JP4356189B2 - 積層ゴムの被覆層形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は積層ゴムの被覆層形成方法に係り、特に積層ゴム本体の外周面に内部の保護性能に優れた被覆層を容易かつ効率的に形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼板等の硬質板とゴム層(以下「内部ゴム」と称す場合がある。)とを交互に積層した積層構造を有する積層ゴムが、地震時に要求される防振性、吸振性等を満たす住宅又は橋桁等の構造体用支承部材として、更には、印刷機、その他の各種機械設備の防振、制振、除振部材等として実用に供されるようになってきている。
【0003】
このような積層ゴムでは、耐熱性や耐候性、難燃性等を付与する目的で、その外周に被覆層を形成することが行われているが、特に、積層ゴムに要求される長期耐久性を考慮した場合、酸素の侵入で内部ゴムの劣化(剛性の変化、破断ひずみ、破断応力の低下)等を防止するために、気体透過率の低い材料で被覆層を形成することが重要視されている。
【0004】
従来、この被覆層は次のような方法で形成されている。
▲1▼ 板状のゴムを免震ゴムの外周に巻き付ける。
▲2▼ 硬質板を配置した型内に内部ゴム及び被覆ゴム用の未加硫ゴムを注入して加硫一体成形する。
▲3▼ 硬質板とゴム層との積層体を型内に配置して、型の内周面と積層体の外周面との間のスペースに液状ゴムを注入して硬化させる(特許第2844078号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の被覆層の形成方法のうち、▲1▼の方法では板状ゴムの巻き付けに手間がかかり、しかも形成された被覆層の密着性が悪いという欠点がある。
【0006】
また、▲2▼の方法では、内部ゴムと被覆ゴムとを同一材料とする必要があり、十分な特性を得ることができない。即ち、内部ゴムには、積層ゴムとしての防振、制振、除振効果を担う上で、ヒステリシスロスやクリープ特性に制約がある。一方で、被覆ゴムには内部の保護効果の面から、気体透過率が低いことが望まれる。しかしながら、上記▲2▼の方法では、内部ゴムと被覆ゴムとを同一材料で構成する必要があるために、各々のゴムの役割に最適なゴム材料を選定使用することができない。
【0007】
▲3▼の方法であれば、内部ゴムと被覆ゴムとを異なる材料で構成することができるが、この方法では、型内での注入スペースでの液状ゴムの流動性が悪いために、空隙のない均一な被覆層を形成し得ず、形成された被覆層の外観や内部保護効果に劣るという欠点がある。
【0008】
このように、従来の方法では、積層ゴムに内部保護効果に優れた被覆層を形成することが困難であったが、特に、積層ゴムには、その施工対象への取付安定性のために、上下面にフランジが設けられており、このようなフランジを有する積層ゴムに対して、被覆層を形成することは容易ではなかった。
【0009】
本発明は上記従来の問題点を解決し、上下面にフランジを有する積層ゴムの外周面に内部の保護効果に優れた被覆層を容易かつ効率的に形成する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層ゴムの被覆層形成方法は、複数個の剛性を有する硬質板と粘弾性的性質を有する軟質板とを交互に貼り合わせてなる積層ゴム本体と、該積層ゴム本体の上下面にそれぞれ設けられたフランジとを備えてなる積層ゴムの該積層ゴム本体の外周面に被覆層を形成する方法において、該フランジの積層ゴム本体と反対側の面に剥離可能なフィルムを貼着した後、該積層ゴムを該被覆層形成材料の液に浸漬して該液を積層ゴム本体の外周面に付着させ、次いで、付着液を硬化させ、その後、前記フィルムを剥離除去することを特徴とする。
【0011】
積層ゴムを被覆層形成材料の液に浸漬することにより、被覆層形成材料の液を容易かつ効率的に積層ゴム本体の外周面に満遍なく付着させることができ、この付着液を硬化させることで、内部の保護効果に優れた被覆層を密着性良く形成することができる。
【0012】
この場合、この積層ゴムのフランジの積層ゴム本体と反対側の面(以下、この面を「取付面」と称し、積層ゴム本体側の面を「積層面」と称す場合がある。)に被覆層が形成されてしまうと、積層ゴムの取付、施工に際して支障をきたすこととなることから、付着液を除去する工程が必要となるが、本発明では、浸漬前にこのフランジの取付面にフィルムを貼着しておき、浸漬後フィルムを剥離するため、フランジの取付面への被覆層形成材料の付着は防止される。
【0013】
本発明において、被覆層形成材料は、天然ゴムの空気透過率を100としたときの相対値で表される空気透過率が40以下の低空気透過性のゴム材料、特にブチルゴムが好ましい。
【0014】
本発明において、被覆層の厚さは0.5〜5mmであることが好ましい。また、積層ゴムの硬質板としては鋼板が、軟質板としてはゴムが一般的に用いられる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の積層ゴムの被覆層形成方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の積層ゴムの被覆層形成方法の実施の形態を示す断面図である。
【0017】
本発明において被覆層を形成する被覆層形成材料としては、内部の保護効果の面から空気透過率の小さいものが好ましく、特に、天然ゴムの空気透過率を100として相対的に表わした空気透過率が40以下、特に20以下のゴム材料が好ましい。
【0018】
なお、各種ゴム材料の気体透過率の相対値は下記の通りである。
【0019】
【表1】
Figure 0004356189
【0020】
以下においては、ブチルゴムを用いて被覆層を形成する場合を例示して本発明を説明するが、本発明に係る被覆層形成材料は何らブチルゴムに限定されるものではない。
【0021】
本発明においては、まず、図1(a)に示す如く、複数個の硬質板1と軟質板2とが交互に積層一体化されてなる積層ゴム本体3の上下面にそれぞれフランジ4,4が設けられた積層ゴム5を準備し、この積層ゴム5の上下のフランジ4,4の取付面4A,4Aに、図1(b)に示す如く、それぞれ剥離可能なフィルム6,6を貼着する。
【0022】
このフィルム6,6としては、液状ブチルゴムに積層ゴム5を浸漬した際に、容易に剥れ落ちることなく、かつ、浸漬後はフランジ4,4から容易に剥離除去することができるものであれば良く、通常の場合、厚さ0.05〜0.2mm程度のポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、コート紙フィルム等が粘着剤や接着剤で貼着される。
【0023】
また、この被覆層形成材料は、液体又は高粘性体として積層ゴムの積層ゴム本体外周面に付着させることができ、付着後容易に硬化させるようなものが好ましく、また硬化後の剛性が小さく、積層ゴム本来の剛性(ばね定数)に影響を及ぼすことのないものが好ましい。
【0024】
気体透過率、液体としての付着性、硬化後の剛性を考慮した場合、被覆層形成材料としてはブチルゴム(ポリイソブチレン)を用いるのが好ましい。
【0025】
フィルム6,6を貼着した積層ゴム5は、その全体を液状ブチルゴムに浸漬し、これを積層ゴム本体3の外周面に付着させた後、これを常温硬化させる。この硬化の前後、一般的には硬化後にフィルム6,6を剥離除去することにより、フランジ4,4の取付面側に付着したブチルゴムは、フィルム6,6と共に除去される。この結果、図1(c)に示す如く、ブチルゴムよりなる被覆層7が積層ゴム本体3の外周面に形成され、フランジ4,4の取付面4A,4Aには何ら異物の付着がなく、取付施工性に優れた積層ゴム10を製造することができる。
【0026】
なお、積層ゴム5の全体を液状ブチルゴムに浸漬することにより、フランジ4,4の積層面4B,4Bにもブチルゴムの被覆層が形成される場合があるが、この部分は取付施工には影響しないため、特にこれを除去する必要はない。ただし、積層ゴム5の浸漬前に、この積層面4B,4Bにもフィルムを貼着しておき、浸漬後にフィルムを剥離除去することで、この積層面4B,4Bへのブチルゴムの付着を防止しても良い。
【0027】
また、積層ゴム5の浸漬に先立ち、液状ブチルゴムと積層ゴム本体3の外周面との接着性を向上させる目的で、積層ゴム本体3の外周面をプライマー処理しておくことは好ましいことである。
【0028】
このようにして形成される被覆層の厚さは積層ゴムの大きさ、用途、要求される耐久性、用いた被覆層形成材料によっても異なるが、一般的には0.5〜5mm程度とするのが、経済性や他の特性を損うことなく十分な保護効果を得る上で好ましい。
【0029】
なお、本発明において、硬質板及びフランジとしては金属、セラミックス、プラスチックス、FRP、ポリウレタン、木材、紙板、スレート板、化粧板などを用いることができるが、なかでも鋼板が好ましい。また軟質板としては、ゴム状弾性を有するものであって、各種の加硫ゴム、未加硫ゴムなどの有機材料、これらの発泡体など各種のものを用いることができるが、加硫ゴム、特に天然ゴムが好ましい。
【0030】
このような硬質板及びフランジと軟質板とを接着させるには、接着剤を用いたり共加硫すれば良い。
【0031】
本発明の方法で製造される積層ゴムは、各種構造材や機械設備の除振、防振、制振、免震部材として好適に使用されるが、本発明は特に、積層ゴム本体の全体を被覆層形成材料の液に浸漬する点から、高さ2.5〜30cm、直径2.5〜35cm程度の比較的小型の積層ゴムに有効である。
【0032】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の積層ゴムの被覆層形成方法によれば、上下面にフランジを有する積層ゴムの外周面に内部の保護効果に優れた被覆層を容易かつ効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層ゴムの被覆層形成方法の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 硬質板
2 軟質板
3 積層ゴム本体
4 フランジ
5 積層ゴム
6 フィルム
7 被覆層
10 積層ゴム

Claims (6)

  1. 複数個の剛性を有する硬質板と粘弾性的性質を有する軟質板とを交互に貼り合わせてなる積層ゴム本体と、該積層ゴム本体の上下面にそれぞれ設けられたフランジとを備えてなる積層ゴムの該積層ゴム本体の外周面に被覆層を形成する方法において、
    該フランジの積層ゴム本体と反対側の面に剥離可能なフィルムを貼着した後、該積層ゴムを該被覆層形成材料の液に浸漬して該液を積層ゴム本体の外周面に付着させ、次いで、付着液を硬化させ、その後、前記フィルムを剥離除去することを特徴とする積層ゴムの被覆層形成方法。
  2. 請求項1において、該被覆層形成材料が、天然ゴムの空気透過率を100としたときの相対値で表される空気透過率が40以下の低空気透過性のゴム材料であることを特徴とする積層ゴムの被覆層形成方法。
  3. 請求項2において、該被覆層形成材料が液状ゴムであることを特徴とする積層ゴムの被覆層形成方法。
  4. 請求項3において、該ゴムがブチルゴムであることを特徴とする積層ゴムの被覆層形成方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、該被覆層の厚さが0.5〜5mmであることを特徴とする積層ゴムの被覆層形成方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、前記硬質板が鋼板であり、前記軟質板がゴムであることを特徴とする積層ゴムの被覆層形成方法。
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