JP4359913B2 - 薄膜シリコン系太陽電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシリコン系薄膜太陽電池に関し、特に非晶質シリコン系薄膜光電変換素子に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
次世代民生用太陽電池の主力として大いに期待される薄膜シリコン系太陽電池の高効率化開発が国内外で活発に行われている。とりわけ、非晶質シリコン系薄膜を光活性層とした薄膜シリコン系太陽電池に関する研究開発の長年にわたる課題は光劣化の抑制である。
【0003】
この光劣化を抑制するための方策として、非晶質シリコン膜へのアプローチについて例を挙げれば、膜中水素結合モードのSi−H/Si−H2比の改善を行うこと(例えば、非特許文献1を参照)や、CNパッシベーション処理によるダングリングボンドサイトの不活性化を行うこと(例えば、非特許文献2を参照)などが検討されているが未だ充分な成果は上がっていない。
【0004】
また、太陽電池素子構造からのアプローチについて例を挙げれば、非晶質シリコンの膜厚を薄くすることにより相対的に光劣化率を抑えた構造が検討されている(例えば、非特許文献3を参照)が、膜厚の減少により取り出せる光電流が少なくなってしまうため、充分な特性を満足できていない。
【0005】
以上のような従来技術の課題に鑑み、本発明は低コストで光劣化の少ない非晶質シリコン系薄膜を光活性層とした薄膜シリコン系太陽電池の製造を可能とすることを目的とする。
【0006】
【非特許文献1】
M.Kondo et al. 12th PVSEC (Jeju 2001) p.41
【非特許文献2】
H.Kobayashi et al. J. Appl. Phys. 83 (1998) p.2098
【非特許文献3】
Y.Uchida et al. Solar Cells, 9, (1986) p.3
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、薄膜シリコン系太陽電池では、透光性基板上に、受光面側電極と、一導電型の非晶質半導体層、非晶質シリコン系光活性層、および逆導電型の非晶質半導体層を順次積層してなる非晶質シリコン系光電変換ユニットと、該光電変換ユニットの上に設ける裏面側電極とを備えるとともに、前記光電変換ユニットと前記裏面側電極との間において、前記光電変換ユニット側から、逆導電型の結晶質半導体層および一導電型の結晶質半導体層を設け、かつ前記一導電型の結晶質半導体層が前記裏面側電極と直接接続することを特徴とする。
【0009】
また、前記薄膜シリコン系太陽電池では、受光面側電極を設ける側の前記透光性基板の表面に微細な凹凸形状を有することが特に望ましい。
【0010】
さらに、前記薄膜シリコン系太陽電池では、前記一導電型の結晶質半導体層の表面に微細な凹凸形状を有することが特に望ましい。また、ある実施態様においては、前記一導電型の結晶質半導体層は、(110)面に配向していることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る薄膜シリコン系太陽電池の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0012】
図1に示す薄膜シリコン系太陽電池おいて、1は透光性基板、2は受光面側電極、3は一導電型半導体層、4は非晶質シリコン光活性層、5は逆導電型半導体層、6は逆導電型微結晶シリコン層、7は一導電型微結晶シリコン層、8は裏面側電極、9は取出電極であり、透光性基板1上に、受光面側電極2、一導電型半導体層3、シリコン系光活性層4、および逆導電型半導体層5を順次積層してなる光電変換ユニットと、光電変換ユニットの上に設ける裏面側電極8とを備えた薄膜光電変換素子において、前記光電変換ユニットと裏面側電極8との間に一導電型の結晶質半導体層7を設けたことを特徴とするものであるが、この例では、前記光電変換ユニットと一導電型の結晶質半導体層7との間に、逆導電型微結晶シリコン層6を設けている。
【0013】
このような薄膜シリコン系太陽電池の製造にあたっては、まず、透光性基板1である例えば青板ガラス等のガラス基板に、受光面側電極2となるSnO2等の金属酸化物層を熱CVD法またはMOCVD法等の手法により形成する。このときの受光面側電極2の膜厚は、受光面側電極2のシート抵抗が約10Ω/□程度以下となるように数100nmとする。また、この受光面電極2の表面は、形成条件を調整して自生的な凹凸状にしてもよい。なお、微結晶とは平均粒径がサブミクロン以下の結晶をいうものとする。また、自生的な凹凸状とは結晶相/(結晶相+アモルファス相)の比である体積結晶化率(%)が50%以上の場合をいうものとする。なお、微結晶シリコンの結晶化率は通常、ラマン散乱分光法、分光エリプソメトリー、またはTEMによる結晶相とアモルファス相の比率からの推測等により測定できる。
【0014】
ここで、受光面側電極2の形成前にRIE(反応性イオンエッチング)処理またはブラスト処理等の方法によりガラス基板などの透光性基板1の主面(前記受光面側電極2を設ける側の表面)に微細な凹凸構造を形成しておくことが望ましい。これにより、入射光が前記凹凸構造により散乱されて、光活性層内での実効的光路長が増大するため、後述するように、非晶質シリコン光活性層4の膜厚を薄くした場合においても、充分な光電流を得ることができる。
【0015】
前記微細な凹凸構造は、図3に示すように、透光性基板1の平坦な主面に対して鉛直な方向の任意断面において、透光性基板1の主面に対する凹凸部の平均傾斜角θが約5〜10度で、平均ピッチp(凸頂部と凸頂部との平均距離)は0.1〜1μm程度の範囲内であることが好ましい。前記平均傾斜角θが前記範囲以下の場合や、前記平均ピッチpが前記範囲以上の場合には充分な光散乱効果が得られないために短絡電流値の大幅な増加が見込めない。逆に、前記平均傾斜角θが前記範囲以上の場合や、前記平均ピッチpが前記範囲以下の場合には、同凹凸構造上に形成されるシリコン膜に構造欠陥が生じて膜品質が低下したり、電気的リークが誘発されるおそれがある。
【0016】
また、前記した微細な凹凸構造は、十点平均粗さ(Ra:算術平均粗さ)が0.05〜0.5μmであることが好ましい。なぜならこの範囲未満では、入射光散乱が不十分となるおそれがあり、他方、この範囲を超えると、透光性基板1の機械的特性や電気的特性が劣化するおそれがあるからである。
【0017】
次に、一導電型半導体層3を形成する。すなわち、導電型決定元素を高濃度にドープしたワイドギャップを有するp型の非晶質シリコン層を前記受光面側電極2上に形成する。具体的には、プラズマCVD法等により膜厚10nm程度で形成する。非晶質シリコン層は非晶質SiC層と置き換えてもよい。
【0018】
次に、前記一導電型半導体層3上に、実質的にi型の非晶質シリコン光活性層4をプラズマCVD法等によって形成する。このとき、例えば励起周波数13.56MHzのプラズマCVD法を用いて、SiH4/H2流量を10/30sccm、基板温度を200℃程度、RF投入電力を0.05〜0.1W/cm2、成膜圧力を100Pa程度とすると、光学的禁制帯幅が1.7〜1.9eVなる非晶質シリコンが得られる。また、膜中水素量は3〜20原子%程度とする。水素量が前記の範囲未満の場合には欠陥密度が上昇し、範囲を超えると光安定性が低下する。前記成膜条件は一例でありこれに限定されるものではなく、例えば励起周波数を40.68MHz等に高周波化すれば、より高品質な非晶質シリコンが得られる。また、非晶質シリコンは非晶質SiCや非晶質SiGe等と置き換えてもよい。なお、前記した膜中の水素量はSIMSにより測定できる。
【0019】
非晶質シリコン光活性層4の膜厚は0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下で形成することが望ましい。なぜなら、前記範囲を超える場合には同部での光劣化率の増大が顕著になる他、充分な内部電界を形成するために一導電型半導体層3および逆導電型半導体層5の膜厚を増大させねばならず、結果として非晶質シリコン光活性層4での光電流の発生量が減少し、全体的な素子特性も低下するからである。
【0020】
次いで、非晶質シリコン光活性層4上に逆導電型半導体層5を形成する。すなわち、一導電型半導体層3とは反対の導電型(すなわちn型)の導電型決定元素を高濃度にドープしたワイドギャップを有する非晶質シリコン層を形成する。具体的には、プラズマCVD法等により膜厚10nm程度で形成する。なお、この非晶質シリコン層は非晶質SiC層と置き換えてもよい。
【0021】
次に、逆導電型半導体層5上に逆導電型半導体層5とは反対の導電型(すなわちp型)の一導電型微結晶シリコン層7をプラズマCVD法等により10〜100nmの膜厚にて形成する。このとき、例えば励起周波数40.68MHzのプラズマCVD法を用いて、SiH4/H2/B2H6(H2で0.1体積%に希釈)の流量をそれぞれ1sccm/90sccm/10sccm、基板温度を200℃程度、VHF投入電力を0.05〜0.1W/cm2、成膜圧力を100Pa程度とすると、結晶化率70%程度、暗導電率5S/cmなる微結晶シリコンが得られる。なお、暗導電率は例えば単層膜状態にて電極を蒸着しV−I特性(抵抗)と膜厚から算出できる。
【0022】
この一導電型微結晶シリコン層7は(110)面に配向させるのが望ましい。なぜなら、(110)面に配向すると表面には微結晶シリコン粒に対応した微細な凹凸構造が形成され、裏面側電極8おける光散乱が増大するため光閉じ込め効果が期待できるからである。
【0023】
この一導電型微結晶シリコン層7と逆導電型半導体層5は発生した電流の流れとは逆の接合を形成するが、一導電型微結晶シリコン層7の結晶化率を高く、高濃度にドープすることにより、電流の流れが阻害されない逆接合とすることができる。具体的には、結晶化率で50%以上で且つ暗導電率で1S/cm以上とすることが望ましい。この逆接合部の特性を更に改善するには、後述する逆導電型微結晶シリコン層6を介在させることが有効である。
【0024】
図2に一導電型微結晶シリコン層7を導入した太陽電池と一導電型微結晶シリコン層7のない比較例の太陽電池の分光感度特性を示す。図2において、横軸に入射光の波長(nm)、縦軸に分光感度(任意単位)を示す。一導電型微結晶シリコン層7の有無以外は全く同じ構造としているにもかかわらず、長波長領域の感度が向上していることが分かる。これは一導電型微結晶シリコン層7の表面の微細な凹凸構造による光閉じ込め効果及び逆接合部による電界効果と推定される。この長波長感度の向上により、表1に示すように、非晶質シリコン光活性層4の膜厚を薄くしても同量の光電流を取り出せることになり、光劣化抑制に有効な手段である非晶質シリコン光活性層4の膜厚低減が可能となる。この非晶質シリコン光活性層4の膜厚低減は、スループットの向上や装置クリーニングサイクルの低減につながるため、低コスト化にも有利となる。
【0025】
【表1】
【0026】
また、先に示した成膜条件は一例でありこれに限定されるものではない。例えば励起周波数を60MHz等高周波化すれば、より結晶化率の高い微結晶シリコンが得られる。また、微結晶シリコンは微結晶SiC等と置き換えてもよい。
【0027】
ここで、逆導電型半導体層5と一導電型微結晶シリコン層7の間に逆導電型半導体層5と同一導電型(すなわちn型)の逆導電型微結晶シリコン層6を介在させるのが望ましい。この逆導電型微結晶シリコン層6はプラズマCVD法等により形成する。このとき、例えば励起周波数40.68MHzのプラズマCVD法を用いて、SiH4/H2/PH3(H2で0.1体積%に希釈)の流量をそれぞれ1sccm/90sccm/10sccm、基板温度を200℃程度、VHF投入電力を0.05〜0.1W/cm2、成膜圧力を100Pa程度とすると、結晶化率70%程度、暗導電率10S/cmなる微結晶シリコンが得られる。この逆導電型微結晶シリコン層6を2〜30nm、好ましくは5〜20nmの膜厚にて介在させることにより、逆接合部でのトンネル特性が向上し、表2に示すように、逆接合部を持たない比較例の非晶質シリコン太陽電池と比べても遜色ない開放電圧Voc、曲線因子FFが得られる。この逆電型微結晶シリコン層6については結晶化率を高く、高濃度にドープすることが望ましい。具体的には結晶化率で50%以上、暗導電率で1S/cm以上とすることで逆接合部でのトンネル特性が向上する。
【0028】
【表2】
【0029】
また、先に示した成膜条件は一例であり、これに限定されるものではなく、例えば励起周波数を60MHz等高周波化すれば、より結晶化率の高い微結晶シリコンが得られる。また、微結晶シリコンは微結晶SiC等と置き換えてもよい。
【0030】
次に、裏面側電極8となる例えばAgを電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等によりシート抵抗が1Ω/□程度以下となるように適当な膜厚に堆積する。具体的には1μm程度堆積するとシート抵抗0.1Ω/□以下が実現される。この際、一導電型微結晶シリコン層7とAg膜との間に透明導電膜等のバッファ層を介在させてもよい。なお、前記シート抵抗は4端針法で測定できる。なお通常は単層膜にて評価する。
【0031】
裏取り出し電極9については、例えばAl、Ag等を受光面側電極2上に真空成膜技術、プリント及び焼成技術、さらに、メッキ技術等を用いて形成することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができる。なお、以上の説明では受光面側半導体層からpin型とした太陽電池について説明したが、受光面側からnip型としても同様の効果が得られる。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る薄膜シリコン系太陽電池によれば、長波長領域での感度を改善することができるため、光劣化抑制に有効な手段である非晶質シリコン光活性層の膜厚低減が可能となる。また、この非晶質シリコン光活性層の膜厚低減は低コスト化にも有利である。
【0034】
特に、逆接合部でのトンネル特性が向上し、逆接合部を持たない非晶質シリコン太陽電池と比べても遜色ない開放電圧Voc、曲線因子FFが得られる。
【0035】
また、請求項2の薄膜シリコン系太陽電池によれば、入射光が凹凸構造により散乱されて、光活性層内での実効的光路長が増大するため、非晶質シリコン光活性層の膜厚を薄くした場合においても、充分な光電流を得ることができる。
【0036】
さらに、請求項3の薄膜シリコン系太陽電池によれば、裏面側電極おける光散乱が増大するため光閉じ込め効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る薄膜シリコン系太陽電池の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る薄膜シリコン系太陽電池の一実施形態による分光感度特性を示す線図である。
【図3】本発明に係る薄膜シリコン系太陽電池の基板表面の一例を模式的に説明する断面図である。
【符号の説明】
1:透光性基板
2:受光面側電極
3:一導電型半導体層
4:非晶質シリコン光活性層
5:逆導電型半導体層
6:逆導電型微結晶シリコン層
7:一導電型微結晶シリコン層
8:裏面側電極
9:取出電極
Claims (4)
- 透光性基板上に、受光面側電極と、一導電型の非晶質半導体層、非晶質シリコン系光活性層、および逆導電型の非晶質半導体層を順次積層してなる非晶質シリコン系光電変換ユニットと、該光電変換ユニットの上に設ける裏面側電極とを備えるとともに、前記光電変換ユニットと前記裏面側電極との間において、前記光電変換ユニット側から、逆導電型の結晶質半導体層および一導電型の結晶質半導体層を設け、かつ前記一導電型の結晶質半導体層が前記裏面側電極と直接接続することを特徴とする薄膜シリコン系太陽電池。
- 前記透光性基板の前記受光面側電極を設ける側の表面に、微細な凹凸構造を形成したことを特徴とする請求項1に記載の薄膜シリコン系太陽電池。
- 前記一導電型の結晶質半導体層の表面に、微細な凹凸構造を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜シリコン系太陽電池。
- 前記一導電型の結晶質半導体層は、(110)面に配向していることを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の薄膜シリコン系太陽電池。
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