JP4351483B2 - Nbスパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はNbスパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、特に対象物表面に膜形成するに際して均等に膜形成することのできるNbスパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、気相で行う膜形成方法として不活性ガス(主としてArガス)をイオン化してスパッタリングターゲット(以下単にターゲットとする)に射突させ、これによりターゲットの原子を叩き出して対象物表面に付着(蒸着)させるスパッタリングが広く行われている。
図9はその原理を示している。
【0003】
図示のようにこのスパッタリングでは、チャンバ200内を真空吸引してそこにArガスを導入し、そしてターゲット202を陰極として対象物204との間に高電圧を印加する。
すると両極間でグロー放電(プラズマ)が発生し、そのプラズマの中の正イオンが強電界により加速されてターゲット202に衝突しスパッタ現象を起す。
これによって叩き出されたターゲット202の原子202Aがプラズマを通り抜けて陽極である対象物204表面に到達しそこに付着(蒸着)する。
【0004】
Nbをターゲットとして用いたスパッタリングは、例えばガラス表面に機能性膜を形成する方法として利用されている。
その際、対象物表面に均等且つ均質な膜を形成するためにはNbターゲットの結晶粒が微細且つ均等であることが求められる。
しかしながらNbターゲットの場合、結晶粒を微細且つ均等とすることは技術的に難しく、従来にあってはこれを十分に実現できていないのが実情である。
【0005】
Nbターゲットの結晶粒を微細化する手法としては、Nbインゴットを冷間塑性加工して歪付加した上、加熱により再結晶させる手法が用いられる。
このような歪を付加した状態で再結晶温度以上に加熱すると、その歪を開放する方向に再結晶が進むことから、これを利用してNbターゲットの結晶粒を微細化するのである。
即ち予め付加された歪が再結晶を生ぜしめる駆動力となって再結晶が進行する。
【0006】
このような再結晶生成の機構上、生成した結晶粒(再結晶)が微細且つ均等であるためにはNb材料内部で歪が均等に生じていることが必要であるが、Nb材料の場合このこと自体実現することが従来難しかったのである。
【0007】
それはNbインゴット自体が極めて粗大な結晶から成っていてその組織も極めて不均等だからである。また外部から力を加えて塑性変形させたときにすべり面の存在により、変形時に異方性を示し、加工歪を均一に蓄積できず、高歪部と低歪部とが内部で生じてしまうことによる。
これがため再結晶させたときに高歪部と低歪部とで結晶粒径が異なったり、各結晶粒が十分ランダムな状態で(即ち均等な状態で)生成しないのである。
【0008】
例えば一般の鋼材の場合、図10(A)(イ)に示しているように円柱状の素材206を図中P方向に圧下すると、その全体が軸方向に均等に圧縮されて、図10(A)(ロ)に示しているようにほぼ偏平な太鼓形状の変形品206Aとなるが、Nb材料の場合、図10(B)(イ)に示しているように円柱状の素材206を同じように図中P方向に圧下してもすべり面の存在によりそのような形状とはならず、図10(B)(ロ)に示しているように、変形時に異方性があらわれ、複雑に湾屈曲した変形品206Bとなってしまう。
【0009】
Nb材料の場合にこのような不規則な変形をしてしまうのは、Nb材料の場合円柱状の素材206自体、その内部組織が極めて不均等な組織を成しており、且つ変形時に強い異方性を示すようなすべり面が存在するからである。
このような不規則な変形をしてしまうということは、取りも直さず変形後において内部歪が均等ではなく、高歪部と低歪部とがそこに生じていることを意味している。
【0010】
以上のような事情により、従来Nbターゲットの結晶粒を微細化且つ均等化することには技術的な困難があり、そのためNbターゲットを用いたスパッタリングでは膜を十分に均等な厚みで且つ均質に形成することが困難であった。
本発明はこのような課題を解決するために案出されたものである。
【0011】
尚、ターゲットの結晶粒を微細化することを目的としたものとして例えば下記特許文献1,特許文献2に開示されたものがある。
但しこれら特許文献1,特許文献2に開示のものは何れもTaターゲットの製造方法に関するもので、本発明の対象とするNbターゲットを製造するためのものではない。
【0012】
この特許文献1に開示のものは、一軸方向に冷間鍛造,冷間圧延をしたときは、再結晶処理しても原料インゴットにあった粗大粒がTaターゲットに残ってしまうことから、二軸以上の方向から加工し塑性変形させるようになしたものであるが、その内容は締め鍛造と据込み鍛造との組み合わせ、即ちインゴットの軸方向と直角方向に圧下を加えてインゴットの軸方向を鍛伸方向とする鍛造加工とインゴットの軸方向に圧下を加える鍛造加工ないし圧延加工との組み合わせから成るものであり、このような加工方法では中心部と外周部とで結晶粒の微細化の程度が異なってしまう。
【0013】
またこの特許文献1では、冷間鍛造と冷間圧延の加工途中に真空中での熱処理を行う点を開示しているが、この熱処理は、冷間加工により蓄積された歪により素材が硬化し、更なる冷間加工が困難となることを防ぐために冷間加工の途中で歪取りを行うための熱処理であり、本発明のように中間での再結晶処理とは異なったものである。
【0014】
他方、特許文献2ではTa鋳塊を加工率90%以上の条件で冷間鍛造した後、再結晶処理を行う点を開示しているが、そこには互いに異なった二軸方向に材料を塑性流動させるための加工を行う点については開示されていない。
【0015】
【特許文献1】
特開平11−80942号公報
【特許文献2】
特開平6−264232号公報
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために案出された本発明のNbスパッタリングターゲットの製造方法は、Nbインゴットに対して冷間塑性加工を施して歪付加した後加熱による再結晶処理を施すとともに、機械加工によりターゲット形状とするNbスパッタリングターゲットの製造方法において、前記Nbインゴットの軸方向を塑性流動の方向として該軸方向を伸長方向とする1次冷間塑性加工と、該1次冷間塑性加工後において非軸方向の圧下により軸直角方向断面の中心部及び外周部を含む材料全体を該軸方向と交叉する他軸方向且つ同じ方向に塑性流動させて該他軸方向に伸長変形させる2次冷間塑性加工とを、最終の再結晶処理に先立って少なくとも1回繰返すようになすとともに、該1次冷間塑性加工と2次冷間塑性加工との間で中間の再結晶処理を施すことを特徴とする(請求項1)。
【0017】
請求項2の製造方法は、請求項1において、前記1次冷間塑性加工が冷間鍛造加工であり、前記2次冷間塑性加工が冷間圧延加工若しくは冷間鍛造加工であることを特徴とする。
【0018】
請求項3の製造方法は、請求項1,2の何れかにおいて、前記軸方向と交叉する他軸方向が該軸方向と直角方向であることを特徴とする。
【0019】
請求項4の製造方法は、請求項1〜3の何れかにおいて、最終のターゲット形状を得るための前記機械加工を施した後に前記最終の再結晶処理を施すことを特徴とする。
【0020】
請求項5は、Nbスパッタリングターゲットに関するもので、このNbスパッタリングターゲットは、Nbインゴットを冷間塑性加工して成るNbスパッタリングターゲットであって、任意の部位の平均結晶粒径が1mm未満で、最大平均結晶粒径と最小平均結晶粒径との差の、最大平均結晶粒径に対する比率である粒径差が40%未満であることを特徴とする。
【0021】
【作用及び発明の効果】
以上のように本発明の製造方法は、Nbインゴットの軸方向を伸長方向とする1次冷間塑性加工と、非軸方向の圧下により材料全体をその軸方向と交叉する他軸方向且つ同じ方向に塑性流動させ、その他軸方向に伸長変形させる2次冷間塑性加工とを、最終の再結晶処理に先立って少なくとも1回繰返すとともに、その1次冷間塑性加工と2次冷間塑性加工との間で中間の再結晶処理を施すものである。
【0022】
従来Nbターゲットの製造は、先ずNbインゴットをその軸方向を鍛伸方向(伸長方向)として冷間鍛造加工し、その後に再び同方向を鍛伸又は延伸方向とする冷間鍛造加工又は冷間圧延加工をした上で、再結晶処理することにより行っていた。
【0023】
この場合、当初のNbインゴットの粗大組織が最初の冷間鍛造加工及びこれに続く冷間鍛造加工若しくは冷間圧延加工により壊されて、より細かな組織即ち鍛伸方向又は延伸方向である軸方向の繊維状組織となり、更に続く再結晶処理で更に細かな組織に変化するが、従来の製造方法ではNb材料に対する加工の方向、厳密には塑性流動の方向が全体を通じて一軸方向であるため、再結晶処理前に残っていた繊維状組織の影響、つまりは残留歪の不均一さが再結晶処理後も残ってしまい、結晶の配列に方向性が生じてこれがNbターゲットの組織の不均一化を招来していた。
また再結晶処理する前の組織が必ずしも十分に細かくないため、再結晶処理後の組織を十分に微細化することができなかった。
【0024】
しかるに本発明の製造方法では、最終の再結晶処理に先立ってNbインゴットの軸方向を伸長方向とする1次冷間塑性加工と、その軸方向と交叉する他軸方向を伸長方向とする2次冷間塑性加工とを少なくとも1回行うようになしており、この場合最初の1次冷間塑性加工後においてインゴットの軸方向に延びる繊維状組織が残っていても、これに続く2次冷間塑性加工によって軸方向の繊維状組織を均一化して、残留歪の不均一さの影響を減殺することができる。
【0025】
しかも本発明の製造方法では1次冷間塑性加工と2次冷間塑性加工との間で一旦中間の再結晶処理を行い、1次冷間塑性加工後に残っていた繊維状組織即ちインゴットの軸方向に繊維状に繋がっていた組織(結晶)を一旦再結晶により均一化した上で、2次冷間塑性加工によりこれと交叉する他軸方向に塑性変形することにより、インゴット組織の持つ不均一さ(粒径,残留歪)を均一化し、最終の再結晶処理後における組織を十分に微細な組織とすることができる。
【0026】
尚、本発明の製造方法においては最終の再結晶処理の前において、場合により1次冷間塑性加工と2次冷間塑性加工及び中間の再結晶処理を2回ないしそれ以上繰返すことも可能である。
そのようにすれば最終的に得られるNbターゲットの組織を、更に微細化且つ均等化することが可能となる。
【0027】
本発明の製造方法においては、上記1次冷間塑性加工を冷間鍛造加工となし、また2次冷間塑性加工を冷間圧延加工若しくは冷間鍛造加工となすことができる(請求項2)。
また上記軸方向と交叉する他軸方向を、その軸方向と直角方向となすことができる(請求項3)。
【0028】
次に請求項4は、最終のターゲット形状を得るための、表面の切除加工を含んだ機械加工を施した後に、最終の再結晶処理を施すようになしたものである。
従来にあっては、最終の再結晶処理を施した後において最終の機械加工を行っており、この場合折角再結晶処理を施して歪を除去しても、その後の機械加工によってNbターゲット表面に、その機械加工による加工歪が残ってしまう。
而してそのような加工歪が残ったままのNbターゲットを用いてスパッタリングを行い膜形成を行うと、その加工歪に起因して膜が不均等化してしまう。
【0029】
そこで本発明の製造方法では、表面の切除加工を含む最終のターゲット形状を得るための機械加工を施した後において再結晶処理を施すようになしており、かかる請求項4によれば、機械加工によって生じた加工歪がその後の再結晶処理によって除去され、これにより最終的に歪の残存していないNbターゲットを得ることができる。
【0030】
次に請求項5はNbスパッタリングターゲットに関するもので、このものは任意の部位の平均結晶粒径を1mm未満、粒径差を40%未満と成したものである。
このようなNbスパッタリングターゲットを用いることで、スパッタリングにより対象物表面に形成される膜の厚みを飛躍的に均等化且つ均質化できることを見出した。
尚より好ましい平均結晶粒径は500μm未満であり、より好ましくは100μm未満である。
また粒径差は好ましくは30%未満、より好ましくは20%未満である。
【0031】
【実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図1,図2及び図3を参照しつつ以下に説明する。
図1において、10はNbインゴット(図1中(I))で、その組織は柱状組織を成している。
本例の製造方法では、先ず1次冷間塑性加工として図1中(II)の冷間鍛造工程でこのNbインゴット10を図中横向きに寝かせた状態で軸直角方向に圧下する冷間鍛造加工を行い、Nbインゴット10を軸方向に鍛伸加工する。
【0032】
12はこれによって得られた加工材を表しており、この加工材12においてはNbインゴット10における当初の粗大な組織が鍛伸方向(軸方向)に延びた繊維状組織Fに変形している。
【0033】
尚、図1において20-1は当初のNbインゴット10における結晶粒の形態を模式的に表しており、この結晶粒20-1は、図1中(II)の冷間鍛造工程によって軸方向に細長く延びた結晶粒20-2に形を変化する。
【0034】
次に、図1中(III)の切断・機械加工工程において、加工材12を所定長さ寸法で切断し、加工材14を得る。
このとき併せて表面部分を所定寸法切除して、加工材12の表面に生じていた傷の除去を行う。
【0035】
この図1中(III)の切断・機械加工工程で得た加工材14に対し、次に一旦中間の真空再結晶処理を行う(図2中(IV)の真空再結晶処理工程)。
この中間の真空再結晶処理により、結晶粒20-2から微細な結晶粒22が再結晶により晶出する(結晶粒20-4)。即ち図1中(II)の冷間鍛造工程後における結晶粒20-2が多数の結晶粒22に分解された状態となる。
【0036】
次に真空再結晶処理を行った加工材16に対し、図2中(V)の冷間圧延工程において2次冷間塑性加工としての冷間圧延加工を行う。
この図2中(V)の冷間圧延工程では、加工材16に対しNbインゴット10における軸方向、即ち加工材12における繊維状組織Fの延びる方向と直角方向から圧下を行い、Nb材料全体をNbインゴット10の軸方向及び図1中(II)の冷間鍛造工程での圧下の方向と直角方向に延伸させる。
【0037】
即ち図1中(II)の冷間鍛造工程ではNbインゴット10の軸方向にNb材料を塑性加工しているのに対し、図2中(V)の冷間圧延工程ではこれと直角方向にNb材料を塑性加工している。
この結果、Nb材料は図1中(II)の冷間鍛造工程と図2中(V)の冷間圧延工程とで互いに直角を成す二軸方向に塑性加工せしめられる。
この図2中(V)の冷間圧延工程によって得られる結晶粒20-5は、図2中(IV)の中間の真空再結晶処理で晶出した微細な結晶粒(再結晶)22がNbインゴット10の軸方向と直角方向に延びた形態となる。
【0038】
この図2中(V)の冷間圧延工程に続いて、本例ではターゲット形状を得るための最終の機械加工を行い(図3中(VI))、続いて図3中(VII)の最終の真空再結晶処理を行う。
従来にあっては、このターゲット形状を得るための機械加工は最終の真空再結晶処理の後に行っていたが(図3中(V´),(VI´)参照)、ここではその順序を逆転させ、先ず最終の機械加工を行った上で、その後に最終の真空再結晶処理を行う(図3中(VI),(VII)参照)。
【0039】
前述したように最終の真空再結晶処理の後において機械加工を行うと、その機械加工によってNbターゲットの表面に加工歪が残存し、従ってNbターゲットを用いてスパッタリングを行ったとき、その加工歪が膜の不均一化をもたらす原因となる。
【0040】
しかるにここでは先ず最終の機械加工を行った後に、最終の真空再結晶処理を行うため、機械加工による加工歪をNbターゲット表面に残存させない。
最終の真空再結晶処理によって、その前段の機械加工により生じた加工歪を駆動力として再結晶させ、加工歪を除去する。
【0041】
図3の20-7は、この最終の真空再結晶処理(図3中(VII))によって得られるNbターゲットの結晶粒の形態を模式的に表したもので、図示のようにこの結晶粒20-7は、図2中(V)の冷間圧延工程で生じた結晶粒22から、更に細かな結晶粒24が微細に晶出した形態を成しており、全体としてかかる微細な結晶粒24が均等に且つランダムに分散した形態を成している。
【0042】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに以下に説明する。
図1に示すように、先ず電子ビーム(EB)溶解を行って、直径φ240mmのサイズのNbインゴット10を得た。
次いで4面鍛伸,減面率:〜85%の条件で図1中(II)の冷間鍛造工程を実施し、長い加工材12を得た。
【0043】
続いて図1中(III)の切断・機械加工工程を実施して、加工材14を得た。
その後、図2中(IV)の中間の真空再結晶処理を1200℃×11.5hrの条件で実施した後、図2中(V)の冷間圧延工程を圧下率85%で実施した。
その後図3中(VI)の最終機械加工工程を行って表面の切除を行い、所定寸法のNbターゲットを得、続いて図3中(VII)の最終の真空再結晶処理を温度1200℃×8hrの条件で実施し、最終的なNbターゲット18(図4参照)を得た。
【0044】
一方、比較例においては次のようにしてNbターゲット18の製造を行った。
即ち、上記実施例と同様にして図1中(II)の冷間鍛造加工を行った後、図1中(III´)の機械加工工程を実施して、断面寸法が上記実施例と同じサイズの長い加工材を得た後、実施例のような図2中(IV)の中間の真空再結晶処理を実施することなく、図2中(IV´)の冷間圧延工程を実施し、加工材を得た。
【0045】
この図2中(IV´)の冷間圧延工程では、上記実施例と異なってNbインゴット10の軸方向を延伸方向として加工を行った。即ち図1中(II)の冷間鍛造工程の際の鍛伸方向と同じ方向を延伸方向として圧下率85%で冷間圧延加工を行った。
従ってこれら鍛伸方向及び延伸方向は、Nbインゴット10の軸方向と同じ方向であって、これら全体としてNb材料の塑性流動の方向は同一方向である。即ちこの比較例では加工の方向が全体を通じて一軸方向である。
【0046】
図2において、20A-4はこの図2中(IV´)の冷間圧延加工後の加工材における結晶粒の形態を模式的に示している。
次いで図3中(V´)の真空再結晶処理を上記実施例(図3中(VII)の真空再結晶処理)と同様の条件で実施し、その後において図3中(VI´)の最終切断・機械加工工程を実施して、上記実施例と同様のサイズのNbターゲット18を得た。
【0047】
このようにして得た本実施例のNbターゲット18及び比較例のNbターゲット18の組織状態を図4に示す方法で調査したところ、表1に示す結果が得られた。
尚Nbターゲット18におけるミクロ組織の調査は以下のようにして行った。
【0048】
即ち、図4(B)に示しているようにNbターゲット18における図中左上の部位▲1▼,左下の部位▲2▼,中上の部位▲3▼,中下の部位▲4▼,右上の部位▲5▼,右下の部位▲6▼の合計6箇所の部位について、図4(A)に示す方法で結晶粒の大きさを測定し、それぞれについて表1に示した。
【0049】
尚図4(A)の測定方法は以下の通りである。
即ち、顕微鏡写真(倍率50倍)上で上,中,下の3箇所で横方向に直線を引き、以下の手順に従って平均結晶粒径を算出した。
<結晶粒径測定方法>
[直線交差線分法]
(1)直線を引く。
(2)直線と粒界の交差点数を数える(図中黒丸)。尚結晶粒1個とみなされないもの(最初,最後)は0.5とカウントする。
(3)図4中の式1にて平均結晶粒径を算出する。
(4)写真1視野あたり3ライン(図4(A)中では上,中,下)で測定し、その平均値を平均結晶粒径とする。
【0050】
【表1】
Figure 0004351483
【0051】
表1の結果に見られるように、本実施例により得たNbターゲット18は▲1▼〜▲6▼にかけて結晶粒が微細且つ均等であり、これに対して比較例で得たNbターゲット18の場合、結晶粒が大きく且つ各部位で結晶粒のサイズが大きくばらついていることが分る。
【0052】
図5〜図7は本実施例により得たNbターゲット18における▲1▼〜▲6▼の部位についての顕微鏡写真を示したもので、この顕微鏡写真からも、本実施例により得たNbターゲット18では各部位における結晶粒が微細且つ均等であることが見て取れる。
【0053】
このような本実施例により得たNbターゲット18を用いてスパッタリングを行い膜形成したところ、比較例のNbターゲット18を用いてスパッタリングを行い膜形成した場合に比べて良好に即ち均等な厚みで対象物表面に膜形成することができた。
【0054】
以上本発明の実施の形態,実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はNbだけでなく、Nb合金(Nb-Ta,Nb-Ti等)のスパッタリングターゲットにも適用可能であるし、また例えば図8に示しているように、図1中(II)の冷間鍛造工程において4面鍛圧と4面鍛伸とを組み合わせて実施したり、或いは図2中(V)の冷間圧延加工に代えて冷間鍛造加工を実施することも可能であり、更に上例では図1中(II)の冷間鍛造工程と図2中(V)の冷間圧延工程及び図2中(IV)の中間の真空再結晶処理を、図3中(VII)の最終の真空再結晶処理の前に各1回だけ行っているが、場合によってそれらを最終の真空再結晶処理前に2回若しくはそれ以上繰返して行うことも可能であるなど、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のNbターゲットの製造方法の各工程を示す説明図である。
【図2】図1に続く工程を示す説明図である。
【図3】図2に続く工程を示す説明図である。
【図4】本発明の実施例で得たNbターゲットのミクロ組織の調査方法の説明図である。
【図5】本発明の実施例で得たNbターゲットのミクロ組織の図面代用顕微鏡写真である。
【図6】同実施例のNbターゲットの図5とは異なる部位のミクロ組織の図面代用顕微鏡写真である。
【図7】同実施例のNbターゲットの図5,図6とは異なる部位のミクロ組織の図面代用顕微鏡写真である。
【図8】本発明の他の実施形態のNbターゲットの製造方法の要部工程を示す説明図である。
【図9】 Nbターゲットを用いたスパッタリングの原理説明図である。
【図10】本発明の背景説明のための説明図である。
【符号の説明】
10 Nbインゴット
18 Nbターゲット(Nbスパッタリングターゲット)

Claims (5)

  1. Nbインゴットに対して冷間塑性加工を施して歪付加した後加熱による再結晶処理を施すとともに、機械加工によりターゲット形状とするNbスパッタリングターゲットの製造方法において、
    前記Nbインゴットの軸方向を塑性流動の方向として該軸方向を伸長方向とする1次冷間塑性加工と、該1次冷間塑性加工後において非軸方向の圧下により軸直角方向断面の中心部及び外周部を含む材料全体を該軸方向と交叉する他軸方向且つ同じ方向に塑性流動させて該他軸方向に伸長変形させる2次冷間塑性加工とを、最終の再結晶処理に先立って少なくとも1回繰返すようになすとともに、該1次冷間塑性加工と2次冷間塑性加工との間で中間の再結晶処理を施すことを特徴とするNbスパッタリングターゲットの製造方法。
  2. 請求項1において、前記1次冷間塑性加工が冷間鍛造加工であり、前記2次冷間塑性加工が冷間圧延加工若しくは冷間鍛造加工であることを特徴とするNbスパッタリングターゲットの製造方法。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、前記軸方向と交叉する他軸方向が該軸方向と直角方向であることを特徴とするNbスパッタリングターゲットの製造方法。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、最終のターゲット形状を得るための前記機械加工を施した後に前記最終の再結晶処理を施すことを特徴とするNbスパッタリングターゲットの製造方法。
  5. Nbインゴットを冷間塑性加工して成るNbスパッタリングターゲットであって
    任意の部位の平均結晶粒径が1mm未満で、最大平均結晶粒径と最小平均結晶粒径との差の、最大平均結晶粒径に対する比率である粒径差が40%未満であることを特徴とするNbスパッタリングターゲット。
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