本発明に係る処理液供給装置は、基板を水平姿勢で搬送する搬送路の途中に設けられ、搬送中の基板に対し上下の筐体から基板の表裏面に処理液を向流で供給して所定の処理を施し、処理後の処理液を上下の筐体を介して回収し得るように構成された、いわゆる処理液回収タイプの装置の改良に係るものである。
図1は、本発明に係る処理液供給装置の一実施形態を示す分解斜視図であり、図2は、その組み立て斜視図である。また、図3は、図2のA−A線断面図である。なお、図3における円内には、前方上部ウイング251および前方下部ウイング351を拡大して示している。因みに、これらの図は、本発明に係る処理液供給装置についての理解を容易ならしめるために設計事項的な部分を取り去って当該処理液供給装置を原理的に示した、いわゆる原理図である。また、図1〜図3において、X−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
そして、これらの図において、基板B(本実施形態においてはガラス基板)は、後方から前方に向かって搬送されるのに対し、処理液は基板Bに対し前方から後方に向けて供給され、これによって基板Bは、処理液供給装置10内において処理液と向流で接触して所定の処理が施される。
図1〜図3に示すように、処理液供給装置10は、複数の搬送ローラ511(図8参照)が並設されてなる水平に前後方向に延びた基板搬送路51に対し、上部に配設される上部筐体(上部処理部)20と、この上部筐体20と対向した状態で上部筐体20の下部に対向配設される下部筐体(下部処理部)30とを備えた基本構成を有している。
前記上部筐体20は、平面視で矩形状を呈する上部底板21と、この上部底板21の前方縁部に一体的に立設された左右方向に延びる上部ノズルブロック(上部液供給路部)22と、上部底板21の後方縁部に一体的に立設された前記上部ノズルブロック22と同一長の上部排液ブロック(上部液排出路部)23と、これら上部ノズルブロック22および上部排液ブロック23の上縁部間に架設された上部天板24と、上部ノズルブロック22の前面および上部排液ブロック23の後面にそれぞれ固定された当該上部ノズルブロック22および上部排液ブロック23とそれぞれ同一長を有する前後方向一対の上部ウイング25とを備えて構成されている。
前記下部筐体30は、平面視で矩形状を呈する下部底板31と、この下部底板31の前方縁部に一体的に立設された左右方向に延びる下部ノズルブロック(下部液供給路部)32と、下部底板31の後方縁部に一体的に立設された前記下部ノズルブロック32と同一長の下部排液ブロック(下部液排出路部)33と、これら下部ノズルブロック32および下部排液ブロック33の上縁部間に架設された下部天板34と、下部ノズルブロック32の前面および下部排液ブロック33の後面にそれぞれ固定された当該下部ノズルブロック32および下部排液ブロック33とそれぞれ同一長を有する前後方向一対の下部ウイング35とを備えて構成されている。
そして、これら上下の筐体20,30の共通部材として左右方向一対の側板40が採用され、これら一対の側板40が上下で対向配置された上部筐体20用の各部材および下部筐体30用の各部材を挟持してボルト止めで固定されることにより上部筐体20と下部筐体30とからなる処理液供給装置10が形成されるようになっている。そして、処理液供給装置10が形成された状態で、上部筐体20の上部底板21と、下部筐体30の下部天板34との間には、基板搬送路51に沿って搬送されつつある基板Bに対し所定処理液による処理を施す基板処理空間Vが形成されている。
この基板処理空間Vの上下寸法は、基板Bの厚み寸法より相当大きく寸法設定され(本実施形態においては略6mm)、これによって基板処理空間V内を搬送されつつある基板Bの表裏面に沿って上下のノズルブロック22,32から吐出された処理液が上下の排液ブロック23,33へ向けて基板Bと向流で流下し、この間に基板Bの表裏面が処理液によって処理されるようになっている。また、上部ノズルブロック22と上部排液ブロック23との間の距離は、下部ノズルブロック32と下部排液ブロック33との間の距離と等しく設定されている。
図4は、上部ノズルブロック22および下部ノズルブロック32の一実施形態を示す一部切り欠き斜視図であり、(イ)は、上部ノズルブロック22を、(ロ)は、下部ノズルブロック32をそれぞれ示している。なお、図4におけるXおよびYによる方向表示(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))は、図1の場合と同様である。
まず、前記上部ノズルブロック22は、図4の(イ)に示すように、所定の合成樹脂材料によって形成され、左右方向に長尺の直方体状を呈している。かかる上部ノズルブロック22は、前面の中央位置にねじ孔221が螺設されているとともに、このねじ孔221の奥部は、上部ノズルブロック22内で左右方向の略全長に亘って延びるように形成された処理液供給通路222に連通されている。この処理液供給通路222には、左右方向の全長に亘って等ピッチで穿設された上部ノズルブロック22の下面に開口を有する複数のノズル孔223が接続されている。
また、前記ねじ孔221には、後述する処理液供給管522の先端側に装着された流体継手Cが螺着されるようになっている。従って、前記処理液供給管522が流体継手Cを介してねじ孔221へ接続された状態で処理液供給管522を介して処理液が供給されることにより、この処理液は、処理液供給通路222を介して各ノズル孔223から下方へ向けて吐出されることになる。
ついで、前記下部ノズルブロック32は、図4の(ロ)に示すように、基本的に上部ノズルブロック22と同様に構成されているが、ノズル孔323が処理液供給通路322から上方へ向かって分岐されている点が上部ノズルブロック22と相違している。そして、処理液供給管522から流体継手Cおよびねじ孔321を介して処理液供給通路322へ供給された処理液は、処理液供給通路322から分岐された複数のノズル孔323から上方へ向けて吐出されるようになっている。
図5は、下部天板34の一実施形態を示す一部切り欠き斜視図であり、図6は、図5のD−D線断面図である。なお、図5および図6におけるXおよびYによる方向表示は、図1の場合と同様(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))である。
まず図5に示すように、下部天板34は、平面視で矩形状を呈する若干厚めの天板本体341と、この天板本体341の上面に積層される平面形状が天板本体341と同一の積層板348とを備えて構成されている。
前記天板本体341には、前後方向および左右方向の双方でそれぞれ所定の等ピッチに設定された、平面視で矩形状を呈する複数の凹部342が凹設されているとともに、各凹部342にコロ(回転支持体)343がそれぞれ装着されている。本実施形態においては、凹部342は前後方向で4個、左右方向で8個の合計32個が設けられているが、凹部342の設置個数については32個であることに限定されるものではなく、処理液供給装置10の規模や処理されるべき基板Bの種類、サイズ等によって適宜最適の個数が設定される。
前記積層板348には、前記各凹部342と対向した位置にそれぞれ角孔349が穿設され、コロ343が凹部342に装着された状態で当該コロ343の周面の一部が角孔349を通して外部に突出するようになされている。
前記コロ343は、図6に示すように、コロ軸344と、このコロ軸344の軸心方向の中央部に同心で一体的に外嵌された円形のコロ本体345とからなっている。コロ本体345は、厚み寸法がコロ軸344の長さ寸法より若干薄めに設定され、これによってコロ軸344はコロ本体345から互いに反対方向に向けて突出した状態になっている。
一方、天板本体341には、図6に示すように、凹部342の互いに対向した前後方向(図6の紙面の左右方向)に延びる各対向縁部の中央部に、上面側から前記コロ軸344の直径と同一寸法だけ切り込まれて形成した軸長方向一対の軸受溝346が凹設され、これらの軸受溝346にコロ軸344の両端部をそれぞれ嵌め込むことによってコロ343がコロ軸344回りに回転自在に凹部342に装着されるようになっている。前記コロ軸344は、軸受溝346に装着された状態で積層板348が天板本体341に被せられることによって抜止め状態になる。
従って、基板処理空間V内に搬入された基板Bは、これらのコロ343に支持された状態で、コロ343の回転に誘導されながら撓むことなく基板処理空間V内を円滑に移動することになる。
そして、凹部342の底部には、下方に向かって延びた液抜き孔(液抜き路)347が穿設され、基板処理空間Vを流下しつつある処理液は、その一部がこの液抜き孔347を介して抜き出され、これによって基板処理空間Vに導入された基板Bの裏面がコロ本体345の周面と摺接することにより生成したパーティクルは、この抜き出される処理液に同伴して排出されるため、パーティクルが付着したまま基板Bが基板処理空間Vから導出されることにより基板Bの汚染状態が維持されてしまうような不都合の発生が確実に防止される。
図7は、上部排液ブロック23および下部排液ブロック33の一実施形態を示す一部切り欠き斜視図であり、(イ)は、上部排液ブロック23を、(ロ)は、下部排液ブロック33をそれぞれ示している。なお、図7におけるXおよびYによる方向表示(Xは左右方向(−X:左方、+X:右方)、Yは前後方向(−Y:前方、+Y:後方))は、図1の場合と同様である。
まず、前記上部排液ブロック23は、構造的には先の上部ノズルブロック22と同様に構成され、図7の(イ)に示すように、所定の合成樹脂材料によって形成され、左右方向に長尺の直方体状を呈している。かかる上部排液ブロック23は、前面の中央位置にねじ孔231が螺設されているとともに、このねじ孔231の奥部(前方)は、上部排液ブロック23内で左右方向の略全長に亘って延びるように形成された処理液排出通路232に連通されている。この処理液排出通路232には、左右方向の全長に亘って等ピッチで穿設された上部排液ブロック23の下面に開口を有する複数の処理液吸引孔233が接続されている。
また、前記ねじ孔231には、後述する排液管532の先端側に装着された流体継手Cが螺着されるようになっている。従って、前記排液管532が流体継手Cを介してねじ孔231へ接続されることにより、基板処理空間V内で基板Bを処理した後の処理液は、基板処理空間Vの下流端において複数の処理液吸引孔233から吸引され、処理液排出通路232を通って排液管532を介し回収されることになる。
ついで、前記下部排液ブロック33は、図7の(ロ)に示すように、基本的に上部排液ブロック23と同様に構成されているが、処理液吸引孔333が処理液排出通路332から上方へ向かって分岐されている点が上部排液ブロック23と相違している。そして、処理液吸引孔333により吸引された基板Bに対して所定の処理を行った処理済みの処理液(排液)は、処理液排出通路332、ねじ孔331および流体継手Cを介し排液管532を通って回収されるようになっている。
また、上下の処理液吸引孔233,333は、上下の排液ブロック23,33における左端部および右端部にはそれぞれ設けられておらず、これによって上下のノズルブロック22,32の各ノズル孔223,323に比べて孔数が少なくされている。このようにされるのは、基板処理空間V内を搬送されつつある基板Bによる処理液の持ち出しで基板処理空間V内の処理液量が少なくなった場合、エアーが端の処理液吸引孔233,333を介して上下の排液ブロック23,33内に吸引されることがあるが、かかるエアーの吸引を防止するためである。
そして、本実施形態においては、上部排液ブロック23は、下端面が前記上部底板21の下面より若干(本実施形態では1mm)下方に位置するように上下寸法が設定されている。従って、基板処理空間V内を基板Bの表面に沿って向流で流下する処理液の一部が上部排液ブロック23の下端部と干渉し、これによる流量の抑制で処理液が上部排液ブロック23により効果的に吸引されることになり、処理液が基板Bの表面に同伴して基板処理空間Vから運び出される量を少なくすることができる。
因みに、下部排液ブロック33の上端面は、下部天板34の上面と面一に設定されている。このようにされるのは、下部排液ブロック33の場合、特に下部排液ブロック33の上端面を下部天板34の上面より上方に突出させなくても、基板処理空間V内を流下した処理液は、重力によって下部排液ブロック33の処理液排出通路332へ流れ込むためである。
ついで、前記上下のウイング25,35(図1〜図3)は、上下のノズルブロック22,32から基板処理空間V内に供給された処理液が基板Bの表裏面に沿って基板処理空間Vから基板搬送方向に向けて漏洩するのを防止するためのものである。かかるウイング25,35が採用されるのは、本実施形態においては、上下の筐体20,30が基本的にPVC(ポリビニルクロライド)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の合成樹脂材料によって形成されており、かかる合成樹脂材料は、疎水性を備えているため、水性の処理液は、基板処理空間Vに供給されると周りの疎水性の環境にはじかれ、これによって基板Bの表裏面と上下のノズルブロック22,32の先端面との間の隙間を通って基板搬送方向へ向けて漏洩してしまう虞があるが、かかる処理液の漏洩を防止するためである。
そして、本実施形態においては、上下のウイング25,35は、合成樹脂製のもの(例えばPTFE等のフッ素樹脂製のもの)が採用されているが、本発明は、上下のウイング25,35が合成樹脂製であることに限定されるものではなく、ステンレススチール等の金属製のものであってもよい。
前記上部ウイング25は、上部ノズルブロック22の前面側に一体的に取り付けられる前方上部ウイング251と、上部排液ブロック23の後面側に一体的に取付けられる後方上部ウイング252とからなっている。
前記前方上部ウイング251は、図1に示すように、左右方向に長尺の板状を呈した取付け板部(鍔部)253と、この取付け板部253の下端部から前方に向けて突設された当該取付け板部253と同一長のウイング本体(水平延部)254とを備えて構成されている。前記取付け板部253は、上部ノズルブロック22の前面側に図略のシール部材を介して固定するためのものである。
かかる前方上部ウイング251は、取付け板部253およびウイング本体254が互いに直交するように結合された部分の角部が、図3の円内に示すように、左右方向(図3の紙面に直交する方向)の全長に亘って側面視で鈎状に切り欠かれることによって形成した段差部255を有している。段差部255の上面は水平面とされているとともに、前方の面は垂直面とされている。
前記後方上部ウイング252は、基本的に前方上部ウイング251と同様に構成され、図1および図3に示すように、左右方向に長尺の板状を呈した取付け板部253と、この取付け板部253の下端部から後方に向けて突設された当該取付け板部253と同一長のウイング本体254とを備えて構成されているが、前方上部ウイング251に形成されているような段差部255は設けられていない。
前記下部ウイング35は、下部ノズルブロック32の前面側に一体的に取り付けられる前方下部ウイング351と、下部排液ブロック33の後面側に一体的に取付けられる後方下部ウイング352とからなっている。
前記前方下部ウイング351は、図3の円内に示すように、側面視で前記前方上部ウイング251と線対称に形成されている。かかる前方下部ウイング351は、前方上部ウイング251の取付け板部253と同様の取付け板部(鍔部)353と、この取付け板部353の上端部から前方に向けて突設された当該取付け板部353と同一長のウイング本体(水平延部)354とを備えて構成されている。この前方下部ウイング351にも、前方上部ウイング251の段差部255と同様の段差部355が設けられている。
前記後方下部ウイング352は、基本的に前方下部ウイング351と同様に構成され、図1に示すように、左右方向に長尺の板状を呈した取付け板部353と、この取付け板部353の上端部から後方に向けて突設された当該取付け板部353と同一長のウイング本体354とを備えて構成されているが、前方下部ウイング351に形成されているような段差部355は設けられていない。
そして、前記前方上部ウイング251および前方下部ウイング351は、これらのウイング本体254,354間の隙間寸法が基板処理空間Vの上下寸法より小さく、かつ、基板Bが接触することなく通過し得る寸法になるように設置位置が設定されている。このようにされるのは、上下の筐体20,30がいずれも疎水性である合成樹脂材料によって形成され、これによって上下のノズルブロック22,32から吐出された処理液が合成樹脂材料によってはじかれて基板処理空間Vから基板搬送方向の下流側に向けて漏洩するのを防止するためである。
すなわち、前方上部ウイング251および前方下部ウイング351にそれぞれ段差部255,355を設けることで、上下のノズルブロック22,32から吐出された処理液は、上下の段差部255,355の垂直壁に阻止されるため、処理液が基板処理空間Vから基板搬送方向の下流側へ向けて漏洩することが有効に防止されることになる。
本実施形態においては、上下のウイング25,35のウイング本体254,354間の隙間寸法は、略4mmに設定されているが、本発明は、前記隙間が4mmであることに限定されるものではなく、基板Bの種類やサイズ、さらには処理液による処理条件等によって最適の隙間寸法が適宜設定される。
なお、本実施形態においては、本発明に係る上下のウイングにおける対向面間の距離が上部底板21および下部天板34の対向面間の距離より短くなる部位が、前方上部ウイング251のウイング本体254の下面および前方下部ウイング351のウイング本体354の上面に相当する。
前記側板40は、図1および図2に示すように、上下の筐体20,30の左右の側面で共用され、これら上下の筐体20,30を所定の離間状態で互いに結合する役割を担っている。
かかる側板40は、上部筐体20を構成する上部ウイング25を除いた各部材および下部筐体30を構成する下部ウイング35を除いた各部材が所定の間隔で対向配置された状態で上下の各部材に対応した矩形状を呈する側板本体41と、この側板本体41の前後の縁部からそれぞれ突設された上下の前方ウイング25,35および上下の後方ウイング25,35の端面視の形状に沿う前後一対の突設部42とからなっている。そして、上下の筐体20,30を構成する各部材が所定の離間状態で上下に対向配置された状態でこれらの左右の側面に側板40が図略のシール部材を介してそれぞれボルト止めされることにより、図2に示すように、処理液供給装置10が完成する。
本実施形態においては、処理液供給装置10は、前後寸法が略90mmに設定されているとともに、左右寸法が略400mmに設定され、これによって左右寸法が長尺の大型の基板Bの処理に対応し得るようになっている。なお、処理液供給装置10の寸法は、前後寸法が略90mm、左右寸法が略400mmに設定されることに限定されるものではなく、基板の種類やサイズ、さらには処理条件等に応じて適宜最適の寸法が設定される。因みに、図1および図2においては、紙面の都合上処理液供給装置10の左右方向の寸法を実際より若干短めに示している。
また、本実施形態においては、側板40に限らず処理液供給装置10を構成する各部材間の接合については、シール部材を介したボルト止めで行われるようになされているが、本発明は、各部材間の接合をボルト止めで行うことに限定されるものではなく、所定の接着剤を介した接着処理によって接合してもよい。
以下、このような構成の処理液供給装置10が適用された基板処理装置について図8を基に説明する。図8は、処理液供給装置10を用いた基板処理装置の一実施形態を示す側面視の説明図である。図8に示すように、基板処理装置50は、本発明に係る処理液供給装置10と、この処理液供給装置10を貫通するように配設された水平に延びる基板搬送路51と、処理液供給装置10へ処理液を供給する処理液供給系統52と、処理液供給装置10で基板Bに対し所定の処理を施した後の処理液(処理済液)を回収する処理液回収系統53とを備えた基本構成を有している。
前記基板搬送路51は、本実施形態においては、基板搬送方向に沿って並設された複数の搬送ローラ511によって形成され、図略の駆動手段の駆動による各搬送ローラ511の軸心回りの回転によって搬送ローラ511上に載置された基板Bを搬送するようになっている。
そして、処理液供給装置10は、かかる基板搬送路51によって搬送される基板Bの水平方向に延びた中心線が上下の筐体20,30間に形成された基板処理空間Vの上下方向の中央に位置するように高さレベルが設定された状態で、基板搬送路51が基板処理空間Vを貫通するように設置されている。従って、搬送ローラ511の駆動で基板搬送路51に沿って搬送されてきた基板Bは、処理液供給装置10の基板処理空間V内に導入され、基板処理空間V内を移動しつつ上下のノズルブロック22,32から向流で供給された処理液により表裏面に所定の処理が施されることになる。
前記処理液供給系統52は、処理液を貯留する処理液貯留槽521と、この処理液貯留槽521から上下のノズルブロック22,32へ向けて配管された処理液供給管522と、この処理液供給管522に設けられた処理液供給ポンプ523とを備えて構成されている。処理液供給管522は下流側が2つに分岐され、一方が上部ノズルブロック22に接続されているとともに、他方が下部ノズルブロック32に接続されている。従って、処理液供給ポンプ523の駆動で処理液貯留槽521から導出された処理液は、処理液供給管522を通って上下のノズルブロック22,32へ供給されることになる。
前記処理液回収系統53は、基板Bを処理した後の処理液や処理中に基板処理空間Vから漏洩した処理液等を回収して貯留する処理液回収槽531と、上下の排液ブロック23,33にそれぞれ接続され、合流された上で下流端が処理液回収槽531に接続される処理済み処理液排液用の排液管532と、この排液管532に設けられた排液ポンプ533と、前記天板本体341(図5)に複数設けられた液抜き孔347にそれぞれ接続された上で集合された液抜き管(共通路)534と、下部筐体30の下方位置に設けられて処理液供給装置10の基板処理空間Vから漏洩した処理液を受ける液受けパン535とを備えて構成されている。
前記液抜き管534は、その下流端が処理液回収槽531に接続され、これによって基板処理空間Vから抜かれた処理液は自重で処理液回収槽531へ回収されるようになっている。かかる液抜き管534には液抜きバルブ536が設けられ、この液抜きバルブ536の開度を変更することによって液抜き量を調節し得るようになっている。また、液受けパン535は漏斗状に形成され、処理液供給装置10における基板搬送方向の上流端開口および下流端開口から漏洩した処理液を受けるようになっている。液受けパン535に受けられ底部に集められた漏洩処理液は、処理液回収槽531へ回収されるようになっている。
かかる構成の基板処理装置50によれば、処理液供給ポンプ523の駆動で処理液供給管522を介して上下のノズルブロック22,32へ供給された処理液は、それぞれのノズル孔223,323(図4)を介して基板処理空間V内に供給される。この基板処理空間V内において供給された処理液は、基板処理空間V内を満たした後、排液ポンプ533の駆動による吸引力で上下の排液ブロック23,33のそれぞれの処理液吸引孔233,333を介して排液管532へ吸引され、これによって基板処理空間V内で基板搬送方向と逆方向に向かう処理液の流れが形成された状態になっている。
この状態で基板Bが搬送ローラ511の駆動回転により基板搬送路51に沿って処理液供給装置10の基板処理空間V内に搬入されると、当該基板Bは、基板処理空間V内をコロ343に支持されながら前進して向流で処理液と接触し、これによって基板Bの表裏面が処理液によって処理されることになる。
そして、上下のノズルブロック22,32から基板処理空間V内に導入された処理液は、上下のノズルブロック22,32に付設された前方上部ウイング251および前方下部ウイング351の各ウイング本体254,354間の隙間寸法が基板処理空間Vの上下寸法より小さく設定されているため、処理液の基板搬送方向下流側に向かう漏洩が有効に防止される。特に、基板Bが前方上部ウイング251と前方下部ウイング351との間を通過するときは、これらと基板の表裏面との間の隙間寸法が非常に小さくなっているため、処理液の基板Bによる同伴持ち出しを少なくすることができる。
また、基板Bの表面側を伝わって流下した処理液は、上部底板21から下方に突出した上部排液ブロック23の下端部に衝突した後、上部排液ブロック23の下端面と基板Bとの細い隙間を通って処理液吸引孔233に吸引されるため、上部排液ブロック23側からの処理液の漏洩が有効に抑えられる。
また、基板Bが基板処理空間V内へ搬入される前に基板処理空間V内を液密にするのに疎水性の環境にはじかれ、これによって処理液が基板搬送方向へ漏洩してしまい液密生成を困難にする。
しかしながら、前方上部ウイング251および前方下部ウイング351の各ウイング本体254,354間の隙間寸法が基板処理空間Vの上下寸法より小さく設定されているため、処理液の基板搬送方向下流側へ向かう漏洩が防止され、吸引排出側への処理液の流れを促進して液密が効率よく生成される。
以上詳述したように、本発明に係る処理液供給装置10は、通過する基板の上面に対向する上部筐体20の上部底板21と、この上部底板21の基板B搬送方向の下流端に設けられ上部底板21の下面側に処理液を供給する上部ノズルブロック22と、上部底板21の基板搬送方向の上流端に設けられ供給された処理液を上部底板21の下面側から吸引排出する上部排液ブロック23とからなる上部筐体20が設けられているとともに、上部底板21と対向配置され通過する基板Bの下面に対向する下部天板34と、下部天板34の基板搬送方向の下流端に設けられ下部天板34の上面側に処理液を供給する下部ノズルブロック32と、下部天板34の基板搬送方向の上流端に設けられ供給された処理液を下部天板34の上面側から吸引排出する下部排液ブロック33とからなる下部筐体30が上部筐体20の下部に対向配置されてものを前提とし、上部および下部ノズルブロック22,32の各外面には、基板搬送方向に向けてそれぞれ突設され、かつ、基板Bの通過を許容する上部ウイング25および下部ウイング35が設けられ、上下のウイング25,35は、それらの対向面間の距離が上部底板21および下部天板34の対向面間の距離より短くなるように設置位置が設定されている。
従って、基板搬送方向の上流側から上部底板21と下部天板34との間に搬入された基板Bは、その上面側が下流端の上部ノズルブロック22から供給された処理液によって処理が施されるとともに、その下面側が下流端の下部ノズルブロック32から供給された処理液によって処理され、表裏面が処理された状態で処理液供給装置10から搬出される。
一方、上部ノズルブロック22から供給された処理液は、基板搬送方向の下流側から基板搬送方向の上流側に向けて流下しつつ基板Bの上面に対して処理を施した後、上部排液ブロック23によって吸引排出されるとともに、下部ノズルブロック32から供給された処理液は、基板搬送方向下流側から上流側に向けて流下しつつ基板Bの下面に対して処理を施した後、基板搬送方向の上流側に設けられた下部排液ブロック33によって吸引排出される。
このように、基板Bは、処理液供給装置10に基板搬送方向の上流側から搬入され同下流側に向けて搬送されることにより、同下流側から供給され同上流側に向けて流下する処理液との向流接触によってその表裏面が処理されるため、従来のように基板Bに対して処理液を散布する方式に比較し、確実な処理を確保しつつ処理液の量を少なくすることができる。
そして、上下のノズルブロック22,32の各外面には、基板搬送方向に向けてそれぞれ突設され、かつ、基板Bの通過を許容する前方上部ウイング251および前方下部ウイング351がそれぞれ設けられ、各ウイング251,351は、それらの対向面間の距離が上部底板21および下部天板34の対向面間の距離より短くなるように設置位置が設定されているため、上下のノズルブロック22,32から基板Bに向けて供給された処理液は、これらの上下のウイング251,351に阻まれて表面張力が増大することにより液密性が向上し、これによって基板Bに対する処理効率を向上させることができるとともに、基板Bに同伴して処理液供給装置10から漏洩する量を抑えることが可能になり、処理コストの低減化に貢献することができる。
また、上部排液ブロック23は、その下面が上部底板21の下面より下位レベルになるように設置位置が設定されているため、基板Bの上面を基板搬送方向の上流側に向けて流下する処理液は、上部排液ブロック23の下端部に衝突し、これによって基板処理空間V外に即座に排出されてしまうような不都合が防止され、上部排液ブロック23に確実に吸引される。
このように、上部排液ブロック23の下面が上部底板21の下面より下位レベルになるように設定することにより、極めて簡単な構成でありながら、処理液が基板処理空間Vにおける基板搬送方向の上流側から外部に漏洩することを有効に抑えることができるとともに、処理液の基板処理空間V内での滞留時間を長くすることが可能になり、基板Bに対する処理液による処理効率を向上させることができる。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
(1)上記の実施形態においては、基板処理空間V内を基板Bの上面に沿って基板搬送方向の上流側に向けて流下した処理液が、上部底板21より下方に向けて突出した上部排液ブロック23の下端部に衝突するようになされているが、本発明は、上部排液ブロック23の下端面を上部底板21より下位レベルに設定することに限定されるものではなく、後方上部ウイング252のウイング本体254の下面の高さレベルを上部底板21の下面の高さレベルより下げるようにしてもよい。
(2)上記の実施形態においては、前方上部ウイング251および前方下部ウイング351にそれぞれ段差部255,355が設けられているが、本発明は、上下のウイング251,351に段差部255,355を設けることに限定されるものではなく、特に設けなくてもよい。この場合、ウイング本体254,354を基板処理空間V内に侵入させるように上部ウイング25および下部ウイング35の設置位置を設定すれば、段差部255,355がなくても取付け板部253,353の後面によって処理液の漏洩を防止することができる。
すなわち、基板処理空間Vの基板搬送方向下流端に形成される段差部については、実質的に上記の実施形態の段差部255,355と同一の作用を果たすものであればこれらの段差部255,355と類似の各種の構造を採用することができる。
(3)上記の実施形態において、基板処理空間V内を流通する処理液に対し高周波を印加するようにしてもよい。こうすることで基板処理空間V内を流通する処理液が高い周期で振動するため、基板Bに対する処理効果を向上させることができる。
(4)図9は、下部天板34に装着されるコロ343′の他の実施形態を示す断面図である。図9に示すコロ343′の取付け構造は基本的には図6と略同様である。すなわち、天板本体341の上面側にはコロ343′を装填する凹部342が形成されており、この凹部342の左右方向の両側壁には、コロ343′を回動可能に軸支するコロ軸344′を水平支持する軸受部342aが形成されると共に、前記両側壁の上端から軸受部342aまでコロ軸344′を抜き差しするための挿入ガイド溝が形成されている。凹部342の底部342bは略水平面とされ、その中央には下方に延びる小径の液抜き孔347が穿設されている。
コロ343′は外周の幅寸法が所要の短寸法とされており、特にその中央は左右方向に紡錘形状(凸状)に形成されている。この紡錘形状によって基板Bとの接触面積が減少する分、基板の接触ダメージを低減することが可能となる。この紡錘形状は図6に示すコロ343にも同様に適用可能である。
そして、前記天板本体341の肉厚内には軸受部342aと外部(天板本体341の側面あるいは下面側)とを連通する液孔341aが形成されている。また、コロ軸344′の軸内には同心状の液孔344aが長手方向中間まで穿設され、かつコロ軸344′の長手方向中間位置では径方向に中心を通る貫通液孔344bが穿設されている。従って、液孔344aと貫通液孔344bとは連通され、さらに天板本体341の液孔341aと回転軸の液孔344aとが連通される結果、液孔341aと貫通液孔344bとが連通される。そして、コロ343′の内周壁面とコロ軸344′の外周面との間には隙間が形成されるようにコロ343′の内径寸法が設定され、処理液がこの隙間を流通し得るようになされているとともに、液孔341aの外部開口側は図略の供給ポンプを介して洗浄液タンクに連設されており、この供給ポンプを駆動させることで、洗浄液をコロ343′の内周壁面に噴射供給可能にしている。
この構成によれば、図6の場合と同様、処理液供給装置10内に搬入されてきた基板Bはその下面側がコロ343′で支持され、下方に撓んで天板本体341と接触することがなくなる。また、コロ343′は基板Bの搬送力によって従動し、基板Bの移送をスムーズに受け持つ。コロ343′のコロ軸344′との間での摩擦回転によりパーティクル等が発生しても、このパーティクルは液抜き孔347を介して吸引されて、液抜き管534(図8)を経て洗浄液と共に処理液回収槽531に回収されるので、天板本体341の上面に回り込んで洗浄中の洗浄液に混入し、洗浄効果を低下させたり、基板Bの裏面を傷めたりすることはなくなる。また、コロ343′の内周壁面に洗浄液を噴射供給しているので、コロ軸344′との間での摩擦回転によりパーティクル等が発生したとしても、このパーティクルをより効果的に洗い落とすことができる。また、基板処理が終了した後に、処理液の付着しているコロ343′の内周側壁を洗浄することも可能となり、処理液(処理液が洗浄水ではなく、薬液を使用する態様の場合には特に)などの付着、乾燥による結晶等の付着が効果的に防止でき、コロ343′の円滑回転を長期に亘って確保することができる。