルム11の一方の面に接着剤層12を形成し、しかる後、この接着剤層12に銅箔等の金属箔を貼着して第一導体層17を形成する順序の製造工程としてもよい。
【0041】
なお、金属箔を全面に貼着してからスプロケットホール領域13aの金属箔を除去する工程と、あるいは、スプロケットホール領域13aを除いた内部領域の幅の金属箔を接着剤層12に貼着する工程と、のいずれの工程としてもよい。
【0043】
また、図3(e)により、両面のスプロケットホール領域13aにスプロケットホール保護層18を形成する場合について説明したが、これに限らず、フィルム11側の面のみにスプロケットホール保護層18を形成する工程としても、本発明を同様に実施して同様の効果を得ることができる。また、スプロケットホール保護層18を形成する工程は、レーザ光の照射工程の前に行なってもよい。
【0044】
めっき層33は、所望の膜厚を安価で短時間で形成する観点から、前述したように、電解めっきを用いて形成することが望ましい。
【0045】
また、第二導体層32側の配線パターン15の形成並びにその上の保護層の形成工程は、第一導体層31のパターニングの前後のいずれに行ってもよく、また、同時に行ってもよい。
【0046】
その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0047】
【実施例】
次に、本発明の一実施例と、従来の手法により作成された比較例とを比較して説明する。本発明の一実施例は、前述した製造方法により製造されたフィルムキャリアである。但し、製造寸法等は以下の通りとした。
フィルム11…50μm厚。
接着剤層12…12μm厚。
導通孔14…150μm径(ガラス版を介してエキシマレーザ光を照射)。
接着剤層付きフィルム30…48mm幅。
第一導体層31…12μm厚。
第二導体層32…12μm厚。
【0048】
(比較例)
次に、従来の製造方法によるフィルムキャリアを比較例として述べる。
この比較例は、第一及び第二導体層31,32の厚さを18μmとした以外は全て本発明と同じ条件で製造された。
【0049】
従来方法を用いた比較例では、開口部32aと導通孔14内部とのめっき成長速度に違いが生じたことにより、導通孔14が変形し、且つボイドが生じ、導通に関する信頼性を低下させる可能性が生じていた。
【0050】
一方、本発明方法の一実施例では、銅めっき時に、導通孔14の開口部32aの第二導体層32の厚さが薄いため、開口部32aと導通孔14内部とのめっき成長速度を略均一にでき、導通孔14に変形やボイドが無く、両面配線層とその導通孔との間の導通に関する信頼性を向上させることができた。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、両面配線層とその導通孔との間の導通に関する信頼性を向上し得るフィルムキャリアの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィルムキャリアの構成を示す模式図
【図2】同実施形態における2−2線矢視断面図
【図3】同実施形態におけるフィルムキャリアの製造方法を説明するための工程断面図
【図4】同実施形態におけるフィルムキャリアの製造方法を説明するための工程断面図
【符号の説明】
10…フィルムキャリア
11…フィルム
12…接着剤層
13…スプロケットホール
13a…スプロケットホール領域
14…導通孔
15…配線パターン
15a…薄膜導体層
16…パッド電極
18…スプロケットホール保護層
30…接着剤層付フィルム
31…第一導体層
32…第二導体層
33…めっき層
L…レーザ光

Claims (1)

  1. 少なくとも以下の工程[a]〜[f]を含んでいることを特徴とするフィルムキャリアの製造方法。
    [a]長尺状の絶縁フィルムの一方の面に第一導体層を形成すると共に、他方の面に12±3μm厚の第二導体層を形成し、また、前記絶縁フィルムの両端に長手方向に沿って複数のスプロケットホールを形成する工程。
    [b]前記第二導体層における導通孔形成領域を除去する工程。
    [c]前記導通孔形成領域の除去により露出した絶縁フィルムにレーザ光を照射し、当該絶縁フィルムから第一導体層に達する導通用孔を形成する工程。
    [d]前記各スプロケットホール及びその周辺部を覆うようにスプロケットホール保護層を形成する工程。
    [e]前記スプロケット保護層の形成後、前記第二導体層上及び前記導通用孔にスパッタ蒸着を施して薄膜導体層を形成し、前記スプロケットホール保護層を剥離し、前記第一導体層上と、前記第二導体層上及び前記導通用孔内の薄膜導体層上とに電解めっき処理を施して金属導体層を形成する工程。
    [f]前記金属導体層の形成後、前記第一導体層、前記第二導体層、前記薄膜導体層及び前記金属導体層をパターニング処理して配線パターンを形成する工程。
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