JP2004003137A - 防水仕上げ構造と防水仕上げ方法 - Google Patents

防水仕上げ構造と防水仕上げ方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来、新設、既設を問わず樹脂による防水施工する際には、下地の乾燥が不充分であると施工後に膨れが生じて、樹脂層の剥離、漏水などの問題が生じていた。また、既設の防水層を剥離して施工する必要があつた。
【解決方法】各種の下地など基体上に通気性シート体を配置し、通気性シート体の一部表面若しくは全表面に繊維強化樹脂層を形成し、該繊維強化樹脂層から基体に固定具を打ち込み、繊維強化樹脂層を該通気性シート体の残された表面並びに該固定具の表面、或いは固定具の表面に繊維強化樹脂層を形成して仕上げる防水仕上げ構造並びに防水仕上げ工法。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建築物等の床、駐車場、屋上等の新規若しくは既設の部位に防水施工された防水仕上げ構造とその施工方法に関するものであり、詳しくは、床などの基材上に通気性シート体、該通気性シート体の一部表面若しくは全面に仕上げられた繊維強化樹脂層、固定具、更に繊維強化樹脂層が順次施工されて仕上げられた防水仕上げ構造とその施工方法に関するものである。
【産業上の詳細な説明】
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物の屋上、床、駐車場等の新規若しくは既設の部位における防水には、防水シートによる防水、樹脂を塗布して防水層を形成させる樹脂防水、樹脂と繊維強化材とを複合化させたFRP防水などの施工方法が採用されてきた。
このような防水施工に際しては、充分が乾燥した下地に施工が施されないと下地の水分の蒸気圧或いは空気膨張などにより防水層にフクレが生じて剥離する、漏水する等の原因となる、美観を損ねる等の問題が発生する。しかしながら施工期間を短縮したい要求が強く改善した施工法が求められていた。
また、既設の樹脂防水床、FRP床などの補修施工にあつては、既設床の取り剥がしには多大な工数、時間を要するために実質不可能な状況にあり、既設の床をそのままの状態で施工できる補修的に施工法が求められていた。
【0003】
【発明が解決するための手段】
本発明は、このような状況に鑑みて検討、開発されたものであり、下地の状態が従来の施工法では必ずしも適当ではない状態であつても防水施工できる防水仕上げ方法と防水仕上げ構造を提供せんとするものであり、以下詳細に説明する。
【0004】
本発明の防水仕上げ構造は前記のように、新規床、既設床などの基体上に通気性シート体を配置し、その上に部分的に繊維強化樹脂層を仕上げたのち、該繊維強化樹脂層の上から該基体に固定具を打ち込み、次いで少なくとも固定具の上に繊維強化樹脂層を施工して仕上げる防水仕上げ方法、或いは床などの基体上に通気性シート体を配置し、その全面上に繊維強化樹脂層を施工したのち、該繊維強化樹脂層から該基体に固定具を打ち込み、次いで少なくとも該固定具の上に繊維強化樹脂層を施工して仕上げることにより仕上げられる。
【0005】
本発明になる防水仕上げ方法は前記のように新設の床、屋上、駐車場、既設の床、駐車場、屋上などに適用できるものであつて、基体の材質についてもモルタル、コンクリート、発泡コンクリート、鉄製プレート、石製の板体、木製板体、樹脂防水床、などあらゆる素材からなるものについて施工できるが、中でも基体の含水率が問題になるモルタル、コンクリート、発泡コンクリートなどの基体に対して、基体の含水率が高くても施工できる点、老朽化した既設の樹脂防水床などの上に施工できる点で好都合であり、どのような施工条件においても問題なく施工実施できるようにしたものである。
【0006】
本発明に係わる通気性シート体は通気性を持つ材質若しくは構造からなるものであれば、特に限定されるものではないが、その1例としてポリエステル、ナイロン、ビニロン、アクリルなどの合成繊維、或いはこれらの混合された複合繊維、ガラス繊維などの無機繊維、麻繊維など天然繊維、合成繊維に無機繊維、天然繊維などが混合された複合繊維から加工された不織布、織布など基材の片面若しくは両面に薄い非通気性層が積層されたもの、或いは該非通気性層の両面に該基材が積層されたものなどが使用される。
このような通気性シート体では、該通気性層の基材は、好ましくは0.5〜2ミリの厚みのあるものが好ましい。0.5ミリ以下では経時的に厚みがうすくなってしまい通気性がなくなる場合が予想され好ましくない。
また、通気性シート体には適所に円形、方形などの各種の形状の孔が設けられたものであれば、繊維強化樹脂層の施工に使用された樹脂が該孔を通して基体表面にまで連続した状態で硬化して繊維強化樹脂層が形成されるため、固定具による接合と併せて基体との接合を確保することができ、固定具の打設個数を少なくできる。
【0007】
該非通気性層には樹脂シート、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニール樹脂などの合成樹脂シート、或いはアスファルトシート等の厚み0.1〜1.0ミリ程度の非通気性の素材が使用される。
【0008】
非通気性層が片面のみに積層された通気性シート体の場合は該非通気性層を上に向けて配置することが望ましい。非通気性層を上に位置させることにより、その上に施工する熱硬化性樹脂を該通気性シート体の内部にまで浸透を防止して通気性が損なわれることを防止できる。
【0009】
その他の通気性シート体の例として、例えば各種ゴムシート、アスファルトシート、プラスチックシートなどからなる厚み1〜5ミリのシートの表面に、平面形状が格子状、6角形状などであつて、平面形状が相互に連接した溝の設けられた通気性シート体なども、溝のある面を基体側に接触させ溝を連通した通気部として活用できる通気性シート体として利用できる。
【0010】
基体と通気性シート体とは単に配置されるか、接着剤で接着して固定されてもよい。
また、直接、基体との接着が難しい場合は基体表面にウレタン樹脂系、エボキシ樹脂系などの樹脂系プライマーを塗布したのち接着剤で接着されてもよい。
【0011】
通気性シート体の表面の一部若しくは全面に繊維強化樹脂層が行われる。
該繊維強化樹脂層の形成は、該通気性シート体の基材に積層された非通気性層の表面に強化繊維シート、例えばガラス繊維シートを配置した上に硬化剤の配合されたエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を塗布し、更に強化繊維シートを重ねるか、該通気性シート体の表面の非通気性層上に熱硬化性樹脂を塗布したのち、塗布面に強化繊維シートを重ね、更に熱硬化性樹脂を塗布するなどして、強化繊維シートに熱硬化性樹脂を浸透させた状態で硬化させて繊維強化樹脂層を形成させることにより得られる。
【0012】
更に、このように形成された繊維強化樹脂層の適所に孔を設け、該孔を通して固定具を基体まで打ち込んで、該繊維強化樹脂層と該通気性シート体とを該下地に固定させる。
孔のサイズは固定具の軸径よりも大きいサイズとして固定具を遊嵌状態で基体に打ち込むことが望ましい。孔径と固定具の軸径が同一であるか若しくは小さいと固定具を打ち込む際に繊維強化樹脂層を傷める、繊維強化樹脂層の収縮・膨張すると応力が固定具に及んで固定具が壊れる、繊維強化樹脂層が破損するなどの問題が発生するため好ましくない。
【0013】
このように孔と固定具の軸との間に設けられた空隙には弾性シーリング材、例えば弾性のある材質からなるシリコンシーリング材、ポリサルファイドシーリング材、ウレタン樹脂シーリング材などを注入して充填させることにより固定具と繊維強化樹脂層とは緩やかに固定され、温度変化などにより繊維強化樹脂層が収縮・膨張しても応力が固定具に直接波及せず、繊維強化樹脂層の収縮・膨張の応力により固定具が外れたり、破損することがなくなり、耐久性に優れた防水仕上げ構造が得られる。
【0014】
該固定具には、エアーガン或いは金槌で下地まで打ち込む打ち込み式固定金具、或いは下孔を設けておき開脚プラグと一体として使用されるビスを固定する固定金具などが使用される。該固定具の材質は鉄、ステンレス、アルミ等の金属製のもののほか、プラスチック製のものであつても使用できる。
また、孔の設けられた通気性シート体を使用した場合には、通気性シート体の上に形成させる繊維強化樹脂層に使用された樹脂が該孔を通して基体と連通するため、固定効果が得られることから、固定具の数を少なくすることができる。
【0015】
該通気性シート体の表面の一部に繊維強化樹脂層を設け、該繊維強化樹脂層の上から基体に固定具を打ち込んで固定した場合は、固定具、該繊維強化樹脂層並びに該通気性シート体を覆う状態で、繊維強化樹脂層を形成させることにより請求項1に係わる防水仕上げ構造が得られる。
また該通気性シート体の全面に繊維強化樹脂層を設け、固定具を該繊維強化樹脂層の上から基体に打ち込んで固定する施工法を採用する場合は、少なくとも該固定具の上部を更に繊維強化樹脂層を設けることにより請求項2の防水仕上げ構造が得られる。
なお、表面の仕上がり外観を向上させたり、耐候性能を向上するためにアクリル樹脂系塗料、アクリル・シリコン樹脂系塗料、アクリル・ウレタン樹脂系塗料、不飽和ポリエステル樹脂系塗料などのトップコートが塗布されてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施例1
打設10日経過した含水率9.0%のコンクリート床に、坪量180g/mのポリエステル繊維から加工された不織布の表面に厚み0.3ミリの軟質塩化ビニール樹脂フイルムを積層した通気性シート体を配置したのち、該通気性シート体の適所の30センチ角に坪量450g/mのガラス繊維マットをおいたのち、硬化剤を配合した不飽和ポリエステル樹脂(アイカ工業(株)ジョリエースJE−2000)を1.5g/m塗布して該ガラス繊維マットに浸透、硬化させて繊維強化樹脂層を形成した。次いで該繊維強化樹脂層から該コンクリート床に長さ60ミリのアンカーで直径60ミリの円盤状の固定具を固定したのち、該繊維強化樹脂層を設けていない通気性シート体の表面並びに該固定具の上に、前記と同様にして繊維強化樹脂層を形成し、更にトップコートとして硬化剤を配合した不飽和ポリエステル樹脂(アイカ工業(株) ジョリエースJE−2080)を0.4kg/m塗布して防水仕上げ構造を得た。施工後1年経過後において防水層のフクレ、防水性などについて何ら異常は認められなかった。
【0017】
実施例2
打設10日経過した含水率9.1%のコンクリート床に、坪量180g/mのポリエステル繊維から加工された不織布の表面に厚み0.3ミリの軟質塩化ビニール樹脂フイルムを積層した通気性シート体を配置し、該通気性シート体の全面に坪量450g/mのガラス繊維マットをおいたのち、硬化剤を配合した不飽和ポリエステル樹脂(アイカ工業(株)ジョリエースJE−2000)を1.5g/m塗布して該ガラス繊維マットに浸透、硬化させて繊維強化樹脂層を形成した。次いで該繊維強化樹脂層から該コンクリート床に長さ60ミリのアンカーで直径60ミリの円盤状の固定具を固定したのち、該固定具の上に、前記と同様にして繊維強化樹脂層を形成し、更にトップコートとして硬化剤を配合した不飽和ポリエステル樹脂(アイカ工業(株)ジョリエース JE−2080)を0.4kg/m塗布して防水仕上げ構造を得た。施工後1年経過後において防水層のフクレ、防水性などについて何ら異常は認められなかった。
【0018】
実施例3
施工後10年経過したウレタン樹脂防水仕上げの床(下地と防水層の間は未乾燥の状態)の上に実施例1と同一の施工を実施して実施例3の床を仕上げた。施工後1年経過後において防水層のフクレ、防水性などについて何ら異常は認められなかった。
【0019】
比較例1
実施例1に使用したと同一の床にウレタン樹脂プライマー(アイカ工業(株)ジョリエース JU−1270)を0.2kg/m塗布し乾燥したのち、ウレタン樹脂(アイカ工業(株)ジョリシールJW−41)を2kg/m塗布して樹脂防水床を仕上げた。施工30日経過したのち、床の表面状態、異常の有無について確認したところ、床面にフクレが多数認められた。
【0020】
比較例2
実施例1に使用したと同一の床にウレタン樹脂プライマー(アイカ工業(株)ジョリエース JU−1270)を0.2kg/m塗布し、乾燥させたのち、硬化剤を配合した不飽和ポリエステル樹脂(アイカ工業(株)ジョリエースJE−2000)を0.5kg/m塗布し、直ちに坪量450g/mのガラス繊維マットを貼り付ける。更に硬化剤を配合した不飽和ポリエステル樹脂(アイカ工業(株)ジョリエースJE−2000)を1.0kg/m塗布して防水層とした。次いでトップコートとして硬化剤を配合した不飽和ポリエステル樹脂(アイカ工業(株)ジョリエースJE−2080)を0.4kg/m塗布した。
施工後1年経過後において防水層の浮きが発生し、下地と繊維強化樹脂層との間に水が溜まっているのが認められた。
【0021】
【発明の効果】
従来、下地の含水率が高いために施工できない、既設床を取り剥がさないと施工できないなどの問題があるため、極めて限られた物件しか施工できなかたが、本発明になる防水仕上げ方法は、下地から揮発する水蒸気が通気性シート体を通じて外部に放出されるため、下地の含水率が高くても施工できる効果がある。また、既設の樹脂防水などの下地を取り剥がさなくてもその上に施工できるため、施工物件、施工条件に制約されることなく直ちに施工できる。
また、本発明の防水仕上げ構造は、通気性シート体を介して繊維強化樹脂層が設けられ、しかも限定された適所において打ち込まれた固定具により基体と繊維強化樹脂層とが通気性シート体を介して接続された構造であるために、防水層と基体とが緩やかに固定されており、繊維強化樹脂層と基体との間に寸法変化の差が生じても両者の間に応力が生じることがなく、防水仕上げ構造に損傷に至らず剥離などが発生しない。
特に繊維強化樹脂層に設けた孔が固定具の軸径よりも大きく設定され、両者の間の空隙に弾性シーリング材などを充填した施工がなされた場合には、繊維強化樹脂層と下地とが緩やかに接続される構造に仕上げられるため、繊維強化樹脂層と基体とが接続されている故に生じる応力が大幅に緩衝され、長期間の使用に耐えられる防水構造となる。
なお、孔の設けられた通気性シート体が使用された場合には、孔を通じて繊維強化樹脂層の施工に使用される樹脂が基体表面にまで連通するため、固定具の固定と併せて樹脂による固定効果が得られる。
【0022】
【図面の簡単な説明】
【図1】基体(1)上に配置した通気性シート体(2)、該通気性シート体(2)上に施工された繊維強化樹脂層(3)、該繊維強化樹脂層から該基体(1)に打ち込まれた固定具(5)、繊維強化樹脂層の形成されなかった通気性シート体(2)部分に繊維強化樹脂層(4)並びに該固定具(5)を覆って施工された繊維強化樹脂層(6)とから仕上げられている1実施例の防水仕上げ構造の部分断面図。
【図2】基体(1)上に配置した通気性シート体(2)の全面に繊維強化樹脂層(3)が施工され、固定具(5)が打ち込まれ、該固定具(5)の上に繊維強化樹脂層(4)が形成された1実施例の防水仕上げ構造の部分断面図。
【0023】
【符号の説明】
1  基体
2  通気性シート体
3、4、6  繊維強化樹脂層
5  固定具

Claims (4)

  1. 基体の表面に配置された通気性シート体、該通気性シート体の一部表面に施工された繊維強化樹脂層、該繊維強化樹脂層から該基体に打ち込まれた固定具、少なくとも先に繊維強化樹脂層の施工されなかった該通気性シート体の表面部分と該固定具を覆って形成された繊維強化樹脂層とから仕上げられていることを特徴とする防水仕上げ構造。
  2. 基体の表面に配置された通気性シート体、該通気性シート体の全面に施工された繊維強化樹脂層、該繊維強化樹脂層の上から該基体に打ち込まれた固定具、少なくとも該固定具を覆って形成された繊維強化樹脂層から仕上げられていることを特徴とする防水仕上げ構造。
  3. 基体の表面に通気性シート体を配置したのち、該通気性シート体の一部表面に繊維強化樹脂層を形成し、該繊維強化樹脂層の上から固定具を該基体に打ち込んだのち、少なくとも先に繊維強化樹脂層の施工されなかった該通気性シート体の表面並びに固定具の上に、繊維強化樹脂層を形成することを特徴とする防水仕上げ方法。
  4. 基体の表面に通気性シート体を配置したのち、該通気性シート体の全面に繊維強化樹脂層を形成し、該繊維強化樹脂層の上から固定具を該基体に打ち込んだのち、少なくとも該固定具を覆って繊維強化樹脂層を形成することを特徴とする防水仕上げ方法。
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