JP4354661B2 - 防湿紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、古紙としてリサイクル可能な防湿紙であって、特にプレーンペーパーコピー用紙等の包装に好適な防湿紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
乾式コピーに用いられるプレーンペーパーコピー用紙(以下「PPC用紙」という)が吸湿すると摩擦係数が高くなり、コピーの際に複数枚のPPC用紙が重なってコピー機内に給紙される重送が生じてしまうことがある。そのため、PPC用紙は防湿紙で包装され、流通・備蓄段階での吸湿が防止されている。かかるPPC用紙以外でも湿気を嫌う物品(例えば金属製品等)は同様に防湿紙で包装されている。
【0003】
かかる防湿紙としては、従来、紙素材からなる基紙層と、この基紙層上に15μm程度の厚みでポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンをラミネートすることで形成された防湿剤層とを備えるもの(ラミネート防湿紙)が用いられている。この防湿紙は、ポリオレフィンからなる防湿剤層により防湿性に優れるものであるが、再生紙として利用しようとしてもポリオレフィンからなる防湿剤層が水中でほとんど離解及び溶解せず、リサイクルが困難である。また、廃棄された場合は、ポリオレフィンが分解しないため自然環境中に残存し続け、環境破壊を起こしてしまう。
【0004】
近年、省資源、環境保護等の観点から、防湿剤層を形成するための防湿剤として離解又は溶解性を有するワックスエマルジョン、樹脂エマルジョン、ラテックス、これらの混合物等が用いられた防湿紙が開発されている。例えば、特開平5−156208号公報には、パラフィンワックス等を分散質としたワックス系エマルジョンとポリビニルアルコール等の水溶性樹脂とを主成分とする防湿剤が塗工された防湿紙が開示されている。また、特開平6−200498号公報には、スチレン・アクリル酸共重合体等とワックスエマルジョンとを含有する防湿剤が塗工された防湿紙が開示されている。これらの防湿紙はラミネート防湿紙にほぼ匹敵する防湿性を備えており、しかも離解又は溶解性の防湿剤を用いているため水又はアルカリ溶液中で容易に離解又は溶解し、容易にリサイクルされ得るものである。
【0005】
さらに、特開平9−67795号公報には、合成樹脂ラテックスと炭化水素系オリゴマーとを主成分とする防湿剤にさらにマイカ、タルク等の充填剤が添加された樹脂組成物が塗工された防湿紙が開示されている。従って、この防湿紙は図2に示すように基紙層11と防湿剤層12とが積層され、この防湿剤層12は防湿剤からなるマトリックス13中に充填剤14を含有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リサイクル可能な上記従来の防湿紙において、防湿剤には防湿性能を高めるためにワックス類、炭化水素系オリゴマー等の低分子量物質が配合されていることから、防湿紙使用中にこれら低分子量物質が防湿剤層の表面にブリードアウトしてくる。従って、上記防湿紙でPPC用紙を包装する場合、通常防湿剤層が内側となるように包装されるため、防湿剤層表面にブリードアウトした低分子量物質が防湿剤層に接触したPPC用紙に転移し、そのPPC用紙の摩擦係数が低下してしまう。摩擦係数が低下したPPC用紙(以下このPPC用紙のことを「変質PPC用紙」という)を含むPPC用紙をコピー機にセットすると、変質PPC用紙の何枚か上方のPPC用紙を本来給紙すべき段階で、変質PPC用紙とこの変質PPC用紙に重なったPPC用紙との間でスリップが生じ、変質PPC用紙よりも上方の複数枚のPPC用紙が一度に給紙される重送のおそれがある。
【0007】
また、防湿剤層12に充填剤14が配合された図2に示す上記従来の防湿紙でも、通常用いられるマイカ、タルク、クレー、炭酸カルシウム等の充填剤14はそのかさ比重が2.5g/cm前後であり、防湿剤の比重(1.0g/cm前後)よりもかなり高比重であるため、塗工の際に充填剤14が基紙層11側に沈降する結果、充填剤14の突出によって防湿剤層12表面に凹凸が形成されることはあまりなく、充填剤14を突出させるためには充填剤14の平均粒子径を大きくするか又は充填剤14の配合量を増大させる必要がある。このように充填剤14の配合量及び平均粒子径を増大させると、防湿剤層12の強度、防湿性等に悪影響が生じるおそれがあり、リサイクル性も低下する。従って、この充填剤14を含有する防湿紙によっても基本性能である防湿性及びリサイクル性を維持しつつ上記PPC用紙への低分子量物質の転移を抑えることは困難である。
【0008】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、平均粒子径が小さくかつ少量の充填剤の配合により効率的に防湿剤層表面に凹凸を形成でき、その結果PPC用紙等の被包装物に対する防湿剤層中の低分子量物質の転移防止、包装の際のタイト性向上、基紙層と防湿剤層との密着性の向上及びリサイクル性の改善を図ることができる防湿紙の提供を目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた発明は、基紙層と防湿剤層とを備えるリサイクル可能な防湿紙であって、この防湿剤層が離解又は溶解性を有する防湿剤とこの防湿剤中に含まれる充填剤とから形成されており、この防湿剤が水溶性樹脂、ワックスエマルジョン、樹脂エマルジョン、合成ゴム系ラテックス又はこれらの混合物であり、この充填剤のかさ比重が、0.2g/cm以上0.8g/cm未満であり、この充填剤が樹脂ビーズであり、この充填剤の一部が防湿剤層から突出していることを特徴とするものである。ここで「溶解又は離解性」とは、固化後に水やアルカリ溶液などの溶媒に溶解又は離解する性質を意味する。
【0010】
当該防湿紙によれば、防湿剤層に配合される充填剤のかさ比重が0.2g/cm以上0.8g/cm未満であり、防湿剤の比重(1.0g/cm前後)よりも小さいことから、塗工等による防湿剤層の形成時に充填剤が浮上し、充填剤の一部が防湿剤層から突出することとなる。そのため、当該防湿紙を用いてPPC用紙等の被包装物を包装すると、防湿剤層表面に突出する充填剤が被包装物に当接するため、防湿剤層と被包装物との接触面積を抑えることができ、その結果、被包装物への低分子量物質の転移を防ぐことができる。従って、当該防湿紙によれば、被包装物への低分子量物質の転移による被包装物表面の摩擦係数の低下を防止でき、例えばPPC用紙の摩擦係数の低下によるコピー機への重送を防止することができる。
【0011】
また、前述のように充填剤の浮上により防湿剤層表面に充填剤の一部を突出させ、被包装物への低分子量物質の転移を抑制するため、用いられる充填剤の平均粒子径及び配合量が小さくてよい。そのため、当該防湿紙によれば、充填剤の配合によるリサイクル性の低下及び防湿性に対する影響(例えば防湿剤の脱落等による防湿性の低下など)を低減することができる。
【0012】
さらに、充填剤の浮上、突出により防湿紙表面の摩擦係数が高くなるため、当該防湿紙を用いて被包装物を包装する際に被包装物に対するタイト性(隙間なく包装できる性質)が向上し、包装作業の容易性及び包装の完全性を促進することができる。また、充填剤が防湿紙表面側に浮上することから、基紙層表面には防湿剤が接触し、充填剤の接触が低減され、その結果、基紙層と防湿剤層との密着性が充填剤の配合によって低下してしまうことを防止することができる。
【0013】
上記充填剤の平均粒子径としては0.1μm以上40μm以下が好ましい。上述のように小さいかさ比重によって充填剤が浮上し、防湿剤層表面に突出するため、平均粒子径を上記範囲としあまり大きくしなくても防湿剤層とPPC用紙等の被包装物との接触面積を充分に抑えることができる。
【0014】
上記防湿剤100部に対する充填剤の配合比(固形分換算)としては0.1部以上10部以下が好ましい。同様に小さいかさ比重によって充填剤が浮上し、防湿剤層表面に突出するため、充填剤の配合比を比較的少ない上記範囲とすることで防湿剤層と被包装物との接触面積を充分に抑えることができ、充填剤を多く含有する必要ない。そのため、充填剤によって当該防湿紙のリサイクル性が低下してしまうことを防止することができる。
【0015】
上記充填剤は樹脂ビーズである。このように略球状の樹脂ビーズとすることで充填剤の一部を防湿剤層からより有効に突出させることができる。また、樹脂ビーズは、上記かさ比重、平均粒子径及び形状の各要件を満たすことができる。
【0016】
一方、上記防湿剤としては、合成ゴム系ラテックス若しくはアクリル系エマルジョン又はこれらの混合物を用いるとよい。この合成ゴム系ラテックスは耐水性が良好で、伸びがよく折割れによる亀裂が生じにくい防湿剤層が形成され、アクリル系エマルジョンは比較的硬質で離解性が良好な防湿剤層が形成される。従って、この合成ゴム系ラテックスとアクリル系エマルジョンとを混合することで、防湿性と離解性とが高次元で調和する防湿剤層が形成され、防湿紙の基本性能である防湿性を維持しつつ、古紙としてのリサイクルを容易にすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1は本発明の一実施形態に係る防湿紙を示す模式的部分断面図である。
【0018】
図1の防湿紙は、基紙層1と、この基紙層1の表面に積層される防湿剤層2とを備えている。この防湿剤層2により当該防湿紙の防湿性が高められ、例えばPPC用紙等の被包装物の吸湿が防止される。
【0019】
基紙層1は、使用用途に見合う強度を有する紙素材からなる。この基紙層1に使用される紙素材としては、特に限定されるものではなく、例えば未晒クラフト紙、晒クラフト紙、上質紙、中質紙、片艶未晒クラフト紙、純白ロール、グラシン紙、感熱紙、感圧紙、合成紙、和紙、トレーシングペーパー、各種コート紙、板紙、ライナー紙等が挙げられる。だたし、リサイクル性を考慮すると、機械的離解作用によって水中で分散しやすいものが好ましく、例えば広葉樹クラフトパルプや針葉樹クラフトパルプのような化学パルプ、機械パルプを原料とした上質紙、中質紙、片艶クラフト紙、両更クラフト紙、クラフト伸長紙等が好ましい。この基紙層1の坪量は、特には限定されず、防湿紙の用途に合わせて適宜選択するとよく、一般的には30g/m以上400g/m以下程度とされる。
【0020】
防湿剤層2は、防湿剤が固化されてなるマトリックス3と、このマトリックス3中に含有する充填剤4とを有している。このように防湿剤層2は、マトリックス3が離解又は溶解性を有する防湿剤が固化されたものであることから、当該防湿紙のリサイクル時に水又はアルカリ溶液等の溶媒に容易に離解又は溶解する。
【0021】
防湿剤層2の形成に用いられる防湿剤としては、離解又は溶解性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリビニルアルコール等の水溶性樹脂、ワックスエマルジョン、樹脂エマルジョン、合成ゴム系ラテックス、これらの混合物等の既知のものが挙げられる。中でも、防湿性及び離解性が共に優れる防湿剤層2が形成される合成ゴム系ラテックス、アクリル系エマルジョン又はこれらの混合物が好ましい。特に、合成ゴム系ラテックスとアクリル系エマルジョンとを混合して用いることで、防湿性と離解性とが高次元で調和する防湿剤層2が形成される。なお、この防湿剤には、炭化水素系オリゴマー等が適宜配合され、その他必要に応じて界面活性剤、分散剤、安定剤、顔料等が配合されてもよい。
【0022】
上記合成ゴム系ラテックスとしては、具体的には、スチレンブタジエンラテックス、メタクリレートブタジエンラテックス、アクリルニトリルブタジエンラテックスなどが挙げられるが、耐水性が良好で、伸びがよく折割れによる亀裂が生じにくいスチレンブタジエンラテックスが好適である。かかる合成ゴム系ラテックスを得るための重合性単量体はスチレン及び1,3−ブタジエンを主体とするが、その他のスチレンおよび1,3−ブタジエンと共重合可能な単量体を本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。その他のスチレン及び1,3−ブタジエンと共重合可能な単量体としては、(a)α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルトルエン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル単量体、(b)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル単量体、(c)(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有エチレン性不飽和単量体、(d)アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和酸のグリシジルエステル、(e)アリルグリシジルエーテル等の不飽和アルコールのグリシジルエーテル、(f)(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体等が挙げられ、これらの重合性単量体を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記アクリル系エマルジョンとしては、具体的には、スチレンおよびスチレン誘導体、アクリル酸(メタクリル酸)、アクリル酸(メタクリル酸)エステル等を共重合したアクリルコポリマー、アクリル−スチレンコポリマー等の共重合体系を用いることができる。
【0024】
充填剤4としては、かさ比重が0.2g/cm以上0.8g/cm未満のものが用いられる。このようにかさ比重が0.2g/cm以上0.8g/cm未満の充填剤4は、上記防湿剤の一般的な比重よりも小さいため、塗工等による防湿剤層2の形成時に固化前の防湿剤中で充填剤4が浮上し、充填剤4の一部が防湿剤層2から有効に突出する。そのため、PPC用紙等の被包装物と防湿剤層2との接触面積を抑えることができ、被包装物への低分子量物質の転移を抑えることができる。これらの観点より、充填剤4のかさ比重としては0.3g/cm以上0.7g/cm以下がより好ましい。
【0025】
かさ比重が0.2g/cm以上0.8g/cm未満の充填剤4としては、例えば樹脂ビーズ、グラスバブルス、シラスバルーン等が挙げられる。これらの充填剤4のなかでも、防湿剤の比重と同等以下のかさ比重を有し、しかも充填剤4自体が非透湿性に優れる樹脂ビーズが好ましい。好ましい樹脂ビーズとしては、アクリルビーズ、ポリスチレンビーズ、高密度ポリエチレンビーズ、低密度ポリエチレンビーズ、スチレンビーズ、ウレタンビーズ等が挙げられる。
【0026】
充填剤4の形状は、特に限定されるものではなく例えば球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、有効かつ確実に防湿剤層2からその一部が突出するという理由より略球状が好ましい。
【0027】
充填剤4の平均粒子径の下限としては0.1μmが好ましく、10μmが特に好ましい。一方、充填剤4の平均粒子径の上限としては40μmが好ましく、30μmが特に好ましい。これは、上述のようにかさ比重が小さい充填剤4が固化前の防湿剤中で浮上し、防湿剤層2表面に突出するため、平均粒子径を上記上限以下としあまり大きくしなくても防湿剤層2とPPC用紙等の被包装物との接触面積を充分に抑えることができるからであり、また、充填剤4の平均粒子径が上記下限より小さいと、充填剤4が防湿剤層2から突出する高さが小さくなってしまい、防湿剤層2と被包装物との接触面積を充分に抑えることができなくなってしまうことからである。
【0028】
ここで、「平均粒子径」は、任意に抽出された100個の充填剤4の粒子径の平均値を算出することにより求められる。ここで、粒子径とは、球状の充填剤4の場合はその球の直径のことである。球状でない充填剤4の場合は、充填剤4を顕微鏡で拡大したときの投影像を内側に含む円のうち最小の円の直径をもって粒子径とする。
【0029】
充填剤4の配合比(防湿剤100部に対する固形分換算の配合比)の下限としては0.1部が好ましく、1部が特に好ましい。一方、充填剤4の上記配合比の上限としては10部が好ましく、7部が特に好ましい。これは、上述のように小さいかさ比重によって充填剤4が浮上して防湿剤層2表面に突出するため、充填剤4を上記上限以下配合することで防湿剤層2と被包装物との接触面積を充分に抑えることができ、充填剤4を多く含有する必要ないことからであり、一方、充填剤4の配合比が上記下限より小さいと、充填剤4によって防湿剤層2表面の突出点が少なくなり、被包装物との接触面積抑制効果が小さくなってしまうことからである。
【0030】
当該防湿紙によれば、(a)上述のようにかさ比重が小さい充填剤4の浮上により防湿剤層2の表面に充填剤4が突出するため、被包装物との接触面積を抑えることができ、その結果、被包装物への低分子量物質の転移を防ぐことができることに加え、(b)充填剤4の浮上、突出によって表面の摩擦係数が高くなり、包装の際に被包装物とのタイト性が向上する、(c)充填剤4が浮上し、基紙層1との接触が低減されるため、基紙層1と防湿剤層2との密着性が低下しない、(d)充填剤4を防湿剤層2表面から突出させるために必要な充填剤4の配合量を低減でき、その結果リサイクル性を促進することができる、(e)充填剤4の浮上によって防湿剤層2表面から突出させるため、平均粒子径が小さな充填剤4で足り、充填剤4の平均粒子径を大きくすることによる充填剤4の脱落ひいては充填剤4の脱落による防湿性の低下を防止することができる、等の利点がある。
【0031】
当該防湿紙の製造方法としては、基紙層1の表面に上記構造の防湿剤層2が形成できれば特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。一般的には防湿剤に充填剤4を混合することで防湿剤層用樹脂組成物を作成する工程と、この防湿剤層用樹脂組成物を基紙層1の表面に塗工し、防湿剤成分を固化させる工程とにより当該防湿紙が製造される。
【0032】
防湿剤と充填剤4とからなる防湿剤層用樹脂組成物の塗工量は、固形分換算で5g/m以上50g/m以下が好ましく、10g/m以上30g/m以下が特に好ましい。上記塗工量が上記範囲より小さいと、当該防湿紙の防湿性が不十分になり、被包装物であるPPC用紙等が吸湿しやすくなってしまうことがある。逆に、塗工量が上記範囲を越えると、防湿剤の費用が嵩む割には防湿効果が頭打ちとなって不経済となってしまうことがある。
【0033】
防湿剤層用樹脂組成物の基紙層1への塗工手段としては既知の各種手段を採用することができ、例えばキスロールコーター、バーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、グラビアロールコーター等により塗布すればよい。なお、防湿剤層用樹脂組成物の塗工は、図1に示されるように基紙層1の片面のみになされる場合のみならず、両面になされることもある。
【0034】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきものではないことはもちろんである。
【0035】
[実施例1]
基紙層として坪量が80g/mの晒クラフト紙、防湿剤として低分子量の炭化水素系オリゴマーが配合されたスチレン・ブタジエンエマルジョン、充填剤としてかさ比重が0.45g/cmで平均粒子径が10μmのアクリルビーズを用い、この防湿剤100部に充填剤を固形分換算で1部添加し、攪拌することで防湿剤層用樹脂組成物を得た。この防湿剤層用樹脂組成物を基紙層の表面に固形分換算で20g/m塗工し、乾燥させることで実施例1の防湿紙を得た。
【0036】
[実施例2]
充填剤としてかさ比重が0.59g/cmで平均粒子径が20μmのアクリルビーズを用いた以外は上記実施例1と同様にして実施例2の防湿紙を得た。
【0037】
[実施例3]
充填剤としてかさ比重が0.67g/cmで平均粒子径が30μmのアクリルビーズを用いた以外は上記実施例1と同様にして実施例3の防湿紙を得た。
【0038】
[実施例4]
充填剤としてかさ比重が0.67g/cmで平均粒子径が30μmのアクリルビーズを用い、充填剤の配合比を3部とした以外は上記実施例1と同様にして実施例4の防湿紙を得た。
【0039】
[比較例]
充填剤を配合しない以外は上記実施例1と同様にして比較例の防湿紙を得た。
【0040】
[特性の評価]
上記実施例1〜4の防湿紙及び比較例の防湿紙を用い、これらの防湿紙に所定の条件で接触した被包装物(PPC用紙)表面の静摩擦係数を下記の方法で測定し、防湿紙から被包装物への低分子量物質の転移による被包装物表面の摩擦係数の低下の度合いを評価した。また、これらの防湿紙の透湿度を下記の方法で測定し、基本性能である防湿性を評価した。その結果を下記表1に示す。
【0041】
(静摩擦係数の測定)
水平に固定された金属板の上に、PPC用紙(紀州製紙株式会社製のA4サイズの高速用中性紙、商品名「ファインPPC用紙」)20枚を載せ、この上に防湿剤層が下向きとなるように防湿紙を載せた。さらにこの上に、重しとしてPPC用紙2000枚(約8キログラム)を積み上げた。この状態で摂氏50度のオーブンに48時間放置し、その後恒温恒湿室で4時間冷却させた。各実施例及び比較例ごとにこの実験を2回ずつ行い、それぞれ2枚ずつ、防湿剤層に直接に接面したPPC用紙を得た。この2枚のPPC用紙の、それぞれ防湿剤層と接面していた面同士を重ね合わせ、JIS−P−8147に規定する水平法に準拠して静摩擦係数を測定した。なお、防湿紙と全く接触していないPPC用紙の静摩擦係数も同時に測定したところ、その静摩擦係数は0.59であった。
【0042】
(透湿度の測定)
各実施例及び比較例の防湿紙の透湿度を、JIS−Z−0208のB法に基づき、防湿剤層を外側として測定した。
【0043】
【表1】
Figure 0004354661
【0044】
上記表1に示すように、かさ比重が0.2g/cm以上0.8g/cm未満の充填剤を配合した各実施例の防湿紙は、防湿剤層に充填剤を配合していない比較例の防湿紙よりも、包装したPPC用紙の摩擦係数が大きい。これは、各実施例の防湿紙では、防湿剤層から充填剤の一部が突出してPPC用紙との接触面積が抑えられ、その結果、防湿剤層からPPC用紙への低分子量物質の転移が抑えられ、PPC用紙の静摩擦係数の低下が抑えられたためである。実施例3、4より明らかなように、PPC用紙の摩擦係数低下抑制効果は、充填剤の比率が高い方が顕著である。特に、平均粒子径が30μmの充填剤を1部配合した実施例4の防湿紙では、包装されたPPC用紙の静摩擦係数が0.58であり、防湿紙に全く接触していないPPC用紙の摩擦係数に匹敵するものである。
【0045】
また、充填剤を配合した実施例1〜4の防湿紙の透湿度は、充填剤を配合していない防湿紙の透湿度と比較して、同じか又は小さくなっている。つまり、実施例1〜4の防湿紙はその基本性能である防湿性が改善されていることが解る。
【0046】
以上、PPC用紙を包装する場合を例にとり本発明の防湿紙を説明したが、被包装物への低分子量物質の転移が少ない本防湿紙は、PPC用紙の包装に限られず、例えばアクリル板等の樹脂板の包装、スチールコイルの包装、鋼板の包装、製紙巻取の包装、防湿段ボールや防湿紙管の材料等の種々の用途に適用できる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防湿紙によれば、被包装物に防湿剤層中の低分子量物質が転移してしまうのを防ぐことができる。従って、被包装物が例えばPPC用紙である場合はそのPPC用紙の摩擦係数が低下してしまうのを防ぐことができ、コピー時の重送を防止することができる。
【0048】
また、充填剤の浮上、突出により防湿紙表面、つまり防湿剤層表面の摩擦係数が高くなるため、包装の際に被包装物とのタイト性が良好になる。また、防湿剤層の形成時に充填剤が浮上するため、充填剤の添加による基紙層と防湿剤層との密着性の低下を防止することができる。さらに、充填剤の添加量及び充填剤の平均粒子径が小さくてよいことから、リサイクル性を高め、かつ、防湿性に対する影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る防湿紙を示す模式的断面図である。
【図2】従来の充填剤入り防湿紙を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1・・・基紙層
2・・・防湿剤層
3・・・マトリックス
4・・・充填剤

Claims (4)

  1. 基紙層と防湿剤層とを備えるリサイクル可能な防湿紙であって、
    この防湿剤層が離解又は溶解性を有する防湿剤とこの防湿剤中に含まれる充填剤とから形成されており、
    この防湿剤が水溶性樹脂、ワックスエマルジョン、樹脂エマルジョン、合成ゴム系ラテックス又はこれらの混合物であり、
    この充填剤のかさ比重が0.2g/cm以上0.8g/cm未満であり、
    この充填剤が樹脂ビーズであり、
    この充填剤の一部が防湿剤層から突出していることを特徴とする防湿紙。
  2. 上記充填剤の平均粒子径が、0.1μm以上40μm以下である請求項1に記載の防湿紙。
  3. 上記防湿剤100部に対する充填剤の配合比が固形分換算で0.1部以上10部以下である請求項1又は請求項2に記載の防湿紙。
  4. 上記防湿剤として、合成ゴム系ラテックス若しくはアクリル系エマルジョン又はこれらの混合物が用いられている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の防湿紙。
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