JP4356151B2 - 圧電振動素子とその製造方法および圧電フィルタ - Google Patents

圧電振動素子とその製造方法および圧電フィルタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はタンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子とその製造方法および圧電フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
固体中を伝わる波であるバルク波を用いた圧電振動素子として、各種電子機器などのクロック源として用いられる圧電振動子や、通信機器の周波数抽出用などに用いられる圧電フィルタがある。特に、電気エネルギーと機械エネルギーの変換効率を表す電気機械結合係数が水晶などと比べて大きいニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムを用いた圧電振動素子は、VCO(電圧制御発振器)や広帯域の帯域通過フィルターとして利用される。
【0003】
これらの圧電振動素子の使用される周波数域は近年高周波化しており、振動モードとして厚みすべり、厚み縦などの厚み振動が用いられ、特に不要振動の抑圧や素子の保持が容易なエネルギー閉じ込め現象を利用したものが多い。エネルギー閉じ込め現象とは、ある特定の圧電材料で厚みすべり振動や厚み縦振動などのある特定の振動モードを用いる場合、圧電振動素子の主面に部分的に励振用電極を形成すると振動エネルギーが励振用電極下のみに閉じ込められる現象をいい、ショックレイ(Shockley)、尾上氏らにより詳細に解析されている。
【0004】
以下にエネルギー閉じ込めについて、圧電振動素子の斜視図と断面図を図10、図11を用いて説明する。図10、図11に示すように、振動素子部5の励振用電極6のある部分における遮断周波数をf0とし、無電極部における遮断周波数をfcとすると、fcよりも大きい周波数では振動エネルギーは自由に伝搬し励振用電極6下においても定在波を作らない。しかし、f0よりも大きくfcよりも小さい周波数では、励振用電極6のある部分では振動エネルギーは自由に伝搬するが無電極部では指数関数的に減衰するので、振動変位も圧電振動素子の端部に向かうほど小さくなり、結果として振動エネルギーは励振用電極付近に集中することになる。
【0005】
振動伝搬方向の素子長さを十分にとらない場合、素子端部における振動変位の減衰が十分ではなく、素子端部で起こる反射波などにより不要振動が生じ、機械的品質係数Qの低下などの悪影響を与える。例えば、周波数温度特性に関して零温度係数を有するタンタル酸リチウムのX板を用いた厚みすべり振動子のQを高くするために、振動伝搬方向素子長さLと素子厚みHとの比L/Hを14以上としている(特公昭63−57967号公報参照)。
【0006】
タンタル酸リチウムのX板を用いた厚みすべり振動子の相対変位を振動伝搬方向にわたって計算した結果例を図12に示す。以下において、横軸が素子中央から外周部に向かう距離を表し、縦軸が素子中央での振動変位を1とした時の相対変位を表した図を相対変位分布図と呼ぶことにする。先に述べたように、エネルギー閉じ込めを利用すれば、振動は励振用電極下では正弦波上に分布し、無電極部では指数関数的に減衰するので、単一電極を設けた圧電振動素子の相対変位分布は図12のように素子中央から遠ざかるにつれて小さくなる。振動伝搬方向素子長さLと素子厚みHとの比L/Hをある値以上に設定することは、図12から素子端部相対変位をある値以下に設定することと同義であることがわかる。すなわち、素子端部における振動変位を素子中央に比べて十分減衰させれば、反射波や保持の影響をほとんど受けず高いQを有することができる。
【0007】
また、エネルギー閉じ込め度合いの指標としてエネルギー閉じ込め量ζなるものがある。ただしζは、Le/(2H)×((fc−f0)/fc1/2で計算される。
【0008】
図13に、タンタル酸リチウムのX板を用いた厚みすべり振動の周波数スペクトラムを示す。図13の横軸はエネルギー閉じ込め量ζで、縦軸は(f−f0)/(fc−f0)で計算される規格化周波数Ωである。図13において、s_0,s_1,…,は対称モード、a_0,a_1,…,は斜対称モードを表しており、それぞれのモードを示す線の近くには、各モードの相対変位分布図を示してある。図13の相対変位分布図からわかるように、a_0,a_1,…,などの斜対称モードは素子に対して励振用電極が対称に配置されていれば電気的に励振されないためs_0,s_1,…,の対称モードだけが電気的に取り出せる。
【0009】
しかし、圧電振動子の場合s_0以外の振動はインハーモニック・オーバートーンと呼ばれる不要共振となるため、s_0モードのみがエネルギー閉じ込め可能となる値にエネルギー閉じ込め量を設定しなければならない。例えば、特開昭59−182616号公報では、s_0モードのみがエネルギー閉じ込め可能となるζは1.2より小さいとし、また周波数低下量(fc−f0)/fcは圧電材料のみに依存して0.1であるから、Le/Hを3.8より小さくすればs_0モードのみの単一モードを実現できるとしている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
タンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子において、高周波化に伴い素子厚みなどの素子寸法が小さくなるにつれ、素子加工時に発生する加工歪みやマイクロクラックなどの機械的強度に与える影響が無視できなくなり、振動伝搬方向素子長さのさらなる小型化が望まれていた。しかしQの低下を抑制するためには振動伝搬方向素子長さLと素子厚みHとの比L/Hを大きくとらざるを得ないといった課題があった。
【0011】
また、エネルギー閉じ込め量を大きくして素子端部における振動変位の減衰を大きくし素子長さを短くするために、例えば電極膜厚を厚くするなどして周波数低下量を大きくすると、素子厚みが厚い場合に設定された振動伝搬方向の励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hの値では、インハーモニック・オーバートーンモードも閉じ込め可能となり単一モードを実現できないといった課題があった。
【0012】
そこで本発明では、タンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子において、振動伝搬方向の励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hを3.0以上3.7以下とし、かつ励振用電極部遮断周波数をf0、無電極部遮断周波数をfcとした時の周波数低下量(fc−f0)/fcを0.12以上0.2以下とすることで、素子端部における振動変位を十分小さくして素子長さを短くしつつ高いQを実現でき、かつインハーモニック・オーバートーンモードが閉じ込められない単一モードが得られる圧電振動素子とその製造方法および圧電フィルタを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明は、タンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子において、振動伝搬方向の励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hを3.0以上3.7以下とし、かつ励振用電極部遮断周波数をf0、無電極部遮断周波数をfcとした時の周波数低下量(fc−f0)/fcを0.12以上0.2以下とする圧電振動素子である。上記構造をとることで、素子端部における振動変位を十分小さくして素子長さを短くしつつ高いQを実現でき、かつインハーモニック・オーバートーンモードが閉じ込められない単一モードが得られるという効果を有する。
【0014】
好ましくは、前記圧電振動素子は振動伝搬方向の素子長さLと素子厚みHとの比L/Hを7.0以上9.4以下とする。高いQを有しながら、かつ機械的強度にも優れるという効果がある。
【0015】
また、本発明にかかる圧電振動素子は、タンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子において、振動素子部分主面片側に一対の入力用電極と出力用電極を設け、もう一方の主面に接地用電極を設け、振動伝搬方向の入力用電極長さL1と素子厚みHとの比L1/H、および出力用電極長さL2と素子厚みHとの比L2/Hをそれぞれ0.8以上1.9以下とし、かつ励振用電極部遮断周波数をf0、無電極部遮断周波数をfcとした時の周波数低下量(fc−f0)/fcを0.12以上0.2以下とする2重モードの圧電フィルタである。上記構造をとることで、素子端部における振動変位を十分小さくして素子長さを短くしつつ、低い挿入損失を実現できるという効果がある。
【0016】
また、本発明にかかる圧電振動素子は、同一圧電基板上に形成されかつ電気的に接続される少なくとも2個以上の圧電振動素子が、請求項1,2,3記載の圧電振動素子のいずれかである圧電フィルタである。同一基板上に形成されるため浮遊容量などの影響を受けにくく、また小型化が可能であるという効果がある。
【0017】
また、前記圧電振動素子の製造方法は、電極の上に電極と同じ面積の樹脂を塗布することにより周波数低下量を0.12以上0.2以下とすることを特徴とするものである。樹脂を用いることで、安価に周波数低下量を0.12以上0.2以下とすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、タンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子において、振動伝搬方向の励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hを3.0以上3.7以下とし、かつ励振用電極部遮断周波数をf0、無電極部遮断周波数をfcとした時の周波数低下量(fc−f0)/fcを0.12以上0.2以下とすることを特徴とする圧電振動素子であり、素子端部における振動変位を十分小さくして素子長さを短くしつつ高いQを実現でき、かつインハーモニック・オーバートーンモードが閉じ込められない単一モードが得られるという作用を有する。
【0019】
請求項2に記載の発明は、振動伝搬方向の素子長さLと素子厚みHとの比L/Hを7.0以上9.4以下とすることを特徴とする請求項1記載の圧電振動素子であり、高いQを有しながら、かつ機械的強度にも優れるという作用を有する。
【0020】
請求項3に記載の発明は、タンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子において、振動素子部分主面片側に一対の入力用電極と出力用電極を設け、もう一方の主面に接地用電極を設け、振動伝搬方向の入力用電極長さL1と素子厚みHとの比L1/H、および出力用電極長さL2と素子厚みHとの比L2/Hをそれぞれ0.8以上1.9以下とし、かつ励振用電極部遮断周波数をf0、無電極部遮断周波数をfcとした時の周波数低下量(fc−f0)/fcを0.12以上0.2以下とすることを特徴とする2重モードの圧電フィルタであり、素子端部における振動変位を十分小さくして素子長さを短くしつつ、低い挿入損失を実現できるという作用を有する。
【0021】
請求項4に記載の発明は、同一圧電基板上に形成されかつ電気的に接続される少なくとも2個以上の圧電振動素子が、請求項1,2,3記載の圧電振動素子のいずれかであることを特徴とする圧電フィルタであり、同一基板上に形成されるため浮遊容量などの影響を受けにくく、また小型化が可能であるという作用を有する。
【0022】
請求項5に記載の発明は、電極の上に電極と同じ面積の樹脂を塗布することにより周波数低下量を0.12以上0.2以下とすることを特徴とする請求項1,2,3記載の圧電振動素子の製造方法であり、樹脂を用いることで安価に周波数低下量を0.12以上0.2以下とすることができる作用を有する。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図9を用いて説明する。図1において、1はタンタル酸リチウムのX板からなる振動素子部、2は振動素子部1の表面と裏面に相対向して設けられた励振用電極、3は外部との接続用電極、4は外部引き出し用電極である。
【0024】
圧電振動素子の用いる周波数が高くなると素子厚みが薄くなるため、機械的強度を向上させるには、素子加工時に素子に与える損傷が少ない加工方法を選択することもさることながら、できるだけ振動伝搬方向素子長さを短くすることが望ましい。素子長さを短くするためには素子端部における振動変位を十分小さくせねばならず、そのためにはエネルギー閉じ込め効果の度合いを上げる必要がある。
【0025】
エネルギー閉じ込め現象は、励振用電極2部における遮断周波数と無電極部における遮断周波数との差を大きくして周波数低下量を大きくすればその効果が大きくなるため、励振用電極2の膜厚を厚くすると電極膜厚が薄い場合に比べて素子端部における振動変位の減衰が大きくなる。言い換えれば、電極膜厚が厚い場合には、薄い場合の素子長さよりも短い素子長さで、励振用電極2が薄い場合の素子端部相対変位と同等の相対変位を得ることができるわけである。
【0026】
振動伝搬方向素子長さLと素子厚みHとの比L/Hがどのくらいであれば機械的強度上問題がないかということについては、厚み50μmの素子を両端支持で実装し落下試験を行った結果である図2から考察する。図2の横軸は振動伝搬方向素子長さLと素子厚みHとの比L/H、縦軸は落下試験前後での周波数変化率である。図2から分かるように、L/Hが9.5〜10程度よりも大きくなると落下時に素子に加わった衝撃などでクラックなどが伸展したり素子が割れるなどして周波数変化率が大きくなり、そのばらつきも大きくなる。よって、用いる周波数が高くなり素子厚みが薄くなる場合には素子加工時のマイクロクラックなどの影響が大きくなることから、L/Hは9.4以下に設定することが望ましい。
【0027】
一方、素子端部相対変位が0.005以下であればQの低下はほとんど見られないことが実験的に確かめられているので、素子厚みが50μmで一定とし電極膜厚を変化させるなどして周波数低下量を変化させた時に、素子端部相対変位が0.005となる振動伝搬方向素子長さLと素子厚みHとの比L/Hを計算すると図3のようになる。図3より、L/Hが9.4以下となるためには周波数低下量は0.12以上でなければならないことがわかる。
【0028】
しかし、質量効果により周波数低下量を大きくしすぎると厚みすべり振動そのものを阻害するロス成分となり、共振インピーダンスを増加させる傾向にあるため、ここでは共振インピーダンスが安定して100Ω以下となる周波数低下量を実験的に求め、その上限を0.2とする。周波数低下量が0.2の時に素子端部相対変位が0.005となるL/Hは、図3より7.0であることが分かる。
【0029】
次に、タンタル酸リチウムのX板を用いた厚みすべり振動子の周波数低下量を、素子厚みが200μm、100μm、50μmの場合についてそれぞれ計算したものを図4に示す。ただし、素子主面両側にそれぞれ形成する電極材料は金としその膜厚は250Åから10000Åとしている。
【0030】
図4から分かるように、素子厚みが200μmと比較的厚い場合には周波数低下量は約0.1で一定である。しかし、素子厚みが薄くなるにつれ、電極膜厚が厚いときの周波数低下量は0.1よりも大きくなり、素子厚みが50μmで電極膜厚が3000Åの時の周波数低下量はもはや0.14となっている。これは、素子厚みが薄い場合、周波数低下量に占める電極の質量効果割合が大きくなるためである。図13に示した周波数スペクトラムは、素子厚みや電極膜厚によらずほぼ同じ結果となり、対称モードのみに着目してs_0モードのみの単一モードを実現できるエネルギー閉じ込め量の値は約0.65以下である。よって、エネルギー閉じ込め量が0.65以下となる条件と図4より、単一モードを実現するための振動伝搬方向励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hの最大値が計算でき、その結果は図5のようになる。
【0031】
図5から分かるように、素子厚みが200μmと比較的厚い場合には単一モードを実現できるLe/Hの最大値は約4でほぼ一定であるが、素子厚みが薄くなり、かつ電極膜厚が厚い場合には4よりも小さくなり、例えば素子厚みが50μmで電極膜厚が3000Åの時に単一モードを実現できるLe/Hの最大値は約3.6となる。
【0032】
用いる周波数が高くなり素子厚みが薄い場合には素子の機械的強度の観点から振動伝搬方向素子長さLと素子厚みHとの比L/Hを小さくするのが望ましく、L/Hを10以下とするためには周波数低下量を0.12以上とすればよく、かつ安定して共振インピーダンスが100Ω以下となるためには周波数低下量を0.2以下とすればよいことを既に述べた。
【0033】
周波数低下量は、素子厚みが厚い時には約0.1でほぼ一定と見てよいが、素子厚みが薄い場合には0.1よりも大きくなる。ここでは、用いる周波数が高く素子厚みが50μm以下などの薄い場合を考慮しているので、素子厚みが50μmで周波数低下量が0.12以上0.2以下という値を電極材料が金である時の電極膜厚に換算するとおよそ1500Å以上10000Å以下となる。よって、周波数低下量が0.12以上0.2以下である時に単一モードを実現できる振動伝搬方向励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hの最大値は、図5の電極膜厚1500Å以上10000Å以下の範囲に着目すればよく、Le/Hが3.0以上3.7以下で単一モードを実現できることがわかる。
【0034】
ここで、金電極の膜厚を10000Åなど厚く形成することはコスト高となりプロセス時間も長くなることから、例えばフォトリソグラフィなどで電極パターンを形成した後にレジストを除去せず残すことで、レジストの質量効果により所望の周波数低下量を安価に得ることができる。
【0035】
以上のように、周波数低下量を0.12以上0.2以下とすることでエネルギー閉じ込め効果を増大させ、素子長さを短くしつつ高いQを有することができ、振動伝搬方向励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hを3.0以上3.7以下とすることで不要共振であるインハーモニック・オーバートーンを閉じ込めない単一モードを実現できる。また、高いQを得るためのL/Hは最低でも9.4あれば十分である。
【0036】
次に、一枚のタンタル酸リチウムX板に複数の圧電振動子を配置し、それらの振動を結合させることで多重モードの圧電フィルタを実現する方法を考察する。このようなフィルタはMCF(モノリシッククリスタルフィルタ)とも呼ばれ、図13に示したa_0モードやs_1モードなどのインハーモニック・オーバートーンを積極的に利用したものである。ここでは、s_0モードとa_0モードの二つのモードを用いた2重モードの圧電フィルタ(2電極対型MCF)の場合を述べる。
【0037】
2重モードの圧電フィルタの構造は、図6のようにタンタル酸リチウムX板7の主面片側に数十μm〜数百μm程度の微小な間隔を空けて一対の入力用電極8と出力用電極9を設け、もう一方の主面に接地用電極10を設けるもので、対称モードであるs_0モードと斜対称モードであるa_0モードを生じさせ、帯域通過フィルタを実現するものである。図6における接地用電極10は一つしかないが、図7のように入力用電極8と出力用電極9にそれぞれ相対向して接地用電極10を設けても構わない。
【0038】
2重モードの圧電フィルタでは、a_0モードは閉じ込められるがs_1モードは閉じ込められないエネルギー閉じ込め量に設定する必要がある。図13の周波数スペクトラムより、a_0モードが閉じ込められs_1モードが閉じ込められないエネルギー閉じ込め量は0.33以上0.65以下となることがわかる。周波数低下量は、圧電振動子の場合と同じくエネルギー閉じ込め効果を増大させ、素子長さを短くしつつQの低下を抑制するために0.12以上0.2以下とするため、圧電振動子の場合にa_0モードが閉じ込められs_1モードが閉じ込められない条件は、励振用電極長さLeと素子厚みHの比Le/Hが1.5以上3.7以下となる。
【0039】
2重モードの圧電フィルタにおいて入力用電極長さL1と出力用電極長さL2を等しい長さとし、入力用電極と出力用電極の間の微小な間隔はL1,L2に比べ無視できるほど小さいので、a_0モードが閉じ込められs_1モードが閉じ込められないためのL1/HとL2/HはLe/(2H)にほぼ等しくなる。すなわち、L1/HとL2/Hを0.8以上1.9以下とし周波数低下量を0.12以上0.2以下とすることで、不要共振を閉じ込めることなく素子端部における振動変位を十分小さくして素子長さを短くしつつ、低い挿入損失を実現できる。
【0040】
3重モードの圧電フィルタや4重モードの圧電フィルタなど他の多重モードの圧電フィルタの場合においても同様に、用いるモードの中で最も周波数の高いモードよりも一つ高次のモードを閉じ込めないようにエネルギー閉じ込め量を設定することで、電極設計値を求めることは容易なことである。
【0041】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図8、図9を用いて説明する。
【0042】
(実施の形態1)
図8はタンタル酸リチウムのX板を用いた厚みすべり振動を主振動とする圧電振動子であり、11は振動素子部、12は振動素子部11の表面と裏面に相対向して設けられた励振用電極、13は外部との接続用電極、14は外部引き出し用電極、15は導電性材料からなる樹脂、16は実装基板、17は外部端子である。素子厚みHは50μmであるため共振周波数は約40MHzである。また、励振用電極材料には金を用いその膜厚は表裏ともそれぞれ2500Å、振動伝搬方向励振用電極長さLeは180μm、振動伝搬方向素子長さLは460μmである。
【0043】
周波数低下量は約0.13でありエネルギー閉じ込め効果が大きく素子端部における振動変位の減衰が大きいため、L/Hが9.2と小型化でき機械的強度にも優れ、かつ高いQを有することができる。また、励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hは3.6であるので、不要共振となるインハーモニック・オーバートーンを閉じ込めることのない単一モードが得られ、発振周波数のジャンプなどを起こしにくい安定した特性を得ることができる。
【0044】
(実施の形態2)
図9はタンタル酸リチウムのX板を用いた厚みすべり振動を主振動とする2重モードの圧電フィルタであり、18は振動素子部、19は入力用電極、20は出力用電極、21は接地用電極、22は入力用電極19と出力用電極20をそれぞれ外部端子と導通をとるための金属細線、23は導電性材料からなる樹脂、24は実装基板、25は入出力用端子、26は接地用端子である。素子厚みHは25μmであるためフィルタの中心周波数は約80MHzである。また、入出力用電極19,20および接地用電極21の材料には金を用いその膜厚はすべて1000Å、入力用電極長さL1と出力用電極長さL2はともに46μm、振動伝搬方向素子長さLは230μmである。
【0045】
周波数低下量は約0.13とエネルギー閉じ込め効果が大きく素子端部振動変位の減衰が大きいため、L/Hが9.2と小型化でき機械的強度にも優れ、かつ高いQを有し低挿入損失が実現できる。また、入力用電極長さL1および出力用電極長さL2と素子厚みHとのそれぞれの比L1/H,L2/Hはどちらも約1.8となっているので、中心周波数よりも高域側で不要通過域のない良好なフィルタ特性が得られる。
【0046】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、タンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子において、振動伝搬方向の励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hを3.0以上3.7以下とし、かつ励振用電極部遮断周波数をf0、無電極部遮断周波数をfcとした時の周波数低下量(fc−f0)/fcを0.12以上0.2以下とすることで、素子端部における振動変位を十分小さくして素子長さを短くしつつ高いQを実現でき、かつインハーモニック・オーバートーンモードが閉じ込められない単一モードが得られるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電振動素子の一実施の形態を示す斜視図
【図2】振動伝搬方向素子長さLと素子厚みHとの比L/Hを変化させたときの落下試験前後での周波数変化率を表す図
【図3】周波数低下量を変化させたときの素子端部相対変位が0.005となる振動伝搬方向素子長さLと素子厚みHとの比L/Hを表す図
【図4】金電極の膜厚と周波数低下量の関係を表す図
【図5】金電極の膜厚と単一モードを得るための振動伝搬方向励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hの最大値の関係を表す図
【図6】2重モード圧電フィルタの断面図
【図7】バランス型2重モード圧電フィルタの断面図
【図8】本発明の圧電振動素子の一実施の形態を示す斜視図
【図9】本発明の圧電振動素子の一実施の形態を示す斜視図
【図10】従来の圧電振動素子の斜視図
【図11】エネルギー閉じ込め型圧電振動素子を示す断面図
【図12】相対変位分布図
【図13】タンタル酸リチウムのX板を用いたエネルギー閉じ込め型厚みすべり振動の周波数スペクトラムを示す図
【符号の説明】
1 振動素子部
2 励振用電極
3 外部接続用電極
4 外部引き出し用電極
7 振動素子部
8 入力用電極
9 出力用電極
10 接地用電極
11 振動素子部
12 励振用電極
13 外部接続用電極
14 外部引き出し用電極
15 導電性樹脂
16 実装基板
17 外部端子
18 振動素子部
19 入力用電極
20 出力用電極
21 接地用電極
22 金属細線
23 導電性樹脂
24 実装基板
25 入出力用端子
26 接地用端子

Claims (5)

  1. タンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子において、振動伝搬方向の励振用電極長さLeと素子厚みHとの比Le/Hを3.0以上3.7以下とし、かつ励振用電極部遮断周波数をf0、無電極部遮断周波数をfcとした時の周波数低下量(fc−f0)/fcを0.12以上0.2以下とした圧電振動素子。
  2. 振動伝搬方向の素子長さLと素子厚みHとの比L/Hを7.0以上9.4以下とした請求項1に記載の圧電振動素子。
  3. タンタル酸リチウムのX板を用い厚みすべり振動を主振動とする圧電振動素子において、振動素子部分の主面片側に一対の入力用電極と出力用電極を設け、もう一方の主面に接地用電極を設け、振動伝搬方向の入力用電極長さL1と素子厚みHとの比L1/H、および出力用電極長さL2と素子厚みHとの比L2/Hをそれぞれ0.8以上1.9以下とし、かつ励振用電極部遮断周波数をf0、無電極部遮断周波数をfcとした時の周波数低下量(fc−f0)/fcを0.12以上0.2以下とした圧電フィルタ。
  4. 同一圧電基板上に形成されかつ電気的に接続される少なくとも2個以上の圧電振動素子が請求項1,2,3のいずれか1つに記載の圧電振動素子である圧電フィルタ。
  5. 電極の上に電極と同じ面積の樹脂を塗布し周波数低下量を0.12以上0.2以下とする請求項1,2,3のいずれか1つに記載の圧電振動素子の製造方法。
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