JP4352781B2 - 塗布工具及び塗布装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被塗布物に対して塗布液を塗布するために用いられる塗布装置及びこれに装着される塗布工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、塗布工具としては、例えば一対のヘッド部材から構成された塗布ヘッドを有し、一対のヘッド部材における互いに対向する側面同士の間に、塗布液が供給されるポケットと、このポケットから先端側へ延びて塗布ヘッドの先端に開口する溝状のスロットとが画成されたものが知られている。
このような塗布工具は、塗布ヘッドの先端を被塗布物に対向配置させるとともに、塗布ヘッドの長手方向(スロットの長手方向)を被塗布物の幅方向に一致させるようにして塗布装置に装着されるものであって、塗布液タンクから供給ポンプによってポケット内に供給された塗布液が、スロット内を流通して塗布ヘッドの先端から吐出されることにより、この塗布ヘッドの先端に対して相対的に移動する被塗布物の表面に塗布液が塗布されることになる。
【0003】
ところで、上記のような塗布装置は、可撓性を有するシート状の被塗布物の表面に対して塗布液を塗布するために用いられるだけではなく、例えば液晶ディスプレイのパネル本体となるガラス基板のようなパネル状の被塗布物の表面に対してカラーレジストなどの塗布液を塗布するためにも用いられるのであるが、いずれにしても、被塗布物の表面に塗布された塗布液の膜厚を均一にすることが強く求められる。
つまり、従来の塗布装置では、とくに塗布開始時に、例えば塗布液をポケット内に供給するときの供給口の位置などに起因して、スロット内を流通して塗布ヘッドの先端から吐出される塗布液の流量が、このスロットの長手方向に沿った方向の略全長に亘って略一定とはならないため、被塗布物の表面に塗布された塗布液の膜厚が不均一になるという問題があったのである。
【0004】
これに対して、特許文献1には、塗布ヘッドを構成している一方のヘッド部材の先端部を押圧するためのプッシュロッド及び調整ボルトが、スロットの長手方向に沿って複数配列されるように設けられた塗布工具が開示されており、調整ボルトをねじ込むことにより、この調整ボルトの先端に接触するプッシュボルトが、その先端でヘッド部材の先端部をスロットの開口部側へ向けて局所的に押圧して変形させ、スロットの幅を調整することができるようになっている。
そして、スロット内を流通して塗布ヘッドの先端から吐出される塗布液の流量を、スロットの長手方向に沿った方向の略全長に亘って略一定とするように、このスロットの幅を調整することで、被塗布物の表面に塗布される塗布液の膜厚を均一にすることを狙っているのである。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−23821号公報(第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塗布ヘッドの先端から吐出される塗布液の流量は、スロットの長手方向に沿った方向で局所的に変化しているということはなく、スロットの長手方向に沿った方向における所定領域でのスロットの幅を調整する必要があるため、特許文献1に開示された塗布工具のように、ヘッド部材の先端部をプッシュロッドの先端で局所的に押圧する構成となっていると、上記の所定領域に対応する範囲内に設けられた複数の調整ボルトをそれぞれねじ込み、複数のプッシュロッドの各先端でヘッド部材の先端部を押圧しなければならない。そのため、複数のプッシュロッドによるヘッド部材の押圧状態が互いに干渉しあって、プッシュロッドの先端とヘッド部材の先端部との間に非接触箇所が生じやすく、スロットの幅を所望の値に調整するまでに、複数回繰り返しての調整が必要となり、作業時間が長くかかるという問題があった。
【0007】
また、調整ボルトをねじ込むことによって直接的にヘッド部材の先端部を押圧してスロットの幅を調整するようになっているため、このスロットの幅の調整量(スロットの幅の変化の挙動)が、調整ボルトの雄ねじ部に切られたネジ山のピッチに依存してしまい、例えばミクロンオーダーでの微細な調整が困難であった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、塗布液が流通するスロットの幅を容易に調整することができる塗布工具及び塗布装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明による塗布工具は、複数のヘッド部材から構成された塗布ヘッドを有し、前記複数のヘッド部材における互いに対向する側面同士の間に、前記塗布ヘッドの先端に開口する溝状のスロットが画成され、塗布液が前記スロット内を流通して前記塗布ヘッドの先端から吐出される塗布工具であって、前記ヘッド部材における前記スロットを画成する側面とは反対側の側面に、前記塗布液の流通方向である前記スロットの延在方向に沿った方向を向いて互いに対向する一対の壁面を備えた凹部が形成され、この凹部内に、前記一対の壁面にそれぞれ接触させられる一対の押圧面を備え、前記スロットの延在方向に沿った方向での長さを大きくすることによって、前記一対の壁面同士の間の距離が大きくなるように前記ヘッド部材を変形させて、前記スロットの幅を調整することが可能な調整ユニットが設けられ、この調整ユニットは、その内部に備えられた圧電アクチュエータにより、前記スロットの延在方向に沿った方向での長さを大きくし、前記凹部が、前記スロットの長手方向に沿った方向に延びるように形成され、前記調整ユニットが、前記スロットの長手方向に沿った方向の任意の位置へ移動及び固定可能とされ、前記一対の押圧面のうち前記塗布ヘッドの後端側を向く前記押圧面に形成された凹所にストッパ部材が嵌め込まれ、該ストッパ部材が弾性部材によって前記凹部における開口部側へ向かって付勢されることにより、前記調整ユニットが前記スロットの長手方向に沿った方向の任意の位置に固定され、前記ストッパ部材を前記凹部の底面側へ向かって押し込んで前記弾性部材を圧縮することによって、前記調整ユニットの固定状態が解除されることを特徴とするものであり、また、本発明による塗布装置は、本発明の塗布工具が、前記塗布ヘッドの先端を被塗布物に対向配置させるように装着されていて、前記塗布ヘッドの先端から塗布液が吐出されることにより、前記塗布ヘッドの先端に対して相対的に移動する前記被塗布物に塗布液が塗布されることを特徴とするものである。
【0010】
このような本発明では、ヘッド部材の側面に形成された凹部内に設けられる調整ユニットを用いて、この凹部における一対の壁面同士の間の距離が大きくなるようにヘッド部材を変形させることで、複数のヘッド部材における互いに対向する側面同士の間に画成されたスロットの幅を調整することができるようになっている。しかも、調整するスロットの幅については、このスロットの長手方向に沿った方向での略全長に亘って略一定となるように設定するだけではなく、例えば、ある所定領域で意図的に大きくなったり小さくなったりするように設定することもできる。
そして、このような調整ユニットを用いると、調整ユニットにおけるスロットの長手方向に沿った方向での長さを必要に応じて適宜与えてやることで、ヘッド部材を変形させるときの押圧部分が局所的になってしまうことがなくなり、所定領域でのスロットの幅を調整する場合であっても、従来の調整ボルトを用いたときのような複数回繰り返しての調整が必要とならず、容易にスロットの幅を調整することができる。
とくに、スロットの幅を調整するための調整ユニットは、印加された電圧に対して微細な変位量を短時間で正確に出力することが可能な圧電アクチュエータによって、スロットの延在方向に沿った方向での長さを大きくするものであることから、このような調整ユニットによって調整されるスロットの幅の変化の挙動が非常に緩やかなものとなり、例えばミクロンオーダーでの微細な幅の正確な調整が短時間で可能となる。
さらに、前記凹部が、前記スロットの長手方向に沿った方向に延びるように形成され、前記調整ユニットが、前記スロットの長手方向に沿った方向の任意の位置へ移動及び固定可能とされているため、この調整ユニットを、スロットの長手方向に沿った方向での任意の位置に移動させて固定し、その任意の位置に対応する領域でのスロットの幅を調整することができる。
【0011】
また、本発明による塗布工具においては、前記一対の壁面は、これら一対の壁面同士の間の距離が前記凹部における開口部側へ向かうにしたがい漸次小さくなるように互いに傾斜させられており、前記ストッパ部材は、前記スロットの延在方向に沿った方向での厚みが前記開口部側へ向かうにしたがい漸次小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付した図面を参照しながら説明する。
本発明の実施形態による塗布工具の塗布ヘッド10は、図1及び図2に示すように、一対のヘッド部材11A,11Bがそれらの一方の側面12,12同士を互いに対向させるように組み合わされることによって、長尺状をなすように構成されたものである。
また、塗布ヘッド10を構成する一対のヘッド部材11A,11Bは、それらの後端側(図1及び図2における下方側)部分同士が、塗布ヘッド10の長手方向(図1における左右方向)に沿った方向で所定間隔をあけて複数のボルト13…でボルト止めされるとともに、塗布ヘッド10の長手方向に沿った方向の両端に位置する両端面に対してそれぞれサイドプレート14,14が取り付けられることによって、互いに固定されている。
【0013】
塗布ヘッド10を構成する一方のヘッド部材11A(図2中、右側に位置するヘッド部材11A)における一方の側面12は、その略全面が略平坦面とされているのに対し、塗布ヘッド10を構成する他方のヘッド部材11B(図2中、左側に位置するヘッド部材11B)における一方の側面12は、塗布ヘッド10の長手方向に沿った方向に延びるように切り欠かれてなる凹溝12Aを有しているとともに、この凹溝12Aより塗布ヘッド10の先端側に位置する先端側部分が、凹溝12Aよりも塗布ヘッド10の後端側に位置する後端側部分(側面12)に対して所定間隔後退させられている。
【0014】
そのため、一対のヘッド部材11A,11Bが一方の側面12,12同士を互いに対向させるように組み合わされたときに、互いに対向する一方の側面12,12同士の間には、一方のヘッド部材11Aにおける一方の側面12と他方のヘッド部材11Bにおける一方の側面12に形成された凹溝12Aとの間の空間であるポケット15と、一方のヘッド部材11Aにおける一方の側面12と他方のヘッド部材11Bにおける一方の側面12の先端側部分との間の空間である溝状のスロット16とが、それらの長手方向を塗布ヘッド10の長手方向と一致させるように画成される。
【0015】
このスロット16は、ポケット15に連通する部分から、塗布ヘッド10の先端側へ向かって延びて、塗布ヘッド10の先端に開口するように延在させられており、塗布液がポケット15内に供給されたときには、この塗布液が、ポケット15に連通するスロット16内を塗布ヘッド10の先端側へ向かって流通して、塗布ヘッド10の先端から吐出される。
【0016】
また、塗布ヘッド10を構成する一対のヘッド部材11A,11Bにおいて、スロット16及びポケット15を画成する一方の側面12,12とは反対側に位置する他方の側面17,17は、塗布ヘッド10の先端寄りに位置する部分が、塗布ヘッド10の先端側に向かうにしたがいスロット16側へ向かうように傾斜した傾斜面17A,17Aとされ、このような一対のヘッド部材11A,11Bから構成された塗布ヘッド10は、その先端が先細りした形状をなすことになる。
【0017】
そして、塗布ヘッド10を構成する一方のヘッド部材11Aにおける他方の側面17(上記の傾斜面17Aを除く他方の側面17)に、この他方の側面17に開口して、一方の側面12(スロット16)側へ向かって一段凹む凹部20が、スロット16の長手方向(塗布ヘッド10の長手方向)に沿った方向に延びるように形成されている。
【0018】
凹部20は、他方の側面17に交差するとともに、塗布液の流通方向であるスロット16の延在方向(図2における上下方向、塗布ヘッド16の長手方向に直交する断面で見たときのスロット16の延在方向)に沿った方向を向いて互いに対向する一対の壁面22,22と、これら一対の壁面22,22同士を接続するとともに、凹部20における側面17への開口部側を向く底面21とを備えている。
また、凹部20における一対の壁面22,22は、これら一対の壁面22,22同士の間の距離(スロット16の延在方向に沿った方向での距離)が凹部20における開口部側へ向かうにしたがい漸次小さくなるように、互いに傾斜させられている。
【0019】
このような凹部20が形成されていることにより、一方のヘッド部材11Aは、凹部20の底面21と一方の側面12との間がポケット15に隣接する薄肉部分とされているのであるが、本実施形態では、さらなる薄肉部分を形成するため、凹部20の底面21に、この底面21に開口して、一方の側面12側へ向かって一段凹む第二凹部21Aが、凹部20と同じくスロット16の長手方向に沿った方向に延びるように形成されている。
【0020】
凹部20内には、図1〜図3に示すように、スロット16の長手方向(塗布ヘッド10の長手方向)に沿った方向に延びる略直方体状をなす調整ユニット30が、凹部20の延びる方向であるスロット16の長手方向に沿った方向に移動可能とされるように設けられている。
調整ユニット30は、凹部20における一対の壁面22,22のそれぞれに接触させられる一対の押圧面32,32と、凹部20における底面21に接触させられる背面31と、凹部20における側面17への開口部に露出させられる前面33とを備えている。
【0021】
また、調整ユニット30における一対の押圧面32,32は、上記の凹部20における一対の壁面22,22と同様に、これら一対の押圧面32,32同士の間の距離(スロット16の延在方向に沿った方向での距離)が前面33側へ向かうにしたがい漸次小さくなるように、互いに傾斜させられている。
そのため、調整ユニット30は、凹部20内において、スロット16の長手方向に沿った方向で移動可能とされているものの、凹部20における側面17への開口部側からは抜け落ちないようになっている。
【0022】
この調整ユニット30には、図1〜図3に示すように、その前面33に開口するとともに、スロット16の長手方向に沿った方向の両端に位置する両端面30A,30Aに開口する圧電アクチュエータ収容部40が形成されている。
圧電アクチュエータ収容部40は、調整ユニット30の前面33に交差するとともに塗布液の流通方向であるスロット16の延在方向に沿った方向を向いて互いに対向する一対の壁面42,42と、これら一対の壁面42,42同士を接続するとともに圧電アクチュエータ収容部40における前面33への開口部側を向く底面41とを備えている。
【0023】
圧電アクチュエータ収容部40内には、この圧電アクチュエータ収容部40における一対の壁面42,42に密着する圧電アクチュエータ45が、スロット16の長手方向に沿った方向の略中央部に設けられており、この圧電アクチュエータ45は、印加された電圧に対応する微細な変位量で、スロット16の延在方向に沿った方向での長さを大きくすることが可能となっている。
【0024】
また、圧電アクチュエータ収容部40内には、圧電アクチュエータ45の両側を挟み込むように配置される一対の圧電アクチュエータブロック46,46が、スロット16の長手方向に沿った方向の両端側部分に設けられている。なお、一対の圧電アクチュエータブロック46,46のうちの一方には、圧電アクチュエータ45の作動電圧を印加するためのコネクタが接続されるコネクタ取付部46Aが形成されている。
【0025】
さらに、調整ユニット30における一対の押圧面32,32のうち、塗布ヘッド10の後端側を向く押圧面32において、そのスロット16の長手方向に沿った方向での略中央部が、この押圧面32に形成された凹所34に嵌め込まれたストッパ部材35の壁面35Aによって構成されている。
このストッパ部材35は、スロット16の延在方向に沿った方向での厚みが凹部20における開口部側(調整ユニット30における前面33側)へ向かうにしたがい漸次小さくなるように形成されているとともに、凹部20における底面21との間に設けられた弾性部材としてのバネ36によって、凹部20における開口部側へ向かって付勢されている。
【0026】
このように、厚みが凹部20における開口部側へ向かうにしたがい漸次小さくなるストッパ部材35が凹部20における開口部側へ向かって付勢されていることにより、このストッパ部材35における塗布ヘッド10の後端側を向く壁面35Aを含んだ調整ユニット30における一対の押圧面32,32と、凹部20における一対の壁面22,22とが互いに密着させられるとともに、圧電アクチュエータ45と、圧電アクチュエータ収容部40における一対の壁面42,42とが互いに密着させられ、調整ユニット30がスロット16の長手方向に沿った方向の任意の位置で凹部20内に固定されている。
【0027】
上述したような構成を有する塗布工具は、塗布ヘッド10の先端を被塗布物に対向配置させるとともに、塗布ヘッド10の長手方向(スロット16の長手方向)を被塗布物の幅方向に一致させるようにして塗布装置に装着され、塗布液タンクから供給ポンプによってポケット15内に供給された塗布液が、スロット16内を流通して塗布ヘッド10の先端から吐出されることにより、この塗布ヘッド10の先端に対して相対的に移動する被塗布物の表面に塗布液が塗布されることになる。
【0028】
以上説明したような本実施形態では、スロット16の幅を調整するのに際して、まず、凹部20の延びる方向であるスロット16の長手方向に沿った方向に移動可能とされた調整ユニット30を、スロット16の幅を小さくすべき領域に対応する位置に移動させる。
ここで、調整ユニット30は、ストッパ部材35で凹部20内に固定されているため、ストッパ部材35を凹部20の底面21側へ向かって押し込んでバネ36を圧縮することによって、調整ユニット30の固定状態を解除しつつ、この調整ユニット30を移動させることになる。
【0029】
次に、調整ユニット30の内部に備えられた圧電アクチュエータ45に対し、一方の圧電アクチュエータブロック46に形成されたコネクタ取付部46Aに接続されるコネクタを介して、所定の電圧を印加する。
所定の電圧が印加された圧電アクチュエータ45は、印加された電圧に対応する微細な変位量で、図3中の矢印Xで示すように、スロット16の延在方向に沿った方向での長さが大きくなるように作動することから、この圧電アクチュエータ45が密着している圧電アクチュエータ収容部40における一対の壁面42,42をそれぞれ押圧することになる。
【0030】
すると、圧電アクチュエータ収容部40における一対の壁面42,42同士の間の距離が大きくなるとともに、この圧電アクチュエータ収容部40が形成された調整ユニット30における一対の押圧面32,32同士の間の距離が大きくなる、つまり、調整ユニット30におけるスロット16の延在方向での長さが大きくなることになる。
【0031】
これにより、一方のヘッド部材11Aは、凹部20における一対の壁面22,22同士の間の距離が大きくなるように、ポケット15に隣接する薄肉部分を支点として弾性変形させられるのであり、このような一方のヘッド部材11Aの変形にともない、一対のヘッド部材11A,11Bにおける互いに対向する一方の側面12,12同士の間に画成されたスロット16の幅が小さくなるように、このスロット16の幅が調整される(調整ユニット30によって幅が小さくされる領域以外のスロット16の幅を、見かけ上大きくする)。
【0032】
このような本実施形態では、スロット16の幅を調整するための調整ユニット30が、スロット16の長手方向に沿った方向で移動可能とされていることから、この調整ユニット30を、スロット16の長手方向に沿った方向での任意の位置に移動させて固定し、その任意の位置に対応する領域でのスロット16(例えば100μm以上の幅を有するスロット16)の幅を調整することができるようになっている。
しかも、調整するスロット16の幅については、このスロット16の長手方向に沿った方向での略全長に亘って略一定となるように設定するだけではなく、例えば、ある所定領域で意図的に大きくなったり小さくなったりするように設定することもできる。
【0033】
そのため、スロット16内を流通して塗布ヘッド10の先端から吐出される塗布液の流量を、このスロット16の長手方向に沿った方向の略全長に亘って略一定とするように、調整ユニット30を用いてスロット16の幅を調整することにより、被塗布物の表面に塗布される塗布液の膜厚を均一に維持することができるのである。
【0034】
また、粘度の高い塗布液を高圧でポケット15内に供給するときには、塗布液に加えられた圧力によって、スロット16の幅が、その長手方向の略中央部で大きくなってしまう、いわゆる中開き現象が生じて、吐出された塗布液の流量にばらつきが生じてしまうおそれがあるが、このような中開き現象を想定したスロット16の幅を設定することで、スロット16内を流通して塗布ヘッド10の先端から吐出される粘度の高い塗布液の流量を、スロット16の長手方向の略全長に亘って略一定に維持することもできる。
【0035】
そして、スロット16の幅を調整するため、上記のような調整ユニット30を用いたことにより、この調整ユニット30におけるスロット16の長手方向に沿った方向での長さを必要に応じて適宜与えてやることで、一方のヘッド部材11Aを変形させるときの押圧部分が局所的になることがなくなり、所定領域でのスロット16の幅を調整するときであっても、従来の調整ボルトを用いた直接的かつ局所的な押圧でスロット16の幅を調整する場合のように、複数回繰り返しての調整が必要となることはなく、容易にスロット16の幅を調整することができる。
【0036】
さらに、調整ユニット30は、印加された電圧に対して微細な変位量を短時間で正確に出力することが可能な圧電アクチュエータ45を用いて、スロット16の延在方向に沿った方向での長さを非常に緩やかな変化傾向で大きくする構成であることから、この調整ユニット30で一方のヘッド部材11Aを変形させて調整されるスロット16の幅の変化の挙動を非常に緩やかなものにして、例えばミクロンオーダーでの微細な幅の正確な調整を短時間で行うことが可能となっている。具体的には、圧電アクチュエータ45の変位量(スロット16の延在方向に沿った方向での長さの変位量)が30μm程度可能であれば、スロット16の幅を10μm程度の範囲内で微細に変化させることができる。
【0037】
加えて、このような圧電アクチュエータ45を備えた調整ユニット30は、スロット16の延在方向に沿った方向での長さを電気的・機械的に変化させるものであることから、例えばクリーンルームで塗布装置の使用する場合などにも対応することができる。
【0038】
なお、上記の実施形態においては、調整ユニット30を設ける凹部20を、塗布ヘッド10を構成する一対のヘッド部材11A,11Bのうち、ポケット15を画成する凹溝12Aが一方の側面12に形成されていない一方のヘッド部材11Aのみに形成するようにしたが、もちろん、他方のヘッド部材11Bにおける他方の側面17にも凹部20を形成して、この凹部20内に調整ユニット30を設けるようにしてもよい。
【0039】
しかし、この調整ユニット30は、ヘッド部材を変形させることによってスロット16の幅を調整するものであるから、他方のヘッド部材11Bを変形させると、これにともなってポケット15の形状も変形させられ、ポケット15内に供給された塗布液の定常流の状態を崩してしまって、塗布ヘッド10の先端から吐出される塗布液の流量に悪影響を与えてしまうおそれがあるので、上記の各実施形態のように、一方のヘッド部材11Aのみを変化させることによって、スロット16の幅を調整することが好ましい。
【0040】
また、上記の実施形態においては、スロット16の長手方向に沿って延びるように形成された一つの凹部20内には、一つの調整ユニット30を設けるようにしているが、これに限定されることはなく、必要に応じて、一つの凹部20内に、複数の調整ユニット30を設けるようにしても構わない。
このように、一つの凹部20内に複数の調整ユニット30を設けておき、スロット16の幅を、このスロット16の長手方向に沿った方向での略全長に亘って任意に調整できるようにしておくと、これらの調整ユニット30が圧電アクチュエータ45を利用するものであるため、いわゆるリアルタイム制御を行うことも考えられる。
例えば、被塗布物の表面に塗布されていく塗布液の膜厚を、スロット16の長手方向に沿った方向での略全長に亘ってリアルタイムで検知することが可能な膜厚センサを設けておき、この膜厚センサからの検知信号をもとにしたフィードバック制御を行うことで、塗布された塗布液の膜厚の厚い部分に該当するスロット16の幅が小さくなるように、調整ユニット30でスロット16の幅を調整すればよい。
このようなフィードバック制御を行うことにより、被塗布物の表面に塗布液を塗布している途中であっても、リアルタイムにスロット16の幅を調整して、被塗布物の表面に塗布される塗布液の膜厚を均一に維持することができる。
【0041】
さらに、上記の実施形態においては、塗布ヘッド10を構成するヘッド部材11A,11Bのそれぞれが、塗布ヘッド10の先端を構成する部分を含めて一体のものとして説明されているが、これに限定されることはなく、例えば、ヘッド部材11A,11Bの先端に対して超硬合金などの硬質部材が取り付けられたものであってもよい。
【0042】
加えて、上記の実施形態においては、塗布ヘッド10が一対のヘッド部材11A,11Bから構成されたものとして説明しているが、例えば、塗布ヘッド10が3つ以上のヘッド部材から構成されて、これら3つ以上のヘッド部材における互いに対向する側面同士の間に、塗布ヘッド10の先端に開口する2つ以上のスロットが画成されるようにして、被塗布物の表面に2つ以上の塗布液が層をなすように同時に塗布されるようなものであってもよい。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、ヘッド部材の側面に形成された凹部内に設けられる調整ユニットを用い、この凹部における一対の壁面同士の間の距離を大きくするようにヘッド部材を変形させることで、複数のヘッド部材における互いに対向する側面同士の間に画成されたスロットの幅を調整することができるようになっている。
そして、調整ユニットにおけるスロットの長手方向に沿った方向での長さを必要に応じて適宜与えてやることで、ヘッド部材を変形させるときの押圧部分が局所的になってしまうことがなくなり、所定領域のスロットの幅を調整する場合でも、従来の調整ボルトを用いた場合のような複数回繰り返しての調整が必要とならず、容易にスロットの幅を調整することが可能となる。
さらに、スロットの幅を調整するための調整ユニットは、印加された電圧に対して微細な変位量を短時間で正確に出力することが可能な圧電アクチュエータを備えたものを用いて、スロットの延在方向に沿った方向での長さを大きくするものであることから、このような調整ユニットによって調整されるスロットの幅の変化の挙動を非常に緩やかなものとできて、例えばミクロンオーダーでの微細な幅の正確な調整が短時間で可能となる。
さらに、前記凹部が、前記スロットの長手方向に沿った方向に延びるように形成され、前記調整ユニットが、前記スロットの長手方向に沿った方向の任意の位置へ移動及び固定可能とされているため、この調整ユニットを、スロットの長手方向に沿った方向での任意の位置に移動させて固定し、その任意の位置に対応する領域でのスロットの幅を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態による塗布工具を示す側面図である。
【図2】 図1におけるA−A線断面図である。
【図3】 本発明の実施形態による塗布工具を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
10 塗布ヘッド
11A,11B ヘッド部材
12 一方の側面(スロットを画成する側面)
15 ポケット
16 スロット
17 他方の側面(スロットを画成する側面とは反対側の側面)
20 凹部
22 壁面
30 調整ユニット
40 圧電アクチュエータ収容部
45 圧電アクチュエータ

Claims (3)

  1. 複数のヘッド部材から構成された塗布ヘッドを有し、前記複数のヘッド部材における互いに対向する側面同士の間に、前記塗布ヘッドの先端に開口する溝状のスロットが画成され、塗布液が前記スロット内を流通して前記塗布ヘッドの先端から吐出される塗布工具であって、
    前記ヘッド部材における前記スロットを画成する側面とは反対側の側面に、前記塗布液の流通方向である前記スロットの延在方向に沿った方向を向いて互いに対向する一対の壁面を備えた凹部が形成され、
    この凹部内に、前記一対の壁面にそれぞれ接触させられる一対の押圧面を備え、前記スロットの延在方向に沿った方向での長さを大きくすることによって、前記一対の壁面同士の間の距離が大きくなるように前記ヘッド部材を変形させて、前記スロットの幅を調整することが可能な調整ユニットが設けられ、
    この調整ユニットは、その内部に備えられた圧電アクチュエータにより、前記スロットの延在方向に沿った方向での長さを大きくし、
    前記凹部が、前記スロットの長手方向に沿った方向に延びるように形成され、
    前記調整ユニットが、前記スロットの長手方向に沿った方向の任意の位置へ移動可能とされ、
    前記一対の押圧面のうち前記塗布ヘッドの後端側を向く前記押圧面に形成された凹所にストッパ部材が嵌め込まれ、該ストッパ部材が弾性部材によって前記凹部における開口部側へ向かって付勢されることにより、前記調整ユニットが前記スロットの長手方向に沿った方向の任意の位置に固定され、前記ストッパ部材を前記凹部の底面側へ向かって押し込んで前記弾性部材を圧縮することによって、前記調整ユニットの固定状態が解除されることを特徴とする塗布工具。
  2. 前記一対の壁面は、これら一対の壁面同士の間の距離が前記凹部における開口部側へ向かうにしたがい漸次小さくなるように互いに傾斜させられており、
    前記ストッパ部材は、前記スロットの延在方向に沿った方向での厚みが前記開口部側へ向かうにしたがい漸次小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布工具。
  3. 請求項1または2に記載の塗布工具が、前記塗布ヘッドの先端を被塗布物に対向配置させるように装着されていて、前記塗布ヘッドの先端から塗布液が吐出されることにより、前記塗布ヘッドの先端に対して相対的に移動する前記被塗布物に塗布液が塗布されることを特徴とする塗布装置。
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