自動車等に装着される車両用ホイールの意匠面には、意匠性の向上や、ブレーキの放熱性向上のため、周方向に沿って複数の飾り孔が形成されていることが一般的である。このホイールは、タイヤが組み付けられた後、自動車の生産ラインで車軸に取り付けられる。このように生産された自動車は、顧客に引き渡されるまでの間に、一時的に保管され、顧客のもとに輸送される。このような保管時や輸送時には、自動車は雨水や水分を含んだ空気等に曝されることから、前記ホイールの飾り孔から覗くブレーキディスクが錆び付き易い。特に、フェリー等の輸送船によって海上輸送される場合には、飾り孔から、塩分を含む空気が直接的にブレーキディスクに触れることとなり、ブレーキディスクが一層錆び付き易くなっている。
このように錆び付いたブレーキディスクは、ブレーキ性能に影響しなくとも、飾り孔から比較的簡単に視認できるため、顧客の心証を損なうことともなり得る。このため、自動車メーカーでは、近年、顧客に引き渡されるまでの間における、ブレーキディスクの錆び付き防止を重要視しており、ホイールの飾り孔を外側から一時的に被覆し、保管期間や輸送期間中に、ホイール内部に水分を含んだ外気が侵入しないようにしている。飾り孔を被覆する具体的な手段としては、意匠面形状に合わせて成形された防錆用ホイールカバーや遮水性の防錆フィルム等が用いられている。
防錆用ホイールカバーは、通常、硬質の樹脂材料よりなる成形品であり、予めホイールの意匠面形状に合わせた形状に成形し、ホイールの意匠面に嵌合させることにより、飾り孔を被覆する。このホイールカバーは、取り付けが用意であるという利点があるが、その反面、成形品であるため製造コストが高いという欠点がある。また、車両用ホイールは、径の異なるものが多数存在し、同じサイズのホイールであっても意匠面の凹凸形状は様々であるため、当該ホイールカバーは、ホイールのサイズ・種類に応じた数だけ準備する必要があり、製造コストに加え、保管の手間も大きい。また、比較的硬質であるため、装着状態でホイールとの間に隙間が生じやすく、外気を完全に遮断し難いという問題もある。
一方、遮水性の防錆フィルムは、通常、柔軟な樹脂性フィルムよりなり、その片面に形成した接着面をホイールの意匠面に貼り付けることにより、その飾り孔を被覆する。この防錆フィルムは、上記防錆用ホイールカバーに比べ製造費用が極めて安く、また、柔軟であるため意匠面の多様な凹凸形状に対して密着可能であり、外気を遮断し易いという利点も有する。しかし、現在の製造ラインでは、防錆フィルムの貼付作業は自動化されておらず、防錆フィルムの接着面に離型紙を貼付し、円形若しくはドーナツ形状に裁断された防錆フィルムシートから離型紙を剥がし取り、ホイールに貼付するといった作業を手作業によって行っている。このため、現在の貼付作業は、人手と時間を要する非効率なものであり、また、防錆フィルムの接着面同士が貼り付いてしまったり、飾り孔を完全に被覆できない等の失敗が多く確実性も欠いている。
このように、現在の貼付作業の問題点を解決するため、その貼付作業を自動化し、より確実かつ効率的に作業を行うことが求められており、以前には、特許文献1のようなフィルム貼付装置も提案されている。このフィルム貼付装置は、ベローズ表面に防錆フィルムを吸着する貼付用治具を備えたものであり、かかる貼付用治具に防錆フィルムを吸い付け、防錆フィルムを平面状に保持し、治具に保持した防錆フィルムをホイール表面に押圧することにより、防錆フィルムを機械的に貼り付け可能としたものである。
ところが、上記フィルム貼付装置では、防錆フィルムをホイールに貼り付ける工程は、自動化されているが、防錆フィルムから離型紙を自動的に剥がし取る手段は備えておらず、上述のような防錆フィルムシートを用いる場合には、手作業により離型紙を剥がし取らなくてはならない。また、上記フィルム貼付装置においては、防錆フィルムシートを使用する代わりに、防錆フィルムを貼付用治具に吸着させる直前にロールに巻回された防錆フィルムからホイール表面形状に裁断する方法が考案されているが、かかる方法は、ホイールに貼り付ける度に防錆フィルムを裁断する工程を必要とするため、一回の貼付作業に極めて時間がかかり、実用性に乏しい。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、防錆フィルムを従来よりも効率的にホイールに貼付し得る防錆フィルムの貼付方法、及びフィルム貼付装置の提供を試みたものである。
本発明は、車両用ホイールの飾り孔を外側から被覆するようにホイールの意匠面に防錆フィルムを貼り付ける防錆フィルムの貼付方法において、防錆フィルムの一側面に形成された接着面に、摘み突部が外周縁に形成された離型紙を貼付してなる防錆フィルムシートを、防錆フィルムの他側の非接着面を上方から吸着することにより、防錆フィルムシートの束から引き上げて、平面状に保持する吸着工程と、平面状に保持した防錆フィルムシートの摘み突部を挟持して、該摘み突部を防錆フィルムの下方へ相対的に引き下げることにより、防錆フィルムから離型紙を剥がし取る剥離工程と、離型紙が剥離された防錆フィルムの接着面をホイールの意匠面に押圧して、ホイールの意匠面に防錆フィルムを貼り付ける貼付工程とからなることを特徴とする防錆フィルムの貼付方法である。
かかる方法においては、防錆フィルムの一側面に形成された接着面に、摘み突部が外周縁に形成された離型紙を貼付してなる防錆フィルムシートを用いる。この防錆フィルムシートは、防錆フィルムを構成すると離型紙とを接合した広大なシートを、ホイールの全ての飾り孔を被覆できる円形状やドーナツ形状に切り抜いてなるものである。摘み突部はこの裁断の際に、外周縁から突出するように形成する。この摘み突部は、さらに、その根元付近において、該摘み突部を横断するように防錆フィルムのみに切込を形成することにより、該切込部において防錆フィルムを分断可能とする。そして、本発明の防錆フィルムの貼り付け方法にあっては、防錆フィルムの非接着面を上方から吸着することにより、上記防錆フィルムシートを平面状に保持しておき、かかる状態で摘み突部を下方に引き下げる。上述のように、摘み突部の根元付近では防錆フィルムのみが切り込まれているため、この摘み突部を引き下げにより、離型紙のみを下方に引張り、摘み突部近傍内側部位から離型紙を剥がし取ることができる。このように、本発明の方法では、防錆フィルムの吸着保持および挟持した摘み突部の引き下げといった、単純な機械的作動の組合せにより離型紙の剥離が可能であり、かかる剥離作業を容易に自動化することが可能となっている。また、かかる剥離工程は、防錆フィルムを平面状に保持したまま離型紙を剥がし取るため、柔軟な防錆フィルムが変形し、接着面同士が貼り付くことがない。そして、かかる方法においては、防錆フィルムシートを上記貼付用治具等により平面状に保持するようにすれば、離型紙を剥離した防錆フィルムを、そのままホイール意匠面に対して押圧し、貼付することが可能であり、防錆フィルムの貼付作業を迅速かつ確実に行うことができる。なお、摘み突部の引き下げは、防錆フィルムに対して相対的なものでよく、挟持した摘み突部を固定したまま、保持する防錆フィルムを上方に移動させても構わない。
また、本発明の防錆フィルムの貼付方法にあっては、剥離工程を、防錆フィルムシートの摘み突部近傍内側部位の非接着面側を保持すると共に、摘み突部を挟持して、該摘み突部を防錆フィルムの下方に相対的に引き下げることにより、摘み突部近傍内側部位で離型紙を防錆フィルムから剥離させる剥離開始工程と、挟持した摘み突部を防錆フィルムのさらに下方へ相対的に引き下げると共に、該摘み突部を、防錆フィルムに対して相対的に横切る方向へ水平移動させ、防錆フィルムから離型紙を捲り取る主剥離工程とにより行うことが提案される。
ここで、防錆フィルムシートの摘み突部近傍内側部位とは、防錆フィルムが横断状に切り込まれた摘み突部の根元部分の内側近傍を指す。すなわち、上記剥離開始工程においては、摘み突部の根元の内外で、摘み突部を下方に引き下げると共に、摘み突部近傍内側部位を上方から保持することにより、摘み突部近傍内側部位に、防錆フィルムと離型紙とを上下に分離させる力を局所的に加え、摘み突部近傍内側部位において防錆フィルムと離型紙とを剥離させ、離型紙を剥がし取る起点となる開口を形成する。そして、続く主剥離工程では、摘み突部のさらなる引き下げと、防錆フィルムに対して横切る方向へ水平移動により、摘み突部近傍内側部位に形成された防錆フィルムと離型紙との開口を広げるようして、防錆フィルムから離型紙を捲り取る。かかる方法では、摘み突部の下方への動きと、防錆フィルムに対して横切る動きとを同期させることにより、手作業により離型紙を捲り取るのと同様に、防錆フィルムに対して摘み突部を円弧状に移動させ、少ない力で離型紙を防錆フィルムから捲り取ることを可能とする。従って、かかる剥離開始工程及び主剥離工程においては、防錆フィルムに無理な力を加えることなく、円滑に離型紙を捲り取ることが可能であり、剥離工程において柔軟な防錆フィルムを破損させる恐れが極めて少ない。また、こうした摘み突部の相対的な動きは、防錆フィルムの吸着保持手段や、摘み突部の把持手段の直線的な動きの組合せにより簡単に実現可能であり、自動化にも適する。
前記剥離開始工程において、防錆フィルムの摘み突部近傍内側部位の非接着面側を保持する手段としては、真空引き等により防錆フィルムを吸着する吸引手段を用いることが可能である。しかし、繰り返すように防錆フィルムは柔軟であるため、防錆フィルムに強い陰圧をかけると破損し易く、防錆フィルムを局所的に強く保持する手段として、吸引手段は最適とは言い難い。このため、剥離開始工程では、防錆フィルムの非接着面の摘み突部近傍内側部位に粘着テープを貼付し、該粘着テープの粘着力により防錆フィルムを摘み突部近傍内側部位で保持することが提案される。すなわち、かかる方法では、防錆フィルムに貼付した粘着テープの粘着力により防錆フィルムの当該部位を保持するため、吸引手段を用いるよりも防錆フィルムにかける負担が少なく、防錆フィルムの摘み突部近傍内側部位の非接着面側を強固に保持することができる。なお、最適な粘着テープの粘着力や種類は、用いる防錆フィルム材質・形状、離型紙との接合力等により変化するものであり、一義的には決定できないが、広範な種類の粘着テープを好適に用いることが可能である。
また、本発明において、防錆フィルムを平面状に保持する手段としては、上述したような貼付用治具を用いることが可能である。しかし、上記貼付用治具は防錆フィルムのサイズや形状に特化したものであり、かかる貼付用治具を用いた場合には、該貼付用治具を防錆フィルムの種類の数だけ用意し、貼付する防錆フィルムのサイズを変更する度に貼付用治具の交換作業を行わなくてはならないという欠点がある。このため、本発明の防錆フィルムの貼付方法では、下端に吸気口を備え、該吸気口を上下に移動可能とする吸引端子を水平方向に複数備える吸着保持装置により、防錆フィルムの非接着面を上方から吸着し、防錆フィルムの束から引き上げて、平面状に保持する吸着工程と、吸着保持装置により平面状に保持された防錆フィルムシートを、その摘み突部を把持して相対的に下方に引き下げることにより、防錆フィルムから離型紙を完全に剥離する剥離工程と、離型紙が剥離された防錆フィルムを、吸着保持装置により保持した状態で、防錆フィルムの接着面をホイール意匠面に押圧して、ホイールの飾り孔を被覆するようにホイールの意匠面に防錆フィルムを貼り付ける貼付工程とからなる防錆フィルムの貼付方法が提案される。
かかる吸着保持装置は、水平方向に配列された吸引端子の各吸気口を防錆フィルムに吸い付けることにより、防錆フィルムを多数位置で吸着保持し、上方から平面状に保持する。そして、吸着保持装置の各吸気口は夫々が上下移動可能であるため、防錆フィルムを平面状に保持するだけでなく、各吸気口を上下させることにより、ホイールの意匠面に倣った形状に変形させることが可能であり、保持した防錆フィルムを該意匠面に対して適切に押圧することができる。また、この吸着保持装置にあっては、単一の吸着保持装置が、水平方向の吸引端子の配列に応じて、様々なサイズ・形状の防錆フィルムを吸着し、ホイールに対して貼り付けることが可能であるから、汎用性に富み、上記貼付用治具のような煩雑な交換作業も必要ない。なお、かかる吸着保持装置は、駆動手段を用いて各吸気口を上下方向に移動させるものに限らず、例えば、各吸気口を下方に付勢しておき、吸気口のホイール意匠面への押圧時に、吸気口位置を上方に従動させるような構成も含めるものである。
また、本発明は、車両用ホイールの飾り孔を外側から被覆するように、ホイールの意匠面に防錆フィルムを貼り付けるフィルム貼付装置において、防錆フィルムの一側面に形成された接着面に、摘み突部が外周縁に形成された離型紙を貼付してなる防錆フィルムシートが、防錆フィルムの他側の非接着面を上に向けて積層されるフィルム吸着部と、意匠面を上向きにしたホイールが載置され、該ホイールに防錆フィルムが貼付されるフィルム貼付部と、フィルム貼付部にホイールを供給すると共に、防錆フィルムの貼付されたホイールをフィルム貼付部から搬出するホイール移送装置と、防錆フィルムの非接着面側に接離可能に吸着し、防錆フィルムを上方から平面状に保持する吸着保持装置と、吸着保持装置を、フィルム吸着部とフィルム貼付部との間で移動させるフィルム送り機構と、吸着保持装置に保持された防錆フィルムシートの摘み突部を挟持する突部把持装置と、摘み突部を挟持した突部把持装置を、防錆フィルムの下方に相対的に引き下げると共に、防錆フィルムに対して相対的に横切る方向へ水平移動させる捲り移動機構とを備えることを特徴とするフィルム貼付装置である。
かかるフィルム貼付装置にあっては、フィルム吸着部に積層された防錆フィルムを吸着保持装置により一枚ピックアップし、該防錆フィルムを平面状に保持した状態でホイールの供給されるフィルム貼付位置へと移動する。そして、このフィルム貼付位置へ移動する間に、突部把持装置が摘み突部を把持して固定し、摘み突部を相対的に下方へ移動させることにより、フィルムを離型紙から捲り取る。そして、フィルム貼付部へと移動したフィルム吸着装置は、保持したフィルムをホイールの意匠面に押し付けてホイールの飾り孔を覆うように防錆フィルムを貼り付ける。このように、本発明のフィルム貼付装置にあっては、摘み突部を形成した防錆フィルムをセットするだけで、離型紙の剥離からホイールへの貼付までを自動的に行うことが可能となり、従来よりも確実に、少ない人手で行うことが可能となる。また、かかるフィルム貼付装置にあっては、ホイール形状に切り抜いた防錆フィルムシートを用いるため、防錆フィルムの裁断は事前に行うことが可能であり、ホイールの生産ラインに適したスピードで貼付を行うことが可能である。なお、本発明のフィルム貼付装置は、防錆フィルムシートから離型紙を機械的に剥がし取り、防錆フィルムをホイールに貼り付けるものであるが、かかるフィルム貼付装置は、必ずしも防錆フィルムをホイールに密着させる必要はない。すなわち、本発明のフィルム貼付装置は、ホイールの飾り孔を被覆する位置に防錆フィルムを不完全に貼り付けるのみで、その後に手作業や別の装置により、防錆フィルムとホイールとを整一に密着させるような工程を要するものでも構わない。
また、このフィルム貼付装置には、吸着保持装置に保持された防錆フィルムシートの摘み突部近傍内側部位に下底面を被着する押圧部材と、粘着テープと、該粘着テープの接着面を下向きにして、押圧部材の下底面に保持する保持機構とを具備してなる補助剥離装置を備えることが提案される。かかる補助剥離装置を設けることにより、離型装置により摘み突部を下方に引き下げる際に、粘着テープの粘着力により、防錆フィルムの非接着面を押圧部に強く保持可能となり、摘み突部の引き下げにより、摘み突部近傍内側部位に局所的に力を加え、防錆フィルムと離型紙との界面に、好適に開口を生じさせることが可能となる。
さらに、吸着保持装置は、上記貼付用治具のような構成とすることも可能であるが、上述のように、吸気口を下端に備え、該吸気口を上下に移動可能とする吸引端子を、水平方向に複数具備することが望ましい。かかる構成の吸着保持装置にあっては、吸引端子の配列に応じて多様な形状の防錆フィルムシートを保持可能となり、保持した防錆フィルムシートから離型紙を剥がし取り、ホイールの意匠面に対して貼付可能となる。
上記吸引端子を備える吸着保持装置は、吸引端子を多数設ける程、多様な形状・サイズの防錆フィルムを安定的に保持することができるが、防錆フィルムは、通常円形若しくはドーナツ形をなすものであるから、少ない数の吸引端子でより多くのサイズの防錆フィルムをバランスよく保持するために、吸着保持装置の吸引端子を、水平面に沿って放射状に配列することが望ましい。
上述したように、本発明は、上記形状の防錆フィルムシートを引き上げて、平面状に保持する吸着工程と、保持した防錆フィルムシートの摘み突部を挟持して下方へ相対的に引き下げることにより、離型紙を剥がし取る剥離工程と、ホイールの意匠面に防錆フィルムを貼り付ける貼付工程とからなることを特徴とする防錆フィルムの貼付方法であるから、単純な機械的作動の組合せにより、防錆フィルムシートから離型紙を剥がし取り、防錆フィルムをホイールに貼り付けることが可能であり、ホイールへの防錆フィルムの貼付作業を容易に自動化することができる。従って、かかる防錆フィルムの貼付方法では、従来の貼付作業の確実性を向上させ、また作業の省人化が可能となる。また、事前に裁断し、積層した防錆フィルムシートを用いるため、貼付作業の迅速化も可能である。
また、剥離工程を、上記剥離開始工程と主剥離工程とにより行うようにした場合には、摘み突部近傍内側部位を起点として、離型紙を円滑に捲り取ることができる。従って、剥離工程において、防錆フィルムに無理な力がかからず、柔軟な防錆フィルムを傷めることがない。
特に、剥離開始工程において、防錆フィルムの非接着面の摘み突部近傍内側部位に粘着テープを貼付し、該粘着テープの粘着力により防錆フィルムを摘み突部近傍内側部位で保持するようにした場合には、防錆フィルムを吸着により保持するよりも、防錆フィルムを傷めることなく、強固に保持することができるため、摘み突部近傍内側部位において、防錆フィルムと離型紙とを確実に剥離させることができる。
さらに、上記方法にあって、下端に吸気口を備え、該吸気口を上下に移動可能とする吸引端子を水平方向に複数備える吸着保持装置を用いた場合には、かかる吸着保持装置により、種々のサイズの防錆フィルムを吸着保持可能となる。従って、該吸着保持装置のみによりサイズの異なるホイールに対して防錆フィルムを貼り付けることが可能となり、複数種のホイールに防錆フィルムを貼付する場合でも効率的に貼付作業を行うことができる。
また、上述したように、本発明は、上記防錆フィルムシートを積層するフィルム吸着部と、該ホイールに防錆フィルムを貼り付けるフィルム貼付部と、ホイール移送装置と、上方から防錆フィルムを平面状に保持する吸着保持装置と、吸着保持装置を、フィルム吸着部とフィルム貼付部との間で移動させるフィルム送り機構と、摘み突部を挟持する突部把持装置と、摘み突部を挟持した突部把持装置を、防錆フィルムの下方に相対的に引き下げると共に、防錆フィルムに対して相対的に横切る方向へ水平移動させる捲り移動機構とを備えることを特徴とするフィルム貼付装置であるから、上述のフィルム貼付方法を自動的に実行し、フィルム貼付作業を効率的に行うことが可能である。
ここで、フィルム貼付装置に、上記補助剥離装置を備えた場合には、該補助剥離装置により、離型付き防錆フィルムの摘み突部近傍内側部位を上方から保持し、離型紙を捲り取る起点を確実に形成することが可能となる。
さらに、吸着保持装置が、吸気口を下端に備え、該吸気口を上下に移動可能とする吸引端子を、水平方向に複数具備してなる場合には、吸引端子に配列に応じて、多様な形状の防錆フィルムを平面状に保持し、保持する防錆フィルムを、ホイール意匠面の凹凸形状に対して好適に押し付けることが可能となる。特に、各吸引端子を水平面に沿って放射状に配列した場合には、少ない吸引端子で、多様なサイズの防錆フィルムを安定して保持できるため、有用性に富む吸着保持装置を低廉に製造することができる。
本発明の一実施例を添付図面について説明する。
本実施例のフィルム貼付装置1は、図1,2に示すように、防錆フィルムシート2(2a〜2c)を積層してなるフィルム束3(3a〜3c)を載置するフィルム吸着部4と、タイヤ13を組み付けたホイール5を、意匠面19を上向きにして載置するフィルム貼付部6と、防錆フィルム23を吸着し平面状に保持する吸着保持装置7と、該吸着保持装置7をフィルム吸着部4とフィルム貼付部6との間で水平移動させる水平移動装置8等により構成する。また、フィルム貼付装置1には、電子回路を備える制御装置(図示省略)を設け、この制御装置により吸着保持装置7や水平移動装置8等を協調的に作動させる。
本実施例のフィルム貼付装置1で使用する防錆フィルム23は、一側面に接着面が形成された遮水性の樹脂薄膜からなるものであり、該樹脂薄膜の片面に接着剤を塗付して接着面を形成した後、接着面全体に離型紙21を貼付し、これを所定形状に切り抜くことにより、離型紙21の接合した防錆フィルムシート2として製造する。この防錆フィルムシート2は、図2,3に示すように、所定サイズのホイール5の飾り孔17全てを被覆可能なドーナツ形に裁断し、また、その外周縁には、外方に突出する方形状の摘み突部20を形成する。そして、図4に示すように、この摘み突部20の根元付近において防錆フィルム23に横断状に切断し、離型紙21を剥がす起点となる切込部22を形成する。この防錆フィルム23および離型紙21の材質は、従来品と同様のもので構成可能であり、裁断方法や切込部22は公知技術により容易に製造可能である。なお、本実施例では、大きさの異なる3種類の防錆フィルムシート2(2a〜2c)を用意し、径の異なるホイール5に対し、それぞれ対応する防錆フィルム23を貼り付ける。
防錆フィルムシート2(2a〜2c)は、同種類毎に積層し3種類のフィルム束3(3a〜3c)を形成する。各フィルム束3a〜3cは、夫々防錆フィルムシート2を、摘み突部20が積層方向で一致させ、かつ夫々の離型紙21を下に向けるように整一に積層する。そして、これらのフィルム束3a〜3cは、図2に示すように、摘み突部20をフィルム貼付部6に向けるようにして、フィルム吸着部4を横切るように設けられた可動テーブル11上に載置する。この可動テーブル11は、載置したフィルム束3a〜3cを図2中の上下方向に移動可能とし、任意のフィルム束3a〜3cをフィルム吸着部4に位置させることができる。すなわち、ホイール5のサイズに応じて、制御装置が可動テーブル11を作動させることにより、ホイール5に対応したフィルム束3a〜3cをフィルム吸着部4にセットする。また、図1に示すように、可動テーブル11の下方には、防錆フィルム23から剥がされた離型紙21を放出するための離型紙貯留部18を配設する。
一方、図2に示すように、フィルム貼付部6には、該フィルム貼付部6を横切るようにホイール移送装置12を配設する。このホイール移送装置12は、既存のコンベヤ等により構成するものであり、このホイール移送装置12の上に、タイヤ13を組み付けたホイール5を、意匠面19を上向きにして搬送する。すなわち、このホイール移送装置12により、図2中の上方から、ホイール5をフィルム貼付部6まで移送し、防錆フィルム23を貼付したホイール5を、フィルム貼付部6から図2中の下方へ搬出する。そして、このホイール移送装置12を他のコンベヤ等と接続することにより、フィルム貼付装置1は生産ラインに組み込まれる。
水平移動装置8は、図1,2に示すように、フィルム吸着部4とフィルム貼付部6の上方に架渡される金属レール14や、該金属レール14に対して摺動可能に嵌合する連結部40、ボールねじ15とサーボモータ16とからなるサーボ移送機構等により構成するものであり、サーボモータ16の回転により連結部40を金属レール14上の任意位置へ移動可能とする。そして、この連結部40の下部に伸縮可能なシリンダ41を垂設し、かつ該シリンダ41の下端に吸着保持装置7を装着することにより、連結部40の摺動に伴い吸着保持装置7を水平方向に移動させると共に、シリンダ41を上下に伸縮させることにより吸着保持装置7を昇降させる。すなわち、これらの水平移動装置8およびシリンダ41により、本発明に係るフィルム送り機構を構成する。
吸着保持装置7は、図5に示すように、シリンダ41の下端に水平に保持される金属製の円形基盤42と、該円形基盤42の下面に垂設される複数の吸引端子43等により構成する。各吸引端子43は、図6に示すように、円形基盤42に固定される固定筒45と、下端に吸気口44が形成され、該固定筒45に上下に摺動可能に嵌合する可動筒46とで構成する。そして、この吸引端子43の筒内は、円形基盤42に形成した貫通孔47および該貫通孔47に接続したチューブ48を介して真空ポンプ(図示省略)と連通させ、真空ポンプの作動により筒内に陰圧をかけることにより、吸気口44において防錆フィルム23を吸着可能とする。また、固定筒45と可動筒46の間にはコイルバネ37を設け、該コイルバネ37により可動筒46を下方に付勢する。すなわち、吸引端子43をホイール5の意匠面19に押圧した際に、可動筒46がコイルバネ37の付勢力に抗して上方へ摺動し、意匠面19の凹凸形状に合わせて吸気口44の位置を移動させことにより、複雑な凹凸形状に対して、防錆フィルム23を好適に押し付けることが可能となっている。
そして、図7に示すように、上記吸引端子43は、円形基盤42の中心から八方向に向けて三つずつ並べた放射状に配列する。各方向に向けて並べられた三つの吸引端子43は、夫々大きさの異なる防錆フィルムシート2a〜2cのサイズに合わせて設定されており、内外三つの吸引端子43の夫々が、各防錆フィルムシート2a〜2cの周縁と当接するようにする。従って、かかる吸着保持装置7では、用意した三種類の防錆フィルムシート2a〜2c全てを、その周縁部において吸着し、平面状に保持可能となっている。このように、本実施例の吸着保持装置7にあっては、吸引端子43を放射状に配列することにより、各サイズの防錆フィルムシート2a〜2cをその周縁部で吸着保持することができ、少ない数の吸引端子43で防錆フィルムシート2a〜2cを適切に保持可能となっている。
また、図5,7に示すように、円形基盤42の周縁には、方形状の切欠部49を形成し、この切欠部49に補助剥離装置10を装着する。この補助剥離装置10は、防錆フィルムシート2の摘み突部20近傍内側部位に下底面を被着する押圧部材33と、粘着テープ30と、該粘着テープ30の接着面を下向きにして、押圧部材33の下底面に保持する保持機構等を具備してなる。具体的には、保持機構は、モータにより回転駆動される供給用ロール31と巻取用ロール32とからなり、供給用ロール31に巻回する一続きの粘着テープ30を、押圧部材33の下底面を経由して、巻取用ロール32に巻き取るようになっており、モータの作動により両ロール31,32を回転させ、ロール31,32間の粘着テープ30を緊張させることにより、押圧部材33の下底面に、接着面を下向きにした粘着テープ30を保持する。また、押圧部材33は、シリンダ34の作動により昇降可能とし、その下底面を吸着保持装置7の各吸気口44と同じ高さ位置として、その下底面を防錆フィルム23に被着可能とする保持位置aと、下底面を各吸気口44より上方に退避する退避位置bとの間を移動可能とする。さらに、図7に示すように、押圧部材33は、サーボモータ等で構成する移動装置35により円形基盤42の径方向にも移動可能とし、下底面に保持する粘着テープ30を、各防錆フィルムシート2a〜2cの摘み突部20の近傍内側部位に対して接合可能とする。
また、図1に示すように、可動テーブル11の近接位置には、ボールねじやサーボモータ等で構成する垂直移動装置52を垂設し、この垂直移動装置52に、突部把持装置9を昇降可能に装着する。突部把持装置9は、相互に離近する上下一対の顎部51,51を備え、内部に備える電磁石(図示省略)により両顎部51を開閉駆動することで、摘み突部20を上下から挟持可能とする。そして、突部把持装置9は、垂直移動装置52の作動により、吸着保持装置7に保持した防錆フィルムシート2の摘み突部20を挟持する上方の把持位置cと、顎部51を開放して防錆フィルム23から剥がし取った離型紙21を離型紙貯留部18に放出する下方の放出位置dとの間を移動可能となっている。なお、本実施例にあっては、吸着保持装置7を移動させる水平移動装置8と、この垂直移動装置52とが本発明に係る捲り移動機構を構成する。
上記フィルム貼付装置1にあっては、制御装置がサーボモータや真空ポンプ等を協調的に作動させることにより、防錆フィルム23を自動的にホイール5に貼付する。以下に、本実施例にかかる防錆フィルムの貼付方法を説明する。
防錆フィルム23の貼付方法は、大きく分けて、防錆フィルムシート2をフィルム束3から引き上げる吸着工程と、吸着した防錆フィルムシート2から離型紙21を捲り取る剥離工程と、離型紙21を剥がし取った防錆フィルム23をホイール5に貼り付ける貼付工程とからなり、各工程を繰り返すことにより、防錆フィルム23を連続してホイール5に貼り付ける。また、この各工程と並行して、ホイール移送装置12を協調的に作動させ、防錆フィルム23が貼付されたホイール5を搬出すると共に、新しいホイール5をフィルム貼付部6へと供給する。
最初に、吸着工程を説明する。吸着工程では、まず水平移動装置8の作動により、吸着保持装置7をフィルム吸着部4の上方へ移動させる。この状態では、シリンダ41は縮んでおり、真空ポンプは停止している。また、補助剥離装置10の押圧部材33は保持位置aに下降している。そして、かかる状態から、シリンダ41を伸長させて、吸着保持装置7を下降させ、図8に示すように、フィルム吸着部4に載置されたフィルム束3の上面に、吸気口44及び押圧部材33を当接させる。かかる状態では、図7に示すように、円形基盤42と防錆フィルムシート2とが同心円状に重なり、放射状に並んだ各吸気口44が防錆フィルム23の非接着面の周縁部に、等間隔に当接する。また、これと共に押圧部材33は、その下底面を摘み突部20の近傍内側部位に被着させ、下底面に保持した粘着テープ30を当該部位に貼付する。次いで、かかる状態で真空ポンプを作動させ、フィルム束3上面に位置する防錆フィルムシート2を当接する各吸気口44に吸着させる。そして、図8に示すように、シリンダ41を収縮させ、吸着保持装置7を上昇させることにより、フィルム束3上の防錆フィルムシート2を、平面状態を保持したまま上方へ引き上げる。
次に、剥離工程を説明する。剥離工程は、摘み突部20の近傍内側部位において、防錆フィルム23と離型紙21とを剥離させ、離型紙21を捲り取る起点となる開口24を形成する剥離開始工程と、形成した開口24を広げるようにして防錆フィルム23から離型紙21を捲り取る主剥離工程とからなる。
剥離開始工程では、まず、垂直移動装置52を作動させ、突部把持装置9を把持位置cへと上昇させると共に、水平移動装置8を作動させ、吸着保持装置7により保持された防錆フィルムシート2の摘み突部20を、開放した顎部51の間に位置させる。続いて、図9(イ)に示すように、突部把持装置9の両顎部51,51を閉塞し、両顎部51の間に摘み突部20を挟持する。かかる状態では、防錆フィルム23の摘み突部20の近傍内側部位は、押圧部材33の下底面の粘着テープ30と接着し、上方から保持されているため、続いて、垂直移動装置52の作動により突部把持装置9を僅かに下降させると、摘み突部20近傍内側部位に、防錆フィルム23と離型紙21とを分離させる力が局所的に加わり、図9(ロ)に示すように、摘み突部20根元付近の切込部22から防錆フィルム23と離型紙21とが剥離して、摘み突部20近傍内側部位に開口24が生じることとなる。
そして、剥離開始工程に続く主剥離工程では、図10に示すように、垂直移動装置52により突部把持装置9を放出位置dへ下降させ、摘み突部20をさらに引き下げると共に、水平移動装置8により吸着保持装置7をフィルム貼付部6の方向へ移動させ、保持した防錆フィルムシート2を水平移動させる。ここで、かかる工程にあっては、垂直移動装置52と水平移動装置8の動きを同調させることにより、防錆フィルム23に対して、摘み突部20を手作業により離型紙21を剥がし取る際と同様の動きを作り出し、開口24を好適に拡げ、防錆フィルム23に無理な力をかけることなく円滑に離型紙21を捲り取る。
そして、離型紙21を剥がし取った後も、引き続き水平移動装置8を作動させ、吸着保持装置7をフィルム貼付部6上方まで移動させ、貼付工程を行う。なお、補助剥離装置10の押圧部材33は、貼付工程の前に退避位置bへと上昇させると共に、巻取用ロール32を回転させて、粘着テープ30を防錆フィルム23から剥がし取っておく。
貼付工程では、シリンダ41を伸長し、吸着保持装置7を下降させることにより、フィルム貼付部6にセットされたホイール5の意匠面19に対して、保持した防錆フィルム23を押し付ける。これにより、各吸引端子43は、ホイール5の意匠面19の凹凸形状に応じて、下方付勢された可動筒46を上昇させ、各吸気口44により防錆フィルム23の接着面をホイール5の意匠面19へと押圧し、ホイール5の飾り孔17を被覆するように防錆フィルム23を貼り付ける。そして、防錆フィルム23をホイール5に貼付した後、真空ポンプの作動を停止して、防錆フィルム23を吸引端子43の吸着から解放し、貼付工程を終了する。そして、シリンダ41を収縮し、吸着保持装置7を上昇させ、水平移動装置8を作動させることにより、吸着保持装置7を再びフィルム吸着部4側へ復帰させ、再び吸着工程を実行する。
このように、本実施例のフィルム貼付装置1では、かかる工程と、ホイールの搬送を同調して行うことにより、防錆フィルム23を連続してホイール5の意匠面に貼り付けることが可能となっている。また、防錆フィルム23を貼付するホイール5のサイズが変更になった場合には、制御装置が可動テーブル11を移動させ、新しく供給されるホイール5のサイズに対応する大きさの防錆フィルム束3をフィルム吸着部4にセットすると共に、補助剥離装置10の移動装置35を作動させ、防錆フィルムシート2の摘み突部近傍内側部位と接合可能な位置に、押圧部材33を径方向に変位させる。
以上説明したように、本実施例のフィルム貼付装置1においては、上記一連のフィルム貼付方法を実行することにより、防錆フィルムシート2から離型紙21を好適に捲り取って、防錆フィルム23をホイール5に、機械的に、且つ迅速に貼り付けることができる。従って、かかるフィルム貼付装置1を用いることにより、人手と時間を要する防錆フィルム23の貼付作業を、少ない人手で、スピーディに行うことが可能となる。また、上記フィルム貼付装置1は、一つの吸着保持装置7により、複数のサイズの防錆フィルム23を保持し、径の異なるホイール5に対して貼付可能であり、汎用性にも優れる。
なお、本発明は、上記実施例の方法や装置に限定したものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更可能である。例えば、上記フィルム貼付装置1は、防錆フィルム23から離型紙21を剥離させ、ホイール5に貼り付ける作業を機械的に実行可能とするものであるが、本発明の趣旨は、防錆フィルム23を、迅速かつ機械的にホイール5表面に貼り付けるところにあり、フィルム貼付装置は、吸着保持装置7の押圧により、必ずしも防錆フィルム23を完全にホイール5の意匠面19に対して密着させる必要はない。すなわち、吸着保持装置7により防錆フィルム23を貼付した後に、手作業や他の装置により、ホイール5と防錆フィルム23とを、さらに密着させる作業等を要するものであっても構わない。
また、実施例のフィルム貼付装置1においては、水平移動装置8と垂直移動装置52との協調した動きにより、摘み突部20を防錆フィルム23に対して相対的に移動させ、離型紙21を円滑に捲り取る動きを実現しているが、本発明にかかるフィルム貼付装置では、防錆フィルム23を上下方向に、突部把持装置9を水平方向に動かすようにしても構わないし、摘み突部20を移動させるのにロボットアーム等を用いることも可能である。