JP4355571B2 - ヒト可変ドメインの改変 - Google Patents

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Description

関連出願
本出願は、2001年7月19日に出願された欧州特許第01 11 6756.6号に関する優先権を主張するものであり、該特許は、その全文を本明細書に参照として組み込むものとする。
抗体は、特異性が高く、標的範囲が広いことから、基礎研究、臨床及び工業的使用における様々な状況において多くの用途が認められている。かかる場合、抗体は、ほぼすべての種類の基質を選択的に認識する手段として役立つ。しかし、抗体の多能性にもかかわらず、いくつかの重要な用途で抗体分子を用いる場合には、抗体固有の制限が存在する。例えば、治療又はin vivo診断用抗体フラグメントは、ヒト患者において所望の標的で蓄積するのに長い血清半減期を必要とし、そのため、抗体は、プロテアーゼによる沈降及び分解に耐性がなければならない(Willudaら、1999)。工業用途では、往々にして、有機溶剤、界面活性剤中で、又は高温で機能できる抗体が要求されるが、これらのすべてが、抗体分子の安定性に対し厳しい難題となる(Dooleyら、1998;Harrisら、1994)。また、特に臨床用途では、サイズについて考慮する必要がある。腫瘍透過を増強する場合には、小さい分子ほど有利であるため、大きなサイズの完全抗体の作製は、治療法によっては不利であると考えられる。さらに、抗体の用途に対する高い要求、並びに、そのような用途の種類の増加によって、これまでより効率的な高レベル生産のための方法が必要となる。
一本鎖Fv(scFv)フラグメントは、これらの制限のいくつかを回避するために設計された1つの抗体形態である(Birdら、1988;Hustonら、1988)。これら分子のサイズを抗体が抗原結合部分まで小さくされており、これら部分は、可変リンカーを介して連結される重及び軽鎖の可変ドメインを含んでいる。ほとんどのscFvフラグメントは、大腸菌における組換え発現から十分な量で容易に取得することができる(Glockshuberら、1992;Pluckthunら,1996)。これらのフラグメントの生産収率は、その安定性、並びに、可溶性及びフォールディング効率の影響を受けるため、発現挙動に影響を及ぼす重要なscFvフラグメントでの位置を確認するのに多大な努力が為されてきた(Knappik及びPluckthun、1995;Forsbergら、1997;Kipriyanovら、1997;Niebaら、1997)。
抗体分子の安定性に影響を与える因子は、ほとんどscFvフラグメントを用いて研究されてきた(Worn及びPluckthun、2001)。scFvフラグメントの全体的安定性は、V及びVの内因性構造安定性と、それらの相互作用がもたらす外因性安定化に左右される(Worn及びPluckthun、1999)。いくつかのscFvについては、単離されたV及びVドメイン、並びに、全scFvフラグメントの安定性は、近年測定及び比較されている(Jagerら、2001;Jager及びPluckthun、1999a;Worn及びPluckthun、1999)。ヒトV3コンセンサスフレームワークへのループ植継ぎにより作製された抗HER2 scFv hu4D5−8のVドメイン(Caterら、1992;Rodriguesら、1992)は、変性の自由エネルギー14.4kJ/モル−1−1を示す(Jagerら、2001)。この低い熱力学的安定性は一見すると意外であるが、HER2に対する親和性を高めるためのループ植継ぎの後、導入されたV3コンセンサス配列のフレームワーク残基には複数の差異がある(Carterら、1992)。触媒抗体のVドメインIcaH−01(Ohageら、1999)は、それをコンセンサス配列に変換することにより、安定性向上を目的として作製された(Steipeら、1994)。V3ドメインの頻繁な使用により、このコンセンサス全体が、V3コンセンサスに向けて大きく偏ってくる。7つの位置が確認され、個別に交換された(Wirtz及びSteipeら、1999)。
scFvフラグメント、並びに極めて多様な作製抗原に対する完全なヒト抗体は、現在、複数の抗体ライブラリーから取得することができる(Griffithsら、1994;Vaughanら、1996;Knappikら、2000)。これらのライブラリーは、所望の標的分子と結合する抗体フラグメントをパニングすることにより富化するが、選択手順は、発現挙動、発現させた抗体構築物の細菌宿主に対する毒性、プロテアーゼ感受性、フォールディング効率、及び安定性など、別の因子のために偏ってくる。安定フレームワークの多様なライブラリーを作製するのに、2つの解決法が考えられる。第1は、単一の安定フレームワークを用いることである(Holtら、2000;Piniら、1998;Soderlingら、2000)。これらのライブラリーは、Vドメイン用のマスターフレームワークとして、生殖系列遺伝子DP47を用いる(Tomlinsonら、1992)。というのは、この遺伝子は、細菌系で良好に発現し(Griffithsら、1994)、極めて頻繁に、ヒト個体においてin vivoで発現する(de Wildtら、1999)からである。Griffithsライブラリーは、in vitroで作製されたCDR3およびFR4配列を用いて、生殖系列Vバンクから構築される(Griffithsら、1994)。CDR(Holtら、2000;Piniら、1998)、又はin vivoプロセシングした遺伝子配列から取得したCDR(Soderlingら、2000)に様々な点突然変異を導入することにより、多様性が達成されている。
安定フレームワークの構造的に多様なライブラリーを達成する第2の方法は、ヒトコンセンサス抗体フレームワークをさらに最適化することである。フレームワーク1のコンホメーションについてコンホメーションの変化を有する様々なフレームワーク(Honegger及びPluckthun、2001a;Jungら、2001;Saul及びPoljak、1993)は、多様なCDR2コンホメーションに適用できるのに対し(Saul及びPoljak、1993)、様々なフレームワーク4の配列は、CDR3コンホメーションに影響を与える。ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー(HuCAL、Knappikら、2000)は、49のマスター遺伝子を形成するリンカー領域を介して連結する7つのVと7つのVの合成コンセンサスフレームワークの組み合わせから構成される(Knappikら、2000)。
このライブラリーは、主要V及びV−サブファミリー(V1、V2、V3、V4、V5、及びV6、Vκ1、Vκ2、Vκ3、Vκ4、Vλ1、Vλ2及びVλ3)のフレームワーク領域のコンセンサス配列のセットを基礎としている。これらのサブファミリーは、V1サブファミリーを含む既知生殖系列配列から同定され(VBASE、Cook及びTomlinson, 1995)、このV1サブファミリーは、CDR−H2コンホメーションが異なるため、さらにV1a及びV1bに区分される。サブファミリーの各々について、該サブファミリーに属するあらゆる既知の再構成抗体配列のデータベースから、フレームワーク領域のコンセンサス配列を計算した。
これら14のコンセンサス配列は、理想的には、ヒト可変ドメインフレームワークの構造レパートリーを提示する。
対応する生殖系列可変ドメインの生殖系列CDR1及びCDR2配列と、同一のCDR3とを含むこれらのコンセンサス配列を用いて、発現研究が行なわれた(Knappikら、2000)。従って、個々のVHおよびVLドメインは、大腸菌において良好に発現され、しかも安定していることが証明されている。しかし、これらの研究、並びに、組換え体ライブラリーにおけるそれらの個別の性能に関する研究(Hanesら、2000)から、個々の可変ドメインを互いに比較すると、それらにやはり顕著な差異があることがわかった。
全体発現の増強と、抗体又はそのフラグメントの安定性は、抗体ライブラリーのほとんどの用途で非常に望ましい。
従って、本発明の技術上の問題は、抗体又はそのフラグメントの相対的安定性、全体発現及び溶解度を向上させることである。前記の技術上の問題に対する解決法は、請求項に記載し、以下に開示する実施形態を提供することにより、達成される。
本発明の技術的手法、すなわち、特定のサブクラスのヒト可変重鎖又は軽鎖抗体ドメインにおける1以上のフレームワーク残基を、それぞれ別のサブクラスのV又はVドメインに関して改変する方法は、従来の技術によって提供及び提案のいずれも為されていない。
本発明は、本明細書に記載及び意図された方法を用いて、特に、改変されたフレームワーク領域を有する抗体を提供する。核酸配列を突然変異させる方法は、当業者にはよく知られており、限定するものではないが、カセット突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、PCRによる突然変異誘発(例えば、Sambrookら、1989;Ausubelら、1999を参照のこと)などがある。
一態様では、本発明は、以下からなる群より選択されるVドメインを含む、単離されたポリペプチド(及び該ポリペプチドをコードする単離された核酸配列)を提供する:
(i)V1aサブクラスに属するVドメインであって、29位にF及び/又は89位にLのアミノ酸残基を含む、上記Vドメイン;
(ii)V1bサブクラスに属するVドメインであって、89位にLのアミノ酸残基を含む、上記Vドメイン;
(iii)V2サブクラスに属するVドメインであって、16位のG、44位のV、47位のA、76位のG、78位のF、90位のY、97位のR、99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、97位がRである場合には99位はEである、上記Vドメイン;
(iv)V4サブクラスに属するVドメインであって、16位のG、47位のA、78位のF、90位のY、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、97位がRである場合には99位はEである、上記Vドメイン;
(v)V5サブクラスに属するVドメインであって、89位のL、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、97位がRである場合には99位はEである、上記Vドメイン;並びに
(vi)V6サブクラスに属するVドメインであって、5位のV、16位のG、58位のI、78位のF、90位のY、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、97位がRである場合には99位はEである、上記Vドメイン。
本発明はまた、以下からなる群より選択されるVドメインを含む、単離されたポリペプチド(及び該ポリペプチドをコードする単離された核酸配列)を提供する:
(i)V1κ2サブクラスに属するVドメインであって、18位にRのアミノ酸残基を含み、18位がRである場合には、92位はTである、上記Vドメイン;
(ii)Vλ1サブクラスに属するVドメインであって、47位にKのアミノ酸残基を含む、上記Vドメイン。
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、例えば、抗体又はそのフラグメントのライブラリーを構築するのに用いることができる。抗体又はそのフラグメントのライブラリーについては様々な刊行物(例えば、Vaughanら、1996;Knappikら、2000;米国特許第6,300,064号を参照:これらの文献は、参照としてその全文が本明細書に組み込まれる)に記載されており、当業者には周知である。
本発明に関して、「Vドメイン」という用語は、免疫グロブリン分子の重鎖の可変部分を意味する。「V・・・サブクラス」という用語は、前記のように作製されたHuCAL(V1a、V1b、V2、V3、V4、V5、及びV6)(Knappikら、2000))から取得した、対応する「V・・・」コンセンサス配列によって決定されるサブクラスを意味する。これに関し、「サブクラス」という用語は、V−サブファミリーのコンセンサス配列により呈示される高度の同一性及び類似性を共有する可変ドメインのグループを意味し、ここで、用語「サブファミリー」とは「サブクラス」の類義語として用いられる。本発明では、「コンセンサス配列」という用語は、HuCALコンセンサス遺伝子を意味する。所与のVドメインが「Vサブクラスに属する」か否かの決定は、該Vドメインとすべての既知ヒトV生殖系列セグメントとのアラインメント(VBASE、Cook及びTomlinson、1995)、並びに、BLOSUM(Henikoff及びHenikoff、1992)のような相同性検索マトリックスを用いた最も高い相同性の決定により実施する。相同性の決定、並びに相同性に基づく配列の分類のための方法は、当業者にはよく知られている。サブクラスへの個々の生殖系列配列の分類は、Knappikら(2000)に従って実施する。
本発明において、「Vドメイン」という用語は、免疫グロブリン分子の軽鎖の可変部分を意味する。用語「V・・・サブクラス」は、前記のように作製されたHuCAL(Vκ1、Vκ2、Vκ3及びVκ4、並びに、Vλ1、Vλ2及びVλ3;Knappikら、2000)から取得した、対応するV・・・コンセンサス配列によって決定されるサブクラスを意味する。
このライブラリーにおいて、主要Vサブファミリーの各々についてのコンセンサス配列は、既知抗体配列から作製した(VBASE、Cook及びTomlinson、1995)。本発明において、アミノ酸残基の番号付けは、Honegger及びPluckthun(2001b)の構造により調節される手法に従う。
本発明において、「抗体」という用語は、「免疫グロブリン」の類義語として用いる。本発明に係る抗体又はそのフラグメントには、Fv(Skerra及びPluckthun、1988)、scFv(Birdら、1988;Hustonら、1988)、ジスルフィド結合Fv(Glockshuberら、1992;Brinkmannら、1993)、Fab、(Fab’)フラグメント、単Vドメイン、又は、当業者には公知のその他のフラグメントがあり、これらは、免疫グロブリン又は免疫グロブリンフラグメントの少なくとも1つの可変ドメインを含み、かつ、標的に結合する能力を有する。
本発明は、新規の免疫グロブリン配列と、それを作製する方法を提供する。本発明者らは、驚くことに、基準点として別のサブクラス(すなわち、サブファミリー)の配列を用いて、任意の可変重鎖又は軽鎖サブクラスの免疫グロブリンの特定のフレームワーク領域を最適化するための手法をみいだした。本発明はまた、このように最適化されたヒト可変ドメインをさらに改変する方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(i)V1a、V1b、V2、V4、V5、及びV6からなるVコンセンサス配列群より選択される対応アミノ酸コンセンサス配列を同定するステップ、
(ii)上記コンセンサス配列のアミノ酸残基に対応する1以上のコドンを、前記ドメインの核酸配列の対応する位置に置換するステップ。
以下に示す手順は、結合活性を維持しながら、所与のヒト免疫グロブリン重鎖可変ドメインの特性を改善するのに、一般に適用可能な方法を説明するものである。(この方法は、本明細書で示す指示に従い、容易に改変して、所与のヒト免疫グロブリン軽鎖可変ドメインの特性を改善することができる。)第1の手順は、所与のドメインの各残基を免疫グロブリン配列の様々なサブセットと比較することである。結合活性を保持するのが好ましいため、CDR1(25−40)、CDR2(57−77)、CDR3(109−137)及び外側ループ(84−87)は、一般に考慮しない(Honegger及びPluckthun(2001b)に従う番号付け)。フレームワーク1クラスの決定、サブタイプ決定(6、7、9、10)及びサブタイプ対応(19、74、78、93)残基を、同じクラスに入る配列のコンセンサス部分と比較する(Honegger及びPluckthun、2001a)。次に、別の残基を、有利な特性を有するVドメイン(ファミリー1、3及び5)のコンセンサス配列と比較する(実施例1、Knappikら、2000を参照)。それから、構造モデルを用いて、残基の差異を分析する(実施例2を参照)。可溶性タンパク質の発現率及び/又は熱力学的安定性を高める突然変異として、本発明の実験でわかるように、以下のものが挙げられる:
(i)ループ内の非グリシン残基を、正のφ角を有するグリシンで置換する突然変異、
(ii)β鎖において低βシート傾向を有する残基から、高βシート傾向を有する残基への突然変異、
(iii)溶媒露出疎水性残基から、親水性残基への突然変異、並びに、
(iv)不満足な水素結合を有する残基の置換。
好ましい実施形態では、本発明は、V3ではないVサブクラスに属する特定のヒトVドメインの改変方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
(a)HuCAL V3ドメインの対応アミノ酸残基と比較して、異なる上記Vドメインの特定アミノ酸残基を同定するステップ、
(b)上記異なるアミノ酸残基の少なくとも1つを、上記HuCAL V3ドメインの対応アミノ酸残基で置換するステップ(ただし、置換アミノ酸残基が、前記サブクラスのコンセンサスアミノ酸残基ではない場合に限る)。
この基本的方法は、原則として、Vドメインにも適用可能である。例えば、Vκドメインは、Vκ3のコンセンサス配列と比較することができる。というのは、このドメインは、Vκドメインのうち最も高い熱力学的安定性及び発現率を呈示するからである。合理的設計Vλドメインの物理的原理は、前述したVドメインと同じである。
好ましい実施形態では、本発明は、V1aサブクラスに属するVドメインであって、29位にF及び89位にLのアミノ酸残基を含むVドメインを含む、単離されたポリペプチドに関する。
別の実施形態では、本発明は、V1bサブクラスに属するVドメインであって、89位にLのアミノ酸残基を含むVドメインを含む、単離されたポリペプチドに関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、V2サブクラスに属するVドメインであって、16位のG、44位のV、47位のA、76位のG、78位のF、90位のY、97位のR、99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、97位がRである場合には99位はEであるVドメインを含む、単離されたポリペプチドに関する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、V4サブクラスに属するVドメインであって、16位のG、47位のA、78位のF、90位のY、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、97位がRである場合には99位はEであるVドメインを含む、単離されたポリペプチドに関する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、V5サブクラスに属するVドメインであって、89位のL、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、97位がRである場合には99位はEであるVドメインを含む、単離されたポリペプチドに関する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、V6サブクラスに属するVドメインであって、5位のV、16位のG、58位のI、78位のF、90位のY、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、97位がRである場合には99位はEであるVドメインを含む、単離されたポリペプチドに関する。
さらにまた別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のVドメインを含む、抗体又はその機能的フラグメントに関する。さらには、本発明の1以上の抗体又はその機能的フラグメントを含む抗体又はその機能的フラグメントのライブラリーが好ましい。
本発明のライブラリーは、HuCALライブラリー(Knappikら、2000)から出発し、本発明の教示に従って、1以上のVH及び/又はVLコンセンサス配列を最適化し、例えば、Knappikら、2000に記載されているトリヌクレオチド指定突然変異誘発を用いて合成したオリゴヌクレオチドカセットを使用することにより、上記最適化配列における少なくとも1つのCDR領域に多様性を導入することによって、作製することができる。
さらにまた別の好ましい実施形態では、本発明は、V1κ2サブクラスに属するVドメインであって、18位のRのアミノ酸残基を含み、18位がRである場合には92位はTであるVドメインを含む、単離されたポリペプチドに関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、Vλ1サブクラスに属するVドメインであって、47位のKのアミノ酸残基を含むVドメインを含む、単離されたポリペプチドに関する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のVドメインを含む、抗体又はその機能的フラグメントに関する。
最も好ましい実施形態では、本発明は、本発明の1以上の抗体又はその機能的フラグメントを含む抗体又はその機能的フラグメントのライブラリーに関する。
さらに好ましい実施形態では、(a)29位をFと、(b)89位をLと交換するリストから選択される、少なくとも1つのアミノ酸残基交換を含む改変Vドメインを作製することにより、V1aサブクラスに属するヒトVドメインを改変する方法に関する。
別の好ましい実施形態では、89位をLと交換する、アミノ酸残基交換を含む改変Vドメインを作製することにより、V1bサブクラスに属するヒトVドメインを改変する方法を提供する。
さらに別の好ましい実施形態では、(a)16位をGと;(b)44位をVと;(c)47位をAと;(d)76位をGと;(e)78位をFと;(f)97位をRと交換する(ただし、99位のアミノ酸残基はEであるか、若しくはEと交換する)リストから選択される、少なくとも1つアミノ酸残基交換を含む改変Vドメインを作製することにより、V2サブクラスに属するヒトVドメインを改変する方法に関する。さらに、90位をYと交換する、アミノ酸残基交換を含む改変Vドメインを作製することにより、V2サブクラスに属するVドメインを改変する方法が好ましい。
さらに別の好ましい実施形態では、(a)16位をGと;(b)44位をVと;(c)47位をAと;(d)76位をGと;(e)78位をFと;(f)97位をRと(ただし、99位のアミノ酸残基はEであるか、若しくはEと交換する);及び(g)99位をEと交換するリストから選択される、少なくとも1つのアミノ酸残基交換を含む改変Vドメインを作製することにより、V4サブクラスに属するヒトVドメインを改変する方法に関する。さらに、90位をYと交換する、アミノ酸残基交換を含む改変Vドメインを作製することにより、V4サブクラスに属するヒトVドメインを改変する方法が好ましい。
別の好ましい実施形態では、(a)77位をRと;(b)89位をLと;(c)97位をRと;(ただし、99位のアミノ酸残基はEであるか、若しくはEと交換する);及び(d)99位をEと交換するリストから選択される、少なくとも1つのアミノ酸残基交換を含む改変Vドメインを作製することにより、V5サブクラスに属するヒトVドメインを改変する方法を提供する。
さらに別の好ましい実施形態では、(a)5位をVと;(b)16位をGと;(c)44位をVと;(d)58位をIと;(e)72位をDと(f)76位をGと;(g)78位をFと;及び(h)97位をRと交換する(ただし、99位のアミノ酸残基はEであるか、若しくはEと交換する)リストから選択される、少なくとも1つのアミノ酸残基交換を含む改変Vドメインを作製することにより、V6サブクラスに属するヒトVドメインを改変する方法に関する。さらに、90位をYに交換する、アミノ酸残基交換を含む改変Vドメインを作製することにより、V6サブクラスに属するVドメインを改変する方法が好ましい。
別の実施形態では、本発明は、2つ以上のアミノ酸残基が交換されている、Vドメイン改変方法に関する。
さらに別の実施形態では、Vドメインの改変方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(i)上記Vドメインをコードする核酸分子を用意するステップ;
(ii)上記核酸分子を突然変異させることにより、前記改変Vドメインをコードする、改変された核酸分子を取得するステップ。
好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、V1aサブクラスドメインにおいて、29位のF及び89位のLからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を置換するステップを含む方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、V1bサブクラスドメインにおいて、89位のLのアミノ酸残基を置換するステップを含む方法に関する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、V2サブクラスドメインにおいて、16位のG、44位のV、47位のA、76位のG、78位のF、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を置換するステップを含み、97位がRである場合には99位はEである方法に関する。さらには、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、V2サブクラスドメインにおいて、90位のYのアミノ酸残基を置換するステップを含む方法が好ましい。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、V4サブクラスドメインにおいて、16位のG、44位のV、47位のA、76位のG、78位のF、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を置換するステップを含み、97位がRである場合には99位はEである方法に関する。さらには、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、V4サブクラスドメインにおいて、90位のYのアミノ酸残基を置換するステップを含む方法が好ましい。
さらにまた別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、V5サブクラスドメインにおいて、77位のR、89位のL、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を置換するステップを含み、97位がRである場合には99位はEである方法に関する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、V6サブクラスドメインにおいて、5位のV、16位のG、44位のV、58位のI、72位のD、76位のG、78位のF、97位のR、及び99位のEからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を置換するステップを含み、97位がRである場合には99位はEである方法に関する。さらには、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、V6サブクラスドメインにおいて、90位でYのアミノ酸残基を置換するステップを含む方法が好ましい。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、2以上のアミノ酸残基を置換する本発明のポリペプチドを取得する方法に関する。
さらにまた別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、Vκ2サブクラスドメインにおいて、12位のS、45位のQ、及び18位のRからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を置換するステップを含み、18位がRである場合には92位はTである方法に関する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、Vλ1サブクラスドメインにおいて、47位のKからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を置換するステップを含む方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、Vκ1、Vκ2及びVκ3ドメインにおいて、8位のPのアミノ酸残基を置換するステップを含む方法に関する。さらには、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、8位がPであり、7及び9位でSの置換をさらに含む、上記方法が好ましい。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、2以上のアミノ酸残基を置換する本発明の方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明のポリペプチドを取得する方法であって、改変された核酸分子を発現させるステップをさらに含む方法に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書において開示若しくは意図したように、新規のVドメイン、抗体又はその機能的フラグメントをコードする単離された核酸分子に関する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書において開示若しくは意図したように、新規のVドメイン、抗体又はその機能的フラグメントをコードする単離された核酸分子に関する。
さらにまた別の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書において開示若しくは意図したように、Vドメイン、抗体又はその機能的フラグメントを生産する方法であって、本発明の単離された核酸分子を発現させるステップを含む方法に関する。
本発明はまた、本発明の分子の保存的アミノ酸変異体を提供する。コードされたタンパク質の分子構造全体を保存する本発明の変異体も作製することができる。開示されたタンパク質産物を含む個々のアミノ酸の特性を考慮すると、当業者はいくつかの合理的置換を理解しうる。アミノ酸置換、すなわち、「保存的置換」は、例えば、関連する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の類似性に基づいて、実施することができる。
例えば、(a)非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンを含み;(b)極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンを含み;(c)正の電荷をもつ(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン、及びヒスチジンを含み;並びに(d)負の電荷をもつ(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。置換は、典型的には、(a)〜(d)のグループ内で実施することができる。さらに、グリシンとプロリンは、αヘリックスを破壊する能力に基づいて、相互に置換することができる、同様に、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン及びリシンなどの特定のアミノ酸は、一般に、αヘリックスにおいて認められることが多いが、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン及びトレオニンは、β折りたたみシートにおいて認められることが多い。グリシン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、及びプロリンは、一般に、順番に存在する。好ましい置換は、以下のグループ:(i)S及びT;(ii)P及びG;並びに(iii)A、V、L及び1間で実施することができる。公知の遺伝暗号、組換え体及び合成DNA技法を考慮すれば、当分野の科学者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができる。
本明細書において、2つのポリペプチド配列間の「配列同一性」とは、配列間で同一のアミノ酸のパーセンテージを示す。「配列類似性」とは、同一であるか、又は、保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸のパーセンテージを示す。
本発明はまた、高度にストリンジェントな条件下で、本発明のV及び/又はVドメイン、抗体又はその機能的フラグメントにハイブリダイズする核酸を提供する。本明細書で用いる、高度にストリンジェントな条件とは、約5〜20%の配列多様性、好ましくは約5〜10%まで許容する条件である。限定するものではないが、高度にストリンジェントな(ハイブリッドのTm計算値より10℃低い)条件の例では、ハイブリッドのTm計算値より低い適当なTiで、0.1×SSC(標準生理食塩水−クエン酸バッファー)及び0.5%SDSの洗浄溶液を用いる。上記条件の最終ストリンジェンシーは、特に、用いたハイブリダイゼーション条件が、安定ハイブリッドと一緒に、これより不安定なハイブリッドを形成させる条件である場合には、主として洗浄条件応じて決まる。従って、ストリンジェンシーが高い洗浄条件ほど不安定なハイブリッドが排除される。前述した高度から中程度にストリンジェントな洗浄条件で、用いることができる一般的ハイブリダイゼーション条件は、適当なインキュベーション温度Tiでの、6×SSC(又は6×SSPE)、5×デンハルト試薬、0.5%SDS、100μg/ml変性断片化サケ精子DNAの溶液におけるハイブリダイゼーションである。好適な高ストリンジェンシー条件の概要については、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Press(1989))を参照されたい。
ストリンジェンシー条件は、ハイブリダイゼーション実験及び洗浄で用いた温度、ハイブリダイゼーション溶液及び洗浄液中の一価陽イオンのモル濃度、並びに、ハイブリダイゼーション溶液におけるホルムアミドのパーセンテージと相関する。一般に、プローブを用いたハイブリダイゼーションによる感度は、プローブの量及び特異的活性、標的核酸の量、標識の検出可能性、ハイブリダイゼーションの速度、並びにハイブリダイゼーションの持続時間に影響される。ハイブリダイゼーション速度は、DNA:DNAハイブリッドについてはTmより20〜25℃低いTi(インキュベーション温度)、また、DNA:RNAハイブリッドの場合は、Tmより10〜15℃低いTiで、最大化される。また、この速度は、約1.5M Na+のイオン強度によっても最大化される。ハイブリダイゼーション速度は、二本鎖の長さに直接比例し、ミスマッチ度に反比例する。
しかし、ハイブリダイゼーションの特異性は、所望するハイブリッドと「バックグラウンド」ハイブリッド同士の安定性の差異と相関する。ハイブリッド安定性は、二本鎖長さ、塩基組成、イオン強度、ミスマッチ、及び不安定剤(使用する場合)と相関する。
完全なハイブリッドのTmは、DNA:DNAハイブリッドの場合、以下のように、Meinkothら(1984)の式を用いて推定することができ:
Tm=81.5℃+16.6(log M)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/L
DNA:RNAハイブリッドについては、以下の式を用いる:
Tm=79.8℃+18.5(log M)+0.58(%GC)−11.8(%GC)2−0.56(%form)−820/L
上記式中、Mは、一価陽イオンのモル濃度で、0.01〜0.4M NaCl、
%GCは、DNAにおけるG及びCヌクレオチドのパーセンテージで、30〜75%、
%formは、ハイブリダイゼーションにおけるホルムアミドのパーセンテージ、並びに、
Lは、ハイブリッドの塩基対の長さである。
Tmは、1%ミスマッチにつき、0.5〜1.5℃(それぞれの計算では、平均値の1℃を用いることができる)ずつ減少する。
Tmはまた、実験により決定することもできる。前記式で、ハイブリッドの長さ(L)が増加すれば、Tmも高くなり、安定性が高まるため、全長ラット遺伝子配列をプローブとして用いることができる。
濾紙ハイブリダイゼーションは、典型的に、68℃及び高イオン強度(例えば、5〜6×SSC)(ストリンジェントではない)で実施した後、ストリンジェンシーを増加する1回以上の洗浄を実施する。その際、最後の洗浄は、最終的に所望する高ストリンジェンシーである。Tmの式を用いて、最終洗浄に適したTiを推定することができる。あるいは、完全な二本鎖のTmを実験により決定してから、それに応じてTiを調節してもよい。
別の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載若しくは意図したVドメイン、抗体又はその機能的フラグメントを製造する方法であって、本発明の単離された核酸分子を発現させるステップを含む方法に関する。
特に、このような方法は、以下のステップを含む:
(i)Vドメインをコードする核酸分子を用意するステップ;
(ii)上記核酸分子を突然変異させることにより、少なくとも1つのアミノ酸残基交換を含む改変Vドメインをコードする、改変された核酸分子を取得するステップ。核酸配列を突然変異させる方法は、当業者には公知であり、限定するものではないが、カセット突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、PCRによる突然変異誘発などが挙げられる(例えば、Sambrookら、1989;Ausubelら、1999)。
さらには、本発明の単離された核酸分子を含むベクターが好ましい。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明の単離された核酸分子、又は本発明のベクターを有する宿主細胞に関する。
別の好ましい実施形態では、本発明のVドメインは、限定するものではないが、抗体ライブラリーの構築、作製、発現及びスクリーニングを含む、あらゆる抗体の用途に用いることができる。
別の好ましい実施形態では、本発明のVドメインは、限定するものではないが、抗体ライブラリーの構築、作製、発現及びスクリーニングを含む、あらゆる抗体の用途に用いることができる。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本明細書に記載したV及びVドメインの任意の組み合わせを含む、抗体又はその機能的フラグメント(並びにその作製方法)に関する。例えば、抗体は、以下を含みうる:
(i)V1aサブクラスに属するVドメインであって、29位にF及び/又は89位にLのアミノ酸残基を含むVドメイン;並びに
(ii)Vκ2サブクラスに属するVドメインであって、12位のS、45位のQ、又は18位のRのうち1以上の置換を含み、18位がRである場合には92位はTであるVドメイン。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明に従う1以上の抗体又はその機能的フラグメントを含む、抗体又はその機能的フラグメントのライブラリーに関する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明の抗体又はその機能的フラグメントをコードする単離された核酸分子に関する。
図面の説明
図1:単離されたV及びVドメインの見かけ分子量の決定。50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び500mM NaClにおいて、以下のゲル濾過実験を実施した:
(a)V3(実線)、V1a(点線)、並びに0.9MGdnHClの存在下でのV1a(長い破線)を含む、Superdex−75カラムでの、単離されたヒトコンセンサスVドメイン(5μM);
(b)Vκ1(実線)、Vκ2(長い破線)、Vκ3(点線)、及びVκ4(短い破線)を含む、Superose−12カラムでの、単離されたVκドメイン(50μM);並びに、
(c)Vλ1(実線)、Vλ2(長い破線)及びVλ3(点線)を含むTSKカラムでの、単離されたVλドメイン(5μM)。矢印は、分子量標準の溶出量:炭酸脱水酵素(29kDa)、及びシトクロムc(12.4kDa)を示す;
(d)280nmの検出波長を用いた、19,000rpmでのVκ3の平衡沈降。実線は、単一種に対するデータの当てはめ(fitting)から取得し、13,616Daの分子量を算出した。当てはめたものの残りはランダムに分散しており、これは、単量体状態の仮定が妥当であることを示している。
図2:以下に示すVドメインのGdnHCl変性曲線の重ね合わせ:
(a)V1a(黒丸)、V1b(白四角)、V3(黒四角)及びV5(白丸);
(b)V2(黒丸)、V4(白四角)及びV6(黒四角)。すべての変性変化(a及びb)は、280nmの励起波長での変性剤の濃度の関数として発光最大値の変化を追跡することにより、測定した。
図3:以下に示すVドメインのGdnHCl変性曲線の重ね合わせ:
(a)Vκ1(黒丸)、Vκ2(黒四角)、Vκ3(白四角)及びVκ4(白丸)を含むVκドメイン;並びに、
(b)Vλ1(黒四角)、Vλ2(黒丸)、Vλ3(白四角)を有するVλドメイン。すべての変性変化(a及びb)は、280nmの励起波長での変性剤の濃度の関数として蛍光強度の変化を追跡することにより、測定した。
図4:ヒトコンセンサスVκ3(PDB登録名:1DH5)及びV3ドメイン(PDB登録名:1DHU)からなるscFvフラグメントのモデル構造:
(a)左側にVκ3、右側にV3を有する二次構造
(b)荷電残基にはマークを付けた(グレー:Arg、Lys及びHis;黒:Asp及びGlu)。各ドメインの底部には、荷電残基の集積、すなわち、V及びVドメインの電荷クラスターがある
(c)疎水性コア残基:保存されたTrp43(薄いグレー)の上方は、上部コア(濃いグレー)で、下方は下部コア(黒)である。詳細については明細書を参照
(d)フォールディング効率に影響を及ぼす可能性のある位置を薄いグレーで示す。詳細については明細書を参照。イメージはすべて、プログラムMOLMOL(Koradiら、1996)を用いて作製した。
図5:水素結合を有するヒトコンセンサス(a)V3および(b)Vκ3ファミリーの電荷クラスターの詳細図。イメージは、プログラムMOLMOL(Koradiら、1996)を用いて作製した。
図6:上部コア残基の詳細図。(a)V4、(b)V1a及び(c)V5(各々薄いグレー)と黒のV3、並びに(d)薄いグレーのVλ1と黒のVλ3の重ね合わせ。詳細については明細書を参照。保存されたTrp43を示す。残基4、80及び82は、明細書で述べるパッキング差異に寄与しないため、示していない。イメージは、プログラムMOLMOL(Koradiら、1996)を用いて作製した。
図7:フレームワーク1分類に対応する下部コア残基の詳細図。(Aa)V1a(薄いグレー)とV3(黒)、(Bb)V4(薄いグレー)とV3(黒)、並びに(c)Vλ1(薄いグレー)とVλ3(黒)の重なり合い。詳細については明細書を参照。保存されたTrp43を示す。イメージは、プログラムMOLMOL(Koradiら、1996)を用いて作製した。
図8:50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び500mM NaClにおけるSuperdex−75カラムでのscFvフラグメント(5μM)の分析用ゲル濾過:
(a)H3κ3(実線)、H4κ3(長い破線)、H1aκ3(短い破線)並びに、1M GdnHClの存在下でのH1aκ3(短い破線);
(b)H3κ3(実線)、H3κ1(長い破線)、H3λ1(短い破線)、並びに1M GdnHClの存在下でのH3λ1(短い破線)。矢印は、分子量標準の溶出量:ウシ血清アルブミン(66kDa)、炭酸脱水酵素(29kDa)、及びシトクロムc(14kDa)を示す。
図9:境界面安定化の様々なケースを示すGdnHCl変性曲線の重ね合わせ。各パネルで、scFvフラグメント(黒四角)と、付随する単離されたV(白四角)及びV(白丸)ドメインを示す。(a)H5κ3、(b)H1aκ3、(c)H3κ1及び(d)H3κ2を有する場合のすべての変性変化は、280nmの励起波長での変性剤の濃度の関数として発光最大値(scFvフラグメント及びVドメインの場合)または蛍光強度(Vドメインの場合)の変化を追跡することにより、測定した。
図10:Vλドメインでの境界面安定化における様々なL−CDR3の役割を示すGdnHCl変性曲線の重ね合わせ。λ様L−CDR3を有するH3λ1を含む(a)及びκ様L−CDR3を有するH3λ1を含む(b)では、scFvフラグメント(黒四角)と、構成成分の単離されたV3(白四角)及びVλ1(白丸)ドメインを示す。κ様CDR3を有する単離されたVλドメインは、非可逆的挙動を示すため、(b)では、Vλ1の再生曲線も示す(黒丸)。すべての変性変化は、280nmの励起波長での変性剤の濃度の関数として発光最大値(scFvフラグメント及びVドメインの場合)または蛍光強度(Vドメインの場合)の変化を追跡することにより、測定した。
図11:5μMの濃度における、Superdex−75カラムでの50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び500mM NaClにおける2C2−wt、2C3−all、6B3−wt及び6B3−allの分析用ゲル濾過。6B3−wt(長い破線)と6B3−all(点線)は類似した溶出量を示す。矢印は、分子量標準の溶出量:ウシ血清アルブミン(66kDa)、炭酸脱水酵素(29kDa)、及びシトクロムc(12.4kDa)を示す。2C2−all及び6B3−allが有する突然変異は、表7及び図12に一覧を示す。
図12:(a)2C2−wt、2C2−all、6B3−wt及び6B3−all、(b)単一突然変異(使用した略字:a=Q5V、b=S16G、c=T58I、d=V72D、e=S76G、f=S90Y及びall=adcdef)、及び(c)有利な特性を有するVドメインのコンセンサスに対する多重突然変異、並びに(d)scFv2C2を用いて例示したフレームワーク1サブタイプIIIに対する突然変異(使用した略字:g=P10A及びgh=P10A+V74F)のGdnHCl変性曲線の重ね合わせ。(b)、(c)及び(d)では、太い実線及び太い点線が、(a)の2C2−wt及び2C2−allにそれぞれ示した実験データの当てはめ(Jagerら、2001)を示す。すべての変性変化は、280nmの励起波長での変性剤の濃度の関数として発光最大値の変化を追跡することにより測定した。
図13:アラインメントしたHuCAL V配列。アミノ酸は、残基のタイプに応じて網がけした:芳香族残基(Tyr、Phe、Trp)、疎水性残基(Leu、Ile、Val、Met、Cys、Pro、Ala)、非荷電親水性残基(Ser、Thr、Gln、Asn、Gly)、酸性残基(Asp、Glu)、塩基性残基(Arg、Lys、His)。有利な特性のVドメイン(V1a、V1b、V3、V5)及び不利な特性のVドメイン(V2、V4、V6)のグループ間で相関した配列差異を示す残基は、四角で囲んだ。番号付けは、Kabatら(1991)、並びにHonegger及びPluckthun(2001b)に従う。
図14:有利な特性を有するVドメインのコンセンサスに対する単一突然変異の全体図。図の中央には、V6(黒いリボン、PDB登録名:1DHZ)とVκ3ドメイン(グレーのリボン、PDB登録名:1DH5)からなるモデルscFvフラグメントが、矢印で指した単一突然変異と一緒に示されており、この矢印は、単一突然変異の拡大図を示している。すべてのイメージは、プログラムMOLMOL(Koradiら、1996)を用いて作製した。番号付けは、Honegger及びPluckthun(2001b)に従う。
図15:(a)野生型V6ドメイン(PDB登録名:1DHZ)及び(b)改変P10A及びV74Fを有する二重突然変異型のモデルにおいて、残基(6、7及び10)及び相関残基(19、74、78、93)を決定するフレームワーク1サブタイプIIIの全体図。(c)リボンで表示するのは、黒いフレームのVドメインであり、これは、(a)及び(b)に描いた拡大領域を示している。すべてのイメージは、プログラムMOLMOL(Koradiら、1996)を用いて作製した。番号付けは、Honegger及びPluckthun(2001b)に従う。
図16:(a)2C2−wt及び2C2−all並びに(b)6B3−wt及び6B3−allの結合活性の比較。抗原をコーティングしたチップに対する様々なscFv濃度の導入後、時間に対してプロットした共鳴単位と共に、BIAcore実験を示す。実線は野生型scFvフラグメントを、また、点線は、有利なVドメインのコンセンサスに向けた6種の突然変異すべてを有するscFvフラグメントを示す。(a)では、1.25、0.63、0.31及び0.16μMの濃度の2C2−wt及び2C2−allが、(b)では、1.25、0.63、0.31、0.16及び0.08μMの濃度の6B3−wt及び6B3−allをプロットした。
図17:6B3−wt及び6B3−allの競合BIAcore分析。(a)6B3−wt(16nM)及び(b)6B3−all(10nM)を、様々な濃度のミオグロビンと一緒に1時間インキュベートした後、ミオグロビンをコーティングしたセンサーチップに導入した。線形センサグラムから、対応する全可溶性抗原濃度に対し、傾き(共鳴単位対時間(秒))をプロットした。この傾きは、導入した溶液中の非複合体化scFvと相関する。Hanesら(1998)に従い、当てはめからKを算出した。各点は、3つの独立した測定値の平均値である。実施例により、本発明を説明する。
以下に示す実施例では、分子生物学実験はすべて、標準プロトコル(Ausubelら、1999)に従い実施する。
実施例1
発現ベクターの構築
すべての発現ベクターについての出発点は、発現ベクターpBS13(Knappikら、2000)におけるV−(GlySer)−Vの配向のHuCALライブラリーのscFvマスター遺伝子であり、これらはすべて、抗体hu4D5−8のH−CDR3及びL−CDR3を有していた(Carterら、1992)。7つの単離されたヒトコンセンサスVドメインを、マスター遺伝子からPCR増幅した後、BssHIIとStyI制限部位との間のCDR3領域を、代謝選択により見いだされるCDR−H3をコードするYNHEADMLIRNWLYSDVに交換した(J. Burmesterら、未公表の結果)。最終発現プラスミドは、ベクターpAK400(Krebberら、1997)の誘導体であり、そこには、7つの異なるVドメインの発現カセットがXbaIとHindIII制限部位との間に導入され、また、skpカセット(Bothmann及びPluckthun、1988)がNotI制限部位に導入されている。上記発現カセットは、phoAシグナル配列、短いFLAGタグ(DYKD)、7つのVドメインの1つ、及びヘキサヒスチジンタグから構成される。
制限酵素EcoRV及びEcoRIを用いて、マスター遺伝子から7つの単離されたヒトコンセンサスVドメインを切り出した後、これをこれら制限部位を有するpAK400誘導体に連結した。BbsIとMscI制限部位との間のVλドメインのL−CDR3をQSYDSSLSGVV(107〜138)と交換した。このλ様L−CDR3は、Vλドメインの場合には、Kabatデータベース(Kabatら、1991)に存在する配列からのコンセンサスL−CDR3であり、136位に保存されたcis−プロリンを有するhu−4D5−8のκ様L−CDR3とは対照的である。選択した長さのコンセンサスλ様L−CDR3は、配列の20%に認められ、これは、最も高いパーセンテージを示す。109位のトリプトファンは、54%という最も頻度の高い残基であるが、これを、配列の20%を占めるトリシンと交換することにより、保存された固有トリプトファンの天然(野生型)状態の蛍光シグナルを妨害しないようにする。最終発現カセットは、pelBシグナル配列、7つのVドメインの1つ、及びヘキサヒスチジン−タグから構成される。
制限部位XbaI及びEcoRIを介して発現プラスミドpMX7中にscFvフラグメントをクローニングした。前記のように、Vλドメインにおいてκ様L−CDR3を交換した。最終発現カセットは、phoAシグナル配列、短いFLAGタグ(DYKD)、7つのVドメインの1つ、(GlySer)リンカー及び7つのVドメインの1つ、長いFLAGタグ(DYKDDDD)並びにヘキサヒスチジン−タグから構成される。
可溶性ペリプラズム発現
dYT培地(30μg/mLクロラムフェニコール、1.0%グルコースを含む30ml)に単細菌コロニーを接種し、25℃で一晩インキュベートした。1リットルのdYT培地(30μg/mLクロラムフェニコール、50mM KHPO)に前培養物を接種し、25℃でインキュベートした(バッフル付き5Lフラスコ、105rpm)。IPTGを最終濃度が0.5mMとなるまで添加することにより、OD550が1.0のときに発現を誘導した。インキュベーションを18時間継続したところ、細胞密度は、OD550が8.0〜11.0に達した。細胞を遠心分離(8,000g、4℃で10分)により回収し、40mlの50mM Tris−HCl(pH7.5)及び500mM NaCl中に懸濁させた後、フレンチプレス溶解により破砕した。粗抽出物を遠心分離(48,000g、4℃で60分)にかけ、上清を0.2μmフィルターで濾過してから、IMACクロマトグラフィーに直接アプライした。
分離用2カラム精製
2つのカラムを直列に連結した方法(Pluckthunら、1996)を用いてタンパク質を精製した。この手法では、C末端His−タグを利用する固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)カラムの溶出液をイオン交換カラムに直接導入した。イオン交換カラムからの溶出は、0〜800mM NaCl勾配で行った。V及びVκドメインは、10mM MES(pH6.0)中のHS陽イオン交換カラムで精製し、Vλドメイン及びscFvフラグメントは、10mM Tris−HCl(pH8.0)中のHQ陰イオン交換カラムで精製した。プールした画分は、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0、100mM NaClに対して透析した。
不溶性ペリプラズム発現
LB培地(30μg/mLクロラムフェニコール、1%グルコースを含む30ml)に単一の細菌コロニーを接種し、37℃で一晩インキュベートした。1リットルのSB培地(10μg/mLクロラムフェニコール、0.1%グルコース、0.4Mスクロース)に10mlの前培養物を接種し、25℃でインキュベートした。IPTGを最終濃度が0.05mMとなるまで添加することにより、OD550=0.8で発現を誘導した。インキュベーションを25℃で15時間継続した。遠心分離の後、細胞を100mM Tris−HCl(pH8.0)、2mM MgCl中に懸濁させた後、フレンチプレス溶解により破砕した。標準プロトコル(Buchner及びRudolph、1991)に従って、封入体を単離した。1Lの細菌培養物からの封入体ペレットを室温にて、10mlの可溶化バッファー(0.2M Tris−HCl、pH8.0、6M塩酸グアニジン(GdnHCl)、10mM EDTA、50mM DTT)中で可溶化させた。得られた溶液を遠心分離にかけ、上清を、DTTを含まない可溶化バッファーに対して10℃で透析した。このサンプルをニトリロトリ酢酸カラム(Qiagen)(Ni2+で荷電されている)に導入し、変性条件下でIMACを実施した。溶出液を再生バッファー(0.5M Tris−HCl、pH8.5、0.4Mアルギニン、5mM EDTA、20%グリセロール、0.5mMε−アミノ−カプロン酸、0.5mMベンズアミジニウム−HCl)中で最終濃度が1μMとなるよう16℃で10倍に希釈した。[GSH]:[GSSG]のモル濃度比が0.2:1mM(酸化条件)又は5:1mM(還元条件)で、再生バッファーにおける還元又は酸化グルタチオンのいずれかの存在により、ジスフィルド結合の形成を触媒した。再生混合物を16℃で20時間インキュベートし、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0、100mM NaClに対して透析した。
Ni−NTAバッチ精製
scFvフラグメントのフレンチプレス溶解で得た20mLの上清を2mLの50%Ni−NTAスラリーと一緒に室温で30分インキュベートした。懸濁液を直径1.5cmの空のカラムに導入し、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び1M NaClで十分に洗浄した。非特異的結合タンパク質を除去するため、カラムを30mMイミダゾールで洗浄した。250mMイミダゾールを添加することにより、scFvフラグメントを溶出した。サンプルの純度をSDS−PAGE分析により確認した後、280nmでの吸光度により濃度を決定した。対照として常にH3κ3と同時に、4つのscFvフラグメントを精製した。H3κ3の収率、並びにOD550が10の1Lの発現培養物に対し収率を正規化した。
不溶性タンパク質比の決定
1LのscFvフラグメント発現実験から得たフレンチプレス溶解抽出物のアリコートを4℃で30分かけて16,000gにて遠心分離した。上清(可溶性画分)及び沈降物(不溶性画分)(50mM Tris−HCl(pH7.5)及び500mM NaCl中に再懸濁させた)をSDS−PAGEにより分析した後、記載されている(Lindnerら、1997)ように、抗His抗体3D5を用いたウエスタンブロットを実施した。ChemiImagerTM4400(Alpha Innotech Corporation)を用いて化学発光を検出し、ソフトウエアChemiImagerTM5500(Alpha Innotech Corporation)を用いてバンドの密度を測定した。この方法は多くのステップを含んでおり、誤差が高い可能性があるため、誤差が10%と推定して、10位までの端数を切り捨てて不溶性物質のパーセンテージとして数値を示す。
ゲル濾過クロマトグラフィー
精製されたタンパク質のサンプルを50mMリン酸ナトリウム、pH7.0、500mM NaClで平衡したゲル濾過カラムで分析した。SMARTシステム(Pharmacia)を用いて、50μLの量及び60μL/分の流速で、濃度が5μMの単離されたVドメイン及びscFvフラグメントをSuperdex−75カラム(Pharmacia)に、また、濃度が50μM及び5μMの単離されたVκドメインをSuperose−12カラム(Pharmacia)に注入した。HPLCシステム(HP)を用いて、シリカを基材とするTSK−Gel(登録商標)G3000SWXLカラム(TosoH)に、50μL量、濃度5μM、及び流速0.5mL/分で、Vλドメインを注入した。リゾチーム(14kDa)、炭酸脱水酵素(29kDa)及びウシ血清アルブミン(66kDa)を分子標準として用いた。溶出の後、SMARTシステムの場合には280nmで、また、HPLCシステムの場合には220nmでの吸光度を検出した。
超遠心分離
XL−A分析用超遠心分離装置(Beckmann)で、沈降平衡を決定した。サンプルを10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び100mM NaClに対して一晩透析し、サンプルOD280が0.4で、標準6チャンネルの12mm光路長(pathlength)セルに充填した。各セルセクターに過フッ化炭化水素FC43を添加することにより、仮底をつくる。サンプルは、20℃にて19,000rpmで24時間にわたり遠心した。0.001cmの半径方向間隔、280nmでデータを収集し、各サンプルについて、最少10スキャンを平均した。以前に記載されている(Liuら、1998)ように、単一種又は単量体−二量体平衡のいずれかの存在を仮定したモデルを用いて、装置製造者により提供されたソフトウエアでデータを分析した。標準方法を用いて、溶媒密度及びサンプルの部分量を算出した。
ドメインの発現及びタンパク質精製
主要フレームワークサブクラスを呈示する7つのHuCALコンセンサスVドメインを同じCDR−H3で発現させることにより、それらの生物物理学的特性を比較することができる。まず、Vドメインを抗体hu4D5−8からのCDR3(WGGDGFYAMDY)(Carterら、1992)を用いて調べたが、Vドメインは、それ自体で発現した場合には不溶性であり、小さな封入体ペレットだけが得られた。これは驚くことではない。何故なら、Vドメインは、露出した広い疎水性境界面(通常はVで覆われている)を含むため、全部ではないにしろ多くが、ペリプラズム発現時にそれ自体では不溶性となるためである(Jagerら、2001;Jager及びPluckthun、1999b;Wirtz及びSteipe、1999)。しかし、近年、HuCALからの3つの単離されたVドメイン(フレームワーククラスV1a、V1b及びV3を有するもの)が、代謝選択実験において選択された。これらは、大腸菌のペリプラズムで発現させ、細胞抽出物の可溶性画分から精製することができた。選択されたVドメインの主な特徴は、CDR3の長さである。というのは、3つの選択された可溶性Vフラグメントはすべて、長いCDR3を含むからである。この長いCDR3は、Vの疎水性境界面を覆い、これにより、凝集を阻止している可能性がある。選択されたV3ドメインの1つに由来するCDR3(YNHEADMLIRNWLYSDV)を導入することにより、大腸菌のペリプラズムにおいてV1a、V1b及びV3を可溶性形態で発現させ、2mg/lの収率で細胞抽出物の可溶性画分から精製することができた。
対照的に、V2、V4、V5及びV6は、大腸菌ペリプラズムで依然として不溶性であった。これらのドメインは、変性条件下でIMACを用いて不溶性画分から精製し、溶出した画分をin vitro再生に供した。酸化グルタチオンのレドックスシャッフルを用いて、1Lの大腸菌培養物から、約1mgの可溶性の再生したV5ドメインを得ることができた。V2、V4及びV6は、還元された過剰量のグルタチオンを含むレドックスシャッフルを用いてしか再生することができず、1lの大腸菌から約0.2mgの可溶性の再生タンパク質を回収した。V1a、V1b、V3及びV5は、4℃で溶解したままであり、分解は観察されなかった。これとは対照的に、V2、V4及びV6は、4℃になると、凝集する高い傾向を有する。従って、後の実験はすべて、新しく精製されたタンパク質を用いて実施した。
分析用ゲル濾過
精製されたVドメインのサンプルを、SMARTシステム(Pharmacia)を用いて、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0、100mM NaClで平衡したSuperdex−75カラムで分析した。Vドメインを2μMの濃度で、50μlの量を注入したが、その際、流速は50μl/分とした。リゾチーム(14kDa)、炭酸脱水酵素(29kDa)及びウシ血清アルブミン(66kDa)を分子標準として用いた。
溶解した精製ドメインのオリゴマー状態を分析するために、分析用ゲル濾過実験を実施した。V1b、V3、及びV5は、予想したサイズの単量体(図1aでは、単量体Vドメインの例として、V3を示す)で溶出する。V1aは、天然条件下で、特定することができない3つのピークで溶出する。従って、本発明者らは、少量の変性剤が凝集体を分解できるかどうかを調べた。0.5M GdnHClを含む溶出バッファーを用いると、特定されないピークが減少し、上記サイズの単量体でピークが出現した。0.9M GdnHClでは、V1aは、単量体に相当する単一のピークで溶出する(図1bでは、0及び0.9M GdnHClでのV1aの溶出プロフィールを示す)。V2、V4及びV6は、天然条件下では、カラムから溶出しなかった。溶出バッファーに1.7M GdnHClを添加しても、これらのドメインがカラムに付着するのを阻止できなかった。溶出は、1M NaOHでしか達成できなかった。
フラグメントの平衡変性実験
蛍光スペクトルをPTIアルファスキャン分光蛍光計(Photon Technologies, Inc. オンタリオ、カナダ)を用いて25℃で記録した。励起及び発光には、それぞれ、2nm及び5nmのスリット幅を用いた。新しく精製したタンパク質及びGdnHCl原液(50mM NaPO、pH7.0、100mM NaCl中、7.2M)から、0.5μMの最終タンパク質濃度と、0〜5Mの濃度範囲のGdnHClの変性剤を含むタンパク質/GdnHCl混合物(2ml)を調製した。GdnHClの各最終濃度は、その屈折率から決定した。10℃で一晩のインキュベーション後、280nmの励起波長で、320から370nmまでサンプルの蛍光発光スペクトルを記録した。変性濃度を上げていくと、記録した蛍光スペクトルの最大値は、約342から348nmまでシフトした。蛍光スペクトルをガウス関数に当てはめる(単離されたVドメイン及びscFvフラグメント)ことにより、蛍光最大値を決定するか、あるいは、345nmでの蛍光強度(単離されたVドメイン)をGdnHCl濃度に対してプロットした。記載されている(Jagerら、2001)ように、単離したヒトコンセンサスV及びVドメインのタンパク質安定性を算出した。1プロットでのV、V及びscFv変性曲線を比較するために、最高値を1に、最低値を0に設定することにより、相対蛍光最大値及び蛍光強度を概算した。
GdnHCl平衡変性実験により、7つのヒトコンセンサスVドメインの熱力学的安定性を試験した。変性剤濃度に応じた蛍光最大値のシフトにより、Vドメインの変性(unfolding)をモニタリングした。図2aは、V1a、V1b、V3及びV5の平衡変性曲線の重ね合わせを示す。図2bでは、重ね合わせを正規化することにより、変性(折りたたまれていない)タンパク質の画分を示す。これらドメインの平衡変性は、協同的かつ可逆的であり、これは、二状態挙動を示す。V1aドメインは、0.9M GdnHClで変性し始めるが、この時点で、ゲル濾過分析により示されるように、V1aは溶解状態の単量体である。従って、この変化は、単量体V1aドメインの安定性だけの影響を受けるのであって、多量体化平衡には影響されない。変性の自由エネルギーを決定するために、V1aの変化前の領域(その実際の傾きは、解離によって起こるスペクトル変化の影響を受ける)が、V1bドメインと同じ傾き及び切片を有すると仮定した。V3は、自由エネルギーの最高変化を変性(ΔGN−U)時に52.7kJモル−1及び変性協同性(m)時に17.6kJモル−1−1呈示する。V1bは、ΔGN−Uが26.0kJモル−1及びmが12.7kJモル−1−1で、中間の安定性である。V1a及びV5は、上記より安定性が低く、それぞれ、ΔGN−U値が13.7及び19.9kJモル−1と、m値が10.1及び8.6kJモル−1−1である(表1)。m値の範囲は、このサイズ(14〜15kDa)のタンパク質の予想値と比較可能であり、これは、少なくともV1a、V1b及びV3が、二状態変化に予想される協同性を有することを示している(Myersら、1995)。図2cにおけるV2、V4及びV6の変化曲線が呈示する協同性は乏しく、これは、GdnHCl平衡変性中に二状態挙動が起こらないことを示している。これらVドメインの単量体状態は確認することができなかったが、この複雑化した変化の一部は多量体の解離に関与すると考えられる。1.6及び1.8M GdnHClをそれぞれ中間点として、1.0〜2.5M GdnHClの間でV2及びV4の広範な変化が起こった。V6は、中間点を0.8Mとして、0.5〜1.4M GdnHClの間で変化を示す。これは、試験したドメインの中で最も低い中間点であり、これは、V6が最も安定性の低いヒトVドメインであることを意味している。
フラグメントの発現及びタンパク質精製
抗体hu4D5−8(配列:HYTTP(Carterら、1992))からのκ様L−CDR3を保有する4つのヒトコンセンサスVκドメイン(Vκ1、Vκ2、Vκ3及びVκ4)を大腸菌のペリプラズムにおいて可溶形態で発現させた。IMAC、続いて陽イオン交換カラムによる精製後、Vκドメインを多量に取得することができ、その量は、OD550=10に正規化した細菌培養物1L当たり、Vκ3の17.1mgから、Vκ1の4.5mgまでの範囲であった(表1)。κ様L−CDR3は、136位に保存されたcis−プロリンを有する(可変ドメイン残基の番号付け手法は、Honegger及びPluckthun、2001に従う)。Vλドメインのアミノ酸配列は、この位置にプロリンを示すことは決してない。従って、本発明者らは、これらのドメインに、ヒトコンセンサスλ様CDR3(配列:YDSSLSGV)を用いた。3つのヒトコンセンサスVλドメイン(Vλ1、Vλ2及びVλ3)も、大腸菌のペリプラズムにおいて可溶形態で発現させたが、IMAC及び陰イオン交換カラムによる精製後の収率は、Vλドメインの方がはるかに低く、OD550=10に正規化した細菌培養物1L当たり、Vλ2の1.9mgから、Vλ1の0.3mgまでの範囲であった(表1)。
フラグメントの分析用ゲル濾過
単量体Vフラグメントが、13kDa前後の予想分子量で溶出する(図1a)のに対し、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び500mM NaCl中のVドメインは、様々なカラム材料と相互作用する。Vκドメインの場合には、Superose−12カラムで最良の結果を取得することができた(図1b)。50μMのタンパク質濃度では、Vκ3及びVκ2は、2kDaの分子量で、κ4は12kDaで溶出し、また、Vκ1は、カラム全量でも、広範なピークで溶出する。Vκ4の濃度を50〜5μMに変えると、ピークは2kDaの分子量にシフトするが、これは、2kDaで溶出するVκドメインは単量体、また12kDaで溶出するVκドメインは二量体であるという仮定のもとに、濃度依存的二量体−単量体平衡を示している(以下参照)。1M GdnHClの添加、又はNaCl濃度を2Mにするという示唆では、溶出プロフィールは変化しなかった。5μMの濃度でのVλドメインは、シリカを基材とするTSKカラムとの非特異的相互作用を示し(図1c)、Vλ1及びVλ2は7kDaの分子量で、またVλ3は、12kDaの見かけ分子量で溶出する。
分析用ゲル濾過からのこれらの結果を解釈するために、サンプルを平衡超遠心分離により分析した。この方法を用いて、Vドメインについて様々なカラムの溶出値を較正した。Vκ3及びVλ2からは、単量体と一致する結果が得られたが、λ3は二量体(1例として、Vκ3に関する図1dに示す)を呈示する。従って、6kD及び2kDの見かけ分子量でそれぞれ溶出するVドメイン:Vκ2、Vκ3並びにVλ1及びVλ2は、実際に単量体であり、12kDaで溶出するVドメイン:Vκ4及びVλ3は二量体である。カラムの全量でも溶出する(カラム材料との強力な相互作用を意味する)Vκ1は、超遠心分離では単量体として挙動する(表1)。
フラグメントの平衡変化実験
ほとんどのVドメインは、ただ一つのトリプトファン(高度に保存されたTrp43)を有し、これは、天然状態ではコア内に位置している。天然条件下でのGdnHCl変性では、蛍光がジスフィルド結合Cys23−Cys106により完全に消光することから、発光最大値を決定することはできなかった。変性の間にトリプトファンは溶媒に暴露され、蛍光強度の急速な上昇をもたらす。従って、GdnHCl濃度対蛍光強度のプロットに関して6−パラメーターフィット(Pace及びScholtz、1997)を用いて、熱力学的パラメーターを計算することにより、二状態挙動と一致する曲線が得られた。Vドメインはすべて、可逆的変性挙動を示す(データは示していない)。図3(a)及び3(b)は、Vκ及びVλドメインのGdnHCl濃度に対する相対蛍光強度のプロットを示す。Vκ3は、ΔGN−Uが34.5kJモル−1の最も安定したVドメインであり、次に、29.0kJモル−1のVκ1、さらに、それぞれ24.8及び23.7kJモル−1のVκ2及びVλ1が続く(表1)。最も安定性の低いVドメインは、16.0及び15.1kJモル−1のVλ2及びVλ3である。Vドメインはすべて、11.1〜16.2kJモル−1−1のm値を示すが、これは、これらドメインが二状態変化に予想される協同性を有することを意味する(Myersら、1995)。ヒトコンセンサスVκ4は、保存されたTrp43以外に、58位に露出したトリプトファンを有し、これは天然状態では消光しない。変性曲線は完全に可逆性であるが、前変化の急勾配の後に、非協同的変化を示す。この不確実性のために、Vκ4のΔGN−U値はなく、変化の中間点だけが報告され、これは1.5M GdnHClの地点である。Vκ4ドメインLenについては、32kJ/モルの安定性が報告されている(Raffenら、1999)。
一次配列及びモデル構造の分析
単離されたVフラグメントのグループでは、大きな差異がみられる。V3は可溶性タンパク質の最高収率と最高熱力学的安定性を示し、V1a、V1b及びV5は、中間の収率と中間又は低い安定性を示すのに対し、V2、V4及びV6は、変性剤誘導の変性の間により凝集しやすい挙動と低い協同性を示す。Vκ及びVλドメインの特性はこれより均質である。熱力学的安定性は、VκのグループとVλドメインのグループでは、約10kJ/モルしか違わない。一般に、安定性と可溶性収率は、Vλドメインより単離されたVκドメインの方が高い。可変抗体ドメインのこのような挙動の違いを説明しうる構造的理由を分析するために、一次配列と、7つのヒトコンセンサスV及びVドメインのモデル化構造を分析した。モデルについては、以前公表されている(Knappikら、2000)(PDB登録名:1DHA(H1a)、1DHO(H1b)、1DHQ(H2)、1DHU(H3)、1DHV(H4)、1DHW(H5)、及び1DHZ(H6))並びにVドメイン(PDB登録名:1DGX(κ1)、1DH4(κ2)、1DH5(κ3)、1DH6(κ4)、1DH7(λ1)、1DH8(λ2)、1DH9(λ3))。モデルの品質は、各ドメインによって変動する。タンパク質データバンク(Protein Data Bank)における多数の抗体構造は、例えば、V3フレームワークを使用し、モデルを構築するのに選択される鋳型構造は、CDR3領域(PBM登録名:1IGM)を除いて86%の配列同一性を有し、鋳型間の構造的差異を追跡することにより、配列差異を識別することができた。V6の場合には、PDBでV6生殖系列ファミリーのメンバーの結晶構造を入手できないため、最も類似した鋳型がヒトV4及びマウスV8ドメインであった。両方の生殖系列ファミリーは、V6(III)とは異なるフレームワーク1構造サブタイプ(I)をコードする(Honegger及びPluckthun、2001)。V6について選択した鋳型(PDB登録名:7FAB)は、CDR3領域を除いて、62%配列同一性を有し、ヒトV4に属する。単離した状態のドメインに関して3つの疑問が生じてくる。すなわち、V3は例外的に安定しているのかどうか、V2、V4及びV6は、発現及び凝集に関して比較的挙動が劣っているのかどうか、Vκドメインは、Vλドメインより、高い収率をもたらし、安定性が高いのかどうか。
塩橋
正の電荷をもつアミノ酸と負の電荷をもつアミノ酸との間の塩橋、並びに、同じ電荷をもつアミノ酸間の反発作用は、タンパク質安定性に重要な役割を果たす(Nakamura、1996)。図4aは、それぞれ特徴的な二次構造を有するVκ3及びV3ドメインからなるscFvフラグメントの概略図を示す。図4bには、pH7.0において正の電荷をもつ残基をグレーで、負の電荷をもつ残基を黒でそれぞれ示す。ドメインの底部(base)には荷電残基が集積している。Vドメインには、保存された残基Arg45、Glu53、Arg77及びAsp100が、Arg45−Glu53、Arg45−Asp100、及びArg77−Asp100を連結する内部の保存された塩橋を形成している(図5a)。77位において、V5の共通残基(consensus)は、他のサブファミリーの共通残基のArgではなく、Glnである(表2)。この変化により、Arg77とAsp100を連結する保存されている塩橋が消失する。さらに、97位及び99位の荷電残基は、電荷クラスターの一部となる可能性がある。V1a、V1b、V3及びV6のみが99位にGluを有する。これらのドメインは、PDB登録名が1IGMの構造に認められるようにGlu99−Arg45間に別の塩橋を、又はPDB登録名が1BJ1、1INE、2FB4及び1VGEの構造に認められるようにGlu99−Arg77間に別の塩橋を形成しうる。
ドメイン(図5(b))においては、45位のアミノ酸は非荷電であり、53位及び97位のアミノ酸は、Vドメインにおけるこれらの位置のアミノ酸と比較して保存されているか、又は非荷電である。従って、電荷クラスターは、ただ1つの保存された塩橋(Arg77とAsp100を連結する)と、1つの主鎖−側鎖水素結合(Glu97とArg77を連結する)を含む(図5(b))。最も安定性が低いVκドメインVκ2は、45位にLeuを有し、これはTyr104との側鎖−側鎖水素結合を形成することができない。この結合は、他のVドメイン、またVドメインでも保存されている(図5(a)及び(b))。
疎水性コアパッキング
別の重要な安定化因子は、疎水性コアパッキングである(Pace、1990)。すべてのモデル構造をキャビティーについて検査した。キャビティーは、不適正なパッキングを意味し、これによって、ファンデルワールス相互作用が減少し、熱力学的安定性が低下する。ファンデルワールス接触表面は、プログラムMolmol(Koradiら、1996)を用いて、1.4Åの水半径(water radius)で作成した。キャビティーをみつけたら、その周辺の残基が該キャビティーに対する疎水性表面積に寄与することがないかどうかを調べた。疎水性残基で覆われたキャビティーは、このような位置では水分子がエネルギー的に不利になるため、さらに不都合である。これらのキャビティー、並びに様々な可変ドメインフレームワーク間の配列比較に基づいて、疎水性コア内の位置を確認することができ、これによって、準最適パッキングが達成されると考えられる。図4Cに、分析したコア残基の全体図を示す。コア残基を2つの領域、すなわち図4aに示す配向に従い上部及び下部コアの2つの領域に区分した。上部コアは、Trp43より上方の内部残基、Cys23とCys106間の保存されたジスルフィド結合、並びにCDRに向いたGln/Glu6から構成される。CDR残基の一部は、上部コアに含まれ、その結果、様々なCDRが上部コア(及び全体の安定性に対するその寄与)に強力な影響を及ぼし、その逆に、上部コアの残基もCDRのコンホメーション(及び抗原結合のアフィニティー又は特異性)に影響を及ぼす(Eigenbrotら、1993)。下部コアは、Trp43より下方にあり、そのコンホメーションは、6位、7位、10位及び78位のアミノ酸の種類に関連する(Saul及びPoljak、1993)。
上部コア
残基2、4、25、29、31、41、80、82、89及び108は、上部コアを形成する。表2に示した配列アラインメントでは、これらの残基を可変ドメインについて比較している。Vドメインでは、2つの配列モチーフを識別することができる。すなわち29位及び31位に2つの大きな芳香族残基を含むV3様モチーフ(V1b、V3、V5)、25位及び29位の芳香族残基の代替位置(V2)、並びに41位にTrp、及び25位に大きな脂肪族残基を含むV4/V6モチーフ。図6(a)は、V3上へのV4の重ね合わせを示し、前記モチーフ間の差異を強調している。V3様モチーフでは、Phe29及びPhe31が、隣接する残基2、25、31及び108間の空隙を充填している。V4/V6モチーフでは、前記2つの残基が、より小さな残基に変化している。ここで、Trp41及びVal25のメチル基が空隙を充填している。V1aは、V3様モチーフに属するが、29位にはPheではなく、Glyを有する。この空隙を埋める残基は他にはなく、その結果、疎水性キャビティーが生じる(図6(b))。V1a、V1b及びV5は、89位にLeu(V3)ではなく、Alaを有する。このイソプロピル基の喪失に対する明確な埋め合わせはない。加えて、Ala25(V3)をV5のGlyに置換する(表2)のはメチル基の喪失と同等であり、V5の上部コアのパッキングをさらに弱化させる(図6(c))。
図6(d)は、Vκ及びVλドメインの代表例としてのVκ3及びVλ1ドメインの上部コアの重ね合わせを示す。Vドメインと比較して、Vκドメインのパッキング密度は小さいが、これは、Vドメインが少なくとも2つの芳香族残基を有するのに対し、Vκドメインの上部コアには89位にただ1つの大きな芳香族アミノ酸しかないためである(表2)。Vλドメインではパッキング密度はさらに低下する。というのは、25位及び89位に、Vκドメインがそれぞれ有するAla/Ser及びPheではなく、これより小さいGly及びAlaがあるためであり、これは、Vλドメインの熱力学的安定性が低いことと一致する。
下部コア
ドメインでは、安定性と、Honegger及びPluckthun(Honegger及びPluckthun、2001)に従うフレームワーク1分類の間に興味深い相関が見られる。これは、下部コアの疎水性コアパッキングに影響を与え(Saul及びPoljak、1993)、6位、7位及び10位のアミノ酸の種類によって決定される(表3)。最も安定したV3ドメインは、サブグループIIに入るが、中間の特性を有するV1a、V1b及びV5は、サブグループIIIに入る(表3)。高い封入体傾向を示し、かつ協同的変性を呈示しないVドメインであるV2及びV4は、サブグループIに入る。V6は、6位にGlnを含み、7位にProが存在しないことから、サブグループIIIのメンバーである。しかし、以前の実験(Jungら、2001)から、10位のProはこのドメインを不安定化することがわかっている。
残基19、74、78、93及び104(表2)は下部コアの一部であり、これらは、残基13、19、21、45、55、74、77、78、91、93、96、100、102、104及び145から構成されている。最も安定したフレームワークであるV3だけが78位に大きな芳香族アミノ酸残基(Phe)を有する。しかし、V1a、V1b及びV5は、74位にPheを有するため、74位と78位の残基を単に入れ替えるだけで、恐らく、同様の相互作用が起こるであろう(図7(a))。V5は、93位での別の交換(MetからTrpに)を有する。V5におけるこの別の芳香族残基が、Phe78の喪失と、電荷クラスターでの不十分な相互作用とを埋め合わせるのを助けうる(前記参照)。Tyr104以外に、V2、V4及びV6の下部コアを安定化する別の芳香族残基はない(図7(b))。
ドメインでは、ただ1つのフレームワーク1サブタイプしかなく(Honegger及びPluckthun、2001)、その結果、Vκ及びVλドメインの下部コア残基はほとんど同じであり、類似した配向を有する(表2及び図7)。
溶解度及びフォールディング効率に影響を与えうる残基
不十分な発現挙動、並びに熱力学的理由よりも速度論のために凝集する傾向の高さ(Fink、1988)と相関する可能性がある残基をさらに調べた。この分析は、優れた生物物理学的特性のV(V1a、V1b、V3及びV5)により分類したヒトコンセンサスVドメインと、より凝集しやすいVドメイン(V2、V4及びV6)との配列アラインメントから開始した(表3)。
露出した疎水性残基の突然変異は、天然scFvフラグメントの溶解度(塩析により測定)は変えないが、in vivoフォールディング率には多大な影響を及ぼすことがすでに明らかにされている(Niebaら、1997)。5位が溶媒に露出されると、V2、V4及びV6の親水性残基Gln又はLysは、V1a、V1b、V3及びV5の疎水性Valとは対照的に、凝集傾向を低下すると考えられる。しかし、安定性に有利な選択実験(Jungら、1999)では、scFv 4D5FluのVal、Gln、Leu及びGluからValが選択され、これは恐らく局部的二次構造性質の重要性を示すと思われる。
2、V4及びV6は、16位に保存された正のφ角をもつ非グリシン残基を有し(図4(d))、これは、好ましくない局部的コンホメーションの原因となる。16位に非Gly残基を有すると決定された構造(例えば、PDB登録名:1C08、1DQJ、1F58)から、正のφ角が局部的に維持され、明らかに周囲(surroundings)によって強化されていることが確かにわかる。対照的に、奇数番号のVはすべて、この位置にGlyを有する。
抗体McPC603については、Knappik及びPluckthun、1995により、48位にある別のProに隣接するPro47をAlaと交換しても、熱力学的安定性は向上しないが、フォールディング効率が増強することが明らかにされている。V2及びV4はまた、47位にProを有する。V6では、58位で、高度に保存された疎水性コア残基IleをThrと交換するが、これには、不満足な水素結合供与体が内部に含まれている。
H10位でのプロリン残基は、FR1コンホメーションに強力な影響を及ぼす。V構造は、H6位、H7位及びH10位に存在するアミノ酸の種類に応じて、それぞれ異なるFR1コンホメーションと、下部コアのパッキングでの相関する差異を有する4つのサブタイプに分類することができる(Honegger及びPluckthun、2001a)。これらの残基が確かにコンホメーションの相違を引き起こすことを証明するために、Jungら(2001)は、同じVドメインに様々なH6/H7/H10残基の組み合わせを導入し、X線結晶学によって構造に対する影響を測定した。それらの系では、10位にProを含むすべての組み合わせは、同じ位置にGly、Ala又はSerを含む分子と比較して不安定であった。これらの構築物は、この位置に通常異なるアミノ酸を含むVドメインと「不自然な」組み合わせでProを含んでいたため、不安定化作用は局部配列と全体配列との間のミスマッチに起因するとも考えられ、挙動が不十分なV2、V4及びV6はすべてPro10を含むのに対し、V1B、V1B、V3及びV5は、この位置にGly又はAlaを有する。
44位に、奇数番号のVドメインのValとは対照的に、偶数番号のVドメインはIleを有する。この位置は、Vとの境界面に位置し、単離されたドメインに一切影響を与えることはないが、Vとの複合体の場合には、影響を及ぼすに相違ない。偶数番号のVドメインの露出したCDR2残基60は、大きな芳香族アミノ酸(Trp及びTyr)であり、フォールディング効率を低下させる可能性がある。この残基は、抗原結合に関与する可能性があるために、交換することはできない。
抗体McPC603において溶媒露出残基72を疎水性残基AlaからAspに換えると、可溶性/不溶性比を20倍高めるが、熱力学的安定性は変わらない(Knappikら、1995)。V6は、この位置に疎水性Valを有する。
奇数番号のVドメインは、偶数番号のVドメインが76位にThr又はSerを有するのとは対照的に、同位置にGlyを有する。PDBに見出されると判定された抗体構造の半分で、この位置の残基は正のφ角を有するが、これは、この位置でグリシンの方がよいことを示している。
1a、V1b、V3及びV5の半分内側に存在する(semi-buried)90位にはTyrが位置するのに対し、V2、V4及びV6はVal又はSerを有する。偶数番号のドメインの不十分な挙動に対するこの置換の影響は実験でしか試験することができない。
ドメインは、主としてκ及びλドメインに分類することができるため、分析は、これら2つのグループの比較に基づいて行なった。146位、148位及び149位での溶媒露出C末端で、Vκドメインは、Vλドメインがこれらの位置にThr、Leu及びGlyをそれぞれ有するのと対照的に、荷電アミノ酸を有する(表4、図4(d))。さらに、κドメインの138位の親水性Thrをλドメインの疎水性Valと交換する(表4、図4(d))。Vλドメインにおける非親水性残基のこのような交換により、これらドメインのフォールディング効率が低下し、Vκドメインと比較して低い可溶性収率に寄与する要因となりうる。
プロリンは、αヘリックス及びβ鎖切断因子(breaker)であるため、それらの二次構造を不安定化する。Vドメインの12位及び18位は、両者ともβシート構造の一部である。Vκ2だけが両位置にProを有し、他のVドメインではそれぞれSer及びArgがこれらの位置で優勢な残基である(表4、図4(d))。
scFvフラグメントの発現及びタンパク質精製
単離されたヒトコンセンサスV及びVドメインの生物物理学的特性決定の後、V及びVの体系的組み合わせも試験することにより、生物物理学的特性に対するそれらの相互の影響を理解し、可変ペプチドリンカーを介してVドメインがVドメインに結合されているscFvを選択した。49の可能なV−V組み合わせの数を制限するために、最も安定なVドメインV3を有するscFvフラグメントを7つのヒトコンセンサスVドメインの各々と組み合わせて試験し、逆に、最も安定なVドメインVκ3を7つのヒトコンセンサスVドメインの各々と組み合わせた。scFvフラグメントにおける単離された可変ドメインの個々の生物物理学的特性の相互補償又は付加があるか否か、あるいは、相乗効果が起こりうるか否かを試験しなければならない。
scFvフラグメントにおけるVドメインはすべて同じH−CDR3を有し、これは、良好に発現する抗体4D5のVドメインから誘導される(Knappikら、2000;Carterら、1992)。scFvフラグメントにおけるVκ及びVλドメインは、それぞれκ様及びλ様L−CDR3を有する。すべてのscFvフラグメントをペリプラズムにおいて可溶形態で発現させ、IMACで精製した後、陰イオン交換カラムに付すことができた。SDS−PAGE分析により、フラグメントの純度は98%を超えることが確認され(データは示していない)、後の測定はすべて、新しく精製したタンパク質を用いて実施した。様々なV又はVドメインを有するscFvフラグメントの発現率を比較するために、本発明者らは、さらにバッチ方法でこれらscFvを単離した。収率測定に固有の誤差を試験するために、scFv H3κ3を4回独立に精製した。OD550=10(上記条件下で振盪フラスコ内の最終細胞密度の近似値である)に正規化した1L細菌培養物から精製したH3κ3の収率は、6.5±0.2mgであった。試験した全scFvフラグメントの収率をH3κ3の収率に正規化すると、2.6〜12.4mg/Lの範囲となった(表5)。H1aκ3及びH1bκ3は、それぞれ11.1mg/L及び12.4mg/L(H3κ3の量の1.7倍及び1.9倍)と、最高収率を示すのに対し、H2κ3、H4κ3及びH6κ3は、H3κ3の0.6倍、0.4倍及び0.6倍であり、Vκ3ドメインを含むscFvフラグメントの最低収率を示す。V3を含むが、Vドメインが異なるscFvフラグメントはすべて、H3κ3より低い収率しか示さない。不溶性タンパク質率は、H3κ3について4つの独立した測定で(30±10)%と決定した。試験したその他のscFvフラグメントは、50%〜10%の不溶性タンパク質率を示すが、H2κ3、H4κ3及びH6κ3は例外で、これらは80%〜90%の不溶性タンパク質率を示す(表5)。
scFvフラグメントの分析用ゲル濾過
H3κ3は、29kDaの見かけ分子量で、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び500mM NaCl中5μMのタンパク質濃度で、分析用ゲル濾過カラムSuperdex−75から溶出するが、これは、H3κ3が溶解状態では単量体であることを示している。VドメインとしてVκ3を含む他のscFvフラグメントも上記条件下で単量体であるが、H1aκ3は例外で、これは、単量体ピーク以外に、これより小さい二量体及び多量体ピークも示す。H4κ3は、これに加えて、10%未満の少量の二量体を示す。図8(a)は、H1aκ3及びH4κ3と一緒に、単量体scFvフラグメントの一例としてH3κ3のクロマトグラムを示す。V3及びVκドメインを含むscFvフラグメントはすべて単量体であるが、H3κ1は、加えて小さな二量体ピークを示す(図8(b)は、単量体scFvフラグメントの一例としてのH3κ3、並びにH3κ1を示す)。対照として、Vλドメインを含むscFvフラグメントはすべて、単量体−二量体平衡を示し、二量体の含量は、H3λ1の場合の20%から、H3λ2の場合の70%までである(図8(b)は、Vλドメインを含むscFvフラグメントの一例としてH3κ1を示す)。溶出バッファー中1M GdnHClを用いて、天然条件下で二量体画分を含んだすべてのscFvフラグメントは、29kDaの見かけ質量での単一ピークで溶出し、これは、これらフラグメントがその時点で完全に単量体であることを示している。1M GdnHClにおけるクロマトグラムを、Vλドメインを含むscFvフラグメントの一例としてH1aκ3については図8(a)に、H3λ1については図8(b)にそれぞれ示す。この濃度は、すべてのscFvフラグメントの主要変化より低いことに留意すべできである。唯一の例外はH3λ2であり、これは1m GdnHCl中に20%の含量の二量体をまだ含んでいる。2M GdnHClでは、H3λ2もただ一つの単量体ピークしか示さない(データは示していない)。
scFvフラグメントの平衡変性(脱折りたたみ)実験
変性剤の濃度の関数としてscFvフラグメントの変性(脱折りたたみ)及び再生(再折りたたみ)を、280nmでの励起後の蛍光発光の最大値のシフトにより、モニターした。各scFvフラグメントは、可逆的変性挙動を示す(データは示していない)。scFvフラグメントは、2つのドメインから構成されており、これらのドメインは異なる固有の安定性を有し、境界面領域にわたって相互作用し、潜在的に互いを安定化させることができるため、scFvの変性は通常二状態過程ではない(Worn及びPluckthun、2001)。従って、ΔGN−U値はまったく報告されないが、変性の変化の中間点が与えられる。これは、scFvフラグメントの安定性の半定量的測定値である。V又はVドメインへの変化の指定(assignment)は、単一ドメインの変化の決定により行なわれる(表1)。表5では、scFvフラグメントにおけるV及びVドメインについて中間点の一覧を示す。1つの変化だけが見える場合には、中間点をV及びVドメインの両方に指定する。
単離されたV及びVドメインの変性特性、並びにscfvフラグメントにおけるこれらドメインの組み合わせがわかれば、scFvフラグメントの安定性に対し境界面相互作用が及ぼす影響を体系的に研究することが可能になる。様々なケースを区別することができる(Worn及びPluckthun、1999)。すなわち、単離されたV及びVドメインの安定性が非常に類似していれば、得られるscFvも同じ安定性を有する(例としてH5κ3を示す図9(a)を参照)。一方のドメインが他方より有意に安定している場合には、安定性の低い方を他方のドメインとの境界面相互作用により安定化させることができる(V1aを安定化する、安定性が高い方のVκ3を有するH1aκ3を示す図9(b)、並びに、Vκ1を安定化する、安定性が高い方のV3を有するH3κ1を示す図9(c)を参照)。しかし、ドメインの安定性が異なっていても、安定性が低い方のドメインの安定化が起こらないこともありうる(例としてH3κ2を示す図9(d)を参照)。
λドメインを含むscFvフラグメントは、単離された単一ドメインのいずれよりも安定していることから、興味深い挙動を示す(例としてH3λ1を示す図10(a)を参照)。明らかに、VとVドメインの間の境界面相互作用が非常に強いため、単離されたドメインの固有の安定性以上に、ドメインが安定化されている。境界面が最終的に崩壊すると、scFv内の単離されたドメインは直接変性するが、これは、急速な変化を説明している。この驚くべき挙動は、L−CDR3の配列に強く依存している。
λドメインもクローニングし、κ様L−CDR3で精製した。κ様L−CDR3を含む単離されたVλドメインは極めて収率が低かった。これらは、変性剤誘導平衡変性において可逆的挙動を呈示せず、λ様L−CDR3を含む対応するVλドメインより低い変性中間点を有する。V3と、κ様CDR3を有するVλドメインとの組み合わせは、分析用ゲル濾過において、λ様CDR3を有するものと同様の収率及び二量体/単量体比を示すが、GdnHCl変性における挙動は異なっている。例として、図10(b)は、κ様L−CDR3を有するH3λ1を示すが、その際、単離されたVλ1の再生曲線と比較して、Vλ1ドメインはわずかにしか安定しておらず、これは、この場合、境界面安定化がそれほど強くないことを示している。図10(a)及び(b)に示す2つのscFvフラグメントの相違は、L−CDR3が異なることだけであり、これが、明らかにこのような劇的な安定化の違いの原因であることに留意すべきである。136位にプロリンを含むκ様CDR3は、剛性のΩループを形成し、これが恐らくVとVの間の完全な配向を妨害していると考えられる。
要約すると、変性が2M GdnHCl以上でしか開始しないことが明らかになった最も安定なscFvフラグメントは、H3κ3、H1bκ3、H5κ3及びH3κ1である。単離されたVλドメインはそれ自体ではむしろ不安定であり、V3と組み合わせて、非常に安定なscFvフラグメントを構成することができるが、この効果はL−CDR3に依存する。このCDRが、VからVへの有利な配向を生み出し、従って、境界面を介したより緊密な相互作用を可能にすると考えられる。1M GdnHCl以上で変性を開始し、安定性が中間のscFvフラグメントは、H1aκ3、H2κ3、H3κ2及びH3κ4であり、また、H4κ3及びH6κ3は、安定性があまり高くなく、1M GdnHCl以下で変性を開始するscFvフラグメントである。
実施例2:一般化手法による免疫グロブリンV ドメインの生物物理学的特性の構造に基づく改善
略語
CDRは、相補的決定領域;GdnHClは、塩酸グアニン;HuCALは、ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー;IMACは、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー;IPTGは、イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド;scFvは、ペプチドリンカーによって連結された重鎖及び軽鎖の可変ドメインからなる一本鎖抗体フラグメント;Vは、抗体の重鎖の可変ドメイン;Vは、抗体の軽鎖の可変ドメインをそれぞれ示す。
scFvフラグメントにおいてコンセンサスV及びVドメインを単独で用いて、並びに、組み合わせて実施したV遺伝子ファミリーの体系的実験から、本発明者らは、ヒト生殖系列ファミリー2、4及び6のVドメインを含む抗体フラグメントでは、発現収率が比較的低く、平衡変性の協同性はさらに低いことがわかった。疎水性コアのパッキング、電荷クラスターの完全性、不満足な水素結合の発生、並びに、低βシート傾向、正のφ角及び露出した疎水性側鎖を有する残基の分析から、本発明者らは、これらの生殖系列コード配列の不十分な特性の原因と考えられる残基を正確に指摘した。これらのいくつかは、偶数番号サブグループのドメイン間で共通であるが、奇数番号のドメインには存在しない。この実験で、本発明者らは、V6フレームワークを用いて、2つの異なるscFvフラグメントにおいて上記残基を単独で、並びに組み合わせて体系的に交換し、それらの平衡安定性及びフォールディング率への影響を説明する。本発明者らは、安定性を20.9kJ/モル、発現率を4倍向上させた。そして現在、これらのデータを用いて、さらに優れた生物物理学的特性を有する上記及び類似生殖系列ファミリーに由来する抗体を合理的に作製することができる。さらには、本発明者らは、上記フレームワークにより提供される有意な追加多様性を活用するライブラリーのために改善された設計を提供する。実験した両抗体はともに、完全にその結合アフィニティーを保持しており、これは、CDRのコンホメーションが影響を受けなかったことを示している。
組換え抗体は、生物学的研究から治療まで、増え続けている用途に用いられる。高い抗原特異性及びアフィニティーを呈示する以外に、このような組換え抗体は、要求される用途に応じて、高収率で取得できること、凝集傾向が低いこと、並びに、高い変性剤濃度、高温及びプロテアーゼに対して安定していることが求められる。これらの用途の多くに対して人気の高い形態は、一本鎖Fv(scFv)フラグメントであり、その際、重鎖の可変ドメイン(V)は、可変リンカーを介して、軽鎖の可変ドメイン(V)と連結するか、あるいは、その逆も成立する(1〜3)。この形態は、完全な抗原結合部位を含み、細菌(4)及び酵母(5)を含む非常に多種の宿主に発現させることができる。本発明者らは、scFvフラグメントの単純な構造がドメイン相互作用の解決をはるかに容易にすると考え、scFvフラグメントに関する前述の疑問について研究することを決めたが、同じドメインを含むFabフラグメント及び抗体全体における物理的特性の違いも明らかになった。
生物物理学的挙動に重要な突然変異は、平衡熱力学的安定性若しくはフォールディング中の凝集傾向のいずれか、又はその両方に影響を与えうる。これらの特性は識別可能であり、これら特性の1つだけに影響を与える突然変異は知られており(以下を参照)、往々にしてそれらは関連し、アミノ酸交換は両方に作用を及ぼしうる。熱力学的安定性に影響を与える突然変異は、以下のような多様なタイプの相互作用に寄与する可能性がある:疎水性コアのパッキング、二次構造性質、電荷相互作用、水素結合、変性時の不溶化、強化した局部構造との適合性、並びにその他多数(6、7)。フォールディング効率に影響を与える突然変異も、中間体の安定性が重要な要素であるため、上記リストに含まれる。さらにここで、天然タンパク質は、「負の設計(negative design)」(8)を用いて、凝集を防止する。これにより、その最も単純な形態で、表面上の疎水性パッチが阻止される。抗体の場合には、このような疎水性パッチは、天然タンパク質の溶解度(正しくは、可溶性天然タンパク質の最大濃度として定義される)にほとんど影響を及ぼさないことがわかっている(9)。疎水性パッチは、フォールディング収率、従って、大腸菌における機能的タンパク質の収率には極めて劇的な影響を及ぼしうる。この収率は口語で「溶解度」と呼ばれることが多いが、これは誤りである。というのは、上記収率は可溶性タンパク質を生産する過程全体を表わすのであって、その溶解度ではないからである。
scFvフラグメントの場合には、その2ドメイン性質のためにさらに複雑さが増している。2つのドメインは、互いを安定化し、ドメインの相対固有安定性及びそれらの境界面に応じて、協同的に又は平衡中間物と一緒に、のいずれかで、変性することができる(10)。しかし、ドメイン相互作用に関する研究、並びに、単離されたドメイン及びそれらの相互作用の体系的研究(実施例1と、11を参照)から、本発明者らは現在この系を解明することができる。本発明者らは、問題箇所を正確に突きとめ、本明細書の実験で、これらの小さな欠点を修正することにより、実際に表現型の顕著な改善が達成されることを証明したいと思う。
従って、熱力学的安定性から発現収率を区別することが重要である。抗体のペリプラズム発現では、機能的タンパク質の観察された発現レベルを制限する最も重要なものはペリプラズムフォールディング収率である(4)。機能的タンパク質の収率が低い抗体は、ペリプラズム凝集体を発生する。可溶性タンパク質の発現収率の増加をもたらす三つの主要機構があり、それらは、全発現レベルの増加(ただし、フォールディング収率は一定とする)、大腸菌におけるフォールディング収率の増加、又は大腸菌プロテアーゼによる分解の減少である。三つの機構はすべて、菌株、発現ベクター、培地組成、及び発現温度(参照(4)にまとめる)の選択、並びにペリプラズマシャペロンの共発現(12、13)を含む外因性因子の影響を幾分受ける。しかし、折りたたまれたタンパク質の発現収率の変化に対する主な寄与は、タンパク質配列自体の変化によるものである。同じベクターに位置する分泌タンパク質の場合には、翻訳開始領域と、タンパク質配列(シグナル配列)の開始は、様々な変異体で同じである。従って、配列変化がそれ自体で翻訳に影響を与えるとはほとんど考えられない。熱力学的安定性をさらに高める突然変異もタンパク質のプロテアーゼ消化を低下させることが多い。というのは、大腸菌プロテアーゼは、通常、基質として変性タンパク質を選択するからである。しかし、大腸菌プロテアーゼの潜在的切断部位を除去する突然変異も分解を阻止する可能性がある。
従って、突然変異は、タンパク質の平衡熱力学的安定性に影響するのとは独立に、フォールディングの効率にも影響を与えると考えられる。フォールディング過程の副反応は、往々にして、凝集したタンパク質を生成させ、これは封入体を豊富に含む。多いフォールディング及び凝集への速度論的分配には、中間物の熱力学的安定性を高める、又は溶媒暴露疎水性残基を除去する、あるいは、表面を凝集体の成長に不適にする(「負の設計」(8))いずれかの突然変異によって、影響を与えることができる。さらに、フォールディング効率を高める突然変異も、外側膜の漏出を招き、その結果、大腸菌の生存能を減弱させる有毒な副産物(多くの場合、可溶性凝集体)の形成を阻止することにより、間接的に、高い全発現レベルをもたらすことができる。
scFvフラグメントの可溶性タンパク質の熱力学的安定性及び収率を向上させる残基を見いだす様々な手法がある(Worn及びPluckthunにより概説(7))。以前は、ほとんどの作業が、個々の抗体の最適化に集中していた。改善しようとする抗体の三次元(3D)構造がわかれば、詳細な分析によって、問題を起こす残基を同定し、これらを部位特異的突然変異誘発によって交換することができる(14〜16)。第2の手法では、ランダム突然変異誘発の後、所望する特性の改善に向かう偏り(bias)を含む選択を実施する(17〜19)。第3の手法としてのコンセンサス手法(20)は、免疫系によって自然にコードされた抗体からの配列情報を用いる。すべての遺伝子ファミリーについて想定されているように、免疫グロブリン可変ドメインの遺伝子は、同義遺伝子重複及び突然変異により分岐している。選択された遺伝子はさらに、抗体が高いアフィニティーで抗原構造と結合する能力を最適化する体細胞突然変異により、加速した「局部」進化を行うが、これらの突然変異は生殖系列では伝搬されない。対照的に、現在のIg遺伝子座をつくるために原始V遺伝子の重複の間に取得された突然変異は、生殖系列ファミリーに特異的な差異として明らかである。本発明の実験で、本発明者らは、生殖系列コード化V、Vκ及びVλファミリーの生物物理学的特性についての本発明者の知識と、前記の知識とを統合して、抗体の生物物理学的特性を改善する遺伝的手法を探究しようとした(実施例1、11参照)。本発明者らは、初めに生殖系列コード化配列を有する遺伝子に的を絞ったため、本発明者らの手法は個々の分子の改善、従って、体細胞突然変異により導入された改変の除去に限定されないが、特に、様々な生殖系列遺伝子によりコード化された問題残基に関する。
不安定化突然変異は、起こる確率が非常に高いが、ドメイン安定性全体が特定の閾値を下回らない限り、選択において中立である(20)。反対に、熱力学的安定性の向上をもたらすランダム突然変異は、正の選択が存在しないと、起こる確率は極めて低い。その結果、相同免疫グロブリン可変ドメインのアラインメントにおけるあらゆる位置で最も頻度の高いアミノ酸が、該タンパク質ドメインの安定性に最も有利であるはずである。この方法をVκドメインについて試験したところ、提案した10種の突然変異のうち、6つが安定性を高めた。しかし、この手法に特有の単純化は、すべてのフレームワークを単一の「理想的」配列に平均化することである。様々な生殖系列遺伝子又はフレームワークは、抗体多様性に関して重要な機能を有する。第1に、外側ループ内のフレームワーク残基、及び二回軸に近いフレームワーク残基は、それぞれタンパク質−及びハプテン−抗原に対する重要な相互作用に寄与することができる。第2に、いくつかのフレームワーク領域は、CDRのコンホメーションに影響を与え、これによって、抗原結合を間接的にモジュレートすることができる。第3に、様々なフレームワークは相互に不適合な残基を有するが、これらを単純に他のフレームワークの残基と交換することはできない。その結果、優れた特性を有する多種多様なフレームワークを作出するには、ファミリー特異的な解決法が必要になる。本明細書で、本発明者らはこの手法の基本を提供する。
近年、本発明者らは、ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー(HuCALTM)(21)からのヒト生殖系列ファミリー特異的コンセンサスドメインの生物物理学的特性を分析した(実施例1と、11を参照)。Vドメインの場合には、本発明者らは、V3生殖系列ファミリー特異的コンセンサスドメインが最も安定したVドメインであり、次に、V1a、V1b及びV5コンセンサスドメインが中間の安定性で、凝集しやすい挙動はほんのわずかかまったくないことを見いだした。これに対し、V2、V4及びV6ドメインは、変性剤誘導変性中の協同性が低く、また、収率は低く、凝集傾向が高いことがわかった。疎水性コアパッキング及び塩橋形成についての詳細な分析から、V3ドメインは常に最適溶液であるのに対し、その他のVドメインはすべて何らかの欠点があることが明らかになり、V3の高い熱力学的安定性を説明している。さらに、有利な特性(ファミリー1、3及び5)及び不利な特性(ファミリー2、4及び6)を有するVドメイン別に分類した配列アラインメントを用いて、フォールディング効率を潜在的に低下させる(不利な特性の理由となる)偶数番号のVドメインの残基を同定し、構造的に分析した。
この研究では、本発明者らは、ヒト生殖系列ファミリー特異的コンセンサスVドメインの生物物理学的特性の知識を利用した構造に基づく手法を用い(実施例1と、11を参照)、加えて、モデルとしてV6フレームワークを改善するための公表されている所内選択実験(A. Honeggerら、未公表)の表を参照した。本発明者らは、V6フレームワークを選択した。何故なら、このフレームワークは、他のヒトVドメインと比較して、ある程度凝集しやすい挙動を呈示し、変性の中間点が最も低く、このことは、V6が最も低い熱力学的安定性を有するVドメインであることを示しているからである。これらの特性は、単離されたドメイン、並びにVκ3を含むscFv形態でも観察されている(実施例1と、11参照)。本発明者らは、HuCAL(21)から選択されたV6フレームワークを含む次の2つのscFvフラグメントを用いた:トランスフェリンに連結したペプチドM18と結合する2C2、及びミオグロビンと結合する6B3(詳細については、「材料及び方法」を参照)。部位特異的突然変異誘発を用い、かつ本発明者の構造分析に基づいて、6つの突然変異(Q5V、S16G、T58I、V72D、S76G及びS90Y)を単独で、及び数種の組み合わせで導入した。上記突然変異は、独立に作用し、個別に交換可能であると仮定され、また、不利な特性のファミリーから、有利な特性のVファミリーのグループを識別する特徴でもあった。本発明者らは、これらの突然変異体と野生型scFvフラグメントの比較を、フォールディング収率への影響、並びに、独立に、熱力学的安定性の測度である変性の自由エネルギーについて実施し、これら突然変異の付加度を決定した。
発現ベクターの構築
ヒトコンセンサスドメインV6及びVκ3(H−CDR3:QRGHYGKGYKGFNSGFFDF及びL−CDR3:QYYNIPT)を含むscFvフラグメント2C2(A. Hahnら、MorphoSys AG、未公表の結果)は、トランスフェリンに連結した配列:CDAFRSEKSRQELNTIASKPPRDHVFのペプチドM18(Jerini GmbH、ベルリン)に対するパニングにより取得したのに対し、V6及びVλ3(H−CDR3:SYFISFFSFDY及びL−CDR3:SYDSGFSTV)を含むscFvフラグメント6B3(S. Mullerら、MorphoSys AG、未公表の結果)は、ウマ骨格筋由来のミオグロビン(Sigma)に対するパニングにより取得した。両方のscFvフラグメントを制限部位XbaI及びEcoRIを介して発現プラスミドpMX7にサブクローニングした(21)。Stratagene製のQuikChangeTM部位特異的突然変異誘発キットを用いて、製造者の指示に従い、様々な突然変異を導入した。抗体における固有のXbaI、XhoI、BsaBI及びEcoRI部位を用いて、制限フラグメントを交換することにより、多重突然変異を構築した。最終発現カセットは、phoAシグナル配列、短いFLAGタグ(DYKD)、配向:V6ドメイン−(GlySer)リンカー−VドメインのscFvフラグメント、続いて、長いFLAGタグ(DYKDDDD)及びヘキサヒスチジン−タグから構成される。
発現及び精製
30mLのdYT培地(30μg/mLクロラムフェニコール、1.0%グルコースを含む)に単細菌コロニーを接種し、25℃で一晩振盪させた。1リットルのdYT培地(30μg/mLクロラムフェニコール、50mM KHPOを含む)にこの前培養物を接種してから、25℃でインキュベートした(バッフル付き5Lフラスコ、105rpm)。IPTGを最終濃度0.5mMまで添加することにより、OD550=1.0で発現を誘導した。インキュベーションを18時間継続すると、細胞密度は、OD550=8.0〜11.0に達した。細胞を遠心分離(8,000g、4℃で10分)により回収し、40mlの50mM Tris−HCl(pH7.5)及び500mM NaCl中に再懸濁させた後、フレンチプレス溶解により破砕した。粗抽出物を遠心分離(48,000g、4℃で60分)にかけ、上清を0.2μmフィルターに通過させた。直列連結式2カラム法(4)を用いて、タンパク質を精製した。この手法では、C末端Hisタグを用いた固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)カラムの溶出液をイオン交換カラムに直接載せた。イオン交換カラムからの溶出は、0〜800mM NaCl勾配で達成した。scFv 2C2由来の構築物を10mM MES(pH6.0)中のHS陽イオン交換カラムで精製し、6B3由来の構築物は、10mM Tris−HCl(pH8.0)中のHQ陰イオン交換カラムで精製した。プールした画分を50mMリン酸ナトリウム、pH7.0、100mM NaClに対して透析した。タンパク質濃度をOD280により決定した。可溶性収率を、OD550が10の1リットル細菌培養物に正規化した。
ゲル濾過クロマトグラフィー
精製したscFvフラグメントのサンプルを、SMARTシステム(Pharmacia)を用いて、50mMリン酸ナトリウム、pH7.0、500mM NaClで平衡したSuperdex−75カラムにより分析した。サンプルは、50μl量中5μMの濃度で注入し、流速は60μl/分であった。リゾチーム(14kDa)、炭酸脱水酵素(29kDa)及びウシ血清アルブミン(66kDa)を分子量標準として用いた。
平衡変性実験
PTIアルファスキャン分光蛍光計(Photon Technologies, Inc.、オンタリオ、カナダ)で、蛍光スペクトルを25℃で記録した。励起及び発光の両方に2nmのスリット幅を用いた。新しく精製したタンパク質及びGdnHCl原液(50mMリン酸ナトリウム、pH7.0、100mM NaCl中8M)から、0.5μMの最終タンパク質濃度と、0〜5M GdnHClの変性剤濃度を含むタンパク質/GdnHCl混合物(1.6ml)を調製した。GdnHClの各最終濃度は、屈折率を測定することにより決定した。10℃で一晩インキュベーションした後、サンプルの蛍光発光スペクトルを、280nmの励起波長で、320nmから370nmまで記録した。変性剤濃度を高くすると、記録された発光スペクトルの最大値が約340nmから350nnmに推移した。蛍光発光最大値は、蛍光発光スペクトルをガウス関数に当てはめることにより決定し、GdnHCl濃度に対してプロットした。タンパク質安定性を記載のように計算した(22、23)。1プロットでのscFv変性曲線を比較するために、最高値を1に、最低値を0に設定して、発光最大値を概算することにより、正規化放射最大値を得た。
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
50mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、pH7.0中5μg/mlの濃度で、ウマ骨格筋由来のミオグロビン(Sigma)及びトランスフェリンに連結したペプチドM18(Jerini GmbH、ベルリン)をMaxisorb96ウェルプレート(Nunc)に4℃で一晩かけてコーティングした。プレートを室温で2.0%スクロース、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma)、0.9%NaCl中で2時間かけてブロッキングした。2μM〜0.125μMの濃度でサンプルをインキュベートした後、α−テトラ−his抗体(Qiagen)、次に、アルカリ性ホスファターゼとコンジュゲートした抗マウス抗体を用いて、結合したscFvフラグメントを検出した。
BIAcore測定
2,700共鳴単位(RU)のウマ骨格筋由来のミオグロビン(Sigma)でコーティングした1レーンと、2,500RUのトランスフェリンに連結したペプチドM18(Jerini GmbH、ベルリン)でコーティングした1レーンと、対照面として1ブランクレーンを有するCM5−チップ(Amercham Pharmacia)を用いて、BIAcore分析を実施した。再生のために、20mM HEPES(pH7.0)、150mM NaCl及び0.005%Tween20及び2M NaSCN中5μM〜0.08μMの範囲にある様々な抗体濃度を用いて、25μL/分の一定流速で、各結合−再生サイクルを25℃で実施した。同じチップ、バッファー及び再生条件での競合BIAcore(24、25)を用いて、溶解状態での抗体解離定数の決定を実施した。一定濃度のscFvフラグメントと、可変量の抗体を少なくとも1時間10℃で前インキュベートした後、100μLの量のサンプルに導入した。BIAevaluationソフトウエア(Pharmacia)及びSigmaPlot(SPSS Inc.)を用いることにより、データを評価した。線形センサグラムの解離期の傾きを全抗原濃度に対してプロットし、以前記載されている(26)ように解離定数を計算した。
野生型scFvフラグメントの特性
構造に基づく設計により生物物理学的特性を改善するための本発明者らの手法を試験するためのモデル系としてV6フレームワークを選択し、モデル系としてHuCALから選択される以下の2つのscFvフラグメントを用いた:トランスフェリンと連結したペプチドM18に結合し、Vκ3と対合するV6からなる2C2と、ミオグロビンに結合し、Vλ3と対合するV6からなる6B3。上記2つの抗体は、CDR3が異なる(「材料及び方法」を参照)が、それ以外ではV6配列は同じである。野生型(wt)scFvフラグメント2C2及び6B3を大腸菌のペリプラズムに発現させた。scFvフラグメントは、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、続いてイオン交換カラムにより細胞抽出物の可溶性画分から精製した。scFvフラグメントの純度をSDS−PAGEにより決定したところ、98%を超えた(データは示していない)。OD550=10に正規化した1リットル細菌培養物の精製後の2C2−wt及び6B3−wtの可溶性収率は、それぞれ1.2±0.1mg及び0.4±0.1mgであった。ウエスタンブロットで決定したところ、発現させたタンパク質全量のそれぞれ約10%及び25%が不溶性の状態で認められた。オリゴマー状態を分析用ゲル濾過により決定した。両タンパク質ともに、29kDaの見かけ分子量で溶出するが、これは、両者が単量体であることを示している(図11)。各タンパク質の熱力学的安定性を平衡GdnHCl変性により測定した。scFvフラグメントの変性を、変性剤濃度の関数として蛍光発光最大値の推移によりモニターした。図12(a)は、2C2−wt及び6B3−wtの変性曲線を示す。両方の曲線とも、ただ1つの変化しか示さないが、これは、scFvフラグメント内のV及びVが同時に変性することを示している(10)。折りたたまれた(folded)及び変性した(unfolded)状態の蛍光強度は類似しており、最大値は17nmしか変わらないため、最大値の推移を用いて、変性した分子の集団を決定することができる(27)。scFvフラグメントの変性は二状態過程であると仮定して、変性ΔGN−Uの自由エネルギーを決定することができる(28、29)。2C2−wtはΔGN−U51.3kJ/モルを、6B3−wtはΔGN−U51.3kJ/モルをそれぞれ示し、m値はそれぞれ25.2kJモル−1−1及び27.4kJモル−1−1であった。これらのm値は、このサイズのタンパク質に予想された範囲内にあり、これは、両scFvフラグメントが二状態過程に予想される協同性を有することを示している(30)。
突然変異を選択する上での構造的根拠
ヒトV6フレームワークを含むscFvフラグメント2C2及び6B3の特性を改善するための突然変異体の第1セットを構造モデルの分析から選択した。尚、この分析は、有利な生物物理学的特性を有するVドメイン(ファミリー1、3及び5)と、不利な特性を有するVドメイン(ファミリー2、4及び6)別に分類したヒトコンセンサスVドメインの配列アラインメントに基づいて行なった。(図13)。本発明者らの目的は、抗原結合に影響しそうにない、一般的に適用可能な突然変異を識別することであったため、フレームワークの残基に的を絞り、CDR領域は排除した。2C2及び6B3において本発明者らが研究した残基を、特定の変化についての推論とともに以下に示す:
Q5V:安定性に有利なscFv 4D5Fluの選択実験で、Val、Gln、Leu及びGluの中から、この位置にValを選択した(18)。5位は第1β鎖の一部であり、ValはGlnと同様に高いβシート傾向を有する(31)。しかし、露出した疎水性残基の突然変異は、in vivoフォールディング収率に多大な影響を及ぼすことが既に示されている(9)。図14は、V6−Vκ3scFvフラグメントのモデル(21)(PDB登録名:1DHZ(V6)及び1DH5(Vκ3))の5位のGlnが溶媒に暴露されていることを示している。従って、V1a、V1b、V3及びV5の疎水性Valとは対照的に、V2、V4及びV6の親水性残基Gln又はLysがフォールディング効率を増強するのではないかと考えられる。要約すると、この突然変異は、βシート傾向を高める代償として、露出した疎水性残基を生成する。
S16G:V2、V4及びV6は非グリシン残基を有するが、それでも、フレームワーク1のループ内の16位に保存された正のφ角を有し(図14)、恐らくこれが不利な局部コンホメーションを引き起こすと考えられる。16位に非グリシン残基を有すると認められた構造(例えば、PDB登録名:1C08、1DQJ、1F58)から、確かに、正のφ角が局部的に維持され、明らかに周囲によって強化されていることがわかる。対照的に、奇数番号のVはすべてこの位置にGlyを有する。
T58I:58位の残基は、高度に保存されたIleであり、これは疎水性コア内部に向いている(図14)。V6だけがこの位置にThrを有し、この位置には内部に不満足な水素結合供与体が含まれている。従って、この残基をIleに換えた。
V72D:溶媒暴露残基72(図14)を、抗体McPC603において、AlaからAspに換えたところ、不溶性ペリプラズム画分と比較して、可溶性ペリプラズム画分に存在するタンパク質の比率が20倍増加したが、熱力学的安定性を測定可能な程度に改変することはなかった(15)。これは、この残基がフォールディング効率に影響を及ぼしうることを示している。最も安定なVファミリーV3のコンセンサス配列だけがこの位置にAspを有する。
S76G:奇数番号のVドメインは、フレームワーク2の76位にGlyを有する(図14)が、これとは対照的に、偶数番号のVドメインはThr又はSerを有する。PDBに存在する既知の抗体構造の半分で、この位置の残基は正のΦ角を有することから、この位置でのグリシンの選択は好適であるといえるだろう。
S90Y:V1a、V1b、V3及びV5の半分内側に存在する90位(図14)にはTyrが位置するのに対し、V2、V4及びV6はVal又はSerを有する。この残基は、フォールディングした免疫グロブリンのβシートの一部であり、V6ではSerと交換するが、TyrはSerよりも高いβシート傾向を有する(31)。
20位及び88位では、官能基特異的差異もみられる(13)。両位置での残基は溶媒に露出しており、βシートに参加する。20位では、奇数番号のVドメインは、Lys及びArgの塩基性残基を有するのに対し、偶数番号のドメインは、Thr又はSerを示す。88位では、有利な特性を有するドメインはすべてThrを含み、不利な特性のドメインはGlnを含む。しかし、これらの残基はすべて疎水性であり、同様のβシート傾向を有するため、フォールディング効率の差異は小さいと予想される。従って、これら残基は交換しなかった。
単一突然変異
前述した6種の突然変異(Q6V、S16G、T58I、V72D、S76G及びS90Y)を部位特異的突然変異誘発により2C2−wt及び6B3−wtに導入した。1種の突然変異を有するscFvフラグメントすべてを、野生型scFvフラグメントと同じ方法で発現させ、精製したところ、溶解状態で単量体であった(データは示していない)。単一突然変異体、及び後に構築した多重突然変異体のすべてにおいて、ペリプラズムにおける不溶性タンパク質に対する可溶性タンパク質の比率は一定であり、全発現レベルが増加した場合でもそうであった。生物物理学的データを表7にまとめる。2C2及び6B3において突然変異により生じた改善を比較するために、可溶性タンパク質の発現収率を、対応する野生型scFvフラグメントの収率に対して正規化した後、変性の自由エネルギー(ΔGN−U)を、対応するscFv−wtに対する差異(ΔΔGN−U)として示す。変性剤誘導変性曲線を図12(b)に示す。
非グリシン残基を正のΦ角と交換する単一突然変異(S16G及びS76G)の両方が、可溶性タンパク質の収率を約2倍高めた。熱力学的安定性も、野生型scFvフラグメントと比較して、2C2−S16G及び6B3−S16Gの場合にはΔΔGN−Uがそれぞれ6.2及び7.3kJ/モル、2C2−S76G及び6B3−S76GではΔΔGN−Uがそれぞれ3.7及び3.5kJ/モルと、両方の単一突然変異で増加した。ループ領域におけるGlyへの突然変異は、さらに高い可変性をもたらし、これによって、ドメイン全体を安定化する逆平行βシートの最適配向が可能になる。これら突然変異体の収率が高いのは、恐らく、タンパク質の安定化したフォールディング状態によって起こるプロテアーゼ耐性及びフォールディング効率の増大によるものであろう。
OH含有Thr58のIleへの突然変異(疎水性コア内部に向かう)は、可溶性タンパク質の収率を変えることはなかったが、2C2−T58I及び6B3−T58IでΔΔGN−Uがそれぞれ7.9及び6.8kJ/モルと、熱力学的安定性の顕著な増加を引き起こした。この安定性の著しい向上は、疎水性コア内の疎水性Ileの更なるファンデルワールス相互作用、並びに、Thrを内含する際必要な不溶化がないことによるものである。興味深いことに、この突然変異は、可溶性タンパク質の収率に影響を及ぼさず、これは、フォールディング効率が増加していないことを意味する。
βシート状の残基をより高いβシート傾向の残基と交換する突然変異(Q5V及びS90Y)は両方とも、可溶性タンパク質の収率の約1.8倍の増加をもたらした。さらに、熱力学的安定性は、やや増加したが、2C2−S90Yだけは例外で、野生型scFvフラグメントと比較してわずかに減少しているほどであった。これら構築物の分析から、βシートに参加する残基をより高いβシート構成傾向の残基と交換する突然変異は、より高いフォールディング効率のために、可溶性タンパク質の収率を増大可能であることがわかる。scFvフラグメントによっては、恐らく、突然変異した残基の配向が改善され、βシートにおける水素結合を安定化する配向を促進するために、熱力学的安定も高くなる。
最後の単一突然変異は、溶媒露出疎水性残基を親水性残基と交換するものである(V72D)。2C2−V72D及び6B3−V72Dにおける可溶性タンパク質の収率は、それぞれ3.2倍及び1.8倍増加する。2C2−V72Dにおける熱力学的安定性は変わらないが、6B3−V72Dでは、ΔΔGN−Uが2.2kJ/モルと、わずかに増加する。
多重突然変異
改善が付加的であるかどうかを決定するために、本発明者らは、単一突然変異の組み合わせをクローニングした。多重突然変異を含むscFvフラグメントを前記のように発現及び精製した後、分析用ゲル濾過にかけたところ、これらも溶解状態で単量体であることが証明された(図11では例として2C2−及び6B3−allを示す)。試験した2C2の全多重突然変異体の変性曲線は、1つの急速な協同的変化を示す(図12(d))ことから、V6での6種の突然変異により、Vκ3ドメインが安定化されることがわかるが、これは恐らく、突然変異したV6ドメインが、疎水性V−V境界面相互作用を介してVκ3を安定化するためと考えられる。対照的に、二重突然変異体6B3−Q5V+S16G及び6B3−T58I+S76Gの平衡変性の変化からは、6B3−wtと比較して、協同性が低いことが明らかになり、m値はそれぞれ18.9及び19.3kJモル−1−1であった。これは、変性がもはや二状態過程ではないことを示している。有利な特性を有するVドメインのグループと比較して、上記配列に由来する6種の突然変異すべてを有するscFvフラグメント6B3(6B3−all)はむしろ低い協同性を示し、m値は14.3kJモル−1−1であった(図12(a))。Vλ3ドメインは、単離されたVドメインのうち最も低い熱安定性を有し(実施例1と、11参照)、恐らく、多重突然変異を有するscFv 6B3で最初に変性を開始するのに対し、突然変異し、安定化したV6ドメインは、依然として折りたたまれた状態で、さらに高い変性剤濃度でしか変性しない。このように二状態挙動が欠如しているために、6B3の多重突然変異体についてはΔGN−U値を計算することができなかった。
可溶性タンパク質の収率及び熱安定性測定の詳細を表7に記載する。要約すると、単一突然変異の収率及び安定性に対する作用はほぼ完全に付加的である。6種の突然変異すべてを有するscFvフラグメント(2C2−all及び6B3−all)は、野生型scFvフラグメントと比較して、それぞれ4.3倍〜4.2倍の収率増加を示す。2C2−allの絶対値は、収率が5.1mg/L(2C2−wtより3.9mg/L高い)、熱力学的安定性が72.3kJ/モルである。6B3−allの場合、1.7mg/Lの収率が得られ、これは、6B3−wtより1.3mg/L高い。
フレームワーク1サブタイプの分析
構造は、6位、7位及び10位のアミノ酸の種類に応じて4つの異なるフレームワーク1コンホメーションに区分することができる(32)(番号付けは、Honegger及びPluckthunに従う(33))。19、74、78及び93位の残基は、上記ドメインの下部の疎水性コアの一部であるため、熱力学的安定性及びフォールディング効率に影響を与えるが、これらの残基は、この構造的サブタイプと相関する(32)。最も有利な特性を有するVドメインは、サブタイプII(V3)及びサブタイプIII(V1a、V1b及びV5)に入るのに対し、不利な特性のVドメインであるV2及びV4は、サブグループIに入る。改善しようとするV6は、サブタイプIIIに割り当てることができる。サブタイプIIIは、6位のGlnの存在と、7位のProの非存在を特徴とする(32)。ヒトVドメインのサブタイプIII決定及び相関残基の分析(32)から、V6フラグメントは、10、74及び78位に、稀にしか用いられない残基を有することがわかる(表8)。10位のProは、配列の8%で用いられるのに対し、Alaは、配列の76%で用いられる。Proは、Alaより限定された数のコンホメーションしか許容しない。突然変異誘発実験(34)では、10位のProは、サブタイプIVのVドメインを不安定化することがわかった(マウスだけに起こり、ヒト配列では起こらない)。74位のVal及び78位のIleは、VサブタイプIII配列と比較して、それぞれ1%及び8%の頻度を有する。2C2及び6B2においてVal74を最も頻度の高いPheと交換した。何故なら、大きな芳香族アミノ酸は、恐らく疎水性コアのパッキング密度を高めるからである。Ile78は、サブタイプIIIコンセンサス残基Ala又はVal(Ileと同様に非芳香族脂肪族残基である)と交換しなかった。というのは、パッキング密度への影響が恐らく小さいと思われるからである。図15(a)では、フレームワーク1サブタイプ決定及び相関残基をV6のモデル(21)(PDB登録名:1DHZ)に示し、図15(b)では、P10A(10位のProをAlaへ変異)及びV74Fを含む二重突然変異のモデルを示す。
フレームワーク1サブタイプIIIコンセンサスに対するP10A単独の、並びにV74Fと組み合わせた突然変異を部位特異的突然変異誘発により野生型scFvフラグメントに導入した。2C2−P10A及び6B3−P10Aは、野生型scFvフラグメントと比較して、それぞれ2.9倍及び4.2倍の可溶性タンパク質収率増加を示したのに対し、P10A及びV74Fを含む二重突然変異は、上記より低く、それぞれ1.9倍及び1.7倍の増加を示した。全生物物理学的データを表7にまとめる。単一及び二重突然変異体の大腸菌におけるペリプラズム発現の可溶性及び不溶性画分の分析から、全発現レベルと、突然変異により増加した可溶性タンパク質のレベルの両方、従って、可溶性対不溶性scFvフラグメント間の比が一定に維持されることがわかった(データは示していない)。scFvフラグメント2C2及び6B3の熱力学的安定性は、突然変異P10Aによって向上せず、二重突然変異P10A及びV74Fでわずかに向上したにすぎない(それぞれ、ΔΔGN−Uが0.5kJ/モル及び0.4kJ/モル)(表7、図12(d))。従って、生物物理学的分析から、ペリプラズムタンパク質の収率の増加によって証明されるように、突然変異P10Aはフォールディング効率を確かに高めるが、野生型scFvフラグメントと比較して安定性は変化しないことが明らかになった。対照的に、突然変異V74は、二重突然変異体での収率に対するP10Aの正の作用が低下することから、恐らくフォールディング効率を犠牲にして、疎水性コアにおける安定化相互作用を増強するために、安定性をわずかに高めると考えられる。熱力学的安定性にわずかな上昇しか示さなかった二重突然変異体P10A+V74Fと比較して、単一突然変異体P10Aの収率が高いことから、本発明者らは、突然変異P10Aだけを2C2−all及び6B3−allにクローニングし、構築物scFv−all+P10Aを得た。2C2−all及び6B3−allと比較して、収率はそれぞれ0.8及び2.1の倍率で低下した。2C2−all+ P10Aの場合には、熱力学的安定性は、ΔGN−Uが68.1kJ/モルであり、2C2−allよりも4.1kJ/モル低かった。6B3−all+P10Aにおいて、熱力学的安定性の半定量的測度である変性の中間点も、6B3−allの中間点より低いGdnHCl濃度であった。
結合活性の決定
この研究の目標は、結合活性は保持しながら、ファミリー特異的分析に従う構造に基づく手法によって、V6を含むscFvフラグメントの収率及び安定性を改善できることを証明することであった。本発明者らは、2つの独立した方法(ELISA及びBIAcore)により、結合活性を分析した。ELISAについては、本発明者らは、対応する抗原をコーティングし、様々な濃度のscFvフラグメントを使用した。本発明者らは、scFv−P10Aを含むすべての単一突然変異、並びにscFv−all及びscFv−all+P10Aの多重突然変異を試験した。すべての突然変異体が、類似した濃度依存性を示し、これらが、同じ結合親和力を有することを示している(データは示していない)。
抗原をコーティングしたチップ上を流れる様々な濃度のscFvフラグメントを用いて、BIAcore実験を実施した。図16a及び16bは、それぞれ2C2−wt及び−all並びに6b3−wt及び−allの重ね合わせを示し、共鳴単位(RU)対時間としてプロットした。いずれの場合にも、抗原コーティングチップに対するscFv−wt及び−allの会合曲線及び解離曲線が重なり合っており、これは、結合が完全に保持されていることを示している。しかし、解離期は、scFvフラグメントの導入前のバックグラウンドレベルに到達しなかったため、抗原解離定数(K)の明確な決定ができなかった。この非特異的結合は、様々な抗原コーティング密度で観察された(2,700RU及び370RU、データは示していない)。これは、この挙動がチップとの再結合によるものではなく、部分的に変性したscFvフラグメントの小さな部分が、抗原コーティングチップに非特異的に付着するためと考えられる。従って、競合BIAcore実験(24、25)を実施して、溶解状態でKを決定した。この実験では、scFvタンパク質を可溶性抗原と一緒にインキュベートし、固定化抗原を含むBIAcoreチップに混合物を導入した。抗原結合scFvではなく、遊離scFvだけが、表面上の抗原と結合することができた。これにより、溶解状態での解離定数を、どんな非特異的結合現象からも独立に決定することができる。以前の実験から、Kは、10−7M前後であると推定されている。従って、50nM〜30μMの様々な濃度のミオグロビンの存在下で、それぞれ16nM及び10nMの6B3−wt及び6B3−allを用いて、競合BIAcore実験を実施した。溶解状態の対応する全抗原濃度に対する会合期の傾きのプロットから、以前記載されている(26)(図17)ように、6B3−wtのKは(1.9±0.5)・10−7M、また、6B3−allのそれは(1.5±0.4)・10−7Mと計算された。両方のK値とも、実験誤差範囲内にあり、これは、結合が完全に保持されていることを示している。
この実験の目的は、構造に基づく、ファミリー−コンセンサスによる推定の妥当性を証明することである。本発明者らは、可溶性タンパク質の発現収率及び熱力学的安定性を向上するためのモデル系としてヒト生殖系列ファミリーV6コンセンサスドメインを含むscFvフラグメントを選択した。これら生物物理学的特性を改善する潜在的突然変異を、フレームワーク1サブタイプに規定される残基及び他の相互作用残基と、同じサブタイプ内に存在するコンセンサス配列との比較により同定した。次の潜在的突然変異のセットは、潜在的不完全に関する構造の分析によりみいだした。尚、この分析は、既知の有利な生物物理学的特性を有するVドメイン(ファミリー1、3及び5)のコンセンサス配列との比較によって実施した。本発明者らは、この分析からCDR残基を排除した。本発明者らは、ヒト可変ドメインサブグループのコンセンサス配列の生物物理学的特性を予め体系的に決定していたため、このような残基の位置を正確にみいだすことができた(実施例1と、11)。この実験から、提案された7種すべての単一突然変異が3つのカテゴリーに入ることがわかる。すなわち、これらの突然変異は、可溶性タンパク質の発現収率増加又は熱力学的安定性向上のいずれか、あるいは両方をもたらす。この区分は、該タンパク質の生物物理学的特性を決定する上でのこれら残基の役割を理解するのに役立つ。上記7種の突然変異のうち、scFv 2C2の場合には3つ、またscFv 6B3の場合には5つもが、両方の生物物理学的特性の改善をもたらす。これらの結果から、ファミリーアラインメントに従う、構造に基づく分析の組み合わせは、免疫グロブリン可変ドメインの特性を改善する有力な方法であることがわかる。本発明者らの分析(実施例1と、11)は、あらゆるヒトファミリーを対象とするため、この用途のための一般的手法となる。
有利な特性を有するVドメインのコンセンサスに対する単一突然変異の様々な組み合わせの分析から、自由エネルギーの改善はほぼ完全に付加的であることがわかり、これは、突然変異が独立に作用することを示している。野生型scFvフラグメントと比較して、最も高い収率及び熱力学的安定性を有する突然変異体は確かに、6種の突然変異を含む突然変異体である。scFv 2C2の場合には、最良の突然変異体の特性は、最も安定なVドメインであるV3、並びに異なるCDR3を有する同じVドメインのVκ3からなるモデルscFvフラグメントの特性と同等であり(ヒト可変抗体ドメインの体系的生物物理学的特性決定の一部であった)(実施例1と、11参照)、これは、少数の残基を交換するだけで、不利な特性の抗体を非常に有利な特性の抗体に改変することが確かに可能であることを示している。最も重要なことは、結合に重要なCDR及びそれらのフレームワーク残基の両方が維持されることである。6種の突然変異を有するscFvフラグメントに対する突然変異P10Aの付加により、発現収率及び熱力学的安定性の両方が低下するが、野生型scFvフラグメントでは、この突然変異によって、2C2−P10Aの場合には2.9倍、また、6B3−P10Aの場合には4.2倍可溶性収率が高くなり、熱力学的安定性は不変のままであった。10位に近い突然変異Q5V及びS16Gは、10位でのアミノ酸の種類とは無関係であるため、依然としてV6フレームワークに有利であるに違いない。改善されたフレームワークにおいてこの突然変異の生物物理学的特性が低下した理由は、実験により決定された3D構造を用いてしか説明することができないであろう。Vκ3を含む2C2、並びにVλ3及び様々なH−CDR3ループを含む6B3では、類似した結果が得られたことから、前記の改善はVドメイン、並びにCDR3の配列及び長さとは独立であるようだ。6B3突然変異体V72D及びS90Yの熱力学的安定性はわずかに向上したが、2C2では、安定性の向上をまったく観察することができなかったため、例外はわずかなものが2つだけであった。すでに、Vκドメインとは対照的に、scFvフラグメントVλドメインは、非常に安定なV−V境界面を形成することができ、単離されたドメインの固有の安定性以上にscFvフラグメント全体の安定性を高めることがわかっていた(実施例1と、11参照)。72位の残基は、境界面相互作用に関与しないが、それに極めて近接している(図14)。従って、突然変異V72Dによって、境界面の配向に小さな変化が起こる可能性があり、これは、2C2のVκ3ドメインには影響しないが、6B3のVλ3ドメインとの境界面相互作用を介して、小さな安定化効果をもたらす。90位の残基は、Vに対し境界面と反対側にあり、かつ、CDR3から29残基離れている。このことから、6B3の安定性がやや向上したのは、おそらく2C2とは異なるVドメイン及びCDR3配列のためではないことがわかる。
本発明者らは、抗原に直接接触する可能性があるCDRの残基を交換しなかったが、フレームワーク内の改変がCDRの配向、従って、抗原結合に影響を与えうることは先験的に排除できない。従って、本発明者らは実験により結合特性を決定した。しかし、試験した突然変異の場合には、抗原結合は完全に保持されることが、3つの独立した方法により証明された。
この実験では、本発明者らは、不利な特性の抗体フレームワークを、そのフレームワークの結合活性及び結合特性を保持しながら、非常に有利な抗体フレームワークに合理的に変換可能であることを証明する。さらに容易な手法は、好適なVドメインを含む非常に安定なV3フレームワークを直接用いるものであることも証明することができた。しかし、フレームワーク残基は、CDRの配向に影響を与え、V−V境界面に位置するハプテン結合キャビティーの一部である可能性があり、「外側ループ」を構成することができる。このループは、場合によっては抗原結合に関与することが認められた。従って、これらの「フレームワーク」残基は、親和性及び多様性に大きく寄与することができ、単一フレームワークがあらゆる場合に理想的な解決をもたらすわけではないようだ。従って、本発明者らは、安定なフレームワークの構造的に多様なライブラリーを達成する好ましい手法は、本明細書に提示したヒトコンセンサス抗体フレームワークを最適化することであると考える。何故なら、この手法は、すべての天然ファミリーを対象とする全範囲の安定骨格に適用できるからである。
この実験では、本発明者らは、V6フレームワークの改善に的を絞った。しかし、配列類似性のために、試験した突然変異のうち5つ(Q5V、S16G、V72D、S76G及びS90Y)は、ファミリーV2及びV4に属するVドメインについて同様の結果をもたらすに違いない。この手法は、抗体ライブラリーの設計に有用であるが、多くの場合、例えば、トランスジェニックマウス(35、36)に由来する、ヒト化(37)により、又は天然配列のライブラリーからのファージ展示(38〜40)により得られた、所与のヒト抗体もまた改善によって利益を得るであろう。
また、これらの結果から、いくつかのヒト生殖系列遺伝子は、その生物物理学的特性に関して、タンパク質の最適な形態をコードしないことがわかる。天然ドメインの生物物理学的特性は広範囲に及ぶため、限定された安定性が免疫系にとって望ましい特性であると断定することはできない。むしろ、V2、V4及びV6の安定性は、十分良好であるため、免疫系により許容されると考えられる。しかし、安定性が十分良好ではない生物医学的又は生物工学的用途についても、本発明者らはこれらの特性を改善する道筋を提供したといえるだろう。
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単離されたV及びVドメインの見かけ分子量の決定を示す図である。 ドメインのGdnHCl変性曲線の重ね合わせを示す図である。 ドメインのGdnHCl変性曲線の重ね合わせを示す図である。 ヒトコンセンサスVκ3(PDB登録名:1DH5)及びV3ドメイン(PDB登録名:1DHU)からなるscFvフラグメントのモデル構造を示す図である。 水素結合を有するヒトコンセンサス(a)V3および(b)Vκ3ファミリーの電荷クラスターの詳細図である。 上部コア残基の詳細図である。 フレームワーク1分類に対応する下部コア残基の詳細図である。 50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び500mM NaClにおけるSuperdex−75カラムでのscFvフラグメント(5μM)の分析用ゲル濾過を示す図である。 境界面安定化の様々なケースを示すGdnHCl変性曲線の重ね合わせを示す図である。 λドメインでの境界面安定化における様々なL−CDR3の役割を示すGdnHCl変性曲線の重ね合わせを示す図である。 5μMの濃度における、Superdex−75カラムでの50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)及び500mM NaClにおける2C2−wt、2C3−all、6B3−wt及び6B3−allの分析用ゲル濾過を示す図である。 (a)2C2−wt、2C2−all、6B3−wt及び6B3−all、(b)単一突然変異、及び(c)有利な特性を有するVドメインのコンセンサスに対する多重突然変異、並びに(d)scFv2C2を用いて例示したフレームワーク1サブタイプIIIに対する突然変異のGdnHCl変性曲線の重ね合わせを示す図である。 アラインメントしたHuCAL V配列を示す図である。 有利な特性を有するVドメインのコンセンサスに対する単一突然変異の全体図である。 (a)野生型V6ドメイン及び(b)改変P10A及びV74Fを有する二重突然変異型のモデルにおいて、残基(6、7及び10)及び相関残基(19、74、78、93)を決定するフレームワーク1サブタイプIIIの全体図である。 (a)2C2−wt及び2C2−all並びに(b)6B3−wt及び6B3−allの結合活性の比較を示す図である。 6B3−wt及び6B3−allの競合BIAcore分析を示す図である。

Claims (14)

  1. 6サブクラスに属するVドメインであって、Kabatの番号付けによる15位のG51位のI、及び65位のGからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むVドメインを含む、単離されたポリペプチド。
  2. 前記Vドメインが、さらにKabatの番号付けによる5位のV、61位のD、及び79位のYからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  3. 請求項1記載のVドメインを含む抗体。
  4. 請求項3記載の抗体を1以上含む、抗体のライブラリー。
  5. 6サブクラスに属するVドメインであって、Kabatの番号付けによる15位のG51位のI、及び65位のGからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むVドメインを含むポリペプチドをコードする単離された核酸
  6. 前記Vドメインが、さらにKabatの番号付けによる5位のV、61位のD、及び79位のYからなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、請求項5に記載の単離された核酸
  7. 請求項5記載の核酸に対応する核酸配列を含むベクター。
  8. 請求項5記載の核酸に対応する核酸配列を有する宿主細胞。
  9. 請求項5記載の単離された核酸を発現するステップを含む、Vドメイン又は抗体の製造方法。
  10. 6サブクラスドメインをコードする核酸配列において、Kabatの番号付けによる15位のG、51位のI、及び65位のGからなる群より選択されるアミノ酸残基をコードする少なくとも1つのコドンに置換するステップを含む、請求項1のポリペプチドをコードする単離された核酸配列の取得方法。
  11. 6サブクラスドメインをコードする核酸配列において、Kabatの番号付けによる5位のVのアミノ酸残基をコードするコドンに置換するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
  12. 6サブクラスドメインをコードする核酸配列において、Kabatの番号付けによる5位のV、15位のG、51位のI、及び65位のGからなる群から選択されるアミノ酸残基をコードする2以上のコドンに置換する、請求項10に記載の方法。
  13. さらに以下のステップ:
    (i)前記ドメインについて、V6のアミノ酸コンセンサス配列を同定するステップ;
    (ii)前記コンセンサス配列のアミノ酸残基に対応する1以上のコドンを、前記ドメインの核酸配列の対応する位置に置換するステップ、
    を含む、請求項10記載の方法。
  14. 請求項10記載の核酸配列を発現するステップを含む、ポリペプチドの取得方法。
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