誘導加熱方式の定着装置は、以上のように優れているが、立上り時間の面では、従来より改善できたとは言え、まだ充分とはいえない。誘導加熱動作及び定着ローラ回転開始してから、定着ニップ部の温度が定着可能な或る程度一定の温度になるまでに時間がかかるためである。このことは、加熱対象物の熱容量が小さいがために、待機時に誘導加熱動作や定着ローラの回転を停止してしまうと、装置全体がすぐに冷えてしまうためである。従って、誘導加熱動作及び定着ローラの回転を開始すると、誘導加熱部からベルトを介して熱が定着ニップ部に伝達されるが、最初は冷たい定着ニップ部に熱を奪われてなかなか温度が一定にならないという問題がある。
本発明の目的は、誘導加熱方式に関して、定着待機時から定着動作に移る際に、定着ニップ部の温度を速やかに定着可能な温度に立上げることができ、ファーストコピーやファーストプリントの時間を短縮させることである。
請求項1記載の発明の定着制御装置は、少なくとも回転駆動される回転部材を含む定着用被加熱部材と、前記回転部材を回転させる回転駆動源と、前記定着用被加熱部材を誘導加熱する誘導加熱手段と、前記回転部材に対向接触して定着ニップ部を形成する加圧ローラと、前記定着ニップを形成する前記回転部材又は前記加圧ローラの少なくとも一方の内部に配設された棒状ヒータと、定着装置が定着を行わない待機中には前記棒状ヒータに通電させて前記定着ニップ部を加熱させる待機時保温用加熱制御手段と、を備える。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の定着制御装置において、前記待機時保温用加熱制御手段は、前記回転駆動源により前記回転部材を回転させながら前記棒状ヒータに通電させる。
請求項3記載の発明の定着制御装置は、少なくとも回転駆動される回転部材を含む定着用被加熱部材と、前記回転部材を回転させる回転駆動源と、前記定着用被加熱部材を誘導加熱する誘導加熱手段と、前記回転部材に対向接触して定着ニップ部を形成する加圧ローラと、定着装置が定着を行わない待機中には前記回転部材を停止状態に維持させる待機時停止制御手段と、1枚目の定着動作時には2枚目以降の定着動作時よりも前記誘導加熱手段により前記定着用被加熱部材に供給される単位長さ当りの熱量を大きくする動作開始時加熱制御手段と、を備える。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の定着制御装置において、前記動作開始時加熱制御手段は、前記回転駆動源により回転駆動させる前記回転部材の回転速度を1枚目の定着動作時だけ2枚目以降の定着動作時よりも低速とさせる。
請求項5記載の発明は、請求項3記載の定着制御装置において、前記動作開始時加熱制御手段は、前記誘導加熱手段により誘導加熱させる前記定着用被加熱部材の誘導加熱量を1枚目の定着動作時だけ2枚目以降の定着動作時よりも大きくさせる。
請求項6記載の発明は、請求項3記載の定着制御装置において、前記動作開始時加熱制御手段は、前記回転駆動源により回転駆動させる前記回転部材の回転速度を1枚目の定着動作時だけ2枚目以降の定着動作時よりも低速とさせ、かつ、前記誘導加熱手段により誘導加熱させる前記定着用被加熱部材の誘導加熱量を1枚目の定着動作時だけ2枚目以降の定着動作時よりも大きくさせる。
請求項7記載の発明の定着制御装置は、少なくとも回転駆動される回転部材を含む定着用被加熱部材と、前記回転部材を回転させる回転駆動源と、前記定着用被加熱部材を誘導加熱する誘導加熱手段と、前記回転部材に対向接触して定着ニップ部を形成する加圧ローラと、定着装置が定着を行わない待機中には前記回転部材を停止状態に維持させる待機時停止制御手段と、定着動作開始直前に前記回転部材を回転させながら定着動作時よりも前記誘導加熱手段により前記定着用被加熱部材に供給される単位長さ当りの熱量を大きくする動作開始直前加熱制御手段と、を備える。
請求項8記載の発明は、請求項7記載の定着制御装置において、前記動作開始直前加熱制御手段は、前記回転駆動源により回転駆動させる前記回転部材の回転速度を少なくとも定着動作開始直前には2枚目以降の定着動作時よりも低速とさせる。
請求項9記載の発明は、請求項7記載の定着制御装置において、前記動作開始直前加熱制御手段は、前記誘導加熱手段により誘導加熱させる前記定着用被加熱部材の誘導加熱量を少なくとも定着動作開始直前には2枚目以降の定着動作時よりも大きくさせる。
請求項10記載の発明は、請求項7記載の定着制御装置において、前記動作開始直前加熱制御手段は、前記回転駆動源により回転駆動させる前記回転部材の回転速度を少なくとも定着動作開始直前には2枚目以降の定着動作時よりも低速とさせ、かつ、前記誘導加熱手段により誘導加熱させる前記定着用被加熱部材の誘導加熱量を少なくとも定着動作開始直前には2枚目以降の定着動作時よりも大きくさせる。
請求項11記載の発明の画像形成装置は、誘導加熱方式で加熱される定着用被加熱部材を有する定着装置、感光体、その他の電子写真プロセス部材を含むプリンタエンジンと、前記定着用被加熱部材を制御する請求項1ないし10の何れか一記載の定着制御装置と、を備える。
請求項12記載の発明は、少なくとも回転駆動される回転部材を含む定着用被加熱部材と、前記回転部材を回転させる回転駆動源と、前記定着用被加熱部材を誘導加熱する誘導加熱手段と、前記回転部材に対向接触して定着ニップ部を形成する加圧ローラと、前記定着ニップを形成する前記回転部材又は前記加圧ローラの少なくとも一方の内部に配設された棒状ヒータと、を備える定着装置の定着制御方法であって、前記定着装置が定着を行わない待機中には前記棒状ヒータに通電させて前記定着ニップ部を加熱させる待機時保温用加熱制御工程を備える。
請求項13記載の発明は、請求項12記載の定着装置の定着制御方法において、前記待機時保温用加熱制御工程は、前記回転駆動源により前記回転部材を回転させながら前記棒状ヒータに通電させる。
請求項14記載の発明は、少なくとも回転駆動される回転部材を含む定着用被加熱部材と、前記回転部材を回転させる回転駆動源と、前記定着用被加熱部材を誘導加熱する誘導加熱手段と、前記回転部材に対向接触して定着ニップ部を形成する加圧ローラと、を備える定着装置の定着制御方法であって、前記定着装置が定着を行わない待機中には前記回転部材を停止状態に維持させる待機時停止制御工程と、1枚目の定着動作時には2枚目以降の定着動作時よりも前記誘導加熱手段により前記定着用被加熱部材に供給される単位長さ当りの熱量を大きくする動作開始時加熱制御工程と、を備える。
請求項15記載の発明は、請求項14記載の定着装置の定着制御方法において、前記動作開始時加熱制御工程は、前記回転駆動源により回転駆動させる前記回転部材の回転速度を1枚目の定着動作時だけ2枚目以降の定着動作時よりも低速とさせる。
請求項16記載の発明は、請求項14記載の定着装置の定着制御方法において、前記動作開始時加熱制御工程は、前記誘導加熱手段により誘導加熱させる前記定着用被加熱部材の誘導加熱量を1枚目の定着動作時だけ2枚目以降の定着動作時よりも大きくさせる。
請求項17記載の発明は、請求項14記載の定着装置の定着制御方法において、前記動作開始時加熱制御工程は、前記回転駆動源により回転駆動させる前記回転部材の回転速度を1枚目の定着動作時だけ2枚目以降の定着動作時よりも低速とさせ、かつ、前記誘導加熱手段により誘導加熱させる前記定着用被加熱部材の誘導加熱量を1枚目の定着動作時だけ2枚目以降の定着動作時よりも大きくさせる。
請求項18記載の発明は、少なくとも回転駆動される回転部材を含む定着用被加熱部材と、前記回転部材を回転させる回転駆動源と、前記定着用被加熱部材を誘導加熱する誘導加熱手段と、前記回転部材に対向接触して定着ニップ部を形成する加圧ローラと、を備える定着装置の定着制御方法であって、前記定着装置が定着を行わない待機中には前記回転部材を停止状態に維持させる待機時停止制御工程と、定着動作開始直前に前記回転部材を回転させながら定着動作時よりも前記誘導加熱手段により前記定着用被加熱部材に供給される単位長さ当りの熱量を大きくする動作開始直前加熱制御工程と、を備える。
請求項19記載の発明は、請求項18記載の定着装置の定着制御方法において、前記動作開始直前加熱制御工程は、前記回転駆動源により回転駆動させる前記回転部材の回転速度を少なくとも定着動作開始直前には2枚目以降の定着動作時よりも低速とさせる。
請求項20記載の発明は、請求項18記載の定着装置の定着制御方法において、前記動作開始直前加熱制御工程は、前記誘導加熱手段により誘導加熱させる前記定着用被加熱部材の誘導加熱量を少なくとも定着動作開始直前には2枚目以降の定着動作時よりも大きくさせる。
請求項21記載の発明の定着制御装置は、請求項18記載の定着装置の定着制御方法において、前記動作開始直前加熱制御工程は、前記回転駆動源により回転駆動させる前記回転部材の回転速度を少なくとも定着動作開始直前には2枚目以降の定着動作時よりも低速とさせ、かつ、前記誘導加熱手段により誘導加熱させる前記定着用被加熱部材の誘導加熱量を少なくとも定着動作開始直前には2枚目以降の定着動作時よりも大きくさせる。
請求項1,12記載の発明によれば、回転部材か加圧ローラに棒状ヒータを備えるタイプに関して、定着を行わない待機中には棒状ヒータに通電させて定着ニップ部を加熱させるので、待機中に定着ニップ部を含めて適切な温度に保つことができ、定着開始時に加圧ローラ等によって大きな熱量を奪われることがなく、短時間で定着動作に移行させることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。特に、請求項2,13記載の発明によれば、回転部材や加圧ローラを回転させながら棒状ヒータに通電するので、定着ニップ部の温度管理が適正となる。
請求項3,14記載の発明によれば、定着待機時には回転部材を停止させておくことにより待機時の熱量や動力を不要にすることができ、かつ、1枚目の定着動作時に要する単位長さ当りの熱量を2枚目以降よりも大きくすることで、停止状態にあった定着ニップ部の温度を1枚目の定着動作中に素早く定着に必要な温度に立上げることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。
請求項4,15記載の発明によれば、その具体例として、1枚目の定着動作時の回転部材の回転速度を低速にすることにより、容易に実現することができる。
請求項5,16記載の発明によれば、その具体例として、1枚目の定着動作時の誘導加熱量を大きくすることにより、容易に実現することができる。
請求項6,17記載の発明によれば、その具体例として、1枚目の定着動作時の回転部材の回転速度を低速にし、かつ、1枚目の定着動作時の誘導加熱量を大きくすることにより、容易に実現することができる。
請求項7,18記載の発明によれば、定着待機時には回転部材を停止させておくことにより待機時の熱量や動力を不要にすることができ、かつ、定着動作開始直前に回転部材を回転させるとともに単位長さ当りの熱量を定着動作時よりも大きくすることで、停止状態にあった定着ニップ部の温度を1枚目の定着動作前に素早く定着に必要な温度に立上げることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。
請求項8,19記載の発明によれば、その具体例として、定着動作開始直前の回転部材の回転速度を低速にすることにより、容易に実現することができる。
請求項9,20記載の発明によれば、その具体例として、定着動作開始直前の誘導加熱量を大きくすることにより、容易に実現することができる。
請求項10,21記載の発明によれば、その具体例として、定着動作開始直前の回転部材の回転速度を低速にし、かつ、定着動作開始直前の誘導加熱量を大きくすることにより、容易に実現することができる。
請求項11記載の発明によれば、請求項1ないし10記載の発明と同様の効果を奏する画像形成装置を提供することができる。
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明が適用される電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略正面図である。この画像形成装置は、複写機能と、これ以外の機能、例えばプリンタ機能、ファクシミリ機能とを有する画像形成装置であり、操作部のアプリケーション切替えキーにより複写機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能を順次に切替えて選択することが可能である。複写機能の選択時には複写モードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリントモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
まず、複写モードでは、次のように動作する。自動原稿送り装置(以下ADFという)101においては、原稿台102に原稿がその画像面を上にして置かれる原稿束は、操作部上のスタートキーが押下されると、一番下の原稿が給紙ローラ103、給送ベルト104によってコンタクトガラスからなる原稿台105上の所定の位置に給送される。ADF101は1枚の原稿の給送完了毎に原稿枚数をカウントアップするカウント機能を有する。原稿台105上の原稿は、画像入力手段としての画像読取装置106によって画像情報が読取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。
原稿セット検知器109にて原稿台102上に次の原稿が有ることが検知された場合には、同様に原稿台102上の一番下の原稿が給紙ローラ103、給送ベルト104によって原稿台105上の所定の位置に給送される。この原稿台105上の原稿は、画像読取装置106によって画像情報が読み取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。ここに、給紙ローラ103、給送ベルト104及び排送ローラ107は搬送モータによって駆動される。
給紙手段としての第1給紙装置110、第2給紙装置111、第3給紙装置112は、選択された時に各々第1トレイ113、第2トレイ114、第3トレイ115に積載された転写材としての転写紙を給紙し、この転写紙は縦搬送ユニット116によって感光体117に当接する位置まで搬送される。感光体117は、ドラム状感光体が用いられており、メインモータにより回転駆動される。
画像読取装置106にて原稿から読込まれた画像データは図示しない画像処理手段を介して書込手段としての書込みユニット118によって光情報に変換され、感光体117は図示しない帯電器により一様に帯電された後に、書込みユニット118からの光情報で露光されて静電潜像が形成される。この感光体117上の静電潜像は現像装置119により現像されてトナー像となる。
搬送ベルト120は、用紙搬送手段及び転写手段を兼ねていて電源から転写バイアスが印加され、縦搬送ユニット116からの転写紙を感光体117と等速で搬送しながら感光体117上のトナー像を転写紙に転写させる。この転写紙は、定着装置121によりトナー像が定着され、排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。感光体117はトナー像転写後に図示しないクリーニング装置によりクリーニングされる。ここに、感光体117、帯電器、書込みユニット118、現像装置119、転写手段は画像データにより画像を転写紙上に形成するプリンタエンジンを構成している。
以上の動作は通常のモードで用紙の片面に画像を複写する時の動作であるが、両面モードで転写紙の両面に画像を複写する場合には、各給紙トレイ113〜115の何れかより給紙されて表面に上述のように画像が形成された転写紙は、排紙ユニット122により排紙トレイ123側ではなく両面入紙搬送路124側に切替えられ、反転ユニット125によりスイッチバックされて表裏が反転され、両面搬送ユニット126へ搬送される。
この両面搬送ユニット126へ搬送された転写紙は、両面搬送ユニット126により縦搬送ユニット116へ搬送され、縦搬送ユニット116により感光体117に当接する位置まで搬送され、感光体117上に上述と同様に形成されたトナー像が裏面に転写されて定着装置121でトナー像が定着されることにより両面コピーとなる。この両面コピーは排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。
また、転写紙を反転して排出する場合には、反転ユニット125によりスイッチバックされて表裏が反転された転写紙は、両面搬送ユニット126に搬送されずに反転排紙搬送路127を経て排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。
プリントモードでは、上記画像処理手段からの画像データの代りに外部からの画像データが書込みユニット118に入力されて上述のプリンタエンジンにより転写紙上に画像が形成される。さらに、ファクシミリモードでは、上記画像読取手段からの画像データが図示しないファクシミリ送受信部により相手に送信され、相手からの画像データがファクシミリ送受信部で受信されて上記画像処理手段からの画像データの代りに書込みユニット118に入力されることにより、上述のプリンタエンジンにより転写紙上に画像が形成される。
次に定着装置121の構成例について図2を参照して説明する。図2は定着装置121の概略構成例を示す正面図である。本実施の形態の定着装置121は誘導加熱方式の定着装置として構成されている。まず、通常のハロゲンヒータ方式等と同様に転写紙の搬送経路に対して、トナーの転写された転写紙上のトナーを加熱溶解して転写紙上に定着させるための定着ローラ201とこの定着ローラ201に対向配置されて定着ニップ部を形成し転写紙に圧力をかけてトナーを定着させるための加圧ローラ202とが設けられている。また、定着ローラ201から離間した位置には加熱ローラ203が設けられ、これらの加熱ローラ203と定着ローラ201との間には定着ベルト(耐熱性ベルト)204が掛け渡されている。この定着ベルト204は励磁コイル(以下、適宜IHコイルともいう)205によって誘導加熱されるものであり、加熱金属部(金属導電体)、非熱伝導部当を含む数層構造からなる。誘導加熱手段としての励磁コイル205は定着ベルト204を渦電流で誘導加熱するためのもので、本実施の形態では、外部加熱方式とされ、加熱ローラ203部分にてその外周面を半周程度覆う形状の基体206において渦巻状にコイルが巻回された構造とされている。このような励磁コイル205は後述するインバータ回路により任意の周波数特性を持った電流が通電され、その電流により発生した磁束を受けて加熱ローラ203には渦電流が流れ加熱される。この加熱ローラ203の熱が回転移動する定着ベルト204に伝達され、その熱と定着ローラ201、加圧ローラ202間の定着ニップ部におけるニップ圧力により定着ローラ201と加圧ローラ202との間を回転方向に進む転写紙上のトナーは転写紙に定着される。
また、定着ベルト204の温度は常に近接したサーミスタ(温度センサ)207により監視され、制御温度に対して低ければIHコイル205への電流供給は継続され、高ければ供給を停止する。温度制御は後述する本体制御回路で行なわれるが、制御不能で過昇温度になった場合はサーモスタット208により直接電源を遮断する安全装置も実装されている。
定着ローラ201は定着モータ(回転駆動源)209により回転駆動され、定着ベルト204はその動力により移動回転する。加熱ローラ203は定着ベルト204の移動により懸架駆動し回転する従動ローラである。
また、加熱ローラ203の軸上には、定着ベルト204が回転していることを検知するためのエンコーダ(回転検知センサ)210が設けられており、定着ローラ201を回転させているにも関わらず加熱ローラ203が回転しない場合には、ベルト切れ、或いは、ベルト滑りと判断し、インバータ回路の動作を遮断させることで励磁コイル205でのベルト異常温度上昇による焼損を防止し得る構成とされている。
もっとも、誘導加熱方式の定着装置121としては、図示したような外部加熱方式に限らず、各種方式があり、例えば定着ローラ内に励磁コイルが内蔵されているタイプの内部加熱方式等のものであってもよい。
次に、定着ベルト204や励磁コイル205やサーミスタ207等に対する制御系、即ち、定着制御装置の構成例を図3に示す概略ブロック図を参照して説明する。励磁コイル205を使用した誘導加熱方式の定着装置121の制御は定着制御基板301が受持つ。この定着制御基板301に搭載されて定着制御全体を受持つCPU302は内蔵のROMに書き込まれたプログラムによって温度制御、異常検出、駆動制御などを行う。また、このCPU302には制御用のあらゆるデータを格納するRAMも内蔵されている。これらのROM、RAMは外部素子の場合もある。
CPU302はA/Dコンバータ303を介してサーミスタ207により定着ベルト204の温度を常に取得することが可能とされている。また、CPU302はI/Oドライバ304を介してエンコーダ210の信号を取得することにより加熱ローラ203の回転状態を認識することができる。さらに、CPU302はI/Oドライバ305を介して定着ローラ201の回転駆動を行う定着モータ209のON/OFF制御や速度制御を行うこともできる。一方、CPU302はPWM制御回路306を介して必要なパルスを発生させ、そのパルスに連動して励磁駆動回路としてのインバータ回路307は誘導コイル205にパルス電流を供給し、誘導コイル205に誘導現象を起こさせて加熱させることができる。即ち、インバータ回路307は交流電源を全波整流した後、IGBTやFET等のスイッチング制御素子によって高周波スイッチングした電流をコイル電流として励磁コイル205とコンデンサ(図示せず)とに供給し共振させることによって交流磁界を作り、定着ベルト204を渦電流で加熱する。
CPU302はサーミスタ207により定着ベルト204の温度を常時監視しながらPWM制御回路306を通じてインバータ回路307の駆動、停止動作を制御することで必要な温度に保つ制御を行う。但し、故障など異常状態で制御不能となり定着ベルト204が高温異常になった場合は近接されたサーモスタット208により電流供給は遮断される。サーモスタット208は異常高温により定着装置が発煙や発火などに至らないような温度定格のものを選定する。
このような構成において、まず、図4に、定着ローラ201を回転駆動する定着モータ209と加熱ローラ203の回転を監視するエンコーダ210と誘導コイル205にパルス電流を供給するインバータ回路307と定着ベルト204の温度を監視するサーミスタ207の各々の正常な信号波形のタイムチャートを示す。
定着モータ209をONすると同時にインバータ回路307はパルス電流を発生し、サーミスタ207は徐々に温度の上昇を検出している。サーミスタ207が目標温度に到達すると、インバータ回路307はパルス電流の生成を停止しているが、定着モータ209の回転、エンコーダ210のパルス検出は継続されている。サーミスタ207が或る温度まで下がったことが検出されるとインバータ回路307は再びパルス電流を発生し、励磁コイル205に供給する。その結果、サーミスタ207の検出温度は再び上昇を始める。この繰返しにより定着ベルト204は目標温度に近い温度で常に制御されることとなる。そして、定着モータ209をOFFさせると同時にインバータ回路307のパルス電流の生成も停止し、エンコーダ210はパルスの入力がなくなる。また、サーミスタ207の検知出力も次第に温度が下降されたデータとなる。
このような構成において、参考の形態では、定着動作を行わない待機中の定着装置121に対する動作制御に特徴があり、CPU302により実行されるその動作制御例を図5に示す概略フローチャートを参照して説明する。電源投入状態にあって、CPU302に対してコピー命令やプリント命令がない状態が待機状態である。CPU302は、常に待機中であるか否かを監視しており(ステップS1)、定着を行わない待機中であれば(S1のY)、定着ローラ201と加圧ローラ202とによる定着ニップ部の保温の目的で、定着モータ209により定着ローラ201を回転させ(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)、かつ、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S2)。この場合の誘導加熱量は、待機中であって実際に通紙されず転写紙により熱が奪われず、かつ、待機中であり定着ニップ部の温度を定着可能温度に維持する必要はないため、通常の定着動作時の誘導加熱量よりも低くてよい。要は、待機中のこのような保温目的の加熱により、定着開始時に励磁コイル205により加熱された定着ベルト204が定着ニップ部に移動した際に、加圧ローラ202等により熱が奪われても定着に支障がない程度の温度にこの定着ニップ部がなっていればよい。このようなステップS2の処理が待機時保温用加熱制御手段、待機時保温用加熱制御工程として実行される。待機中はこのような動作が繰返される。
その後、コピー命令やプリント命令が発行され、待機中でなくなると(S1のN)、画像形成動作等に続く定着開始まで待機し(S3のY)、定着動作の開始時には、定着モータ209による定着ローラ201の回転を継続させるとともに(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S4)。この場合は、本来の定着動作であり、通常の誘導加熱量で誘導加熱させる。この処理においては、サーミスタ207による検知情報に基づき目標とする定着温度状態にあるかを常に監視し(S5)、目標の定着温度状態で定着動作を実行させる(S6,S7)。
待機中に励磁コイル205を動作させず(誘導加熱せず)、かつ、各ローラ201,202,203も停止状態にすると、定着動作開始時に定着ニップ部の温度が定着可能になるまでに、各ローラ201,202,203や定着ベルト204を何周も回す必要があり、ファーストコピーやファーストプリントに時間がかかってしまうが、本参考の形態によれば、待機中に各ローラ201,202,203を回転させるとともに、励磁コイル5を通常よりも低い誘導加熱量で駆動させて、定着ニップ部の保温状態を確保しているので、定着動作開始時には定着ニップ部での温度落ち込みがないのでそのまま即座に定着動作に移行させることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。
定着装置121に対する動作制御に関する第一の実施の形態を図6及び図7を参照して説明する。参考の形態で示した部分と同一部分は同一符号を用いて示し、説明も省略する(以降の実施の形態でも同様とする)。
本実施の形態の定着装置121も基本的には前述したような構成とされているが、特に、本実施の形態は、定着ニップ部の温度の安定化等の目的で、定着ローラ201中にハロゲンヒータ等の棒状ヒータ211が内蔵されたタイプへの適用例である。この棒状ヒータ211は、その目的からして、定着ニップ部に近い配置が好ましい。また、このような棒状ヒータ211は仮想線で示すように加圧ローラ202側に内蔵されていてもよい。このような棒状ヒータ211は、特に図示しないが、誘導コイル205の場合と同様に、ヒータ通電回路により通電制御される。
本実施の形態の場合、CPU302により実行されるその動作制御例を図7に示す概略フローチャートを参照して説明する。CPU302は、常に待機中であるか否かを監視しており(ステップS11)、定着を行わない待機中であれば(S11のY)、定着ローラ201と加圧ローラ202とによる定着ニップ部の保温の目的で、棒状ヒータ211に通電し主に定着ニップ部付近を加熱温度制御する(S12)。この際、本実施の形態では、定着モータ209により定着ローラ201を回転させるが(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)、これらのローラ201,202,203は停止状態であってもよい。もっとも、回転させながら棒状ヒータ211により加熱したが、定着ニップ部の温度管理が適正となる。また、この場合の棒状ヒータ211の通電制御方法は、特に問わず、特に温度制御しないで通電しっぱなしとする通電方法や、バイメタルやサーモスタットを用いた自動温度制御を伴う通電方法や、サーミスタ等で温度をフィードバックさせる帰還温度制御を伴う通電方法等を適宜用い得る。このようなステップS12の処理が待機時保温用加熱制御手段、待機時保温用加熱制御工程として実行される。待機中はこのような動作が繰返される。
その後、コピー命令やプリント命令が発行され、待機中でなくなると(S11のN)、画像形成動作等に続く定着開始まで待機し(S13のY)、定着動作の開始時には、定着モータ209による定着ローラ201の回転を継続させるとともに(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)、励磁コイル205に誘導加熱量で通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S14)。この処理においては、サーミスタ207による検知情報に基づき目標とする定着温度状態にあるかを常に監視し(S15)、目標の定着温度状態で定着動作を実行させる(S16,S17)。
従って、本実施の形態による場合も、待機中には棒状ヒータ211に通電して定着ニップ部を保温しておくので、定着動作開始時には定着ニップ部での温度落ち込みがないのでそのまま即座に定着動作に移行させることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。
定着装置121に対する動作制御に関する第二の実施の形態を図8を参照して説明する。図8はその動作制御例を示す概略フローチャートである。
CPU302は、常に待機中であるか否かを監視しており(ステップS21)、定着を行わない待機中であれば(S21のY)、定着モータ209を停止させることにより各ローラ201,202,203を停止状態に維持するとともに、励磁コイル205にも通電せず誘導加熱(IH加熱)停止状態とする(S22)。これにより、待機中には、動力や電力の消費が抑えられる。このステップS22の処理が待機時停止制御手段、待機時停止制御工程として実行される。
その後、コピー命令やプリント命令が発行され、待機中でなくなると(S21のN)、画像形成動作等に続く定着開始まで待機し(S23のY)、定着動作の開始時には、その動作が1枚目の定着動作であるか2枚目以降の定着動作であるかを判断する(S24)。1枚目であれば(S24のY)、待機時直後であるので、定着モータ209により定着ローラ201を回転させる(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)とともに、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S25)ことで定着動作を実行する。この際、ローラ201,202,203の回転速度を通常の定着動作時の回転速度よりも低速とする。この結果、誘導コイル205により誘導加熱される定着ベルト204等の単位長さ当りの熱量が通常の定着動作時よりも大きくなり、待機時直後であっても十分に加熱されることとなる。このステップS25の処理が動作開始時加熱制御手段、動作開始時加熱制御工程として実行される。
その後、2枚目以降の定着動作があれば(S27のY)、定着モータ209によりローラ201,202,203を通常の回転速度で駆動させながら、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S26)ことで定着動作を実行する。この場合には、直前に1枚目或いはそれ以降の定着動作が行われ、定着ニップ部の温度落ち込みが少ないので、通常動作制御で済む。
本実施の形態によれば、待機中の動力や熱量の消費を抑え省エネを図るために、待機中にはローラ201,202,203は停止させ、かつ、誘導コイル205への通電も停止状態とするが、待機時直後の1枚目の定着動作時には定着モータ209によりローラ201,202,203の回転速度を通常の定着動作時よりも低速として、単位長さ当りの熱量が大きくなるように誘導加熱するので、待機時直後であっても十分に加熱することができ、結局、停止状態にあった定着ニップ部の温度を1枚目の定着動作中に素早く定着に必要な温度に立上げることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。
定着装置121に対する動作制御に関する第三の実施の形態を図9を参照して説明する。図9はその動作制御例を示す概略フローチャートである。
CPU302は、常に待機中であるか否かを監視しており(ステップS31)、定着を行わない待機中であれば(S31のY)、定着モータ209を停止させることにより各ローラ201,202,203を停止状態に維持するとともに、励磁コイル205にも通電せず誘導加熱(IH加熱)停止状態とする(S32)。これにより、待機中には、動力や電力の消費が抑えられる。このステップS32の処理が待機時停止制御手段、待機時停止制御工程として実行される。
その後、コピー命令やプリント命令が発行され、待機中でなくなると(S31のN)、画像形成動作等に続く定着開始まで待機し(S33のY)、定着動作の開始直前の動作制御として、定着モータ209により定着ローラ201を回転させる(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)とともに、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S34)。この際、ローラ201,202,203の回転速度を通常の定着動作時の回転速度よりも低速とする。この結果、誘導コイル205により誘導加熱される定着ベルト204等の単位長さ当りの熱量が通常の定着動作時よりも大きくなり、待機時直後であっても十分に加熱されることとなる。このステップS34の処理が動作開始直前加熱制御手段、動作開始直前加熱制御工程として実行される。
その後、定着温度に達し(S35)、実際の定着動作時となると、定着モータ209によりローラ201,202,203を通常の回転速度で駆動させながら、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S36)ことで定着動作を実行する。この場合に、直前或いはそれ以降の定着動作が行われ、定着ニップ部の温度落ち込みが少ないので、通常動作制御で済む。
即ち、本実施の形態では、ローラ201,202,203の回転速度を通常の定着動作時よりも遅くした状態で、これらのローラ201,202,203を1回転又は数回転させて定着ニップ部の温度が定着可能な温度に達した時点で定着動作を開始させるようにしたものである。この際、1枚目の定着動作におけるローラ201,202,203の回転速度は通常の定着動作時と同じとしてもよく、前述の実施の形態の場合と同様に、2枚目以降の定着動作時よりも遅くしてもよい。
従って、本実施の形態によれば、定着待機時にはローラ201,202,203を停止させておくことにより待機時の熱量や動力を不要にすることができ、かつ、定着動作開始直前にこれらのローラ201,202,203を回転させるとともに単位長さ当りの熱量を定着動作時よりも大きくすることで、停止状態にあった定着ニップ部の温度を1枚目の定着動作前に素早く定着に必要な温度に立上げることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。この場合、その具体例として、定着動作開始直前のローラ201,202,203の回転速度を低速にすることにより、容易に実現することができる。
定着装置121に対する動作制御に関する第四の実施の形態を図10を参照して説明する。図10はその動作制御例を示す概略フローチャートである。
CPU302は、常に待機中であるか否かを監視しており(ステップS41)、定着を行わない待機中であれば(S41のY)、定着モータ209を停止させることにより各ローラ201,202,203を停止状態に維持するとともに、励磁コイル205にも通電せず誘導加熱(IH加熱)停止状態とする(S42)。これにより、待機中には、動力や電力の消費が抑えられる。このステップS22の処理が待機時停止制御手段、待機時停止制御工程として実行される。
その後、コピー命令やプリント命令が発行され、待機中でなくなると(S41のN)、画像形成動作等に続く定着開始まで待機し(S43のY)、定着動作の開始時には、その動作が1枚目の定着動作であるか2枚目以降の定着動作であるかを判断する(S44)。1枚目であれば(S44のY)、待機時直後であるので、定着モータ209により定着ローラ201を回転させる(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)とともに、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S45)ことで定着動作を実行する。この際、ローラ201,202,203の回転速度は通常の定着動作時の回転速度とするが、励磁コイル205による誘導加熱量は通常の定着動作時の誘導加熱量よりも大きくする。この結果、誘導コイル205により誘導加熱される定着ベルト204等の単位長さ当りの熱量が通常の定着動作時よりも大きくなり、待機時直後であっても十分に加熱されることとなる。このステップS25の処理が動作開始時加熱制御手段、動作開始時加熱制御工程として実行される。
その後、2枚目以降の定着動作があれば(S47のY)、定着モータ209によりローラ201,202,203を通常の回転速度で駆動させながら(継続)、励磁コイル205に通常の誘導加熱量となるように通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S46)ことで定着動作を実行する。この場合には、直前に1枚目或いはそれ以降の定着動作が行われ、定着ニップ部の温度落ち込みが少ないので、通常動作制御で済む。
本実施の形態によれば、待機中の動力や熱量の消費を抑え省エネを図るために、待機中にはローラ201,202,203は停止させ、かつ、誘導コイル205への通電も停止状態とするが、待機時直後の1枚目の定着動作時には励磁コイル205に対する誘導加熱量を通常の定着動作時よりも大きくすることで、単位長さ当りの熱量が大きくなるように誘導加熱するので、待機時直後であっても十分に加熱することができ、結局、停止状態にあった定着ニップ部の温度を1枚目の定着動作中に素早く定着に必要な温度に立上げることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。
定着装置121に対する動作制御に関する第五の実施の形態を図11を参照して説明する。図11はその動作制御例を示す概略フローチャートである。
CPU302は、常に待機中であるか否かを監視しており(ステップS51)、定着を行わない待機中であれば(S51のY)、定着モータ209を停止させることにより各ローラ201,202,203を停止状態に維持するとともに、励磁コイル205にも通電せず誘導加熱(IH加熱)停止状態とする(S52)。これにより、待機中には、動力や電力の消費が抑えられる。このステップS32の処理が待機時停止制御手段、待機時停止制御工程として実行される。
その後、コピー命令やプリント命令が発行され、待機中でなくなると(S51のN)、画像形成動作等に続く定着開始まで待機し(S53のY)、定着動作の開始直前の動作制御として、定着モータ209により定着ローラ201を回転させる(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)とともに、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S54)。この際、ローラ201,202,203の回転速度は通常の定着動作時の回転速度とするが、励磁コイル205による誘導加熱量は通常の定着動作時の誘導加熱量よりも大きくする。この結果、誘導コイル205により誘導加熱される定着ベルト204等の単位長さ当りの熱量が通常の定着動作時よりも大きくなり、待機時直後であっても十分に加熱されることとなる。このステップS54の処理が動作開始直前加熱制御手段、動作開始直前加熱制御工程として実行される。
その後、定着温度に達し(S55)、実際の定着動作時となると、定着モータ209によりローラ201,202,203を通常の回転速度で駆動させながら、励磁コイル205に通常の誘導加熱量で通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S56)ことで定着動作を実行する。この場合に、直前或いはそれ以降の定着動作が行われ、定着ニップ部の温度落ち込みが少ないので、通常動作制御で済む。
即ち、本実施の形態では、励磁コイル205に対する誘導加熱量を通常の定着動作時よりも大きくした状態で、ローラ201,202,203を1回転又は数回転させて定着ニップ部の温度が定着可能な温度に達した時点で定着動作を開始させるようにしたものである。この際、1枚目の定着動作における励磁コイル205に対する誘導加熱量は通常の定着動作時と同じとしてもよく、前述の実施の形態の場合と同様に、2枚目以降の定着動作時よりも大きくしてもよい。
従って、本実施の形態によれば、定着待機時にはローラ201,202,203を停止させておくことにより待機時の熱量や動力を不要にすることができ、かつ、定着動作開始直前にこれらのローラ201,202,203を回転させるとともに単位長さ当りの熱量を定着動作時よりも大きくすることで、停止状態にあった定着ニップ部の温度を1枚目の定着動作前に素早く定着に必要な温度に立上げることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。この場合、その具体例として、励磁コイル205に対する誘導加熱量を通常の定着動作時よりも大きくすることにより、容易に実現することができる。
定着装置121に対する動作制御に関する第六の実施の形態を図12を参照して説明する。図12はその動作制御例を示す概略フローチャートである。
CPU302は、常に待機中であるか否かを監視しており(ステップS61)、定着を行わない待機中であれば(S61のY)、定着モータ209を停止させることにより各ローラ201,202,203を停止状態に維持するとともに、励磁コイル205にも通電せず誘導加熱(IH加熱)停止状態とする(S62)。これにより、待機中には、動力や電力の消費が抑えられる。このステップS62の処理が待機時停止制御手段、待機時停止制御工程として実行される。
その後、コピー命令やプリント命令が発行され、待機中でなくなると(S61のN)、画像形成動作等に続く定着開始まで待機し(S63のY)、定着動作の開始時には、その動作が1枚目の定着動作であるか2枚目以降の定着動作であるかを判断する(S64)。1枚目であれば(S64のY)、待機時直後であるので、定着モータ209により定着ローラ201を回転させる(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)とともに、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S65)ことで定着動作を実行する。この際、ローラ201,202,203の回転速度を通常の定着動作時の回転速度よりも低速とするとともに、励磁コイル205による誘導加熱量は通常の定着動作時の誘導加熱量よりも大きくする。この結果、誘導コイル205により誘導加熱される定着ベルト204等の単位長さ当りの熱量が通常の定着動作時よりも大きくなり、待機時直後であっても十分に加熱されることとなる。このステップS65の処理が動作開始時加熱制御手段、動作開始時加熱制御工程として実行される。
その後、2枚目以降の定着動作があれば(S67のY)、定着モータ209によりローラ201,202,203を通常の回転速度で駆動させながら、励磁コイル205に通常の誘導加熱量で通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S66)ことで定着動作を実行する。この場合には、直前に1枚目或いはそれ以降の定着動作が行われ、定着ニップ部の温度落ち込みが少ないので、通常動作制御で済む。
本実施の形態によれば、待機中の動力や熱量の消費を抑え省エネを図るために、待機中にはローラ201,202,203は停止させ、かつ、誘導コイル205への通電も停止状態とするが、待機時直後の1枚目の定着動作時には定着モータ209によりローラ201,202,203の回転速度を通常の定着動作時よりも低速とし、かつ、励磁コイル205による誘導加熱量は通常の定着動作時の誘導加熱量よりも大きくして、単位長さ当りの熱量が大きくなるように誘導加熱するので、待機時直後であっても十分に加熱することができ、結局、停止状態にあった定着ニップ部の温度を1枚目の定着動作中に素早く定着に必要な温度に立上げることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。
定着装置121に対する動作制御に関する第七の実施の形態を図13を参照して説明する。図13はその動作制御例を示す概略フローチャートである。
CPU302は、常に待機中であるか否かを監視しており(ステップS71)、定着を行わない待機中であれば(S71のY)、定着モータ209を停止させることにより各ローラ201,202,203を停止状態に維持するとともに、励磁コイル205にも通電せず誘導加熱(IH加熱)停止状態とする(S72)。これにより、待機中には、動力や電力の消費が抑えられる。このステップS32の処理が待機時停止制御手段、待機時停止制御工程として実行される。
その後、コピー命令やプリント命令が発行され、待機中でなくなると(S71のN)、画像形成動作等に続く定着開始まで待機し(S73のY)、定着動作の開始直前の動作制御として、定着モータ209により定着ローラ201を回転させる(これにより、加熱ローラ203や加圧ローラ202も回転する)とともに、励磁コイル205に通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S74)。この際、ローラ201,202,203の回転速度を通常の定着動作時の回転速度よりも低速とし、かつ、励磁コイル205による誘導加熱量は通常の定着動作時の誘導加熱量よりも大きくする。この結果、誘導コイル205により誘導加熱される定着ベルト204等の単位長さ当りの熱量が通常の定着動作時よりも大きくなり、待機時直後であっても十分に加熱されることとなる。このステップS74の処理が動作開始直前加熱制御手段、動作開始直前加熱制御工程として実行される。
その後、定着温度に達し(S75)、実際の定着動作時となると、定着モータ209によりローラ201,202,203を通常の回転速度で駆動させながら、励磁コイル205に通常の誘導加熱量で通電することにより誘導加熱(IH加熱)温度制御する(S76)ことで定着動作を実行する。この場合に、直前或いはそれ以降の定着動作が行われ、定着ニップ部の温度落ち込みが少ないので、通常動作制御で済む。
即ち、本実施の形態では、ローラ201,202,203の回転速度を通常の定着動作時よりも遅くし、かつ、励磁コイル205による誘導加熱量は通常の定着動作時の誘導加熱量よりも大きくした状態で、これらのローラ201,202,203を1回転又は数回転させて定着ニップ部の温度が定着可能な温度に達した時点で定着動作を開始させるようにしたものである。この際、1枚目の定着動作におけるローラ201,202,203の回転速度は通常の定着動作時と同じとしてもよく、前述の実施の形態の場合と同様に、2枚目以降の定着動作時よりも遅くしてもよい。また、1枚目の定着動作における励磁コイル205に対する誘導加熱量は通常の定着動作時と同じとしてもよく、前述の実施の形態の場合と同様に、2枚目以降の定着動作時よりも大きくしてもよい。
従って、本実施の形態によれば、定着待機時にはローラ201,202,203を停止させておくことにより待機時の熱量や動力を不要にすることができ、かつ、定着動作開始直前にこれらのローラ201,202,203を回転させるとともに単位長さ当りの熱量を定着動作時よりも大きくすることで、停止状態にあった定着ニップ部の温度を1枚目の定着動作前に素早く定着に必要な温度に立上げることができ、ファーストコピーやファーストプリントに要する時間を短縮させることができる。この場合、その具体例として、定着動作開始直前のローラ201,202,203の回転速度を低速にし、かつ、励磁コイル205による誘導加熱量は通常の定着動作時の誘導加熱量よりも大きくすることにより、容易に実現することができる。