以下、本発明の旅行情報提供装置および旅行情報提供プログラムを、車両に搭載されるタイプのナビゲーション装置に適用した実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
[第1実施形態]
まず本第1実施形態のナビゲーション装置の構成を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、ナビゲーション装置20は、主に、CPU21、メモリ22、地図情報データベース23、入出力インタフェイス24、入力装置25、ディスプレィ26、GPSセンサ31、車速センサ32、ジャイロセンサ33、通信装置35等から構成されている。
CPU21は、ナビゲーション装置20を制御する中央演算処理装置で、システムバスを介してメモリ22、地図情報データベース23、入出力インタフェイス24等と接続されている。このメモリ22には、CPU21を制御するシステムプログラム22aのほか、各種制御プログラム22b〜22g等が格納されており、CPU21はこれらのプログラムをメモリ22から読み出して逐次実行している。なお、このCPU21には、現在の時刻を計時する機能を有する時計21aが内蔵されている。
メモリ22は、システムバスに接続されている記憶装置であり、CPU21が使用する主記憶空間を構成するものである。このメモリ22には、システムプログラム22aをはじめとして、入力装置25からの情報入力を可能にする入力プログラム22b、後述する情報センタ70から交通情報を取得する機能を有する交通情報取得プログラム22c、ナビゲーション装置20の基本機能であるナビゲーション機能を担う経路探索プログラム22d、仮想出発時刻や仮想到着時刻を設定する機能を有する仮想時刻設定プログラム22e、探索された推奨経路を走行(進行)した場合に要する所要時間を算出し推定到着時刻を算出する機能を有する推定到着時刻算出プログラム22f、後述するようにディスプレィ26に仮想出発時刻や推定到着時刻等あるいは推奨経路等をグラフィック表示させる制御を行う機能を有する描画プログラム22g等が予め書き込まれている。
地図情報データベース23は、CPU21が使用する補助記憶空間を構成するハードディスク、コンパクトディスクやディジタルバーサティルディスク等で、システムバスを介してCPU21に接続されている。この地図情報データベース23には、現実の道路ネットワークが所定長さごとの道路リンクの集合としてデータ化されており、各道路リンクごとにその道路リンクを通過するための所要時間や道幅、通行方向や速度規制等の各種情報が合わせてデータとして蓄積されている。
入出力インタフェイス24は、入力装置25、ディスプレィ26、GPSセンサ31、車速センサ32、ジャイロセンサ33、通信装置35等の入出力装置とCPU21等とのデータのやり取りを仲介する装置で、システムバスに接続されている。
入力装置25は、ナビゲーション装置20の操作パネルに設けられている入力装置で、入出力インタフェイス24を介してシステムバスに接続されている。この入力装置25は、利用者が経路探索を希望する目的地等に関する情報を入力プログラム22bを介して入力するものである。一般に、押圧式のスイッチを所定数並べた構成を採るが、入力操作の簡便化を考慮してディスプレィ26の表面に設けられたタッチパネル式のものや、あるいは利用者の声を認識してナビゲーション装置20への入力情報に変換する、マイクロフォンと音声認識装置とで構成されているものもある。
ディスプレィ26は、出発地から目的地までの推奨経路や、ある出発時刻に出発した場合、当該推奨経路を進行したときに当該目的地に到着するまでにかかる旅行時間(推定所要時間)や推定到着時刻等を帯状表示の長さとして描画プログラム22gを介して出力し得る表示装置で、ナビゲーション装置20の操作パネルに設けられている。このディスプレィ26も、入出力インタフェイス24を介してシステムバスに接続されており、例えば、液晶表示器やCRT表示器により構成されている。また表示面に、入力装置25を構成するタッチパネルを備えているものもある。
なお、本実施形態では、入力装置25とディスプレィ26は、ナビゲーション装置20の操作パネルに設けたが、これに限られることはなく、ナビゲーション装置20とは、別個の筐体に、入力装置25とディスプレィ26とを構成しても良い。また入力装置25とディスプレィ26とが互いに物理的に分離された構成を採っても良い。また、本実施形態のナビゲーション装置は出力装置としてディスプレイのほかに図略のスピーカを備える。スピーカからは経路案内、交通情報のほか、推定到着時刻などが音声により出力され、利用者に各種の情報が通知される。
GPSセンサ31は、経度・緯度により車両の現在位置データを出力するためのもので、入出力インタフェイス24を介してシステムバスに接続されている。このGPSセンサ31は、複数のGPS衛星からの信号を受信して利用者の絶対位置を計測するGPS受信機等から構成されている。
車速センサ32およびジャイロセンサ33は、車両の相対位置を計測するためのもので、入出力インタフェイス24を介してシステムバスに接続されている。これらセンサは自律航法に使用されるもので、これらにより計測される相対位置は、GPS受信機が衛星からの電波を受信できないトンネル内等において位置を得たり、GPS受信機によって計測された絶対位置の測位誤差を補正する等に利用される。
通信装置35は、情報センタ70との間で無線通信回線によるデータの送受信を行うための無線通信機器で、入出力インタフェイス24を介してシステムバスに接続されている。例えば、携帯電話機、PHS等の無線通信システムを利用している。
情報センタ70は、主に、制御装置72、通信装置74等から構成されている。制御装置72は、ナビゲーション装置20のCPU21、メモリ22等と同様に、CPU、メモリ等を備えており、道路交通情報72bをナビゲーション装置20に送信し得る交通情報提供プログラム72aを格納している。これにより、ナビゲーション装置20の要求に応じて、ナビゲーション装置20に道路交通情報72bを提供できるようにしている。
情報センタ70の通信装置74は、ナビゲーション装置20との間で無線回線によるデータの送受信を行うための無線通信機器で、ナビゲーション装置20の通信装置35と同様に、例えば自動車電話機、携帯電話機、PHS等の無線通信システムを利用し、もしくはナビゲーション装置20の通信装置35と通信を行う電話回線交換局と接続するための機器を利用して構成されている。
ここで、メモリ22に格納されている、入力プログラム22b、交通情報取得プログラム22c、経路探索プログラム22d、仮想時刻設定プログラム22e、推定到着時刻算出プログラム22fおよび描画プログラム22gの概要を説明する。
入力プログラム22bは、ナビゲーション装置20の利用者が経路案内を希望する目的地、その出発地、出発時刻あるいは到着時刻等に関する情報等その他、ナビゲーション機能を利用する上で必要な各種情報等を、利用者に対し入力装置25を介して入力させ、他のプログラムや処理等に受け渡す機能を有するものである。
交通情報取得プログラム22cは、インターネットやVICS(道路交通情報通信システム)に接続された通信装置35を介して情報センタ70から道路交通情報72bを取得する機能を有するもので、これにより車両外部から所望の道路交通情報72bを取得している。
経路探索プログラム22dは、入力装置25により入力された目的地を地図情報データベース23に記憶された地図情報に基づいて検索する機能と、入力装置25により入力された出発地あるはGPSセンサ31等により検出される車両の現在地から当該希望目的地に至るまでの推奨経路を地図情報データベース23に記録されている道路情報23aに基づいて探索する機能と、の2つの機能を有するもので、特許請求の範囲に記載の「経路探索手段」に相当するものである。
なお、ここにいう「推奨経路」とは、出発地(または現在地)から目的地に到るまでの総経路長が最短である距離的最短経路のほか、交通情報取得プログラム22c等により取得した道路交通情報72bに基づいた交通渋滞等を加味して出発地(または現在地)から目的地に到るまでの総所要時間が最短である時間的最短経路をも含む概念である。
仮想時刻設定プログラム22eは、後述する仮想出発時刻や仮想到着時刻を設定する機能を有するもので、特許請求の範囲に記載の「仮想出発時刻設定手段」および「仮想到着時刻設定手段」に相当するものである。例えば、CPU21に内蔵された時計21aから取得される現在時刻と当該現在時刻から所定時間(例えば30分)間隔で1時間30分後まで合計4種類の時刻を仮想出発時刻として設定したり、また推定到着時刻算出プログラム22fにより算出された推定到着時刻に所定時間(例えば30分)ずつ加え、推定到着時刻から1時間30分後までの時刻を仮想到着時刻として設定する。
推定到着時刻算出プログラム22fは、例えば、任意の出発時刻に出発地を出発して経路探索プログラム22dにより探索された推奨経路を走行した場合に要する推定所要時間を、交通情報取得プログラム22c等により取得した道路交通情報72bに基づいた交通渋滞等を考慮して算出するほか、この推定所要時間に出発時刻を加算することによって推定到着時刻を算出する機能を有するもので、特許請求の範囲に記載の「到着時刻推定手段」に相当するものである。
描画プログラム22gは、各種画面情報をディスプレィ26に線図として描画する機能のほか、地図情報データベース23の道路情報23aをもとに地図を描画したり、経路探索プログラム22dにより探索された推奨経路を地図上に描画する機能の有する。また仮想時刻設定プログラム22eにより設定された仮想出発時刻等や推定到着時刻算出プログラム22fにより算出された推定所要時間あるいは推定到着時刻を、時間軸を横軸に設定した帯状表示の長さとして表現したりする機能を有するものである(図3参照)。なお、この描画プログラム22gは、特許請求の範囲に記載の「表示制御手段」に相当するものである。
次に、本ナビゲーション装置20により処理される旅行情報提供プログラムの流れを図2〜図6に基づいて説明する。なお、以下説明する旅行情報提供プログラムによる各処理は、前述した入力プログラム22b、交通情報取得プログラム22c、経路探索プログラム22d、仮想時刻設定プログラム22e、推定到着時刻算出プログラム22fおよび描画プログラム22gにより実行されるもので、システムプログラム22aのメインルーチンから起動されるものである。
図2に示すように、ナビゲーション装置20により処理される旅行情報提供プログラムでは、まずステップS101により出発地と目的地を入力する処理が行われる。具体的には、入力プログラム22bにより描画プログラム22gを介してディスプレィ26に所定の入力画面を表示させることにより、タッチパネル等の入力装置25を介して経路案内を希望する目的地や出発地を選択したり、あるいは目的地名称や出発地名称をテキストボックスに入力する等の入力操作を利用者に促す。また現在地を出発地とするような場合には、このような入力操作を利用者に強いることなく、ナビゲーション装置20を搭載した車両の現在位置データをGPSセンサ31やジャイロセンサ33から取得し、これを出発地として設定することもできる。これにより、入力された当該目的地に関する目的地情報および出発地に関する出発地情報は、メモリ22の作業領域等に記憶されるので、経路探索プログラム22d等に対する当該出発地情報および目的地情報の受渡しを可能にしている。
次のステップS103では、出発時刻を入力する処理が行われる。この入力処理も、前述のステップS101と同様に、描画プログラム22gを介してディスプレィ26に所定の入力画面を表示させることにより、利用者に、タッチパネル等の入力装置25を介して希望する出発地の出発時刻を選択したり、当該時刻をテキストボックスに入力する等の入力操作を促す。また現在時刻を出発時刻とするような場合には、このような入力操作を利用者に強いることなく、ナビゲーション装置20のCPU21に内蔵された時計21aから取得される現在時刻を出発時刻として設定することもできる。これにより、入力された当該出発時刻は、メモリ22の作業領域等に記憶されて、仮想時刻設定プログラム22e等に対する当該出発時刻の受渡しを可能にしている。
続くステップS105では、複数の仮想出発時刻を設定する処理が行われる。この処理は、仮想時刻設定プログラム22eにより実行されるもので、特許請求の範囲に記載の「仮想出発時刻設定手段」に相当するものである。例えば、ステップS103により入力された出発時刻(現在時刻)と、これ対して所定時間の30分間隔で1時間30分後までの合計4種類の時刻と、を仮想出発時刻として設定する。具体例を挙げると、出発時刻を午前7時とすれは、この「午前7時00分」と、これに30分間隔で1時間30分後までの「午前7時30分」、「午前8時00分」、「午前8時30分」との4種類の仮想出発時刻が設定される。
なお、仮想出発時刻の設定の際に、上記4種類の仮想出発時刻に加え、ステップS103で入力された出発時刻から所定時間間隔だけ早い時刻(上記例では入力された出発時刻「午前7時」に対して所定時間間隔「30分」だけ早い時刻「午前6時30分」)を追加することも好適である。
次のステップS107では、交通情報を取得する処理が行われる。この処理は、交通情報取得プログラム22cにより実行されるもので、情報センタ70から通信装置35を介して、例えば、ステップS101で入力等された出発地から目的地までを半径とした円内エリアにおける現在の道路交通情報72bを取得するほか、ステップS105で設定した仮想出発時間ごとに、当該エリアにおける各道路それぞれについての過去の所要時間データを道路交通情報72bとして情報センタ70から取得する。
例えば、先の具体例では「午前7時00分」、「午前7時30分」、「午前8時00分」、「午前8時30分」の4種類の仮想出発時刻ごとに道路交通情報72bを取得する。このステップS107により取得された道路交通情報72bには、道路に設置されたセンサからのデータに基づく道路の混雑の度合、もしくは各道路を通過する車両の平均車速が含まれ、さらに過去の道路交通情報から推定された今後の、各道路の混雑の度合もしくは各道路を通過する際の車速の推定値が含まれる。
また、このステップS107による交通情報の取得処理は、仮想出発時刻を基準に取得する場合に限られることはなく、例えば、当該エリアの交通情報を出発時刻から所定時間経過後までの間で5分間隔ごとに取得するように行っても良い。これにより、次のステップS109により、車両の進行に伴う時間経過も考慮した道路交通情報72bを取得できるので、時々刻々と変化する交通渋滞等の道路交通事情に対応した時間的最短経路の探索を行うことができる。
ステップS109では、仮想出発時刻ごとに経路を探索する処理が行われる。この処理は、経路探索プログラム22dにより実行されるもので、特許請求の範囲に記載の「経路探索手段」に相当するものである。具体的には、ステップS107により取得された道路交通情報72bに基づく交通渋滞等を考慮して、出発地(または現在地)から目的地に到るまでの所要時間の合計が最短である時間的最短経路、つまり最も短い時間で目的地に到達できる経路が、仮想出発時刻ごとに探索される。そのため、複数の仮想出発時刻に対して、それぞれ異なる時間的最短経路が探索される場合もある。
例えば、先の具体例では「午前7時00分」、「午前7時30分」、「午前8時00分」、「午前8時30分」の4種類の仮想出発時刻ごとに、時間的最短経路がそれぞれ探索され、「午前7時00分」および「午前7時30分」に出発した場合には推奨経路Aが、また「午前8時00分」および「午前8時30分」に出発した場合には推奨経路Bが、それぞれ探索される。
このステップS109による所要時間は、各道路リンクごとに直接データとして指定されて地図情報データベース23に蓄積されたものを、当該推奨経路に関して積算することにより算出されるが、一般道、高速道路等の道路種別ごとに平均車速を設定することにより、その道路リンクの長さをこの平均車速で除することで所要時間を算出しても良い。このように算出された所要時間の累積結果をコスト関数として演算することにより、出発地から目的地まで到達する道路リンクの集合のうちから、最小コストの道路リンクの集合を時間的最短経路として選択し、推奨経路が探索される。
また、ステップS107により、例えば、出発時刻から所定時間経過後までの間で5分間隔ごとに道路交通情報72bを取得している場合には、車両の進行に伴う時間経過を考慮しながら、時々刻々と変化する交通渋滞等の道路交通事情に対応した時間的最短経路を探索することができるので、より道路交通事情に即した当該経路を仮想出発時刻ごとを得ることができる。
なお、各道路リンクの日時毎の所要時間が地図情報データベース23等に予め蓄積されている場合には、ステップS107による交通情報を取得する処理を行わなくとも当該地図情報データベース23内の所要時間データを用いることで、コスト関数を算出することもできる。但し、最新の交通情報を得られる点では、外部の情報センタ70から道路交通情報72bを取得する方が望ましい。
続くステップS111では、推定到着時刻を算出する処理が行われる。この処理は、推定到着時刻算出プログラム22fにより実行されるもので、特許請求の範囲に記載の「到着時刻推定手段」に相当するものである。
即ち、このステップS111では、ステップS109により仮想出発時刻ごとに探索された推奨経路を、仮想出発時刻に出発地を出発し目的地に到着するとした場合において推定される推定到着時刻が算出される。この推定到着時刻の算出は、ステップS107で取得した道路交通情報72bに含まれる、今後の交通渋滞予想を参照しながら行われるため、例えば、現在時刻に出発地を出発した場合の各道路リンクの所要時間が参照され、現在時刻に当該所要時間を加えたものが推定到着時刻となる。また、ステップS107により、例えば、出発時刻から所定時間経過後までの間で5分間隔ごとに道路交通情報72bを取得している場合には、車両の進行に伴う時間経過を考慮しながら、時々刻々と変化する交通渋滞等の道路交通事情に対応した推定到着時刻を算出することができる。
なお、出発時刻が変われば、道路交通情報72bに含まれる各道路リンクごとの所要時間も変化するので、出発地から目的地までの所要時間も変化することがある。例えば、先の具体例では「午前7時00分」における探索経路上の一部の区間が通勤ラッシュによる混雑が発生しており、所要時間が2時間30分かかる場合であっても、その30分後には、その通勤ラッシュが解消することが過去のデータから判明しているときは、「午前7時30分」に出発した場合の所要時間が2時間15分というように、15分短くなることがある。
続くステップS113では、仮想出発時刻および推定到着時刻、または推奨経路を表示する処理が行われる。この処理は、描画プログラム22gにより実行されるもので、特許請求の範囲に記載の「表示制御手段」に相当するものである。
即ち、ステップS113では、時刻軸を横軸とし、複数の仮想出発時刻および当該複数の仮想出発時刻にそれぞれ対応する推定到着時刻を縦軸方向に並べて、ディスプレィ26に表示する。例えば先の具体例においては、図3に示すように、仮想出発時刻、旅行時間(推定所要時間)および推定到着時刻が表示される。
ここで、図3の表示例について説明する。この表示例は、先の具体例により、ステップS105において、仮想出発時刻を「午前7時00分」、「午前7時30分」、「午前8時00分」、「午前8時30分」の4種類に設定した場合のものであるため、午前7時前から午前11時過ぎに到る時刻軸を横軸として表し、仮想出発時刻である「午前7時00分」、「午前7時30分」、「午前8時00分」および「午前8時30分」のそれぞれについて、表示画面左端から右側方向に向かって延びる幅太帯表示Gs1〜Gs4の長さによって時刻表現を行っている。
また、この仮想出発時刻を表す幅太帯表示において、幅太帯表示Gs1、Gs2と幅太帯表示Gs3、Gs4との表示色が異なって表現されているのは、この例の場合には、ステップS109により、「午前7時00分」および「午前7時30分」に出発した場合には推奨経路Aが探索され、「午前8時00分」および「午前8時30分」に出発した場合には推奨経路Bが探索されていることから、それぞれの推奨経路ごとに区別して仮想出発時刻を表現するためである。
一方、推定到着時刻についても、同じ時刻軸に対して、それぞれの仮想出発時刻に対応させて幅太帯表示を行っている。本例の場合には、仮想出発時刻である「午前7時00分」に対する推定到着時刻として「午前9時30分」、「午前7時30分」に対する推定到着時刻として「午前9時45分」、「午前8時00分」に対する推定到着時刻として「午前10時00分」、「午前8時30分」に対する推定到着時刻として「午前10時30分」、をそれぞれ表示画面右端から左側方向に向かって延びる幅太帯表示Ga1〜Ga4の長さによって時刻表現を行っている。なお、この推定到着時刻を表す幅太帯表示においても、幅太帯表示Ga1、Ga2と幅太帯表示Ga3、Ga4との表示色が異なって表現されているのは、この例の場合には、ステップS109により探索された推奨経路が、経路A、Bの2種類存在し、それぞれの推奨経路ごとに区別して表現するためである。
推定所要時間である旅行時間については、幅太帯表示Gs1〜Gs4により表現された仮想出発時刻と幅太帯表示Ga1〜Ga4により表現された推定到着時刻との間に、それぞれの仮想出発時刻に対応して幅細帯状に時間表現されている。
即ち、本例の場合には、仮想出発時刻である「午前7時00分」に対する旅行時間として「2時間30分」の長さに設定された幅細表示Gt1が、仮想出発時刻の幅太帯表示Gs1と推定到着時刻の幅太帯表示Ga1との間に表示されている。また仮想出発時刻である「午前7時30分」に対する旅行時間についても同様に、「2時間15分」の長さに設定された幅細表示Gt2が、仮想出発時刻の幅太帯表示Gs2と推定到着時刻の幅太帯表示Ga2との間に表示されている。同様に「2時間00分」の長さに設定された幅細表示Gt3が、仮想出発時刻の幅太帯表示Gs3と推定到着時刻の幅太帯表示Ga3との間に表示され、また「2時間00分」の長さに設定された幅細表示Gt4が、仮想出発時刻の幅太帯表示Gs4と推定到着時刻の幅太帯表示Ga4との間に表示されている。
ここで、仮想出発時刻を「午前7時00分」に設定した場合よりも、仮想出発時刻を「午前7時30分」に設定した場合の方が、旅行時間の幅細帯表示Gt2が15分短く表現されているのは、前述したように、出発時刻が変われば、道路交通情報72bに含まれる各道路リンクごとの所要時間も変化し、この場合には、出発地から目的地までの旅行時間(所要時間)が短縮されたためである。
このように本例の場合では、推奨経路Aを進行するときには、出発時刻によって旅行時間が15分程度変動することがあり、また推奨経路Bを進行するときには、出発時刻が午前8時00分から同30分までの間においては、2時間00分の旅行時間が変動しないことがわかる。即ち、ステップS113により、仮想出発時刻およびこれから推定される推定到着時刻を、横軸である時間軸に沿って縦軸方向に複数並べられた状態でディスプレィ26にグラフィック表示させるため、利用者は、視覚的にそれらの違いを把握することができる。
つまり、利用者は、ステップS113により、ディスプレィ26に表示された「複数の仮想出発時刻および複数の推定到着時刻」の差異を視覚的に一見して把握することができるので、複数の仮想出発時刻から推定される推定到着時刻のうちから、どの出発時刻を選択すれば時間的に効率良く目的地に到着することができる等の旅行情報を事前に得ることができる。したがって、道路交通事情の経時変化を視覚的に把握し易く表示することで、旅行計画を容易に立案可能な旅行情報を提供することができる。
このステップS113では、または複数の仮想出発時刻にそれぞれ対応する推奨経路をディスプレィ26に表示する処理が行われる。例えば、図3に示す画面表示の例では、ディスプレィ26による表示枠内のいずれかを手等でタッチすると、図4に示すような経路表示画面に切り替り、道路地図上に表された推奨経路A、Bとともに仮想出発時刻、旅行時間が表示される。なお、この道路地図は、地図情報データベース23に格納されている地図データに基づいて作画される。
即ち、図4に示すように、道路地図上に推奨経路A、Bを他の道路表示とは異なる色あるいは太さで表した経路表示をディスプレィ26の画面左側に表示し、同画面の右側にそれぞれの推奨経路A、Bに対する仮想出発時刻と旅行時間とを数値表示している。例えば、本例の場合、経路Aについては、仮想出発時刻「午前7時00分」に対する旅行時間「2時間30分」と、仮想出発時刻「午前7時30分」に対する旅行時間「2時間15分」と、を画面右側上方に表示し、経路Bについては、仮想出発時刻「午前8時00分」に対する旅行時間「2時間00分」と、仮想出発時刻「午前8時30分」に対する旅行時間「2時間00分」と、を画面右側下方に表示している。
このようにステップS113では、図3に示すような時間要素を主要表示内容として表す表示形態と、図4に示すような経路要素を主要表示内容として表す表示形態と、の双方を表示できるように、描画プログラム22gにより表示演算処理を行っている。これにより、複数の仮想出発時刻ごとに推奨経路が異なる場合には、それらの経路の違いをディスプレィ26による画面表示によって、視覚的に容易に把握することができるので、利用者は、図3に示すように、ディスプレィ26に帯状表示された「複数の仮想出発時刻および複数の推定到着時刻」を参照できるばかりでなく、図4に示すように、複数の仮想出発時刻ごとに異なる推奨経路A、Bの相違についても、旅行情報として事前に得ることができる。
また、時間の経過に伴って推定所要時間最小の経路が同時に表示されるので、利用者は、推奨経路と推定所要時間の双方を比較して出発時刻を決めることができる。具体的には、経路によっては道路が細く歩道がないような道路は歩行者に気を使うから通りたくないとか、逆に車線数が多く、平均車速が高いような道路は危険だから通りたくないとか、利用者の嗜好によってできれば避けたい経路がある。また推奨経路によっては立ち寄りたい店がある場合もある。一方、なるべく運転時間が短い方がよい(所要時間は短い方が良い)と考える利用者も多い。そのような場合に、推奨経路と推定所要時間を同時に比較して旅行計画を立てることができる。
つまり、図3および図4に示す例では、利用者は、時間の経過による道路交通事情の変化に基づいた旅行情報によって、推奨経路Aまたは推奨経路Bを選択することができる。したがって、道路交通事情の経時変化に伴う推奨経路の相違を視覚的に把握し易く表示することで、旅行計画を容易に立案可能な旅行情報を提供することができる。
以上説明したように、本第1実施形態に係るナビゲーション装置20および旅行情報提供プログラムによると、仮想時刻設定プログラム22e(S105)により複数の仮想出発時刻を設定し、推定到着時刻算出プログラム22f(S111)により、複数の仮想出発時刻ごとに経路探索プログラム22d(S109)により探索された推奨経路を仮想出発時刻に出発地を出発し目的地に到着するとした場合において推定される、推定到着時刻を算出し、描画プログラム22g(S113)により、複数の仮想出発時刻Gs1〜Gs4および当該複数の仮想出発時刻Gs1〜Gs4にそれぞれ対応した複数の推定到着時刻Ga1〜Ga4をディスプレィ26に表示させる。これにより、利用者は、ディスプレィ26に表示された「複数の仮想出発時刻Gs1〜Gs4および複数の推定到着時刻Ga1〜Ga4」を参照できるので、現在時刻から推定される推定到着時刻のみならず、将来の仮想出発時刻(Gs1〜Gs4)から推定される推定到着時刻(Ga1〜Ga4)についても、旅行情報として事前に得ることができる。
つまり、所定時間間隔ごとに推定到着時刻が算出されディスプレィ26に表示されるので、利用者は今後の所要時間または到着時刻を目安にしながら出発時刻を決めることができる。即ち、利用者は、これら提示された旅行情報に基づいて、いつごろ出発したらいつごろ目的地に到着できるかを把握することができる。また、時間の経過とともに推定所要時間が最小となる経路が変化する場合には、各々の時刻に対する推定所要時間最小の経路を利用者に提示することができるので、利用者は、出発時刻に応じて所要時間が短くなる経路がどこを通過するかといったことが把握することができ、旅行計画を柔軟に見積もることができる。したがって、道路交通事情の経時変化に基づいて旅行計画を立案可能な旅行情報を利用者に提供することができる。
なお、以上説明した第1実施形態では、車両に搭載されるタイプのナビゲーション装置で、すべての演算制御処理を行うことを前提としたが、例えば、ナビゲーション装置20から、出発地情報、目的地情報出発時刻情報を特定の情報センタ70に送信し、それを受信(図2に示すS101、S103)した情報センタ70内で、仮想出発時刻の設定(同図のS105)、交通情報の取得(同図のS107)、経路探索(同図のS109)、推定到着時刻の算出(同図のS111)を行い、その結果である「複数の仮想出発時刻のデータおよび当該複数の仮想出発時刻にそれぞれ対応した複数の推定到着時刻のデータ」を当該情報センタ70の通信装置74から車載のナビゲーション装置20に送信し、それを車載のナビゲーション装置20で受信するといった、いわゆる通信型のナビゲーション装置20において、情報センタ70内のコンピュータに旅行情報提供プログラムによる処理を行わせても良い。
また、図2に示すステップS111により算出された推定到着時刻に時間的な幅が存在する場合には、図5に示すような曖昧表示を行っても良い。
即ち、旅行時間と推定到着時刻との境界を、図3に示すように直線によって表現するのではなく、推定到着時刻に時間的な幅の度合いを振幅で表現した鋸刃状の折れ線によって曖昧表示Gw1〜Gw4を行っている。例えば、図5に示す推定到着時刻Ga1の曖昧表示Gw1は、午前9時30分を中心に±7.5分(時間幅15分)の時間誤差が生じ得ることを鋸刃状の折れ線の振幅によって表している。同様に、推定到着時刻Ga2の曖昧表示Gw2は、午前9時45分を中心に±15分(時間幅30分)の時間誤差が生じ得ること、また推定到着時刻Ga3の曖昧表示Gw3は、午前10時00分を中心に±7.5分(時間幅15分)の時間誤差が生じ得ること、さらに推定到着時刻Ga4の曖昧表示Gw4は、午前10時30分を中心に±5分(時間幅10分)の時間誤差が生じ得ること、をそれぞれ鋸刃状の折れ線の振幅によって表している。
これにより、推定到着時刻が含む誤差を表現することができるので、推定到着時刻の曖昧さを利用者に明示することができる。なお、このような「曖昧表示」は、例えば、旅行時間を表す幅細帯表示Gt1等と推定到着時刻を表す幅太帯表示Ga1等との境界を線により区分けすることなく、双方の表示色による濃淡により色が自然に移り変わるように表現した、いわゆる「ぼかし」や「モザイク」によるものであっても良い。
さらに、ステップS105において、仮想出発時刻をさらに細かく、例えば5分間間隔で設定しておき、各仮想出発時刻ごとに経路の所要時間を推定し、算出した推定所要時間が所定時間(例えば15分)以上異なる場合の仮想出発時刻のみをステップS113による表示の対象とする、時間フィルタをかける処理を行う。これにより、図6に示すようなフィルタリング表示をディスプレィ26に行わせることができる。
図6では、所要時間が2時間30分、2時間00分、1時間45分さらに2時間00分、となる、それぞれの仮想出発時刻、7時00分、8時15分、9時00分、9時10分の場合が表示されている。このように表示させることで、利用者には、今後、所要時間が変化するのが今から何分後であるかを提示することができるので、利用者にとっては、今後の交通渋滞の変化を見越して出発時間の調整を行うことができるようになる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のナビゲーション装置により処理される旅行情報提供プログラムの流れを図7〜図9に基づいて説明する。なお、以下説明する第2実施形態に係る旅行情報提供プログラムを実行するハードウェアは、前述したナビゲーション装置20と同様に構成されるため、それらの説明を省略するとともに、必要に応じて図1に示す符号を参照して説明する。またこの第2実施形態に係る旅行情報提供プログラムによる各処理も、第1実施形態の入力プログラム22b、交通情報取得プログラム22c、経路探索プログラム22d、仮想時刻設定プログラム22e、推奨出発時刻算出プログラムおよび描画プログラム22gにより実行されるもので、システムプログラム22aのメインルーチンから起動されるものである。
なお、「推奨出発時刻算出プログラム」は、仮想時刻設定プログラム22eにより設定された複数の仮想到着時刻ごとに、それぞれの当該仮想到着時刻に到着するために、出発地を出発すべき推奨出発時刻を算出する機能を有するもので、特許請求の範囲に記載の「出発時刻推定手段」に相当するものである。
図7に示すように、本第2実施形態のナビゲーション装置20により処理される旅行情報提供プログラムでは、まずステップS201により出発地と目的地を入力する処理が行われる。この処理は、図2に示すステップS101と同様であり、具体的な入力方法等についても同様であるため、それら説明を省略する。
続くステップS205では、交通情報を取得する処理が行われる。この処理も、図2に示すステップS105とほぼ同様である。具体的には、情報センタ70から通信装置35を介して、例えば、ステップS201で入力等された出発地から目的地までを半径とした円内エリアにおける現在時刻における道路交通情報72bを取得する。なお、現在時刻は、図1に示すように、ナビゲーション装置20のCPU21に内蔵された時計21aから取得される現在時刻を利用する。
また、このステップS205による交通情報の取得処理は、現在時刻を基準に取得する場合に限られることはなく、例えば、当該エリアの交通情報を現在時刻から所定時間経過後までの間で5分間隔ごとに取得するように行っても良い。これにより、次のステップS207により、車両の進行に伴う時間経過も考慮した道路交通情報72bを取得できるので、時々刻々と変化する交通渋滞等の道路交通事情に対応した時間的最短経路の探索を行うことができる。
次のステップS207では、現在時刻について経路を探索する処理が行われる。この処理は、経路探索プログラム22dにより実行されるもので、特許請求の範囲に記載の「経路探索手段」に相当するものである。具体的には、ステップS207により取得された道路交通情報72bに基づく交通渋滞等を考慮して、出発地(または現在地)から目的地に到るまでの所要時間の合計が最短である時間的最短経路、つまり最も短い時間で目的地に到達できる経路を現在時刻について探索する。またこのステップS207においては、探索した結果、所要時間の合計が最短にならなかった他の経路についても、記憶しておく。これらの経路は、現在時刻については時間的最短経路にならなくても、ステップS211により設定される将来の仮想到着時刻については時間的最短経路になり得る可能性があるからである。
このステップS207による所要時間は、各道路リンクごとに直接データとして指定されて地図情報データベース23に蓄積されたものを、当該推奨経路に関して積算することにより算出されるが、一般道、高速道路等の道路種別ごとに平均車速を設定することにより、その道路リンクの長さをこの平均車速で除することで所要時間を算出しても良い。このように算出された所要時間の累積結果をコスト関数として演算することにより、出発地から目的地まで到達する道路リンクの集合のうちから、最小コストの道路リンクの集合を時間的最短経路として選択し、推奨経路が探索される。
また、ステップS205により、例えば、出発時刻から所定時間経過後までの間で5分間隔ごとに道路交通情報72bを取得している場合には、車両の進行に伴う時間経過を考慮しながら、時々刻々と変化する交通渋滞等の道路交通事情に対応した時間的最短経路を探索することができるので、より道路交通事情に即した当該経路を仮想出発時刻ごとを得ることができる。
なお、各道路リンクの日時毎の所要時間が地図情報データベース23等に予め蓄積されている場合には、ステップS205による交通情報を取得する処理を行わなくとも当該地図情報データベース23内の所要時間データを用いることで、コスト関数を算出することもできる。但し、最新の交通情報を得られる点では、外部の情報センタ70から道路交通情報72bを取得する方が望ましい。
続くステップS209では、推定到着時刻を算出する処理が行われる。この処理は、推定到着時刻算出プログラム22fにより実行されるもので、特許請求の範囲に記載の「到着時刻推定手段」に相当するものである。
即ち、このステップS111では、ステップS207により現在時刻について探索された推奨経路を、現在時刻に出発地を出発し目的地に到着するとした場合において推定される推定到着時刻が算出される。この推定到着時刻の算出は、ステップS205で取得した道路交通情報72bに含まれる、今後の交通渋滞予想を参照しながら行われるため、例えば、現在時刻に出発地を出発した場合の各道路リンクの所要時間が参照され、現在時刻に当該所要時間を加えたものが推定到着時刻となる。また、ステップS205により、例えば、出発時刻から所定時間経過後までの間で5分間隔ごとに道路交通情報72bを取得している場合には、車両の進行に伴う時間経過を考慮しながら、時々刻々と変化する交通渋滞等の道路交通事情に対応した推定到着時刻を算出することができる。
続くステップS211では、複数の仮想到着時刻を設定する処理が行われる。この処理は、仮想時刻設定プログラム22eにより実行されるもので、特許請求の範囲に記載の「仮想出発時刻設定手段」に相当するものである。例えば、ステップS209により推定された推定到着時刻と、これ対して所定時間間隔(例えば30分間隔)あるいは任意時間間隔で合計4種類の時刻と、を仮想到着時刻として設定する。具体例を挙げると、推定到着時刻を午前9時30分とすれは、この「午前9時30分」と、この15分後の「午前9時45分」、これの30分後の「午前10時15分」、これの30分後の「午前10時45分」との4種類の仮想到着時刻が設定される。
次のステップS213では、推奨出発時刻を算出する処理が行われる。この処理は、推奨出発時刻算出プログラムにより実行されるもので、特許請求の範囲に記載の「出発時刻推定手段」に相当するものである。
即ち、このステップS213では、ステップS211により設定された複数の仮想到着時刻ごとに、それぞれの当該仮想到着時刻に到着するために、出発地を出発すべき推奨出発時刻が算出される。例えば、推定到着時刻から30分後に設定された仮想到着時刻に対応する推奨出発時刻を算出するには、まず現在時刻から30分後を出発時刻と仮定してS209と同様に、到着時刻を推定する。そして、この推定した到着時刻が目標の仮想到着時刻より5分早ければ出発時刻をさらに5分後として再度到着時刻を推定する。この処理を数回繰り返すことによりほぼ仮想到着時刻に対する出発時刻を算出することができる。最終的に算出した出発時刻を推奨出発時刻として採用する。このような処理を複数の仮想到着時刻に対してそれぞれ行うことにより、それぞれの当該仮想到着時刻に対する推奨出発時刻が算出される。なお推定所要時間はこのような処理の途中に算出される。
また、ステップS207により記憶されている、所要時間の合計が最短にならなかった他の経路についても、このような処理を行い、さらに複数の仮想到着時刻に対してもそれぞれ行うことにより、それぞれの当該仮想到着時刻に対する推奨出発時刻が算出される。これにより、複数の仮想到着時刻に対して、それぞれ異なる時間的最短経路が探索される場合もある。さらに、ステップS205により、例えば、出発時刻から所定時間経過後までの間で5分間隔ごとに道路交通情報72bを取得している場合には、車両の進行に伴う時間経過を考慮しながら、時々刻々と変化する交通渋滞等の道路交通事情に対応した推奨出発時刻を算出することができる。
例えば、前述の具体例では「午前9時30分」、「午前9時45分」、「午前10時15分」および「午前10時45分」の4種類の仮想到着時刻ごとに、時間的最短経路がそれぞれ探索され、仮想到着時刻「午前9時30分」に対し推奨出発時刻「午前7時00分」、仮想到着時刻「午前9時45分」に対し推奨出発時刻「午前7時30分」、仮想到着時刻「午前10時15分」に対し推奨出発時刻「午前8時15分」、仮想到着時刻「午前10時45分」に対し推奨出発時刻「午前8時45分」が、それぞれ算出される。また「午前9時30分」および「午前9時45分」に到着した場合には推奨経路C、「午前10時15分」および「午前10時45分」に到着した場合には推奨経路D、がそれぞれ探索される。
また、到着時刻が変われば、道路交通情報72bに含まれる各道路リンクごとの所要時間も変化するので、出発地から目的地までの所要時間も変化することがある。これは、図2に示すステップS111で既に説明したことと同様である。例えば、前記の具体例では、推奨経路Cについて仮想到着時刻が、「午前9時30分」の場合と「午前9時45分」の場合とを比較すると、仮想到着時刻が「午前9時45分」の場合には、旅行時間(推定所要時間)が15分短縮されているように、探索経路上の交通渋滞等の道路交通事情によって変動することがある。
続くステップS215では、推奨出発時刻および仮想到着時刻、または推奨経路を表示する処理が行われる。この処理は、描画プログラム22gにより実行されるもので、特許請求の範囲に記載の「表示制御手段」に相当するものである。なおこの処理は、図2に示すステップS113により「仮想出発時刻および推定到着時刻」を表示していたところを「推奨出発時刻および仮想到着時刻」に置き換えれば、ステップS113とほぼ同様である。そのため、表示処理の詳細については説明を省略する。
例えば、前述の具体例においては、図8に示すように、推奨出発時刻、旅行時間(推定所要時間)および仮想到着時刻が表示される。この表示例は、前述の具体例により、ステップS211において、仮想到着時刻を「午前9時30分」、「午前9時45分」、「午前10時15分」、「午前10時45分」の4種類に設定した場合のものであるため、午前7時前から午前11時過ぎに到る時刻軸を横軸として表し、仮想到着時刻である「午前9時30分」、「午前9時45分」、「午前10時15分」、「午前10時45分」のそれぞれについて、表示画面左端から右側方向に向かって延びる幅太帯表示Gs5〜Gs8の長さによって時刻表現を行っている。
また、この仮想到着時刻を表す幅太帯表示において、幅太帯表示Gs5、Gs6と幅太帯表示Gs7、Gs8との表示色が異なって表現されているのは、この例の場合には、ステップS207とステップS213により、「午前9時30分」および「午前9時45分」に到着した場合には推奨経路Cが探索、選択され、「午前10時15分」および「午前10時45分」に到着した場合には推奨経路Dが探索、選択されていることから、それぞれの推奨経路ごとに区別して仮想到着時刻を表現するためである。
一方、推奨出発時刻についても、同じ時刻軸に対して、それぞれの仮想到着時刻に対応させて幅太帯表示を行っている。本例の場合には、仮想到着時刻である「午前9時30分」に対する推奨出発時刻として「午前7時00分」、「午前9時45分」に対する推奨出発時刻として「午前7時30分」、「午前10時15分」に対する推奨出発時刻として「午前8時15分」、「午前10時45分」に対する推奨出発時刻として「午前8時45分」、をそれぞれ表示画面右端から左側方向に向かって延びる幅太帯表示Ga5〜Ga8の長さによって時刻表現を行っている。なお、この推奨出発時刻を表す幅太帯表示においても、幅太帯表示Ga5、Ga6と幅太帯表示Ga7、Ga8との表示色が異なって表現されているのは、この例の場合には、ステップS207とステップS213により探索、選択された推奨経路が、経路C、Dの2種類存在し、それぞれの推奨経路ごとに区別して表現するためである。
推定所要時間である旅行時間については、幅太帯表示Gs5〜Gs8により表現された仮想到着時刻と幅太帯表示Ga5〜Ga8により表現された推奨出発時刻との間に、それぞれの仮想到着時刻に対応して幅細帯状に時間表現されている。
即ち、本例の場合には、仮想到着時刻である「午前9時30分」に対する旅行時間として「2時間30分」の長さに設定された幅細表示Gt5が、仮想到着時刻の幅太帯表示Gs5と推奨出発時刻の幅太帯表示Ga5との間に表示されている。また仮想出発時刻である「午前9時45分」に対する旅行時間についても同様に、「2時間15分」の長さに設定された幅細表示Gt6が、幅太帯表示Gs6と幅太帯表示Ga6との間に表示され、同様に「2時間00分」の長さに設定された幅細表示Gt7が、幅太帯表示Gs7と幅太帯表示Ga7との間に表示され、また「2時間00分」の長さに設定された幅細表示Gt8が、幅太帯表示Gs8と幅太帯表示Ga8との間に表示されている。
ここで、仮想到着時刻を「午前9時30分」に設定した場合よりも、仮想到着時刻を「午前9時45分」に設定した場合の方が、旅行時間の幅細帯表示Gt6が15分短く表現されているのは、前述したように、到着時刻が変われば、道路交通情報72bに含まれる各道路リンクごとの所要時間も変化し、この場合には、出発地から目的地までの旅行時間(所要時間)が短縮されたためである。
このようにステップS215により、仮想到着時刻およびこれから算出される推奨出発時刻を、横軸である時間軸に沿って縦軸方向に複数並べられた状態でディスプレィ26にグラフィック表示させるため、利用者は、視覚的にそれらの違いを把握することができる。
つまり、利用者は、ステップS215により、ディスプレィ26に表示された「複数の仮想到着時刻および複数の推奨出発時刻」の差異を視覚的に一見して把握することができるので、複数の仮想到着時刻から算出される推奨出発時刻のうちから、どの出発時刻を選択すれば時間的に効率良く目的地に到着することができる等の旅行情報を事前に得ることができる。したがって、道路交通事情の経時変化を視覚的に把握し易く表示することで、旅行計画を容易に立案可能な旅行情報を提供することができる。
このステップS215では、または複数の仮想到着時刻にそれぞれ対応する推奨経路をディスプレィ26に表示する処理が行われる。例えば、図8に示す画面表示の例では、ディスプレィ26による表示枠内のいずれかを手等でタッチすると、第1実施形態による図4に示すような経路表示画面に切り替る。そして、前述の第1実施形態と同様に、道路地図上に表された推奨経路C、Dとともに仮想到着時刻、旅行時間が表示される(図4に示す「経路A」、「経路B」をそれぞれ「経路C」、「経路D」に変更し、また「出発時刻」を「到着時刻」に変更したものがこれに相当する)。なお、この道路地図は、地図情報データベース23に格納されている地図データに基づいて作画される。
このようにステップS215では、図8に示すような時間要素を主要表示内容として表す表示形態と、図4に示すような経路要素を主要表示内容として表す表示形態と、の双方を表示できるように、描画プログラム22gにより表示演算処理を行っている。これにより、複数の仮想到着時刻ごとに推奨経路が異なる場合には、それらの経路の違いをディスプレィ26による画面表示によって、視覚的に容易に把握することができるので、利用者は、図8に示すように、ディスプレィ26に帯状表示された「複数の仮想到着時刻および複数の推奨出発時刻」を参照できるばかりでなく、図4に示すように、複数の仮想到着時刻ごとに異なる推奨経路C(Aの置き換え)、D(Bの置き換え)の相違についても、旅行情報として事前に得ることができる。
つまり、図8および図4に示す例では、第1実施形態によるものと同様に、利用者は、時間の経過による道路交通事情の変化に基づいた旅行情報によって、推奨経路Cまたは推奨経路Dを選択することができる。したがって、道路交通事情の経時変化に伴う推奨経路の相違を視覚的に把握し易く表示することで、旅行計画を容易に立案可能な旅行情報を提供することができる。
以上説明したように、本第2実施形態に係るナビゲーション装置20および旅行情報提供プログラムによると、推定到着時刻算出プログラム22f(S209)により、現在時刻について経路探索プログラム22d(S207)により探索された推奨経路を当該現在時刻に出発地を出発し目的地に到着するとした場合において推定される、推定到着時刻を算出し、仮想時刻設定プログラム22e(S211)により、推定到着時刻から所定時間間隔で複数の仮想到着時刻を設定し、推奨出発時刻算出プログラム(S213)により、複数の仮想到着時刻ごとにそれぞれの当該仮想到着時刻に到着するために出発地を出発すべき推奨出発時刻を算出し、描画プログラム22g(S215)により、複数の仮想到着時刻Ga5〜Ga8および当該複数の仮想到着時刻Ga5〜Ga8にそれぞれ対応した複数の推奨出発時刻Gs5〜Gs8をディスプレィ26に表示させる。これにより、利用者は、ディスプレィ26に表示された「複数の仮想到着時刻Ga5〜Ga8および複数の推奨出発時刻Gs5〜Gs8」を参照できるので、現在時刻から推定される推定到着時刻のみならず、この推定到着時刻から所定時間間隔で設定された仮想到着時刻(Ga5〜Ga8)や、当該仮想到着時刻に到着するために出発地を出発すべき推奨出発時刻(Gs5〜Gs8)についても、旅行情報として事前に得ることができる。
つまり、到着時刻を所定時間間隔で設定し、これに対応する推奨出発時刻を算出、表示するので、利用者は目的地への到着時刻に注目して出発時刻を決めることができる。即ち、利用者は、これら提示された旅行情報に基づいて、いつごろ出発したらいつごろ目的地に到着できるかを把握することができる。また、時間の経過とともに推定所要時間が最小となる経路が変化する場合には、各々の時刻に対する推定所要時間最小の経路を利用者に提示することができるので、利用者は、出発時刻に応じて所要時間が短くなる経路がどこを通過するかといったことが把握することができ、旅行計画を柔軟に見積もることができる。したがって、道路交通事情の経時変化に基づいて旅行計画を立案可能な旅行情報を利用者に提供することができる。
なお、前述した第2実施形態に係る旅行情報提供プログラムによる処理のほか、第3の実施形態として、図9に示すように、出発地と目的地を入力し(S301)、利用者が希望する到着時刻を入力し(S303)、この到着時刻に基づいて複数の仮想到着時刻を設定した後(S305)、複数の仮想到着時刻に対する交通情報を取得し(S307)、仮想到着時刻ごとに、それぞれの当該仮想到着時刻に前記目的地に最短時間で到着可能な前記出発地から前記目的地までの経路(最短時間経路)を探索して(S309)、前記仮想到着時刻ごとに前記出発地を出発すべき推奨出発時刻を算出し(S311)、そして推奨出発時刻および仮想到着時刻等をディスプレイ26に表示する(S313)、といったアルゴリズムからなる旅行情報提供プログラムを構成することも好適である。
即ち、前述の第1の実施形態が入力された出発時刻に対して複数の仮想出発時刻を設定するものに対して、本第3の実施形態は、到着時刻を入力し、この入力された到着時刻に対して複数の仮想到着時刻を設定するものである。本第3の実施形態によれば、利用者は旅行計画を立てる際、目的地への到着時刻に着目して、現在地を出発すべき時刻を決定するための旅行情報を得ることができる。
なお、「仮想到着時刻に前記目的地に最短時間で到着可能な前記出発地から前記目的地までの経路」を探索する方法は第2の実施形態で説明した方法と同様に、出発時刻を適当に設定して出発地から目的地までの時間最短経路および推定到着時刻を算出し、算出された推定到着時刻と目標とする仮想到着時刻との差に応じて出発時刻を修正して時間最短経路と推定到着時刻を算出するという演算を数回繰り返すことで実現することができる。また、図9のステップS305で仮想s到着時刻を設定する際には、S303で入力された到着時刻に対して所定時間間隔経過ごとの時刻とともに、入力された到着時刻より所定時間早い時刻を仮想到着時刻として設定することも好適である。即ち、入力された到着時刻の少し前の時刻から仮想到着時刻を設定することで、入力された到着時刻の前後を含めて旅行時間の時刻毎の変化を利用者に提示することができる。
さらに、上記各実施形態における表示例(図3、図4、図5、図6、図8)において、複数の出発時刻(仮想出発時刻あるいは推奨出発時刻)と到着時刻(推定到着時刻あるいは仮想到着時刻)の組のうち、旅行時間が最も短くなる出発時刻と到着時刻の組を、強調して表示する(例えば色や線の太さを他の組と異なる態様で表示する)ことも好適である。このようにすることで、利用者に対して、旅行時間に着目した旅行計画を立てる際の目安として、旅行時間が最も短くなる出発時刻と到着時刻の組を、理解しやすいように提示することが可能となる。
また、以上説明した各実施形態では、本発明を車両に搭載したナビゲーション装置に適用した例として説明したが、本発明は、車両に搭載したナビゲーション装置や、利用者がもつ情報端末に対して電気通信回線を介して旅行情報を提供する情報センタが当該旅行情報を提供するためのプログラムとして実現することも可能である。この場合、図2、図7、図9のフローチャートの処理において、出発地などを入力する処理は、利用者側の端末から電気通信回線を通じて取得する処理に、また出発時刻や推奨経路を表示する処理は、該当するデータ(出発時刻データや推奨経路のデータ)を利用者の端末へ送信する処理に置き換えることで実現することができる。
また、以上説明した各実施形態では、目的地を入力し、経路探索を行った直後に仮想出発時刻、もしくは仮想到着時刻を設定するようにしたが、一旦探索された推奨経路に沿って移動している最中に、利用者の操作により、現在地、現在時刻から所定時間間隔の目的地までの到着予想時刻を計算して表示するようにアルゴリズムを構成しても良い。これにより、推奨経路に沿って移動の途中で、休憩をとろうとした場合、今後、目的地までの所要時間が極端に長くならない程度での休憩時間の目安を得るのに便利となる。例えばラッシュアワーによる交通渋滞が発生するまでどの程度の時間的余裕があるかを、利用者が知ることができる。